説明

減圧弁

【課題】ハンチング抑制機能を備えたロードセンシング方式の油圧制御装置に好適な減圧弁を提供する。
【解決手段】弁本体12内に第1、第2の貫通孔14、16が形成され、第2の貫通孔にスプール18が摺動可能に収容されている。同スプールには第1ランド20、第2径小部22、第2ランド24、第1径小部26、第3ランド28が形成され、第1および第2ランドの外径D2は第3ランドの外径D1より大きく形成されている。減圧弁10の一次側LSINは前記第2径小部と第3ランド端面側に供給されている。また、二次側LSOUTは第1の貫通孔と接続されている。したがって、スプールの左右端面の受圧面積の差により第2径小部室V2と第1の貫通孔とが間断なく連通、遮断を繰り返し、結果として二次側の圧力を減圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧弁に係り、特に油圧作動の建設機械において、好適にはロードセンシング方式の油圧制御装置を構成する複数の制御弁と結合されてハンチング抑制機能を前記油圧制御装置に付与する減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ロードセンシングと呼ばれる流量制御方式は、1つのポンプで複数のアクチュエータを制御する油圧制御装置において、複数のアクチュエータの最高負荷圧力を検出し、ポンプの吐出圧力が検出圧力より一定の高い圧力になるように制御する方式である。このポンプ圧力に対する負荷圧力の差は通常、ロードセンシング差圧と呼ばれている。複数のアクチェータを作動させた場合に、ポンプ吐出圧力は複数のアクチュエータの最高負荷圧より高い圧力に制御されるため各アクチュエータに所定値の圧油を供給することが可能であり、更に必要な圧油のみを供給することで、近年、省エネルギ制御方式として注目されている。
【0003】
図5は、そのようなロードセンシング機能を利用した建設機械用の油圧制御装置の油圧回路の一般的な構成を示す。図5において、参照符号100は可変容量ポンプ102を駆動するエンジンを示し、同ポンプ102の吐出ラインLは制御弁ユニットCVLUを構成する圧力補償弁104、110に接続されている。これら圧力補償弁104、110の下流側にはスプール弁タイプの方向切換弁である制御弁106、112が配置されており、さらにこれら制御弁106、112には油圧アクチュエータであるシリンダ108、114がそれぞれ接続されている。参照符号116はシャトル弁であって、各制御弁106、112が動作状態にあるときそれぞれ破線で示される負荷圧検出ラインL1、L2のうち大きい方の負荷圧力をロードセンシング(以下LSという)のラインLSLに与えるようになっている。前記可変容量ポンプ102を含む制御ユニットCTUには、ポンプ吐出流量調整用の弁120が設けられておりその左側ポートにはロードセンシングラインLSLが接続されている。また、バネ122は目標とするロードセンシング圧力に対し常に所定の圧力を付加する差圧設定用として設けられている。参照符号118は可変容量ポンプ102の斜板角度を調整するシリンダであって前記弁120と接続されている。なお、図5に示される油圧回路においては、圧力補償弁104、110は、それぞれ制御弁106、112の上流側に配置されているが、制御弁106、112と各アクチュエータ108、114の間に配置される油圧回路や、各アクチュエータ108、114の下流側に配置されるものもあり、そのいずれの場合でも、負荷圧検出ラインL1、L2からシャトル弁116を介してロードセンシングラインLSLが形成されている。
【0004】
一方、前記圧力補償弁とロードセンシングLSとの関係を改善するものとして、油圧ポンプの吐出圧が複数のアクチュエータの最高負荷圧力より目標差圧だけ高くなるようロードセンシング制御しかつ複数の方向切換弁の前後差圧をそれぞれ圧力補償弁により制御する油圧式ショベル等の油圧駆動装置において、圧力補償弁のそれぞれの目標補償差圧を油圧ポンプの吐出圧と複数のアクチュエータの最高負荷圧力との差圧により設定し、かつロードセンシング制御の目標差圧をエンジンの回転数に依存する可変値として設定した油圧駆動装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1の図1には、上記の油圧駆動装置を具体化するものとして、差圧減圧弁からの2次圧力とロードセンシング制御の目標差圧とがそれぞれ導かれ、このうちのいずれか低い方の圧力を出力する低圧選択弁を設け、低圧選択弁の出力圧力を全ての圧力補償弁に導き、前記出力圧力を複数の圧力補償弁のそれぞれの目標補償差圧とすることにより、油圧式ショベル等の建設機械で、微操作時と、ある程度以上の流量を操作している時とで、方向切換弁前後の差圧が異なってしまうことがなく、建設機械の操作がやり易い回路構成を有する油圧駆動装置が開示されている。また、同特許文献1の図1に示されるように、複数の方向切換弁に対して1つの差圧減圧弁が配置されており、この差圧減圧弁の出口側はロードセンシングライン(PC2次圧力)に接続されポンプ傾斜角制御弁に与えられている。
【0006】
一方、可変容量ポンプと組合わせて用いるロードセンシング機能を備えた流量制御システムでは、一般に慣性が大きいものを負荷とするとき、ハンチングが起こりやすい。
【0007】
しかも、このような流量制御システムでは、負荷圧のフィードバック制御で流量を制御しているため、一旦、ハンチングが発生すると容易に抑えられない。このようなハンチングを防止してロードセンシング機能を発揮するための方法として、油圧ポンプから絶えず供給される作動油を最高負荷圧力信号から常時ブリードオフさせる量を増やす方法がある。しかしながら、この方法の場合、ハンチングが発生し易い負荷を効果的に制御するためには非常に大きなブリードオリフィスを選定する必要があり、常時、余分な流量をブリードオフさせて消費することとなって、効率の悪い流量制御システムとなる。
【0008】
そこで、ロードセンシング機能を備える多連型の流量制御システムに使用される油圧制御装置であって、小型で、且つ、流量特性を変化させて省エネルギを図ることができる油圧制御装置として、可変容量形ポンプで駆動する複数のアクチュエータの負荷圧力の中の最高負荷圧力を検出し、当該検出した最高負荷圧力よりも所定値だけ高くなるように前記可変容量形ポンプの吐出圧力を制御するロードセンシング機能を備えた多連型の流量制御システムに使用され、当該システム内の最高負荷圧力が供給される最高負荷圧力ポートを備える油圧制御装置において、前記可変容量形ポンプのポンプポートと可変オリフィスを介して連通する第1流路が入力ポートに接続され、アクチュエータと連通する第2流路が出力ポートに接続され、当該第2流路内の圧力に応じて前記第1流路の圧力を制御するために開口量が変化する絞りと、当該絞りを閉じる方向に力を作用させる圧力室とを有するコンペンセータと、前記可変オリフィス及びコンペンセータとは独立して作動し、前記第2流路内の圧力が当該システム内の他の連の最高負荷圧力よりも高い場合に前記第1流路の圧力を前記第2流路の圧力まで減圧し、当該減圧された圧力を前記最高負荷圧力ポートに供給する切換弁とを備え、当該切換弁を前記コンペンセータに内蔵するとともに、当該切換弁を、前記最高負荷圧力ポートの圧力と第2流路の圧力との偏差によってスライドし、当該スライドによって第1流路の圧力を最高負荷圧力ポートに導いて最高負荷圧力とする機能と、スライドによって最高負荷圧力である当該連の第2流路の圧力をコンペンセータの圧力室に導いて前記絞りを閉じる機能とを有するように構成し、当該切換弁から前記最高負荷圧力ポートに連なる流路に中間絞りを設けている油圧制御装置が開示されている(特許文献2)。
【0009】
前記特許文献2においては、その図3、図7、図9、図10に示されているように、減圧機能を与えるものであり、その段落0104には、「したがって、切換弁103からPLSポート180に連なる流路に設けた中間絞り145により、PLSポート180へ流れる作動油を負荷圧力の上昇に伴ってより減圧するので、これにより、負荷圧力が上昇すれば、図9(a) に実線で示すように、負荷圧力の上昇に伴って負荷への流量が減少するような流量特性を持たせることができる。図9(a) の一点鎖線は、従来の流量一定となった特性である。」と記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開2002−323004 「油圧駆動装置」
【特許文献2】特開2005−140253 「油圧制御装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1においては、ロードセンシング方式の油圧制御装置におけるハンチングの発生を抑制することについては課題とされていない。また、差圧減圧弁の構造自体については特に示されていない。
【0012】
また、前記特許文献2においては、各方向切換弁の内部に減圧機能を持たせる中間絞りを形成するものであり、当該油圧制御装置の複数の制御弁である方向切換弁1つ1つに中間絞りを備えるものである。したがって、既存の稼動している建設機械における油圧制御弁をそのまま利用し且つ減圧機能を持たせるようにすることは純技術的には可能であるものの、実際には各制御弁を大幅に改造することが必要であって現実的には困難である。
【0013】
前記特許文献2で記載されていることに加え、従来のロードセンシング制御方式を採用した場合、負荷圧力に関わらず圧油を供給することは可能であるが、高い負荷圧力を有するアクチュエータや慣性が大きいアクチュエータあるいは負荷圧力が変動するような場合、当該負荷に対し一定の負荷圧力より高い圧力を供給し続けると、アクチュエータが振動(ハンチング)し、その反作用によって当該機体自体、更には、当該建設機械の操縦者が機体と共に振動し、それにより操作レバーを動かしてしまい振動を増幅させ、更には操縦者はその振動によって不快感を覚えるという問題がある。
【0014】
本発明者は、上記の問題点を解決すべく種々検討・研究を行った結果、当該建設機械の油圧アクチュエータと油圧的に接続された油圧制御弁とは別体構造の単一の減圧弁をロードセンシングライン上に配置することによって前記ハンチング発生の問題が基本的に解決できることを見出した。
【0015】
したがって、本発明の目的は、好適には、ロードセンシング方式を採用した油圧制御装置において、アクチュエータがハンチングを起こさず、更にまた、仮令、アクチュエータがハンチングを発生した場合にも速やかにこれを減衰させて、良好な操作性を得られることを可能にするロードセンシング方式の油圧制御装置に用いられる減圧弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため、本発明に係る、好適にはロードセンシング方式の油圧制御装置に用いられる減圧弁は、内部に第1の貫通孔と第1の貫通孔の一端側に開口形成された第2の貫通孔とを有する弁本体と、同弁本体に設けられ前記第2の貫通孔に連通する一次側ポートおよび前記第1の貫通孔に連通する二次側ポートと、前記第2の貫通孔内に摺動可能であってその一端側は前記第1の貫通孔に臨み、その他端側は前記第2の貫通孔に臨むよう配置されてなるスプールと、前記弁本体に設けられた第1および第2の貫通孔のそれぞれの一端部を弁本体外部から封止する栓と、を備えると共に、前記第2の貫通孔は、一側が前記第1の貫通孔に隣接する第2ゾーンと同第2ゾーンの他側に隣接する第1ゾーンからなり同第2ゾーンの内径は第1ゾーンの内径より大きく形成されており、前記スプールの前記第2ゾーンに対応する内径部に摺接する外周には同一径の第1ランドおよび第2ランドが形成されるとともに同第1ランドおよび第2ランドの間には第2径小部室が形成されており、さらに前記第2ゾーンに対応する内径部に摺接する前記スプールの外周には第3ランドが形成され、同第3ランドと前記第2ランドとの間には第1径小部室が形成されており、さらに、前記第2径小部室ならびに前記スプールの他端側が臨む前記第2の貫通孔端部には前記一次側ポートが連通されており、前記第1径小部室はドレンに接続されていることを特徴とする。
【0017】
その場合、前記第1の貫通孔と第1の貫通孔の一端側に開口形成された第2の貫通孔とは段部を介して隣接形成され、第1の貫通孔の内径は第2の貫通孔の内径より大きく形成すると共に前記第1の貫通孔にはバネ受けを設け同バネ受けに取付けられたバネにより前記スプールを初期設定位置に付勢するように構成することが好ましい。
【0018】
また、その場合、前記第2径小部ならびに前記スプールの他端側が臨む前記第2の貫通孔の端部への一次側ポートの連通は前記弁本体内に分岐路を設けて連通されるよう構成してもよい。
【0019】
また、前記目的を達成するため、本発明に係る、ロードセンシング方式の油圧制御装置は、複数の油圧アクチュエータへの圧油の給排を行うよう接続された複数の油圧制御弁を備え、各油圧アクチュエータの負荷を検出しその最高負荷圧をロードセンシングラインを介して可変容量ポンプの流量調整機構にフィードバックするようにした油圧制御装置において、前記ロードセンシングラインにはロードセンシング圧力を一次側圧力として受け入れその二次側圧力が一次側圧力に比例し且つ逓減する単一の減圧弁を接続して前記油圧アクチュエータのハンチングを抑制したことを特徴とする。
【0020】
その場合、前記減圧弁は、内部に第1の貫通孔と第1の貫通孔の一端側に開口形成された第2の貫通孔とを有する弁本体と、同弁本体に設けられ前記第2の貫通孔に連通する一次側ポートおよび前記第1の貫通孔に連通する二次側ポートと、前記第2の貫通孔内に摺動可能であってその一端側は前記第1の貫通孔に臨み、その他端側は前記第2の貫通孔に臨むよう配置されてなるスプールと、前記弁本体に設けられた第1および第2の貫通孔のそれぞれの一端部を弁本体外部から封止する栓と、を備えると共に、前記第2の貫通孔は、一側が前記第1の貫通孔に隣接する第2ゾーンと同第2ゾーンの他側に隣接する第1ゾーンからなり同第2ゾーンの内径は第1ゾーンの内径より大きく形成されており、前記スプールの前記第2ゾーンに対応する内径部に摺接する外周には同一径の第1ランドおよび第2ランドが形成されるとともに同第1ランドおよび第2ランドの間には第2径小部室が形成されており、さらに前記第1ゾーンに対応する内径部に摺接する前記スプールの外周には第3ランドが形成され、同第3ランドと前記第2ランドとの間には第1径小部室が形成されており、さらに、前記第2径小部ならびに前記スプールの他端側が臨む前記第2の貫通孔の端部には前記一次側ポートが連通されており、前記第1径小部室はドレンに接続されるよう構成することができる。
【0021】
またその場合、前記第1の貫通孔と第1の貫通孔の一端側に開口形成された第2の貫通孔とは段部を介して隣接形成され、第1の貫通孔の内径は第2の貫通孔の内径より大きく形成すると共に前記第1の貫通孔にはバネ受けを設け同バネ受けに取付けられたバネにより前記スプールを初期設定位置に付勢するよう攻勢することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載された本発明による減圧弁によれば、第1ランドと第3ランドの外周径を適宜の比率に設定することにより、減圧弁の圧力逓減率を任意に設定できる。
【0023】
また、請求項4に記載された本発明による油圧制御装置によれば、ロードセンシングライン上に単一の減圧弁を配置することにより油圧アクチュエータのハンチング発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施例について、添付図面を参照し詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明による減圧弁10のスプール軸方向縦断面を示す。同図1において、弁本体12の中心部には左方より第1の貫通孔14が形成され、同貫通孔14右方には段部14Aを介して隣接する第2の貫通孔16が形成されている。この貫通孔16にはスプール18が摺動可能に収容されている。第2の貫通孔16は、図の左方からゾーンZN2とそれに隣接する右方側のゾーンZN1に区画されている。貫通孔16のゾーンZN2における内径はD2に形成され、一方、ゾーンZN1の内径はD1であって、ここで内径D2はD1より若干大きくなるよう形成されている。なお、ゾーンZN1の内径D1は弁本体12に形成された凹部30に挿入固定されているスリーブ30の内径に対応している。貫通孔14の左端および貫通孔16の右端はそれぞれねじ付の栓32および36とoリング34および38により封止されている。
【0026】
前記ゾーンZN2に対応するスプール18の外周部分には、左方より第1ランド20、第2径小部22、第2ランド24が形成されており、第1ランド20と第2ランド24の外周径は等しい(D1)。前記第2径小部22と貫通孔16の内周面およびその左右のランド側面で囲まれた第2径小部室V2には減圧弁10の一次側LSINの圧油が与えられている。一方、スプール18の外周部分の第2ランド24と第3ランド28との間には第1径小部26が形成されており、この第1径小部26と貫通孔16すなわち、スリーブ32の内周面およびその左右のランド側面で囲まれた第1径小部室V1はドレンDRに連通接続されている。
【0027】
さらに、スプール18の右端部は第2の貫通孔16の右端部に臨んでおり、同貫通孔16右端部には連通流路40を介して減圧弁10の一次側LSINの圧油が与えられている。
【0028】
前記スプール18の第1ランド20の左端側は段部を介して径小軸部18Aが形成されそこにバネ受け44が嵌入されていてバネ46の右端部を支持している。参照符号42はバネ46のガイド部材であって栓32の右端に取付けられている。バネ46はスプール18の初期位置すなわち、スプール18の右端面が前記栓36に当接するよう作用している。前記貫通孔14内の圧力は減圧弁10の2次側LSOUTの圧力を構成しており、これを取り出す流路SCLが弁本体12内に形成されている。なお、図では、減圧弁10の一次側LSINの圧油は弁本体12の外側で分岐してそれぞれ前記第2径小部室および連通流路40に与えられているが、この分岐部を弁本体12内部に形成されるようにしてもよい。
【0029】
なお、参照符号50、52は弁本体12を他の部材に取付けるためのねじ孔である。
【0030】
図2のEQは、図1に示した減圧弁10の等価油圧回路の構成を示すものである。
【0031】
図3は減圧弁10の一次側LSIN、2次側LSOUTの関係を示す理論式およびパラメータαによる減圧弁10の特性の変化を示すグラフである。
【0032】
図4は減圧弁10の特性変化の実測データを示すグラフである。
【0033】
次に、主として図1を参照して減圧弁10の作用について説明する。
【0034】
減圧弁10の一次側LSINに圧油が供給されていないときにはスプール18は前述のように、バネ46の右方への付勢により初期位置である右端位置に保持されている。ここで一次側LSINに圧油が供給されると連通流路40を介して圧油が第1の貫通孔16右端部へ伝達され、したがって、スプール18はその右端面(その外径はD1)の受圧面積すなわち、A1(=πD1/4)に作用する圧油により左方へ移動する。
【0035】
このスプール18の移動により第1径小部室V1の油はドレンDRへ徐々に排出される。一方、一次側LSINと連通接続されている第2径小部室V2の圧油はそのまま同室V2に留まった状態で移動される。スプール18の左方移動により第1ランド20の左端部が段部14Aを過ぎさらに第1ランド20の右端部が段部14Aを過ぎると、前記第2径小部室V2の圧油は貫通孔14と連通し同貫通孔14内の圧力が上昇し、その結果スプール18の第1ランド(その外径はD2)の左端面の受圧面積すなわち、A2(=πD2/4)には第2径小部室V2の圧油圧力が作用する。外径D2の方がD1より大きく形成されているので、スプール18は右端側受圧面からの作用力に勝る左端側受圧面からの作用力により押し戻されて右方へ移動する。その結果、第1ランド右端部が再び段部14Aを過ぎて右方へ戻ると前記第2径小部室V2と貫通孔14との連通が遮断される。すると、前記スプール18の右端面に作用する圧油の作用力が優勢となって再びスプール18を左方へ移動させることとなる。以下このようなプロセスが微小な時間間隔で繰り返されることとなり、第1の貫通孔14内の圧力すなわち、減圧弁10の2次側の圧力は、1次側の圧力に比べ、平均的にはほぼ前記受圧面積A1とA2の比に応じた減圧値となる。図2の破線で示すF1はスプール18の右端面に作用する作用力を示し、F2はスプール18の左端面に作用する作用力をそれぞれ示している。
【0036】
図3中の式は、減圧弁10の2次側圧力PLSOUTと1次側圧力PLSINとの関係式を示しており、ここでkはバネ46のバネ定数、x1はバネ46の初期変位量、xはスプール18の変位量を示す。同式中の第2項であるk(x1+x)/A2は、第1項に比べ非常に小さいので、実質上、減圧弁10の2次側圧力PLSOUTは1次側圧力PLSINとα(=A1/A2)により定まる。すなわち、減圧弁10の2次側圧力PLSOUTはその1次側圧力PLSINに受圧面積比を乗じた値となる。
【0037】
図4は第1および第2ランドの外径D2を10mmとした場合で、第3ランドの外径D1をそれぞれ9.85mm、9.70mmとしたときの減圧の状況を示す。同図4において、例えばD1が9.70mmの場合、1次側圧力PLSINが30MPaのときおよそ2MPaの減圧効果を得ることができる。同図4で参照符号RFはD1が10mmすなわちD1=D2であって減圧効果がほとんどない状態を示す。
【0038】
こうした減圧弁10を例えば図5のロードセンシングラインLSL上に鎖線で示すように配置することで可変容量ポンプ102の吐出流量調整機構を構成しているポンプ吐出流量調整用の弁120への供給圧力を減圧して与えることができる。
【0039】
なお、上述した説明から明らかなように、減圧弁10の減圧のメカニズムにおいて、バネ46はスプール18の初期位置設定の役割以外に、本質的な機能を有するものではないので減圧弁のコンパクト化のために例えば、バネを使用しないことも可能である。その場合、スプール18の初期位置の設定を行うため、例えば、図1のガイド部材42の右端部と、それに対向するスプール18の左端部に同極性の永久磁石を埋め込んでその反発力を利用しスプール18の初期位置を設定することも可能である。また、その場合、第1の貫通孔の内径は、スプール18の左行により第1ランド20の右端部が段部14Aに達したとき第2径小部室V2と貫通孔16との連通が直ちに遂行される程度に開口されていればよく、必ずしもバネ46を収容するための内径とする必要はない。
【0040】
以上、本発明の好適な実施例について例示した図面により説明したが、当業者であれば、上述した実施例および図面により本発明が開示した技術的思想に基づいて種々の変形を行うことが可能である。しかし、そうした種々の変形は本発明の範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による減圧弁のスプール軸方向縦断面を示す。
【図2】図1の減圧弁の等価な油圧回路を示す図である。
【図3】本発明による減圧弁の減圧の理論特性を説明するグラフである。
【図4】本発明による減圧弁の実測された減圧特性を示すグラフである。
【図5】ロードセンシング機能を備えた油圧制御装置の一般的な油圧回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10 減圧弁
12 弁本体
14 第1の貫通孔
14A 段部
16 第2の貫通孔
18 スプール
18A 径小軸部
20 第1ランド
22 第2径小部
24 第2ランド
26 第1径小部
28 第3ランド
30 スリーブ
32 栓
34 oリング
36 栓
38 oリング
40 連通通路
42 ガイド部材
44 バネ受け
46 バネ
50、52 ねじ孔
100 エンジン
102 可変容量ポンプ
104,110 圧力補償弁
106、112 制御弁
108、114 アクチュエータ
116 シャトル弁
118 シリンダ
120 ポンプ吐出量調整弁
122 目標ロードセンシング差圧設定ばね
A1、A2 受圧面積
CTU 制御ユニット
CVLU 制御弁ユニット
D1 第3ランドの外径
D2 第1および第2ランドの外径
DRN ドレン
L1、L2 負荷検出ライン
LSL ロードセンシングライン
LSIN 一次側ポート
LSOUT 二次側ポート
V1 第1径小室
V2 第2径小室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に第1の貫通孔と第1の貫通孔の一端側に開口形成された第2の貫通孔とを有する弁本体と、
同弁本体に設けられ前記第2の貫通孔に連通する一次側ポートおよび前記第1の貫通孔に連通する二次側ポートと、
前記第2の貫通孔内に摺動可能であってその一端側は前記第1の貫通孔に臨み、その他端側は前記第2の貫通孔に臨むよう配置されてなるスプールと、
前記弁本体に設けられた第1および第2の貫通孔のそれぞれの一端部を弁本体外部から封止する栓と、を備えると共に、
前記第2の貫通孔は、一側が前記第1の貫通孔に隣接する第2ゾーンと同第2ゾーンの他側に隣接する第1ゾーンからなり前記第2ゾーンの内径は第1ゾーンの内径より大きく形成されており、
前記スプールの前記第2ゾーンに対応する内径部に摺接する外周には同一径の第1ランドおよび第2ランドが形成されるとともに同第1ランドおよび第2ランドの間には第2径小部が形成されており、さらに前記第1ゾーンに対応する内径部に摺接する前記スプールの外周には第3ランドが形成され、同第3ランドと前記第2ランドとの間には第1径小部が形成されており、さらに、
前記第2径小部ならびに前記スプールの他端側が臨む前記第2の貫通孔の端部には前記一次側ポートが連通されており、前記第1径小部はドレンに接続されていることを特徴とする減圧弁。
【請求項2】
前記第1の貫通孔と第1の貫通孔の一端側に開口形成された第2の貫通孔とは段部を介して隣接形成され、第1の貫通孔の内径は第2の貫通孔の内径より大きく形成すると共に前記第1の貫通孔にはバネ受けを設け同バネ受けに取付けられたバネにより前記スプールを初期設定位置に付勢するようにした請求項1に記載の減圧弁。
【請求項3】
前記第2径小部ならびに前記スプールの他端側が臨む前記第2の貫通孔の端部への一次側ポートの連通は前記弁本体内に分岐路を設けて連通されていることを特徴とする請求項1または2に記載の減圧弁。
【請求項4】
複数の油圧アクチュエータへの圧油の給排を行うよう接続された複数の油圧制御弁を備え、各油圧アクチュエータの負荷を検出しその最高負荷圧をロードセンシングラインを介して可変容量ポンプの流量調整機構にフィードバックするようにした油圧制御装置において、前記ロードセンシングラインにはロードセンシング圧力を一次側圧力として受け入れその二次側圧力が一次側圧力に比例し且つ逓減する単一の減圧弁を接続して前記油圧アクチュエータのハンチングを抑制したことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項5】
前記減圧弁は、内部に第1の貫通孔と第1の貫通孔の一端側に開口形成された第2の貫通孔とを有する弁本体と、
同弁本体に設けられ前記第2の貫通孔に連通する一次側ポートおよび前記第1の貫通孔に連通する二次側ポートと、
前記第2の貫通孔内に摺動可能であってその一端側は前記第1の貫通孔に臨み、その他端側は前記第2の貫通孔に臨むよう配置されてなるスプールと、
前記弁本体に設けられた第1および第2の貫通孔のそれぞれの一端部を弁本体外部から封止する栓と、を備えると共に、
前記第2の貫通孔は、一側が前記第1の貫通孔に隣接する第2ゾーンと同第2ゾーンの他側に隣接する第1ゾーンからなり前記第2ゾーンの内径は第1ゾーンの内径より大きく形成されており、
前記スプールの前記第2ゾーンに対応する内径部に摺接する外周には同一径の第1ランドおよび第2ランドが形成されるとともに同第1ランドおよび第2ランドの間には第2径小部が形成されており、さらに前記第1ゾーンに対応する内径部に摺接する前記スプールの外周には第3ランドが形成され、同第3ランドと前記第2ランドとの間には第1径小部が形成されており、さらに、
前記第2径小部ならびに前記スプールの他端側が臨む前記第2の貫通孔の端部には前記一次側ポートが連通されており、前記第1径小部はドレンに接続されていることを特徴とする請求項4に記載された油圧制御装置。
【請求項6】
前記第1の貫通孔と第1の貫通孔の一端側に開口形成された第2の貫通孔とは段部を介して隣接形成され、第1の貫通孔の内径は第2の貫通孔の内径より大きく形成すると共に前記第1の貫通孔にはバネ受けを設け同バネ受けに取付けられたバネにより前記スプールを初期設定位置に付勢するようにした請求項5に記載の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−249583(P2007−249583A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71823(P2006−71823)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】