説明

湿気保護蛍光体およびLED照明デバイス

本発明によれば、酸化物のコーティングでコーティングされたフォトルミネセント・蛍光体であって、(1)(a)金属チオガレイト・蛍光体および(b)金属硫化物蛍光体から選択される無機蛍光体と、(2)少なくとも1つの酸化物を有する少なくとも1つの層を備えたコーティングとを備えたフォトルミネセント・蛍光体が提供される。本発明によるコーティングされたフォトルミネセント・蛍光体は、コーティングされていない場合より耐水誘導劣化性が優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を耐水誘導劣化性にする酸化物のコーティングを有する無機蛍光体を備えたフォトルミネセント・蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
とりわけ、蛍光体粒子を湿気腐食から保護するマイクロカプセル化方法およびマイクロカプセル化された調合物が開示されている。本明細書において使用されているように、「マイクロカプセル化」、「マイクロカプセル化された」あるいは「マイクロカプセル化する」という用語の意味は、コーティングされた蛍光体を形成するために個々の蛍光体結晶粒または蛍光体粒子の表面の材料の層に関していること、これらの層を含んでいること、あるいはこれらの層を形成することにそれぞれ対応する。カプセル化することができるベース・蛍光体には、金属チオガレイト・フォトルミネセント・蛍光体(例えば、それに限定されないが、ストロンチウム・チオガレイト(STG)蛍光体など)および金属硫化物フォトルミネセント・蛍光体(例えば、それには限定されないが、ストロンチウム・カルシウム硫化物(SCS)蛍光体など)などの硫黄を含有した材料がある。カプセル化された蛍光体粒子は、LED(発光ダイオード)チップの光路に配置することにより、白色光を含む任意の広い色域を放出する照明デバイスを形成することができる。例えば、それらに限定されないが、STG:EuおよびSCS:Euなどの蛍光体は、LEDの一次放出の一部を青色からそれぞれ緑色放出および赤色放出に変換し、白色光を形成することができる。
【0003】
金属チオガレイト・フォトルミネセント・蛍光体および金属硫化物フォトルミネセント・蛍光体は、より長い波長を含むべくそのカラー・イールドの修正が探求されている発光デバイス、とりわけ青色放出LEDに使用するための優れたフォトルミネセント・蛍光体を提供することができる。しかしながら、これらの蛍光体は、水または水蒸気、したがって湿気によって容易に劣化する可能性がある。これらの蛍光体をLEDの上、例えばエポキシなどの重合体の中に適切に埋め込むことにより、これらの蛍光体を湿気から保護することは可能である。しかしながら、保護されたこのような蛍光体は、有利ではあるが、それ以上に、場合によってはその製造および取扱いが複雑である。
【0004】
米国特許第6,811,813号に記載されているコーティング技法は、現在、例えばSCS蛍光体と共に使用されており、湿気からのある程度の保護を提供している。しかしながら、加水分解化学成長技法は、コーティング技法に水が使用されているにもかかわらず、予期に反してより良好な保護を適切に提供することが分かっている。例えば米国特許第5,958,591号に、他の蛍光体、主としてエレクトロルミネセンス・蛍光体に対する加水分解化学気相成長(CVD)が記載されているが、このような方法によって、安定したコーティングが施された金属チオガレイト・フォトルミネセント・蛍光体または金属硫化物フォトルミネセント・蛍光体を提供することができることについては何も示されていない。本明細書において使用されているように、「安定したコーティングが施された」という表現は、コーティングされた蛍光体が、長い時間期間、例えば約200時間にわたってその機能を維持するための優れた耐湿気環境性を有していることを意味している。
【特許文献1】米国特許第6,811,813号
【特許文献2】米国特許第5,958,591号
【特許文献3】米国特許第6,544,438号
【特許文献4】米国特許第7,018,565号
【特許文献5】米国特許出願公告第2004/206936号
【特許文献6】米国特許出願公告第2006/012287号
【特許文献7】米国特許第6,783,700号
【特許文献8】米国特許出願公告第2004/0145289号
【特許文献9】米国特許出願公告第2004/0145288号
【特許文献10】米国特許出願公告第2004/0159846号
【特許文献11】米国仮特許出願第60/741,307号
【特許文献12】米国特許出願第11/455,560号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、例えば、それには限定されないが、さもなければ極端に湿気に敏感なSCS蛍光体を加水分解コーティング方法によって湿気から保護し、それらの商用的有用性を著しく改善することができることが分かっている。いくつかの実施態様では、蛍光体(例えばSCS蛍光体)は、それらが長期間にわたってストレスの高い湿度条件にさらされた場合に、それらの初期フォトルミネセンスをほとんど失うことがないように保護されている。このような条件およびこのような期間の非制限の例は、約16時間から約100時間までの期間にわたる約85℃および85%の相対湿度の条件である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特定の実施形態では、本発明により、とりわけ、酸化物のコーティングでコーティングされた蛍光体が提供される。この蛍光体は、(1)金属チオガレイト・蛍光体および金属硫化物蛍光体から選択される無機蛍光体と、(2)少なくとも1つの酸化物を備えた少なくとも1つの層を備えたコーティングとを備えている。コーティングのこの1つまたは複数の層が、コーティングされていない蛍光体と比較して蛍光体を比較的より耐水誘導劣化性にしている。つまり、コーティングのこの1つまたは複数の層が、水(あらゆる形態の水)によって誘発される劣化に対する蛍光体の耐性を強化しており、したがってコーティングが施された蛍光体は、例えば、それには限定されないが、約100時間にわたって約85℃および約85%の相対湿度に露出された後、その元の光性能の約80%を維持する。
例えば、特定の実施形態では、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体は、
(a)以下の化学式の中に出てくる場合、
Aは少なくとも1つの活性体陽イオンであり、
M1は、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+およびY3+から選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
M2は、Ca2+、Sr2+、Ba2+およびCd2+から選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
xは0乃至0.2であり、また、
Xは、原子中またはイオン形態中の少なくとも1つのハロゲン化物であるか、あるいは存在していないかのいずれか
である次の化学式、
(a)M1(Ga、Al):A・x(Ga、Al) Ia
(b)M1SiS:A Ib
(c)M1Si:A Ic
(d)M2(S、Se):A、X IIa
(e)M2S:A、X IIbまたは
(f)M2SiOX:A IIIc
のうちの1つを有する無機蛍光体と、
(b)無機蛍光体上のコーティングの少なくとも1つの層であって、少なくとも1つの酸化物を備えた層とを備えている。特定の実施形態では無機蛍光体は粒子であり、特定の実施形態では無機蛍光体は結晶粒である。
特定の実施形態では、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体の無機蛍光体は、
(a)M1(Ga、Al):A・x(Ga、Al) Ia
(b)M1Ga:A・xGa Id
(c)M2(S、Se):A、X IIaまたは
(d)M2S:A、X IIb
の化学式のうちの1つを有しており、M1、M2、A、xおよびXは、上で定義した通りである。特定の実施形態ではM1は、Ca2+、Sr2+またはそれらの組合せであり、M2もCa2+、Sr2+またはそれらの組合せである。
【0007】
本発明によるフォトルミネセント・蛍光体の特定の実施形態では、無機蛍光体は、金属チオガレイト・蛍光体、金属カルコゲナイド・蛍光体又はそれらの類似物である。本明細書において使用されているように、「カルコゲナイド」という用語は、硫黄、セレンおよびテルル化物などの重カルコゲンからなる二成分化学化合物、および化学元素の周期表の第III族元素、第IV族元素および第V族元素などの、カルコゲンより陽性の元素を意味している。特定の実施形態では、金属チオガレイト・蛍光体は、
(a)M1(Ga、Al):A・x(Ga、Al) Iaまたは
(b)M1Ga:A・xGa Id
の化学式を有しており、A、M1およびxは上で定義した通りである。特定の実施形態では、金属カルコゲナイド・蛍光体は、M2(S、Se):A、X(IIa)の化学式を有している。AおよびXは上で定義した通りであり、また、M2は、Ca2+、Sr2+、Ba2+およびCd2+から選択される少なくとも1つの金属イオンからなっている。
【0008】
特定の実施形態では、本発明による化学式Iaの無機蛍光体のGa/Al成分は、すべてのガリウム、すべてのアルミニウムまたはそれらの組合せであってもよい。特定の実施形態では、本発明による化学式IIaの無機蛍光体のS/Se成分は、すべての硫黄、すべてのセレンまたはそれらの組合せであってもよい。
【0009】
特定の実施形態では、活性体陽イオンAは、Eu2+、Cu2+、Cu、Yb2+、Mn2+、Bi、Bi3+、Sb3+、Pb2+、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+またはLu3+である。特定の実施形態では、Eu2+またはEu3+などのEu陽イオンは、1つまたは複数の共活性体(つまり上記活性体のうちの1つまたは複数などの他の活性体陽イオンとは異なる活性体陽イオン)と共に使用される。
【0010】
特定の実施形態では、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体の無機蛍光体は、化学式M1Ga:A・xGa(Id)を有する金属チオガレイト・蛍光体であり、M1、Aおよびxは上で定義した通りである。
【0011】
本発明によるフォトルミネセント・蛍光体の特定の実施形態では、M1は、Ca2+、Sr2+およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの金属イオンである。
【0012】
特定の実施形態では、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体の無機蛍光体は、化学式M2S:A、X(IIb)を有する金属硫化物蛍光体であり、M2、AおよびXは上で定義した通りである。
【0013】
本発明によるフォトルミネセント・蛍光体の特定の実施形態では、M2は、Ca2+、Sr2+およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの金属イオンである。
特定の実施形態ではXが存在している。つまり、原子中またはイオン形態中の少なくとも1つのハロゲン化物が本発明によるフォトルミネセント・蛍光体の無機蛍光体中に存在している。
特定の実施形態では、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体のコーティングの酸化物は、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、ケイ酸アルミニウム、AlBSi19(OH)、BAl(SiO(OH)、ZnAl、AlSiO、Al(SiO、ZrSiOまたはそれらの組合せである。特定の実施形態では、酸化物は、酸化チタン、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素である。
【0014】
特定の実施形態では、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体の無機蛍光体のコーティングは、少なくとも2つの層を有している。特定の実施形態では、層の各々は、それぞれ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素およびそれらの組合せから選択される酸化物を備えている。特定の実施形態では、コーティングの層の1つは酸化チタンを備えている。
【0015】
特定の実施形態では、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体の無機蛍光体のコーティングは連続している。
特定の実施形態では、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体の無機蛍光体はEu2+を含有している(つまりAがEu2+である)。
【0016】
本発明によれば、さらに、少なくとも300nmの波長の光出力を生成するLED(つまり光を放出するLED)と、本発明によるコーティングされたフォトルミネセント・蛍光体とを備えた照明デバイスが提供される。フォトルミネセント・蛍光体は、LEDからの光出力の少なくとも一部を吸収し、かつ、LEDから吸収した光の色度を有効に修正するのに適しており、その結果、フォトルミネセント・蛍光体は、LEDから吸収した光の波長より長い波長の光を放出する。本明細書において使用されているように、「光出力の一部」という表現は、LEDから放出される光エネルギーの微小部分、つまりLEDから放出される光子の微小部分を意味している。例えば、それには限定されないが、LEDから放出される光エネルギーの約50%を超える光エネルギーがこの蛍光体によって吸収される。特定の実施形態では、LEDは、近紫外(UV)レンジ(例えば約400nm)または青色レンジ(例えば約450nm)の光を放出する。特定の実施形態では、コーティングされたフォトルミネセント・蛍光体は、LEDが放出する光のうちの吸収した部分の色度を緑色光(例えば約540nm)または赤色光(例えば約630nm)に変更する。特定の実施形態では、コーティングされたフォトルミネセント・蛍光体は、LEDが放出する光のうちの吸収した部分の色度を約550nmの光に変更する。
【0017】
特定の実施形態では、本発明による照明デバイスは、例えば、発光層が量子井戸構造からなる窒化ガリウム・ベースLEDを備えることができる。照明デバイスは、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体を備えることができ、また、LEDまたはコーティングされたフォトルミネセント・蛍光体からの光を導くように配置された反射体を備えることができる。本発明によるコーティングされたフォトルミネセント・蛍光体は、LEDの表面またはLEDから距離を隔てた位置に配置することができる。照明デバイスは、さらに、LED(または光出力が出現するLED部分)をカプセル化する(LEDを密閉するかあるいは覆うことを意味する)透明な材料およびフォトルミネセント・蛍光体を備えることができる。
【0018】
また、本発明によれば、蛍光体をコーティングする方法であって、(a)金属チオガレイト・蛍光体および金属硫化物蛍光体から選択される無機蛍光体である蛍光体を提供することと、(b)蛍光体をコーティングが施されていない場合より比較的耐水誘導劣化性にする(例えば、このコーティングされた蛍光体は、約100時間にわたって85℃および85%の相対湿度に露出された後、その元の光性能の約80%を維持する)コーティングの少なくとも1つの層を得るために、蛍光体を酸化物前駆体および水に露出することとを含む方法が提供される。このコーティング方法によれば、蛍光体の粒子および結晶粒がコーティングされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本明細書において使用されているように、「活性体陽イオン」は、その活性体陽イオンがその一部をなしている蛍光体からの光放出の波長を決定するイオンを意味している。
【0020】
本明細書において使用されているように、「コーティング」、「酸化物コーティング」または「酸化物のコーティング」は、(a)少なくとも1つの酸化物(例えば非結晶質酸化物または結晶性酸化物)を備え、(b)光学的に識別可能な埋設粒子が欠乏し、かつ、(c)水に対する相対保護を提供するだけの十分な完全性を有する、例えば約16時間乃至約100時間にわたる約85℃および約85%の相対湿度への露出後に、蛍光体の元の光性能の約80%を維持するコーティングなどの1つまたは複数のカバー層すなわち外部層を意味している。このようなコーティングは、コーティング前駆体(つまり先行する)材料または蛍光体粒子に端を発する元素および化合物などの他の元素および化合物を含有することができる。したがって、本明細書において使用されている「酸化物」は、金属陽イオンまたは半導体陽イオンおよび酸素からなるこのような材料を意味しており、コーティングの主材料であることがしばしばである。
【0021】
本明細書において使用されているように、「粒子」は蛍光体の個々の結晶を意味している。
本明細書において使用されているように、「結晶粒」は、蛍光体粒子の塊状集積体、集合体、多結晶または多形体を意味しており、粉末の蛍光体粒子と比較した場合、粒子は容易に分離しない。
本明細書において説明されている、実質的な気相を必要とするプロセスのための温度は、反応物自体の温度ではなく、当該オーブンまたは他の反応容器の温度である。
本明細書において使用されている「白色光」は、当分野で良く知られている特定の色度値(例えば国際照明委員会(CIE))の光である。
【0022】
例えば米国特許第6,544,438号および米国特許第7,018,565号、ならびに米国特許出願公告第2004/206936号および米国特許出願公告第2006/012287号に、金属チオガレイト・蛍光体の製造方法が記載されている。例えば米国特許第6,783,700号に、SCS蛍光体の製造方法が記載されている。蛍光体前駆体の量は、当業者には認識されるように、本発明によるコーティング方法に使用される蛍光体を得るために変更することができる。蛍光体前駆体は、金属炭酸塩、金属硝酸塩、金属酸化物、金属ハロゲン化物またはそれらの混合物であってもよい。それらに限定されないが、これらの特許公告に記載されている任意の等級のSTG蛍光体またはSCS蛍光体を本明細書において説明されているようにコーティングすることができる。本発明による照明デバイスを製造するためにコーティングが可能で、LEDに適用できる硫黄を含有した蛍光体の例には、例えば、それらに限定されないが、
CaS:Bi、Na(青色放出)
CaS:Ce3+(黄色放出)
CaS:Cu、Na(青色放出)
CaS:Eu2+(赤色放出)
CaS:La3+(青色−緑色放出)
CaS:Pb2+、Mn2+(橙色放出)
CaS:Sb3+(橙色放出)
CaS:Sb3+、Na(橙色放出)
SrS:Ce3+(緑色放出)
SrS:Cu、Na(緑色放出)
SrS:Eu2+(赤色放出)
SrS:Mn2+(緑色放出)
SrαCa1−αS:Eu2+(橙色放出または橙色−赤色放出、α=0−1)
SrβCa1−βS:Ce3+(黄色放出または黄色−緑色放出、β=0−1)
SrγCa1−γS:Pb2+、Mn2+(橙色放出または橙色−黄色放出、γ=0−1)
Znε1Cd1−ε1S:Cu、Al3+(ε1=0−1)(緑色放出または黄色放出)
Znε2Cd1−ε2S:Ag、Cl(ε2=0−1)(青色放出または緑色放出)
Zn(S、Se):Cu、Ag
MgS:Eu2+(橙色放出)
CaGa:Ce3+(青色−緑色放出)
CaGa:Eu2+(緑色放出)
CaGa:Mn2+(赤色放出)
CaGa:Pb2+(赤色放出)
ZnGa:Mn2+(赤色放出)
SrGa:Pb2+(橙色放出)
BaAl:Eu2+(青色放出)
SrGa:Ce3+(青色−緑色放出)
SrGa:Eu2+(緑色放出)
SrδCa1−δGa:Eu2+(緑色放出または緑色−黄色放出、δ=0−1)
CaSiS:Eu2+
CaSiOCl:Eu
SrSiS:Eu2+(緑色放出)
BaSiS:Eu2+
SrSi:Eu2+
BaSi:Eu2+
SrAl:Eu2+および
CaAl:Eu2+
がある。
【0023】
上に挙げた金属チオガレイト・蛍光体は、金属硫化物の一部を含有することができる。有用な蛍光体の例示的な組合せは、青色放出LEDまたは近UV放出LEDと共に使用するための、ユーロピウムで活性化された緑色放出ストロンチウム・チオガレイト・蛍光体およびユーロピウムで活性化された赤色放出ストロンチウム硫化物蛍光体である。
【0024】
一実施形態では、コーティング操作の期間中、特定のコーティング蒸気またはコーティング液に蛍光体粒子のすべての面が実質的に等しく露出されるよう(つまり蛍光体粒子の表面の大部分、例えば約50%以上が露出されるよう)、蛍光体粒子を攪拌または懸濁させることによって蛍光体粒子がコーティングされる。例えば、それには限定されないが、流動床中で粒子を懸濁させることができ、あるいは液体中で粒子を攪拌またはかき混ぜることができる。粒子を流動化させるために使用されるガスは、粒子をコーティングするために使用される蒸気を含むことができる。例えば、それには限定されないが、ガスは、不活性ガス・キャリア(つまり通常の状態で非反応性であるガス)およびコーティング蒸気を含むことができる。キャリア・ガスは、主として(つまりその大部分、例えば約60%以上が)液体形態または固体形態の前駆体の1つまたは複数の容器を通過し、コーティングに使用するための蒸気を運び去ることができる。十分な蒸気圧を維持するために、必要に応じて1つまたは複数の容器および接続経路を加熱することができる。
【0025】
複数の酸化物前駆体を使用して同じコーティング層を形成する場合、キャリア・ガスを個別の前駆体の容器を別々に通過させ、反応容器のコーティング反応チャンバの前段またはコーティング反応チャンバ内で混合することができる。個別の容器を通過するキャリア・ガスの相対流量は、所望の量の前駆体が運ばれるよう、蒸気圧または実験によるコーティング結果に照らして調整することができる。同様に、必要に応じて、同じく適切に調整された量の水蒸気が反応容器に運ばれる。液体媒介コーティング方法の場合、多くのディスペンス方法を使用して複数の前駆体を液体に組み込むことができる。
【0026】
コーティングは、気相および/または液相で生じる加水分解を使用して表面酸化物を形成することによって達成することができる。前者の例は化学気相成長(CVD)であり、後者の例はゾル−ゲル・プロセスである。
【0027】
気相成長反応(つまり加水分解成長反応)の場合、コーティングされていない蛍光体粒子をキャリア・ガスによって反応チャンバ内に浮遊させ、実質的に単一の粒子としてこれらの粒子を分散させることができる(例えば95パーセントを超える(>95%)粒子が、結合、塊状集積または凝固しない)。チャンバは、反応物によって与えられる適切な温度(例えばいくつかの実施形態では約200℃)に加熱することができる。次に、気相のコーティング前駆体材料がチャンバ内に導入される。この温度条件の下で前駆体の少なくとも一部(例えば約20%)が加水分解によって分解され、蛍光体粒子の表面に酸化物層が形成され、それによりこれらの蛍光体粒子がマイクロカプセル化される。本発明に使用することができる典型的な加水分解は次の通りである。
TiCl+2HO→TiO+4HCl
【0028】
液相成長(つまり加水分解成長反応)の場合、コーティングされていない蛍光体粉末をコーティング前駆体を含有した不活性流体媒体(つまり化学的に反応する能力が限られている媒体)中で懸濁させることができる。粒子が十分に分散して懸濁液が形成され、塊状集積体が形成される可能性がほとんどないよう、粉末がかき混ぜられる。本明細書において使用されているように、「懸濁液」は、ある物質(つまり分散した媒体)が他の物質(つまり分散媒体)中に細かく分散しているコロイド状混合物を意味している。次に、加水分解を引き起こすために懸濁液に少量の水を加えることができる。必要に応じて温度を高くし、例えば約70℃にすることによって反応が加速される。この加水分解により、蛍光体粒子の表面に酸化物コーティングが形成される。例えば、次の反応を使用してSCS粒子にSiOをコーティングすることができる。
Si(OC+2HO→SiO+4COH
【0029】
本発明に有用な酸化物は、例えば、それらに限定されないが、酸化チタン(例えばTiO)、酸化アルミニウム(例えばAl)、酸化ジルコニウム(例えばZrO)、酸化スズ(例えばSnO)、酸化ホウ素(例えばB)、酸化ケイ素(例えばSiO)、酸化亜鉛(例えばZnO)、酸化ゲルマニウム(例えばGeO)、酸化タンタル(例えばTa)、酸化ニオブ(例えばNb)、酸化ハフニウム(例えばHfO)、酸化ガリウム(例えばGa)などである。さらに、本発明に有用な酸化物には、複数のタイプの陽イオンを使用して形成された酸化物、例えば、ケイ酸アルミニウム[3Al.2SiOまたはムライト形態のものなど]、AlBSi19(OH)[デュモルチエライト(dumortierite)形態のものなど]、BAl(SiO(OH)[ユークレース形態のものなど]、ZnAl[亜鉛尖晶石形態のものなど]、AlSiO[ケイ線石形態のものなど]、ZrSiO[風信子石形態のものなど]などがある。特定の実施形態では、本発明による方法に使用するために、加水分解によって酸化物を生成する揮発性前駆体または適切に溶解させることができる前駆体が使用されている。このような前駆体は当分野で知られている。
【0030】
特定の実施形態では、本発明によるコーティングの酸化物層は、主として(例えば約60%以上)1つのタイプの酸化物(金属または半導体の成分で決まる)を備えており、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素の層である。特定の実施形態では、本発明によるコーティングは、主として1つのタイプの酸化物である複数の層を備えている。例えば、これらの層は、複数の酸化チタン、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素で個別に構築することができる。特定の実施形態では、本発明によるコーティングの層のうちの1つは酸化ケイ素の層であり、他の層は酸化チタンまたは酸化アルミニウムの層である。
【0031】
揮発性前駆体には、例えば、それらに限定されないが、ハロゲン化金属(例えば四塩化チタン(TiCl)および四塩化ケイ素(SiCl))、アルキル化金属(例えばトリメチルアルミニウム、(Al(CH)、トリメチルホウ素(B(CH)、テトラメチルゲルマニウム、Ge(CHおよびテトラエチルジルコニウム、Zr(C、混合ハロー(つまりフッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはアスタチンからなっている)および金属のアルカリ誘導体(例えば塩化ジメチルアルミニウム、ジエチルジクロシラン)、金属または半導体アルコキシド(例えばチタン(IV)メトキシドおよびテトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS))がある。これらの化合物は、水蒸気の助力を得て加水分解し、それぞれ対応する酸化物を生成することができる。本明細書において使用されているように、「ハロゲン化金属」は、イオン結合または原子価結合される、化学元素の周期表の第VII族の元素の金属陽イオンおよび金属陰イオンを意味している。本明細書において使用されているように、「アルキル化金属」は、メチル、ジエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニルおよびデシルなどの少なくとも1つのC乃至C16の直線部分または分岐部分をもつ金属陽イオンおよび金属陰イオンを意味している。本明細書において使用されているように、「アルキル」は、分岐されていない(つまり直鎖)または分岐された(つまり非直鎖)飽和炭化水素基を意味している。アルキル基の例には、それらに限定されないが、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えばn−プロピルおよびイソプロピル)、ブチル(例えばn−ブチル、イソブチル、t−ブチル)、ペンチル(例えばn−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などがある。本発明の特定の実施形態では、アルキル基は、約1個から約10個まで、約2個から約8個まで、約3個から約6個まで、約1個から約8個まで、約1個から約6個まで、約1個から約4個まで、約1個から約3個までの炭素原子、つまり約1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を含有することができる。本明細書において使用されているように、「アルコキシド」は、アルキル−O−部分を意味しており、アルキルについては既に定義した通りである。
【0032】
溶解可能な前駆体には、例えば、金属または半導体アルコキシドがある(例えばチタン(IV)メトキシドおよびジルコニウム(IV)ブトキシド)。このような化合物は、加水分解によって酸化物を形成することができる。
【0033】
特定の実施形態では、本発明によるコーティングは、1つのタイプの酸化物、例えば酸化チタンの単一層にすることができ(図1)、あるいはコーティングは、多層にする、つまり複数の層または少なくとも2つの層を備えることができ、互いに独立しているこれらの層は、異なるタイプの酸化物または酸化物の組合せを備えており、例えば1つの層を酸化アルミニウムの層にし、他の層を酸化ケイ素の層にすることができる(図2)。
【0034】
本発明の特定の実施形態では、蛍光体をコーティングする方法には加水分解成長反応が含まれており、この加水分解成長反応は、有用な蛍光を保持する(例えばその非コーティング・バージョンの約80%以上の光性能を有する)ように選択された(所与の蛍光体に照らして)温度で実施される。気相成長の温度は、例えば約25℃から約400℃にすることができる。この温度は、例えば、少なくとも約25℃、少なくとも約50℃、少なくとも約75℃、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃または少なくとも約200℃にすることができる。この温度は、例えば、最大約400℃、最大約300℃、最大約275℃、最大約250℃、最大約225℃または最大約200℃にすることができる。液相成長の温度は、反応物、溶媒および温度に対する蛍光体の安定性に応じて、例えば約25℃から約90℃にすることができる。この温度は、例えば、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃、少なくとも約40℃、少なくとも約45℃、少なくとも約50℃、少なくとも約55℃、少なくとも約60℃、少なくとも約65℃または少なくとも約70℃にすることができる。この温度は、例えば、最大約90℃、最大約85℃、最大約80℃、最大約75℃、最大約70℃、最大約65℃、最大約60℃、最大約55℃または最大約50℃にすることができる。この温度は、当然、動作圧力における溶媒の沸点未満である。
【0035】
特定の実施形態では、本発明によるコーティングは実質的に透明にすることができ(有用な蛍光が保持されるよう)、また、その厚さは、通常、約0.1ミクロンと約3.0ミクロンの間、あるいは約0.05ミクロンと約0.50ミクロンの間である。コーティングが薄すぎる場合(例えば厚さが少なくとも約0.005ミクロン(5nm)未満の場合)、提供される対湿気不浸透性が不十分になる、つまりコーティングが湿気からの保護を蛍光体に提供することができず、そのために蛍光体が劣化し、そのフォトルミネセンスを失う傾向を示すことがある。コーティングが厚すぎる場合(例えば厚さが約3.0ミクロンより厚い場合)、透明性が減少し、そのため、コーティングされた蛍光体の輝度が小さくなる傾向を示すことがある。
【0036】
特定の実施形態では、活性体陽イオンAのモル・パーセントは、約0.001%乃至約10%である。特定の実施形態では、Aのモル・パーセントの範囲は、約0.001%モル、約0.01%モル、約0.02%モル、約0.05%モル、約0.1%モル、約0.2%モル、約0.5%モル、約1%モル、約2%モル、約3%モル、約4%モルおよび約5%モルのうちの1つを下位端点とし(これらは含まれるか、あるいは含まれない)、また、約0.01%モル、約0.02%モル、約0.05%モル、約0.1%モル、約0.2%モル、約0.5%モル、約1%モル、約2%モル、約3%モル、約4%モル、約5%モルおよび約10%モルのうちの1つを上位端点とする(これらは含まれるか、あるいは含まれない)範囲である。例えば、約0.01%モルから約5%モルまでの範囲にすることができる。Aは、実際、蛍光体の一次(つまり主要すなわち主)金属成分の代わりに使用することができるが、しかしながら、相対量で表されている場合、一次金属成分は、あたかも一次金属の組合せが、Aが存在しない場合に固有の化学式量の中に存在しているかのように正規化されて表されることは当業者には理解されよう。
【0037】
STG蛍光体またはSCS蛍光体の場合、本発明の特定の実施形態では、一次金属M1またはM2は、0<y<1であるSrCa1−yとして存在することができる。例えば、yは、少なくとも約0.01、少なくとも約0.02、少なくとも約0.05、少なくとも約0.10、少なくとも約0.15、少なくとも約0.20、少なくとも約0.25、少なくとも約0.30、少なくとも約0.35、少なくとも約0.40、少なくとも約0.45、少なくとも約0.50、少なくとも約0.55、少なくとも約0.60、少なくとも約0.65、少なくとも約0.70、少なくとも約0.75、少なくとも約0.80、少なくとも約0.85、少なくとも約0.90または少なくとも約0.95にすることができ、あるいはyは、最大約0.99、最大約0.98、最大約0.95、最大約0.90、最大約0.85、最大約0.80、最大約0.75、最大約0.70、最大約0.65、最大約0.60、最大約0.55、最大約0.50、最大約0.45、最大約0.40、最大約0.35、最大約0.30、最大約0.25、最大約0.20、最大約0.15、最大約0.10または最大約0.05にすることができる。
【0038】
また、ハロゲン化物Xの量も実際の実験化学式に影響を及ぼすことがあるが、化学式の鉱物成分は、蛍光体分野における慣習に従って、この影響を考慮することなく表されている。Xのモル%は、例えば、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約2%または少なくとも約5%にすることができ、あるいはXのモル%は、最大約30%、最大約20%、最大約10%または最大約5%にすることができる。本明細書において使用されているように、また、蛍光体分野における慣習に従って、「ハロゲン化物」は、イオン結合される第VII族元素の金属陽イオンおよび金属陰イオンからなる結晶性材料を意味している。
【0039】
特定の実施形態では、本発明によるコーティングによって提供される保護の量は、約85℃および約85%の湿度で一定の時間期間にわたって保持される元の放出強度の量によって測定することができる。特定の実施形態では、コーティングされたフォトルミネセント・蛍光体は、少なくとも約30分間、少なくとも約1時間または少なくとも約2時間にわたってこれらの条件に露出された場合に、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%のフォトルミネセンスを保持する。特定の実施形態では、コーティングされたフォトルミネセント・蛍光体は、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約16時間、少なくとも約24時間、少なくとも約48時間または少なくとも約96時間にわたってこれらの条件に露出された場合に、元の放出強度の少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%または少なくとも約80%を保持する。
【0040】
開示される蛍光体生成物は、既存の蛍光体生成物では達成することができない、演色指数が大きく(CRI>約75)、効率が高く(>約80%)、かつ、長寿命である(>約10,000時間)ことが探求されているランプなどの白色LEDランプの製造に使用することができる。特定の実施形態では、本発明による光源(例えば白色LEDランプ)により、少なくとも約84の大きいCRI、少なくとも約90%の高い効率および少なくとも約100,000時間の長い寿命が得られる。
【0041】
特定の実施形態では、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体の放出ピークは、約440nm±約100nmで点灯する放出波長源を使用して測定される。特定の実施形態では、本発明による蛍光体の放出レンジは、例えば、それらに限定されないが、約380nm、約381nm、約382nm、約383nmおよび約799nmまでそれぞれ増分が1nmの波長のうちの1つを下位端点とし(これらは含まれるか、あるいは含まれない)、また、約800nm、約799nm、約798nm、約797nmおよび約381nmまでそれぞれ減分が1nmの波長のうちの1つを上位端点とする(これらは含まれるか、あるいは含まれない)範囲である。特定の実施形態では、放出レンジの下位端点は、例えば、それらに限定されないが、約400nm、約401nm、約402nmおよび約799nmまでそれぞれ増分が1nmの波長である。
【0042】
特定の実施形態では、本発明による蛍光体の励起ピーク・レンジは、例えば、それらに限定されないが、約200nm、約201nm、約202nm、約203nmおよび約549nmまでそれぞれ増分が1nmの波長のうちの1つを下位端点とし(これらは含まれるか、あるいは含まれない)、また、約550nm、約549nm、約548nm、約547nmおよび約201nmまでそれぞれ減分が1nmの波長のうちの1つを上位端点とする(これらは含まれるか、あるいは含まれない)範囲である。
【0043】
特定の実施形態では、本発明により、本発明による光源およびフォトルミネセント・蛍光体を備えた照明デバイスが提供される。本明細書において使用されているように、「光源」は、第III−V族半導体量子井戸ベース発光ダイオードまたは本発明による照明デバイスのフォトルミネセント・蛍光体以外の蛍光体を意味している。照明デバイスに使用される場合、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体は、約250nm乃至約500nmまたは約300nm乃至約420nmの波長レンジで放出する半導体光源(例えばLED)などの一次光源からの光、もしくは約250nm乃至約500nmまたは約300nm乃至約420nmの波長レンジで放出する1つまたは複数の他の蛍光体からの放出などの二次光源からの光によって励起することができることは認識されよう。励起光が二次である場合、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体との関係で、励起誘導光は、関連する光源の光である。本発明によるフォトルミネセント・蛍光体を使用しているデバイスは、例えば、それには限定されないが、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体によって生成された光をデバイス(一次光源など)の内部へ導くのではなく、光出力へ導く誘電体ミラーなどのミラーを備えることができる。
【0044】
半導体光源(例えばLED)は、特定の実施形態では、少なくとも約250nm、少なくとも約255nm、少なくとも約260nm等、少なくとも約500nmまで増分が約5nmの光を放出することができる。半導体光源は、特定の実施形態では、最大約500nm、最大約495nm、最大約490nm等、約300nm以下まで減分が約5nmの光を放出することができる。
【0045】
本発明の特定の実施形態では、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体は、結合剤、凝固剤、分散剤、充填剤などを使用して照明デバイス中に分散させることができる。結合剤は、例えば、それらに限定されないが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂などの光硬化性重合体、ガラス、水晶などであってもよい。本発明によるフォトルミネセント・蛍光体は、当分野で知られている方法によって結合剤中に分散させることができる。例えば、いくつかの事例では、フォトルミネセント・蛍光体は、溶媒中で懸濁し、溶解し、あるいは部分的に溶解した重合体と共に溶媒中で懸濁させることができ、したがって泥状物が形成され、次に、この泥状物を照明デバイス上に分散させ、かつ、照明デバイスから溶媒を蒸発させることができる。特定の実施形態では、蛍光体を液体中に懸濁させて、例えば泥状物を形成するために樹脂に予め前駆体を硬化させることができ、次に、この泥状物を照明デバイス上に分散させ、かつ、照明デバイス上で重合体(樹脂)を硬化させることができる。硬化には、例えば、熱、UVまたは前駆体と混合された硬化剤(遊離基開始剤など)を使用することができる。本明細書において使用されているように、「硬化する」または「硬化させる」は、しばしば物質または物質の混合物の安定性または有用性を改善するためにそれらを重合させ、あるいは凝固させるためのプロセスに関しているか、あるいはこのようなプロセスであることを意味している。特定の実施形態では、照明デバイス中に蛍光体粒子を分散させるために使用される結合剤を熱を使用して液化させることができ、それにより泥状物が形成され、次に、この泥状物が照明デバイス上に分散され、in situで凝固させることができる。分散剤(ある物質と他の物質の混合物(例えば懸濁液)の形成および安定化を促進する物質を意味している)には、例えば、それらに限定されないが、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素などがある。
【0046】
特定の実施形態では、本発明による照明デバイスは、励起エネルギーを生成するため、あるいは他のシステムを励起して本発明によるフォトルミネセント・蛍光体に励起エネルギーを提供するための半導体光源、例えばLEDを備えている。本発明を使用しているデバイスは、例えば、それらに限定されないが、白色光生成照明デバイス、インジゴ光生成照明デバイス、青色光生成照明デバイス、緑色光生成照明デバイス、黄色光生成照明デバイス、橙色光生成照明デバイス、桃色光生成照明デバイス、赤色光生成照明デバイスまたは本発明によるフォトルミネセント・蛍光体の色度と少なくとも1つの第2の光源の色度との間の線によって画定される出力色度を有する照明デバイスを備えることができる。本発明による照明デバイスを使用して車両用のヘッドライトまたは他の運行燈を製造することができる。照明デバイスは、セル電話およびパーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)などの小型電子デバイスのための出力指示器であってもよい。また、本発明による照明デバイスは、セル電話、PDAおよびラップトップ・コンピュータのための液晶ディスプレイのバックライトであってもよい。適切な電源を使用して、本発明によるデバイスに基づいて室内照明を構築することができる。本発明による照明デバイスの暖かみ(つまり黄色/赤色色度の量)は、第2の光源(本発明による第2のフォトルミネセント・蛍光体を含む)からの光に対する本発明によるフォトルミネセント・蛍光体からの光の比率を選択することによって調整することができる。
【0047】
また、本発明に使用するために適した半導体光源は、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体を励起する光、あるいは本発明によるフォトルミネセント・蛍光体を励起する異なる蛍光体を励起する光を生成する任意の半導体光源である。このような半導体光源は、例えば、それらに限定されないが、GaN(窒化ガリウム)タイプの半導体光源、In−Al−Ga−Nタイプの半導体光源(i+j+k=約1であり、i、jおよびkのうちの2つ以上が0であってもよいInAlGaN)、BN光源、SiC光源、ZnSe光源、BAlGaN光源およびBinAlGaN光源などであってもよい。半導体光源(例えば半導体チップ)は、例えば、III−VまたはII−VI量子井戸構造(周期表の第III族からの化学元素の元素と第V族からの化学元素の元素とを結合した化合物、または第II族からの元素と第VI族からの元素とを結合した化合物からなる構造を意味している)に基づくことができる。特定の実施形態では、青色または近紫外(UV)放出半導体光源が使用されている。
【0048】
特定の実施形態では、本発明による、少なくとも2つの異なる蛍光体を有する照明デバイスの半導体光源の場合、場合によっては、これらの蛍光体をまとめて1つのマトリックス中に分散させる代わりに、これらの蛍光体を別々に分散させ、複数の層としてこれらの蛍光体を重ねることが有用である。蛍光体をこのように層状にすることにより、複数の色変換プロセスによって最終光放出色を得ることができる。例えば、光放出プロセスは、本発明による第1のフォトルミネセント・蛍光体による半導体光源の光放出の吸収、第1のフォトルミネセント・蛍光体による光放出、第2の蛍光体による第1のフォトルミネセント・蛍光体の光放出の吸収、および第2の蛍光体による光放出である。特定の実施形態では、第2の蛍光体は、本発明によるフォトルミネセント・蛍光体である。
【0049】
図6は、半導体光源の例示的層状構造を示したものである。半導体光源は、例えばサファイヤ基板などの基板Sbを備えている。例えば、窒化物半導体層として、バッファ層B、n−型コンタクト層NCt、n−型クラッド層NCd、多重量子井戸活性層MQW、p−型クラッド層PCdおよびp−型コンタクト層PCtがこの順序で形成されている。これらの層は、例えば、基板Sb上への有機金属化学気相成長(MOCVD)によって形成することができる。次に、p−型コンタクト層PCtの表面全体に光透明電極LtEが形成され、この光透明電極LtEの一部の上にp電極PEIが形成され、また、n−型コンタクト層NCtの一部の上にn電極NEIが形成される。これらの層は、例えば、スパッタリングまたは真空蒸着によって形成することができる。
【0050】
バッファ層Bは、例えばAINで形成することができ、また、n−型コンタクト層NCtは、例えばGaNで形成することができる。
n−型クラッド層NCdは、例えば、0≦r<1であるAlGa1−rNで形成することができ、p−型クラッド層PCdは、例えば、0<q<1であるAlGa1−qNで形成することができ、また、p−型コンタクト層PCtは、例えば、0≦s<1で、かつ、s<qであるAlGa1−sNで形成することができる。p−型クラッド層PCdのバンドギャップは、n−型クラッド層NCdのバンドギャップより広くなっている。n−型クラッド層NCdおよびp−型クラッド層PCdは、それぞれ単一組成構造を有することができ、あるいは、上で説明した窒化物半導体層が約100オングストローム以下の厚さを有し、かつ、互いに異なる組成が互いに積み重ねられ、それにより超格子構造が提供されるような構造を有することができる。層の厚さが約100オングストローム以下である場合、層中におけるクラックまたは結晶欠陥の発生を防止することができる。
【0051】
多重量子井戸活性層MQWは、複数(つまり少なくとも2つ)のInGaN井戸層および複数のGaN障壁層から構成することができる。井戸層および障壁層は、超格子構造が構成されるよう、約100オングストローム以下の厚さ、例えば約60オングストローム乃至約70オングストロームの厚さを有することができる。InGaNの結晶は、AlGaNなどの他のアルミニウム含有窒化物半導体より軟らかいため、活性層MQWを構成している層にInGaNを使用することにより、場合によっては、積み重ねられたすべての窒化物半導体層のクラックの発生がより少なくなることを期待することができる利点が提供される。また、多重量子井戸活性層MQWは、複数のInGaN井戸層および複数のAlGaN障壁層から構成することも可能である。あるいは、多重量子井戸活性層MQWは、複数のAlInGaN井戸層および複数のAlInGaN障壁層から構成することができる。その場合、障壁層のバンドギャップ・エネルギーの方が井戸層のバンドギャップ・エネルギーより大きくなるようにすることができる。
【0052】
特定の実施形態では、本発明による光源は、多重量子井戸活性層MQWの基板Sb側、例えばn−型コンタクト層NCtのバッファ層Bの側に反射層を備えている。この反射層は、基板Sbの上に積み重ねられた多重量子井戸活性層MQWから離れた(つまり間隔を隔てた)基板Sbの表面に提供することも可能である。反射層は、活性層MQWから放出される光に対して最大の反射率を有することができ、また、例えばアルミニウムで形成することができ、あるいは複数の薄いGaN層の多層構造を有することができる。この反射層を備えることにより、活性層MQWから放出される光をこの反射層で反射させることができ、活性層MQWから放出される光の内部吸収を抑制することができ、上方に向かう光出力(つまりデバイスから射出する光出力、あるいはデバイスの外側へ向かい、基板から遠ざかる方向の光出力)の量を増やすことができ、かつ、光源のマウントに入射する光を少なくすることができるため、劣化を防止することができる。
【0053】
図3〜5は、LEDおよび蛍光体からなる本発明による照明デバイスのいくつかの例示的構造を示したものである。図3は、リード線2によって電力が供給されるLEDチップ1(つまり一次光源)を備え、蛍光体含有材料4がLEDチップと最終光出力6の間に固着された発光デバイス10を示したものである。反射体3は、光出力を集める働きをすることができる。透明エンベロープ5は、LEDチップおよび蛍光体を環境から分離し、かつ/またはレンズを提供することができる。図4は、リード線2’によって電力が供給されるLEDチップ1’を備え、蛍光体含有材料4’がLEDチップと最終光出力6’の間、この事例では反射体3’の上方に固着され発光デバイス10’を示したものである。反射体およびLEDチップから離れた蛍光体含有材料の位置は、最終光出力を集める働きをすることができる。透明エンベロープ5’は、LEDチップおよび蛍光体を環境から分離し、かつ/またはレンズを提供することができる。図5に示す照明デバイス20は、複数のLEDチップ11、リード線12、蛍光体含有材料14および透明エンベロープ15を有している。
【0054】
リード線2、2’、12は、より厚いリード・フレームによって支持された細いワイヤを備えることができ、あるいはこれらのリード線は、自立型電極を備えることができ、したがってリード・フレームを省略することができる。これらのリード線によってLEDチップに電流が提供され、延いてはLEDチップが放射を放出する。
【0055】
半導体光源(例えばLED光源)からの光が蛍光体とのその相互作用によって管理されるように蛍光体と半導体光源を結合するための多くの方法が存在していることは当業者には理解されよう。米国特許出願公告第2004/0145289号および米国特許出願公告第2004/0145288号に、蛍光体が半導体光源の光出力から離れた位置に配置された照明デバイスが示されている。さらに、米国特許出願公告第2004/0159846号に、それには限定されないが、本発明に使用することができる照明デバイスが示されている。
【0056】
半導体光源ベース白色光デバイスは、例えば、所定のパターンまたはグラフィック設計をオーディオ・システム、家庭用機器、測定装置、医療機器などの表示部分に表示するための自己放出型ディスプレイに使用することができる。また、このような半導体光源ベース光デバイスは、例えば、それらに限定されないが、液晶ダイオード(LCD)ディスプレイ、プリンタ・ヘッド、ファクシミリ、複写装置などのためのバックライトの光源として使用することも可能である。
【0057】
特に定義されていない限り、本明細書において使用されているすべての技術用語および科学用語は、本発明の分野の当業者に一般的に理解されている意味と同じ意味を有している。本明細書において使用されているすべての技術用語および科学用語は、その使用に際しては同じ意味を有している。本明細書および特許請求の範囲に使用されているように、単数形の表現には、単数であることをコンテキストが明確に示していない限り、複数形の意味合いが含まれていることに留意されたい。
【0058】
[実施例]
以下の実施例は、本発明の製造方法および使用方法についての完全な開示および説明を当業者に提供するために示したものであり、本発明者らが本発明者らの発明であると見なしている範囲の制限を意図したものでも、あるいは以下の実験が実施されたすべての実験であること、あるいは以下の実験しか実施されていないこと示すことを意図したものでもない。使用されている数字(例えば量、温度など)に対する精度を保証するための努力がなされているが、若干の実験誤差および偏差を考慮すべきである。特に指示されていない限り、PBW(Parts By Weight)は重量比であり、分子量は平均分子量であり、また、温度は摂氏温度である。
【実施例1】
【0059】
SiOがコーティングされたSr0.85Ca0.15S:Eu、Fの調製
パートA.硫酸カルシウムの調製
炭酸カルシウム(約300グラム)が水とかき混ぜられ、炭酸塩を溶解させるために硝酸が加えられた。pHが約5以上の溶液を提供するために若干過剰の炭酸カルシウムが加えられた。外見が乳状の硝酸カルシウム溶液が得られた。
【0060】
マグネシウム金属片(約1.5グラム)が希釈(例えば約0.01N乃至0.5N)硝酸で洗浄され、すすがれ、金属不純物を除去するために硝酸カルシウム溶液に加えられた。この混合物がかき混ぜながら約85℃に加熱され、次に冷却された。透明になるまで溶液が濾過された。
【0061】
硫酸(約180mL、約51モル%)が硝酸塩溶液に徐々に加えられ、硫酸カルシウムを析出している間、この混合物がかき混ぜられた。この混合物は、約2時間にわたって約60℃の温度でかき混ぜられた。
液体がデカントされ、酸がなくなるまで固体が水ですすがれた。最後に、固体の乾燥を促進するためにメタノールですすがれ、一晩の間、約100℃のオーブン内で乾燥された。
【0062】
パートB.硫酸ストロンチウムの調製
硫酸ストロンチウムは、上で説明した実施例1、パートAにおける硫酸カルシウムの場合と実質的に同様の手順を使用して調製されたが、ストロンチウム源として炭酸ストロンチウムが使用された。
【0063】
パートC.ストロンチウム・カルシウム硫化物蛍光体の調製
上記実施例1、パートBで説明したように調製された硫酸ストロンチウム(約0.85モル)と、実施例1、パートAで生成された約0.15モルの硫酸カルシウム(上で説明した)が、希釈(例えば約0.01N乃至0.5N)硝酸中に溶解した酸化ユーロピウムと共に混合され、次に泥状化された。この泥状物が、一晩の間、約100℃で乾燥された。得られた混合固体が乳鉢および乳棒を使用して粉砕された。
【0064】
この混合固体が、約4時間にわたって、成形ガスであるガス状H/Nの混合物中で約1100℃で焼成された。冷却後、ストロンチウム・カルシウム硫化物蛍光体生成物が粉砕され、成形ガス中で約4時間にわたって約1100℃で再焼成された。次に、生成物が乳鉢および乳棒を使用して粉砕された。
【0065】
パートD.フッ素化
実施例1、パートCの蛍光体生成物にフッ化物源(例えばフッ化アンモニウム)が加えられ、十分に混合された。得られた固体混合物が、Nガス中で約1時間にわたって約300℃で焼成された。Nガスの温度は、例えば約300℃から約600℃までの温度にすることができる。次に、フッ化生成物が粉砕され、約100メッシュ・スクリーンを通してふるい分けられた。
【0066】
パートE.SiOを使用したゾル−ゲル・コーティング
実施例1、パートDのフッ化蛍光体生成物(約100グラム)が、約34グラムのテトラエトキシシランを含有した約340グラムの2−プロパノール中で懸濁された。この懸濁液が約10分間にわたって超音波処理された。pHが約8.0(水酸化アンモニウムで調整された)の水(約24グラム)がこの懸濁液に加えられた。次に、この懸濁液が約16時間にわたって放置(インキュベート)され、かつ、かき混ぜられた。固体が濾過除去され、約4時間にわたって約50℃で乾燥された。得られた粉末が、約1時間にわたってNガスの下で約150℃で焼き付けられた。次に、コーティングされたフォトルミネセント・蛍光体が、安定性試験として、約85℃および約85%の相対湿度で維持された。コーティングされたフォトルミネセント・蛍光体の試験サンプルの蛍光放出が異なる時間で測定された。蛍光放出は、SPEX−1680蛍光測定器(ISA Company、ニュージャージー州、Edison在所)を使用して、キセノン・ランプ(約460nm)を使用して試験サンプルを励起し、増倍型光電管を使用して放出を検出することによって測定された。図7は、コーティングされた蛍光体に対する結果(塗り潰された円)およびコーティングされていない蛍光体に対する結果(白抜きの円)を示したものである。
【実施例2】
【0067】
SiOがコーティングされたSrGa:Eu.0.07Ga(STG)の調製
パートA.STG蛍光体の製造
窒化ガリウムの溶液が以下のように調製された。約57.45PBWのガリウムが約400mLの高濃度の硝酸に溶解された。ブラウン・フュームが現われるまでこの溶液が加熱され、ブラウン・フュームが現われた時点で熱が除去され、容器が覆われた。一晩放置した後、得られた緑色溶液が黄色に変わり、続いて透明になるまで加熱および冷却が繰り返された。脱イオン水が加えられ、約1000mLの溶液が形成された。
【0068】
pHが約2.0の溶液を得るために水酸化アンモニウム(約180mL)が徐々に加えられた。約1200mLの溶液にするために水が加えられた。
酸化ユーロピウム(約2.815PBW)が、約400mLの希釈(例えば約0.01N乃至0.5N)硝酸中に溶解された。炭酸ストロンチウムが徐々に加えられ、必要に応じて硝酸がさらに加えられた。さらに、約1.2mlの約0.01M酸化プラセオジム溶液が加えられ、また、約600mlのストロンチウム・ユーロピウム・プラセオジム硝酸塩溶液にするために水が加えられた。
【0069】
硫酸アンモニウム(約120PBW)がかき混ぜながらストロンチウム・ユーロピウム・プラセオジム硝酸塩溶液に加えられた。この混合物が約10分間にわたってかき混ぜられ、約1.4のpHに酸性化された。ガリウム硝酸塩溶液が加えられ、水酸化アンモニウムを使用してpHが約7に高められた。この混合物が約2時間にわたってかき混ぜられ、一晩放置された。
【0070】
上澄み溶液がデカントされ、濾過され、また、析出物がアセトンで洗浄された。この析出物が約2500mlのアセトン中で再懸濁され、約1時間にわたって約50℃でかき混ぜられ、次に濾過された。この再懸濁ステップが繰り返され、析出物が一晩にわたって約55℃で乾燥された。
【0071】
次に、乾燥した析出物が粉砕され、約5時間にわたって硫化水素中で約800℃で焼成された。得られた緑蛍光体が粉砕され、約2時間にわたって約900℃で再焼成された。次に、この蛍光体がさらに粉砕され、ふるい分けされた。
【0072】
パートB.SiOコーティング
実施例2、パートAの蛍光体生成物(約100グラム)が、約34グラムのテトラエトキシシランを含有した約340グラムの2−プロパノール中で懸濁された。この懸濁液が約10分間にわたって超音波処理された。pHが約8.0(水酸化アンモニウムで調整された)の水(約24グラム)がこの懸濁液に加えられた。次に、この懸濁液が約16時間にわたって放置され、かつ、かき混ぜられた。固体が濾過除去され、約4時間にわたって約50℃で乾燥された。得られた粉末が、約1時間にわたってNガスの下で約150℃で焼き付けられた。コーティングされたフォトルミネセント・蛍光体生成物が、約85℃および約85%の相対湿度で放置された。
【実施例3】
【0073】
LED白色光デバイスの準備
表面実装型のデバイスとして、半導体発光ダイオード(LED)21(図9)を使用して白色光デバイス30が製造された。LEDは、約460nmで放出するInGaN半導体量子井戸構造を有していた。白色光デバイスに組み込まれると、実施例2で説明した、SiOがコーティングされたSrGa:Eu.0.07Gaによって約460nmの光の一部が緑色光に変換され、また、TiO−SiOがコーティングされたSr0.85Ca0.15S:Eu、F蛍光体によってその一部が赤色光に変換される。これらの蛍光体が蛍光体層24の中に提供された。
【0074】
このデバイスを製造するために、p−型半導体層およびn−型半導体層が発光ダイオードの中に形成され、導電性リード線22Bがオーミック電極22Aに結合された。金属電極の外側の周囲を覆い、かつ、短絡を防止するために、透明パッケージ25の一部を構成している絶縁シール材が形成された。このデバイスはサポート27の上に取り付けられた。
【0075】
蛍光体層を形成するために、コーティングされた2つのフォトルミネセント・蛍光体STGおよびSCSがシリコーン樹脂材料(例えばSR−7010、Dow Corning、ミシガン州、Midland在所)と共に泥状物中に混合された。この泥状物が、サポート構造27の上に取り付けられたLEDチップ21の上に加えられた。次に、この泥状物が約150℃で硬化され、硬く、かつ、透明な保護窓が形成された。異なる蛍光体負荷を備えた3つの異なるデバイスが製造された。泥状物中の蛍光体負荷は、蛍光体組成の総重量に基づいて、約1重量%、約2.5重量%および約5重量%であった。図10は、これらのデバイスの放出スペクトルを示したものである。
【0076】
特許および特許出願に限らず、本明細書に記載されている刊行物および参考文献は、参照により、記載されている部分全体に、それらの個々の刊行物または参考文献が、参照により本明細書に組み込むべきものとして詳細に、かつ、個々に示されているかの如くにその全体が示されているものとして、そのまま本明細書に組み込まれている。また、本出願が優先権を主張するすべての特許出願も、刊行物および参考文献に対して上で説明した方法で、参照により本明細書に組み込まれている。
【0077】
以上、本発明について、いくつかの実施形態に重点を置いて説明したが、これらの実施形態の変形形態を使用することができること、また、本発明は、本明細書において詳細に説明した以外の方法で実践されてもよいことが意図されていることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明には、特許請求の範囲で定義されている本発明の精神および範囲に包含されるあらゆる修正が含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明によるコーティングされたフォトルミネセント・蛍光体を示す図である。
【図2】本発明によるコーティングされたフォトルミネセント・蛍光体を示す図である。
【図3】本発明と共に使用することができる発光デバイスを示す図である。
【図4】本発明と共に使用することができる発光デバイスを示す図である。
【図5】本発明と共に使用することができる発光デバイスを示す図である。
【図6】本発明と共に使用することができるLEDを示す図である。
【図7】ストレス条件下における蛍光体保護の度合を示す図である。
【図8】ストレス条件下における蛍光体保護の度合を示す図である。
【図9A】例示的照明デバイスの上面図である。
【図9B】図9Aに示すデバイスの側面図である。
【図10】蛍光体の量が異なる図9に示すデバイスの放出スペクトルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトルミネセント・蛍光体であって、
a.以下の化学式の中に出てくる場合、
Aは少なくとも1つの活性体陽イオンであり、
M1は、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+およびY3+から選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
M2は、Ca2+、Sr2+、Ba2+およびCd2+から選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
xは0乃至0.2であり、また、
Xは、原子中またはイオン形態中の少なくとも1つのハロゲン化物であるか、あるいは存在していないかのいずれか
である次の化学式、
i.M1(Ga、Al):A・x(Ga、Al) Ia
ii.M1SiS:A Ib
iii.M1Si:A Ic
iv.M2(S、Se):A、X IIa
v.M2S:A、X IIbまたは
vi.M2SiOX:A IIIc
のうちの1つを有する無機蛍光体と、
(b)前記無機蛍光体上のコーティングの少なくとも1つの層であって、少なくとも1つの酸化物を備えた層と
を備えたフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項2】
Aが、Eu2+、Cu2+、Cu、Yb2+、Mn2+、Bi、Bi3+、Sb3+、Pb2+、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+またはLu3+である、請求項1に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項3】
前記コーティングが連続している、請求項1に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項4】
前記酸化物が、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、ケイ酸アルミニウム、AlBSi19(OH)、BAl(SiO(OH)、ZnAl、AlSiO、Al(SiO、ZrSiOまたはそれらの組合せである、請求項1に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項5】
前記コーティングの前記酸化物が、酸化チタン、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素である、請求項1に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項6】
前記無機蛍光体上の前記コーティングが少なくとも2つの層を備えた、請求項1に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項7】
個々の層が、それぞれ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素およびそれらの組合せから選択される酸化物を備えた、請求項6に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項8】
1つの層が酸化チタンを備えた、請求項7に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項9】
前記フォトルミネセント・蛍光体が、約4時間にわたって約85℃および約85%の相対湿度に維持された場合に、その元の放出強度の約40%以上を保持する、請求項1に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項10】
前記フォトルミネセント・蛍光体が、約96時間にわたって約85℃および約85%の相対湿度に維持された場合に、その元の放出強度の約40%以上を保持する、請求項1に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項11】
前記酸化物が酸化チタンからなる、請求項10に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項12】
前記酸化物が酸化ケイ素からなる、請求項11に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項13】
前記無機蛍光体が、
a.M1(Ga、Al):A・x(Ga、Al) Ia
b.M1Ga:A・xGa Id
c.M2(S、Se):A、X IIaまたは
d.M2S:A、X IIb
の化学式のうちの1つを有する、請求項1に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項14】
a.M1がCa2+、Sr2+またはそれらの組合せであり、また、
b.M2がCa2+、Sr2+またはそれらの組合せ
である、請求項13に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項15】
AがEu2+である、請求項14に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項16】
前記酸化物が酸化チタンからなる、請求項13に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項17】
前記酸化物が、酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたはそれらの組合せからなる、請求項16に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項18】
前記無機蛍光体が、
a.CaS:Bi、Na
b.CaS:Ce3+
c.CaS:Cu、Na
d.CaS:Eu2+
e.CaS:La3+
f.CaS:Pb2+、Mn2+
g.CaS:Sb3+
h.CaS:Sb3+、Na
i.SrS:Ce3+
j.SrS:Cu、Na
k.SrS:Eu2+
l.SrS:Mn2+
m.SrαCa1−αS:Eu2+、α=0−1
n.SrβCa1−βS:Ce3+、β=0−1
o.SrγCa1−γS:Pb2+、Mn2+、γ=0−1
p.Znε1Cd1−ε1S:Cu、Al3+、ε1=0−1
q.Znε2Cd1−ε2S:Ag、Cl、ε2=0−1
r.Zn(S、Se):Cu、Ag
s.MgS:Eu2+
t.CaGa:Ce3+
u.CaGa:Eu2+
v.CaGa:Mn2+
w.CaGa:Pb2+
x.ZnGa:Mn2+
y.SrGa:Pb2+
z.BaAl:Eu2+
aa.SrGa:Ce3+
bb.SrGa:Eu2+
cc.SrδCa1−δGa:Eu、δ=0−1
dd.CaSiS:Eu2+
ee.CaSiOCl:Eu2+
ff.SrSiS:Eu2+
gg.BaSiS:Eu2+
hh.SrSi:Eu2+
ii.BaSi:Eu2+
jj.SrAl:Eu2+または
kk.CaAl:Eu2+
である、請求項1に記載のフォトルミネセント・蛍光体。
【請求項19】
照明デバイスであって、
a.少なくとも約300nmの波長で放出する光源と、
b.請求項1に記載のフォトルミネセント・蛍光体と
を備え、
i.前記フォトルミネセント・蛍光体が、前記光源から放出される光の少なくとも一部を吸収することができ、
ii.前記フォトルミネセント・蛍光体が、前記光源から吸収した光の前記部分の色度を変更し、かつ、
iii.前記フォトルミネセント・蛍光体が、前記光源から吸収した光の波長より長い波長の光を放出する
照明デバイス。
【請求項20】
前記照明デバイスが白色光を生成する、請求項19に記載の照明デバイス。
【請求項21】
前記無機蛍光体が、化学式M1Ga:A:xGa(Ia)またはM2S:A、X(IIb)からなる、請求項19に記載の照明デバイス。
【請求項22】
前記光源がLEDである、請求項19に記載の照明デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−526089(P2009−526089A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543285(P2008−543285)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/040158
【国際公開番号】WO2007/064416
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(599134012)サーノフ コーポレーション (59)
【Fターム(参考)】