説明

溶融金属吐出装置及び溶融金属吐出方法並びにバンプ形成方法

【課題】プリント基板等のランド上に、所望量の半田を短時間で吐出することが可能な、生産性の良い溶融金属吐出装置を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明の溶融金属の吐出装置は、複数のノズル穴を備えた貯蔵室に溶融金属を収納し、複数のノズル穴から溶融金属の液滴を吐出させ、液滴同士を飛翔中に衝突させて一体化する構成を有するので、ノズル穴の個数に応じた量の溶融金属の液滴を飛翔させることが可能な溶融金属の吐出手段を提供でき、所望量の大径半田バンプを効率よく作製できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属吐出装置及び溶融金属の吐出方法、並びに同吐出方法を用いたバンプの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSI(Large Scale Integration)等の半導体部品をビルドアップ基板等へ実装するにあたって、電気的接続を行うために半田付けが実装工程中で行われる。
【0003】
従来の溶融金属吐出装置は、例えば、ビルドアップ配線板等の樹脂基板の電極パッドへの半田バンプの形成、半導体素子のフリップチップまたはチップサイズパッケージにおける電極パッド上の半田ボール形成などに用いられてきた。溶融金属吐出装置を用いて半田等の溶融金属を同装置のノズルの吐出口から滴下して、半導体チップや樹脂基板等のランド上に半田のバンプを形成していた。
【0004】
従来の溶融金属吐出装置は、半田等の溶融金属を収納している貯蔵室、貯蔵室の上部構成材であるダイヤフラム、ダイヤフラムを介して貯蔵室内の溶融金属にパルス的に加圧するための圧電素子等から構成され、貯蔵室の下部にはノズル穴を備えていた。
従来の溶融金属吐出装置によるバンプ形成は、以下の手順で行なわれていた。
(1)所定のパルス電圧を圧電素子に印加してダイヤフラムを変形させ貯蔵室内の圧力を上げ、(2)内圧の上昇によって、溶融金属をノズル穴から液滴として吐出させ、(3)吐出された液滴を基板上のランドに一旦堆積し、吐出総量が所望の量になるまで、複数個の液滴の吐出を繰り返し、(4)基板等の上に堆積された半田を再加熱し、溶融一体化して大径のバンプに成形していた(特許文献1)。
【0005】
上述の従来技術においては、ランド毎に半田液滴の吐出を繰り返す必要があり、作業時間が長くかかり生産性に問題があったので、バンプを形成するために必要な半田の総量に応じて、ノズル開口径を調整し、吐出液滴の径を大きくするよう設定していた。ところが、ノズル開口径は、液滴が勝手に垂れ落ちない程度の小径でなければならずノズル開口径の拡大には限界があり、150〜200μm程度の口径が限界であった。このため、大面積のランドに対応して大径のバンプを形成する場合には、最大径の半田の液滴(以下、半田滴という。)を滴下してもなお一滴の半田量では不足するため、液滴の供給を複数回行うことは避けられなかった
【0006】
そこで、上述の不都合を回避するため、ランドに必要な半田量が1滴では不足する場合には、1回の吐出動作で複数個の半田滴の同時吐出を可能とすることを目的に、複数個のノズル穴が貯蔵室下部に設けられていた。複数個のノズル穴からランドに滴下され一旦堆積された半田は、堆積後に再加熱され、溶融状態となり一体化されて所望の大径のバンプに整形されていた(特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−334654号公報(段落[0029]、第1図)
【特許文献2】特開2003−318218号公報(段落[0029]、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に開示された複数個のノズル穴を有する溶融金属吐出装置には、次のような課題があった。
吐出される半田滴は各ノズル穴から真下に飛翔するため、ノズル穴の真下には必ずランドが存在しなければならず、ノズル穴の配列数はランドの大きさで制限されていた。そのため、大径のバンプに必要な所定量の溶融半田を小さなランド上へ滴下することはできないという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するために成されたものであり、所望量の溶融金属の液滴を吐出することが可能な溶融金属の吐出方法及び溶融金属吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の溶融金属吐出装置は、底部に複数のノズル穴を備え溶融金属を収納する貯蔵室と、溶融金属をパルス状に加圧し複数のノズル穴から液滴にして吐出させる加圧手段とを備えており、複数のノズル穴の中心軸は、吐出方向の延長線上で集束するように配置されたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の溶融金属吐出装置は、底部に複数のノズル穴を備え溶融金属を収納する貯蔵室と、溶融金属をパルス状に加圧し複数のノズル穴から液滴にして吐出させる加圧手段とを備えており、液滴同士を飛翔中に衝突させるようにノズル穴を配置したことを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明の溶融金属の吐出方法は、底部に複数のノズル穴を備え、かつノズル穴の各中心軸は吐出方向の延長線上で集束するように配置された貯蔵室に溶融金属を収納し、溶融金属をパルス状に加圧して複数のノズル穴から溶融金属の液滴を吐出させることを特徴とする溶融金属の吐出方法である。
【0013】
また、本発明の溶融金属の吐出方法は、底部に複数のノズル穴を備えた貯蔵室に溶融金属を収納し、溶融金属をパルス状に加圧して複数のノズル穴から溶融金属の液滴を吐出させ、液滴同士を飛翔中に衝突させて一体化することを特徴とする溶融金属の吐出方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吐出させた溶融金属の液滴同士は飛翔中に衝突するので、ノズル穴の個数に応じた所望量の液滴を吐出させることが可能な溶融金属の吐出方法が実現でき、また、この吐出方法を使用できる溶融金属吐出装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における溶融金属吐出装置を模式的に示した縦断面図である。なお、図において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することである。また、明細書全文に表れている構成要素の形容は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
【0016】
まず、実施の形態1における溶融金属吐出装置の構成について図1を参照しながら説明する。図1に示すように、溶融金属吐出装置は、ボディ11、半田タンク12、ヒータ16、圧電素子17、溶融半田室14、ノズルプレート22等からなる吐出ヘッド10と、テーブル30と、制御装置20とを備えて構成されている。吐出ヘッド10は、半田のバンプ33を形成するために溶融半田13を吐出するための機構を有している。テーブル30は、バンプ33が形成される基板31を載置するための台であり、吐出ヘッド10から吐出される半田滴37を基板31上に配置された所定のランド32に滴下できるよう、基板31を移動させるための機構を備えている。制御装置20は、吐出ヘッド10から所望量の溶融半田13を吐出させるための制御と、テーブル30を所定の位置へ移動させるための制御とを行う。
【0017】
また、基板31は、例えば、基板、半導体チップ、半導体ウエハである。また、基板は、プリント基板、ビルドアップ配線板、フレキシブルプリント配線板等の樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板等であり、その上にバンプを形成する基板であるならばこれらに限定されない。
【0018】
さらに、ランド32は、半田バンプを形成する電極であれば何でもかまわない。ここでいう電極とは、例えば、シリコン等の半導体基板、ガラス基板、またはセラミック基板等の上に設けられた電極パッド、また、シリコン等の半導体基板、ガラス基板、またはセラミック基板等の上に設けられた金スタッドバンプ、であったり、ビルドアップ基板またはプリント基板等の樹脂基板の上に設けられたパッド、であったりするし、これら以外にも、シリコン等の半導体基板、ガラス基板、セラミック基板または樹脂基板等に設けられた貫通穴(ビアホール、スルーホール等をいう)も含まれる。
上記は、あくまで電極の例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
【0019】
以下、吐出ヘッド10について詳細な説明をする。
図1において、ボディ11は、吐出ヘッド10の構成物(例えば、半田タンク12等)を固定する筐体としての機能を有しており、ボディ11の下部には溶融半田13を充填するための溶融半田室14が配置され、ボディ11の外周部には、半田を溶融状態に保つためのヒータ16が設置されている。また、ボディ11の内部には半田タンク12が収納されている。溶融半田室14は、ボディ11上部に設けられた半田タンク12と半田供給路15で接続され、溶融半田13が供給される。溶融半田室14の上面は、薄板状のダイヤフラム21が取り付けられている。
【0020】
さらに、ダイヤフラム21の上面には圧電素子17が密着して取り付けられており、圧電素子17がダイヤフラム21をパルス的に加圧して押し込むことによって複数のノズル穴23から半田滴37を吐出する。溶融半田室14の底面には平板状のノズルプレート22が配置されており、ノズルプレート22は保持体18によってボディ11側に取り付けられている。すなわち、溶融半田室14は、底部に複数のノズル穴23を備えたノズルプレート22を有し、上部にはダイヤフラム21を備え、側面は保持体18からなる溶融金属の貯蔵室となっている。
【0021】
また、ノズルプレート22の中心部には複数のノズル穴23が配置され、さらに、各ノズル穴23の中心軸は垂直方向に対して所定の角度をもって傾いており、各ノズル穴23の中心軸は延長線上で集束するように、複数のノズル穴23は配置されている。
【0022】
図1においては、ノズル穴23が2個示されている。各ノズル穴23からその中心軸方向に半田滴37が吐出される。なお、吐出された半田滴37は、吐出後に半田滴37同士が衝突して一体化し、大径半田滴38となり基板31上のランド32に滴下されてバンプ33を形成することになる。
また、保持体18には不活性ガス供給路19が設けられ、不活性ガス供給源(図示せず)と接続されており、ノズル穴23の近傍に不活性ガス(例えば、Nガス,Arガス等)を供給して半田滴37が大径半田滴38となる過程での酸化を防止している。
【0023】
実施の形態1における溶融金属吐出装置の主要な特徴は、ノズルプレート22にはノズル穴23が複数配置され、各ノズル穴23の中心軸は溶融金属の吐出方向の延長線上で集束することである。なお、「複数のノズル穴の中心軸は吐出方向の延長線上で集束する」とは、各ノズル穴の中心軸の延長線が集中して交わり、焦点を結ぶことをいう。
【0024】
図2はこの特徴を説明するための模式図である。図2中の(a)は、図1中に示したノズルプレート22の拡大図である。図2中の(b)は、ノズルプレート22を図2中の(a)の下側から見た場合の平面図である。すなわち、溶融金属吐出装置の外側からノズルプレート22を見た場合のノズル穴23の様子である。図2(a)中に示した一点鎖線は、ノズル穴23の中心軸を示す。2個のノズル穴23のそれぞれの中心軸が延長線上で交差するようにノズル穴23は配置されている。図2中の(b)に示した一点鎖線も同様に交差している状態を示している。なお、一点鎖線の先端の矢印は溶融金属の吐出方向を示すものである。また、図2中の(b)に示した破線は、隠れ線であって、溶融半田室14側の中心軸を示す。すなわち、各ノズル穴の中心軸はノズルプレートの外側(図2(a)においては紙面下方)の延長線上で集束し、焦点を結ぶ構成である。また、ノズル穴の中心軸とは、ノズル穴の中心線を意味する。シャフトのような棒状の物体ではないことを付記しておく。
【0025】
次に、溶融金属吐出装置を用い、基板31上にバンプ33を形成する方法について、図1および図3を参照しながら説明する。図3は、図1に示した同装置のノズルプレート部分の拡大図であり、ノズルプレートの各ノズル穴より吐出された半田滴が衝突して一体化する過程を示した模式図である。
【0026】
図3において、圧電素子17がダイヤフラム21をパルス的に押し込むことで溶融半田室14の圧力が上昇し、ノズル穴23の中心軸に沿った半田の流れが生じる。そのため、図3中の(a)に示すように、半田滴37はノズル穴23の中心軸方向に複数同時に吐出される。各中心軸は延長線上で集束するように配置されているため、吐出された半田滴37は図3中の(b)に示すように焦点で衝突する。衝突により、各半田滴37の水平方向の速度成分は相殺され、図3中の(c)に示すように1つの大径半田滴38となって垂直下方にランドに向かって飛翔する。ここで、ノズル穴23周りには不活性ガスが供給されているため、半田滴表面の酸化膜形成が抑制され、酸化膜に阻害されることなく一体化させることが可能となる。
【0027】
さらに、バンプを基板上に形成する方法について説明する。図1において示すように、テーブル30の上には基板31を予め搭載し、制御装置20の制御によって所望のランド32が吐出ヘッド10の直下にくるようにテーブル30を移動させる。所定の位置へ移動させた後に、制御装置20は圧電素子17へ吐出ヘッド10から溶融半田13を吐出させるための制御を行う。上述したように大径半田滴38を飛翔させ、基板31の上に配置された所望のランド32に半田を滴下して大径のバンプ33を基板31の上に形成する。
【0028】
実施の形態1における溶融金属の吐出方法によれば、複数のノズル穴23の中心軸は延長線上で集束するように配置されているので、複数のノズル穴23から半田滴37が吐出され、基板31に到達するまでの間に各半田滴37は衝突して一体化するので、ノズル穴の個数に応じた所望量の半田滴38を飛翔させることができる。また、この吐出方法を使用できる溶融金属吐出装置によって、大径の半田滴38をランド32上に滴下して所望の大径のバンプ33を基板31上に形成することができる。
【0029】
また、ノズル穴23の個数に応じた多量の半田を一度に滴下することが可能であるので、所望量の半田を一回の加圧動作で吐出することが可能な作業効率の良い溶融金属吐出装置を提供できる。
【0030】
さらに、ランド32に滴下した後の溶融一体化工程を省略した半田バンプ33の製造方法が可能であり、再加熱時の半田滴表面の酸化膜形成が抑制され、半田の接合力の低下原因になる含有酸化物が少ない大径のバンプ33が形成できる。
すなわち、従来の方法においては、ランド上に集積された個々の半田滴は、後の工程で再加熱されて溶融一体化されていた。この再加熱過程で半田表面が酸化して酸化物を生成し、この酸化物ためにボイドを巻き込んで半田が溶融一体化するので、これら酸化物等はバンプとしての機能である接合力の低下原因になる可能性があった。しかしながら、実施の形態1の方法においては、ランドに滴下した後の溶融一体化工程を省略できるので、かかる不具合は生じない。
【0031】
また、ランド32に滴下した後の溶融一体化工程を省略できるため、生産性の向上に繋がる。また、再加熱時の酸化防止を目的とした基板へのNガスを供給するための装置が不要となり、溶融金属吐出装置全体をコンパクトに構成することができる。
すなわち、従来の溶融金属吐出装置においては、ノズル近傍にはNガスが供給され吐出直後の半田滴の酸化を防止していた。上記再加熱の工程ではランド上に堆積させた半田の酸化も回避する必要があり、ランド周りにもNガスを供給するための装置が必要であった。そのため、装置全体が大掛かりとなる問題があった。しかしながら、実施の形態1の装置においては、ランドに滴下した後の溶融一体化工程を省略できるので、かかる問題は生じない。
【0032】
ここで、「吐出された半田滴が基板に到達する前に衝突させる」ことの利点について説明する。通常、基板31は凸凹のない理想的な平板ではなく、撓みをもっている。例えば、樹脂基板の場合は0.5mm〜1.0mmの撓みがあるので、吐出ヘッド10とランド32との距離は0.5mm〜1.0mmの間で、ランド毎に異なることとなる。いま仮に、半田滴37を衝突合体させる焦点を「ランド上」とした場合は、ランド毎に各ノズル穴23の中心軸の焦点を調整しなければならないことになる。
しかしながら、実施の形態1においては、基板31に到達するまでの飛翔中に各半田滴37を衝突合体させているので、撓みをもった基板に対しても焦点を調整する必要はないので、効率的な装置の運転が可能となる。そのため、撓みをもった基板に対しても、含有酸化物が少ない生産性の高い大径のバンプ製造方法を提供できる。
【0033】
また、ノズル穴23ピッチより狭いランド32上に、大径の半田滴38をランド上に滴下することができる。
すなわち、従来の溶融金属吐出装置においては、半田滴は各ノズル穴から真下に飛翔するため、基板のランド上にはノズル穴の配列ピッチと等しいピッチで半田滴が集積されていた。そのため、ノズル穴の真下には必ずランドが存在しなければならず、仮に、ノズル穴の配列ピッチよりも小さい幅のランド上へ半田を滴下したとすれば、半田滴はランドの外側に滴下される結果となった。また、ノズル穴のピッチは、機械加工上の制約により無制限に小さくすることはできなかった。しかしながら、実施の形態1の装置においては、ノズル穴の配置はランドの大きさに制限されないので、所望量の半田を一回の加圧動作で吐出するのに必要な個数のノズル穴を配置できる。したがって、所望量の半田滴38を小さなランド上に滴下することができる。
【0034】
図1及び図3において示したのは、ノズル穴23が2個の場合であったが、実施の形態1の溶融金属吐出装置は2個に限定されるものではなく3つ以上あっても良い。すなわち、ノズル穴23の中心軸は吐出方向の延長線上で集束し、吐出された各半田滴37が焦点で衝突する配置であればよい。
また、ノズル穴23が3つ以上の場合は、各ノズル穴23を同心円上の等角度間隔で配置すれば2つの場合より搭載位置精度の向上が可能である。なぜなら、水平方向の速度成分はある程度のバラツキを持つので、ノズル穴23数を増やせば効果的に相殺することができるからである。
【0035】
さらに、複数のノズル穴23から吐出した液滴同士を飛翔中に衝突させるようにノズル穴23を配置すれば、必ずしも上述のような「複数のノズル穴の中心軸は延長線上で集束する」ノズル穴23の配置状態を要しない。以下に、別の形態について説明する。
【0036】
図4中の(a)は、別の形態を例示したノズルプレート22の断面図である。図4中の(a)において、2つのノズル穴23の中心軸は延長線上で交差せず、平行となっている。図4中の(a)に示した矢印は、圧電素子17が発生する圧力波の進行方向を示している。上述の図3に示した形態では、圧電素子17がダイヤフラム21をパルス的に押し込むことで溶融半田室14に圧力波が生ずる。ここで、例えば音響レンズ(図示せず)を備えることによって圧力波の進行方向を制御することができる。図4中の(a)において示したのは、各ノズル穴23に向けて圧力波を進行させた場合の例である。溶融金属の液滴は、圧力波によって各ノズル穴23から押し出されるので、図4中の(a)中の破線に沿った方向に吐出することになる。
【0037】
上記のような構成の溶融金属の吐出装置であれば、液滴同士を飛翔中に衝突させて一体化できるので、ノズル穴23の個数に応じた量の溶融金属の液滴を飛翔させることが可能な溶融金属の吐出方法を提供できる。
【0038】
また、別の形態として、溶融金属の濡れ性を利用して溶融金属の吐出方向を曲げ、液滴同士を飛翔中に衝突させることが可能である。図4中の(b)〜(d)を用いて、かかる形態を説明する。図4中の(b)は、ノズルプレート22の断面図である。また、図4中の(c)は、図4中(b)に示した同ノズルプレート22のノズル穴部分を下側(図4中(b)の紙面下方)から見た場合の平面図である。図4中の(d)は、溶融金属の吐出過程を模式した図である。図4中の(b)には、2つのノズル穴23の向かい合っている側にそれぞれ突起29を設けた状態が示されている。図4中の(c)に示すように、突起29は、ノズル穴23の周囲の一部を囲う形状である。
【0039】
つぎに、図4中の(d)を用いて、溶融金属として半田の液滴を吐出する過程を説明する。圧電素子17がダイヤフラム21をパルス的に押し込むことで溶融半田室14の圧力が上昇し、半田滴37a,37cがノズル穴23より押し出される。このとき、突起29と半田との濡れ性により、半田滴37a,37cは突起29側へ曲げられて吐出する。符号37b,37dで示した半田滴は、突起29から離脱し飛翔中の状態である。吐出方向を曲げられた半田滴37b,37dは、衝突して大径の半田滴38となる。
上記のような構成の溶融金属の吐出装置であれば、半田滴同士を飛翔中に衝突させて一体化できるので、ノズル穴23の個数に応じた量の半田滴を飛翔させることが可能となり、ランド上に大径の半田バンプを形成することが可能となる。
【0040】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2における溶融金属吐出装置を模式的に示した縦断面図である。図7は、図5に示した同装置のノズルプレート25部分の拡大図であり、ノズルプレート25の各ノズル穴27より吐出された半田滴37が衝突して一体化する過程を示した模式図である。また、図8は、図7に示した同ノズルプレート25の中心部に設けた凹部26の形状と凹部26に設けられたノズル穴27の配置を示す平面図である。図8中の(a)は、円錐台状の凹部26の側面28にノズル穴27を配置した例である。また、図8中の(b)は、六角錐台状の凹部26の側面28にノズル穴27を配置した例、図8中の(c)は、四角錐台状の凹部26の側面28にノズル穴27を配置した例である。
【0041】
実施の形態2において、ノズルプレート25にはノズル穴27が複数配置され、各ノズル穴27の中心軸は吐出方向の延長線上で集束することは実施の形態1と同様である。また、溶融半田室14は、底部に複数のノズル穴27を備えたノズルプレート25を有し、上部にはダイヤフラム21を備え、側面は保持体18からなる溶融金属の貯蔵室となっている。実施の形態2の主要な特徴は、ノズル穴27はノズルプレート25の凹部26に設けられたことである。
【0042】
まず、底部に備えた各ノズル穴27の中心軸が吐出方向の延長線上で集束する状態について、図6を用いて説明する。図6は、凹部26にノズル穴27が2個ある場合の例である。図6中の(b)は、ノズルプレート25を図6中の(a)の紙面下方から見た場合の平面図である。すなわち、溶融金属吐出装置の外側からノズルプレート25を見た場合のノズル穴27の様子である。図6(a)中に示した一点鎖線は、ノズル穴27の中心軸を示す。2個のノズル穴27のそれぞれの中心軸が延長線上で交差するようにノズル穴27は配置されている。図6中の(b)に示した一点鎖線も同様に交差している状態を示している。なお、一点鎖線の先端の矢印は溶融金属の吐出方向を示すものである。また、図6中の(b)に示した破線は、隠れ線であって、溶融半田室14側の中心軸を示す。
すなわち、各ノズル穴の中心軸はノズルプレートの外側(図6(a)においては紙面下方)の延長線上で集束し、焦点を結ぶ構成である。
なお、簡潔に説明するため、図6にはノズル穴27を2個としている。3個以上であっても上述の説明と同様に各ノズル穴27の中心軸が吐出方向の延長線上で集束する。
【0043】
次に、実施の形態2における溶融金属吐出装置の構成について図5、図7及び図8を参照しながら説明する。なお、溶融金属吐出装置の全体構成については実施の形態1と同様であるので、実施の形態2に特徴的なノズルプレート25の構造及び機能を中心に説明する。また、凹部26は、図8中の(a)に示す円錐形状であっても、図8中の(b)、(c)に示した多角錐形状であっても後述する効果が期待できるので、図8中の(a)〜(c)を区別せずに以下説明する。
【0044】
図5及び図8に示すように、ノズルプレート25の中央部に装置の外側から見て窪んだ凹部26を設け、凹部26の側面28に複数個のノズル穴27が設けられている。各ノズル穴27は、凹部26の中央を中心として同心円上の等角度間隔で配置されている。また、各ノズル穴27は、その中心軸の延長が1点で集束する配置になっている。すなわち、各ノズル穴27の中心軸は垂直方向に対して所定の角度をもって傾いており、各ノズル穴27中心軸は吐出方向の延長線上で集束するため、吐出された各半田滴37は焦点で衝突するようになる。
【0045】
さらに、半田滴37を吐出させる動作について図7を用いて説明する。図7において、圧電素子17がダイヤフラム21をパルス的に押し込むことで溶融半田室14の圧力が上昇し、ノズル穴27の中心軸に沿った半田の流れが生じる。そのため、図7中の(a)に示ように半田滴37は各ノズル穴27から同時に吐出される。各中心軸は1点に集束するように配置されているため、吐出された半田滴37は図7中の(b)に示すように、焦点で衝突する。衝突により、各半田滴37の水平方向の速度成分は相殺され図7中の(c)に示すような1つの大径半田滴38となって垂直下方にランドへ向かって飛翔する。ここで、ノズル穴27周りには不活性ガスが供給されているため、半田滴表面の酸化膜形成が抑制され、酸化膜に阻害されることなく一体化することになる。
【0046】
実施の形態2においては、ノズル穴27を凹部26に配置しているので、実施の形態1で述べた効果(大径の半田滴をランド上に滴下することができること、ノズル穴の個数に応じた半田を一度に滴下することができること、含有酸化物が少ない大径のバンプが形成できること、溶融金属吐出装置全体をコンパクトに構成することができること、撓みをもった基板に対しても生産性の高い大径のバンプ形成が可能なこと、大径の半田滴を小さなランド上に滴下することができること、)に加えて以下に説明する実施の形態2の特有の効果が追加される。
【0047】
半田滴37の吐出過程において、圧電素子17がパルス的にダイヤフラム21を押し込むことで溶融半田室14の内圧が上昇する。上昇した内圧はノズルプレート25に対して鉛直方向に作用することとなる。図7に示すように、ノズル穴27を凹部26に配置したので、内圧の作用する方向とノズル穴27の中心軸を一致させることができる。このため、半田滴37の吐出方向を確実に規定でき、半田滴37の飛翔方向のばらつきを抑制する効果が生ずる。
【0048】
すなわち、パルス的に発生させる内圧は理想的には毎回同じではずであるが、実際は微妙に異なる。仮に、内圧の作用する方向とノズル穴27の中心軸をずらせた構成とした場合(2つのベクトル方向が異なる場合)は、半田滴37の吐出方向が吐出毎にずれることになる。ところが、内圧の作用する方向とノズル穴27の中心軸を一致させた場合は、吐出させるための内圧が変動しても、ノズル穴27の中心軸方向は半田滴37の吐出方向と常に一致しているため、吐出方向が内圧によって左右されることはないからである。
そのため、大径の半田滴37を所望のランド32上に位置精度良く滴下することが可能な溶融金属吐出装置を実現できる。
【0049】
また、ノズル穴27を凹部26に配置しているので、焦点とノズルプレート25との距離を短縮することができ、ノズル穴27とランド32間との距離を短くできる。そのため、何らかの原因によって大径の半田滴38の飛翔方向が垂直方向からずれたとしても大きく逸れることはなく、大径半田滴38を所定位置の近い地点に着弾させることが可能となる。そのため、小さなランドに対しても位置精度良くバンプを形成できる。
【0050】
図8において示したノズル穴27は、同一の円上に等角度間隔で配置されているが、図8に示した例に限られることはない。例えば、図9に示すように、凹部26を半球状とし、二重の同心円上にノズル穴27を配置しても良い。図9中の(a)は、図7の中の(a)に相当するノズルプレート25部分の縦断面の模式図であり、(b)はノズル穴27の配置を示す平面図である。図9に示した例では、ノズル穴27が半球状の凹部26のいずれにあっても各半田滴37が衝突する焦点は半球の中心となるので、各ノズル穴27から同時に吐出された各半田滴37は、半球の半径を飛跡として焦点で衝突することになる。したがって、かかる構成により、ノズル穴27の数に応じた所望量の大径半田滴38を吐出することが可能な溶融金属吐出装置を提供できる。
【0051】
なお、ノズル穴27の配置は、各半田滴37の水平方向の速度成分が相殺されるような配置であり、かつ、ノズル穴27から各半田滴37が衝突する焦点までの距離が同一であれば、必ずしも半球状の凹部に配置されている必要はなく、任意の窪み形状が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1に係る溶融金属吐出装置の構造を模式的に示した縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るノズル穴の構造を示した模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る半田滴吐出後の過程を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る吐出ヘッドの変形例を示した模式図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る溶融金属吐出装置の構造を模式的に示した縦断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るノズル穴の構造を示した模式図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る半田滴吐出後の過程を示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るノズルプレート主要部の平面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るノズルプレート主要部の変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
10 吐出ヘッド、13 溶融半田、14 溶融半田室、17 圧電素子、
19 不活性ガス供給路、21 ダイヤフラム、22 ノズルプレート、
23 ノズル穴、25 ノズルプレート、26 凹部、27 ノズル穴、
28 凹部の側面、31 基板、33 バンプ、37 半田滴、38 大径の半田滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に複数のノズル穴を備え溶融金属を収納する貯蔵室と、
前記溶融金属をパルス的に加圧し複数の前記ノズル穴から液滴にして吐出させる加圧手段とを備え、
複数の前記ノズル穴の中心軸は、吐出方向の延長線上で集束するように配置されたことを特徴とする溶融金属吐出装置。
【請求項2】
底部に複数のノズル穴を備え溶融金属を収納する貯蔵室と、
前記溶融金属をパルス的に加圧し複数の前記ノズル穴から液滴にして吐出させる加圧手段とを備え、
前記液滴同士を飛翔中に衝突させるように前記ノズル穴を配置したことを特徴とする溶融金属吐出装置。
【請求項3】
貯蔵室の底部に凹部を設け、
複数のノズル穴は、前記凹部に設けられたことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の溶融金属吐出装置。
【請求項4】
ノズル穴に対して不活性ガスを供給する手段を設けたことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の溶融金属吐出装置。
【請求項5】
底部に複数のノズル穴を備え、かつ前記ノズル穴の各中心軸は延長線上で集束するように配置された貯蔵室に溶融金属を収納し、
前記溶融金属をパルス的に加圧して複数の前記ノズル穴から前記溶融金属の液滴を吐出させることを特徴とする溶融金属の吐出方法。
【請求項6】
底部に複数のノズル穴を備えた貯蔵室に溶融金属を収納し、
前記溶融金属をパルス的に加圧して複数の前記ノズル穴から前記溶融金属の液滴を吐出させ、
前記液滴同士を飛翔中に衝突させて一体化することを特徴とする溶融金属の吐出方法。
【請求項7】
複数のノズル穴から吐出させた溶融金属の液滴を一体化し、
前記ノズル穴の口径よりも大きな溶融金属の液滴を作成することを特徴とする請求項5又は6のいずれかに記載の溶融金属の吐出方法。
【請求項8】
溶融金属として半田を用い、請求項7に記載の溶融金属の吐出方法によって電極上に半田バンプを形成するバンプ形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−105739(P2007−105739A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296024(P2005−296024)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】