説明

溶接ビードの検査装置、検査方法、及び、検査用プログラム

【課題】 母材が露出する領域が少ない場合でも、フィッティング領域を広く設定することが可能な技術を提供する。
【解決手段】 曲面形状を有する第1板材と曲面形状を有する第2板材とを溶接した構造体の溶接ビードの検査装置であって、溶接ビードに交差する断面における構造体の表面形状を測定した測定形状70を記述する測定形状データの入力を受ける入力手段と、前記断面における第1板材の溶接前の表面形状の基準形状を記述する第1板材基準形状データ74を記憶する記憶手段と、測定形状70の傾斜角度分布と第1板材の基準形状74の傾斜角度分布に基づいて、測定形状70の中から、第1板材の表面形状に相当する第1板材領域80を特定する第1板材領域特定手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ビードを検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの母材を溶接する溶接ビードの検査方法が開示されている。この検査方法では、溶接箇所(溶接ビードと母材を含む領域)の表面形状を測定する。次に、その測定形状の曲率に基づいて、測定形状の中から溶接ビードを特定する。溶接ビードを特定したら、その溶接ビードの表面形状に基づいて、溶接ビードの良否を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−215839号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接箇所の表面形状から溶接ビードの良否を判定するためには、溶接箇所のうちのどの範囲が溶接ビードであるのかを正確に特定する必要がある。しかしながら、溶接ビードと母材との境界では表面形状が滑らかに変化している場合が多い。また、母材の表面が曲面形状である場合には、溶接ビードと母材とで曲率に大きな差が無い場合が多い。このため、特許文献1の技術のように測定形状の曲率等に基づいて溶接ビードを特定しようとしても、溶接ビードを正確に特定することはできない場合がある。
【0005】
本願発明者は、上記の問題を解決する技術を既に提案している。この技術では、溶接される2つの板材(第1板材と第2板材)の溶接前の表面形状を示す基準形状データを予め準備しておく。なお、基準形状データが示す表面形状は、設計上の形状(以下では、基準形状という)である。2つの板材の基準形状のうち、溶接後において必ず板材が露出する領域(溶接工程の製造誤差が最大に生じたとしても、溶接ビードが形成されることがない領域)には、フィッティング領域が設定されている。溶接ビードを検査する際には、溶接箇所の表面形状を測定する。次に、フィッティング領域内の基準形状と測定形状が正確に重なるように、測定形状に第1板材の基準形状と第2板材の基準形状を重ね合わせる。そして、測定形状の中で、第1板材の基準形状及び第2板材の基準形状の何れに対しても形状のずれが大きい領域が、溶接ビードとして特定される。この技術によれば、溶接前の各板材の表面形状を用いることで、溶接ビードを正確に特定できる。また、基準形状と溶接ビードの表面形状から、溶接ビードの厚さ等を求めることもできる。したがって、溶接ビードをより好適に検査することができる。
【0006】
この技術では、フィッティング領域を十分に広く設定することができれば、溶接ビードを正確に検査することができる。しかしながら、製品によっては、溶接後に母材が露出する領域が少なく、フィッティング領域を広く設定することができない場合がある。フィッティング領域を広く設定することができないと、測定形状に対して基準形状を正確に重ねることができず、溶接ビードを正確に特定することができない場合がある。
【0007】
したがって、本明細書では、溶接後に母材が露出する領域が少ない場合でも、フィッティング領域を広く設定することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の溶接ビード検査装置は、曲面形状を有する第1板材と曲面形状を有する第2板材とを溶接した構造体の溶接ビードを検査する。この検査装置は、入力手段と、記憶手段と、領域特定手段を有している。入力手段は、溶接ビードに交差する断面における構造体の表面形状を測定した測定形状を記述する測定形状データの入力を受ける。記憶手段は、前記断面における第1板材の溶接前の表面形状の基準形状を記述する第1板材基準形状データを記憶する。領域特定手段は、測定形状の傾斜角度分布と第1板材の基準形状の傾斜角度分布に基づいて、測定形状の中から第1板材が露出している領域を特定する。
【0009】
なお、上記の「基準形状」とは、第1板材の設計上の形状である。構造体に用いられている第1板材の実際の形状には誤差が生じているので、基準形状と実際の形状は僅かに異なる場合がある。
また、上記の「傾斜角度」とは、前記測定形状上の任意の点における測定形状の傾きを意味する。例えば、測定形状がx座標とz座標により表される多数の座標点により構成されている場合には、任意の座標点における測定形状の傾きは、その座標点におけるz座標の変化率dz/dxである。また、「傾斜角度分布」とは、前記測定形状上の各点における傾斜角度の分布を意味する。
また、この溶接ビード検査装置は、測定形状の中から第1板材が露出している領域を特定するが、さらに、測定形状の中から第2板材が露出している領域を特定してもよい。これらを特定できれば、残りの領域が溶接ビードに相当する。すなわち、測定形状の中から溶接ビードを特定することができる。この場合、第2板材が露出している領域は、第1板材が露出している領域と同様にして特定してもよいし、他の方法により特定してもよい。
【0010】
この検査装置では、測定形状の傾斜角度分布と第1板材の基準形状の傾斜角度分布に基づいて、第1板材が露出している領域が特定される。傾斜角度分布には表面形状の特徴がより顕著に表れる。したがって、傾斜角度分布に基づいて測定形状の中から第1板材の基準形状と形状が略一致している領域を正確に特定することができる。これによって、測定形状の中から第1板材が露出している領域を特定することができる。特定した第1板材が露出している領域は、第1板材の基準形状を重ね合わせるためのフィッティング領域として用いることができる。この技術によれば、実測した形状に基づいてフィッティング領域を設定できるので、フィッティング領域を広く設定することができる。すなわち、予めフィッティング領域を設定する場合には、製造誤差が最大に生じたとしても第1板材が必ず露出する領域にフィッティング領域を設定する必要があるため、フィッティング領域を狭く設定せざるを得ない。本明細書の技術によれば、実測した形状から第1板材が露出している領域を特定できるので、製造誤差等を考慮しないで第1板材が露出している領域に広いフィッティング領域を設定することができる。例えば、特定した第1板材が露出している領域全体をフィッティング領域に設定することができる。
【0011】
上述した検査装置は、領域特定手段が、測定形状を傾斜角度が近い領域毎に区分したときの各領域の傾斜角度と、第1板材の基準形状を傾斜角度が近い領域毎に区分したときの各領域の傾斜角度に基づいて、測定形状の中から第1板材が露出している領域を特定することが好ましい。
【0012】
このように、測定形状と第1板材の基準形状を傾斜角度が近い領域毎に区分し、区分した領域に基づいて第1板材が露出している領域を特定することで、特定のために必要な演算量を減少させることができる。
【0013】
上述した検査装置は、測定形状の中の第1板材が露出している領域に合わせて第1板材の基準形状を配置し、測定形状の中の溶接ビードが形成されている領域と第1板材が露出している領域との境界における溶接ビードが形成されている領域の形状と第1板材の基準形状との間の角度を算出するクランク角算出手段をさらに有していることが好ましい。なお、第1板材が露出している領域と溶接ビードが形成されている領域は隣接しているので、第1板材が露出している領域を特定すれば、測定形状の中の溶接ビードが形成されている領域と第1板材が露出している領域との境界を特定したことになる。
【0014】
クランク角は、オーバーラップと密接に関連する。オーバーラップとは、溶接ビードと第1板材とが十分に溶け合っておらず、溶接箇所において十分な強度が得られない不具合である。オーバーラップが生じていると、クランク角が大きくなる。この検査装置によれば、クランク角に基づいてオーバーラップを検査することができる。
【0015】
上述した検査装置は、測定形状の中から、溶接ビードが形成されている領域を特定する溶接ビード特定手段と、溶接ビードが形成されている領域の第1板材側の境界点と、溶接ビードが形成されている領域の第2板材側の境界点とを結ぶ直線とその直線から最も離れている溶接ビードが形成されている領域内の測定形状上の座標点との間の距離を算出する距離算出手段をさらに備えていることが好ましい。
【0016】
前記距離を、以下では、余盛高さという。余盛高さは、オーバーラップと密接に関連する。オーバーラップが生じていると、余盛高さが大きくなる。この検査装置によれば、余盛高さに基づいてオーバーラップを検査することができる。
【0017】
また、本明細書で開示される溶接ビードの検査方法、及び、検査用プログラムでも、上述した検査装置と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】溶接ビード検査装置10のブロック図。
【図2】溶接部品30の斜視図。
【図3】溶接前の板材32、34の斜視図。
【図4】3次元測定形状60と3次元基準形状62を示す図。
【図5】溶接ビード検査処理を示すフローチャート。
【図6】溶接ビード検査処理を示すフローチャート。
【図7】ステップS12の詳細を示すフローチャート。
【図8】領域に区分された2次元測定形状70と2次元基準形状72を示す図。
【図9】2次元測定形状70を領域に区分する他の処理の説明図。
【図10】フィッティング後の2次元測定形状70と2次元基準形状72を示す図。
【図11】溶接ビード領域WBを特定する処理の説明図。
【図12】クランク角θと余盛高さHcの説明図。
【図13】隅肉溶接された溶接部品の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
実施例の溶接ビード検査装置について、図面を参照して説明する。図1に示すように、実施例に係る溶接ビード検査装置10は、表面形状測定装置20に接続されている。溶接ビード検査装置10は、一般的なコンピュータにより構成されており、演算装置12と記憶装置14を備えている。記憶装置14には、溶接ビード検査用プログラム、溶接に用いられる板材の基準形状を示すデータ等が記憶されている。
【0020】
図2は、検査対象の溶接部品30の斜視図を示している。溶接部品30は、図3に示すように部分的に重ねられた板材32と板材34を、その重ねた箇所で溶接した部品である。すなわち、図2の参照番号36は、溶接ビードを示している。板材32及び34は、溶接ビード36を横断する方向に湾曲した曲面形状を備えている。表面形状測定装置20は、溶接ビード36に略直交する断面における溶接部品30の表面形状(図2のxz平面内の2次元形状)を測定する。この測定は、いわゆる光切断法によって行われ、溶接部品30の溶接ビード36を横断する線状の光を照射し、線状の光が投影された領域38が撮影される。撮影された画像から、領域38の断面形状が算出される。このとき、光の照射方向と光の撮影方向の少なくとも一方は、溶接部品30の表面に対して斜めに設定されている。なお、溶接部品30の表面形状の測定は、光切断法に限られず、例えば接触式の形状測定器を用いることもできる。
図2に示すように、表面形状測定装置20は、溶接ビード36が伸びる方向(y方向)に沿って一定間隔毎にxz平面内の表面形状を測定する(図2の複数の線状領域38のそれぞれで表面形状を測定する)。以下では、各xz平面において測定された溶接部品30の2次元の表面形状を2次元測定形状という。y方向に一定間隔毎に測定された多数の2次元測定形状によって、図4(a)に例示するように、溶接部品30の3次元の表面形状60(以下、3次元測定形状60という)が得られる。なお、図4(a)では、多数の2次元測定形状70のうちの1つを点線で示している。3次元測定形状60は、x、y、z座標により規定された多数の座標点によって表される。
なお、図1、2から明らかなように、第2板材34は溶接後に露出する領域が広いのに対し、第1板材32は溶接後に露出する領域が狭い。
【0021】
演算装置12は、記憶装置14に記憶されている溶接ビード検査用プログラムを実行することで、溶接ビード36を検査する。溶接ビード検査用プログラムを実行すると、演算装置12によって、図5及び図6のフローチャートに示す処理が行われる。
【0022】
ステップS2では、演算装置12は、表面形状測定装置20から溶接部品30の3次元測定形状60を表す3次元測定形状データの入力を受ける。ステップS4では、演算装置12は、記憶装置14から3次元基準形状データを読み出す。3次元基準形状データは、溶接前の板材32と板材34の表面の3次元形状(以下、3次元基準形状という)を表すデータである。図4(b)に例示するように、3次元基準形状62は、x、y、z座標により規定された多数の座標点によって表される。3次元基準形状62は、設計上の形状であり、実際の板材32、34の形状は誤差により3次元基準形状62と異なる場合がある。以下では、3次元基準形状62のうち、板材32の形状を表す部分を第1板材3次元基準形状64といい、第2板材34の形状を表す部分を第2板材3次元基準形状66という。第1板材3次元基準形状64は、図3の第1板材32の上面32aの形状に相当する。第2板材3次元基準形状66は、図2の第2板材34の上面34aと端面34bの形状に相当する。第1板材3次元基準形状64と第2板材3次元基準形状66は、設計上の第1板材32と第2板材34の相対位置に相当する位置関係に配置されている。3次元基準形状62は、y方向に一定間隔毎に規定された複数の2次元基準形状72によって構成されている。なお、図4(b)では、多数の2次元基準形状72の1つを点線で示している。2次元基準形状72は、xz平面内における2次元形状である。以下では、2次元基準形状72のうち、第1板材32の形状に相当する部分を、第1板材2次元基準形状74といい、第2板材34の形状に相当する部分を、第2板材2次元基準形状76という。
【0023】
ステップS6では、演算装置12は、第2板材3次元基準形状66の3次元測定形状60に対するy方向の位置を調節する。具体的には、以下の手順を実施する。図4(b)に示すように、第2板材3次元基準形状66には、フィッティング領域68が定められている。フィッティング領域68は、溶接箇所から離れており、溶接時に変形することがない領域に設定されている。最初に、フィッティング領域68内の第2板材3次元基準形状66上のk個の座標点P1〜Pkを特定する。次に、各座標点P1〜Pkを、z軸に沿って3次元測定形状60上に投影した座標点Q1〜Qkを特定する。次に、各座標点P1〜Pkと対応する座標点Q1〜Qkのz座標の差e1〜ekを算出する。次に、差e1〜ekの分散Vを算出する。なお、分散Vは、以下の数式により表される。
【0024】
【数1】

【0025】
なお、上記の(数1)において、E(e)は差e1〜ekの平均値である。上記分散Vが小さいほど、フィッティング領域68内で3次元測定形状60と第2板材3次元基準形状66が整合しているといえる。ステップS6では、演算装置12は、第2板材3次元基準形状66をy方向に移動させながら分散Vが最小となる位置を特定し、その特定した位置に第2板材3次元基準形状66を移動させる。
【0026】
ステップS8では、演算装置12は、第1板材3次元基準形状64の3次元測定形状60に対するy方向の位置を調節する。ここでは、ステップS6における第2板材3次元基準形状66の移動量と同一の移動量だけ第1板材3次元基準形状64を移動させる。
【0027】
ステップS10では、演算装置12は、第2板材3次元基準形状66の3次元測定形状60に対するx方向の位置を調節する。ここでは、ステップS6と同様に、フィッティング領域68内の座標点とこれらを3次元測定形状60に投影した座標点とのz座標の差の分散が最小となるように、第2板材3次元基準形状66を移動させる。
【0028】
ステップS12では、演算装置12は、第1板材3次元基準形状64と3次元測定形状60とを位置合わせするためのフィッティング領域80を設定する。ステップS12は、y座標毎に行われる。すなわち、y座標毎にxz断面における2次元測定形状70と2次元基準形状72が抽出され、各断面についてステップS12が実行される。以下に、図4に例示する2次元形状70、72を例として、ステップS12の処理を説明する。
【0029】
図7は、ステップS12において行われる処理の詳細を示している。図7のステップS60では、演算装置12は、2次元測定形状70を、傾斜角度に応じた領域に区分する。具体的には、まず、2次元測定形状70の各座標点における法線ベクトルを算出する。法線ベクトルは、2次元測定形状70上の座標点群を曲線近似等して算出する。次に、起点となる座標点Rmを特定し、その座標点Rmの法線ベクトルとその隣の座標点Rm+1の法線ベクトルの間の角度が予め決められた基準角度以下であるか否かを判定する。この判定は、法線ベクトル同士の内積を算出することで行うことができる。法線ベクトル間の角度が基準角度以下である場合には、座標点Rmと座標点Rm+1をグループ化する。この場合には、次に、座標点Rmの法線ベクトルと、グループ化した座標点Rm、Rm+1に隣接する座標点(座標点Rm−1またはRm+2)に対して同様の処理を行う。この処理を、座標点Rmとグループ化できる座標点が他に無くなるまで繰り返す。これによって、座標点Rmとグループ化された座標点群が、1つの領域として区分される。1つの領域を区分したら、未だ区分されていない座標点に対して、上述した処理を実施し、2次元測定形状70上の全ての座標点を、傾斜角度に応じた領域に区分する。これによって、例えば、図8に例示するように、2次元測定形状70を、領域S1〜Sn(図7の例では領域S1〜S8)に区分する。領域S1〜Snは、法線ベクトルが近似する座標点(すなわち、傾斜角度が近似する座標点)の集まりである。また、各領域S1〜Snには、法線ベクトルT1〜Tn(図7の例では、法線ベクトルT1〜T8)が設定される。ここで設定される法線ベクトルT1〜Tnは、各領域S1〜Snの傾斜角度を表すベクトルである。法線ベクトルT1〜Tnは、各領域S1〜Sn内の座標点群の法線ベクトルを平均したベクトルであってもよいし、他の処理により算出されたベクトルであってもよい。
【0030】
また、ステップS60は、次の方法によって行ってもよい。この方法では、最初に、図9に示すように、2次元測定形状70の両端の座標点K1、K2を結ぶ線分L1を描く。次に、線分L1から最も離れた2次元測定形状70上の座標点K3を特定する。線分L1と座標点K3の間の距離が、予め決められている閾値より大きければ、座標点K1、K3、K2に沿って線分L2、L3を描く。次に、線分L2から最も離れた区間K1−K3内の2次元測定形状70上の座標点K4と、線分L3から最も離れた区間K3−K2内の2次元測定形状70上の座標点K5を特定する。次に、線分L2と座標点K4の間の距離が前記閾値より大きいか否かを判定する。この距離が閾値より大きければ、座標点K1、K4、K3に沿って線分を描いて同様の処理を繰り返す。また、線分L3と座標点K5の間の距離が前記閾値より大きいか否かを判定する。この距離が閾値より大きければ、座標点K3、K5、K2に沿って線分を描いて同様の処理を繰り返す。新たに描かれる線分とその線分に対応する区間内で線分から最も遠い座標点の間の距離が閾値より小さくなるまで同様の処理を繰り返すことで、2次元測定形状70に沿った折線が得られる。このようにして得られた折線の各線分は、2次元測定形状70の傾きを表している。すなわち、折線の線分と略重なる座標点群は、法線ベクトルが近似する座標点の集まりである。2次元測定形状70は、折線内の線分に従って、領域S1〜Snに区分される。
【0031】
ステップS62では、演算装置12は、図8に示すように第1板材2次元基準形状74を傾斜角度に応じた領域に区分する。ここでは、ステップS60と同様にして、第1板材2次元基準形状74を、領域U1〜Uo(図8の例では領域U1〜U4)に区分する。また、各領域U1〜Uoに、法線ベクトルV1〜Vo(図8の例ではV1〜V4)を設定する。なお、第1板材2次元基準形状74を領域に区分したデータが予め記憶装置14に記憶されており、ステップS62でそのデータを読み出すようにしてもよい。
【0032】
ステップS64では、演算装置12は、第1板材2次元基準形状74の各領域と2次元測定形状70の各領域との対応付けを行う。ここでは、法線ベクトル同士が近似する領域同士を対応付ける。すなわち、法線ベクトルTと法線ベクトルVとがなす角度が基準角度より小さい場合に、その法線ベクトルを有する領域同士が対応付けられる。但し、法線ベクトル同士が近似していても、x座標が極端に異なる領域同士である場合にはこれらの領域同士は対応付けられない。法線ベクトル同士の間の角度の判定は、法線ベクトル同士の内積により判定することができる。図8の例では、領域S1が領域U1に対応付けられ、領域S2が領域U2に対応付けられ、領域S3が領域U3に対応付けられ、領域S4が領域U4に対応付けられる。ステップS64で対応付けられた2次元測定形状70の各領域(図8の例では、領域S1〜S4)は、溶接後においても板材32が露出している領域に相当する。演算装置12は、図8に示すように、2次元測定形状70の対応付けられた領域(図8の例では、領域S1〜S4)と重なる範囲内の第1板材2次元基準形状74にフィッティング領域80を設定する。
【0033】
以上に説明したように、ステップS60〜S64が実行されることで、第1板材2次元測定形状74の中にフィッティング領域80が設定される。この溶接部品30では、板材32が露出する領域が少ないため、板材32側では板材34側のフィッティング領域68のように広いフィッティング領域を予め設定しておくことができない。しかしながら、このように傾斜角度分布に基づいて2次元測定形状70と第1板材2次元基準形状74を比較することで、板材32が露出している領域を正確に特定することができる。このようにして特定した領域をフィッティング領域80として用いることで、板材32が露出する範囲内で最も広くフィッティング領域80を設定することができる。したがって、後述する位置調節を正確に行うことが可能となる。ステップS60〜S64が各y座標の断面毎に実施されることで、図4に示すように、3次元測定形状60に、フィッティング領域80が設定される。
【0034】
ステップS12でフィッティング領域80を設定すると、演算装置12は、ステップS14において、第1板材3次元基準形状64の3次元測定形状60に対するx方向の位置を調節する。ここでは、ステップS6と同様に、フィッティング領域80内の座標点とこれらをz方向に沿って3次元測定形状60上に投影した座標点とのz座標の差の分散が最小となるように第1板材3次元基準形状64をx方向に移動させる。
【0035】
ここまでの処理により、3次元基準形状62のx方向及びy方向の位置が調節される。ステップS16では、演算装置12は、ステップS6、S8,S10、S14における3次元基準形状62の移動量(位置の調節量)がゼロであったか否かを判定する。ステップS6、S8,S10、S14の何れかのステップで移動量がゼロでない場合には、再度ステップS6〜S14が繰り返される。すなわち、ステップS6、S8,S10、S14の全てのステップで移動量がゼロとなるまで、ステップS6〜S14が繰り返される。これによって、3次元基準形状62のx方向及びy方向の位置が最適化される。
【0036】
ステップS18では、演算装置12は、y座標毎に、第2板材2次元基準形状76の2次元測定形状70に対するz方向の位置を調節する。すなわち、y座標毎にxz断面における第2板材2次元基準形状76と2次元測定形状70が抽出され、各xz断面において第2板材2次元基準形状76のz方向の位置が調節される。以下に、各xz断面における位置調節について説明する。まず、フィッティング領域68内の第2板材2次元基準形状76の座標点を特定し、次に、特定した座標点をz方向に沿って2次元測定形状70上に投影した座標点を特定する。そして、フィッティング領域68内の第2板材2次元基準形状76の座標点のz座標の平均値と、2次元測定形状70上に投影した座標点のz座標の平均値を算出する。そして、両平均値が一致するように、第2板材2次元基準形状76をz方向に移動させる。
【0037】
ステップS20では、演算装置12は、y座標毎に、第1板材2次元基準形状74の2次元測定形状70に対するz方向の位置を調節する。すなわち、y座標毎にxz断面における第1板材2次元基準形状74と2次元測定形状70が抽出され、各xz断面において第1板材2次元基準形状74のz方向の位置が調節される。以下に、各xz断面における位置調節について説明する。まず、フィッティング領域80内の第1板材2次元基準形状74の座標点を特定し、次に、特定した座標点をz方向に沿って2次元測定形状70上に投影した座標点を特定する。そして、フィッティング領域80内の第2板材2次元基準形状76の座標点のz座標の平均値と、2次元測定形状70上に投影した座標点のz座標の平均値を算出する。そして、両平均値が一致するように、第1板材2次元基準形状74をz方向に移動させる。
【0038】
ステップS22では、演算装置12は、y座標毎に、第2板材2次元基準形状76の2次元測定形状70に対する位置を微調節する。すなわち、y座標毎にxz断面における第2板材2次元基準形状76と2次元測定形状70が抽出され、各xz断面において第2板材2次元基準形状76の位置が微調節される。以下に、各xz断面における位置の微調節について説明する。まず、演算装置12は、フィッティング領域68内の第2板材2次元基準形状76の座標点を特定し、特定した座標点毎にその座標点に最も近い2次元測定形状70上の座標点(以下、最近点という)を特定する。そして、フィッティング領域68内の第2板材2次元基準形状76の座標点とこれらの最近点に基づいて、ICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを実行する。ICPアルゴリズムによって、第2板材2次元基準形状76の並進と回転を繰り返し実行する。これによって、フィッティング領域68内の第2板材2次元基準形状76の座標点とこれらの最近点とが最も整合するように、第2板材2次元基準形状76の位置が決定される。なお、ICPアルゴリズムの実行時に第2板材2次元基準形状76を回転させる際には、フィッティング領域68内の第2板材2次元基準形状76の座標点の平均点を回転中心として用いることができる。
【0039】
ステップS24では、演算装置12は、y座標毎に、第1板材2次元基準形状74の2次元測定形状70に対する位置を微調節する。すなわち、y座標毎にxz断面における第1板材2次元基準形状74と2次元測定形状70が抽出され、各xz断面において第1板材2次元基準形状74の位置が微調節される。以下に、各xz断面における位置の微調節について説明する。まず、演算装置12は、フィッティング領域80内の第1板材2次元基準形状74の座標点を特定し、特定した座標点毎にその座標点に最も近い2次元測定形状70上の座標点(すなわち、最近点)を特定する。そして、フィッティング領域80内の第1板材2次元基準形状74の座標点とこれらの最近点に基づいて、ICPアルゴリズムを実行する。ICPアルゴリズムによって、第1板材2次元基準形状74の並進と回転を繰り返し実行する。これによって、フィッティング領域80内の第1板材2次元基準形状74の座標点とこれらの最近点とが最も整合するように、第1板材2次元基準形状74の位置が決定される。なお、ICPアルゴリズムの実行時に第1板材2次元基準形状74を回転させる際には、フィッティング領域80内の第1板材2次元基準形状74の座標点の平均点を回転中心として用いることができる。
【0040】
以上の処理により、3次元基準形状62の3次元測定形状60に対する位置合わせが終了する。これによって、3次元基準形状62と3次元測定形状60を重ね合わせたデータが完成する。各y座標における断面では、図10に示すように、2次元測定形状70に2次元基準形状72を重ね合わせたデータ(以下、比較形状データという)ができる。なお、図10では、2次元測定形状70を実線で示し、2次元基準形状72を点線で示し、これらが重なっている箇所は実線のみで示している。図10に示すように、フィッティング領域68が2次元測定形状70と略一致するように第2板材2次元基準形状76が配置され、フィッティング領域80が2次元測定形状70と略一致するように第1板材2次元基準形状74が配置される。上述したステップS10、S14、S18、S20、S22、S24において、第1板材2次元基準形状74と第2板材2次元基準形状76は別個に位置調節されているので、第1板材2次元基準形状74と第2板材2次元基準形状76は不連続となっている。
【0041】
図6のステップS26に進むと、演算装置12は、図11(a)に示すように第1板材2次元基準形状74と第2板材2次元基準形状76を接続する。具体的には、図10において、第1板材2次元基準形状74を第2板材2次元基準形状76側に延長した直線を描く。また、第2板材2次元基準形状76の線42b(図3の板材34の端面34bを表す線)を下側に延長した直線を描く。そして、図11(a)に示すように、これらの直線の交点Cuで第1板材2次元基準形状74と第2板材2次元基準形状76を接続する。
【0042】
ステップS28では、演算装置12は、図11(b)に示すように、比較形状データの各x座標において、2次元測定形状70のz座標から2次元基準形状72のz座標を減算した差分値Δzを算出する。差分値Δzの算出は、フィッティング領域68とフィッティング領域80の間の領域に対して行う。差分値Δzは、溶接の前後における表面の位置変化量(z方向における変化量)を表す。差分値Δzがプラスである領域は、溶接により盛り上がった領域であり、差分値Δzがマイナスである領域は溶接により凹んだ領域である。
【0043】
ステップS30では、演算装置12は、差分値Δzと閾値zTHに基づいて、図11(b)に示すように、x座標上の領域を、上方変形領域WU、下方変形領域WL、及び、非変形領域WNに分類する。閾値zTHは、想定される差分値Δzに応じて予め定められている値である。差分値Δzが閾値zTHより大きい領域は、上方変形領域WUとして特定される。差分値Δzが閾値−zTHより小さい領域は、下方変形領域WLとして特定される。差分値Δzの絶対値が閾値zTH以下の領域は、非変形領域WNとして特定される。上方変形領域WUは溶接により盛り上がった領域を示し、下方変形領域WLは溶接により凹んだ領域を示し、非変形領域WNは溶接の前後で表面形状の変化が小さかった領域を示す。なお、変形領域(WUまたはWL)が存在しない場合には、溶接の前後で変形がほとんどない(すなわち、溶接ビードが形成されていない)ことを意味するので、エラーが報告される。
【0044】
ステップS32では、演算装置12は、ステップS30で特定された領域毎に、差分値Δzの絶対値を積分する。そして、算出した積分値が最大の領域が溶接ビード領域WBとして特定される。図11(b)の例では、上方変形領域WU4が溶接ビード領域WB1として特定される。
【0045】
ステップS34では、演算装置12は、溶接ビード領域WBと変形領域(WUまたはWL)との間に挟まれており、かつ、x方向の幅が基準距離未満である非変形領域WNが存在するか否かを判定する。基準距離は、予め定められた値である。このような非変形領域WNが存在する場合には(ステップS34でYES)、ステップS36において、その非変形領域WNと、その非変形領域WNに隣接する変形領域(溶接ビード領域WBではない変形領域)が、溶接ビード領域WBの一部として特定される(溶接ビード領域WBに加えられる)。ステップS34、S36の処理は、ステップS32でNOと判定されるまで繰り返される。これによって、最終的な溶接ビード領域WBが特定される。
例えば、図11(b)の例では、ステップS32で上方変形領域WU4が溶接ビード領域WB1として特定されている。溶接ビード領域WB1と下方変形領域WL2の間の非変形領域WN3の幅が基準距離未満であるので、ステップS34でYESの判定がされ、ステップS36で下方変形領域WL2と非変形領域WN3が溶接ビード領域WBに組み込まれる。すなわち、溶接ビード領域WB1が、溶接ビード領域WB2まで拡大する。次に、再度、ステップS34が実行される。このときには、溶接ビード領域WB2の外に、変形領域が存在せず、ステップS34の条件が満たされない。したがって、ステップS34でNOと判定される。このため、図11(b)の例では、下方変形領域WL2から上方変形領域WU4までの領域が、溶接ビード領域WBとして特定される。
【0046】
ステップS34でNOと判定すると、演算装置12は、ステップS38において溶接ビードのクランク角を算出する。図12に示すように、クランク角θは、溶接ビード領域WBと板材32が露出する領域W32(以下、第1板材領域という)の境界部における溶接ビード領域WBの表面形状と第1板材2次元基準形状74との間の角度である。ステップS38では、最初に、演算装置12は、溶接ビード領域WBと第1板材領域W32との境界部近傍の溶接ビード領域WB内の2次元測定形状70の座標点群を抽出する。次に、抽出した座標点群を、LMedS(最小2乗メジアン推定)やハフ変換等のロバスト推定手法により直線近似することで、図12に示す直線78を算出する。そして、直線78と第1板材2次元基準形状74の間のクランク角θを算出する。なお、溶接ビードの盛り上がりが大きすぎると、前記境界部近傍の溶接ビード領域WB内の2次元測定形状70の座標が異常値となる場合がある。しかしながら、上述したロバスト推定手法を用いれば、異常値が含まれる場合でも異常値による影響を抑えながら正確にクランク角θを算出することができる。
【0047】
ステップS40では、図12に示すように、演算装置12は、第1板材領域W32と溶接ビード領域WBとの境界点Caと、板材34が露出している領域W34と溶接ビード領域WBとの境界点Cbとを結ぶ線分CaCbを描く。次に、線分CaCbから最も遠い溶接ビード領域WB内の座標点Ccを特定する。そして、線分CaCbと座標点Ccの間の距離Hcを算出する。以下では、距離Hcを、余盛高さHcという。
【0048】
クランク角θと余盛高さHcは、オーバーラップと呼ばれる欠陥と密接に関連する。オーバーラップとは、溶接ビードと板材32とが十分に溶け合っておらず、溶接箇所において十分な強度が得られない不具合である。オーバーラップが生じていると、クランク角θが大きくなり、余盛高さHcが大きくなる。この検査装置によれば、クランク角θと余盛高さHcに基づいてオーバーラップを検査することができる。
【0049】
ステップS42では、演算装置12は、溶接ビードの他のパラメータを測定する。これによって、上述したオーバーラップの他の溶接ビードの特性を評価する。例えば、ステップS42では、溶接ビードの寸法(幅、厚さ等)、板材32と板材34の間の隙間の幅、アンダーカット領域(凹状の領域)の有無、アンダーカット領域の深さ、ピット(溶接ビードの表面に形成される微小な凹み)の有無を算出する。
【0050】
ステップS44では、演算装置12は、ステップS42までに算出した溶接ビードの種々のパラメータに基づいて、溶接ビードの良否を判定する。溶接ビードを不良と判定した場合には、管理者に報知される。以上の処理により、演算装置12は溶接ビードの検査処理を終了する。
【0051】
以上に説明したように、実施例の溶接ビード検査装置は、測定形状の傾斜角度(すなわち、法線ベクトル)の分布と、板材32の基準形状の傾斜角度の分布に基づいて、測定形状の中から板材32が露出している領域を特定する。傾斜角度には板材32の表面形状の特徴がより顕著に表れるので、傾斜角度に基づくことで、測定形状の中から板材32が露出している領域を正確に特定することができる。溶接ビード検査装置は、特定した板材32が露出している領域全体をフィッティング領域として用いて、板材32の基準形状と測定形状との位置合わせを行う。このように、測定結果に基づいて板材32が露出している領域を特定し、その特定した領域全体をフィッティング領域に設定することで、フィッティング領域を最も広く確保することができる。このため、この溶接ビード検査装置によれば、板材32が露出する領域が狭くても、その狭い領域内で最大限にフィッティング領域を確保することができる。このため、この溶接ビード検査装置は、板材32の基準形状と測定形状との位置合わせを正確に行うことができる。その結果、板材32が露出する領域が狭くても、溶接ビードを正確に検査することができる。また、板材32が露出する領域が広い場合であっても、板材32の表面形状に変化が少なく、板材32の基準形状と測定形状の位置あわせが困難となる場合がある。実施例の溶接ビード検査装置によれば、フィッティング領域を最大限広く設定することができるので、このような場合であっても広いフィッティング領域を使って板材32の基準形状と測定形状の位置合わせを正確に行うことができる。
【0052】
なお、上述した実施例では、板材32、34をこれらの厚さ方向に重ねて溶接した場合について説明したが、図13に示すように隅肉溶接(T字継手)された溶接部品を検査する場合にこの技術を用いることもできる。
【0053】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0054】
10:溶接ビード検査装置
12:演算装置
14:記憶装置
20:表面形状測定装置
30:溶接部品
32:板材
34:板材
34b:端面
36:溶接ビード
38:線状領域
42b:線
60:3次元測定形状
62:3次元基準形状
64:第1板材3次元基準形状
66:第2板材3次元基準形状
68:フィッティング領域
70:2次元測定形状
72:2次元基準形状
74:第1板材2次元基準形状
76:第2板材2次元基準形状
78:直線
80:フィッティング領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面形状を有する第1板材と曲面形状を有する第2板材とを溶接した構造体の溶接ビードの検査装置であって、
溶接ビードに交差する断面における構造体の表面形状を測定した測定形状を記述する測定形状データの入力を受ける入力手段と、
前記断面における第1板材の溶接前の表面形状の基準形状を記述する第1板材基準形状データを記憶する記憶手段と、
測定形状の傾斜角度分布と第1板材の基準形状の傾斜角度分布に基づいて、測定形状の中から第1板材が露出している領域を特定する領域特定手段、
を有することを特徴とする溶接ビード検査装置。
【請求項2】
領域特定手段が、測定形状を傾斜角度が近い領域毎に区分したときの各領域の傾斜角度と、第1板材の基準形状を傾斜角度が近い領域毎に区分したときの各領域の傾斜角度に基づいて、測定形状の中から第1板材が露出している領域を特定することを特徴とする請求項1に記載の溶接ビード検査装置。
【請求項3】
測定形状の中の第1板材が露出している領域に合わせて第1板材の基準形状を配置し、測定形状の中の溶接ビードが形成されている領域と第1板材が露出している領域との境界における溶接ビードが形成されている領域の形状と第1板材の基準形状との間の角度を算出するクランク角算出手段をさらに有していることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接ビード検査装置。
【請求項4】
測定形状の中から、溶接ビードが形成されている領域を特定する溶接ビード特定手段と、
溶接ビードが形成されている領域の第1板材側の境界点と、溶接ビードが形成されている領域の第2板材側の境界点とを結ぶ直線とその直線から最も離れている溶接ビードが形成されている領域内の測定形状上の座標点との間の距離を算出する距離算出手段、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の溶接ビード検査装置。
【請求項5】
曲面形状を有する第1板材と曲面形状を有する第2板材とを溶接した構造体の溶接ビードの検査方法であって、
コンピュータに、
溶接ビードに交差する断面における構造体の表面形状を測定した測定形状を記述する測定形状データを入力する入力ステップと、
前記断面における第1板材の溶接前の表面形状の基準形状を記述する第1板材基準形状データを記憶させる記憶ステップと、
測定形状の傾斜角度分布と第1板材の基準形状の傾斜角度分布に基づいて、測定形状の中から第1板材が露出している領域を特定する領域特定ステップ、
を実行させることを特徴とする検査方法。
【請求項6】
曲面形状を有する第1板材と曲面形状を有する第2板材とを溶接した構造体の溶接ビードの検査に用いられるプログラムであって、
コンピュータに、
溶接ビードに交差する断面における構造体の表面形状を測定した測定形状を記述する測定形状データを入力する入力ステップと、
前記断面における第1板材の溶接前の表面形状の基準形状を記述する第1板材基準形状データを記憶させる記憶ステップと、
測定形状の傾斜角度分布と第1板材の基準形状の傾斜角度分布に基づいて、測定形状の中から第1板材が露出している領域を特定する領域特定ステップ、
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−83151(P2012−83151A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228253(P2010−228253)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】