説明

混合増粘型硬化性樹脂組成物及び硬化性樹脂組成物における増粘方法

【課題】混合前の液状組成物は各々低粘度であるものの、これら液状組成物を混合した際に増粘して良好な作業性を与え、なおかつ硬化後の皮膜物性に影響を与えにくい、混合硬化型硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、水及び下記式で表されるアルキルシリケート化合物を含む液状組成物とからなることを特徴とする、混合増粘型硬化性樹脂組成物を用いる。少なくとも二つの液状組成物を混合することによって硬化する硬化性樹脂組成物であって、これら液状組成物が(A)エポキシ樹脂と下記式で示されるシリケート化合物を含む液状組成物と、(B)エポキシ樹脂の硬化剤と水とを含む液状組成物とからなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも二つの液状組成物を混合することによって硬化する硬化性樹脂組成物において、混合前の液状組成物は各々低粘度であるものの、これら液状組成物を混合した際に速やかに増粘して良好な作業性(チクソ性)を与え、なおかつ硬化後の皮膜物性に影響を与えにくい混合増粘型硬化性樹脂組成物及び硬化性樹脂組成物における増粘方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
少なくとも二つの液状組成物を混合することによって反応硬化する硬化性樹脂組成物については従来より様々なものが知られており、接着剤、塗料、シーリング材、ポッティング剤、樹脂成形材料等の分野において古くから用いられている。
このような混合硬化型の硬化性樹脂組成物としては、一般に主剤と硬化剤と呼ばれる二成分からなるものが多く知られており、例えばその化学的組成としてはエポキシ系(主剤;エポキシ樹脂/硬化剤;アミンやケチミン等のエポキシ樹脂の硬化剤/例えば特許文献1等)、変成シリコーン−エポキシ系(第一液;変成シリコーンポリマー及びアミンやケチミン等のエポキシ樹脂の硬化剤/第二液;エポキシ樹脂及びスズ系化合物等の変成シリコーンポリマーの硬化触媒/例えば特許文献2等)、ウレタン系(主剤;イソシアネート化合物/硬化剤;アミン系化合物やポリオール化合物等/例えば特許文献3等)などが知られている。
【0003】
これらの混合硬化型の硬化性樹脂組成物は、その適用用途に応じて適正な混合物粘度が得られるよう予め調整されている。しかし、例えば垂直面への塗布作業性を得るために、比較的高粘度で作業性に優れた(チクソ性を有する)混合物粘度を得ようとする場合には、自ずと混合前の各液状組成物の粘度も高くなってしまうことがあり、その結果かえって混合時の作業性が低下したり、混合不良を招いたりするといった不具合が生じることがあった。一方で、混合前の各液状成分の粘度を低く抑えて混合時の作業性を優先させると、逆に所望の混合物粘度が得られないといったジレンマに陥ることがあった。
【0004】
【特許文献1】特開2006−219624号公報
【特許文献2】特開2002−265922号公報
【特許文献3】特開2005−89527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、これらの問題を解決するために、一般に混合増粘型と呼ばれ、混合前の液状組成物は各々低粘度であるものの、これら液状組成物を混合した際に増粘して良好な作業性を与える混合硬化型の硬化性樹脂組成物が検討されている。
しかし、混合時の増粘手法として用いられる増粘剤は硬化性樹脂組成物の硬化に関与しない成分である。そのために、従来の混合増粘型の硬化性樹脂組成物においては、混合増粘による作業性が得られたとしても、硬化に関与しない成分が存在するが故に、これらの成分が硬化後の皮膜物性にとっては悪影響(具体的には皮膜の可塑化効果)を及ぼすという問題点があった。
【0006】
そのため、より簡便な系であると同時に、硬化後の硬化物皮膜の物性に影響を及ぼしにくい混合増粘系の開発が望まれていた。
本発明は、混合前の液状組成物は各々低粘度であるものの、これら液状組成物を混合した際に増粘して良好な作業性を与え、なおかつ硬化後の皮膜物性に影響を与えにくい、混合硬化型硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は上述のような新規な混合増粘系を実現するために鋭意研究した結果、液状シリケート化合物と水とを混合すると速やかに反応してシリカ微粒子を生成することに着目して本発明を完成させるに至った。本発明は次の第1〜7の発明から構成される。
【0008】
すなわち、第1の発明は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、水及び化学式(1)で示されるシリケート化合物を含む液状組成物とからなることを特徴とする、混合増粘型硬化性樹脂組成物に関するものである。
【化1】

・・・(1)
但し、R、R、R、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、R、Rは同じであっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である。
【0009】
第2の発明は、少なくとも二つの液状組成物を混合することによって硬化する硬化性樹脂組成物であって、これら液状組成物が(A)エポキシ樹脂と化学式(1)で示されるシリケート化合物を含む液状組成物と、(B)エポキシ樹脂の硬化剤と水とを含む液状組成物とからなることを特徴とする、第1の発明に係る混合増粘型硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0010】
第3の発明は、化学式(1)におけるR、R、R、Rがメチル基であることを特徴とする、第1又は第2のいずれかの発明に係る混合増粘型硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0011】
第4の発明は、化学式(1)におけるnが2以上の整数であることを特徴とする、第1〜3のいずれかの発明に係る混合増粘型硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0012】
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物を主体とする混合増粘型接着剤組成物に関するものである。
【0013】
第6の発明は、少なくとも二つの液状組成物を混合することによって硬化する硬化性樹脂組成物において、以下の(X)(Y)(Z)の工程を具備することを特徴とする、混合時における当該液状組成物の混合物の増粘方法に関するものである。
(X)少なくとも、水を含む一の液状組成物と、化学式(1)で示されるシリケート化合物を含む他の液状組成物とを混合する工程
(Y)混合された液状組成物中で水とシリケート化合物とが反応することによって、シリカ微粒子が生成する工程
(Z)生成したシリカ微粒子によって当該液状組成物の混合物が増粘される工程
【0014】
第7の発明は、液状組成物が少なくとも(A)エポキシ樹脂を含む液状組成物と(B)エポキシ樹脂の硬化剤を含む液状組成物とからなる硬化性樹脂組成物を用いることを特徴とする、第6の発明に係る混合時における当該液状組成物の混合物の増粘方法に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る混合増粘型硬化性樹脂組成物及び硬化性組成物における増粘方法は、混合前の液状組成物は各々低粘度であるものの、これら液状組成物を混合した際に増粘して良好な作業性を与え、なおかつ硬化後の皮膜物性に影響を与えにくいという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0017】
[硬化性樹脂組成物について]
本発明における硬化性樹脂組成物とは、少なくとも二つの液状組成物を混合することによって反応硬化する樹脂組成物をいう。
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、水及び化学式(1)で示されるシリケート化合物を必須成分として含む、複数の液状組成物からなるものである。
具体的には、第一の液状組成物(A)が少なくともエポキシ樹脂と上記化学式(1)で示されるシリケート化合物を含む液状組成物であり、他方の液状組成物(B)がエポキシ樹脂の硬化剤と水とを含む液状組成物であることが好ましい。第一の液状組成物にエポキシ樹脂と水、第二の液状組成物にエポキシ樹脂の硬化剤と上記化学式(1)で示されるシリケート化合物を組み合わせてもよいが、エポキシ樹脂と水とが相溶しにくいため前述の組み合わせのほうがより好ましい。
このような硬化系としては、従来技術の項で例示したエポキシ系(主剤、エポキシ樹脂/硬化剤、アミンやケチミン等のエポキシ樹脂の硬化剤)、及び、変成シリコーン−エポキシ系(第一液、変成シリコーンポリマー及びアミンやケチミン等のエポキシ樹脂の硬化剤/第二液;エポキシ樹脂及びスズ系化合物等の変成シリコーンポリマーの硬化触媒)が該当する。また、必ずしも二液型に限定されるものではなく、三液以上の液状組成物(例えば水を第三液とするなど)を混合するものでも構わない。
【0018】
本発明の本質は、液状シリケート化合物と水とを混合すると速やかに反応してシリカ微粒子を生成することに着目し、これを硬化性樹脂組成物に適用して新規な混合増粘系として確立した点にあると理解されるべきである。いずれの態様においても、シリケート化合物と水とを混合すると速やかに反応してシリカ微粒子を生成することによって増粘作用が発現する。また、反応により生成したシリカ微粒子は少量でも系を増粘させ、作業性(チクソ性)を付与することができる。また、その量が少量であること、或いはシリカ微粒子は硬化後の皮膜においては充填材として作用するので、皮膜を可塑化することなくむしろ補強する方向に作用するので、従来の混合増粘系におけるような不具合は生じない。
【0019】
本発明における混合硬化型の硬化性樹脂組成物は、接着剤、塗料、シーリング材、ポッティング剤、樹脂成形材料等として用いることができる。
【0020】
[エポキシ樹脂について]
本発明におけるエポキシ樹脂は、従来公知のものを使用でき、エポキシ基を有するものであればどのようなものでもよい。例えば、ビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールSなどとエピクロルヒドリンを反応させて得られるビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などやこれらを水添化あるいは臭素化したエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、メタキシレンジアミンやヒダントインなどをエポキシ化した含窒素エポキシ樹脂、ポリブタジエンあるいはNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂などが挙げられる。これらに限定されるものではなく、2種類以上のエポキシ樹脂を組み合わせて使用してよい。
本発明のエポキシ樹脂は市販品を用いることもできる。市販品としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製/製品名エピコート828)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製/製品名エピコート830)等が挙げられる。
【0021】
[エポキシ樹脂の硬化剤について]
本発明におけるエポキシ樹脂の硬化剤としては、従来公知のものを使用でき、アミン化合物、3級アミン化合物、メルカプタン化合物等が使用できる。これらの中でもアミン化合物が水とシリケートとの反応を促進するために好ましい。また、脂肪族ポリアミン類、脂環式ポリアミン類、ノルボルナンジアミン−エポキシアダクト体(特開平8−253556号公報)、マンニッヒ塩基化合物と脂肪族ポリエーテルジアミンとの混合物(特開平10−339040号公報)、親水性ケチミン或いは疎水性ケチミン等も使用することができる。
具体的には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、メタキシリレンジアミン等の化合物及びオキシアルキレン骨格に持つアミン化合物、並びにこれらアミン化合物をウレタン変性、アミド変性、マンニッヒ変性、エポキシ変性した各種変性アミン等を好適に用いることができる。
【0022】
[シリケート化合物について]
本発明におけるシリケート化合物とは、下記化学式(1)で示される化合物である。具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシランなどの単量体や多量体が挙げられる。これらに限定されるものではなく、2種類以上を組み合わせて使用してもよいことはいうまでもない。
本発明のシリケート化合物は市販品を用いることもできる。市販品としては、シリケートモノマーとしては、エチルシリケート(コルコート社製/製品名:エチルシリケート28)、N−プロピルシリケート(コルコート社製/製品名:N−プロピルシリケート)、N−ブチルシリケート(コルコート社製/製品名:N−ブチルシリケート)、が挙げられる。また、シリケートオリゴマーとしては、メチルシリケートオリゴマー(コルコート社製/製品名:メチルシリケート51、メチルシリケート53A)、エチルシリケートオリゴマー(コルコート社製/製品名:エチルシリケート40、エチルシリケート48)等が挙げられる。
【化2】

・・・(1)
但し、R、R、R、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、R、Rは同じであっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である。
【0023】
化学式(1)におけるR、R、R、Rはメチル基であることが、反応性が高く混合後速やかに増粘作用が発現することから好ましい。また、化学式(1)におけるnが2以上の整数であることが、短時間で高分子量化できるため短時間でシリカ微粒子が成長し増粘することが可能となり好ましい。
【0024】
[各成分の配合量について]
シリケート化合物の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して1〜50質量部、好ましくは、5〜20質量部である。1質量部よりも少ないと揺変性がつかないという点で不具合が生じやすく、50質量部よりも多くなるとシリカ生成の際に生じるアルコール化合物の揮発による硬化物の収縮が大きくなり物性が著しく低下するという点で不具合が生じやすい。
シリケート化合物と反応する水については、シリケート化合物100質量部あたり1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部、さらに好ましくは2〜25質量部である。1質量部よりも少ないとシリケート化合物が十分な量のシリカにならないため揺変性が付かないという点で不具合が生じやすく、100質量部よりも多くなると硬化物中に水が混在し硬化物物性や接着性を低下させるという点で不具合が生じやすい。
【0025】
[その他成分について]
本発明の混合硬化型の硬化性樹脂組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲において、従来公知の充填材やその他の添加剤(フェノール系樹脂の粘着付与剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃材、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物等の老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、各種シランカップリング剤、各種チタネートカップリング剤、各種アルミニウムカップリング剤、乾性油等)を配合することができる。
【0026】
[増粘方法について]
本発明に係る増粘方法は、少なくとも二つの液状組成物を混合することによって硬化する硬化性樹脂組成物についての混合時における増粘方法、すなわち、液状組成物の混合物の増粘方法であって、以下の(X)(Y)(Z)の工程を具備することを特徴とするものである。
(X)少なくとも、水を含む一の液状組成物と、化学式(1)で示されるシリケート化合物を含む他の液状組成物とを混合する工程
(Y)混合された液状組成物中で水とシリケート化合物とが反応することによって、シリカ微粒子が生成する工程
(Z)生成したシリカ微粒子によって当該液状組成物の混合物(硬化性樹脂組成物)が増粘される工程
【0027】
(X)工程で混合された液状シリケート化合物と水は、(Y)工程において速やかに反応してシリカ微粒子を生成する。そして、生成したシリカ微粒子は増粘作用を発現する((Z)工程)。また、反応により生成したシリカ微粒子は少量でも系を増粘させ、作業性(チクソ性)を付与することができる。また、その量が少量であること、或いはシリカ微粒子は硬化後の皮膜においては充填材として作用することから、皮膜を可塑化することなくむしろ補強する方向に作用するので、従来の混合増粘系におけるような不具合(具体的には硬化皮膜の可塑化)は生じない。
【0028】
上記増粘方法においては、液状組成物が少なくとも(A)エポキシ樹脂を含む液状組成物と(B)エポキシ樹脂の硬化剤を含む液状組成物とからなる硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるわけではない。
【0030】
[使用原料]
・エポキシ樹脂
エピコート828(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂/ジャパンエポキシレジン株式会社製/商品名)
・エポキシ樹脂の硬化剤
トーマイド235A(分子中にアミド結合と多くのアミノ基を有するポリアミノアミド樹脂/富士化成工業株式会社製/商品名)
・シリケート化合物
MKCシリケートMS51(重量平均分子量500〜700(n=約4〜6)であるテトラメチルシリケートのオリゴマー/三菱化学株式会社製/商品名)
TSL8114(テトラメトキシシラン(n=1)/モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製/商品名)
エチルシリケート40 (平均5量体のエチルポリシリケート(n=約5)/コルコート株式会社製/商品名)
エチルシリケート48 (平均10量体のエチルポリシリケート(n=約10)/コルコート株式会社製/商品名)
【0031】
[粘度測定]
BH型回転粘度計を用いて、23℃における2回転/分及び20回転/分での、液状組成物(A)単独の粘度、液状組成物(B)単独の粘度、及び液状組成物(A)と(B)とを混合5分後の粘度を測定した。
また、2回転/分の粘度値を20回転/分の粘度値で割ったもの(TI値)を作業性(チクソ性)の評価指標とした。TI値が1.5以上であれば作業性が良好であると判断した(後述の表2で作業性を○と表記)。
【0032】
[密着強さの測定]
液状組成物(A)と(B)とを混合後、表面を研磨したコンクリートに塗布量約200g/mで塗布して23℃50%RHで一週間養生した。その後、この硬化塗膜に4cm×4cmの切り込みを入れ、引張測定試験用治具を取り付け、平面引張試験を行い塗膜の密着強さを測定した。
【0033】
[エポキシ樹脂及びシリケート化合物を含む液状組成物(A)の調製]
(調製例A1)
撹拌翼付きの密閉容器に、エポキシ樹脂としてエピコート828を100質量部、シリケート化合物としてMKCシリケートMS51を20質量部仕込み、窒素雰囲気下で混合して液状組成物A1を得た。
(調製例A2)
シリケート化合物の配合量を10質量部に変えた以外は、調製例A1と同様にして液状組成物A2を得た。
(調製例A3)
シリケート化合物の配合量を5質量部に変えた以外は、調製例A1と同様にして液状組成物A3を得た。
(調製例A4)
シリケート化合物をTSL8114に変えた以外は、調製例A1と同様にして液状組成物A4を得た。
(調製例A5)
シリケート化合物をエチルシリケート40に変えた以外は、調製例A1と同様にして液状組成物A5を得た。
(調製例A6)
シリケート化合物をエチルシリケート48に変えた以外は、調製例A1と同様にして液状組成物A6を得た。
(調製例A7)
シリケート化合物を配合せず、エポキシ樹脂としてエピコート828のみを液状組成物A7とした。
【0034】
[エポキシ樹脂の硬化剤及び水を含む液状組成物(B)の調製]
(調製例B1)
撹拌翼付きの密閉容器に、エポキシ樹脂の硬化剤としてトーマイド235Aを50質量部、水を0.5質量部仕込み、窒素雰囲気下で混合して液状組成物B1を得た。
(調製例B2)
水の配合量を1質量部に変えた以外は、調製例B1と同様にして液状組成物B2を得た。
(調製例B3)
水の配合量を5質量部に変えた以外は、調製例B1と同様にして液状組成物B3を得た。
(調製例B4)
水を配合せず、エポキシ樹脂の硬化剤としてトーマイド235Aのみを液状組成物B4とした。
【0035】
以上の液状組成物(A)及び(B)についての調製例の配合及び液状組成物(A)又は(B)単独の粘度、及びTI値を表1に示す。

【表1】

【0036】
[実施例1]
液状組成物A1(120質量部)と液状組成物B2(51質量部)とを混合し、混合5分後の粘度と密着強さの測定を行った。
[実施例2]
液状組成物A2(110質量部)と液状組成物B2(51質量部)とを混合し、実施例1と同様に試験した。
[実施例3]
液状組成物A3(105質量部)と液状組成物B2(51質量部)とを混合し、実施例1と同様に試験した。
[実施例4]
液状組成物A4(120質量部)と液状組成物B3(55質量部)とを混合し、実施例1と同様に試験した。
[実施例5]
液状組成物A3(105質量部)と液状組成物B3(55質量部)とを混合し、実施例1と同様に試験した。
[実施例6]
液状組成物A1(120質量部)と液状組成物B1(50.5質量部)とを混合し、実施例1と同様に試験した。
[実施例7]
液状組成物A4(120質量部)と液状組成物B2(51質量部)とを混合し、実施例1と同様に試験した。
[実施例8]
液状組成物A5(120質量部)と液状組成物B2(51質量部)とを混合し、実施例1と同様に試験した。
[実施例9]
液状組成物A6(120質量部)と液状組成物B2(51質量部)とを混合し、実施例1と同様に試験した。
[比較例1]
液状組成物A7(100質量部)と液状組成物B4(50質量部)とを混合し、実施例1と同様に試験した。
【0037】
実施例1〜9及び比較例1の配合内訳及び測定結果を表2に示す。

【表2】

【0038】
表1及び表2の結果から明らかなように、本発明に係る混合前の液状組成物(A)又は(B)は低粘度であるものの、これらを混合すると混合5分後の時点で増粘するとともに良好な作業性(チクソ性)が発現していることがわかる。一方、シリケート化合物と水を配合しない比較例の系では増粘もチクソ性の発現もないことがわかる。また、塗膜の密着強さについては、実施例、比較例ともにコンクリートの材料破壊となっており、シリケート化合物と水を配合しない系と同様、十分な密着性が発現していることがわかる。
【0039】
以上の結果から、本発明に係る混合硬化型の硬化性樹脂組成物は、混合前の液状組成物は各々低粘度であるものの、これら液状組成物を混合した際に増粘して良好な作業性を与え、なおかつ硬化後の皮膜物性に影響を与えにくいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る混合硬化型の硬化性樹脂組成物は、混合前の液状組成物は各々低粘度であるものの、これら液状組成物を混合した際に増粘して良好な作業性を与え、なおかつ硬化後の皮膜物性に影響を与えにくいという特徴を有することから、このような性能が要求される接着剤、塗料、シーリング材、ポッティング剤、樹脂成形材料等の用途に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、水及び化学式(1)で示されるシリケート化合物を含む液状組成物とからなることを特徴とする、混合増粘型硬化性樹脂組成物。
【化1】

・・・(1)
但し、R、R、R、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、R、Rは同じであっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である。
【請求項2】
少なくとも二つの液状組成物を混合することによって硬化する硬化性樹脂組成物であって、
これら液状組成物が(A)エポキシ樹脂と化学式(1)で示されるシリケート化合物を含む液状組成物と、(B)エポキシ樹脂の硬化剤と水とを含む液状組成物とからなることを特徴とする、請求項1に記載の混合増粘型硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
化学式(1)におけるR、R、R、Rがメチル基であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載の混合増粘型硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
化学式(1)におけるnが2以上の整数であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の混合増粘型硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を主体とする混合増粘型接着剤組成物。
【請求項6】
少なくとも二つの液状組成物を混合することによって硬化する硬化性樹脂組成物において、以下の(X)(Y)(Z)の工程を具備することを特徴とする、混合時における当該液状組成物の混合物の増粘方法。
(X)少なくとも、水を含む一の液状組成物と、化学式(1)で示されるシリケート化合物を含む他の液状組成物とを混合する工程
(Y)混合された液状組成物中で水とシリケート化合物とが反応することによって、シリカ微粒子が生成する工程
(Z)生成したシリカ微粒子によって当該液状組成物の混合物が増粘される工程
【化2】

・・・(1)
但し、R、R、R、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、R、Rは同じであっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である。
【請求項7】
液状組成物が少なくとも(A)エポキシ樹脂を含む液状組成物と(B)エポキシ樹脂の硬化剤を含む液状組成物とからなる硬化性樹脂組成物を用いることを特徴とする、請求項6に記載の混合時における当該液状組成物の混合物の増粘方法。


【公開番号】特開2010−6936(P2010−6936A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167204(P2008−167204)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】