説明

測光装置

【課題】達成可能な冷却温度を適切に設定できる測光装置を提供する。
【解決手段】ステップS3において、CPU11は、ステップS2で読み取られた温度T1を、予め設定された基準温度Trと比較する。比較の結果、T1<Trである場合には、温度T_Lが達成可能と判定し、ステップS4へ進み、冷却温度を温度T_Lに設定する。一方、比較の結果、T1<Trでない場合すなわちT1≧Trである場合には、温度T_Lが達成不可能と判定し、ステップS6へ進み、冷却温度を温度T_Hに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測光装置に係り、特に分光放射輝度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CCD等の固体撮像素子(CCD撮像素子)では、入射光によって発生する信号出力のほかに入射光によらない、いわゆる暗電流が発生する。これは、信号Signalに対しての雑音Noiseとして扱われるが、その値が非常に重要である。信号に対しての雑音は、一般にはS/N(Signal/Noise)比として考える。
【0003】
CCD撮像素子を使用した測光装置や電子カメラでは、微小光を測定するためには、電荷蓄積時間を長くして測定する必要がある。しかし、暗電流は電荷蓄積時間に比例して大きくなり、この影響は微弱な入力光ほど顕著になり無視することができない。
【0004】
また、CCD撮像素子の暗電流は大きな温度特性を持っている。一般的にCCD撮像素子の温度が7度上がると、暗電流は約2倍に増加する。
【0005】
すなわち、CCD撮像素子を使用した測光装置や電子カメラでは、撮影時におけるCCD撮像素子の温度上昇が雑音の原因となる。このため、S/N比の良好な出力信号を得るためには、CCD撮像素子を適正な温度に維持するために冷却が必要となる。
【0006】
したがって、CCD撮像素子を用いた電子カメラでは、CCD撮像素子のS/N比をあげるために、ペルチェ冷却素子を用いCCD撮像素子を冷却しながら撮影する手法が知られている(特許文献1〜2など参照)。
【0007】
なお、ペルチェ冷却素子は、2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルチェ効果(Peltier-effect)を利用した板状の半導体素子である。直流電流を流すと、一方の面が吸熱し、反対側の面に発熱が起こる。この吸熱面にCCD撮像素子を接触させ、発熱面を放熱器などにより放熱させることにより、CCD撮像素子の冷却を行うことが行われている。
【0008】
【特許文献1】特開平8−130668号公報
【特許文献2】特開2003−166809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜2のように、ペルチェ冷却素子を用いてCCD撮像素子を冷却しながら撮影する場合には、ペルチェ冷却素子や放熱器の性能等で表される冷却条件により、当該CCD撮像素子において冷却により達成可能な温度(以下では冷却温度と呼ぶ)が決まる。
【0010】
一般に、CCD撮像素子が実際に使用される際の温度(以下では使用環境温度と呼ぶ)は、搭載された機器の種類や、当該機器が使用される環境によりばらつくが、上記の冷却温度は、使用環境温度のばらつきを考慮して余裕を持たせて設定する必要がある。すなわち、想定され得る使用環境温度のうち最も高い温度においても達成可能となるように、冷却温度を高めに設定する必要がある。CCD撮像素子は、温度特性を有するので、このような余裕を持たせて冷却温度を設定しない場合には、使用環境温度が高くなるとCCD撮像素子の温度を冷却温度まで冷却することができず、設定された温度と達成された温度とに差が生じ、測定される分光放射輝度値(測定値)に誤差が生じることとなる。この理由は以下の通りである。
【0011】
CCD撮像素子から出力された信号は、CDS(相関2重サンプリング)およびADC(A/Dコンバータ)で構成されるアナログフロントエンドでデジタル化され生カウント値としてCPUへ入力される。CPUは、この生カウント値に対して、3つの演算補正係数(CCDおよび回路に依存する直線性補正係数、CCDセルピッチごとのレベル(感度)補正係数、およびCCDセルピッチを1nmピッチに波長変換するためのセンサ波長テーブルを用いて補正することにより、補正済み分光放射輝度が測定値として得られる。
【0012】
ここで、直線性補正係数は、光量と電荷量との関係が非線形であることに起因するずれを補正するためのものである。また、レベル(感度)補正係数は、CDDセルのピッチ毎、例えば、CCDセルの1ラインごとの感度のばらつきを補正するためのものである。また、センサ波長テーブルは、CDDセルのピッチ毎のデータを1nmピッチの波長に係るデータに換算するように補正するためのものである。
【0013】
一般に、CCD撮像素子の感度は温度により変化する(すなわち温度特性を有する)ので、上記3つの演算補正係数は、設定された冷却温度に基づき予め算出されてメモリに保存されている。従って、上述したように、設定された温度と達成された温度とに差が生じる場合には、適切な演算補正係数を用いることができなくなり誤差が生じるので、これを防ぐために、余裕を持たせて冷却温度を設定している。
【0014】
しかし、冷却温度に余裕を持たせた場合には、実際には達成可能である温度であるにも拘わらず冷却温度として設定できない温度範囲が生じる。すなわち、達成可能な冷却温度を適切に設定できないため、暗電流が少ない状態で使うことができる場合においても、暗電流が多い状態で使わざるを得ないという問題点があった。
【0015】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、達成可能な冷却温度を適切に設定できる測光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る測光装置は、光源としての被測定物から出射された光を取り込んで光電変換し信号を出力する受光素子と、前記受光素子に取り付けられ前記受光素子から熱を放出させ冷却する冷却手段と、前記受光素子を使用する環境における温度である使用環境温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段で検出される前記使用環境温度に対応した所望の冷却温度を設定して前記冷却手段を制御する温度制御手段と、複数の前記所望の冷却温度にそれぞれ対応させて演算補正値を記憶する補正値記憶手段と、前記温度制御手段によって設定された所望の冷却温度に応じて、前記補正値記憶手段に記憶された複数の前記演算補正値から一の前記演算補正値を選択し、該一の前記演算補正値を用いて、前記受光素子から出力された信号に対して演算を施すことで測定値を算出する演算手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に記載の発明に係る測光装置は、請求項1に記載の測光装置であって、前記温度検出手段は、1個または複数個の温度検出手段からなり、前記使用環境温度として、前記測光装置を収納する筐体の内部の温度、前記測光装置を収納する筐体の外部の温度、および前記受光素子の内部の温度のうちの少なくとも一つの温度を検出することを特徴とする。
【0018】
また、請求項3に記載の発明に係る測光装置は、請求項1に記載の測光装置であって、前記温度検出手段により検出された前記使用環境温度が、予め定められた所定の温度範囲外となった場合に、警告および測定の禁止のうちの少なくとも一方を行う制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
また、請求項4に記載の発明に係る測光装置は、請求項1に記載の測光装置であって、前記温度検出手段により検出された前記使用環境温度が、予め定められた所定の温度範囲外となった場合に、該検出された前記使用環境温度を記憶する温度記憶手段と、前記温度記憶手段に記憶された前記使用環境温度を現在の使用環境温度と比較することにより、前記所望の冷却温度の切り替えが可能かどうかを判定する手段とをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る測光装置は、使用環境温度に応じて、記憶手段に記憶された複数の演算補正値から一の演算補正値を選択し該一の演算補正値を用いて、受光素子から出力された信号に対して演算を施すことで測定値を算出するので、達成可能な冷却温度を適切に設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る測光装置としての分光放射輝度計およびそれを用いた測光方法について説明する。
【0022】
<実施の形態1>
図1は実施の形態1に係る測光装置としての分光放射輝度計の構成図である。図1の分光放射輝度計は、光源(被測定物)1から出射された光を回折格子6に入射する光学系(対物レンズ2、アパーチャミラー3、光ファイバー4、およびコリメータレンズ5)を備える。アパーチャミラー3は複数の径の穴が開いており測定角切替機能を有し、対物レンズ2の像は、アパーチャミラー3の穴に結像し光ファイバー4によりミキシングされた後にコリメータレンズ5によってコリメートされ、さらに、平行光束として回折格子6に導かれる。これにより、分光が行われる。
【0023】
そして、回折格子6で分光された光束は、結像レンズ7によりCCDセンサ8に結像される。CCDセンサ8上には光源(被測定物)1から発せられたスペクトルが形成される。分光された光は波長により結像位置が異なるため、各波長に対応したCCDセンサ8上の位置の画素の出力を得ることにより各波長に対応する信号を光電変換で取り出すことができる。
【0024】
CCDセンサ8には、ペルチェ冷却素子9が、その吸熱面が接触するよう取り付けられている。温度制御手段10は、CCDセンサ8が、所望の冷却温度で安定するよう、CCDセンサ8に内蔵された図示しない温度センサ(サーミスタ)の出力をモニタしながら、ペルチェ冷却素子9に供給する電圧を制御する。本実施の形態に係る測光装置は、上記所望の冷却温度を複数(例えば、温度T_H,T_L(T_H>T_L)の2つとする)設定することを特徴とするものである。
【0025】
ペルチェ冷却素子9の放熱面側には、放熱器15が、接触するように取り付けられている。ペルチェ冷却素子9からの発熱は放熱器15を伝わり放熱される。
【0026】
CCDセンサ8等を収納する筐体20には、吸気孔13と排気孔14とが備わっている。吸気孔13には、外気を放熱器15に吹きつけ、放熱器15の冷却効果をあげるためのファン21が取り付けられている。筐体20内部の熱は排気孔14より排出される。
【0027】
CPU11は、温度センサ12a,12bからの入力およびCCDセンサ8に内蔵された図示しない温度センサ(サーミスタ)からの入力に基づき、温度制御手段10に対し、設定する冷却温度の切り替えを指示する。つまり、温度制御手段10は、温度センサ12a,12bを用いて検出された温度に対応する所望の冷却温度を設定する。温度センサ12aは筐体20の内部の温度(筐体内温度)をモニタする。温度センサ12bはファン21付近すなわち吸気孔13付近に配置され外気温度をモニタする。なお、外気温をモニタする温度センサ12bは、筐体20の外部に配置してもよい。なお、以下では、温度センサ12a,12bを総称して、単に温度センサ12とも呼ぶ。
【0028】
図2は、図1の冷却部および信号処理部の詳細を示したブロック図である。
【0029】
光源(被測定物)1の各波長に対応する信号は、CCDセンサ8より出力される。出力された信号はCDS(相関2重サンプリング)19およびADC(A/Dコンバータ)16で構成されるアナログフロントエンドでデジタル化されCPU11に入力される。
【0030】
メモリ17には、CCDセンサ8の感度の温度特性の演算補正係数が入っている。すなわち、CCDセンサ8の感度は温度により変化する(すなわち温度特性を有する)ので、ペルチェ冷却素子9の複数の所望の冷却温度すなわち温度T_H,T_Lに対応するように、それぞれ、CCDセンサ8の感度の演算補正係数がメモリ17に保存されている(図3参照)。すなわち、図3に示されるように、直線性補正係数、レベル(感度)補正係数、およびセンサ波長テーブルは、温度T_H,T_Lに対応して2パターンが保存されている。なお、CCDセンサ8から出力された信号がアナログフロントエンドでデジタル化されてなる生カウント値に対して、上記3つの演算補正係数を順次掛けていくことにより、測定値が求められるが、必要に応じて、内蔵ND(減光)フィルター用の補正やユーザによる任意の補正を行ってもよい。
【0031】
CPU11においては、CCDセンサ8から出力される信号への演算処理を含むさまざまな演算処理が行われる。そのときに、CPU11は、温度制御手段10で現在設定されている所望の冷却温度に対するCCDセンサ8の感度の温度特性の演算補正係数を、メモリ17から読み出し、使用する。すなわち、上記の演算補正係数は、冷却温度により異なるので、冷却温度が温度T_H,T_Lの2種類に設定される場合には、設定された冷却温度に応じて、2パターンの演算補正係数が使い分けられ、感度の補正演算が行われている。演算処理が行われた後、補正済みのカウント値は、測定値として、メモリ17に一時的に保存されるとともに、表示部18にも表示される。
【0032】
すなわち、本実施の形態において、CPU11は、温度センサ12a,12bを用いて、それぞれ、筐体内温度および外気温度を得る。また、メモリ17には、温度センサ12からの入力に対して、温度T_H,T_Lのどちらを冷却温度として採用するかを設定した情報が予め保存されている。CPU11は、この情報に基づき、冷却温度を決定し、必要に応じ温度制御手段10へ冷却温度の切り替えを指示する。
【0033】
なお、図1においては、温度センサ12a,12bをそれぞれ1つずつ設けた場合が示されているが、温度センサ12a,12bの一方のみを設けてもよい。また、温度センサ12a,12bを複数ずつ設けることにより測定精度を上げてもよい。また、温度センサ12a,12bの両方を設けた場合には、筐体内温度T_12aと外気温度T_12bとの差ΔT_12a−12bを求めることにより、筐体内の温度上昇分を求めてもよい。なお、以下では、筐体内温度T_12aおよび外気温度T_12bを総称して、単に温度Tとも呼ぶ。この温度Tは、CCDセンサ8を使用する環境における温度すなわち使用環境温度として検出される温度であるが、この使用環境温度として、CCDセンサ8に内蔵された図示しない温度センサ(サーミスタ)の出力を採用してもよい。すなわち、使用環境温度としては、筐体内温度T_12a、外気温度T_12b、およびCCDセンサ8内部の温度のうちの少なくとも一つの温度を採用すればよい。
【0034】
メモリ17には、温度センサ12からの入力に対する基準値Trが保存されている。この基準値Trは、温度T_Lを冷却温度として達成できるような温度T(使用環境温度)の上限値として規定されるものである。すなわち、温度T_Lを冷却温度とした場合において、筐体内温度T_12aおよび外気温度T_12bが、ペルチェ冷却素子9や放熱器15の冷却能力を上回る温度まで上昇すると、CCDセンサ8を冷却し切れずCCDセンサ8の温度が温度T_Lより高くなってしまう。このような場合には、設定された温度と達成された温度とに差が生じるので、温度T_Lに対応する演算補正係数を用いて補正演算を行うと、測定値に誤差が生じることとなる。このような事象が発生しない範囲内での温度Tの上限値が基準値Trとして保存されている。
【0035】
なお、CPU11は、温度センサ12からの入力が基準値Trを上回った場合には、ユーザへ警告(表示部18への表示や音声の出力等)および測定(カウント)の禁止のうちの少なくとも一方を行う。
【0036】
図4〜6は、図1〜2の測光装置の動作を示すフローチャートである。図4〜6においては、冷却温度として、2つの温度T_H,T_Lが設定された場合が示されている。図4は、分光放射輝度計が測定(カウント)動作開始時に冷却温度として温度T_H,T_Lのいずれかを選択し設定する動作が示されている。図5は、温度T_Lが冷却温度として設定されている場合の動作が示されている。図6は、温度T_Hが冷却温度として設定されている場合の動作が示されている。なお、図4〜6においては、ステップS5,S7,S15,S19,S24でメモリ17から演算補正係数が読み出されるが、これらは、上述したように、生カウント値の補正に用いられる。
【0037】
図4を参照して、まず、ステップS1において、分光放射輝度計の電源がONされると、冷却動作が開始される。すなわち、温度制御手段10は、CCDセンサ8を所望の冷却温度(温度T_H,T_Lのいずれか)に安定させるように、CCDセンサ8に内蔵された図示しない温度センサ(サーミスタ)の出力をモニタしながら、ペルチェ冷却素子9に供給する電圧を制御し始める。
【0038】
次に、ステップS2において、CPU11は、温度センサ12の温度T1を読み取る。この温度T1としては、筐体内温度T_12aを採用してもよく、外気温度T_12bを採用してもよく、筐体内温度T_12aと外気温度T_12bとの差ΔT_12a−12bを採用してもよい。
【0039】
次に、ステップS3において、CPU11は、ステップS2で読み取られた温度T1を、予め設定された基準温度Trと比較する。
【0040】
比較の結果、T1<Trである場合には、温度T_Lが達成可能と判定し、冷却温度を温度T_Lに設定し(ステップS4)、温度T_Lに対応する演算補正係数をメモリ17から読み出し(ステップS5)、図5のステップS11へ進む。
【0041】
一方、比較の結果、T1<Trでない場合すなわちT1≧Trである場合には、温度T_Lが達成不可能と判定し、冷却温度を温度T_Hに設定し(ステップS6)、温度T_Hに対応する演算補正係数をメモリ17から読み出し(ステップS7)、図6のステップS21へ進む。
【0042】
また、図5を参照して、冷却温度が温度T_Lに設定されている場合には、まず、ステップS11において、CPU11は、CCDセンサ8に内蔵された図示しない温度センサ(サーミスタ)の出力を温度T_CCDとして読み取る。
【0043】
次に、ステップS12において、CPU11は、ステップS11で読み取られた温度T_CCDが、冷却温度を温度T_Lと設定して制御するための許容範囲内(例えば±0.5℃)に入っているか(すなわちCCDセンサ8の温度が大きく上昇していないか)どうかを判定する。判定の結果、温度T_CCDが許容範囲内に入っている場合には、冷却温度を温度T_Lから温度T_Hへ切り替える必要はないので、ステップS11へ戻る。一方、判定の結果、温度T_CCDが許容範囲内に入っていない場合には、冷却温度を温度T_Lから温度T_Hへ切り替える必要があるので、ステップS13へ進む。
【0044】
次に、ステップS13において、CPU11は、温度センサ12の温度T2を読み取り、メモリ17に格納する。なお、この温度T2は、CCDセンサ8の温度が大きく上昇した場合すなわち制御が不可能な状態における温度としてメモリ17に保存され、後述するステップS17において、回復の判定に用いられる。
【0045】
次に、ステップS14において、CPU11は、冷却温度を温度T_Hに設定する。
【0046】
次に、ステップS15において、CPU11は、温度T_Hに対応する演算補正係数をメモリ17から読み出す。
【0047】
次に、ステップS16において、CPU11は、温度センサ12の温度T3を読み取る。
【0048】
次に、ステップS17において、CPU11は、ステップS13でメモリ17に格納された温度T2と、ステップS16で読み取られた温度T3とを比較する。すなわち、制御が不可能となった状態において読み取られた温度T2と、冷却温度を温度T_Lから温度T_Hへ切り替えた後に読み取られた温度T3とを比較することにより、現在、冷却温度を温度T_Lに切り替えても制御が可能な状態に回復しているかどうかを判定する。
【0049】
比較の結果、T3<T2である場合には、温度T_Lが達成可能と判定し、冷却温度を温度T_Lに設定し(ステップS18)、温度T_Lに対応する演算補正係数をメモリ17から読み出し(ステップS19)、ステップS11へ戻る。
【0050】
一方、T3<T2でない場合すなわちT3≧T2である場合には、温度T_Lが達成不可能と判定し、ステップS16へ戻る。
【0051】
なお、ステップS18〜S19において冷却温度の切り替えが頻繁に行われるのを防ぐために、ステップS17の比較においては、温度T2にヒステリシスα(℃)を与えてもよい。すなわち、式(T3<T2)の真偽で判定を行うのではなく、(T3<T2−α)の真偽で判定を行うことにより、切り替え温度付近での切り替えが行われにくくする。また、切り替え回数に応じて増加するヒステリシスα(℃)を用いてもよく、この場合には、切り替え回数をCPUでカウントして、カウント数に応じてα(℃)を段階的に増加させれば良い。
【0052】
また、図6を参照して、冷却温度が温度T_Hに設定されている場合には、まず、ステップS21において、CPU11は、温度センサ12の温度T4を読み取る。
【0053】
次に、ステップS22において、CPU11は、ステップS21で読み取られた温度T4を、予め設定された基準温度Trと比較する。
【0054】
比較の結果、T4<Trである場合には、温度T_Lが達成可能と判定し、冷却温度を温度T_Lに設定し(ステップS23)、温度T_Lに対応する演算補正係数をメモリ17から読み出し(ステップS24)、図5のステップS11へ進む。
【0055】
一方、比較の結果、T4<Trでない場合すなわちT4≧Trである場合には、温度T_Lが達成不可能と判定し、ステップS21へ戻る。
【0056】
このように、本実施の形態に係る測光装置としての分光放射輝度計は、生カウント値を複数の冷却温度(例えば温度T_L,T_Hの2種類)にそれぞれ対応させて補正するための演算補正係数をメモリ17に複数パターン(例えば2パターン)保存しておき、検出された使用環境温度に応じて使い分ける。従って、必ずしも余裕を持たせた比較的高い温度(例えば温度T_H)のみを冷却温度として制御を行う必要はなく、通常は余裕を持たせない比較的低い温度(例えば温度T_L)を冷却温度として制御を行い、温度T_L等で制御が不可能な場合のみ温度T_H等に切り替えるようにすることができる。よって、達成可能な冷却温度を適切に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施の形態1に係る分光放射輝度計の構成図である。
【図2】実施の形態1に係る分光放射輝度計の冷却部および信号処理部の詳細を示したブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る分光放射輝度計により用いられる演算補正係数を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る分光放射輝度計が動作開始時に冷却温度として温度T_H,T_Lのいずれかを選択し設定する動作を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1に係る分光放射輝度計において温度T_Lが冷却温度として設定されている場合の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1に係る分光放射輝度計において温度T_Hが冷却温度として設定されている場合の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 光源(被測定物)
2 対物レンズ
3 アパーチャミラー
4 光ファイバー
5 コリメータレンズ
6 回折格子
7 結像レンズ
8 CCDセンサ
9 ペルチェ冷却素子
10 温度制御手段
11 CPU
12 温度センサ
13 吸気孔
14 排気孔
15 放熱器
16 ADC(A/Dコンバータ)
17 メモリ
18 表示部
19 CDS(相関2重サンプリング)
20 筐体
21 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源としての被測定物から出射された光を取り込んで光電変換し信号を出力する受光素子と、
前記受光素子に取り付けられ前記受光素子から熱を放出させ冷却する冷却手段と、
前記受光素子を使用する環境における温度である使用環境温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段で検出される前記使用環境温度に対応した所望の冷却温度を設定して前記冷却手段を制御する温度制御手段と、
複数の前記所望の冷却温度にそれぞれ対応させて演算補正値を記憶する補正値記憶手段と、
前記温度制御手段によって設定された所望の冷却温度に応じて、前記補正値記憶手段に記憶された複数の前記演算補正値から一の前記演算補正値を選択し、該一の前記演算補正値を用いて、前記受光素子から出力された信号に対して演算を施すことで測定値を算出する演算手段と
を備えることを特徴とする測光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測光装置であって、
前記温度検出手段は、1個または複数個の温度検出手段からなり、前記使用環境温度として、前記測光装置を収納する筐体の内部の温度、前記測光装置を収納する筐体の外部の温度、および前記受光素子の内部の温度のうちの少なくとも一つの温度を検出する
ことを特徴とする測光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の測光装置であって、
前記温度検出手段により検出された前記使用環境温度が、予め定められた所定の温度範囲外となった場合に、警告および測定の禁止のうちの少なくとも一方を行う制御手段
をさらに備えることを特徴とする測光装置。
【請求項4】
請求項1に記載の測光装置であって、
前記温度検出手段により検出された前記使用環境温度が、予め定められた所定の温度範囲外となった場合に、該検出された前記使用環境温度を記憶する温度記憶手段と、
前記温度記憶手段に記憶された前記使用環境温度を現在の使用環境温度と比較することにより、前記所望の冷却温度の切り替えが可能かどうかを判定する手段と
をさらに備えることを特徴とする測光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−145224(P2009−145224A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323399(P2007−323399)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】