説明

減光フィルタとこの減光フィルタの成膜方法及び成膜装置

【課題】透明な基板上に光学特性に応じた膜層を形成する際に、膜厚さが漸減するグラデーション領域層を安定してバラツキなく同時に反射特性に優れた減光フィルタの提供する。
【解決手段】基板と、前記基板に異なる物質をスパッタリングして積層状に形成された金属膜層と誘電体膜層から構成されるグラデーション層を形成して成り、前記金属膜層と前記誘電体膜層は共に前記基板に対し勾配角を有し、しかも前記誘電体膜層の勾配角は前記金属膜層の前記基板との勾配角に対し小さく、且つ前記金属膜層形成領域内でほぼ均一な膜厚さを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラ等の撮影装置の光量を調整する減光フィルタとその成膜方法及び成膜装置に係わり、特にその減光フィルタの減光特性が連続的に漸減するグラデーション成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の減光フィルタは撮像光量絞り装置に広く用いられている。この減光フィルタは樹脂基板に光吸収特性に優れた薄膜を形成している。そしてこの減光フィルタは全体が均一な単濃度の薄膜で成膜する場合と、濃度が異なる幾つかの領域に区割し成膜する場合と、濃度分布が連続的に変化するグラデーション薄膜で成膜する場合等が知られている。
【0003】
近年、撮像装置の高解像化が進むに従い、明るい被写体条件下で光量を絞ると回折光の影響による画像ボケなど画質の劣化が顕著に現れる傾向にある。そこで例えば特許文献1に開示されているように光量を調整する絞り羽根に減光フィルタを添着し、小絞り時に発生する回折現象を抑えることが提案されている。そしてこの減光フィルタを一定の絞り値以下のときには濃度(光の透過率)が開口径側に連続的に漸減するグラデーションフィルタが提案されている。このようなフィルタによって例えば絞り羽根を絞り込んだ際に光の干渉による画像不良が発生することを抑えるようにしている。
【0004】
従来、このような減光フィルタは例えば特許文献1に開示されているように、透明又は半透明の基板に光吸収性に富んだ薄膜を形成している。そしてこの薄膜は膜厚さが等しく光の減衰率が均一な等濃度領域と膜厚さが直線的に漸減するグラデーション領域とを備えている。また、特許文献2にはこの減光膜を光吸収性に富んだ金属膜と誘電体膜とを積層状に数層重ね合わせることが開示されている。そして金属膜で光を減衰し、誘電体膜で光の透過量を調整し同時に反射防止する成膜構造が知られている。
【0005】
その金属膜層としてはニオブ、クロメル、チタンなどで形成され、誘電体膜層としてはケイ素、アルミなどの酸化物、窒化物、フッ化物などで形成されている。そして膜層の最上層は例えばフッ化マグネシュームなどの硬質で撥水性に富んだ膜層で覆っている。これらの膜層はグラデーション領域で膜厚さが直線的に漸減するように構成されている。このような膜構造で光を減衰し、その透光量を調整するように構成されているが、誘電体膜の膜勾配が大きいと十分な反射防止効果が得られない問題がある。
【0006】
一方、このようなグラデーション領域層の成膜方法としては、真空蒸着装置で作成することが広く用いられている。例えば先の特許文献2には蒸着膜でグラデーション領域層を作成することが開示されている。
【0007】
その特許文献2には真空蒸着装置に基板を装着し、このステージを回転させながら蒸発成分を加熱蒸発させて基板に成膜する成膜方法が提案されている。そしてこの蒸発源と基板との間にマスク開口を有するマスク板を設け、このマスク開口と対向する基板上に等濃度領域を、その周辺にグラデーション領域を形成することが開示されている。
【0008】
そしてその特許文献2の真空蒸着装置を用いてグラデーション領域層を形成する生成メカニズムを図1A及び図1Bに示す。その方法は基板50を蒸着ステージ51に図1Aのように放射状に多数装着する。そしてそのステージと距離を隔てた位置に成膜開口52を有するマスク53を配置し、ステージ51とマスク53は同一軸Xを中心に回転するように装置内に装備する。そこでこの回転軸Xから所定量オフセットした位置Yに蒸着源54が配置されている。このような状態でステージ51を回転し蒸着源から成膜成分を蒸発させる。すると蒸着源から発散された成膜成分は、その一部がマスク開口52から基板上に付着し、他はマスク53に遮られる。
【0009】
このような構造でステージ51とマスク53を回転させると蒸着源54との間には図2Aに示すような幾何学的関係が成立する。つまりステージ51に装着された基板50に対して蒸着源54を点蒸発源として表現すると、この蒸着源54は図2Aのように所定角度θで傾斜した円弧軌跡で回転する。そしてこの傾斜角度θはドーム形状のステージ51に装着された基板50の角度θと一致する。そこで基板50には角度θで傾斜した円弧軌跡で蒸発源54から蒸着成分がマスク53の開口から投射される。従って基板上には図2Bに示すような膜厚さdがd1からd2に漸減的に変化する膜層が形成される。この膜層によって透過光量は濃度の濃い部分(d1)は透過率が大きく、濃度の薄い部分(d2)は透過率が小さくなる。
【0010】
つまり従来のグラデーション領域層を生成する場合は、蒸着槽内で基板とターゲットとの間にマスク板を設け、このマスク開口に対して所定角度α傾斜した位置から成膜成分を蒸発させるようにして形成している。従って特許文献2には開示されていないが、ターゲットとマスク板との距離L1は、マスク板と基板との距離dに比べて十分大きく設定し、ターゲットから投射される蒸着成分が平行光線のような直線を描くようにコントロールされている。これによって図2Bに示すように幾何学的に形成される膜厚さは直線的に変化することとなる。
【特許文献1】特開平5−281593公報
【特許文献2】特開2005−345746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように従来はこのグラデーションフィルタを前掲特許文献2のような蒸着装置で成膜する方法を採っている。ところがこの方法による場合には、同時に複数枚のフィルタ素材を生成する場合に膜厚さが個々の素材毎に異なり歩溜まりが極端に悪いという問題を抱えている。つまり所定減衰率のフィルタを大量生産する際に、個々の減衰特性が異なり、光学的特性にバラツキが生ずる欠点がある。
【0012】
この膜厚さの不均一は、図6Aに理想的な膜厚さを破線で表現するとき前掲特許文献2の方法で作成したフィルタは同図鎖線で示すように光学特性にバラツキが生ずる欠点がある。このように従来の蒸着装置によるグラデーションフィルタの成膜方法では複数の基板を同時生産すると個々の素材の光学特性に大きなバラツキが生ずる問題と、グラデーション領域層が直線的に減衰しない問題が知られている。従ってその生産には槽内の真空状態管理、蒸着成分の蒸着条件管理、蒸着成分の槽内浮遊条件管理など高度な経験と、ノウハウを要するとされている。
【0013】
また上述の特許文献2に開示の成膜方法における素材毎に光学特性のバラツキが発生する原因は次にあると思われる。まず図1A及び図1Bで示す基板50はドーム形状のステージ51に、それぞれ角度θが異なる状態で装着されている。そしてこの各基板50に対応するマスク板53が同一の角度θで配置されている。この基板50とマスク板53を装着したステージに対して蒸発源54はその回転中心から所定角度αオフセットした位置に配置されている。
【0014】
従って蒸着源54から飛散した蒸着成分はそれぞれ異なる角度でマスク板53を通過し基板上に膜形成する。このため基板50aと基板50bと基板50cでは異なる幅の膜層が形成される。これと共に回転軸Xを中心に回転するステージ51では蒸着源54から蒸着成分が基板50aと基板50bと基板50cでは図示距離L1、L2、L3が異なる。従って当然に両基板に成膜される膜厚さがことなる事となり、これが素材毎に光学特性のバラツキが生ずる原因と解析される。
【0015】
次に上述の特許文献2に開示の成膜方法において膜層が直線的に減衰しない原因は次にあると思われる。同文献の成膜方法は図1に示すように基板50とマスク板53が回転する方向前後にグラデーション領域層を形成している。このためグラデーション領域層は基板50に回転しながら蒸発源54から放射された蒸着成分が付着する。このような成膜ではチャンバ内の雰囲気が基板50の回転で変化する。この変化で付着される膜厚さが不安定となり幾何学的に形成される通りの膜厚さが得られない。これと共に同文献の蒸着槽内で蒸着物質を加熱して蒸着させる成膜方法では、成膜物質の粒子が大きいこと、この蒸着成分の粒子が大きいため、成膜条件が多少でも変化すると膜厚さが大きく異なる原因と解析される。これと同時に例えば蒸着成分として二酸化ケイ素を用いる場合に例えると蒸着源54から蒸着する成分は「SiO2」「SiO」またその中間酸化物など不安定な状態で生成される。このようなオキサイドシフトが成膜手段によって無作為に発生するため安定した膜層を形成することが出来ないことに原因すると思われる。
【0016】
そこで本発明者は既に知られている反応式スパッタリング装置(例えば特開平11−279757号公報)でグラデーションフィルタを生成することに着目し、この場合に上述のバラツキが発生しない成膜方法の提供と、同時にグラデーションフィルタの膜厚さの変化による反射防止効果の劣化抑えることができる成膜方法の提供を案出するに至った。
【0017】
本発明は透明な基板上に光学特性に応じた膜層を形成する際に、膜厚さが漸減するグラデーション領域層を安定してバラツキなく同時に複数の基板に成膜することが出来、しかもグラデーション領域層の膜厚さを直線的に漸減することの可能であり、同時に経時的に劣化することのない減光フィルタの成膜方法、製造装置及びこれを用いた減光フィルタの提供をその主な課題としている。
【0018】
更に本発明はそのグラデーション領域層全域に渡り十分な反射防止効果が得られる減光フィルタの特性改良を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を達成するため本発明は以下の構成を採用する。
【0020】
まず本発明の減光フィルタは、基板と、前記基板に異なる物質をスパッタリングして積層状に形成された金属膜層と誘電体膜層から構成されるグラデーション層を形成して成り、前記金属膜層と前記誘電体膜層は共に前記基板に対し勾配角を有し、しかも前記誘電体膜層の勾配角は前記金属膜層の前記基板との勾配角に対し小さく、且つ前記金属膜層形成領域内でほぼ均一な膜厚さを形成していることを特徴としている。
【0021】
次に本発明の減光フィルタ成膜方法では、成膜チャンバ内で異なる物質から成る少なくとも第1、第2のターゲットをスパッタリングして、基板に対し所定の成膜ギャップを形成し配置されたマスク開口を介し前記基板上に、前記第1のターゲット物質から成る金属膜層と前記第2のターゲット物質から成る誘電体膜層とを積層状に形成する減光フィルタの成膜方法であって、(1)前記基板を前記成膜チャンバ内に配置された筒形状の回転ドラムに装着し、(2)前記回転ドラムには前記マスク開口を有するマスク板を前記基板との間に所定の成膜ギャップを形成するように配置し、(3)前記第1のターゲットは板状材料で前記基板表面と略々平行で、且つ第1のターゲットのスパッタ領域中央部位が前記マスク開口中央部と前記回転ドラムの回転中心を結ぶ法線上で前記基板に対峙する位置に配置され、(4)前記第2のターゲットは板状材料で前記基板表面と略々平行で、且つ第2のターゲットのスパッタ領域中央部位が前記マスク開口中央部と前記回転ドラムの回転中心を結ぶ前記法線に対し前記回転ドラムの回転方向と直交する方向に適宜変位した位置で前記基板に対峙する位置に配置され、前記回転ドラムを回転させながら前記第1、第2のターゲットにスパッタ電圧を印加することによって、前記基板には前記回転ドラムの回転方向と直交する方向に前記マスク板のマスク開口から前記成膜ギャップ内に生ずるスパッタ粒子の拡散で、膜厚さが漸減する前記金属膜層と、膜厚さがその金属膜層形成領域内でほぼ均一な誘電体膜層から成るグラデーション層が形成されることを特徴としている。
【0022】
また前記基板とマスク板は前記回転ドラムの周側面に配置され、この基板とマスク板との間に配置されたスペーサ部材によって前記成膜ギャップが形成され、前記マスク板に形成されたマスク開口の上下端縁の少なくとも一方は、前記回転ドラムの回転方向と一致する直線上に配置し、前記第1ターゲットのスパッタ領域中央部位を前記マスク開口のほぼ中央に配置するとともに、前記第2ターゲットのスパッタ領域中央部位を前記マスク開口のほぼ中央に対し前記回転ドラムの回転方向と直交する方向に所定距離だけ変位した位置に配置して、前記誘電体膜層のグラデーション層の膜端縁が前記金属膜層のグラデーション層の膜端縁に対しマスク開口端より離間した位置に形成して成ることを特徴とするることを特徴としている。
【0023】
次に本発明の減光フィルタの製造装置は、基板上に誘電体膜層層と金属膜層を積層状に成膜する減光フィルタの製造装置であって、成膜チャンバと、前記成膜チャンバ内に配置された筒形状の回転ドラムと、前記回転ドラムに装着された複数の基板と、前記成膜チャンバ内に区割された第1エリアに前記基板と距離を隔てて配置された金属物質から成る第1のターゲットと、前記成膜チャンバ内に区割された第2エリアに前記基板と距離を隔てて配置された誘電性物質から成る第2のターゲットと、前記成膜チャンバ内に区割された第3エリアに配置された反応性ガスの供給源と、前記第1エリア及び第2エリアに配置されたスパッタリング用の動作ガス供給源と、を備え、前記基板を前記成膜チャンバ内に配置された筒形状の回転ドラムに装着し、前記回転ドラムには前記マスク開口を有するマスク板を前記基板との間に所定の成膜ギャップを形成するように配置し、前記第1のターゲットは板状材料で前記基板表面と略々平行で、且つ第1のターゲットのスパッタ領域中央部位が前記マスク開口中央部と前記回転ドラムの回転中心を結ぶ法線上で前記基板に対峙する位置に配置され、前記第2のターゲットは板状材料で前記基板表面と略々平行で、且つ第2のターゲットのスパッタ領域中央部位が前記マスク開口中央部と前記回転ドラムの回転中心を結ぶ前記法線に対し前記回転ドラムの回転方向と直交する方向に適宜変位した位置で前記基板に対峙する位置に配置され、前記回転ドラムを回転させながら前記第1、第2のターゲットにスパッタ電圧を印加することによって、前記基板には前記回転ドラムの回転方向と直交する方向に前記マスク板のマスク開口から前記成膜ギャップ内に生ずるスパッタ粒子の拡散で、膜厚さが漸減する前記金属膜層と、膜厚さがその金属膜層形成領域内でほぼ均一な誘電体膜層から成るグラデーション層を形成して成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明は、第1のターゲットのスパッタ領域中央部位がマスク開口中央部と回転ドラムの回転中心を結ぶ法線上で基板に対峙する位置に配置する一方、第2のターゲットのスパッタ領域中央部位がマスク開口中央部と回転ドラムの回転中心を結ぶ前記法線に対し回転ドラムの回転方向と直交する方向に適宜変位した位置で基板に対峙する位置に配置した状態で各ターゲットをスパッタリングして成膜するようにしたものであるから次の効果を奏する。
【0025】
回転ドラムに装着された基板とマスク板はターゲットに対して、回転ドラムの回転で成膜する際に常に同一の幾何学的位置関係が維持される。従って成膜する各ファクタの位置関係が安定しているため回転ドラムに複数の基板を配置しても略々均一の膜層が形成され、基板毎の膜層にバラツキが生ずることがない。
【0026】
膜厚さが直線的に漸減するグラデーション領域層を基板との間に成膜ギャップを有するマスク開口から拡散するスパッタ粒子によって形成するものであるから、この粒子拡散はマスク開口の開口縁から周辺に向かって徐々に減衰する。従って従来の真空蒸着法における蒸着成分に比べ本発明のスパッタ粒子は極めて微細であるためマスク開口から周辺に拡散する際に光の拡散と同様に減衰し、基板上にはマスク開口の法線方向に均一な厚さの膜が生成され、その周辺には拡散角度に比例して徐々に減衰する厚さの膜(グラデーション領域層)が形成される。
【0027】
このグラデーション領域層をマスク開口の回転方向と直交する上下縁の周囲に拡散するスパッタ粒子で形成することによって、回転ドラムの回転による影響を抑えることが出来るため、より安定した(バラツキのない)膜厚さの減衰が得られる。
【0028】
また特に、本発明は、第1第2のターゲットをそれぞれ板形状に構成して基板表面と略々平行で、且つ第1のターゲットのスパッタ領域中央部位が前記マスク開口中央部と前記回転ドラムの回転中心を結ぶ法線上で前記基板に対峙する位置に、第2のターゲットのスパッタ領域中央部位が前記マスク開口中央部と前記回転ドラムの回転中心を結ぶ前記法線に対し前記回転ドラムの回転方向と直交する方向に適宜変位した位置で前記基板に対峙する位置に配置することで、グラデーション領域層を形成する金属膜層と誘電体膜層の直線的に漸減する膜厚さを各膜層毎に調整することが可能で、特に誘電体膜層の膜厚さを金属膜層領域内でほぼ均一に成膜することが出来ることから次の効果を奏する。
【0029】
光の減衰膜を光吸収性に富んだ金属膜と、誘電体膜とで層状に形成する際に例えば金属膜は直線的に光の吸収特性が変化する濃度勾配に形成し、誘電体膜は光の反射防止効果が損なわれない緩やかな濃度勾配に生成することが可能となる。特にこの膜勾配は第1ターゲットの中心を前記マスク開口のほぼ中央に配置するとともに、第2ターゲットの中心を第1ターゲットの中心に対し所定距離だけ変位した非対象位置に膜形成前に配置することによって簡単に行うことが出来る。
【0030】
減光膜を光の吸収特性に富んだ金属膜と光の透過量及び光の反射を防止する誘電体膜とで構成する場合に、金属膜は直線的な濃度勾配に、減光膜は反射防止を妨げない緩やかな濃度勾配に形成することによって、光減衰特性と反射防止特性に優れた減光フィルタを提供することが可能であり、その製造コストも安価に出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下図示の好適な実施の態様に基づいて本発明を詳述する。図3A、図3Bはターゲットから蒸着成分を飛翔させる概念図を示すもので、図4A、図4Bは回転ドラムに装着された基板とターゲットとの配置関係を示し、本発明に係わる成膜方法の概念構成を示すモデル図である。
【0032】
まず減光フィルタの成膜方法について説明するに、図8に示す減光フィルタ43は図5Fで最終生成膜の膜層構造を示すように基板(成膜ベース基材)10上に光吸収性の減光膜20を形成する。この減光膜20は均一厚さで均一な透光率を有する等濃度領域20aと膜厚さが漸減するグラデーション領域20bとに形成される。図示のものは光吸収性に富んだ金属膜層21と、光の透過量と反射を抑制する誘電体膜層22とから積層状に構成される。この金属膜層21と誘電体膜層22は積層状に複数段形成され、図示のものは基板、金属膜層、誘電体膜層、金属膜層、誘電体膜層の順に積層され、最上層にARコート層(Anti Refledion Coating)23が形成されている。これらの成膜物質については後述する。
【0033】
上述のように形成される減光フィルタ43は以下のように成膜する。
(1)上記金属膜層21と誘電体膜層22を反応性スパッタリングで形成する。図3Aに示すようにチャンバ30内のステージ31に基板10を装着し、この基板10と対向するようにターゲット32を配置する。この蒸着ステージ31はターゲット32に対して相対的に回転するように筒形状の回転ドラムで構成する。そしてターゲット32をカソード電極35に設置してステージ31との間にスパッタ電圧を印加する。このスパッタ電圧は例えば高周波電源から供給する。そこで略々真空状態のチャンバ30内に動作ガスを導入する。するとチャンバ内は動作ガスが反応性ガス状態となり、その電子或いはイオンが高速で移動し、ターゲット32に衝突する。この衝突でターゲット32からスパッタ粒子SPが飛翔し、基板10に付着する。
【0034】
(2)上記金属膜層21を光吸収性に富んだ金属物質のターゲット(第2ターゲット)で構成し、誘電体膜層22を誘電性物質(Si、Alなど)のターゲット(第1ターゲット)で構成する。そしてこの第1、第1ターゲット21、22を成膜する際に、通常ではスパッタリングする動作ガス(Arガス、Neガス)の成膜圧力Pを異ならせるか、若しくはターゲットに供給するスパッタ電源の電力量を異ならせるところ、この実施に於いては第1、第1ターゲット21、22を基板10の成膜面に対し非対称な位置に対峙するように配置することを特徴としている。このスパッタリング条件の調整については後述するがこのような条件下で誘電体膜層22は、この誘電性物質を動作ガスでスパッタリングして上記基板上にスパッタ粒子SPの被膜を形成した後、この被膜に反応性ガスを照射して生成された化合物で膜形成する。つまり、基板上にケイ素、アルミ合金などの粒子で被膜を形成し、次いで酸素ガス、窒素ガス、フッ素ガスなどの反応性ガスを照射する。これによって酸化膜、窒化膜、フッ化膜が生成される。
【0035】
(3)そこで上記基板10をチャンバ30内の回転ドラム(ステージ;以下同様)31に装着し、上記ターゲット32をカソード電極に装着する際に、ターゲット32を板状材料で面状蒸着源に構成すること、この板状材料を基板10の表面と略々平行に配置することを特徴としている。図3Aに示すように回転ドラム31の周上に装着された基板10と、この基板と距離L(飛翔距離)を隔ててターゲット32を平行に配置する。これによって面状蒸着源と基板10とは図3Bで示すX−X方向に均一な距離関係に保持される。
【0036】
次に、上記ターゲット32と基板10との間にマスク開口33を有するマスク板34を配置することを特徴としている。このマスク板34は回転ドラム31に基板10とセットで装着することが好ましい。そしてマスク板34と基板10との間には図3Bで示すように所定の成膜ギャップdを形成する。
【0037】
特に上述の基板10とマスク板34とは回転ドラム31の回転方向(Y−Y)と直交するマスク開口33の上下端縁33a、33bは少なくとも一方がY−Y方向と一致するように配置する。図示の上端縁33aと下端縁33bは互いに平行に形成され、この上下端縁33a、33bが回転ドラム31の回転方向と一致するようにマスク板34は回転ドラム31に装着されている。
【0038】
このような構成で回転ドラム31を所定速度で回転させ、基板10とターゲット32との間に高周波電圧を印加し、同時に動作ガスをチャンバ内に導入する。これによって基板上に膜形成される。このときの成膜状態は図3Bに示すように回転ドラム31の回転軸方向Y−Yでマスク開口33の上端縁33aと下端縁33bには成膜ギャップd内にスパッタ粒子SPの拡散によるグラデーション領域20bが生成される。また開口中央部には等濃度膜層20aが生成される。この成膜状態を説明すると、マスク開口33の周縁から外周方向にスパッタ粒子SPの拡散が発生する。このスパッタ粒子SPの拡散は原子或いは分子の微細粒子で光と同様の拡散現象が生ずることが知られている。そしてこの拡散は拡散角度θに対してコサイン関数で減衰することが究明されている。
【0039】
従って基板10上に生成されるマスク開口33の外周部に形成される膜厚さは図6Aに示す余弦曲線となり、同図6BにLxで示す直線成分に沿った膜厚さが生成される。そして本発明はこのような膜生成をターゲット32に対して回転する基板10の回転方向と直交する図4Aで示すX−X方向に形成したことを特徴としている。これによって回転ドラム31の回転の影響を受けることなく直線的に膜厚さが減衰するグラデーション領域20bを形成することが可能である。
【0040】
上記マスク板34の構成について説明すると、図3Bに示すように回転ドラム31に基板10を装着する。その具体的構成は図示しないが回転ドラム31に装着治具を介して取付ける。このとき基板10との間に枠状のスペーサ部材34Sを設け、このスペーサ部材34Sにマスク板34を取付ける。そしてマスク板34には成膜エリアに応じたマスク開口33が設けられ、この開口33の上端縁33aと下端縁33bの少なくとも一方は回転ドラム31の回転方向(Y−Y方向)と一致する線分を備えるように回転ドラム31に取付ける。そして上記スペーサ部材34Sで基板10との間に成膜ギャップdを形成する。この場合、成膜ギャップd(基板とマスク板との間隔)は、図6Bで示す所望(設計値)の成膜幅Δxに対して次式で求められる。[d=k×ΔX/tanθ]、この補正値k及び拡散角度θはチャンバ内雰囲気から実験値として求める。
【0041】
上述のように成膜されたグラデーション領域層は図6Aに実線で示すように理想的な成膜厚さ(同図破線)に略々近似した膜厚さが得られた。これに対し前述した前掲特許文献5の真空蒸着による成膜方法では同図に鎖線で示すような膜厚さとなる。これから明らかなように本発明の成膜方法では膜厚さは直線的に漸減し、その濃度勾配も光の透過率も直線的に減衰することとなる。
【0042】
以上説明した本発明の成膜方法について、具体的な実施形態を説明する。
【0043】
上述の基板10は透明ガラス又は合成樹脂板で構成する。合成樹脂の場合例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ノルボルネン系樹脂などを使用する。この他基板材質は使用環境に応じて好適な素材を選択する。
【0044】
前述の誘電体膜は、ケイ素或いはアルミなどの酸化物、窒化物、フッ化物で構成する。このためターゲット32はSi、Alの板状部材を使用する。
【0045】
前述の金属膜は、クロメル、ニオブ、チタンなどでの光吸収性に富んだ金属酸化物を使用する。
【0046】
上述のコーティング層23としてはフッ化マグネシウムなどの硬質性或いは撥水性に富んだ材料を使用する。この場合にはターゲット32として酸化マグネシウムを使用する。
【0047】
図7に示すスパッタリング装置について説明する。図7に示す装置は、チャンバ30を形成する外筐ケース30aと、このチャンバ30内に回転自在に内蔵された筒形状の回転ドラム31と、この回転ドラム31に距離を隔てて配置されたスパッタ電極35とで構成されている。
【0048】
上記チャンバ30内は略々真空に形成される。そしてチャンバ30内は複数のエリア36a〜36dに遮蔽板37で区割されている。図示のものは金属膜層21を成膜する第2のターゲット32a(以下「金属ターゲット」という)をスパッタリングする第1エリア36aと、誘電体膜層22を成膜する第2のターゲット32b(以下「誘電体ターゲット」という)をスパッタリングする第2エリア36bと、コーティング層23を成膜する第2のターゲット32c(以下「コート層ターゲット」という)をスパッタリングする第3エリア36cと、活性ガスを照射する第4エリア36dとに区割されている。そして第1、第2、第3エリア36a〜36cには一対のスパッタ電極35a、35bがそれぞれ内蔵されている。
【0049】
この金属ターゲット32aと誘電体ターゲット32bとは、図3Cで示すようにグラデーション領域20bの各成膜を形成するために、図3Dに示すよう金属ターゲット32aの成膜面に対する対峙位置32−1の中心部が成膜する成膜基準線(図中のニ点鎖線)に対し誘電体ターゲット32bの成膜面に対する対峙位置32−2、32−3は互いに成膜基準線(図中のニ点鎖線)に対し逆の方向に変位量eだけ変位して成膜面に対峙配置されている。尚、変位量eは先に説明した成膜幅Δxの幅によって予め調整し設定する。
【0050】
また、図4Bで示すように金属ターゲット32a及び誘電体ターゲット32bをそれぞれ一枚の板材を用いる場合には、上記対峙位置32−1、32−2、32−3の関係を取る為に、各対峙位置32−1、32−2、32−3に開口部を形成した開口板32cで覆うことで実施することが出来る。
【0051】
また、図4Cで示すように金属ターゲット32a及び誘電体ターゲット32bをそれぞれ各基板10に対応した数の板材を用いる場合には、上記対峙位置32−1、32−2、32−3の関係を取る為に、各対峙位置32−1、32−2、32−3に成るよう各スパッタ電極35a、35bに配置することで実施することが出来る。
【0052】
また一対のスパッタ電極35a、35bには高周波の交流電源に連結され、一方がカソード、他方がアノードとなるように配置されている。各スパッタ電極35a、35bは電源コイル35cに結線され、100KHz〜40MHzの高周波電力が印加されるように構成されている。そして上記基板10を装着する回転ドラム31にはバイアス電圧が印加されるようになっている。また、上記第1、第2、第3エリア36a〜36cの各スパッタ電極35a、35bにはターゲット32が装着されている。このターゲット32は板状材料で構成され、面状蒸着源を構成する。また上記第1、第2、第3エリア36a〜36cにはコントローラ38を介してアルゴン、ネオンなどの動作ガスが導入されるようになっている。図示38gはアルゴンガスの供給ボンベである。そして上記第4エリア36dにはコントローラ38を介して活性ガスが供給ボンベ38gから供給されるようになっている。
【0053】
第4エリア36dには反応性ガス発生室39が設けられ、供給ボンベ38gからのガスを反応性ガス化して第4エリア36d内に照射するように構成されている。このような装置構成で回転ドラム31を所定速度で回転し、第1エリア36aの金属ターゲット32aをスパッタリングして金属膜(例えばNb)を基板10上に付着し、次いで第2エリア36bの誘導体ターゲット32bをスパッタリングして誘電体膜(例えばSi)を基板10上に付着する。次いで第4エリア36dで活性ガス(例えばO2)を基板上に照射する。すると基板上の誘電体膜は酸化され酸化物(例えばSiO2)の膜を生成する。
【0054】
このように金属膜層21と誘電体膜層22とを複数層に積層した後、第3エリア36cのコート層ターゲット32cをスパッタリングして最上層にARコート層23を付着させる。
【0055】
このように本発明は減光フィルタ43を成膜する際に、回転ドラム31に基板10とマスク板34を装着し、この基板10に対して平行な面状蒸着源から膜成分のスパッタ粒子を飛翔させて成膜する。このときマスク板34と基板10との間には所定間隔の成膜ギャップdが形成されている。従ってマスク板34のマスク開口33に対応する基板10には等濃度膜層20aと、マスク開口33の上端縁33aと下端縁33bの周辺には膜厚さが直線的に漸減するグラデーション領域20bが形成される。
【0056】
そこで本発明は上述の金属膜層21と誘電体膜層22を次のように成膜することを特徴としている。これを図5A乃至図5C、及び図5D乃至図5Gに基づいて説明するが、同図では成膜圧力を変更する場合について説明する。同図5Aに示すように基板10上に第1の金属膜層21を成膜する場合は動作ガスの成膜圧力を所定圧力P1に設定する。このときのグラデーション領域の膜幅Δxは図示のようにゼロになるように成膜ギャップdが設定してある。
【0057】
次に図5Bに示す上記第1の金属膜層21の上に誘電体膜層22を成膜する場合は、ターゲット32bをスパッタリングする際に第2エリア36bに供給する動作ガスの成膜圧力P2を前記P1より大きい値に設定する。するとこの誘電体膜22は膜端縁に図示Δhの膜厚さを有する緩やかな濃度勾配に形成される。これはマスク開口33の端縁33aから拡散するスパッタ粒子の拡散角度θ2(θ2>θ1)が先の角度θ1より大きくなる為である。
【0058】
次に図5Cに示す上記第1の金属膜層21、第2の誘電体膜層22上に第2の金属膜層21を成膜する場合は前述の第1成膜(図5A)と同様の成膜条件(成膜圧力P1、拡散角度θ1)に設定する。これにより第1の膜層と同様に直線的な濃度勾配の膜が得られる。
【0059】
次に図5Dに示す上記第1の金属膜、第2の誘電体膜、第3の金属膜の上に誘電体膜を形成する場合は、前述の第2の成膜条件に設定する。これにより第2の成膜と同様に緩やかな濃度勾配で膜端にΔhの膜厚が形成される。
【0060】
このように、複数段に成膜された後、その表面層にはコーティング層23が成膜される。このコーティング層23は比較的硬質で撥水性に富んだ材料でコーティングし、内部の誘電体膜層と金属膜層が経時的に劣化しないように成膜する。この場合は、前述の誘電体膜と同様に膜厚さの勾配が出来るだけ緩やかな成膜条件に設定する。例えば成膜圧力P3を(P3≧P2)に設定する。
【0061】
図5Fに上述のように成膜した最終生成膜の膜層構造を示す。均一膜層は誘電体膜層と金属膜層がそれぞれ所定の膜厚さで構成され、グラデーション領域では膜厚さが直線的に漸減するように構成される。このとき金属膜層21の勾配に対し誘電体膜層の勾配は緩やかな角度に形成されている。そして図5Gに示すように膜端縁の膜厚さは金属膜層が「ゼロ」、誘電体膜層が「Δh」に形成されている。
【0062】
本発明に係わる光量調整装置Eは図8に示すように、地板40と、この地板40に形成された光路開口41に1枚若しくは複数枚の光量調整羽根42を開閉自在に配置する。そしてこの光量調整羽根42で光路開口41を通過する光量を大小調節する。図示のものは一対の羽根42a、42bで光量調整するように構成され、ぞれぞれの羽根には小絞り状態に光量調整するように狭窄部42x、42yが形成してある。そこでその一方の羽根42aには狭窄部42xに減光フィルタ43が添着してある。この減光フィルタ43は前述した基板10上に成膜した単濃度膜層20aとグラデーション領域20bをカットして形成されている。そして光路中心に向かうに従って光の透過率が高くなるように光量調整羽根42aに添着されている。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1Aは従来の減光フィルタの成膜方法のモデル図で装置構成の説明図。
図1Bは同装置構成の基板とマスク板の配置構成の説明図。
図2Aは図1Aに示す従来の減光フィルタの成膜方法のモデル図でグラデーション領域層の成膜モデル拡大説明図。
図2Bは同モデル図でその基板に成膜する状態の拡大説明図。
図3Aは本発明に係わる成膜方法の概念説明図で、装置上方から見た場合のターゲットから蒸着成分を飛翔させるモデル図。
図3Bは同概念説明図であり、装置横から見た場合のターゲットから蒸着成分を飛翔させるモデル図。
図3Cはターゲットの配置と成膜状態を説明する為の説明図。
図3Dは図3Cに対応したターゲットの配置関係を示す。
図4Aは回転ドラムを斜め上方から見た場合の基板とターゲットとの配置関係を示す。
図4Bは同横側面から見た場合の基板とターゲットとの配置関係を示す。
図4Cは図4Bと異なる同横側面から見た場合の基板とターゲットとの配置関係を示す。
図5Aは本発明に係わる減光フィルタの成膜方法であり、一層目の膜生成の説明図である。
図5Bは同二層目の膜生成の説明図である。
図5Cは同三層目の膜生成の説明図である。
図5Dは同四層目の膜生成の説明図である。
図5Eは同コーティング層の膜生成の説明図である。
図5Fは同減光フィルタの膜層断面図である。
図5Gは同グラデーション領域層の拡大断面図。
図6Aは本発明に係わる減光フィルタの成膜厚さと拡散距離との関係を示す模式図。
図6Bは同減光フィルタの濃度と成膜位置との関係図。
図7はスパッタリング装置の上面図。
図8は光量調整装置の配置を示す斜視図。
【符号の説明】
【0064】
d 成膜ギャップ
10 基板(成膜ベース基材)
20 薄膜層
20a 等濃度膜層
20b グラデーション膜層
21 金属膜層(第2ターゲット)
22 誘電体膜層(第1ターゲット)
23 コーティング層
31 ステージ(回転ドラム)
32 ターゲット
32a 第2のターゲット(金属ターゲット)
32b 第2のターゲット(誘導体ターゲット)
32c 第2のターゲット(コート層ターゲット)
33 マスク開口
34 マスク板
43 NDフィルタ
【図2B】

【図5F】

【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図4A】

【図4B】

【図4C】

【図5A】

【図5B】

【図5C】

【図5D】

【図5E】

【図5G】

【図6A】

【図6B】

【図6C】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜チャンバ内で異なる物質から成る少なくとも第1、第2のターゲットをスパッタリングして、基板に対し所定の成膜ギャップを形成し配置されたマスク開口を介し前記基板上に、前記第1のターゲット物質から成る金属膜層と前記第2のターゲット物質から成る誘電体膜層とを積層状に形成する減光フィルタの成膜方法であって、
(1)前記基板を前記成膜チャンバ内に配置された筒形状の回転ドラムに装着し、
(2)前記回転ドラムには前記マスク開口を有するマスク板を前記基板との間に所定の成膜ギャップを形成するように配置し、
(3)前記第1のターゲットは板状材料で前記基板表面と略々平行で、且つ第1のターゲットのスパッタ領域中央部位が前記マスク開口中央部と前記回転ドラムの回転中心を結ぶ法線上で前記基板に対峙する位置に配置され、
(4)前記第2のターゲットは板状材料で前記基板表面と略々平行で、且つ第2のターゲットのスパッタ領域中央部位が前記マスク開口中央部と前記回転ドラムの回転中心を結ぶ前記法線に対し前記回転ドラムの回転方向と直交する方向に適宜変位した位置で前記基板に対峙する位置に配置され、
前記回転ドラムを回転させながら前記第1、第2のターゲットにスパッタ電圧を印加することによって、前記基板には前記回転ドラムの回転方向と直交する方向に前記マスク板のマスク開口から前記成膜ギャップ内に生ずるスパッタ粒子の拡散で、膜厚さが漸減する前記金属膜層と、膜厚さがその金属膜層形成領域内でほぼ均一な誘電体膜層から成るグラデーション層が形成されることを特徴とする減光フィルタの成膜方法。
【請求項2】
前記基板とマスク板は前記回転ドラムの周側面に配置され、
この基板とマスク板との間に配置されたスペーサ部材によって前記成膜ギャップが形成され、
前記マスク板に形成されたマスク開口の上下端縁の少なくとも一方は、前記回転ドラムの回転方向と一致する直線上に配置し、
前記第1ターゲットのスパッタ領域中央部位を前記マスク開口のほぼ中央に配置するとともに、
前記第2ターゲットのスパッタ領域中央部位を前記マスク開口のほぼ中央に対し前記回転ドラムの回転方向と直交する方向に所定距離だけ変位した位置に配置して、前記誘電体膜層のグラデーション層の膜端縁が前記金属膜層のグラデーション層の膜端縁に対しマスク開口端より離間した位置に形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の減光フィルタの成膜方法。
【請求項3】
基板と、前記基板に異なる物質をスパッタリングして積層状に形成された金属膜層と誘電体膜層から構成されるグラデーション層を形成して成り、前記金属膜層と前記誘電体膜層は共に前記基板に対し勾配角を有し、しかも前記誘電体膜層の勾配角は前記金属膜層の前記基板との勾配角に対し小さく、且つ前記金属膜層形成領域内でほぼ均一な膜厚さを形成することを特徴とする減光フィルタ。
【請求項4】
撮像光路に配置され、撮像光量を調整する絞り羽根と、
前記絞り羽根に添着された減光フィルタと、から構成され、
前記減光フィルタは請求項3に記載の構成を備えていることを特徴とする撮像光量絞り装置。
【請求項5】
基板上に誘電体膜層層と金属膜層を積層状に成膜する減光フィルタの製造装置であって、
成膜チャンバと、
前記成膜チャンバ内に配置された筒形状の回転ドラムと、
前記回転ドラムに装着された複数の基板と、
前記成膜チャンバ内に区割された第1エリアに前記基板と距離を隔てて配置された金属物質から成る第1のターゲットと、
前記成膜チャンバ内に区割された第2エリアに前記基板と距離を隔てて配置された誘電性物質から成る第2のターゲットと、
前記成膜チャンバ内に区割された第3エリアに配置された反応性ガスの供給源と、
前記第1エリア及び第2エリアに配置されたスパッタリング用の動作ガス供給源と、
を備え、
前記基板を前記成膜チャンバ内に配置された筒形状の回転ドラムに装着し、
前記回転ドラムには前記マスク開口を有するマスク板を前記基板との間に所定の成膜ギャップを形成するように配置し、
前記第1のターゲットは板状材料で前記基板表面と略々平行で、且つ第1のターゲットのスパッタ領域中央部位が前記マスク開口中央部と前記回転ドラムの回転中心を結ぶ法線上で前記基板に対峙する位置に配置され、
前記第2のターゲットは板状材料で前記基板表面と略々平行で、且つ第2のターゲットのスパッタ領域中央部位が前記マスク開口中央部と前記回転ドラムの回転中心を結ぶ前記法線に対し前記回転ドラムの回転方向と直交する方向に適宜変位した位置で前記基板に対峙する位置に配置され、
前記回転ドラムを回転させながら前記第1、第2のターゲットにスパッタ電圧を印加することによって、前記基板には前記回転ドラムの回転方向と直交する方向に前記マスク板のマスク開口から前記成膜ギャップ内に生ずるスパッタ粒子の拡散で、膜厚さが漸減する前記金属膜層と、膜厚さがその金属膜層形成領域内でほぼ均一な誘電体膜層から成るグラデーション層を形成して成ることを特徴とする減光フィルタの製造装置。
【請求項6】
前記基板とマスク板は前記回転ドラムの周側面に配置され、
この基板とマスク板との間に配置されたスペーサ部材によって前記成膜ギャップが形成され、
前記マスク板に形成されたマスク開口の上下端縁の少なくとも一方は、前記回転ドラムの回転方向と一致する直線上に配置し、
前記第1ターゲットのスパッタ領域中央部位を前記マスク開口のほぼ中央に配置するとともに、
前記第2ターゲットのスパッタ領域中央部位を前記マスク開口のほぼ中央に対し前記回転ドラムの回転方向と直交する方向に所定距離だけ変位した位置に配置して、前記誘電体膜層のグラデーション層の膜端縁が前記金属膜層のグラデーション層の膜端縁に対しマスク開口端より離間した位置に形成して成ることを特徴とする請求項5に記載の減光フィルタの製造装置。

【公開番号】特開2010−49137(P2010−49137A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214935(P2008−214935)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】