説明

測位システム、位置情報提供装置、位置情報管理装置、及び測位方法

【課題】複数の通信網を利用可能な通信端末に係る測位支援をより効率的に行う。
【解決手段】測位システム10のSUPLサーバ20では、通信端末60から通知される通信端末60の接続先を特定する情報から、通信端末60がどちらの通信網に接続しているかを判断し、その情報をSUPLサーバ20から位置情報管理装置30に対して通知している。この結果、位置情報管理装置30において、通信端末60が接続していない通信網に対して、通信端末60の測位に利用するための位置情報の提供を要求することが抑制され、複数の通信網を利用可能な通信端末に係る測位支援をより効率的に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末による測位を支援する測位システム及びこの測位システムに含まれる位置情報提供装置、位置情報管理装置、そしてこの測位システムによる測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(ThirdGeneration Partnership Project)によって標準化された通信方式(以下、3G方式)において、携帯電話等の通信端末を用いた測位が一般的に行われている。通信端末による測位方法としては、GPS衛星からの電波のみを受信して測位する単独測位方式では測位時間の長期化及び通信端末における消費電力の増大等が懸念される。このため、GPS衛星の位置等の捕捉情報(アシストデータ)を測位支援サーバから通信端末に対して送信することにより測位時間の短縮を図るネットワークアシスト方式が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−175824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、3G方式に対して、新しい通信方式であるLTE(Long Term Evolution)が提案されている。LTEを利用する通信端末が3G方式を利用することも可能な仕様とした場合、この通信端末は2種類の通信方式を併用できる。また、3G方式とLTEとが併用される通信端末に関しては、3G方式において通信端末が在圏する通信エリアを管轄する交換機に係る情報と、LTE方式において通信端末が在圏する通信エリアを管轄する交換機に係る情報と、が加入者情報データベースに格納されることとなる。
【0005】
しかしながら、通信端末が実際にどちらの通信方式を利用して通信接続を行っているかに係る情報は、加入者情報データベースにおいて保持されない。このため、通信端末に係る測位要求を受信した測位支援装置は、測位結果を送信するためには、2種類の通信方式における交換機の双方に対して通信端末が通信接続を行っているかを問い合わせることで通信端末が通信を行っている通信エリアを特定する必要がある。このように、複数の通信方式で通信可能な通信端末に対しての測位支援を行う場合、測位支援装置による通信量が増加してしまう。また、測位支援装置による測位結果の送信のための通信量が増加することにより、測位結果の送信が遅延する可能性がある。
【0006】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、複数の通信網を利用可能な通信端末に係る測位支援をより効率的に行うことが可能な測位システム及びこの測位システムに含まれる位置情報提供装置、位置情報管理装置、そしてこの測位システムによる測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る測位システムは、互いに異なる第1の通信網及び第2の通信網に対して接続可能な通信端末に係る位置情報を提供する位置情報提供装置と、当該位置情報提供装置が提供する位置情報を前記第1の通信網又は前記第2の通信網から取得する位置情報管理装置とにより構成される測位システムであって、前記位置情報提供装置は、前記通信端末が前記第1の通信網に接続する場合に前記第1の通信網を特定する情報が含まれ、前記通信端末に係る位置情報の提供を要求するための位置情報提供要求を受信する位置情報提供要求受信手段と、前記位置情報提供要求受信手段により受信された前記位置情報提供要求に前記第1の通信網を特定する情報が含まれるか判断し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれる場合には、当該第1の通信網を特定する情報と前記通信端末を特定する情報とを含む情報を端末情報として前記位置情報管理装置へ送信し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれない場合には、前記通信端末を特定する情報を当該端末情報として前記位置情報管理装置へ送信する端末情報送信手段と、前記端末情報送信手段が前記位置情報管理装置へ前記端末情報を送信することによって前記位置情報管理装置から送信される前記通信端末の位置情報を前記位置情報提供要求の送信元へ送信する位置情報提供手段と、を備え、前記位置情報管理装置は、前記通信端末が前記第1の通信網及び前記第2の通信網において接続可能な通信エリアを特定する情報を、前記通信端末を特定する情報に対応付けて格納する在圏情報格納手段と、前記位置情報提供装置から転送された前記端末情報を受信する端末情報受信手段と、前記端末情報受信手段により取得された前記端末情報に、前記第1の通信網を特定する情報が含まれるか否かを判断し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれている場合には、前記在圏情報格納手段により取得された前記第1の通信網の前記位置登録エリアに含まれる通信エリアに係る位置情報を前記第1の通信網から取得し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれていない場合には、前記在圏情報格納手段により取得された前記第2の通信網の前記位置登録エリアに含まれる通信エリアに係る位置情報を前記第2の通信網から取得する位置情報取得手段と、前記位置情報取得手段により取得された位置情報を、前記通信端末を特定する情報に対応付けて前記位置情報提供装置に対して送信する位置情報送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る測位システムに含まれる位置情報提供装置は、互いに異なる第1の通信網及び第2の通信網に対して接続可能な通信端末に係る位置情報を提供する位置情報提供装置と、当該位置情報提供装置が提供する位置情報を前記第1の通信網又は前記第2の通信網から取得する位置情報管理装置とにより構成される測位システムに含まれる位置情報提供装置であって、前記通信端末が前記第1の通信網に接続する場合に前記第1の通信網を特定する情報が含まれ、前記通信端末に係る位置情報の提供を要求するための位置情報提供要求を受信する位置情報提供要求受信手段と、前記位置情報提供要求受信手段により受信された前記位置情報提供要求に前記第1の通信網を特定する情報が含まれるか判断し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれる場合には、当該第1の通信網を特定する情報と前記通信端末を特定する情報とを含む情報を端末情報として前記位置情報管理装置へ送信し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれない場合には、前記通信端末を特定する情報を当該端末情報として前記位置情報管理装置へ送信する端末情報送信手段と、前記端末情報送信手段が前記位置情報管理装置へ前記端末情報を送信することによって前記位置情報管理装置から送信される前記通信端末の位置情報を前記位置情報提供要求の送信元へ送信する位置情報提供手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る測位システムに含まれる位置情報管理装置は、互いに異なる第1の通信網及び第2の通信網に対して接続可能な通信端末に係る位置情報を提供する位置情報提供装置と、当該位置情報提供装置が提供する位置情報を前記第1の通信網又は前記第2の通信網から取得する位置情報管理装置とにより構成される測位システムに含まれる位置情報管理装置であって、前記通信端末が前記第1の通信網及び前記第2の通信網において接続可能な通信エリアを特定する情報を、前記通信端末を特定する情報に対応付けて格納する在圏情報格納手段と、前記位置情報提供装置から転送された前記通信端末を特定する情報を含む端末情報を受信する端末情報受信手段と、前記端末情報受信手段により取得された前記端末情報に、前記第1の通信網を特定する情報が含まれるか否かを判断し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれている場合には、前記在圏情報格納手段により取得された前記第1の通信網の前記位置登録エリアに含まれる通信エリアに係る位置情報を前記第1の通信網から取得し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれていない場合には、前記在圏情報格納手段により取得された前記第2の通信網の前記位置登録エリアに含まれる通信エリアに係る位置情報を前記第2の通信網から取得する位置情報取得手段と、前記位置情報取得手段により取得された位置情報を、前記通信端末を特定する情報に対応付けて前記位置情報提供装置に対して送信する位置情報送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る測位システム、そして測位システムに含まれる位置情報提供装置及び位置情報管理装置によれば、位置情報提供装置において、通信端末からの位置情報提供要求に第1の通信網を特定する情報が含まれているかに基づいて、通信端末が第1の通信網に接続しているか否かが判断される。そしてその結果が位置情報提供装置から位置情報管理装置に対して送信され、位置情報管理装置においては、位置情報提供装置から通知された通信端末の接続先を示す情報に基づいて、通信端末が接続する通信網が第1の通信網であるか第2の通信網であるかが判断される。この判断の結果に基づき、接続していると判断された通信網における通信端末が接続可能な通信エリアの位置情報を、位置登録エリアを特定する情報に基づいて取得し、その結果が位置情報管理装置から位置情報提供装置を介して、通信端末に通知される。このように、位置情報を取得する前に通信端末が接続する通信網を特定する処理を行うことで、通信端末が接続していない通信網に対して位置情報の問い合わせを行うことを抑制できるため、複数の通信網を利用可能な通信端末に係る測位支援をより効率的に行うことが可能となる。
【0011】
なお、本発明は、上記のように測位システムの発明として記述できる他に、以下のように測位方法の発明としても記述することができる。これはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0012】
すなわち、本発明に係る測位方法は、互いに異なる第1の通信網及び第2の通信網に対して接続可能な通信端末に係る位置情報を提供する位置情報提供装置と、前記通信端末が前記第1の通信網及び前記第2の通信網において在圏する通信エリアを特定する情報を、前記通信端末を特定する情報に対応付けて格納する在圏情報格納手段を備え、当該位置情報提供装置が提供する位置情報を前記第1の通信網又は前記第2の通信網から取得する位置情報管理装置とにより構成される測位システムによる測位方法であって、前記位置情報提供装置の位置情報提供要求受信手段により、前記通信端末が前記第1の通信網に接続する場合に前記第1の通信網を特定する情報が含まれ、前記通信端末に係る位置情報の提供を要求するための位置情報提供要求を受信する位置情報提供要求受信ステップと、前記位置情報提供装置の端末情報送信手段により、前記位置情報提供要求受信ステップにおいて受信された前記位置情報提供要求に前記第1の通信網を特定する情報が含まれるか判断し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれる場合には、当該第1の通信網を特定する情報と前記通信端末を特定する情報とを含む情報を端末情報として前記位置情報管理装置へ送信し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれない場合には、前記通信端末を特定する情報を当該端末情報として前記位置情報管理装置へ送信する端末情報送信ステップと、前記位置情報提供装置の位置情報提供手段により、前記端末情報送信ステップにおいて前記位置情報管理装置へ前記端末情報を送信することによって前記位置情報管理装置から送信される前記通信端末の位置情報を前記位置情報提供要求の送信元へ送信する位置情報提供ステップと、前記位置情報管理装置の端末情報受信手段により、前記位置情報提供装置から転送された前記端末情報を受信する端末情報受信ステップと、前記位置情報管理装置の位置情報取得手段により、前記端末情報受信ステップにおいて取得された前記端末情報に、前記第1の通信網を特定する情報が含まれるか否かを判断し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれている場合には、前記在圏情報格納手段により取得された前記第1の通信網の前記位置登録エリアに含まれる通信エリアに係る位置情報を前記第1の通信網から取得し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれていない場合には、前記在圏情報格納手段により取得された前記第2の通信網の前記位置登録エリアに含まれる通信エリアに係る位置情報を前記第2の通信網から取得する位置情報取得ステップと、前記位置情報管理装置の位置情報送信手段により、前記位置情報取得ステップにより取得された位置情報を、前記通信端末を特定する情報に対応付けて前記位置情報提供装置に対して送信する位置情報送信ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の通信網を利用可能な通信端末に係る測位支援をより効率的に行うことが可能な測位システム及びこの測位システムに含まれる位置情報提供装置、位置情報管理装置、そしてこの測位システムによる測位方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る通信システムの構成を説明するブロック図である。
【図2】測位システムに含まれる各装置のハードウェア構成を示す図である。
【図3】通信端末のハードウェア構成を示す図である。
【図4】HLRに格納される位置登録情報の例である。
【図5】通信端末が位置登録する際の処理を説明するシーケンス図である。
【図6】通信端末に係る測位情報を提供するための処理を説明するシーケンス図である。
【図7】通信端末に係る測位情報を提供するためにSUPLサーバで行われる処理を説明するフローチャートである。
【図8】通信端末に係る測位情報を提供するために位置情報管理装置で行われる処理を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<測位システムの構成>
図1は、本発明の好適な実施形態に係る通信システム1の構成を説明するブロック図である。通信システム1は、測位システム10を構成するSUPL(Secure User Plane Location)サーバ20(位置情報提供装置)及び位置情報管理装置30と、交換機#A40と、交換機#B50と、基地局装置#A41と、基地局装置#B51と、通信端末60と、を含んで構成される。このうち、SUPLサーバ20及び位置情報管理装置30により構成される測位システム10は、通信端末60による測位演算を支援する装置である。また、交換機#A40及び基地局装置#A41は、第1の通信網であるLTE通信網を構成する装置であって、交換機#A40は複数の基地局装置の上流に位置する装置であり、基地局装置#A41は交換機#A40の配下に設けられ、LTE通信網においてセルC1を形成するための装置である。また、交換機#B50及び基地局装置#B51は、第2の通信網である3G通信網を構成する装置であって、交換機#B50は複数の基地局装置の上流に位置する装置であり、基地局装置#B51は交換機#B50の配下に設けられ、3G通信網においてセルC2を形成するための装置である。LTE通信網を構成するための装置及び3G通信網を構成するための装置は、上記交換機#A,#B、基地局装置#A,#Bのほかにもあるが、本実施形態では記載を省略する。
【0016】
ここで、本実施形態において通信端末60が行う測位方法について説明する。本実施形態において通信端末60が行う測位方法とは、ネットワークアシスト方式によるGPS(Global Positioning System)測位(アシストGPS測位)である。GPS測位とは、上空の3つ以上のGPS衛星からの信号を受信することにより、GPS衛星の位置情報に基づいて受信端末(通信端末60)の位置(具体的には、緯度、経度及び高度)を割り出す方法であるが、これを行うためには通信端末60によりGPS衛星を捕捉する必要があり、この処理に一定時間を要する。このため、本実施形態に係るネットワークアシスト方式によるGPS測位では、GPS衛星の位置及び通信端末60の概位置(初期位置)情報等の情報(アシストデータ)を測位システム10から通信端末に対して送信することにより、通信端末60によるGPS衛星の捕捉に係る処理及び測位時間の短縮が図られている。本実施形態では、通信端末60が測位システム10に対してアシストデータの提供を要求することにより通信端末60の概位置を示す情報及び通信端末60が信号を受信することができるGPS衛星の位置情報を測位システム10から受信することにより、通信端末60でGPS測位が行われ、通信端末60の位置が求められる。
【0017】
測位システム10から通信端末60に対して送られるアシストデータのうち、GPS衛星の位置情報については、測位システム10においてGPS衛星の起動情報を管理しているアシストデータプロバイダ(図示せず)から取得された情報が用いられる。一方、通信端末60の概位置情報としては、通信端末60が在圏するセル(通信エリア)に対して電波を送信する基地局装置の位置情報が用いられる。これは、基地局装置の位置は予め定められているため、当該基地局装置の位置情報を測位システム10において予め格納することができ、通信端末60が在圏するセルを特定する情報が通信端末60から送信された場合に、当該情報に基づいて通信端末60に対して送信することができるからである。ここでいう基地局装置の位置情報には、基地局装置の緯度情報、経度情報、高度、及び誤差半径が含まれる。
【0018】
また、本実施形態で用いられるSUPLとは、OMA(Open Mobile Alliance)で規定されているものであり、通信端末60と通信網との間でアシストデータを送信するための通信ベアラとして、U-Plane(User Plane)を利用したアシストGPS測位方式のことを言う。
【0019】
上記の通信システム1に含まれる各装置について説明する。まず通信システム1に含まれる測位システム10を構成するSUPLサーバ20は、測位システム10の主要機能を有する装置であり、通信端末60に対して送信するアシストデータを格納し、通信端末60からの要求に基づいて、アシストデータを通信端末60に対して送信する機能を有する。
【0020】
SUPLサーバ20と同様に測位システム10を構成する位置情報管理装置30は、通信端末60と測位に係る通信を行うための認証処理を行う機能を有すると共に、3G通信網及びLTE通信網において位置情報に係るデータを管理するGMLC(Gateway Mobile Location Centre)及びHSS(HomeSubscriber Server)の機能を有し、例えばEBSCP(External Businessuser Service Control Point)及びIPSCP(IP Service ControlPoint)として実現される。本実施形態では、EBSCPとしての機能とIPSCPとしての機能の双方を有する位置情報管理装置として説明するが、これらは別体から成ってもよい。位置情報管理装置30は、具体的には、3G通信網及びLTE通信網における通信端末60の位置登録履歴等を格納し、必要に応じて当該データをSUPLサーバ20に対して送信する。本実施形態に係る詳細な処理については後述する。
【0021】
通信端末60は、ユーザにより用いられ、具体的には、例えば、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistance)等の通信機能を有する装置として実現される。また、本実施形態に係る通信端末60は、測位システム10からのアシストデータを利用したGPS測位を行う機能を有すると共に、上記の3G通信網とLTE通信網の双方に対して接続する機能を有する端末である。通信端末60がLTE通信網のセルC1において位置登録をした場合、位置登録に係る情報(どの交換機の配下にある基地局に在圏したかを示す位置登録エリアを示す情報)は交換機#A40を介して位置情報管理装置30に登録される。また、通信端末60が3G通信網のセルC2において在圏し位置登録をした場合にも、位置登録に係る情報は交換機#B50を介して位置情報管理装置30に登録される。
【0022】
なお、通信端末60は、双方の通信網を介して同時に通信を行うことはできない。したがって、通信端末60が実際に通信を行う通信網は1つのみである。また、3G通信網とLTE通信網との間で通信する通信網を切り替えた場合であっても、各々の通信網において在圏するセルが変更されていない場合には、位置情報管理装置30において保持される位置登録情報の更新は行われない。具体的には、図1に示すように、交換機#B50の配下にある3G通信網のセルC2に在圏する通信端末60が移動し、交換機#A40の配下にあるLTE通信網のセルC1に在圏した場合にはこのセルC1に係る情報は位置情報管理装置30に登録される。ただし、3G通信網において通信端末60が在圏する(した)セルC2は変更していないので、位置情報管理装置30ではセルC2に係る情報の更新は行われない。また、図1に示す移動後の通信端末60は、3G通信網を介した接続通信とLTE通信網を介した接続通信との双方を行うことができるが、どちらの通信網を介して接続通信を行っているかは、位置情報管理装置30は把握することができない状態である。
【0023】
また、同じ交換機(例えば、交換機#A40、交換機#B50)の配下にある通信エリア間を通信端末60が移動した場合、例えば基地局装置#B51によるセルC2から、同じ交換機#B50の配下にある他の基地局装置によるセルへ移動した場合等が考えられるが、この場合には、接続する基地局装置が変更されたという情報は、位置情報管理装置33には通知されない。これは、LTE通信網と3G通信網との間で通信端末60が接続先を変更する際の位置登録信号削減を目的としたものとして規定されたものである(ISR:Idle mode Signaling Reduction)。
【0024】
上記の通信システム1に含まれるSUPLサーバ20、位置情報管理装置30、交換機#A40、及び、交換機#B50は、それぞれ、図2に示すように、CPU101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read OnlyMemory)103、通信を行うための通信モジュール104、並びにハードディスク等の補助記憶装置105等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成される。そして、これらの構成要素が動作することにより、各装置の機能が発揮される。また、通信端末60は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)601、RAM602、ROM603、操作部604、無線通信部605、ディスプレイ606、及びアンテナ607等のハードウェアにより構成される。そしてこれらの構成要素が動作することにより、通信端末60の機能が発揮される。
【0025】
なお、SUPLサーバ20と位置情報管理装置30との間、SUPLサーバ20と交換機#A40との間、SUPLサーバ20と交換機#B50との間、位置情報管理装置30と交換機#A40との間、位置情報管理装置30と交換機#B50との間、交換機#A40と基地局装置#A41との間、及び、交換機#B50と基地局装置#B51との間はそれぞれ有線のネットワークを介して接続される。また、通信端末60と基地局装置#A41との間、及び通信端末60と基地局装置#B51との間は、それぞれ無線通信により情報の交換が行われる。
【0026】
図1に戻り、通信システム1に含まれ本発明の特徴をなす測位支援装置である測位システム10に含まれるSUPLサーバ20及び位置情報管理装置30について詳細に説明する。SUPLサーバ20は、通信部(位置情報提供要求受信手段、端末情報送信手段、位置情報提供手段)21と、制御部(端末情報送信手段)22とを含んで構成される。また、位置情報管理装置30は、通信部(端末情報受信手段、位置情報送信手段、位置情報取得手段)31と、制御部(位置情報取得手段)32と、管理DB(在圏情報格納手段)33とを含んで構成される。
【0027】
SUPLサーバ20の通信部21は、通信端末60から送信される位置情報提供要求に基づいて、移動体通信網N2から通信端末60が在圏する通信エリアの概位置情報を取得する位置情報提供要求手段としての機能を有する。ここで、通信端末60から送信される位置情報提供要求には、通信端末60がLTE網に接続している場合にLTE網に接続していることを示す情報として、通信端末60が在圏するセルC1において通信端末60が直接的に接続する基地局装置(eNodeB)のID番号が含まれる。一方、通信端末60が3G網に接続している場合には、基地局装置を特定する情報は含まれない。また位置情報提供要求には、通信端末60を特定する情報が含まれる。
【0028】
また、通信部21は、位置情報管理装置30から送信される通信端末60の概位置情報を含むアシストデータを通信端末60に対して送信する位置情報送信手段として機能する。また、位置情報管理装置30との間で情報を送受信する機能をさらに有する。通信部21により受信された情報は、制御部22へ送られる。
【0029】
制御部22は、通信端末60から送信される位置情報提供要求に基づいて、位置情報管理装置30に対して端末情報を送信することで、通信端末60の概位置情報の提供を要求する機能を有する。より具体的には、位置情報提供要求にLTE通信網を特定する情報が含まれるか判断し、LTE通信網を特定する情報が含まれる場合には、LTE通信網を特定する情報と通信端末60を特定する情報とを含む情報を端末情報として前記位置情報管理装置30へ送信し、LTE通信網を特定する情報が含まれない場合には、通信端末60を特定する情報を端末情報として位置情報管理装置30へ送信する。LTE通信網を特定する情報としては、通信端末60が在圏するセルC1において通信端末60が直接的に接続する基地局装置(eNodeB)のID番号、基地局装置(eNodeB)を収容して制御等を行う装置であるMME(Mobility Management Entity)のID番号等が用いられる。なお、ここで、LTE通信網を特定する情報として上記の情報が使われる場合に代えて、LTE通信網に在圏するか否かを示すフラグのみを付与するという方法を採用してもよい。
【0030】
図1に戻り、測位システム10に含まれる位置情報管理装置30について説明する。位置情報管理装置30の通信部31は、外部装置との通信行う機能を備え、具体的には、通信端末60の端末情報をSUPLサーバ20から受信する端末情報受信手段としての機能、端末情報に基づいて通信端末60が接続する通信エリアの位置情報を取得する位置情報取得手段としての機能の一部、そして、通信端末60が接続する通信エリアの位置情報をSUPLサーバ20に対して送信する位置情報送信手段としての機能を有する。通信部31により取得された端末情報は、制御部32に送られる。
【0031】
制御部32は、端末情報に基づいて通信端末60が接続する通信エリアの位置情報を取得する位置情報取得手段としての機能の一部を担う。具体的には、SUPLサーバ20から送信されて通信部31により受信された端末情報に、LTE通信網を特定する情報が含まれるか否かを判断し、LTE通信網を特定する情報が含まれている場合には、管理DB33を参照して、LTE通信網において通信端末60が接続する通信エリアを特定する情報を取得し、LTE通信網を特定する情報が端末情報に含まれていない場合には、管理DB33を参照しLTE通信網において通信端末60が接続する通信エリアを特定する情報を取得する。このように制御部32は、SUPLサーバ20から送信される通信端末60の端末情報に基づいて、通信端末60がどちらの通信網を利用して通信を行っているかを判断する機能を有する。この結果は通信部31に通知され、通信部31が交換機に対してセルの位置情報を問い合わせる際に用いられる。
【0032】
管理DB33は、通信端末60を特定する情報と、通信端末60がLTE通信網及び3G通信網における通信端末60の位置登録エリアを特定する情報、すなわち通信端末60が接続する交換機を特定する情報と、を対応付けて格納する在圏情報格納手段として機能する。管理DB33において格納される情報とは、具体的には図4に示すように、通信端末60を特定する情報(図4では、通信端末の電話番号)と、その通信端末60がLTE通信網において位置登録を行った交換機を特定する情報(#A01、#A02等)と、3G通信網において位置登録を行った交換機を特定する情報(#B01,#B2等)と、が対応付けられたものである。この管理DB33に格納される情報は、通信端末60が各々の通信網に在圏して位置登録を行った場合に更新される。また、移動等により、各々の通信網において通信端末が利用する交換機が変更となった場合には、通信端末60から位置情報管理装置30に対して情報更新の要求がなされるので、この要求に基づいて、位置情報管理装置30の管理DB33に格納される情報が更新される。
【0033】
交換機#A40、交換機#B50は、それぞれLTE通信網、3G通信網における交換機として機能する。また、基地局装置#A41、基地局装置#B51は、それぞれLTE通信網、3G通信網における基地局装置として機能する。本実施形態では、交換機#A40及び交換機#B50は、位置情報管理装置30より、通信端末60の測位に係る位置情報の提供要求を受信すると、当該通信端末60が自網に接続していることを確認した後、当該通信端末60が接続する通信エリア(セル)の位置情報を位置情報管理装置30に対して送信する機能を有する。そして、仮に通信端末60が自網に接続していないことが確認された場合には、エラーメッセージを返信することにより、自網に通信端末60が接続していないことを通知する。
【0034】
本実施形態に係る通信システム1では、上記の各装置が機能することにより、より効率的な測位支援が実現される。その具体的な方法については、以下詳細に説明する。
【0035】
<測位システムによる測位方法(位置情報の提供方法)>
次に、上記の測位システム10を含む通信システム1による測位方法(位置情報の提供方法)について、図5〜図8に示すシーケンス図及びフローチャートを用いて説明する。なお、図5は、通信端末60による位置登録に係る処理を説明するシーケンス図であり、図6は、通信端末60に係る測位を行う場合の処理を説明するシーケンス図である。また、図7はSUPLサーバ20での処理を説明するフローチャートであり、図8は位置情報管理装置30での処理を説明するフローチャートである。
【0036】
最初に、図5を用いて、通信端末60の位置登録に係る処理を説明する。以下の処理は、主に制御を行うC-Planeプロトコルスタックにて行われる。まず通信端末60が3G通信網へ在圏する場合(S01)、通信端末60から基地局装置(図示せず)を介して交換機#B50に対して位置登録要求が送信される(S02)。このとき、位置登録要求を受信した交換機#B50は、通信端末60の接続先に係る情報(在圏するセルを特定する情報)を更新する(S03)と共に、この位置登録要求が交換機#B50から位置情報管理装置30に対して送信される(S04)。これにより、位置情報管理装置30の管理DB33に格納された情報が更新され、3G通信網にかかる位置登録が行われる(S05)。
【0037】
次に、通信端末60がLTE通信網に在圏した場合(S11)は、3G通信網における場合と同様の処理が行われる。具体的には、通信端末5から基地局装置(図示せず)を介して交換機#A40に対して位置登録要求が送信される(S12)。このとき、位置登録要求を受信した交換機#A40は、通信端末60の接続先に係る情報(在圏するセルを特定する情報)を更新する(S13)と共に、この位置登録要求が交換機#A40から位置情報管理装置30に対して送信される(S14)。これにより、位置情報管理装置30の管理DB33に格納された情報が更新され、LTE通信網にかかる位置登録が行われる(S15)。
【0038】
次に、図6を用いて、通信端末60への位置情報の提供に係る処理について説明する。以下の処理は、ユーザーデータを取り扱うU-Planeプロトコルスタックにて行われる。
【0039】
まず、通信端末60とSUPLサーバ20との間で測位に係る情報の送受信を行うための通信路として、TLS(Transport Layer Security)トンネルを確立する処理が行われる(S31)。これは、通信端末60においてGPS測位を行う場合、通信端末60と、通信端末60に対してGPS測位のためのアシストデータを送信するSUPLサーバ20との間で、設けられるものであり、具体的には、TCP(Transmission Control Protocol)コネクションを確立した後にこのTLSトンネルを確立する。
【0040】
次に、このTLSトンネルを用いて、通信端末60から交換機#A40を介してSUPLサーバ20に対して位置情報提供要求(ULP_SUPL-START)が送信されて、SUPLサーバ20において受信される(S32,S33、位置情報提供要求受信ステップ)。ここで通信端末60からSUPLサーバ20に対して送信される位置情報提供要求には、セッションID(一度のGPS測位に係る処理について共通して割り振られる識別子)と、通信端末60を特定する情報と、が含まれる。さらに、通信端末60がLTE通信網に接続している場合には、LTE通信網を特定する情報(例えば、LTE通信網において通信端末60が接続する基地局を特定する情報)が含まれる。
【0041】
SUPLサーバ20では、位置情報提供要求を通信部21が受信すると、制御部22へ送られ、制御部22において、通信端末60の接続先が3G通信網であるかLTE通信網であるかの判断が行われ(S34)、その結果に基づいた端末情報がSUPLサーバ20から位置情報管理装置30へ送信される(S35)。この具体的な判断手法について、図7を用いて説明する。
【0042】
図7に示すように、SUPLサーバ20の制御部22では、まず、位置情報提供要求を受信する(S101/S33)と、「LTE通信網に係る情報が付加されているか」を判断する(S102)。通信端末60がLTE通信網に接続している場合には、位置情報提供要求にLTE通信網を特定する情報が付加されているので、通信端末60がLTE通信網に在圏していると判断し、この結果を「在圏情報=LTE」と設定する(S103)。また、位置情報提供要求にLTE通信網を特定する情報が付加されていない場合には、通信端末60が3G通信網に在圏していると判断し、この結果を「在圏情報=3G」と設定する(S104)。その後、通信端末60を特定する情報に対して在圏情報を設定し(S105)、端末情報を位置情報管理装置30に対して送信する(S106/S35)。なお、通信端末60を特定する情報に対しての在圏情報の設定とは、例えば互いに異なるフラグを付与する等の方法を用いることもできる。
【0043】
次に、図6に戻り、SUPLサーバ20の通信部21から送信(S35)された端末情報は、位置情報管理装置30の通信部31にて受信され、制御部32において接続先の判断が行われる(S36)。この具体的な判断手法について、図8を用いて説明する。
【0044】
図8に示すように、位置情報管理装置30の通信部31において端末情報を受信する(S201)と、制御部32において端末情報に含まれる通信端末60を特定する情報に基づいて、管理DB33から、接続先情報の取得が行われる(S202)。ここで、制御部32では、通信端末60に対応付けて格納されている接続先の情報が複数ある(例えば3G通信網に係る情報とLTE通信網に係る情報との双方が格納されている)場合には、その両方が制御部32により取得される。
【0045】
次に制御部32において、端末情報に含まれる在圏情報を参照し、在圏情報としてLTE通信網が設定されているかを確認する(S203)。ここで、在圏情報としてLTE通信網が設定されている場合には、制御部32は、管理DB32から取得した通信端末60の接続先情報のうち、LTE通信網における接続先の情報に基づいて、LTE通信網の交換機(本実施形態では交換機#A40)に対して基地局測位(基地局情報の提供)を要求する(S204)。また、在圏情報として3G通信網が設定されている場合には、制御部32は、管理DB32から取得した通信端末60の接続先情報のうち、3G通信網における接続先の情報に基づいて、3G通信網の交換機(本実施形態では交換機#B50)に対して基地局測位(基地局情報の提供)を要求する(S205)。
【0046】
この結果、位置情報管理装置30の通信部31がLTE通信網又は3G通信網の交換機と通信を行うことで、基地局情報が取得され(S206)、この基地局情報が、位置情報管理装置30の通信部31からSUPLサーバ20に対して送信される(S207)。
【0047】
図6に戻り、位置情報管理装置30において接続先判断(S36)を行った結果、在圏情報がLTE通信網であった場合に関して他装置における処理も含めて説明する。接続先判断(S36)の結果、通信端末60がLTE通信網に接続していると判断された場合、交換機#A40に対して基地局情報の提供要求(ELP_PROVIDE SUBSCRIBER LOCATION REQUEST)がなされる(S37)。その結果、交換機#A40では、基地局情報提供要求に含まれる通信端末60の情報に基づいて、実際に通信端末60が接続しているかの在圏確認が行われる(S38)。具体的には、LTE通信網における基地局装置の位置情報を管理しているサーバ(図示せず)との通信(LCS-AP LOCATION REQUEST / LCS-AP Connection Oriented InformationTransfer)に基づいて交換機#A40から基地局装置に対して問い合わせ(S1AP_DOWNLINK UEASSOCIATED LPPA TRANSPORT)が送信され、これに対して基地局装置から返信(S1AP_UPLINKUE ASSOCIATED LPPA TRANSPORT)があることで確認が行われる。
【0048】
ここで、通信端末60がLTE通信網に在圏していることが確認できた場合には、当該通信端末60が接続する通信エリア(セル)の基地局装置の位置を示す情報(基地局情報)が取得され(LCS-AP Connection Oriented Information Transfer / LCS-AP LOCATIONRESPONSE)、当該通信端末60が存在する大まかな位置(概位置)を示す情報として、位置情報管理装置30に対して送信する(S39)。
【0049】
位置情報管理装置30の通信部31では、交換機#A40から、通信端末60に係る基地局情報を受信すると、SUPLサーバ20へ送信し(S40)、この基地局情報に基づくアシストデータを含む測位開始指示(ULP_SUPL-RESPONSE)がSUPLサーバ20の通信部21から通信端末60へ送信される(S41)。この結果、通信端末60においてこのアシストデータを用いたGPS測位が行われる。以上により、通信端末60に係る測位情報の提供に係る処理が終了する。
【0050】
なお、位置情報管理装置30において接続先判断(S36)を行った結果、在圏情報が3G通信網と設定されていた場合には、3G通信網の交換機#B50との間で上記(S37〜40)と同様の通信が行われ、その結果、通信端末60に対して通信端末60が在圏するセルの基地局情報に基づいたアシストデータが送信される(S41)。
【0051】
<測位支援システム及び測位方法による効果>
以上のように、上記実施形態に係る測位システム10及びこの測位システム10による測位方法によれば、SUPLサーバ20において、通信端末60からの位置情報提供要求にLTE通信網を特定する情報が含まれているかに基づいて、通信端末60がLTE通信網に接続しているか否かが判断される。そしてその結果がSUPLサーバ20から位置情報管理装置30に対して送信され、位置情報管理装置30においては、SUPLサーバ20から通知された通信端末60の接続先を示す情報に基づいて、通信端末60が接続する通信網がLTE通信網であるか3G通信網であるかが判断され、その結果に基づいて、接続していると判断された通信網に対して基地局情報の提供が要求される。
【0052】
ここで従来例について説明すると、従来は、位置情報管理装置30において、3G通信網及びLTE通信網の2つの通信網に対して接続可能な通信端末60に係る位置情報の提供要求を受信した場合には、位置情報管理装置30では、通信端末60がどちらの通信網に接続して通信を行っているのかを判断できなかったため、予め定められた側の通信網(例えば3G通信網)に対して一律に優先して問い合わせるという処理を行っていた。
【0053】
これは、従来の単一通信網(3G通信網)において接続可能な通信端末におけるSUPL測位の標準規定において、在圏情報を利用しないという手法が一般的であったことに由来する。
【0054】
従来のSUPLに関する標準規定(OMA-AD-SUPL-V1.0 6.4 SUPL Reference Architecture)及び3G通信における標準仕様(3GPP TS23.271 9.1.1 Mobile Terminating Location Request)によれば、3G通信網における通信端末によるGPS測位において、通信端末が在圏する基地局の位置情報をアシストデータとして使用する場合、通信端末がどの基地局に在圏するかを特定する情報を通信端末側から取得する必要はなかった。これは、従来のアシストGPS測位では、位置情報の提供要求があった場合には、EBSCP(本実施形態の位置管理情装置30に相当する)がHSS/HLR(本実施形態の管理DB33に相当する)に対して問い合わせることにより、通信端末が在圏する通信エリアの基地局を特定することができたためである。したがって、従来の仕様によれば、通信端末60からSUPLサーバ20に対して送信するU-Planeによる位置情報提供要求に係る情報を利用し、SUPLサーバ20から位置情報管理装置30に対して通信端末60からの情報(接続先を特定する情報)を利用するという技術思想はなかった。
【0055】
そして、単一通信網に接続する通信端末が2つの通信網(3G通信網及びLTE通信網)に対して接続可能な通信端末60になった場合であっても、上記の標準規定及び標準仕様にしたがうのであれば、SUPLサーバ20から位置情報管理装置30に対して、通信端末60からのU-Planeにより通知した情報を送信することは考えられないことから、通信端末60の在圏情報を仮に位置情報登録要求に含んで取得したとしても利用するという技術思想はなかった。
【0056】
これに対して本実施形態の測位支援システム及びこの測位システムによる測位方法によれば、U-Planeにおいて通信端末60から通知される通信端末60の接続先を特定する情報から、通信端末60がどちらの通信網に接続しているかを判断し、その情報をSUPLサーバ20から位置情報管理装置30に対して通知している。この結果、位置情報管理装置30において、通信端末60が接続していない通信網に対して、通信端末60の測位に利用するための位置情報の提供を要求することが抑制され、複数の通信網を利用可能な通信端末に係る測位支援をより効率的に行うことが可能となった。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る測位システム10を含む通信システム1は種々の変更を行うことができる。
【0058】
例えば、測位システム10に含まれる各装置に係る機能は、一台の装置に全て含まれる構成であってもよいし、各機能がそれぞれ異なる装置に分散される構成であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、通信端末60が接続可能な通信網が2種類(3G通信網及びLTE通信網)である構成について説明したが、この接続可能な通信網が3つ以上であってもよい。この場合、管理DB33に格納される情報の種類を増やすと共に、通信端末60が接続する通信網を特定する情報の種類を増やすことで、SUPLサーバ20及び位置情報管理装置30において上記実施形態と同様の判断を行うことができる。
【0060】
また、上記実施形態では、位置情報管理装置30において、図8に示すように、端末情報を受信すると、管理DB33から3G通信網及びLTE通信網の双方の接続先情報を取得した後、端末情報に含まれる在圏情報を参照し、基地局測位要求を行う送信先を決定しているが、この順序は入れ替えても良い。すなわち、端末情報に含まれる在圏情報に基づいて、管理DB33から一方の通信網のみの接続先情報を取得する態様とすることもできる。
【0061】
また、上記実施形態では、SUPLサーバを用いたアシストGPS方式に対して適用した場合について説明したが、上記測位システム及び測位方法は、セルベース測位方式にも使用することができ、さらにこのセルベース測位の結果得られた位置情報を利用したコンテンツの提供に対しても適用することができる。具体的には、通信端末のユーザの承諾の上で、コンテンツを作成する者(LCSクライアント/コンテンツ作成装置)から通信網における位置情報を制御する位置情報管理装置に対して、通信端末の位置情報の提供を要求する測位要求を送信することで、位置情報管理装置において通信端末の位置情報が取得され、これが測位結果としてコンテンツ作成装置に対して送信される。このとき、通信端末のユーザが位置情報の提供を承諾する際に、通信端末からコンテンツ作成装置に対して送信された接続先の通信網を特定する情報を、コンテンツ作成装置から位置情報管理装置に対して送信することで、通信端末が接続する通信網を特定する情報が位置情報管理装置へ送信され、位置情報管理装置においてこの情報を利用することで測位支援をより効率的に行うことが可能となる。このように、本実施形態は、SUPLに限らず、基地局の位置情報の提供が必要な種々の技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…測位システム、10…測位システム、20…SUPLサーバ、30…位置情報管理装置、40…交換機#A、41…基地局装置#A、50…交換機#B、51…基地局装置#B、60…通信端末、C1,C2…セル。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる第1の通信網及び第2の通信網に対して接続可能な通信端末に係る位置情報を提供する位置情報提供装置と、当該位置情報提供装置が提供する位置情報を前記第1の通信網又は前記第2の通信網から取得する位置情報管理装置とにより構成される測位システムであって、
前記位置情報提供装置は、
前記通信端末が前記第1の通信網に接続する場合に前記第1の通信網を特定する情報が含まれ、前記通信端末に係る位置情報の提供を要求するための位置情報提供要求を受信する位置情報提供要求受信手段と、
前記位置情報提供要求受信手段により受信された前記位置情報提供要求に前記第1の通信網を特定する情報が含まれるか判断し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれる場合には、当該第1の通信網を特定する情報と前記通信端末を特定する情報とを含む情報を端末情報として前記位置情報管理装置へ送信し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれない場合には、前記通信端末を特定する情報を当該端末情報として前記位置情報管理装置へ送信する端末情報送信手段と、
前記端末情報送信手段が前記位置情報管理装置へ前記端末情報を送信することによって前記位置情報管理装置から送信される前記通信端末の位置情報を前記位置情報提供要求の送信元へ送信する位置情報提供手段と、
を備え、
前記位置情報管理装置は、
前記通信端末が前記第1の通信網及び前記第2の通信網において接続可能な通信エリアを含む複数の通信エリアにより構成される位置登録エリアを特定する情報を、前記通信端末を特定する情報に対応付けて格納する在圏情報格納手段と、
前記位置情報提供装置から転送された前記端末情報を受信する端末情報受信手段と、
前記端末情報受信手段により取得された前記端末情報に、前記第1の通信網を特定する情報が含まれるか否かを判断し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれている場合には、前記在圏情報格納手段により取得された前記第1の通信網の前記位置登録エリアに含まれる通信エリアに係る位置情報を前記第1の通信網から取得し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれていない場合には、前記在圏情報格納手段により取得された前記第2の通信網の前記位置登録エリアに含まれる通信エリアに係る位置情報を前記第2の通信網から取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報取得手段により取得された位置情報を、前記通信端末を特定する情報に対応付けて前記位置情報提供装置に対して送信する位置情報送信手段と、
を備えることを特徴とする測位システム。
【請求項2】
互いに異なる第1の通信網及び第2の通信網に対して接続可能な通信端末に係る位置情報を提供する位置情報提供装置と、当該位置情報提供装置が提供する位置情報を前記第1の通信網又は前記第2の通信網から取得する位置情報管理装置とにより構成される測位システムに含まれる位置情報提供装置であって、
前記通信端末が前記第1の通信網に接続する場合に前記第1の通信網を特定する情報が含まれ、前記通信端末に係る位置情報の提供を要求するための位置情報提供要求を受信する位置情報提供要求受信手段と、
前記位置情報提供要求受信手段により受信された前記位置情報提供要求に前記第1の通信網を特定する情報が含まれるか判断し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれる場合には、当該第1の通信網を特定する情報と前記通信端末を特定する情報とを含む情報を端末情報として前記位置情報管理装置へ送信し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれない場合には、前記通信端末を特定する情報を当該端末情報として前記位置情報管理装置へ送信する端末情報送信手段と、
前記端末情報送信手段が前記位置情報管理装置へ前記端末情報を送信することによって前記位置情報管理装置から送信される前記通信端末の位置情報を前記位置情報提供要求の送信元へ送信する位置情報提供手段と、
を備えることを特徴とする位置情報提供装置。
【請求項3】
互いに異なる第1の通信網及び第2の通信網に対して接続可能な通信端末に係る位置情報を提供する位置情報提供装置と、当該位置情報提供装置が提供する位置情報を前記第1の通信網又は前記第2の通信網から取得する位置情報管理装置とにより構成される測位システムに含まれる位置情報管理装置であって、
前記通信端末が前記第1の通信網及び前記第2の通信網において接続可能な通信エリアを特定する情報を、前記通信端末を特定する情報に対応付けて格納する在圏情報格納手段と、
前記位置情報提供装置から転送された前記通信端末を特定する情報を含む端末情報を受信する端末情報受信手段と、
前記端末情報受信手段により取得された前記端末情報に、前記第1の通信網を特定する情報が含まれるか否かを判断し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれている場合には、前記在圏情報格納手段により取得された前記第1の通信網の前記位置登録エリアに含まれる通信エリアに係る位置情報を前記第1の通信網から取得し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれていない場合には、前記在圏情報格納手段により取得された前記第2の通信網の前記位置登録エリアに含まれる通信エリアに係る位置情報を前記第2の通信網から取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報取得手段により取得された位置情報を、前記通信端末を特定する情報に対応付けて前記位置情報提供装置に対して送信する位置情報送信手段と、
を備えることを特徴とする位置情報管理装置。
【請求項4】
互いに異なる第1の通信網及び第2の通信網に対して接続可能な通信端末に係る位置情報を提供する位置情報提供装置と、前記通信端末が前記第1の通信網及び前記第2の通信網において在圏する通信エリアを特定する情報を、前記通信端末を特定する情報に対応付けて格納する在圏情報格納手段を備え、当該位置情報提供装置が提供する位置情報を前記第1の通信網又は前記第2の通信網から取得する位置情報管理装置とにより構成される測位システムによる測位方法であって、
前記位置情報提供装置の位置情報提供要求受信手段により、前記通信端末が前記第1の通信網に接続する場合に前記第1の通信網を特定する情報が含まれ、前記通信端末に係る位置情報の提供を要求するための位置情報提供要求を受信する位置情報提供要求受信ステップと、
前記位置情報提供装置の端末情報送信手段により、前記位置情報提供要求受信ステップにおいて受信された前記位置情報提供要求に前記第1の通信網を特定する情報が含まれるか判断し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれる場合には、当該第1の通信網を特定する情報と前記通信端末を特定する情報とを含む情報を端末情報として前記位置情報管理装置へ送信し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれない場合には、前記通信端末を特定する情報を当該端末情報として前記位置情報管理装置へ送信する端末情報送信ステップと、
前記位置情報提供装置の位置情報提供手段により、前記端末情報送信ステップにおいて前記位置情報管理装置へ前記端末情報を送信することによって前記位置情報管理装置から送信される前記通信端末の位置情報を前記位置情報提供要求の送信元へ送信する位置情報提供ステップと、
前記位置情報管理装置の端末情報受信手段により、前記位置情報提供装置から転送された前記端末情報を受信する端末情報受信ステップと、
前記位置情報管理装置の位置情報取得手段により、前記端末情報受信ステップにおいて取得された前記端末情報に、前記第1の通信網を特定する情報が含まれるか否かを判断し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれている場合には、前記在圏情報格納手段により取得された前記第1の通信網の前記位置登録エリアに含まれる通信エリアに係る位置情報を前記第1の通信網から取得し、前記第1の通信網を特定する情報が含まれていない場合には、前記在圏情報格納手段により取得された前記第2の通信網の前記位置登録エリアに含まれる通信エリアに係る位置情報を前記第2の通信網から取得する位置情報取得ステップと、
前記位置情報管理装置の位置情報送信手段により、前記位置情報取得ステップにより取得された位置情報を、前記通信端末を特定する情報に対応付けて前記位置情報提供装置に対して送信する位置情報送信ステップと、
を備えることを特徴とする測位方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−231423(P2012−231423A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99996(P2011−99996)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】