説明

潤滑油組成物及びそれらの製造方法

【課題】エチレンプロピレンコポリマー、組成物及びこれらの製造方法が提供される。
【解決手段】その組成物はエチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位、及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも30質量%の単位を含むエチレンコポリマーを含んでもよい。その組成物はDSC により測定して、関係: Tm > 3.4 x E - 180(式中、Eはコポリマー中のエチレンから誘導された単位の質量%である)を満足する融点(Tm)(単位:℃)を有し得る。その組成物はまた約1.5 〜約3.5 のMw/Mn 比を有し得る。その組成物は更に25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量を有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件出願は2010年1月22日に出願された、米国仮特許出願第61/297,621 号(2010EM012) 、及び2010年7月29日に出願された、米国仮特許出願第61/368,997 号(2010EM200) の優先権及び利益を主張する。この出願は2010年4月16日に出願された、米国特許出願第12/761,880号 (2009EM079/2)、2010年4月16日に出願された、米国特許出願第12/762,096 号(2009EM082/2) 、2009年9月29日に出願された、米国特許出願第12/569,009 号(2009EM210) 、及び2010年4月15日に出願された、国際特許出願、PCT/US2010/031190 (2009EM210) に関連し、これらの夫々が順に2009年4月28日に出願された、米国仮特許出願第61/173,528号 (2009EM079)及び2009年4月28日に出願された、米国仮特許出願第61/173,501 号(2009EM082) の優先権を主張し、これらの開示が参考として本明細書にそのまま含まれる。
潤滑油組成物、それらの製造方法、及びそれらの使用が提供される。更に特別には、粘度指数向上組成物として有益であるエチレンプロピレンコポリマーが提供される。
【背景技術】
【0002】
半結晶性エチレン-プロピレンコポリマーを含む、オレフィンコポリマーは、潤滑油の粘度指数向上剤のクラスとして広く使用されていた。これらの使用において、これらのポリマーの性能は典型的には増粘効率(TE)対せん断安定性指数 (SSI)の比により測定される。約35%から約50%までのSSI を有するオレフィンコポリマーが典型的には高SSI 粘度指数向上剤として知られており、低SSI 材料と較べて、格別の燃料経済性及び増粘力を発することが知られている。
しかしながら、これらのオレフィンコポリマーは、一般に低温特性を不足し、ミニ回転粘度計(MRV) 試験で流動点、及び低温粘度により測定して不適当な“流動性”及び“ポンプ輸送能”を示す。更に、高エチレンオレフィンコポリマーは一般にワックス状原料油、特にグループI AC 150オイルに不適である。
しかしながら、単一触媒、単一反応器環境でつくられる53質量%〜57質量%のエチレン含量を有する半結晶性エチレン-プロピレンコポリマーは、典型的には低温でゲル化し、又は許容できない程高いMRV もしくは低温クランキングシミュレーター (CCS)粘度値を有する。エチレン含量が低い(例えば、45質量%〜50質量%)場合、単一触媒、単一反応器ポリマーはそれらの無定形の性質及び凝集し、仕上装置に粘着するそれらの傾向のために非常に取り扱い難い。
これらの欠点を避けるために、せん断方法、双峰性ブレンド、及びブロック状コポリマーを含む、一層複雑かつ面倒な方法が、使用されていた。幾つかの例示の方法が米国特許第4,540,753 号、同第4,804,794 号、同第5,391,617 号、同第5,451,630 号、同第5,451,636 号、同第5,837,773 号、同第6,753,381 号、米国特許公開第20030176579 号、WO2006102146、EP1148115 、EP1178102 、及びEP1262498 に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ故、燃料経済性及び増粘力に有害に影響しないで優れた低温特性を示し、しかもポリマーをブレンドし、せん断し、又はその他の多工程方法を使用することを必要としないで仕上げ方法で単一反応器環境(単一触媒を用いる)で安定である高SSI 粘度指数向上剤についての要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
エチレンプロピレンコポリマー、潤滑油組成物、及びこれらの製造方法が提供される。潤滑油用の組成物はエチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位、及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも30質量%の単位を含むエチレンコポリマーを含む。エチレンコポリマーは単一反応器中で調製されることが好ましい。その組成物は示差走査熱量測定(DSC) により測定して、関係: Tm > 3.4 x E - 180(式中、Eはコポリマー中のエチレンから誘導された単位の質量%である)を満足する融点(Tm)(単位:℃)を有し得る。その組成物はまた約1.5 〜約3.5 のMw/Mn 比を有し得る。その組成物は更に25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量及び少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量(ppm) 対5族金属の質量(ppm) の比を有し得る。
【0005】
少なくとも一つの特別な実施態様において、潤滑油組成物はベースオイル並びにエチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位、及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも30質量%の単位を含むエチレンコポリマーを含み得る。そのコポリマーはDSC により測定して、関係: Tm > 3.4 x E - 180(式中、Eはコポリマー中のエチレンから誘導された単位の質量%である)を満足する融点(Tm)(単位:℃)を有し得る。そのコポリマーはまた約1.5 〜約3.5 のMw/Mn の比を有し得る。そのコポリマーは更に25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量及び少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量(ppm) 対5族金属の質量(ppm) の比を有し得る。
少なくとも一つの別の特別な実施態様において、潤滑油組成物はベースオイル並びにエチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも12質量%の単位を含むエチレンコポリマーを含み得る。そのコポリマーはGPC により測定して、約50,000 〜約200,000 g/モルの範囲の重量平均分子量(Mw)を有し得る。そのコポリマーはまたDSC により測定して、少なくとも100 ℃の融点(Tm)を有し得る。そのコポリマーは更に約1.5 〜約3.5 のMw/Mn の比を有し得る。そのコポリマーはまた25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量及び少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量(ppm) 対触媒に由来する5族金属の質量(ppm) の比を有し得る。
少なくとも一つの特別な実施態様において、潤滑油組成物の製造方法は、エチレン及びプロピレンをm-ジメチルシリル-ビスインデニルハフニウムジメチル及びトリメチルアンモニウムテトラキス-ペンタフルオロフェニルボレートの存在下で充分な条件で反応させてエチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも12質量%の単位を含む半結晶性コポリマーを生成することを含み得る。その半結晶性コポリマーはGPC により測定して約50,000 〜約200,000 g/モルの範囲の重量平均分子量(Mw)を有し得る。その半結晶性コポリマーはまたDSC により測定して、少なくとも100 ℃の融点(Tm)を有し得る。その半結晶性コポリマーは更に約1.5 〜約3.5 のMw/Mn の比を有し得る。その半結晶性コポリマーはまた25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量及び少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量(ppm) 対触媒に由来する5族金属の質量(ppm) の比を有し得る。その半結晶性コポリマーは潤滑油組成物を生成するのに充分な量でベースオイルとブレンドし得る。
【発明を実施するための形態】
【0006】
少なくとも一種のオレフィンコポリマーを含む高SSI 粘度指数向上剤が高SSI 粘度指数向上剤を含む潤滑油組成物として提供される。その高SSI 粘度指数向上剤は高いせん断安定性指数 (SSI)を有し、半結晶性であり、かつ潤滑油配合物中で優れた低温特性、例えば、低い流動点、ミニ回転粘度計 (MRV)試験で低温粘度を有し、MRV 試験で降伏応力を有しないとともに、許容し得る増粘効率を示す。高SSI 粘度指数向上剤はまた仕上方法で単一反応器環境で、即ち、単一触媒を用いて安定であり、ポリマーをブレンドし、せん断し、又はその他の多工程方法を使用することを必要としない。本明細書に使用される“単一反応器コポリマー”及び“単一反応器中で調製されたコポリマー”は単一反応器環境で調製されたコポリマーを意味する。
驚くことに、また予期せずに、高SSI 粘度指数向上剤は良好な低温特性を有し、かつワックス状原料油、例えば、グループI AC 150オイル中の使用に適している。同等に驚くことに、また予期せずに、高SSI 粘度指数向上剤は当業界で知られているものよりも高い融点を等しいエチレン濃度で有する。その結果、高SSI 粘度指数向上剤を含む油組成物はゲル化しない。
高SSI 粘度指数向上剤を生成するための触媒系は (i)遷移金属の錯体(しばしばメタロセン、メタロセン触媒前駆体、又は触媒前駆体と称される)、及び(ii)活性剤を含み得る。メタロセン化合物はチタン、ジルコニウム及びハフニウムのシクロペンタジエニル誘導体であることが好ましい。好ましいメタロセン(例えば、チタノセン、ジルコノセン及びハフノセン)が下記の式により表し得る。
【0007】
【化1】

【0008】
式中、Mは金属中心であり、4族金属、好ましくはチタン、ジルコニウム又はハフニウム、好ましくはL1及びL2が存在する場合にはジルコニウム又はハフニウム、また好ましくはZが存在する場合にはチタンであり、nは0又は1である。
Tは任意の橋かけ基であり、これは、存在する場合には、好ましい実施態様において、ジアルキルシリル、ジアリールシリル、ジアルキルメチル、エチレニル (-CH2-CH2-)又はヒドロカルビルエチレニル(エチレニル中の1個、2個、3個又は4個の水素原子がヒドロカルビルにより置換されており、この場合、ヒドロカルビルは独立にC1- C16 アルキル又はフェニル、トリル、キシリル等であってもよい)から選ばれ、またTが存在する場合、表される触媒はラセミ体又はメソ形態であってもよい。
L1及びL2は同じ又は異なるシクロペンタジエニル環、インデニル環、テトラヒドロインデニル環又はフルオレニル環であり、必要により置換されていてもよく、これらは夫々Mに結合されており、又はL1及びL2は同じ又は異なるシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル又はフルオレニルであり、これらは必要により置換されていてもよく、この場合、これらの環にあるいずれか二つのR基が必要により結合されて置換又は未置換、飽和、部分飽和、又は芳香族の環状又は多環式置換基を形成してもよく、
Zは窒素、酸素又はリン(好ましくは窒素)であり、
R'は環状、線状又は分岐C1 -C40 アルキル又は置換アルキル基であり(好ましくはZ-R' がシクロドデシルアミノ基を形成し)、かつ
X1及びX2は独立に水素、ハロゲン、水素化物基、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、置換ハロカルビル基、シリルカルビル基、置換シリルカルビル基、ゲルミルカルビル基、又は置換ゲルミルカルビル基であり、又は両方のXがつながれ、金属原子に結合されて約3個から約20個までの炭素原子を含むメタラサイクル環を形成し、或いは両方が一緒にオレフィン、ジオレフィン又はアラインリガンドであってもよい。
ハフノセンという用語の使用は少なくとも二つの脱離基X1及びX2(これらは直前に定義されたとおりである)を有する橋かけされ、又は橋かけされていない、ビス-又はモノ-シクロペンタジエニル(Cp)ハフニウム錯体を意味し、この場合、Cp基は置換又は未置換シクロペンタジエン、インデン又はフルオレンであってもよい。ジルコノセンという用語の使用は少なくとも二つの脱離基X1及びX2(これらは直前に定義されたとおりである)を有する橋かけされ、又は橋かけされていない、ビス-又はモノ-Cpジルコニウム錯体を意味し、この場合、Cp基は置換又は未置換シクロペンタジエン、インデン又はフルオレンであってもよい。チタノセンという用語の使用は少なくとも二つの脱離基X1及びX2(これらは直前に定義されたとおりである)を有する橋かけされ、又は橋かけされていない、ビス-又はモノ-Cpチタン錯体を意味し、この場合、Cp基は置換又は未置換シクロペンタジエン、インデン又はフルオレンであってもよい。
【0009】
本発明に使用し得るメタロセン化合物の中に、立体剛性、キラル又は非対称の、橋かけされ、又は橋かけされていない、又は所謂“束縛された形状の”メタロセンがある。例えば、米国特許第4,892,851 号、同第5,017,714 号、同第5,132,281 号、同第5,155,080 号、同第5,296,434 号、同第5,278,264 号、同第5,318,935 号、同第5,969,070 号、同第6,376,409 号、同第6,380,120 号、同第6,376,412 号、WO-A-(PCT/US92/10066) 、WO 99/07788、WO-A-93/19103、WO 01/48034、EP-A2-0 577 581、EP-A1-0 578 838、WO 99/29743、そしてまた科学文献、例えば、“橋かけされたジルコノセン触媒の重合挙動についての芳香族置換基の影響”、Spaleck, W. ら著Organometallics 1994, 13巻, 954-963頁、及び“触媒活性及びポリマー鎖長についての縮合環リガンド効果を有するansa- ジルコノセン重合触媒”、Brintzinger, H. ら著Organometallics 1994, 13巻, 964-970頁、及びこれらの中で引用された書類を参照のこと。WO 99/07788 に開示された橋かけされたメタロセン及び米国特許第5,969,070 号に開示された橋かけされていないメタロセンが本発明に特に適している。
遷移金属化合物はジメチルシリルビス (インデニル) メタロセンであることが好ましく、その金属は4族金属、特に、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムであり、またインデニルはハロゲン原子、C1 -C10 アルキル、 C5 -C15 アリール、C6 -C25 アリールアルキル、及びC6 -C25 アルキルアリールからなる群から選ばれた1個以上の置換基により置換されていてもよい。金属がジルコニウム又はハフニウムであり、L1及びL2が未置換又は置換インデニル基であり、Tがジアルキルシラジイルであり、かつX1及びX2が両方ともハロゲン又はC1-C3 アルキルであることが更に好ましい。これらの化合物がrac-形態であることが好ましい。
【0010】
好ましい立体特異性メタロセン化合物の例示の非限定例はジメチルシリルビス (インデニル) 金属ジクロリド、 -ジエチル又は -ジメチルのラセミ異性体であり、その金属はチタン、ジルコニウム又はハフニウム、好ましくはハフニウム又はジルコニウムである。インデニル基は更なる置換基により置換されていないことが特に好ましい。しかしながら、或る実施態様では、二つのインデニル基がまた、互いに独立に、2-メチル-4-フェニルインデニル; 2-メチルインデニル; 2-メチル,4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル; 2-エチル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル; 2-n-プロピル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル; 2-イソ-プロピル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル; 2-イソ-ブチル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル; 2-n-ブチル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル; 2-sec-ブチル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル; 2-メチル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル; 2-エチル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル; 2-n-プロピル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル; 2-イソ-プロピル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル; 2-n-ブチル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル; 2-sec-ブチル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル; 2-tert-ブチル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル等により置換されていてもよい。好ましい立体特異性メタロセン化合物の更なる例示の非限定例は9-シラフルオレニルビス (インデニル) 金属ジクロリド、 -ジエチル又は -ジメチルのラセミ異性体であり、その金属はチタン、ジルコニウム又はハフニウムである。再度、未置換インデニル基が特に好ましい。しかしながら、或る実施態様では、二つのインデニル基が、互いに独立に、先にリストされた置換インデニル基のいずれかにより置換されていてもよい。
オレフィンを重合する際の使用について先に特定された式 (1)又は (2)の活性剤と一緒の本発明の触媒系中の使用のための遷移金属化合物として特に好ましいメタロセンはrac-ジメチルシリルビス (インデニル) ハフノセン又は -ジルコノセン、rac-ジメチルシリルビス (2-メチル-4-フェニルインデニル) ハフノセン又は -ジルコノセン、rac-ジメチルシリルビス (2-メチル-インデニル) ハフノセン又は -ジルコノセン、及びrac-ジメチルシリルビス (2-メチル-4-ナフチルインデニル) ハフノセン又は -ジルコノセンであり、そのハフニウム及びジルコニウム金属が、橋かけされたビス (インデニル) 置換基に加えて、二つの更なる置換基(これらはハロゲン、好ましくは塩素原子もしくは臭素原子、又はアルキル基、好ましくはメチル基及び/又はエチル基である)により置換されている。これらの付加的な置換基は両方とも塩素原子又は両方ともメチル基であることが好ましい。特に好ましい遷移金属化合物はジメチルシリルビス (インデニル)ハフニウムジメチル、rac-ジメチルシリルビス (インデニル)ジルコニウムジメチル、rac-エチレニルビス (インデニル)ジルコニウムジメチル、及びrac-エチレニルbis(インデニル)ハフニウムジメチルである。
【0011】
好ましい非立体特異性メタロセン触媒の例示の非限定例は [ジメチルシランジイル (テトラメチルシクロペンタジエニル)-(シクロドデシルアミド)]金属ジハライド、 [ジメチルシランジイル (テトラメチルシクロペンタジエニル)(t-ブチルアミドアミド)] 金属ジハライド、 [ジメチルシランジイル (テトラメチルシクロペンタジエニル)(エキソ-2-ノルボルニル)] 金属ジハライドであり、その金属はZr、Hf、又はTi、好ましくはTiであり、かつそのハライドは塩素又は臭素であることが好ましい。
好ましい実施態様において、遷移金属化合物が橋かけされ、又は橋かけされていないビス (置換又は未置換インデニル) ハフニウムジアルキル又はジハライドである。
最後に、またオレフィン重合反応を触媒作用するのに活性である非メタロセン化合物が本発明の触媒系及び方法における遷移金属化合物として適している。非メタロセン触媒の特に好ましい種は、例えば、WO 03/040201に開示されたピリジルアミンである。
【0012】
触媒化合物の活性剤及び活性化方法
遷移金属化合物は活性化されて空の配位部位(これにモノマーが配位し、次いで成長するポリマー鎖に挿入されるであろう)を有する触媒活性、カチオン遷移金属化合物を生じ得る。本発明のオレフィンの重合方法において、下記の一般式(1) 又は(2) の活性剤が遷移金属化合物を活性化するのに使用される:
式 (1)は [R1R2R3AH]+ [Y]-(1)である。
式中、[Y]- は更に以下に説明される非配位アニオン (NCA)であり、
Aは窒素又はリンであり、
R1及びR2はヒドロカルビル基又はヘテロ原子含有ヒドロカルビル基であり、Aと一緒に第一の3〜10員非芳香族環を形成し、幾つかの数の隣接環員が必要により少なくとも一つの第二の芳香族もしくは脂肪族環或いは二つ以上の環の脂肪族及び/又は芳香族環系の員であってもよく、前記少なくとも一つの第二の環又は環系は前記第一の環に縮合され、また第一及び/又は少なくとも一つの第二の環又は環系のいずれかの原子が炭素原子又はヘテロ原子であり、独立に水素原子、ハロゲン原子、C1 -C10 アルキル、C5 -C15 アリール、C6 -C25 アリールアルキル、及びC6 -C25 アルキルアリールからなる群から選ばれた1個以上の置換基により置換されていてもよく、かつ
R3は水素原子もしくはC1 -C10 アルキルであり、又はR3は前記第一の環及び/又は前記少なくとも一つの第二の環もしくは環系に連結するC1 -C10 アルキレン基である。
【0013】
式 (2)は [RnAH]+ [Y]- (2)である。
式中、 [Y]-は以下に更に説明される非配位アニオン (NCA)であり、
Aは窒素、リン又は酸素であり、
nはAが窒素又はリンである場合には3であり、またnはAが酸素である場合には2であり、かつ
基Rは同じ又は異なり、C1 -C3 アルキル基である。
こうして、本発明は遷移金属化合物及び先に示された式(1) の活性剤を含む、新規触媒系それ自体、オレフィンを重合するための触媒系中の遷移金属化合物を活性化するための前記式(1) の活性剤の使用、及び重合条件下で一種以上のオレフィンを遷移金属化合物及び式(1) の活性剤を含む触媒系と接触させることを含むオレフィンの重合方法に特別に関する。
本発明はまた重合条件下で一種以上のオレフィンを遷移金属化合物及び先に示された式(2) の活性剤を含む触媒系と接触させることを含むオレフィンの重合方法に関する。この方法では、生成されるポリマーのMwがモノマー転化率を所定の反応温度で増大することにより増大する。
式 (1)及び (2)のカチオン部分だけでなく、そのアニオン部分(これはNCA である)の両方が、以下に更に説明されるであろう。本明細書に開示されたカチオン及びNCA のあらゆる組み合わせが本発明の方法に使用されるのに適しており、こうして本明細書に含まれる。
【0014】
活性剤- カチオン
上記式 (1)又は (2)の活性剤のカチオン成分は通常遷移金属化合物からのアルキル又はアリールの如き、部分をプロトン化し得るプロトン化ルイス塩基である。こうして、中性脱離基(例えば、活性剤のカチオン成分から供与されたプロトンと遷移金属化合物のアルキル置換基の化合から生じるアルカン)の放出後に、遷移金属カチオンが生じ、これが触媒活性種である。
本発明の重合方法において、先に示された式 (2)の活性剤が使用されてもよく、そのカチオン成分は式 [RnAH]+を有する。
式中、
Aは窒素、リン又は酸素であり、
nはAが窒素又はリンである場合には3であり、またnはAが酸素である場合には2であり、かつ
基Rは同じ又は異なり、C1 -C3 アルキル基である。こうして、[RnAH]+ はアンモニウム、ホスホニウム又はオキソニウム成分であってもよい。何とならば、Aが窒素、リン又は酸素であってもよいからである。
式[RnAH]+ の一つの好ましい実施態様において、Aが窒素又はリンであり、こうしてnが3であり、かつ基Rが同じである。nが3であり、かつ基Rが全て同じであり、メチル基、エチル基又はプロピル基であることが好ましく、[RnAH]+ がトリメチルアンモニウム又は ホスホニウム、トリエチルアンモニウム又は -ホスホニウム、トリ (イソ-プロピル) アンモニウム又は -ホスホニウム、トリ (n-プロピル) アンモニウム又は -ホスホニウムであることが更に好ましい。トリメチルアンモニウムが特に好ましい。[RnAH]+ がオキソニウム化合物 (nが2である) である場合、それがジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサンのオキソニウム誘導体であることが好ましい。
【0015】
別の実施態様において、先に示された式 (1)の活性剤が本発明の重合方法で使用され、そのカチオン成分が式 [R1R2R3AH]+を有し、式中、Aが窒素又はリンであり、R1及びR2がヒドロカルビル基又はヘテロ原子含有ヒドロカルビル基であり、Aと一緒に第一の3〜10員非芳香族環を形成し、幾つかの数、好ましくは2個、3個、4個又は5個、更に好ましくは2個の隣接環員が必要により少なくとも一つの第二の芳香族もしくは脂肪族環或いは二つ以上の環の脂肪族及び/又は芳香族環系の員であってもよく、前記少なくとも一つの第二の環又は環系は前記第一の環に縮合され、また第一及び/又は少なくとも一つの第二の環又は環系のいずれかの原子が炭素原子又はヘテロ原子であり、独立に水素原子、ハロゲン原子、C1-C10 アルキル、好ましくはC1-C5 アルキル、C5-C15アリール、好ましくはC5-C10アリール、C6-C25アリールアルキル、及びC6-C25アルキルアリールからなる群から選ばれた1個以上の置換基により置換されていてもよく、かつR3が水素原子又はC1-C10アルキルもしくはC1-C10アルキレン基(これは前記第一の環及び/又は前記少なくとも第二の環もしくは環系に連結する)である。R1及びR2がまたヘテロ原子(例えば、窒素、リン又は酸素)含有ヒドロカルビル基であってもよいので、それらがAと形成している3〜10員環及び/又は少なくとも一つの第二の環又は環系は1個以上の付加的なヘテロ原子(Aに加えて)、例えば、窒素及び/又は酸素を含んでもよい。窒素が前記第一の環及び/又は前記少なくとも一つの第二の環もしくは環系中に1回又は数回含まれてもよい好ましい付加的なヘテロ原子である。あらゆる付加的なヘテロ原子、好ましくは窒素が、好ましくは独立に水素原子、又はC1-C5 アルキルにより置換されていてもよい。
式 (1)中のカチオンの一つの好ましい実施態様が下記の式(1)'に示される。
【0016】
【化2】

(1)'
【0017】
式(1)'中、R1及びR2は一緒に-(CH2)a- (即ち、アルキレン) 基(aは3、4、5又は6である)であり、かつAは好ましくは窒素であり、R3は水素原子もしくはC1-C10アルキルであり、又はR3はA、R1、及びR2により形成された環に連結するC1-C10アルキレン基である。特別な実施態様において、R3が1個、2個又は3個の炭素原子を有するアルキレン基(これはA、R1、及びR2により形成された環に連結される)である。R1、R2及び/又はR3はまたアザ- 又はオキサ-アルキレン基であってもよい。R1及びR2は窒素原子Aと4員、5員、6員又は7員、非芳香族環を形成することが好ましい。
好ましくは、式 (1)又は(1)'中のAが窒素であり、かつR1及びR2が一緒に -(CH2)a- 基(また“アルキレン”基と称される) (式中、aが3、4、5又は6である)であり、又はR1及びR2がまた上記アザ- 又はオキサ-アルキレン基であってもよい。R1及びR2が窒素原子Aと4員、5員、6員又は7員、非芳香族環を形成することが好ましい。このような環の非限定例はピペリジニウム、ピロリジニウム、ピペラジニウム、インドリニウム、イソインドリニウム、イミダゾリジニウム、モルホリニウム、ピラゾリニウム等である。A、R3にある付加的な置換基はこれらの場合のいずれかで、好ましくはC1-C5 アルキル、更に好ましくはC1-C4 アルキル、更に好ましくはC1-C3 アルキル、更に好ましくはメチル又はエチルである。R3がまたC1-C5 アルキレン基、好ましくはC1-C4 アルキレン基、更に好ましくはC1-C3 アルキレン基、更に好ましくはR1、R2及びAを含む第一の環及び/又は第一の環に縮合された少なくとも第二の環もしくは環系に連結する-(CH2)3-基、-(CH2)2 基又は-CH2-基である。こうして、[R1R2R3AH]+ がまた三環式構造、例えば、下記のもの(これらに限定されない)を形成し得る(これらは更に一つ以上の位置で上記置換基により置換されていてもよく、また不飽和を含んでもよいが、芳香族ではないことが好ましい)。
【0018】
【化3】

【0019】
付加的なヘテロ原子が第一の環及び/又は少なくとも一つの第二の環もしくは環系中に存在する場合、下記の非限定例(これらは、再度、更に1個以上の上記置換基により置換されていてもよく、また不飽和を含んでもよいが、芳香族ではないことが好ましい)のような構造がカチオンとして使用されてもよい。
【化4】

【0020】
別の好ましい実施態様において、R1、R2及びAにより形成された環が少なくとも一つのその他の脂肪族又は芳香族環又は環系に縮合される。例えば、R1、R2及びAがリン又は窒素であるヘテロ原子と5員又は6員脂肪族の第一の環を形成する場合、一つ以上の5員又は6員芳香族環又は環系が第一の環の隣接炭素原子を介して前記第一の環に縮合されてもよい。
好ましい実施態様において、[R1R2R3AH]+ がN-メチルピロリジニウム、N-メチルピペリジニウム、N-メチルジヒドロインドリニウム又はN-メチルジヒドロイソインドリニウムである。
別の好ましい実施態様において、式 (1)中のカチオンが下記の四つの式(これらは式 (1) に基づき、式 (1)が本明細書中で言及される場合に含まれる)の一つとして示される。
【0021】
【化5】

【0022】
式中、夫々のxは0、1又は2であり、yは3、4、5、6、7、8、9、又は10(好ましくは3、4、5、又は6)であり、vは1、2、3、4、5、6、又は7(好ましくは0、1、2又は3)であり、zは1、2、3、4、5、6、又は7(好ましくは0、1、2又は3)であり、かつv+y+z=3、4、5、6、7、8、9、又は10(好ましくはv+y+z=3、4、5又は6)、mは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10(好ましくは1、2、3、又は4)であり、Aは窒素又はリン(好ましくは窒素)であり、R3は水素原子又はC1 -C10 アルキルであり、R* はC1 -C10 アルキルであり、その(CHx)基のいずれかが、独立に、ハロゲン原子、C1 -C10 アルキル、C5 -C15アリール、C6 -C25アリールアルキル、及びC6 -C25 アルキルアリールからなる群から選ばれた1個以上の置換基により置換されていてもよい。
別の実施態様において、その (CHx)基の少なくとも一つがヘテロ原子、好ましくは窒素により置換されている。好ましい実施態様において、上記式に示された環が飽和又は部分不飽和であるが、芳香族ではないことが好ましい。また、 (CHx)v、(CHx)y、及び (CHx)z を含む環が芳香族ではなく、一方、 (CHx)m を含む環が芳香族であってもよく、又は芳香族ではなくてもよい。
本方法における活性剤はまた式 (1)及び/又は(2) の少なくとも2種の異なる活性剤の組み合わせであってもよい。例えば、2種の異なるアンモニウム成分が同じ又は異なるNCA と同時に使用されてもよい。式 (1)及び/又は(2) の活性剤中に2種の異なるカチオン化合物を使用することが広くされたMWD 及び得られるポリオレフィンの一層広い範囲の融点をもたらすことができ、こうしてポリマーの性質を調整するのに使用し得る。例えば、N-メチルピロリジニウム及びトリメチルアンモニウムが以下に特定されるのと同じNCA 、特に例えば、テトラキス (ペンタフルオロフェニル) ボレート及びテトラキス (ヘプタフルオロナフチル) ボレートと一緒に組み合わせて使用されてもよい。更に、カチオン成分の混合物と同じ効果を得るために、一種のカチオン成分を含む活性剤が使用されてもよく、第二のルイス塩基が遊離塩基として添加されてもよい。
【0023】
非配位アニオン (NCA)
上記式 (1)及び (2)の活性剤において、 [Y]- は非配位アニオン (NCA)である。“非配位アニオン”という用語は触媒の金属カチオンに配位しないアニオン、又は金属カチオンに配位するが、ほんの弱く配位するアニオンを意味する。NCA は通常比較的大きく(嵩高)、かつ化合物及び活性剤が合わされる場合に生成される活性触媒種を安定化し得る。前記アニオンは不飽和モノマーにより置換されるのに依然として充分に不安定である必要がある。更に、そのアニオンはそれに中性遷移金属化合物及びアニオンからの中性副生物を生成させるようにアニオン置換基又はフラグメントを遷移金属化合物のカチオンに転移することはないであろう。こうして、好適なNCA は初期に生成された錯体が分解する時に中性まで分解されないものである。本明細書の有益な適合性NCA の二つのクラスが、例えば、EP-A-0 277 003及びEP-A-0277 004 に開示されていた。それらとして、1)中心の電荷を有する金属又はメタロイドコアに共有結合により配位され、それを遮蔽する複数の親油性基を含むアニオン配位錯体、及び2)複数のホウ素原子を含むアニオン、例えば、カルボラン、メタラカルボラン及びボランが挙げられる。
アニオン成分 [Y]- として、式 [Mk+Qn]d-を有するものが挙げられ、式中、kは1から3までの整数であり、nは2から6までの整数であり、n - k = d 、Mは元素の周期律表の13族から選ばれた元素、好ましくはホウ素又はアルミニウムであり、かつQは独立に水素化物、橋かけされ、又は橋かけされていないジアルキルアミド、ハライド、アルコキシド、アリールオキサイド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、及びハロ置換ヒドロカルビル基であり、前記Qは20個までの炭素原子を有し、但し、1個以下の出現でQがハライドであることを条件とする(しかし1個より多いqがハライド含有基であってもよい)。夫々のQが1〜20個の炭素原子を有するフッ素化ヒドロカルビルであることが好ましく、夫々のQがフッ素化アリール基であることが更に好ましく、夫々のQがペルフッ素化アリール基であることが更に好ましい。好適な [Y]- の例として、米国特許第5,447,895 号に開示されたもののようなジボロン化合物がまた挙げられる。
【0024】
[Y]- は [B(R4)4]-であることが好ましく、R4はアリール基又は置換アリール基であり、その1個以上の置換基は同じ又は異なり、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール基、及びハロアルキルアリール基からなる群から選ばれる。本発明における使用に好ましい [Y]- の例はテトラフェニルボレート、テトラキス (ペンタフルオロフェニル) ボレート、テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル) ボレート、テトラキス-(ペルフルオロナフチル) ボレート (またテトラキス (ヘプタフルオロナフチル) ボレートと称される) 、テトラキス (ペルフルオロビフェニル) ボレート、及びテトラキス(3,5-ビス (トリフルオロメチル)フェニル) ボレートである。特に好ましい [Y]- はテトラキス (ペンタフルオロフェニル) ボレート及びテトラキス (ヘプタフルオロナフチル) ボレートである。
本明細書に説明されたNCA の[Y]-のいずれもが先に特定された式 (1)及び (2)の活性剤のいずれかのカチオン成分と組み合わせて使用し得る。こうして、好ましい成分 [Y]- と好ましい成分 [R1R2R3AH]+又は [RnAH]+のあらゆる組み合わせが開示され、本発明の方法に適していると考えられる。
【0025】
好ましい活性剤
本発明の重合方法に使用される本発明の触媒系中の式 (1)の好ましい活性剤はAが窒素であり、R1及びR2が一緒に-(CH2)a-基(aは3、4、5、又は6である)であり、かつR3がC1、C2、C3、C4又はC5アルキルであり、かつ [Y]- が[B(R4)4]- であり、R4がアリール基又は置換アリール基であり、その1個以上の置換基が同じ又は異なり、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール基、及びハロアルキルアリール基からなる群から選ばれ、R4が好ましくはペルハロゲン化アリール基、更に好ましくはペルフッ素化アリール基、更に好ましくはペンタフルオロフェニル、ヘプタフルオロナフチル又はペルフルオロビフェニルであるものである。これらの活性剤が遷移金属化合物(例えば、メタロセン)と合わされて本発明の触媒系を生成することが好ましい。
本発明の重合方法に使用される触媒系中の式 (2)の好ましい活性剤はAが窒素であり、nが3であり、全ての基Rが同じであり、メチル、エチル又はイソプロピルであり、かつ [Y]-が [B(R4)4]-であり、R4がアリール基又は置換アリール基であり、その1個以上の置換基が同じ又は異なり、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール基、及びハロアルキルアリール基からなる群から選ばれ、R4が好ましくはペルハロゲン化アリール基、更に好ましくはペルフッ素化アリール基、更に好ましくはペンタフルオロフェニル、ヘプタフルオロナフチル又はペルフルオロビフェニルであるものである。これらの活性剤が遷移金属化合物(例えば、メタロセン)と合わされて本発明の触媒系を生成することが好ましい。
好ましい重合方法は(a) 先のパラグラフに記載された式 (1)の好ましい活性剤、及び/又は(b) 式 (2)の活性剤を利用し、Aが窒素であり、全てのR基が同じでメチル又はエチルであり、かつ [Y]- が先のパラグラフに定義されたとおりである。これらの活性剤がメタロセン、例えば、本明細書に以下に説明されるものと合わされて本発明の重合方法に使用される触媒系を生成することが好ましい。
【0026】
好ましい触媒系
遷移金属化合物と活性剤の好ましい組み合わせは下記の成分のいずれかを含み得る。
−メタロセン化合物、好ましくはジアルキルシリル橋かけビス (インデニル) メタロセン(その金属は4族金属であり、かつインデニルは未置換であり、又は置換されている場合には、C1 -C10 アルキル、C5 -C15 アリール、C6 -C25 アリールアルキル、及びC6 -C25 アルキルアリールからなる群から選ばれた1個以上の置換基により置換されている)、更に好ましくはジメチルシリルビス (インデニル) 金属ジクロリド又は -ジメチル、エチレニルビス (インデニル) 金属ジクロリド又は -ジメチル、ジメチルシリルビス (2-メチル-4-フェニルインデニル) 金属ジクロリド又は -ジメチル、ジメチルシリルビス (2-メチル-インデニル) 金属ジクロリド又は -ジメチル、及びジメチルシリルビス (2-メチル-4-ナフチルインデニル) 金属ジクロリド又は -ジメチル(全ての場合に、金属がジルコニウム又はハフニウムであってもよい)、
−カチオン成分 [R1R2R3AH]+ (好ましくはAが窒素であり、R1及びR2が一緒に-(CH2)a- 基(aは3、4、5又は6である)であり、窒素原子と一緒に、4員、5員、6員又は7員非芳香族環を形成し、これに隣接環炭素原子を介して、必要により1個以上の芳香族環又はヘテロ芳香族環が縮合されてもよく、かつR3がC1、C2、C3、C4又はC5 アルキルである)、更に好ましくはN-メチルピロリジニウムもしくはN-メチルピペリジニウム、又はカチオン成分 [RnAH]+ (好ましくはAが窒素であり、nが3であり、かつ全てのRが同じであり、C1 -C3 アルキル基である)、更に好ましくはトリメチルアンモニウムもしくはトリエチルアンモニウム、及び
−アニオン成分 [Y]- (これは好ましくは式 [B(R4)4]-のNCA であり、R4がアリール基又は置換アリール基であり、その1個以上の置換基が同じ又は異なり、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール基、及びハロアルキルアリール基、好ましくはペルハロゲン化アリール基、更に好ましくはペルフッ素化アリール基、更に好ましくはペンタフルオロフェニル、ヘプタフルオロナフチル又はペルフルオロビフェニルからなる群から選ばれる)。
更に好ましくは、活性剤がトリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N-メチルピロリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ヘプタフルオロナフチル)ボレート、又はN-メチルピロリジニウムテトラキス(ヘプタフルオロナフチル) ボレートであってもよい。メタロセンがrac-ジメチルシリルビス (インデニル)ジルコニウムジクロリド又は -ジメチル、rac-ジメチルシリルビス (インデニル)ハフニウムジクロリド又は -ジメチル、rac-エチレニルビス (インデニル)ジルコニウムジクロリド又は -ジメチル或いはrac-エチレニルビス (インデニル)ハフニウムジクロリド又は -ジメチルであってもよい。
別の実施態様において、好ましい遷移金属化合物は下記の式により表されるビスインデニル化合物を含む。
【0027】
【化6】

【0028】
式中、Mは4族金属、好ましくはハフニウムであり、Tは橋かけ基(例えば、アルキレン(メチレン、エチレン)又は二置換シリル基もしくはゲルミル基(例えば、ジメチルシリル))であり、nは0又は1であり、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は水素、ヘテロ原子、置換ヘテロ原子基、置換又は未置換アルキル基、及び置換又は未置換アリール基(好ましくは置換もしくは未置換アルキル基又は置換もしくは未置換アリール基)である。好ましい実施態様において、R2が水素である。別の好ましい実施態様において、R2及びR4が水素である。別の好ましい実施態様において、R2が水素であり、かつR4がC1 -C20 アルキル(好ましくはメチル)又はアリール基(例えば、置換又は未置換フェニル)である。別の好ましい実施態様において、R2及びR4がメチルである。別の実施態様において、R2及びR4がメチルではない。別の実施態様において、R2がメチルではない。別の好ましい実施態様において、R3、R4、R5、R6、及びR7が水素であり、かつR2が置換もしくは未置換アルキル又は置換もしくは未置換アリール(好ましくはメチル)である。別の好ましい実施態様において、R2、R3、R5、R6、及びR7が水素であり、かつR4が置換もしくは未置換アルキル又は置換もしくは未置換アリール(好ましくはメチル又はフェニル)である。
好ましいメタロセン化合物、活性剤の好ましいカチオン成分及び先のパラグラフに記載された活性剤の好ましいアニオン成分のあらゆる組み合わせから生じるあらゆる触媒系が明らかに開示されるべきであり、一種以上のオレフィンモノマーの重合に本発明に従って使用し得る。また、2種の異なる活性剤の組み合わせが同じ又は異なる一種以上のメタロセンとともに使用し得る。
【0029】
脱除剤又は付加的な活性剤
触媒系は、遷移金属化合物及び上記活性剤に加えて、以下に説明されるような一種以上の付加的な成分(付加的な活性剤又は脱除剤)を含んでもよい。
補助活性剤は遷移金属錯体をアルキル化し得る化合物であり、その結果、活性剤と組み合わせて使用される場合に、活性触媒が生成される。補助活性剤として、以下に挙げられるアルモキサン、及び更に以下にリストされるアルミニウムアルキルが挙げられる。アルモキサンは一般式 (Rx-Al-O)n (これは環状化合物である)、又はRx (Rx-Al-O)nAlRx2(これは線状化合物である)により表されるオリゴマー状アルミニウム化合物であることが好ましい。最も普通のアルモキサンは環状化合物と線状化合物の混合物である。一般アルモキサン式中、Rxは独立にC1-C20アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、これらの異性体等であり、かつ“n” は1から50までの整数である。Rxがメチルであり、かつ“n” が少なくとも4であることが更に好ましい。メチルアルモキサン (MAO)だけでなく、安定性を改良するために若干高級のアルキル基を含む、変性MAO (本明細書中MMAOと称される)、エチルアルモキサン、イソ-ブチルアルモキサン等がここで有益である。特に有益なMAO がトルエン中10質量%の溶液でAlbemarle から購入し得る。補助活性剤は典型的にはプレ触媒がジヒドロカルビル又はジ水素化物錯体ではない場合にルイス酸活性剤及びイオン活性剤と組み合わせてのみ使用される。
【0030】
本発明の或る実施態様において、脱除剤がいずれかの毒の反応を“きれいにする”のに使用されてもよく、そうしないと毒が触媒と反応し、それを失活するであろう。脱除剤として有益な典型的なアルミニウム又はホウ素アルキル成分は一般式RxJZ2 により表され、式中、Jはアルミニウム又はホウ素であり、RxはC1-C20アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びこれらの異性体であり、かつ夫々のZは独立にRx又は異なる1価のアニオンリガンド、例えば、ハロゲン (Cl、Br、I)、アルコキシド (ORx) 等である。更に好ましいアルミニウムアルキルとして、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、トリ-イソ-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましいホウ素アルキルとして、トリエチルホウ素が挙げられる。脱除化合物はまたアルモキサン及び変性アルモキサン(メチルアルモキサン及び変性メチルアルモキサンを含む)であってもよい。
【0031】
触媒系の調製方法
触媒系は当業界で知られている方法に従って調製し得る。先に特定された式 (1)又は (2) の活性剤のカチオンを得るために、例えば、アンモニウムカチオンがアミンと酸(その酸の共役塩基が対イオンとして残り、又はその他のアニオンと交換される)の反応により合成し得る塩として用意し得る。“有機化学” Pine ら著, 第4編, McGraw-Hill, 1980を参照のこと。有益な合成は、例えば、ヘキサン中のわずかに過剰のHCl (Et2O溶液として) とアミンの反応であり、アミン塩酸塩の即時の沈澱をもたらす。その塩化物が本発明に従って好適なNCA とのアニオン交換により置換し得る。文献Chemische Berichte, 1955, 88巻, 962 頁、又は米国特許第5,153,157 号及びこれらの中の文献を参照のこと。ホスフィン及びエーテルが同様に酸でプロトン化され、所望のホスホニウム塩へのアニオン交換反応を受け得る。例えば、ドイツ特許DE 2116439を参照のこと。
触媒系はまた支持体物質又は担体を含んでもよい。一般に支持体は多孔性物質、例えば、タルク、又は無機酸化物である。その他の好適な支持体物質として、ゼオライト、クレー、及びオルガノクレーが挙げられる。
好ましい支持体物質は2族、3族、4族、5族、13族又は14族の金属の酸化物を含む無機酸化物である。好ましい支持体として、シリカ(これは脱水されてもよく、又は脱水されなくてもよい)、ヒュームドシリカ、アルミナ (WO 99/60033)、シリカ-アルミナ及びこれらの混合物が挙げられる。その他の有益な支持体として、マグネシア、チタニア、ジルコニア、モンモリロナイト (欧州特許EP-B1 0 511 665)、フィロシリケート、ゼオライト、タルク、クレー (米国特許第6,034,187号) 等が挙げられる。また、これらの支持体物質の組み合わせ、例えば、シリカ-クロム、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア等が使用されてもよい。
支持体物質は約10 m2/g から約700 m2/g までの範囲の表面積、約0.1 cc/g から約4.0 cc/gまでの範囲の孔体積及び約5 μmから約500 μmまでの範囲の平均粒子サイズを有することが好ましい。支持体物質の表面積が約50 m2/g から約500 m2/gまでの範囲であり、孔体積が約0.5 cc/gから約3.5 cc/gまでの範囲であり、かつ平均粒子サイズが約10 μm から約200 μmまでの範囲であることが更に好ましい。支持体物質の表面積が約100 m2/g から約400 m2/gまでの範囲であり、孔体積が約0.8 cc/gから約3.0 cc/gまでの範囲であり、かつ平均粒子サイズが約5 μmから約100 μmまでの範囲であることが更に好ましい。本発明に有益な担体の平均孔サイズは典型的には10Åから1000Åまで、好ましくは50Åから約500 Åまで、更に好ましくは75Åから約350 Åまでの範囲の孔サイズを有する。
【0032】
重合方法
あらゆる既知の重合方法が本コポリマーを生成するのに使用されてもよい。重合方法として、高圧、スラリー、ガス、バルク、懸濁、超臨界、液相、及びこれらの組み合わせが挙げられる。触媒は均一溶液、担持、又はこれらの組み合わせの形態であってもよい。重合は連続方法、半連続方法又は回分方法により行なわれてもよく、連鎖移動剤、脱除剤、又は適用可能と思われるその他のこのような添加剤の使用を含んでもよい。連続方法は反応器系への連続添加、及び反応器系からの反応体及び生成物の抜取があることを意味する。連続方法は定常状態で操作でき、即ち、流量、温度/圧力及び供給原料の組成が不変に留まる場合に、流出物の組成が経時で一定に留まる。例えば、ポリマーを生成するための連続方法は反応体が一つ以上の反応器に連続的に導入され、ポリマー生成物が連続的に抜き取られる方法であろう。
本明細書に記載された触媒系は均一溶液方法で有利に使用し得る。一般に、これは連続反応器中の重合を伴ない、そこでは生成されたポリマー並びに供給された出発モノマー及び触媒物質が撹拌されて濃度勾配を低減又は回避する。或る有益な方法は高圧でポリマーの曇り点より上で操作する。反応環境は一種以上のモノマーが希釈剤又は溶媒として作用する場合だけでなく、液体炭化水素が希釈剤又は溶媒として使用される場合を含む。好ましい炭化水素液体として、脂肪族液体及び芳香族液体の両方、例えば、脱硫軽バージンナフサ及びアルカン、例えば、プロパン、イソブテン、混合ブタン、ヘキサン、ペンタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、及びオクタンが挙げられる。
【0033】
反応器中の温度制御は典型的には重合の熱を反応器の内容物を冷却するための反応器ジャケットもしくは冷却コイルによる反応器冷却、自動冷凍、前冷却供給原料、液体媒体(希釈剤、モノマー又は溶媒)の気化又は全て三つの組み合わせでバランスさせることにより得られる。前冷却供給原料を用いる断熱反応器がまた使用されてもよい。反応器温度はまた使用される触媒に依存する。一般に、反応器温度は約30℃から約250 ℃まで、好ましくは約60℃から約200 ℃までの範囲である。圧力は一般に大気圧から高圧、例えば、約300 MPa 、約200 MPa 又は約100 MPa までの範囲である。また、約50、約40、約30、約20又は約15 MPaまでの低圧が好適である。可能な圧力範囲の下限は約0.1 MPa からのいずれか、例えば、0.5 MPa 、約1 MPa 又は約2.0 MPa であってもよい。少なくとも一つの特別な実施態様において、反応器圧力が600 ポンド/平方インチ (psi) (4.14 MPa) 未満、もしくは500 psi (3.45 MPa)未満、又は400 psi (2.76 MPa)未満、或いは300 psi (2.1 MPa) 未満、例えば、ほぼ大気圧から約400 psi (2.76 MPa)までである。別の実施態様において、反応器圧力が約400 psi (2.76 MPa)から約4000 psi (27.6 MPa) まで、もしくは約1000 psi (6.9 MPa) から2000 psi (13.8 MPa) まで、又は約1200 psi (8.27 MPa) から1800 psi (12.4 MPa)までである。
反応器中のモノマー濃度(全反応混合物を基準とする)は非常に希薄から溶媒としてモノマーを使用することまでのいずれであってもよい。好適なモノマー濃度は、例えば、約2モル/Lまで、約5モル/Lまで、約10モル/Lまで、又は更に一層高く、例えば、約15モル/Lまでであってもよい。
【0034】
高SSI 粘度向上剤
一つ以上の実施態様において、高SSI 粘度指数向上剤はエチレン及び一種以上のその他のコモノマーを含み得る。好適なコモノマーとして、3個から20個までの炭素原子を有するα-オレフィンが挙げられる。好適なα-オレフィンコモノマーは線状又は分岐であってもよく、2種以上のα-オレフィンコモノマーが所望により使用し得る。例えば、好適なα-オレフィンコモノマーとして、あらゆる一種以上の線状C3-C12 α-オレフィン、及び1個以上のC1-C3 アルキル分岐を有するα-オレフィンが挙げられる。特別な例として、プロピレン、1-ブテン; 3-メチル-1-ブテン; 3,3-ジメチル-1-ブテン; 1-ペンテン; 1個以上のメチル、エチル又はプロピル置換基を有する1-ペンテン; 1個以上のメチル、エチル又はプロピル置換基を有する1-ヘキセン; 1個以上のメチル、エチル又はプロピル置換基を有する1-ヘプテン; 1個以上のメチル、エチル又はプロピル置換基を有する1-オクテン; 1個以上のメチル、エチル又はプロピル置換基を有する1-ノネン; エチル、メチル又はジメチル-置換1-デセン, 又は1-ドデセン が挙げられる。好ましいコモノマーとして、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、C3-C5 のいずれかにメチル置換基を有する1-ヘキセン、C3又はC4に化学量論上許される組み合わせの2個のメチル置換基を有する1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、1-オクテン、C3又はC4のいずれかにメチル置換基を有する1-ペンテン、C3-C5 に化学量論上許される組み合わせの2個のメチル置換基を有する1-ヘキセン、C3又はC4に化学量論上許される組み合わせの3個のメチル置換基を有する1-ペンテン、C3又はC4にエチル置換基を有する1-ヘキセン、C3にエチル置換基及びC3又はC4に化学量論上許される位置にメチル置換基を有する1-ペンテン、1-デセン、1-ノネン、C3-C9 のいずれかにメチル置換基を有する1-ノネン、C3-C7 に化学量論上許される組み合わせの2個のメチル置換基を有する1-オクテン、C3-C6 に化学量論上許される組み合わせの3個のメチル置換基を有する1-ヘプテン、C3-C7 のいずれかにエチル置換基を有する1-オクテン、C3又はC4に化学量論上許される組み合わせの2個のエチル置換基を有する1-ヘキセン、及び1-ドデセンが挙げられる。その他の好適なコモノマーとして、内部オレフィン、例えば、シス2-ブテン及びトランス2-ブテンが挙げられる。
【0035】
その他の好適なコモノマーとして、一種以上のポリエンが挙げられる。本明細書に使用される“ポリエン”という用語は二つ以上の不飽和を有するモノマー、即ち、ジエン、トリエン等を含むことを意味する。コモノマーとして特に有益なポリエンは非共役ジエンであり、好ましくは約6個〜約15個の炭素原子を有する、直鎖、炭化水素ジ-オレフィン又はシクロアルケニル置換アルケン、例えば、(a) 直鎖非環式ジエン、例えば、1,4-ヘキサジエン及び1,6-オクタジエン; (b) 分岐鎖非環式ジエン、例えば、5-メチル-1, 4-ヘキサジエン; 3,7-ジメチル-1,6単環脂環式ジエン、例えば、1,4-シクロヘキサジエン; 1,5-シクロオクタジエン及び1,7-シクロドデカジエン; (d) 多環脂環式縮合環ジエン及び橋かけ環ジエン、例えば、テトラヒドロインデン; ノルボルナジエン; メチル-テトラヒドロインデン; ジシクロペンタジエン(DCPD); ビシクロ-(2.2.1)-ヘプタ-2,5-ジエン; アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニル及びシクロアルキリデンノルボルネン、例えば、5-メチレン -2-ノルボルネン (MNB)、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン -2-ノルボルネン、5-(4-シクロペンテニル)-2-ノルボルネン、5-シクロヘキシリデン-2-ノルボルネン、及び5-ビニル-2-ノルボルネン (VNB); (e) シクロアルケニル置換アルケン、例えば、ビニルシクロヘキセン、アリルシクロヘキセン、ビニルシクロオクテン、4-ビニルシクロヘキセン、アリルシクロデセン; 及びビニルシクロドデセンである。典型的に使用される非共役ジエンのうち、好ましいジエンはジシクロペンタジエン (DCPD) 、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン; 5-メチル-1,4-ヘキサジエン; 3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン; 5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン (ENB)、及びテトラシクロ(Δ-11,12) 5,8 ドデセンである。この出願中、“ポリエン”、“非共役ジエン”及び“ジエン”という用語は互換可能に使用されることに注目されたい。長鎖分岐の形成をもたらさないジエンを使用することが好ましい。VI向上剤としての成功裏の使用のために、非分岐又は低分岐ポリマー鎖が好ましい。使用し得るその他のポリエンとして、シクロペンタジエン及びオクタテトラエンが挙げられる。
【0036】
高SSI 粘度指数向上剤は約40質量%から約70質量%までのエチレン誘導単位を有することが好ましい。高SSI 粘度指数向上剤はまた約50質量%から約60質量%までのエチレン誘導単位を有し得る。或る実施態様において、エチレン含量が約40質量%、42質量%、又は44質量%の低さから約50質量%、56質量%、又は58質量%の高さまでの範囲であり得る。エチレン含量はまた約40質量%、45質量%、又は50質量%の低さから約58質量%、65質量%、又は70質量%の高さまでの範囲であり得る。
高SSI 粘度指数向上剤は約10質量%から約60質量%までのコモノマー誘導単位を有することが好ましい。高SSI 粘度指数向上剤はまた約20質量%から約55質量%までのコモノマー誘導単位を含み得る。或る実施態様において、コモノマー含量は約10質量%、15質量%、又は25質量%の低さから約45質量%、55質量%、又は60質量%までの高さまでの範囲であり得る。或る実施態様において、コモノマー含量は少なくとも12質量%、少なくとも15質量%、少なくとも18質量%、少なくとも20質量%、少なくとも25質量%、少なくとも30質量%、又は少なくとも35質量%であってもよい。
【0037】
物理的性質
高SSI 粘度指数向上剤は約30%から約55%まで、約35%から約50%まで、又は約40%から約50%までのせん断安定性指数 (SSI)を有し得る。高SSI 粘度指数向上剤はまた約30%、約32%、又は約34%の低さから約47%、約50%、又は約53%までの高さまでの範囲のせん断安定性指数 (SSI)を有し得る。高SSI 粘度指数向上剤はまた約30%、約34%、又は約38%の低さから約42%、約46%、又は約50%の高さまでの範囲のせん断安定性指数 (SSI)を有し得る。高SSI 粘度指数向上剤はまた関係: TE > 0.034*SSI + 0.7; TE > 0.034*SSI + 0.8; もしくはTE > 0.034*SSI + 0.9; 又はTE > 0.034*SSI + 1.0; TE > 0.034*SSI + 1.1; 或いはTE > 0.034*SSI + 1.2 を満足する、せん断安定性指数 (SSI)及び増粘効率 (TE)を有し得る。
一つ以上の実施態様において、高SSI 粘度指数向上剤はASTM 1238D (230℃, 2.16 kg) により測定して約3 g/10分から約25 g/10 分までの溶融流量 (“MFR”)を有し得る。MFR はまた約3 g/10分から約20 g/10 分まで、約5 g/10分から約15 g/10 分まで、又は約6 g/10分から約12 g/10 分までであってもよい。高SSI 粘度指数向上剤は更に約0.8 g/10 分から約25 g/10 分まで、約0.9 g/10分から約15 g/10 分まで、又は約1.5 g/10分から約10 g/10 分までのMFR を有し得る。一つ以上の実施態様において、高SSI 粘度指数向上剤は約0.8 g/10分、約0.9 g/10分、約1 g /10 分、又は約1.1 g/10分の低さから約5 g/10 分、約7 g/10分、約9 g/10分、又は約12 g/10 分の高さまでの範囲のMFR を有し得る。
一つ以上の実施態様において、高SSI 粘度指数向上剤はASTM 1238D (230℃, 21.6 kg) により測定して約50〜約1000 g/10 分の高負荷溶融流量 (“HLMFR”) を有し得る。HLMFR はまた約100 〜約800 g/10分、約100 〜約600 g/10分、又は約100 〜約500 g/10 分であってもよい。一つ以上の実施態様において、HLMFR は約100 〜約1000 g/10分、又は約200 〜600 g/10分である。
【0038】
一つ以上の実施態様において、高SSI 粘度指数向上剤は約30以上の21.6 kg; 230 ℃における溶融流量対2.16 kg; 230 ℃における溶融流量の比(MFRR) を有し得る。MFRRが35より大きく、40より大きく、又は42より大きいことが好ましい。一つ以上の実施態様において、高SSI 粘度指数向上剤が約200 以下の21.6 kg; 230 ℃における溶融流量対2.16 kg; 230 ℃における溶融流量の比(MFRR) を有し得る。MFRRが100 未満、80未満又は60未満であることが好ましい。一つ以上の実施態様において、MFRRが約25、30、又は35の低さから約45、70、又は85の高さまでの範囲であり得る。一つ以上の実施態様において、MFRRが約22、32、又は42の低さから約52、62、又は72の高さまでの範囲であり得る。
一つ以上の実施態様において、高SSI 粘度指数向上剤がGPC により測定して、約50,000 g/モルから約200,000 g/モルまで; 約60,000 g/モルから約210,000 g/モルまで; 又は約70,000 g/モルから約195,000 g/モルまでの重量平均分子量(Mw)を有し得る。一つ以上の実施態様において、高SSI 粘度指数向上剤がGPC により測定して、約50,000 g/モル、約55,000 g/モル、約60,000 g/モル、又は65,000 g/モルの低さから約180,000 g/モル、約190,000 g/モル、約200,000 g/モル、又は約205,000 g/モルの高さまでの範囲のMwを有し得る。
【0039】
一つ以上の実施態様において、高SSI 粘度指数向上剤がGPC により測定して、約5.0 以下、もしくは約4.0 以下、又は3.0 以下、或いは2.2 以下のMw/Mn (“MWD”) を有し得る。一つ以上の実施態様において、Mw/Mn が2.8 未満、もしくは2.6 未満、又は2.4 未満、或いは2.3 未満、又は2.2 未満である。一つ以上の実施態様において、Mw/Mn が約1.0 から約3.0 まで;約1.5 から約2.5 まで;約2.0 から約2.4 まで; 又は約2.1 から約2.3 までである。一つ以上の実施態様において、Mw/Mn が約1.5 から約3.0 まで;約1.5 から約3.5 まで;約1.5 から約4.0 まで、又は約1.8 から約3.3 であってもよい。
Mz、Mw、及びMnはゲル透過クロマトグラフィー (GPC)(またサイズ排除クロマトグラフィー (SEC)として知られている)を使用して測定し得る。この技術は異なるサイズのポリマー分子を分離するために多孔性ビーズを充填されたカラム、溶離溶媒、及び検出器を含む装置を利用する。典型的な測定では、使用されるGPC 装置が145 ℃で操作されるウルトラスチロゲルカラムを備えたウォーターズクロマトグラフである。使用される溶離溶媒がトリクロロベンゼンである。カラムが正確に知られている分子量の16種のポリスチレン標準物質を使用して較正される。試験されるポリマーの保持容積との、標準物質から得られるポリスチレン保持容積の相関関係がポリマー分子量を生じる。
平均分子量は既知の式から演算し得る。所望のMWD 関数(例えば、Mw/Mn 又はMz/Mw) は相当するM値の比である。M及びMWD の測定は当業界で公知であり、例えば、Slade, P. E. 編集, Polymer Molecular Weights Part II, Marcel Dekker, Inc., NY, (1975) 287-368; Rodriguez, F.著, Principles of Polymer Systems 第3編, Hemisphere Pub. Corp., NY, (1989) 155-160; 米国特許第4,540,753 号; Ver Strate ら著, Macromolecules, 21巻, (1988) 3360-3371頁(これらの夫々が参考として本明細書に含まれる)に更に詳しく説明されている。
【0040】
更に、高SSI 粘度指数向上剤はチーグラーナッタではなく、メタロセンをベースとする触媒系を使用して生成されるので、それらは触媒に由来する約25 ppm以下の4族金属及び少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量ppm 対触媒に由来する5族金属の質量ppm の比を含む。一つ以上の実施態様において、高SSI 粘度指数向上剤が25 ppm以下、20 ppm 以下、15 ppm以下、10 ppm以下、又は5 ppm 以下の4族金属の含量を有し得る。一つ以上の実施態様において、高SSI 粘度指数向上剤が少なくとも2.8 、少なくとも2.9 、少なくとも3.0 、少なくとも3.1 、少なくとも3.2 、少なくとも3.3 、少なくとも3.4 、又は少なくとも3.5 の4族金属質量ppm 対5族金属質量ppm 比を有し得る。また、高SSI 粘度指数向上剤は、例えば、米国特許出願公開第20070167315 号に開示された鎖シャトリング重合方法を使用しないで生成し得るので、コポリマーは典型的には25 ppm以下、例えば、10 ppm 以下のZnを含む。高SSI 粘度指数向上剤中の4族金属及び5族金属及び/又は亜鉛の存在は当業界で普通に知られている技術である、誘導結合プラズマ原子放出分光分析 (ICP-AES) を使用して測定されてもよい。ICP-AES 測定について、測定すべきサンプルが最初に灰にされ、次いで適当な酸性溶液に溶解され、続いて標準較正曲線内に入るように適当に希釈される。好適な装置はサーモ・エレクトロン社(現在、サーモフィッシャーサイエンティフィック社、81 Wyman Street Waltham, MA 02454)により製造されるIRIS ADVANTAGE DUAL VIEW 装置である。
一つの実施態様において、高SSI 粘度指数向上剤が40質量%〜70質量%、更に好ましくは40質量%〜60質量%のエチレンから誘導された単位及び少なくとも30質量%、更に好ましくは60質量%〜40質量%の少なくとも一種のα-オレフィン(3〜20個の炭素原子を有する)から誘導された単位を含む。このような比較的低いエチレン含量でもって、コポリマーはDSC により測定して関係:
Tm > 3.4 x E - 180
を満足する、融点(Tm)(単位℃)を有する。
式中、Eはコポリマー中のエチレンから誘導された単位の質量%であり、その結果、例えば、コポリマーが55質量%のエチレンを含む場合、Tmは7℃より大きい。或る場合には、高 SSI粘度指数向上剤がDSC により測定して、関係: Tm > 3.4 x E - 170 、又は関係: Tm > 3.4 x E - 160 (式中、Eは先に定義されたとおりである)を満足する、融点(Tm)(単位℃)を有する。
【0041】
潤滑油組成物
高SSI 粘度指数向上剤及び一種以上のベースオイルを含む潤滑油組成物がまた提供される。ベースオイルは潤滑粘度の天然油又は合成油(ハイドロクラッキング、水素化、その他の精製方法、未精製方法、又は再精製方法に由来するかを問わない)であってもよく、又はこれらを含み得る。ベースオイルは使用された油であってもよく、又はこれを含み得る。天然油として、動物油、植物油、鉱油及びこれらの混合物が挙げられる。合成油として、炭化水素油、ケイ素をベースとする油、及びリン含有酸の液体エステルが挙げられる。合成油はフィッシャー-トロプッシュ合成軽油(gas-to-liquid)合成操作だけでなく、その他の合成軽油により生成されてもよい。
一実施態様において、ベースオイルはPAO-2 、PAO-4 、PAO-5 、PAO-6 、PAO-7 又はPAO-8 (その数値は100 ℃における動的粘度に関する)を含むポリアルファオレフィン(PAO) であり、又はこれを含む。ポリアルファオレフィンはドデセン及び/又はデセンから調製されることが好ましい。一般に、潤滑粘度の油として好適なポリアルファオレフィンはPAO-20又はPAO-30油の粘度より小さい粘度を有する。一つ以上の実施態様において、ベースオイルが米国石油協会 (API)ベースオイル互換性ガイドラインに明記されたように定義し得る。例えば、ベースオイルがAPI グループI、II、III 、IV、Vオイル又はこれらの混合物であってもよく、又はこれらを含んでもよい。
一つ以上の実施態様において、ベースオイルがクランクケース潤滑油として通常使用される油又はそのブレンドを含み得る。例えば、好適なベースオイルとして、火花点火内燃エンジン及び圧縮点火内燃エンジン、例えば、自動車エンジン及びトラックエンジン、船舶用ディーゼルエンジン及び鉄道用ディーゼルエンジン等のためのクランクケース潤滑油が挙げられる。好適なベースオイルとして、また動力伝達液体、例えば、自動トランスミッション液体、トラクター液体、万能トラクター液体及び油圧液体、ヘビーデューティ油圧液体、動力ステアリング液体等中に通常使用され、かつ/又はそのような使用に適しているこれらの油が挙げられる。好適なベースオイルはまたギヤー潤滑剤、工業用油、ポンプオイル及びその他の潤滑油であってもよく、又はこれらを含み得る。
【0042】
一つ以上の実施態様において、ベースオイルとして、石油に由来する炭化水素油が挙げられるだけでなく、合成潤滑油、例えば、二塩基酸のエステル、一塩基酸、ポリグリコール、二塩基酸及びアルコールのエステル化によりつくられた複雑なエステル、ポリオレフィン油等が挙げられる。こうして、記載された潤滑油組成物が合成ベースオイル、例えば、ジカルボン酸、ポリグリコール及びアルコールのアルキルエステル、ポリアルファ-オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ポリシリコーンオイル等に混入されることが好適である。潤滑油組成物はまた取扱の容易さのために濃厚物形態で、例えば、油、例えば、潤滑鉱油中1質量%から49質量%までで利用でき、前記された油中で本発明の反応を行なうことによりこの形態で調製し得る。
一つ以上の実施態様において、潤滑油組成物が約 -30℃以下;約 -33℃以下;約 -35℃以下;約 -37℃以下;約 -40℃以下;約 -43℃以下;約 -45℃以下; 又は約 -47℃以下の流動点を有し得る。潤滑油組成物がまた約 -60℃から約 -30℃まで;約 -55℃から約 -35℃まで;約 -50℃から約 -35℃まで; 又は約 -45℃から約 -35℃までの流動点を有し得る。潤滑油組成物がまた約 -75℃、約 -65℃、約 -55℃、又は約 -50℃の低さから約 -40℃、約 -35℃、約 -30℃の高さまでの範囲の流動点を有し得る。
一つ以上の実施態様において、潤滑油組成物が約35%から約50%までのせん断安定性指数 (SSI)及び約 -35℃以下の流動点を有し得る。一つ以上の実施態様において、潤滑油組成物が約35%から約50%までのせん断安定性指数 (SSI) 及び約 -40℃以下の流動点を有し得る。一つ以上の実施態様において、潤滑油組成物が約35%から約50%までのせん断安定性指数 (SSI)及び約 -45℃以下の流動点を有し得る。
一つ以上の実施態様において、潤滑油組成物が約 25,000 cP以下、約 22,000 cP以下、約 20,000 cP以下、約 19,000 cP以下、約 18,000 cP以下、約 17,000 cP以下、約 16,000 cP以下、又は約 15,000 cP以下の-25 ℃でのミニ回転粘度計 (MRV)試験における低温粘度を有し得る。一つ以上の実施態様において、潤滑油組成物は約 5,000 cPから約 25,000 cP まで、約 6,000 cP から約 20,000 cPまで、又は約 8,000 cP から約 19,000 cPまでの-25 ℃でのミニ回転粘度計 (MRV)試験における低温粘度を有し得る。
【0043】
通常の油添加剤
潤滑油組成物は必要により一種以上の通常の添加剤、例えば、流動点降下剤、耐磨耗剤、酸化防止剤、その他の粘度指数向上剤、分散剤、腐食抑制剤、消泡剤、洗剤、錆抑制剤、摩擦改質剤等を含んでもよい。
腐食抑制剤(また耐食剤として知られている)は、潤滑油組成物により接触される金属部分の分解を減少する。例示の腐食抑制剤として、リン硫化炭化水素及びリン硫化炭化水素とアルカリ土類金属酸化物又は水酸化物の反応(好ましくはアルキル化フェノール又はアルキルフェノールチオエステルの存在下、また好ましくは二酸化炭素の存在下の)により得られた生成物が挙げられる。リン硫化炭化水素は好適な炭化水素、例えば、テルペン、C2-C6 オレフィンポリマーの重石油留分、例えば、ポリイソブチレンを、66℃〜316 ℃の範囲の温度で、1/2 〜15時間にわたって5〜30質量%のリンの硫化物と反応させることにより調製される。リン硫化炭化水素の中和は当業者に知られている方法により行なわれてもよい。
酸化抑制剤、又は酸化防止剤は、酸化の生成物、例えば、スラッジ及び金属表面上のワニスのようなデポジット、並びに増粘により証明されるような、鉱油が使用中に劣化する傾向を減少する。このような酸化抑制剤として、C5-C12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、例えば、カルシウムノニルフェネートスルフィド、バリウムオクチルフェネートスルフィド、ジオクチルフェニルアミン、フェニルアルファナフチルアミン、リン硫化炭化水素又は硫化炭化水素等が挙げられる。本発明に有益なその他の酸化抑制剤又は酸化防止剤として、例えば、米国特許第5,068,047号に記載された、油溶性銅化合物が挙げられる。
【0044】
摩擦改質剤は適当な摩擦特性を潤滑油組成物、例えば、自動トランスミッション液体に付与するのに利用できる。好適な摩擦改質剤の代表的な例が米国特許第3,933,659号(これは脂肪酸エステル及びアミドを開示している)、同第4,176,074号(これはポリイソブテニル無水コハク酸-アミノアルカノールのモリブデン錯体を記載している)、同第4,105,571号(これは二量体化脂肪酸のグリセロールエステルを開示している)、同第3,779,928号(これはアルカンホスホン酸塩を開示している)、同第3,778,375号(これはホスホネートとオレアミドの反応生成物を開示している)、同第3,852,205号(これはS-カルボキシアルキレンヒドロカルビルスクシンイミド、S-カルボキシアルキレンヒドロカルビルスクシンアミド酸及びこれらの混合物を開示している)、同第3,879,306号(これはN(ヒドロキシアルキル)アルケニルスクシンアミド酸又はスクシンイミドを開示している)、同第3,932,290号(これはジ-(低級アルキル)ホスファイト及びエポキシドの反応生成物を開示している)、及び同第4,028,258号(これはリン硫化N-(ヒドロキシアルキル)アルケニルスクシンイミドのアルキレンオキサイド付加物を開示している)に見られる。好ましい摩擦改質剤はスクシネートエステル、もしくはヒドロカルビル置換コハク酸の金属塩、又は酸無水物及びチオビス-アルカノール、例えば、米国特許第4,344,853号に記載されたものである。
分散剤は使用中に酸化から得られる油不溶物を、液体中で懸濁して維持し、こうしてスラッジ凝集及び金属部分上の沈澱又は付着を防止する。好適な分散剤として、高分子量N-置換アルケニルスクシンイミド、油溶性ポリイソブチレン無水コハク酸とエチレンアミン、例えば、テトラエチレンペンタミンの反応生成物及びこれらのホウ化塩が挙げられる。高分子量エステル(1価又は多価脂肪族アルコールによるオレフィン置換コハク酸のエステル化から得られる)又は高分子量アルキル化フェノールからのマンニッヒ塩基(高分子量アルキル置換フェノール、アルキレンポリアミン及びアルデヒド、例えば、ホルムアルデヒドの縮合から得られる)がまた分散剤として有益である。
流動点降下剤(“ppd”)(それ以外に潤滑油流動性改良剤として知られている)は、液体が流れ、又は注入し得る温度を低下する。当業界で知られているあらゆる好適な流動点降下剤が使用し得る。例えば、好適な流動点降下剤として、一種以上のC8-C18ジアルキルフマレート酢酸ビニルコポリマー、ポリメチルメタクリレート、アルキルメタクリレート及びワックスナフタレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
発泡制御はあらゆる一種以上の消泡剤により得られる。好適な消泡剤として、ポリシロキサン、例えば、シリコーンオイル及びポリジメチルシロキサンが挙げられる。
耐磨耗剤は金属部分の磨耗を減少する。通常の耐磨耗剤の代表は亜鉛ジアルキルジチオホスフェート及び亜鉛ジアリールジチオホスフェートであり、これらはまた酸化防止剤として利用できる。
洗剤及び金属錆抑制剤として、スルホン酸、アルキルフェノール、硫化アルキルフェノール、アルキルサリチル酸、ナフテネート及びその他の油溶性モノカルボン酸及びジカルボン酸の金属塩が挙げられる。高度に塩基性の(即ち、過塩基化)金属塩、例えば、高度に塩基性のアルカリ土類金属スルホン酸塩(特にCa塩及びMg塩)が洗剤として頻繁に使用される。
潤滑油がこれらの通常の添加剤を含む場合の組成物は典型的にはそれらの通常の付随機能を与えるのに有効である量でベースオイルにブレンドされる。こうして、典型的な配合物は質量基準の量で、VI向上剤(0.01-12%)、腐食抑制剤(0.01-5%)、酸化抑制剤(0.01-5%)、降下剤(0.01-5%)、消泡剤(0.001-3%)、耐磨耗剤(0.001-5%)、摩擦改質剤(0.01-5%)、洗剤/錆抑制剤(0.01-10%)、及びオイルベースを含み得る。
その他の添加剤が使用される場合、一種以上のその他の添加剤、例えば、“添加剤パッケージ”と称される濃厚物と一緒に粘度指数向上剤(上記された濃縮量の)の濃厚な溶液又は分散液を含む添加剤濃厚物を調製することが、必要ではないが、望ましいかもしれず、それにより数種の添加剤がベースオイルに同時に添加されて潤滑油組成物を生成し得る。潤滑油への添加剤濃厚物の溶解は溶媒により、また軽度の加熱で伴なわれる混合により促進し得るが、これは必須ではない。添加剤パッケージは典型的には適当な量の粘度指数向上剤及び任意の付加的な添加剤を含むように配合されて、添加剤パッケージが前もって決められた量のベース潤滑剤と合わされる場合に最終配合物中で所望の濃度を与えるであろう。こうして、本発明の生成物はその他の望ましい添加剤とともに少量のベースオイル又はその他の適合性溶媒に添加されて典型的には適当な比率で典型的には2.5質量%から90質量%まで、好ましくは5質量%から75質量%まで、更に好ましくは8質量%から50質量%までの添加剤の総量の活性成分を含む添加剤パッケージ(残部はベースオイルである)を生成し得る。最終配合物は約10質量%の添加剤パッケージを使用してもよく、残部はベースオイルである。
【0046】
少なくとも一つの特別な実施態様において、潤滑油組成物は潤滑油組成物の合計質量を基準として、0.1 質量%から20質量%までの量の一種以上の高SSI 粘度指数向上剤; 1質量%から99質量%までの量の一種以上のベースオイル; 0.01質量%から25質量%までの量の一種以上の分散剤; そして必要により0.01質量%から20質量%までの量の一種以上のその他の添加剤を含み得る。高SSI 粘度指数向上剤の量がまた約 0.1質量%、0.5 質量%、1質量%、2質量%の低さから約10質量%、15質量%、18質量%、又は20質量%の高さまでの範囲であり得る。少なくとも一つの特別な実施態様において、一種以上のベースオイルが1質量%から99質量%まで、もしくは50質量%から99質量%まで、又は53質量%から90質量%まで、或いは60質量%から90質量%までの量で存在し得る。少なくとも一つの特別な実施態様において、一種以上の分散剤が0.5 質量%から20質量%まで、もしくは1.0 質量%から18質量%まで、又は3.0 質量%から15質量%まで、或いは5質量%から14質量%まで、又は5.0 質量%から10質量%までの量で存在し得る。少なくとも一つの特別な実施態様において、一種以上の添加剤(存在する場合)が0.05質量%から10質量%まで、もしくは0.7 質量%から5質量%まで、又は0.75質量%から5質量%まで、或いは0.5 質量%から3質量%まで、又は0.75質量%から3質量%までの範囲であり得る。このような質量%は油組成物の合計質量を基準とする。
【実施例】
【0047】
今、本発明が実施例及び添付図面を参照して一層特別に記載される。
以下の実施例において、重量平均分子量及び数平均分子量を溶媒の屈折率と分別ポリマーを含む溶媒の屈折率の差を測定するウォーターズ示差屈折計を備えたウォーターズ・アライアンス2000ゲル透過クロマトグラフを使用してGPC により測定した。その系を移動相(これは約250ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT) により安定化される)としての1,2,4-トリクロロベンゼン (TCB)を用いて145 ℃で使用した。使用した流量は1.0 mL/分であった。3種の(ポリマー・ラボラトリィズ)PLgel 混合-Bカラムを使用した。この技術がMacromolecules, 34巻, 19号, 6812-6820 頁及びMacromolecules 37巻, 11号, 4304-4312頁(これらの両方が参考として本明細書に含まれる)に説明されている。
カラムセットの分離効率を一連の狭い分子量分布ポリスチレン標準物質を使用して較正した(これはサンプルについての予想分子量範囲及びカラムセットの排除限界を反映する)。Mp約580 から10,000,000までの範囲の、少なくとも10種の個々のポリスチレン標準物質を使用して較正曲線を作成した。ポリスチレン標準物質をポリマー・ラボラトリィズ (Amherst, MA) 又は均等の源から得た。内部一致を確実にするために、流量を夫々の較正実験について修正して流量マーカー(ポジチブ注入ピークであるように採用した)についての共通のピーク位置を得、その後に夫々のポリスチレン標準物質についての保持容積を測定した。こうして帰属された流れマーカーピーク位置をまた使用してサンプルを分析する場合に流量を修正した。それ故、それは較正操作の必須部分である。保持容積を夫々のPS標準物質についてのDRI シグナル中のピークで記録し、このデータ組を二次多項式にフィットすることにより較正曲線 (log Mp vs. 保持容積) を作成した。ポリスチレン標準物質をViscotec 3.0ソフトウェアを使用してグラフにした。サンプルをWaveMetrics, Inc. IGOR Pro 及びViscotec 3.0ソフトウェアを使用し、アップデートされた較正定数を使用して分析した。
【0048】
ピーク融点(Tm)及びピーク結晶化温度(Tc)、ガラス転移温度(Tg)、並びに融解熱(ΔH)をASTM D3418-03 による下記の操作を使用して測定した。示差走査熱量測定 (DSC)データをパーキン・エルマー・ピリス1 機械を使用して得た。約5-10 mg の質量のサンプルをアルミニウムヘルメット状サンプルパン中にシールした。DSC データを最初にサンプルを10℃/分の速度で200 ℃まで次第に加熱することにより記録した。サンプルを5分間にわたって200 ℃に保ち、次いで10℃/分の速度で-100℃に冷却し、その後に第二の冷却-加熱サイクルを適用した。第一及び第二のサイクルの熱イベントの両方を記録した。第二の融解曲線の吸熱ピークの下の面積を測定し、融解熱を測定するのに使用した。ここに記録された融解温度及び結晶化温度を第二加熱/冷却サイクル中に得た。
エチレン/プロピレンコポリマーのエチレン含量を下記の技術に従ってFTIRを使用して測定した。約150 ℃の温度でプレスされた、ポリマーの薄い均一なフィルムを、パーキン・エルマー・スペクトラム2000赤外分光光度計に取り付けた。600 cm-1から4000 cm-1 までのサンプルの全スペクトルを記録し、約1165 cm-1 にあるプロピレンバンドの下の面積及び約732 cm-1にあるエチレンバンドの下の面積を計算した。メチレンロッキングバンドについての基準線積分範囲は公称で695 cm-1から745 〜775 cm-1の間の最小値までである。ポリプロピレンバンドについて、基準線及び積分範囲は公称で1195〜1126 cm-1 である。エチレン含量(質量%)を下記の式に従って計算した。
エチレン含量(質量%)=72.698−86.495X+13.696X2
式中、X=AR/(AR+1)かつARは約1165 cm-1にあるピークの面積対約732 cm-1にあるピークの面積の比である。
本発明は更に以下のように記載し得る。
【0049】
実施態様 1: エチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位、及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも30質量%の単位を含むエチレンコポリマーを含む、好ましくは潤滑油のための、組成物であって、その組成物がDSC により測定して、関係:
Tm > 3.4 x E - 180
(式中、Eはコポリマー中のエチレンから誘導された単位の質量%である)を満足する融点(Tm)(単位:℃)を有し、かつそのエチレンコポリマーが
約1.5 〜約3.5 のMw/Mn 比、及び
25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量
を有する、組成物。
【0050】
実施態様 2:エチレンコポリマーが少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量ppm 対触媒に由来する5族金属の質量ppm の比を有する、実施態様1の組成物。
実施態様 3: エチレンコポリマーがGPC により測定して、約50,000 g/モル〜約200,000 g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する、実施態様1又は2の組成物。
実施態様 4: 関係: TE > 0.034*SSI + 0.8を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様1-3 のいずれかの組成物。
実施態様 5: 関係: TE > 0.034*SSI + 1.0を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様1-4 のいずれかの組成物。
実施態様 6: 関係: TE > 0.034*SSI + 1.1を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様1-5 のいずれかの組成物。
実施態様 7: 約 -40℃以下の流動点を更に含む、実施態様1-6 のいずれかの組成物。
実施態様 8: 約20,000 cP以下の-25 ℃でのミニ回転粘度計 (MRV)試験における低温粘度を更に含む、実施態様1-7 のいずれかの組成物。
実施態様 9: 約35%〜約50%の、せん断安定性指数、SSI を更に含む、実施態様1-8 のいずれかの組成物。
実施態様 10:約-35 ℃以下の流動点を更に含む、実施態様1-9 のいずれかの組成物。
【0051】
実施態様 11:
ベースオイル、及び
エチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位、及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも30質量%の単位を含むエチレンコポリマーを含む、潤滑油組成物であって、そのコポリマーがDSC により測定して、関係:
Tm > 3.4 x E - 180
(式中、Eはコポリマー中のエチレンから誘導された単位の質量%である)を満足する融点(Tm)(単位:℃)、
約1.5 〜約3.5 のMw/Mn の比、及び
25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量
を有する、潤滑油組成物。
実施態様12:エチレンコポリマーが少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量ppm 対触媒に由来する5族金属の質量ppm の比を有する、実施態様11の潤滑油組成物。
実施態様13: エチレンコポリマーがGPC により測定して、約50,000 g/モル〜約200,000 g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する、実施態様11又は12の潤滑油組成物。
実施態様14: 関係: TE > 0.034*SSI + 0.8を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様11-13 のいずれかの潤滑油組成物。
実施態様15: 関係: TE > 0.034*SSI + 1.0を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様11-14 のいずれかの潤滑油組成物。
実施態様16: 関係: TE > 0.034*SSI + 1.1を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様11-15 のいずれかの潤滑油組成物。
実施態様17: 約 -40℃以下の流動点を更に含む、実施態様11-16 のいずれかの潤滑油組成物。
実施態様18: 約20,000 cP以下の-25 ℃でのミニ回転粘度計 (MRV)試験における低温粘度を更に含む、実施態様11-17 のいずれかの潤滑油組成物。
実施態様19: 約35%〜約50%の、せん断安定性指数、SSI を更に含む、実施態様11-18 のいずれかの潤滑油組成物。
実施態様20: 約-35 ℃以下の流動点を更に含む、実施態様11-19 のいずれかの潤滑油組成物。
【0052】
実施態様 21:ベースオイル並びにエチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも12質量%の単位を含むエチレンコポリマーを含む、潤滑油組成物であって、そのコポリマーが
GPC により測定して、約50,000〜約200,000 g/モルの範囲の、重量平均分子量(Mw)、
DSC により測定して、少なくとも100 ℃の融点(Tm)、
約1.5 〜約3.5 のMw/Mn の比、及び
25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量
を有する、潤滑油組成物。
実施態様22:エチレンコポリマーが少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量ppm 対触媒に由来する5族金属の質量ppm の比を有する、実施態様21の潤滑油組成物。
実施態様23:エチレンコポリマーが関係: TE > 0.034*SSI + 0.08を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様21又は22の潤滑油組成物。
実施態様24: 約 -40℃以下の流動点を更に含む、実施態様21-23 のいずれかの潤滑油組成物。
実施態様25: 約35%〜約50%の、せん断安定性指数、SSI を更に含む、実施態様21-24 のいずれかの潤滑油組成物。
【0053】
実施態様26: エチレン及びプロピレンをm-ジメチルシリル-ビスインデニルハフニウムジメチル及びトリメチルアンモニウムテトラキス-ペンタフルオロフェニルボレートの存在下で充分な条件で反応させてエチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも12質量%の単位を含む半結晶性コポリマーを生成し(その半結晶性コポリマーは
GPC により測定して約50,000 〜約200,000 g/モルの範囲の重量平均分子量(Mw)、
DSC により測定して、少なくとも100 ℃の融点(Tm)、
約1.5 〜約3.5 のMw/Mn の比、及び
25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量
を有する)、
その半結晶性コポリマーを充分な量のベースオイルとブレンドして潤滑油組成物を生成することを含む、潤滑油組成物の製造方法。
実施態様27: 半結晶性コポリマーが少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量(ppm) 対触媒に由来する5族金属の質量(ppm) の比を有する、実施態様26の方法。
実施態様28: 半結晶性コポリマーがGPC により測定して、約 50,000 g/モル〜約 200,000 g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する、実施態様26又は27の方法。
実施態様29: 関係: TE > 0.034*SSI + 0.8を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様26-28 のいずれかの方法。
実施態様30: 関係: TE > 0.034*SSI + 1.0を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様26-29 のいずれかの方法。
実施態様31: 関係: TE > 0.034*SSI + 1.1を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様26-30 のいずれかの方法。
実施態様32: 約 -40℃以下の流動点を更に含む、実施態様26-31 のいずれかの方法。
実施態様33: 約20,000 cP以下の-25 ℃でのミニ回転粘度計 (MRV)試験における低温粘度を更に含む、実施態様26-32 のいずれかの方法。
実施態様34: 約35%〜約50%の、せん断安定性指数、SSI を更に含む、実施態様26-33 のいずれかの方法。
実施態様35: 約-35 ℃以下の流動点を更に含む、実施態様26-34 のいずれかの方法。
【0054】
実施態様36: ベースオイル並びにエチレンから誘導された70質量%〜85質量%の単位及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも12質量%の単位を含むエチレンコポリマーを含む潤滑油組成物であって、そのコポリマーが下記の性質:
(a) GPC により測定して50,000 〜200,000 g/モルの範囲の重量平均分子量(Mw)、
(b) DSC により測定して、少なくとも100 ℃の融点(Tm)、
(c) 1.8 〜2.5 のMw/Mn の比、及び
(d) 25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量
を有する、潤滑油組成物。
実施態様37: エチレンコポリマーが少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量(ppm) 対触媒に由来する5族金属の質量(ppm) の比を有する、実施態様36の潤滑油組成物。
実施態様38: エチレンコポリマーがDSC により測定して、少なくとも110 ℃の融点(Tm)を有する、実施態様36又は37の潤滑油組成物。
実施態様39: エチレンコポリマーがGPC により測定して、約 50,000 g/モル〜約 200,000 g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する、実施態様36-38 のいずれかの組成物。
実施態様40: 関係: TE > 0.034*SSI + 0.8を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様36-39 のいずれかの組成物。
実施態様41: 関係: TE > 0.034*SSI + 1.0を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様36-39 のいずれかの組成物。
実施態様42: 関係: TE > 0.034*SSI + 1.1を満足する、せん断安定性指数、SSI 、及び増粘効率、TEを更に含む、実施態様36-39 のいずれかの組成物。
実施態様43: 約 -40℃以下の流動点を更に含む、実施態様36-42 のいずれかの組成物。
実施態様44: 約20,000 cP以下の-25 ℃でのミニ回転粘度計 (MRV)試験における低温粘度を更に含む、実施態様36-43 のいずれかの組成物。
実施態様45: 約35%〜約50%の、せん断安定性指数、SSI を更に含む、実施態様36-44 のいずれかの組成物。
実施態様46: 約-35 ℃以下の流動点を更に含む、実施態様36-45 のいずれかの組成物。
実施態様47: エチレンコポリマーが単一反応器中で調製される、実施態様1-25又は36-47 のいずれかの組成物。
実施態様48: エチレンコポリマーを単一反応器中で調製する、実施態様26-35 のいずれかの方法。
実施態様49:実施態様1-10のいずれかの潤滑油組成物。
【0055】
実施例
以上の説明が下記の非限定実施例を参照して更に記載し得る。本明細書に記載された一つ以上の実施態様に従って製造された6種のポリマー組成物を提供する。実施例1〜3は低エチレン含量を有する高SSI 粘度指数向上剤に相当し、また実施例4〜6は高エチレン含量を有する高SSI 粘度指数向上剤に相当する。夫々の実施例の製造方法並びにその得られる性質及びこれらを含む得られる潤滑油組成物を以下に記載する。
実施例1〜3
実施例1〜3の組成物を一つの連続撹拌タンク反応器中で合成した。イソヘキサンを溶媒として使用して、重合を溶液中で行なった。反応器中で、重合を290 psi (2 MPa) の全圧力で行なった。エチレン供給速度及びプロピレン供給速度、反応器温度を表1にリストする。
触媒はトルエン溶液中でトリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(活性剤)で前活性化されたrac-ジメチルシリルビス (インデニル) ハフニウムジメチル (メタロセン) であり、これを反応器に供給した。メタロセン対活性剤のモル比は約1:1.03であった。トルエン中のメタロセン濃度は1.74*10-4 モル/リットルであり、また活性剤濃度は1.68*10-4 モル/リットルであった。触媒溶液の供給速度を表1にリストする。トリn-オクチルアルミニウム (TNOA) を25質量%でイソヘキサンに溶解し、脱除剤として反応器に供給した。脱除剤溶液の供給速度を表1にリストする。
その方法において、温度制御を使用して所望の分子量を得た。反応器から現れるコポリマー溶液を水の添加により更なる重合から停止し、次いで通常知られている脱蔵方法、例えば、フラッシング又は液相分離を使用して、最初にイソヘキサンの本体を除去して濃縮溶液を得、次いで0.5 質量%未満の溶媒及びその他の揮発物を含む溶融ポリマー組成物で終了するように脱蔵装置又は2軸脱蔵押出機を使用して溶媒の残部を無水条件でストリッピングすることにより脱蔵した。溶融ポリマーを固体まで冷却した。
表1:実施例1−3についての反応パラメーター
【0056】
【表1】

【0057】
表2:米国特許第6,589,920 号のポリマーとの実施例1〜3の比較
【表2】

【0058】
表2は実施例1〜3のコポリマーを米国特許第6,589,920 号(これが参考として本明細書に含まれる)に従って製造されたコポリマーと比較する。実施例1-3 は米国特許第6,589,920 号に従って製造されたポリマーよりも実質的に高く、約60℃高い、融点を有し、実施例1-3 のポリマーが’920 特許のポリマーとは構造上異なることを示す。
実施例4〜6
実施例4〜6で使用された重合操作は、下記の表3に要約された反応パラメーター以外は実施例1-3 に記載されたのと同じであった。
表3:実施例4-6 についての反応パラメーター
【0059】
【表3】

【0060】
実施例1-6 から得られるコポリマーの性質を表4に要約する。
増粘効率(TE)をASTM D445 に従って測定した。
せん断安定性指数 (SSI)をASTM D6278に従って測定し、SSI (30)として報告した。また、90サイクル試験を、それ以外にASTM D6278に従って行ない、SSI (90)として報告した。
EHC 45及びEHC 60はカナダのインペリアル・オイルから入手し得るグループIIベースオイルである。
インフィネウムD3426 はエンジンオイル添加剤パッケージである。
インフィネウム9340 (400BN)はスルホン酸Mg添加剤である。
インフィネウム9330 (300BN)はスルホン酸Ca添加剤である。
インフィネウムV387は流動点降下剤である。
低温クランキングシミュレーター (CCS)試験をASTM D5293 に従って-20 ℃で行なった。
ミニ回転粘度計 (MRV)試験をASTM D4684に従って-30 ℃で行なった。
流動点をASTM D97に従って測定した。
下記の頁の表4-6 に示されるように、低エチレン、高SSI 粘度指数向上剤 (実施例1-3)は優れた低温特性 (ゲル化なし、低流動点) を示し、'920特許の実施例により証明されるような、当業界で知られているものよりも同等のエチレン濃度で一層高い融点を有していた。その結果、低温、高SSI 粘度指数向上剤を含む油組成物は流動点値により証明されるようにゲル化しなかった。
或る実施態様及び特徴が数的上限の組及び数的下限の組を使用して記載された。特に示されない限り、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が意図されていることが認められるべきである。或る下限、上限及び範囲が以下の一つ以上の請求項に現れる。全ての数値が“約”又は“およその”示された値であり、当業者により予想されるような実験誤差及び変化を考慮する。
種々の用語が先に定義された。特許請求の範囲に使用される用語が先に定義されない場合、それは当業者が少なくとも一つの印刷された刊行物又は発行特許に反映されるようにその用語に与えた最も広い定義を与えられるべきである。更に、この出願中で引用された全ての特許、試験操作、及びその他の書類はこのような開示がこの出願と不一致ではない程度に、またこのような組み入れが許される全ての司法権について参考として完全に含まれる。
【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
以上が本発明の実施態様に関するが、本発明のその他の実施態様及び更なる実施態様がその基本的な範囲から逸脱しないで考案されてもよく、その範囲は下記の特許請求の範囲により決められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位、及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも30質量%の単位を含むエチレンコポリマー(これは単一反応器中で調製された)を含む組成物であって、その組成物が
DSC により測定して、関係:
Tm > 3.4 x E - 180
(式中、Eはコポリマー中のエチレンから誘導された単位の質量%である)を満足する融点(Tm)(単位:℃)、
約1.5 〜約3.5 のMw/Mn 比、及び
25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量
を有する、組成物。
【請求項2】
エチレンコポリマーがGPC により測定して、約50,000 g/モル〜約200,000 g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
関係: TE > 0.034*SSI + 0.8を満足する、せん断安定性指数(SSI)、及び増粘効率(TE)を更に含む、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
約-35 ℃以下の流動点を更に含む、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
約20,000 cP以下の-25 ℃でのミニ回転粘度計 (MRV)試験における低温粘度を更に含む、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
約35%〜約50%の、せん断安定性指数(SSI)を更に含む、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
組成物が少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量ppm 対触媒に由来する5族金属の質量ppm の比を有する、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
ベースオイル、及び
エチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位、及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも30質量%の単位を含むエチレンコポリマー(これは単一反応器中で調製された)を含む、潤滑油組成物であって、そのコポリマーが
DSC により測定して、関係:
Tm > 3.4 x E - 180
(式中、Eはコポリマー中のエチレンから誘導された単位の質量%である)を満足する融点(Tm)(単位:℃)、
約1.5 〜約3.5 のMw/Mn の比、及び
25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量
を有する、潤滑油組成物。
【請求項9】
エチレンコポリマーがGPC により測定して、約50,000 g/モル〜約200,000 g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項8記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
関係: TE > 0.034*SSI + 0.8を満足する、せん断安定性指数(SSI)、及び増粘効率(TE)を更に含む、請求項8又は9記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
約-35 ℃以下の流動点を更に含む、請求項8から10のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
約20,000 cP以下の-25 ℃でのミニ回転粘度計 (MRV)試験における低温粘度を更に含む、請求項8から11のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
約35%〜約50%の、せん断安定性指数(SSI)を更に含む、請求項8から12のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
潤滑油組成物が少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量ppm 対触媒に由来する5族金属の質量ppm の比を有する、請求項8から13のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
ベースオイル並びにエチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも12質量%の単位を含むエチレンコポリマー(これは単一反応器中で調製された)を含む、潤滑油組成物であって、そのコポリマーが
GPC により測定して、約50,000〜約200,000 g/モルの範囲の、重量平均分子量(Mw)、
DSC により測定して、少なくとも100 ℃の融点(Tm)、
約1.5 〜約3.5 のMw/Mn の比、及び
25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量
を有する、潤滑油組成物。
【請求項16】
コポリマーが関係: TE > 0.034*SSI + 0.08を満足する、せん断安定性指数(SSI)、及び増粘効率(TE)を更に含む、請求項15記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
約-40 ℃以下の流動点を更に含む、請求項15又は16記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
約35%〜約50%の、せん断安定性指数(SSI)を更に含む、請求項15から17のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
潤滑油組成物が少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量ppm 対触媒に由来する5族金属の質量ppm の比を有する、請求項15から18のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
エチレン及びプロピレンを単一反応器中でm-ジメチルシリル-ビスインデニルハフニウムジメチル及びトリメチルアンモニウムテトラキス-ペンタフルオロフェニルボレートの存在下で充分な条件で反応させてエチレンから誘導された40質量%〜70質量%の単位及び3〜20個の炭素原子を有する少なくとも一種のα-オレフィンから誘導された少なくとも12質量%の単位を含む半結晶性コポリマーを生成し(その半結晶性コポリマーは
GPC により測定して約50,000 〜約200,000 g/モルの範囲の重量平均分子量(Mw)、
DSC により測定して、少なくとも100 ℃の融点(Tm)、
約1.5 〜約3.5 のMw/Mn の比、及び
25 ppm以下の触媒に由来する4族金属の含量
を有する)、
その半結晶性コポリマーを充分な量のベースオイルとブレンドして潤滑油組成物を生成することを含む、潤滑油組成物の製造方法。
【請求項21】
エチレンコポリマーが少なくとも3の触媒に由来する4族金属の質量(ppm) 対触媒に由来する5族金属の質量(ppm) の比を有する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
エチレンコポリマーがGPC により測定して、約 50,000 g/モル〜約 200,000 g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項20又は21記載の方法。
【請求項23】
関係: TE > 0.034*SSI + 0.8を満足する、せん断安定性指数(SSI)、及び増粘効率(TE)を更に含む、請求項20から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
約 -35℃以下の流動点を更に含む、請求項20から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項1から7のいずれかに記載の潤滑油組成物。

【公表番号】特表2013−517370(P2013−517370A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550034(P2012−550034)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2011/021000
【国際公開番号】WO2011/090861
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】