説明

測位装置、通信システム及び測位方法

【課題】測位時点での電波環境の影響による伝播遅延の検知誤りに起因した測位誤差を適正に補正し、測位結果の信頼性を向上させる。
【解決手段】測位サーバ10は、移動局が位置するエリアを推定する測位部15と、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間を記憶したエリア間接続関係記憶部17と、複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を読み出し、当該異なるエリアが測位された測位時刻の差分が上記の最短移動時間よりも小さい場合に測位結果において伝播遅延の検知誤りがあると判定する誤り判定部12と、当該誤りがあると判定された場合に所定の手法で測位結果を補正する測位結果補正部13と、測位結果を出力する測位結果出力部14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局の測位を行う測位装置、通信システム及び測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無線通信環境において、移動局の位置を測定する(測位を行う)方式として、セクタ測位方式が知られている(特許文献1に「セルセクタ測位」として言及されている)。このセクタ測位方式では、例えば、セル内の複数のセクタのうち、測位時点で移動局からの受信信号の受信レベルが最大となるセクタが特定され、当該セクタの中心位置が移動局の位置と推定される。
【0003】
また、セクタ内の位置を特定する方式として、いわゆるPRACH-PD測位方式が知られている。このPRACH-PD測位方式には、屋外を想定した方式と屋内を想定した方式が存在する。このうち屋外を想定した方式では、図9に示すように、移動局91へ向けて送信されたPRACH信号が移動局91から折り返して基地局90に到達するまでの伝播時間が測定され、該伝播時間に基づいてセクタ内の移動局91の位置が特定される。また、屋内を想定した方式では、図10に示すように基地局90の配下の1つのセクタに、当該基地局90に接続され屋内に設置された移動通信用多分岐光伝送装置(Multi-drop Optical Feeder(以下「MOF」と称する))92を割り当て、該MOF92に接続されたアンテナ群95、96から送信される無線信号により当該1つのセクタを形成する構成とされている。ここで、MOF92とアンテナ群95の間に挿入する遅延線93と、MOF92とアンテナ群96の間に挿入する遅延線94とで、長さの異なるものを用いることにより、アンテナ群95、96の間に伝播遅延(Propagation Delay、以下「PD」ともいう)を設ける。かかる構成において、基地局70から送信されたPRACH信号が移動局で折り返して基地局70に到達するまでの伝播時間が測定され、該伝播時間に基づいて伝播遅延が特定され、移動局がどのアンテナ群の近くに位置するか(即ち、セクタ内の移動局の位置)が特定される。
【特許文献1】特開2007−322237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、測位時点での電波環境の影響によって測位誤差が生じることがある。例えば、図10に示す構成では、アンテナ群95とMOF92との間に、遅延線94よりも短い遅延線93が挿入され、アンテナ群95にはアンテナ群96よりも短い伝播遅延が設けられている。このとき、基地局90からアンテナ群95、96に送信された信号が、アンテナ群95、96から無線送信され各アンテナ群近傍の移動局で折り返して基地局90で受信される際、アンテナ群95、96近傍の電波環境の影響によって、アンテナ群96近傍の移動局で折り返した信号が、アンテナ群96に加えて、アンテナ群95によって受信されることがある。この場合、伝播遅延の短いアンテナ群95近傍に位置すると誤って測位されてしまう。即ち、伝播遅延の検知誤りに起因して、誤った測位結果が得られるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、測位時点での電波環境の影響による伝播遅延の検知誤りに起因した測位誤差を適正に補正し、測位結果の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る測位装置は、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位装置であって、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を記憶したエリア間接続関係記憶部と、複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を前記エリア間接続関係記憶部から読み出して、読み出した情報に基づいて当該異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間と当該異なるエリアが測位された測位時刻の差分とを求め、当該測位時刻の差分が前記最短移動時間よりも小さい場合に、所定の手法で前記測位結果を補正する補正部と、補正後の測位結果を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る測位装置は、以下のように記載することもできる。即ち、本発明に係る測位装置は、測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付け、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、前記移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位部と、前記測位部による測位結果としての前記移動局が位置するエリアと、測位時刻とを記憶する測位結果記憶部と、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を記憶したエリア間接続関係記憶部と、複数回の測位結果と測位時刻とを前記測位結果記憶部から読み出し、読み出された複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を前記エリア間接続関係記憶部から読み出して、読み出した情報に基づいて当該異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間と当該異なるエリアが測位された測位時刻の差分とを求め、当該測位時刻の差分が前記最短移動時間よりも小さい場合に、測位時刻が新しい方の測位結果に誤りがあると判定する誤り判定部と、前記誤り判定部により誤りがあると判定された場合、所定の手法で前記測位結果を補正する測位結果補正部と、補正後の測位結果、又は、誤りがないと判定された測位結果を出力する測位結果出力部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
なお、エリア間接続関係記憶部は、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の、予め求められた最短移動時間を記憶し、誤り判定部は、前記エリア間接続関係記憶部から、複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を読み出すことで該最短移動時間を得ることが望ましい。
【0009】
また、エリア間接続関係記憶部は、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の、予め求められた最短移動距離を記憶し、誤り判定部は、前記エリア間接続関係記憶部から、複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動距離を読み出し、該最短移動距離を所定の平均移動速度で割ることで前記最短移動時間を求めることが望ましい。
【0010】
上記の測位結果補正部は、測位時刻が複数の測位結果のうち、古い方の測位結果をもって新しい方の測位結果とすることで、該新しい方の測位結果を補正してもよい。
【0011】
また、上記の測位結果補正部は、補正対象の新しい方の測位結果である対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアをもって前記新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正してもよい。このような補正を行う場合、以下のような態様を採用してもよい。
【0012】
即ち、エリア間接続関係記憶部は、さらに、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間の、予め求められた直線距離を記憶し、測位結果補正部は、前記対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアが複数存在する場合、該複数存在するエリアの各々と前記対象エリア間の直線距離を前記エリア間接続関係記憶部から読み出し、前記対象エリアとの間の直線距離が最も短いエリアをもって前記新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正する態様を採用してもよい。
【0013】
また、測位装置は、同一のセクタに属する複数のエリアにて、前記移動局の位置が一のエリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播遅延誤り補正にて正解とされるエリアを記憶した伝播遅延誤り補正情報記憶部を、さらに備え、測位結果補正部は、前記対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアが複数存在する場合、前記伝播遅延誤り補正情報記憶部から、前記対象エリアに対応付けられた正解とされるエリアを読み出し、該正解とされるエリアをもって前記新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正する態様を採用してもよい。
【0014】
さらに、測位結果補正部は、前記対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアが存在しない場合、測位時刻が複数の測位結果のうち古い方の測位結果を対象として所定の補正を行う態様を採用してもよい。
【0015】
ところで、本発明は、前述したように「測位装置に係る発明」として捉えることができるとともに、後述の「通信システムに係る発明」および「測位方法に係る発明」として捉えることもでき、同様の効果を奏する。
【0016】
本発明に係る通信システムは、GPS測位を行う少なくとも1つの移動局と、セルを形成する少なくとも1つの基地局と、セクタ測位を行う基地局制御装置と、前記移動局の位置の測位を行う測位装置とを含んで構成された通信システムであって、前記測位装置は、測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付け、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、前記移動局がどのエリアに位置するかを、当該移動局によるGPS測位の結果又は前記基地局制御装置によるセクタ測位の結果に基づいて、推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位部と、前記測位部による測位結果としての前記移動局が位置するエリアと、測位時刻とを記憶する測位結果記憶部と、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を記憶したエリア間接続関係記憶部と、複数回の測位結果と測位時刻とを前記測位結果記憶部から読み出し、読み出された複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を前記エリア間接続関係記憶部から読み出して、読み出した情報に基づいて当該異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間と当該異なるエリアが測位された測位時刻の差分とを求め、当該測位時刻の差分が前記最短移動時間よりも小さい場合に、測位時刻が新しい方の測位結果に誤りがあると判定する誤り判定部と、前記誤り判定部により誤りがあると判定された場合、所定の手法で前記測位結果を補正する測位結果補正部と、補正後の測位結果、又は、誤りがないと判定された測位結果を出力する測位結果出力部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る測位方法は、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位装置、により実行される測位方法であって、前記測位装置により予め記憶された、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報から、複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を読み出すステップと、読み出した情報に基づいて、当該異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間と当該異なるエリアが測位された測位時刻の差分とを求め、当該測位時刻の差分が前記最短移動時間よりも小さい場合に、所定の手法で前記測位結果を補正するステップと、補正後の測位結果を出力するステップと、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る測位方法は、以下のように記載することもできる。即ち、本発明に係る測位方法は、測位装置により実行される測位方法であって、測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付けるステップと、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、前記移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行うステップと、測位結果としての前記移動局が位置するエリアと、測位時刻とを前記測位装置の測位結果記憶部に記憶するステップと、複数回の測位結果と測位時刻とを前記測位結果記憶部から読み出し、読み出された複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を、前記測位装置により予め記憶された同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報から、読み出すステップと、読み出した情報に基づいて当該異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間と当該異なるエリアが測位された測位時刻の差分とを求め、当該測位時刻の差分が前記最短移動時間よりも小さい場合に、測位時刻が新しい方の測位結果に誤りがあると判定するステップと、誤りがあると判定された場合に、所定の手法で前記測位結果を補正するステップと、補正後の測位結果、又は、誤りがないと判定された測位結果を出力するステップと、を備えることを特徴とする。
【0019】
なお、以下のようなさまざまな態様を採用してもよい。
【0020】
測位装置は、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の、予め求められた最短移動時間を記憶しており、前記判定するステップにて、前記測位装置は、複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を読み出すことで該最短移動時間を得てもよい。
【0021】
また、測位装置は、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の、予め求められた最短移動時間を記憶しており、前記判定するステップにて、前記測位装置は、複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動距離を読み出し、該最短移動距離を所定の平均移動速度で割ることで前記最短移動時間を求めてもよい。
【0022】
上記補正するステップでは、測位装置は、測位時刻が複数の測位結果のうち、古い方の測位結果をもって新しい方の測位結果とすることで、該新しい方の測位結果を補正してもよい。
【0023】
また、上記補正するステップでは、測位装置は、補正対象の新しい方の測位結果である対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアをもって前記新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正してもよい。このような補正を行う場合、以下のような態様を採用してもよい。
【0024】
即ち、測位装置は、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間の、予め求められた直線距離をさらに記憶しており、上記補正するステップでは、前記測位装置は、前記対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアが複数存在する場合、該複数存在するエリアの各々と前記対象エリア間の直線距離を前記エリア間接続関係記憶部から読み出し、前記対象エリアとの間の直線距離が最も短いエリアをもって前記新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正する態様を採用してもよい。
【0025】
また、測位装置は、同一のセクタに属する複数のエリアにて、前記移動局の位置が一のエリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播遅延誤り補正にて正解とされるエリアを予め記憶しており、上記補正するステップでは、前記測位装置は、前記対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアが複数存在する場合、前記対象エリアに対応付けられた正解とされるエリアを読み出し、該正解とされるエリアをもって前記新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正する態様を採用してもよい。
【0026】
さらに、上記補正するステップでは、測位装置は、前記対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアが存在しない場合、測位時刻が複数の測位結果のうち古い方の測位結果を対象として所定の補正を行う態様を採用してもよい。
【0027】
以上のような本発明によれば、測位時点での電波環境の影響による伝播遅延の検知誤りに起因した測位誤差を適正に補正し、測位結果の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、測位時点での電波環境の影響による伝播遅延の検知誤りに起因した測位誤差を適正に補正し、測位結果の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を参照して説明する。
【0030】
[通信システムの構成]
まず、本実施形態にかかる通信システムの構成について説明する。図1に示すように、本実施形態にかかる通信システム1は、GPS(Global Positioning System)に基づく測位(以下「GPS測位」という)を行う少なくとも1つの移動局40と、セルを形成する少なくとも1つの基地局30と、セクタ測位を行う基地局制御装置(Radio Network Controller、以下「RNC」と称する)20と、測位サーバ10とを含んで構成されている。ここでは、移動局40として、子供が携帯している移動局Bと、当該子供の親が携帯している移動局Aとが存在する。なお、測位サーバ10は、本発明に係る測位装置に相当する。
【0031】
各移動局40は、基地局30を介した無線通信手順によって、測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を測位サーバ10へ送信するとともに測位サーバ10からの応答(測位結果)を受信する測位要求部41と、受信された測位結果を表示する表示部42と、GPSを利用して自己の移動局の測位を行うGPS測位部43とを備える。
【0032】
RNC20は、セクタ測位を行うセクタ測位部21を備える。本実施形態における測位処理については、後述する。
【0033】
測位サーバ10は、RNC20との通信(各種情報の送受信)を行う通信制御部11と、測位対象の移動局の位置の測位を行う測位部15と、測位部15による測位結果を記憶するための測位結果記憶部16と、エリアごとに予め設定されたセクタID、伝播遅延および位置座標(緯度、経度、高度)を記憶したエリア属性記憶部1Aと、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間、最短移動距離および同エリア間の直線距離の情報を記憶したエリア間接続関係記憶部17と、同一のセクタに属する複数のエリア間で伝播遅延についての誤り(以下「PD誤り」という)が生じた測位結果と該測位結果を補正するための補正エリアとを対応付けて記憶したPD誤り補正情報記憶部18と、測位結果にPD誤りがあるか否かを判定する誤り判定部12と、PD誤りがあると判定された場合に所定の手法で測位結果を補正する測位結果補正部13と、補正後の測位結果又は誤りがないと判定された測位結果を出力する測位結果出力部14と、測位部15に対し測位要求を直接行うための測位要求部19とを備える。このうち、測位部15は、測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付け、後述する手順で測位対象の移動局の測位を行う。
【0034】
測位サーバ10は、ハードウェアの観点からみると、例えば図2に示すように、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどを実行するCPU10Aと、ROM及びRAMで構成される主記憶部10Bと、不揮発性メモリなどで構成される補助記憶部10Cと、データ通信を行う通信制御部10Dと、情報の表示や情報の印刷出力などを行う出力部10Eと、文字・数字入力及び実行指示を行うためのキーで構成される操作部10Fとを含んで構成される。なお、図1にて説明した各機能は、図2に示すCPU10A及び主記憶部10Bの上に所定のソフトウェアを読み込ませて該ソフトウェアを実行するとともに、CPU10Aの制御の下で通信制御部10Dを動作させ、主記憶部10Bや補助記憶部10Cにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。また、RNC20、基地局30および移動局40も、図2に示すような基本的なハードウェア構成を有している。
【0035】
本実施形態では、図4に示すように、あるビルの屋内に設定された複数のエリア(セクタID及び伝播遅延の組合せにより区分けされたエリア)を想定している。図4で、Sx−yとは、セクタIDがxで、伝播遅延の種別がyとされたエリアを意味する。これら図4に示す各エリアの属性については、図3に示すように、エリア属性記憶部1Aに、エリアごとのセクタID、伝播遅延および位置座標(緯度、経度、高度)が対応付けられて記憶されている。
【0036】
図5には、エリア間接続関係記憶部17に記憶された情報、即ち、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間、最短移動距離および同エリア間の直線距離の情報を示す。
【0037】
図6には、測位結果記憶部16に記憶される測位結果の例を示す。図6に示すように、測位結果記憶部16には、測位対象の移動局の識別情報(ユーザID)と、測位結果(具体的には、緯度、経度、高度、対応するエリア名)と、測位時刻とが記憶されるとともに、さらに、補正後の測位結果として補正エリア名が測位結果補正部13によって記憶される。なお、移動局の識別情報(ユーザID)としては、移動局の電話番号を採用してもよいし、独自に設定したIDを採用してもよい。
【0038】
図7には、PD誤り補正情報記憶部18に記憶された情報の一例を示す。この図7に示すように、PD誤り補正情報記憶部18には、同一のセクタに属する複数のエリア間で伝播遅延についての誤りが生じた測位結果と該測位結果を補正するための補正エリアとが対応付けられて記憶されている。
【0039】
[本実施形態の処理フロー]
以下、図8のフロー図に沿って、本実施形態の通信システムにおいて実行される処理フローを説明する。ここでは、図1において、子供が携帯している移動局Bを対象とした測位を、親が携帯している移動局Aから測位サーバ10に対し要求する場面を想定している。
【0040】
まず、移動局Aが、測位サーバ10に対し測位要求を行う(図8のステップS1)。具体的には、移動局Aの測位要求部41が、移動局Aのユーザにより入力された測位対象の移動局BのID、連続測位条件を含んだ測位要求を測位サーバ10あてに送信する。なお、上記の連続測位条件には、測位回数(有限の回数(例えば5回)又は無限の指定)および測位時間間隔(例えば1分間隔、5分間隔など)が含まれる。
【0041】
次に、測位サーバ10では、測位部15は、通信制御部11経由で、移動局Aからの測位要求を受け付けると(ステップS2)、RNC20および測位対象の移動局Bと連携して以下のような測位を実行する(ステップS3)。
【0042】
まず、測位部15は測位要求をRNC20へ送信する。RNC20では、セクタ測位部21が、測位要求に含まれた「測位対象の移動局BのID」より測位対象を特定し、測位要求に含まれた「連続測位条件」より測位回数および測位時間間隔を認識し、そして、移動局Bを測位対象として、上記測位回数および測位時間間隔でのセクタ測位を行う。具体的には、セクタ測位部21は、移動局Bが接続しているセクタと伝播遅延値とを測定し、当該セクタと伝播遅延値に基づいて、移動局Bのセクタ測位結果(緯度、経度、高度)を取得する。さらに、セクタ測位部21は、移動局Bに対し、上記連続測位条件を含んだGPS測位の測位要求と、上記取得した移動局Bのセクタ測位結果(緯度、経度、高度)とを送信する。測位要求を受けた移動局Bでは、当該時点でGPS測位が実行可能であれば、GPS測位部43がGPS測位を実行し、そのGPS測位結果(緯度、経度、高度)をセクタ測位部21へ返信する。一方、当該時点でGPS測位が実行可能でなければ、GPS測位部43は、上記セクタ測位結果(緯度、経度、高度)をセクタ測位部21へ返信する。そして、セクタ測位部21は、受信した測位結果(即ち、GPS測位が実行可能な場合はGPS測位結果、GPS測位が実行可能でない場合はセクタ測位結果)を測位部15へ送信する。これにより、測位部15は、移動局Bの測位結果(緯度、経度、高度)を得る。
【0043】
なお、測位時間間隔については、測位要求にて指定されたとおりの測位時間間隔で測位を実施しても良いが、測位結果取得に時間がかかる場合は、(前回の測位結果の取得以降であり、且つ、前回の測位要求から測位時間間隔を経過した後である)という条件を満たす場合に測位を実施するようにしても良い。また、測位回数を「無限」と設定した場合には、移動局Aの測位要求部41から手動で測位停止要求を送信することで測位を終了する。
【0044】
測位後、測位部15は、測位対象の移動局のID(移動局BのユーザID、ここでは「U001」)に対応付けて、測位結果(緯度、経度、高度)および測位時刻を測位結果記憶部16に記憶する(ステップS4)。このとき、測位部15は、エリア属性記憶部1Aを参照して測位結果の位置座標に対応するエリアを検索し、該当のエリア名を図6の測位結果記憶部16の「エリア名」の欄に記憶する。
【0045】
次に、誤り判定部12は、測位結果記憶部16を参照して過去の複数回の測位結果を読み出し、読み出された複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間をエリア間接続関係記憶部17から読み出す(ステップS5)。なお、このとき、過去の測位結果の読み出しにつき、過去何秒分取得するかについては予め設定しておく。
【0046】
そして、誤り判定部12は、上記異なるエリアが測位された測位時刻の差分を求め、当該測位時刻の差分が最短移動時間よりも小さいか否かを判定することで、測位結果に誤りが有るか否かを判定する(ステップS6)。即ち、測位時刻の差分が最短移動時間よりも小さい場合、測位結果に誤りが有る(具体的には、測位時刻が新しい方の測位結果に誤りがある)と判定し、測位時刻の差分が最短移動時間よりも小さくない場合、測位結果に誤りは無いと判定する。
【0047】
ここで例えば、図6に示す測位結果記憶部16から過去の2回(9時2分と9時3分)の測位結果S6−1、S6−2が読み出されたとすると、これら異なるエリアS6−1、S6−2間を移動する場合の最短移動時間「400秒」がエリア間接続関係記憶部17から読み出される。そして、誤り判定部12は、測位時刻の差分「60秒」を求め、当該測位時刻の差分「60秒」が最短移動時間「400秒」よりも小さいか否かを判定することで、測位結果に誤りが有るか否かを判定する。このとき、測位時刻の差分「60秒」は最短移動時間「400秒」よりも小さいので、測位時刻が新しい方の測位結果S6−2に誤りがあると判定される。
【0048】
なお、エリア間接続関係記憶部17に、異なるエリア間を移動する場合の「最短移動時間」が記憶されておらず「最短移動距離」が記憶されている場合は、上記ステップS5にて、誤り判定部12は、異なるエリア間を移動する場合の最短移動距離を読み出し、該最短移動距離を予め設定された平均移動速度で割ることで最短移動時間を求めることができる。そして、誤り判定部12は、前述と同様に、上記異なるエリアが測位された測位時刻の差分を求め、当該測位時刻の差分が最短移動時間よりも小さいか否かを判定することで、測位結果に誤りが有るか否かを判定することができる。
【0049】
上記のステップS6にて測位結果(具体的には、異なるエリアが測位された2つの測位結果のうち、測位時刻が新しい方の測位結果)に誤りが有ると判定された場合、測位結果補正部13は、以下のような第1の手法又は第2の手法により当該測位結果を補正する(ステップS7)。
【0050】
第1の手法としては、測位結果補正部13は、異なるエリアが測位された2つの測位結果のうち、古い方の測位結果をもって新しい方の測位結果とすることで、該新しい方の測位結果を補正する。
【0051】
第2の手法としては、測位結果補正部13は、異なるエリアが測位された2つの測位結果のうち、新しい方の測位結果(以下「対象エリア」ともいう)に対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が対象エリアよりも大きいエリアをもって、新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正する。
【0052】
ここで、第2の手法に基づく補正を行う場合、対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が対象エリアよりも大きいエリアが複数存在するケースが起こりうる。このようなケースについては、以下2つの対応策を採用すればよい。第1の策として、測位結果補正部13は、該複数存在するエリアの各々と対象エリア間の直線距離をエリア間接続関係記憶部17から読み出し、対象エリアとの間の直線距離が最も短いエリアをもって、新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正すればよい。また、第2の策として、測位結果補正部13は、PD誤り補正情報記憶部18から、対象エリアに対応付けられた「正解とされるエリア」を読み出し、該「正解とされるエリア」をもって、新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正すればよい。
【0053】
なお、第2の手法に基づく補正を行う場合、対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が対象エリアよりも大きいエリアが1つも存在しないときは、測位結果補正部13は、異なるエリアが測位された2つの測位結果のうち、古い方の測位結果を対象として、前述した補正を行えばよい。
【0054】
以上のような補正後は、測位結果出力部14が、補正後の測位結果を出力する(ステップS8)。具体的には、測位結果出力部14は、補正後の測位結果を移動局A(測位要求を行った移動局)へ送信するとともに、該測位結果出力部14を構成する表示装置に表示出力する。移動局Aでは、測位要求部41が補正後の測位結果を受信すると、受信された測位結果を表示部42に表示出力する(ステップS9)。このとき、画面上に文字で例えば「測位対象はエリアS6−1付近にいます」といった表示をしてもよいし、画面に表示した地図上で補正エリアをプロットする形で表示をしてもよい。これにより、移動局Aを携帯している親は、子供が携帯している移動局Bの位置(即ち、子供のいる位置)を認識することができる。
【0055】
以上の実施形態によれば、測位時点での電波環境の影響による伝播遅延の検知誤りに起因した測位誤差を適正に補正し、測位結果の信頼性を向上させることができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、測位対象の移動局B以外の移動局A又は測位サーバ10から測位要求を行う態様を示したが、測位対象の移動局自身から測位要求を行っても良い。また、測位サーバ10が備える機能の全てを移動局内に搭載してもよい。このとき、当該移動局は、自己を対象とした測位および測位結果の補正を自律的に行うことができる。この場合、当該移動局は、本発明に係る測位装置に相当する。また、測位サーバ10が備える機能のうち、一部の機能を移動局内に搭載することで、該移動局は測位サーバ10と連携して、自己の移動局を対象とした測位および測位結果の補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】発明の実施形態にかかる通信システムの構成図である。
【図2】測位サーバのハードウェア構成図である。
【図3】エリア属性記憶部に記憶された情報を示す図である。
【図4】あるビルの屋内に設定されたエリアを示す図である。
【図5】エリア間接続関係記憶部に記憶された情報を示す図である。
【図6】測位結果記憶部に記憶される測位結果の例を示す図である。
【図7】PD誤り補正情報記憶部に記憶された情報を示す図である。
【図8】通信システムにおいて実行される処理フローを示す図である。
【図9】PRACH-PD測位方式を説明するための図である。
【図10】PRACH-PD測位方式の屋内への適用例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1…通信システム、10…測位サーバ、10A…CPU、10B…主記憶部、10C…補助記憶部、10D…通信制御部、10E…出力部、10F…操作部、11…通信制御部、12…誤り判定部、13…測位結果補正部、14…測位結果出力部、15…測位部、16…測位結果記憶部、17…エリア間接続関係記憶部、18…PD誤り補正情報記憶部、19…測位要求部、1A…エリア属性記憶部、20…RNC、21…セクタ測位部、30…基地局、40…移動局、41…測位要求部、42…表示部、43…GPS測位部、90…基地局、91…移動局、92…MOF、95、96…アンテナ群、93、94…遅延線。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位装置であって、
同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を記憶したエリア間接続関係記憶部と、
複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を前記エリア間接続関係記憶部から読み出して、読み出した情報に基づいて当該異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間と当該異なるエリアが測位された測位時刻の差分とを求め、当該測位時刻の差分が前記最短移動時間よりも小さい場合に、所定の手法で前記測位結果を補正する補正部と、
補正後の測位結果を出力する出力部と、
を備える測位装置。
【請求項2】
測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付け、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、前記移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位部と、
前記測位部による測位結果としての前記移動局が位置するエリアと、測位時刻とを記憶する測位結果記憶部と、
同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を記憶したエリア間接続関係記憶部と、
複数回の測位結果と測位時刻とを前記測位結果記憶部から読み出し、読み出された複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を前記エリア間接続関係記憶部から読み出して、読み出した情報に基づいて当該異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間と当該異なるエリアが測位された測位時刻の差分とを求め、当該測位時刻の差分が前記最短移動時間よりも小さい場合に、測位時刻が新しい方の測位結果に誤りがあると判定する誤り判定部と、
前記誤り判定部により誤りがあると判定された場合、所定の手法で前記測位結果を補正する測位結果補正部と、
補正後の測位結果、又は、誤りがないと判定された測位結果を出力する測位結果出力部と、
を備える測位装置。
【請求項3】
前記エリア間接続関係記憶部は、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の、予め求められた最短移動時間を記憶し、
前記誤り判定部は、前記エリア間接続関係記憶部から、複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を読み出すことで該最短移動時間を得る、
ことを特徴とする請求項2記載の測位装置。
【請求項4】
前記エリア間接続関係記憶部は、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の、予め求められた最短移動距離を記憶し、
前記誤り判定部は、前記エリア間接続関係記憶部から、複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動距離を読み出し、該最短移動距離を所定の平均移動速度で割ることで前記最短移動時間を求める、
ことを特徴とする請求項2記載の測位装置。
【請求項5】
前記測位結果補正部は、測位時刻が複数の測位結果のうち、古い方の測位結果をもって新しい方の測位結果とすることで、該新しい方の測位結果を補正する、
ことを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の測位装置。
【請求項6】
前記測位結果補正部は、補正対象の新しい方の測位結果である対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアをもって前記新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正する、
ことを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の測位装置。
【請求項7】
前記エリア間接続関係記憶部は、さらに、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間の、予め求められた直線距離を記憶し、
前記測位結果補正部は、前記対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアが複数存在する場合、該複数存在するエリアの各々と前記対象エリア間の直線距離を前記エリア間接続関係記憶部から読み出し、前記対象エリアとの間の直線距離が最も短いエリアをもって前記新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正する、
ことを特徴とする請求項6記載の測位装置。
【請求項8】
前記測位装置は、同一のセクタに属する複数のエリアにて、前記移動局の位置が一のエリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播遅延誤り補正にて正解とされるエリアを記憶した伝播遅延誤り補正情報記憶部を、さらに備え、
前記測位結果補正部は、前記対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアが複数存在する場合、前記伝播遅延誤り補正情報記憶部から、前記対象エリアに対応付けられた正解とされるエリアを読み出し、該正解とされるエリアをもって前記新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正する、
ことを特徴とする請求項6記載の測位装置。
【請求項9】
前記測位結果補正部は、前記対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアが存在しない場合、測位時刻が複数の測位結果のうち古い方の測位結果を対象として所定の補正を行う、
ことを特徴とする請求項6記載の測位装置。
【請求項10】
GPS測位を行う少なくとも1つの移動局と、セルを形成する少なくとも1つの基地局と、セクタ測位を行う基地局制御装置と、前記移動局の位置の測位を行う測位装置とを含んで構成された通信システムであって、
前記測位装置は、
測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付け、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、前記移動局がどのエリアに位置するかを、当該移動局によるGPS測位の結果又は前記基地局制御装置によるセクタ測位の結果に基づいて、推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位部と、
前記測位部による測位結果としての前記移動局が位置するエリアと、測位時刻とを記憶する測位結果記憶部と、
同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を記憶したエリア間接続関係記憶部と、
複数回の測位結果と測位時刻とを前記測位結果記憶部から読み出し、読み出された複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を前記エリア間接続関係記憶部から読み出して、読み出した情報に基づいて当該異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間と当該異なるエリアが測位された測位時刻の差分とを求め、当該測位時刻の差分が前記最短移動時間よりも小さい場合に、測位時刻が新しい方の測位結果に誤りがあると判定する誤り判定部と、
前記誤り判定部により誤りがあると判定された場合、所定の手法で前記測位結果を補正する測位結果補正部と、
補正後の測位結果、又は、誤りがないと判定された測位結果を出力する測位結果出力部と、
を備える
ことを特徴とする通信システム。
【請求項11】
セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位装置、により実行される測位方法であって、
前記測位装置により予め記憶された、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報から、複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を読み出すステップと、
読み出した情報に基づいて、当該異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間と当該異なるエリアが測位された測位時刻の差分とを求め、当該測位時刻の差分が前記最短移動時間よりも小さい場合に、所定の手法で前記測位結果を補正するステップと、
補正後の測位結果を出力するステップと、
を備える測位方法。
【請求項12】
測位装置により実行される測位方法であって、
測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付けるステップと、
セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、前記移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行うステップと、
測位結果としての前記移動局が位置するエリアと、測位時刻とを前記測位装置の測位結果記憶部に記憶するステップと、
複数回の測位結果と測位時刻とを前記測位結果記憶部から読み出し、読み出された複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報を、前記測位装置により予め記憶された同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の最短移動時間を求めるための情報から、読み出すステップと、
読み出した情報に基づいて当該異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間と当該異なるエリアが測位された測位時刻の差分とを求め、当該測位時刻の差分が前記最短移動時間よりも小さい場合に、測位時刻が新しい方の測位結果に誤りがあると判定するステップと、
誤りがあると判定された場合に、所定の手法で前記測位結果を補正するステップと、
補正後の測位結果、又は、誤りがないと判定された測位結果を出力するステップと、
を備える測位方法。
【請求項13】
前記測位装置は、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の、予め求められた最短移動時間を記憶しており、
前記判定するステップにて、前記測位装置は、複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動時間を読み出すことで該最短移動時間を得る、
ことを特徴とする請求項12記載の測位方法。
【請求項14】
前記測位装置は、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間を移動する場合の、予め求められた最短移動時間を記憶しており、
前記判定するステップにて、前記測位装置は、複数回の測位結果として得られる複数のエリアにおいて異なるエリア間を移動する場合の最短移動距離を読み出し、該最短移動距離を所定の平均移動速度で割ることで前記最短移動時間を求める、
ことを特徴とする請求項12記載の測位方法。
【請求項15】
前記補正するステップにて、前記測位装置は、測位時刻が複数の測位結果のうち、古い方の測位結果をもって新しい方の測位結果とすることで、該新しい方の測位結果を補正する、
ことを特徴とする請求項12〜14の何れか1項に記載の測位方法。
【請求項16】
前記補正するステップにて、前記測位装置は、補正対象の新しい方の測位結果である対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアをもって前記新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正する、
ことを特徴とする請求項12〜14の何れか1項に記載の測位方法。
【請求項17】
前記測位装置は、同一のセクタに属し伝播遅延の異なる複数のエリア間の、予め求められた直線距離をさらに記憶しており、
前記補正するステップにて、前記測位装置は、前記対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアが複数存在する場合、該複数存在するエリアの各々と前記対象エリア間の直線距離を前記エリア間接続関係記憶部から読み出し、前記対象エリアとの間の直線距離が最も短いエリアをもって前記新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正する、
ことを特徴とする請求項16記載の測位方法。
【請求項18】
前記測位装置は、同一のセクタに属する複数のエリアにて、前記移動局の位置が一のエリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播遅延誤り補正にて正解とされるエリアを予め記憶しており、
前記補正するステップにて、前記測位装置は、前記対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアが複数存在する場合、前記対象エリアに対応付けられた正解とされるエリアを読み出し、該正解とされるエリアをもって前記新しい方の測位結果とすることで該新しい方の測位結果を補正する、
ことを特徴とする請求項16記載の測位方法。
【請求項19】
前記補正するステップにて、前記測位装置は、前記対象エリアに対し、同一のセクタに属し且つ伝播遅延が前記対象エリアよりも大きいエリアが存在しない場合、測位時刻が複数の測位結果のうち古い方の測位結果を対象として所定の補正を行う、
ことを特徴とする請求項16記載の測位方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−218801(P2009−218801A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59694(P2008−59694)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】