説明

潤滑油組成物

【課題】低粘度であっても蒸発損失が少なく、低温粘度特性、耐焼付性等の潤滑特性及び酸化安定性に優れる、エンジン、自動変速機、手動変速機、終減速機、無段変速機等に好適な潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】(A)潤滑油基油に(B)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤を組成物の100℃における動粘度(Vc)が3〜15mm/s、組成物の粘度指数が95〜200であり、Vcに対する(A)潤滑油基油の100℃における動粘度(Vb)の比(=Vb/Vc)が0.60以上となる量含有する潤滑油組成物であって、組成物全量基準で、(C)金属系清浄剤を金属量として0.03〜0.5質量%、(D)無灰分散剤を窒素量として0.005〜0.15質量%及び(E)ジチオリン酸亜鉛をリン量として0.02〜0.3質量%含有することを特徴とする潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関し、詳しくは低粘度でありながら蒸発損失が少なく、低温粘度特性、耐焼付性等の潤滑特性及び酸化安定性に優れる、エンジン、自動変速機、手動変速機、終減速機、無段変速機等に好適な潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸ガス排出量の削減など、環境問題への対応から自動車、建設機械、農業機械等の省エネルギー化、すなわち、省燃費化が急務となっており、エンジンや変速機、終減速機、圧縮機、油圧装置等の装置には省エネルギーへの寄与が強く求められている。そのため、これらに使用される潤滑油には、従来に比べより攪拌抵抗や摩擦抵抗を減少することが求められている。
エンジン、変速機および終減速機の省燃費化手段のひとつとして、潤滑油の低粘度化が挙げられる。例えば、変速機の中でも自動車用自動変速機や無段変速機はトルクコンバータ、湿式クラッチ、歯車軸受機構、オイルポンプ、油圧制御機構などを有し、また、手動変速機や終減速機は歯車軸受機構を有しており、これらに使用される潤滑油をより低粘度化することにより、トルクコンバータ、湿式クラッチ、歯車軸受機構およびオイルポンプ等の攪拌抵抗および摩擦抵抗が低減され、動力の伝達効率が向上することで自動車の燃費の向上が可能となる。
【0003】
しかしながら、これらに使用される潤滑油を低粘度化すると低温粘度特性は良好であるものの、蒸発損失や潤滑性能が大幅に悪化し、焼付きなどが生じてエンジンや変速機等に不具合が生じることがある。
従来の自動車用変速機油としては、変速特性等の各種性能を長期間維持できるものとして、合成油及び/又は鉱油系の潤滑油基油、摩耗防止剤、極圧剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤等を最適化して配合したものが報告されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。しかしながら、これらの組成物はいずれも燃費向上を目的としたものではないためその動粘度は高く、潤滑油を低粘度化した場合の潤滑性能への影響については全く検討されておらず、従ってそのような課題を解決しうる組成物についてはこれまでに十分検討されていない。
【特許文献1】特開平3−39399号公報
【特許文献2】特開平7−268375号公報
【特許文献3】特開2000−63869号公報
【特許文献4】特開2001−262176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、その目的は、低粘度であっても蒸発損失が少なく、低温粘度特性、耐焼付性等の潤滑特性及び酸化安定性に優れる、潤滑油組成物、特に自動車用のエンジン、自動変速機、手動変速機、無段変速機等に好適な、省燃費性能と歯車や軸受け等の十分な耐久性を兼ね備えた潤滑油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために、潤滑油基油とポリマーに着目し、検討した結果、基油にポリ(メタ)クリレート系添加剤を特定の粘度特性となるよう含有し、所定の添加剤を含有する潤滑油組成物が、上記課題を解決できる事を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、(A)潤滑油基油に(B)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤を組成物の100℃における動粘度(Vc)が3〜15mm/s、組成物の粘度指数が95〜200であり、Vcに対する(A)潤滑油基油の100℃における動粘度(Vb)の比(=Vb/Vc)が0.60以上となる量含有する潤滑油組成物であって、組成物全量基準で、(C)金属系清浄剤を金属量として0.03〜0.5質量%、(D)無灰分散剤を窒素量として0.005〜0.15質量%及び(E)ジチオリン酸亜鉛をリン量として0.02〜0.3質量%含有することを特徴とする潤滑油組成物にある。
【0007】
また、本発明は、前記(B)成分が、(B1)重量平均分子量が5万〜30万のポリ(メタ)アクリレート系添加剤であることを特徴とする前記記載の潤滑油組成物にある。
【0008】
また、本発明は、前記(B1)成分のMw/Mnが1.5以上であることを特徴とする前記記載の潤滑油組成物にある。
【0009】
また、本発明は、前記(B1)成分が、実質的に下記一般式(1)で表される構造単位のみを含むポリ(メタ)アクリレートからなることを特徴とする前記記載の潤滑油組成物にある。
【化3】

(一般式(1)において、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数5〜20の炭化水素基又は−(R)a−Eで表される基を示し、ここでRは炭素数5〜20のアルキレン基、Eは窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示し、aは0又は1の整数を示す。)
【0010】
また、本発明は、前記(B)成分が、(B2)少なくとも下記一般式(2)で表される構造単位を有するポリ(メタ)アクリレート系添加剤を含有してなることを特徴とする前記記載の潤滑油組成物にある。
【化4】

(一般式(2)において、Rは水素又はメチル基、Rはメチル基を示す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の潤滑油組成物は、低粘度であっても蒸発損失が少なく、低温粘度特性、耐焼付性等の潤滑特性及び酸化安定性に優れる、特に自動車用のエンジン用、自動変速機、手動変速機、無段変速機等歯車や軸受け等の十分な耐久性を兼ね備え、自動車の省燃費化を達成しうる潤滑油組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の潤滑油組成物を説明する。
本発明における潤滑油組成物は、後述する(B)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤を100℃における動粘度(Vc)が3〜15mm/s、組成物の粘度指数が95〜200、Vcに対する(A)潤滑油基油の100℃における動粘度(Vb)の比(=Vb/Vc)が0.60以上となる量含有する潤滑油組成物であり、後述する(C)〜(E)成分を所定量含有するものである。
【0013】
該潤滑油組成物の100℃における動粘度(Vc)は、耐焼付き性能と低温粘度特性のバランスから、好ましくは9mm/s以下、より好ましくは4〜7mm/s、さらに好ましくは4.5〜6.5mm/s、さらにより好ましくは5〜6mm/s、特に好ましくは5.5〜6mm/sである。また、該潤滑油組成物の粘度指数は、耐焼付き性能と低温粘度特性及び(B)成分の含有量とのバランスから、好ましくは100〜160、より好ましくは120〜150、さらに好ましくは130〜140である。
【0014】
また、Vcに対する(A)潤滑油基油の100℃における動粘度(Vb)の比(=Vb/Vc)は組成物の動粘度を同一にして比較した場合に、耐焼付き性能をより高めることができる点で、好ましくは0.70以上であり、より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.80以上、特に好ましくは0.90以上であり、1.0以下である。
【0015】
また、本発明の潤滑油組成物の蒸発損失量は、NOACK蒸発量として、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下、特に好ましくは12質量%以下である。また、NOACK蒸発量としては、低粘度化と、耐焼付き性能及び低温粘度特性とのバランスから、好ましくは5質量%以上、より好ましくは9質量%以上である。ここで、NOACK蒸発量とは、ASTM D 5800−95に準拠して測定された蒸発損失量を意味する。
【0016】
本発明における(A)潤滑油基油としては、前記Vb/Vcが0.60以上となるような動粘度を有し、具体的には、100℃における動粘度が3〜15mm/sに調整してなる潤滑油基油であることが好ましく、鉱油系潤滑油基油、合成系潤滑油基油及びこれらの混合物を用いることができる。
【0017】
鉱油系潤滑油基油としては、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を単独又は二つ以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の鉱油系潤滑油基油や、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。なお、これらの基油は単独でも、2種以上任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0018】
好ましい鉱油系潤滑油基油としては以下の基油を挙げることができる。
(1) パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留による留出油;
(2) パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留出油(WVGO);
(3) 潤滑油脱ろう工程により得られるワックスおよび/またはGTLプロセス等により製造されるフィッシャートロプシュワックス;
(4) (1)〜(3)の中から選ばれる1種または2種以上の混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC);
(5) (1)〜(4)の中から選ばれる2種以上の油の混合油;
(6) (1)、(2)、(3)、(4)または(5)の脱れき油(DAO);
(7) (6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC);
(8) (1)〜(7)の中から選ばれる2種以上の油の混合油などを原料油とし、この原料油および/またはこの原料油から回収された潤滑油留分を、通常の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる潤滑油
【0019】
ここでいう通常の精製方法とは特に制限されるものではなく、潤滑油基油製造の際に用いられる精製方法を任意に採用することができる。通常の精製方法としては、例えば、(ア)水素化分解、水素化仕上げなどの水素化精製、(イ)フルフラール溶剤抽出などの溶剤精製、(ウ)溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう、(エ)酸性白土や活性白土などによる白土精製、(オ)硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄などの薬品(酸またはアルカリ)精製などが挙げられる。本発明ではこれらの1つまたは2つ以上を任意の組み合わせおよび任意の順序で採用することができる。
【0020】
本発明で用いる鉱油系潤滑油基油としては、上記(1)〜(8)から選ばれる基油をさらに以下の処理を行って得られる基油が特に好ましい。
すなわち、上記(1)〜(8)から選ばれる基油をそのまま、またはこの基油から回収された潤滑油留分を、水素化分解あるいはワックス異性化し、当該生成物をそのまま、もしくはこれから潤滑油留分を回収し、次に溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、その後、溶剤精製処理するか、または、溶剤精製処理した後、溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行って製造される水素化分解鉱油及び/又はワックス異性化イソパラフィン系基油が好ましく用いられる。この水素化分解鉱油及び/又はワックス異性化イソパラフィン系基油は、基油全量基準で好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上使用することが望ましい。
【0021】
また、合成系潤滑油基油を例示すれば、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。
【0022】
好ましい合成系潤滑油基油としてはポリα−オレフィンが挙げられる。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びその水素化物が挙げられる。
ポリα−オレフィンの製法については特に制限はないが、例えば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素と水、アルコール(例えば、エタノール、プロパノールまたはブタノール)、カルボン酸、またはエステル(例えば、酢酸エチルまたはプロピオン酸エチル)との錯体を含むフリーデル・クラフツ触媒のような重合触媒の存在下でのα−オレフィンの重合等が挙げられる。
【0023】
本発明における(A)潤滑油基油は、上記のような2種類以上の鉱油系基油同志あるいは合成油系基油同志の混合物であっても差し支えなく、鉱油系基油と合成油系基油との混合物であっても差し支えない。そして、上記混合物における2種類以上の基油の混合比は、任意に選ぶことができる。
【0024】
本発明の潤滑油組成物における(A)潤滑油基油は、好ましくは下記(A1)成分と(A2)成分から選択される。
【0025】
(A1)成分としては、具体的には以下の(A1a)〜(A1c)から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
(A1a)100℃における動粘度が1.5〜4.5mm/s未満、好ましくは3.5〜4.5mm/sの鉱油系基油
(A1b)100℃における動粘度が4.5〜7mm/s未満、好ましくは5.3〜6.5mm/sの鉱油系基油
(A1c)100℃における動粘度が1.5〜7mm/s未満、好ましくは3.5〜6.5mm/sのポリα−オレフィン系基油
【0026】
ここで、(A1a)〜(A1c)の潤滑油基油の%Cとしては、特に制限はないが、3以下であることが好ましく、2以下であることがさらに好ましく、1以下であることが特に好ましい。(A)潤滑油基油の%Cを3以下とすることでより酸化安定性に優れた組成物を得ることができる。また、(A1a)〜(A1c)の潤滑油基油の%Cとしては、特に制限はないが、好ましくは70以上、より好ましくは75以上、さらに好ましくは78以上であり、通常100以下、好ましくは95以下、より好ましくは90以下であり、低温粘度特性と酸化安定性により優れるとともに、極圧添加剤の効果をより高めることができる。
なお、本発明において%C、%Cとは、それぞれASTM D 3238−85に準拠した方法により求められる芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率を示す。
【0027】
また、(A1a)〜(A1c)の潤滑油基油は、その粘度指数に格別の限定はないが、粘度指数は80以上が好ましく、より好ましくは90以上、さらに好ましくは110以上、さらにより好ましくは120以上、特に好ましくは130以上であり、通常200以下、より好ましくは160以下であることが望ましい。粘度指数を80以上とすることによって、低温から高温にわたり良好な粘度特性を示す組成物を得ることができ、粘度指数が高すぎると低温粘度特性が悪化することがある。本発明においては、(A1a)成分として、粘度指数が120以上の潤滑油基油、(A1b)成分として、粘度指数が130以上の潤滑油基油を用いることが特に好ましい。
【0028】
また、(A1a)〜(A1c)の潤滑油基油は、そのアニリン点に格別の限定はないが、アニリン点は100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが特に好ましく、通常140℃以下である。アニリン点を100℃以上とすることによって、低温粘度特性と酸化安定性により優れるとともに、極圧添加剤の効果をより高めることができる。本発明においては、(A1a)成分として、アニリン点が110℃以上の潤滑油基油、(A1b)成分として、粘度指数が120℃以上の潤滑油基油を用いることが特に好ましい。
【0029】
また、本発明における(A1a)〜(A1c)の潤滑油基油は、その硫黄含有量に格別の限定はないが、0.05質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以下であることがより好ましく、0.005質量%以下であることが特に好ましい。(A)成分の硫黄含有量を低減することで組成物の酸化安定性により優れた組成物を得ることができる。
【0030】
本発明においては、上記(A1a)〜(A1c)をそれぞれ単独でも使用することができるが、任意に混合使用することができる。中でも、(A1a)と、(A1b)及び/又は(A1c)成分を併用することが好ましい。なお、(A1a)成分及び/又は(A1b)成分と(A1c)成分を併用する場合の(A1c)成分の含有量は、基油全量基準で、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜20質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。特に、下記(A2)成分と併用する場合に、(A1c)成分を3〜8質量%程度配合することで、安価かつ効果的に、耐焼付き性能、低温特性、酸化安定性に優れた効果を発現することができる。
【0031】
本発明の潤滑油組成物における(A)潤滑油基油としては、(A1)成分からなることで、低温粘度特性と酸化安定性により優れる組成物を得ることができるが、疲労寿命等の潤滑特性をより向上させるために(A2)100℃における動粘度が7〜60mm/sの潤滑油基油を用いても良い。(A2)を使用する場合、上記(A1)と(A2)を併用することがより好ましい。
(A2)成分としては、具体的には以下の(A2a)〜(A2c)から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
(A2a)100℃における動粘度が7〜15mm/s未満、好ましくは8〜12mm/sの鉱油系及び/又は合成系基油、好ましくは鉱油系基油
(A2b)100℃における動粘度が15〜25mm/s未満、好ましくは17〜23mm/sの鉱油系及び/又は合成系基油、好ましくは鉱油系基油
(A2c)100℃における動粘度が25〜60mm/s、好ましくは28〜40mm/sの鉱油系及び/又は合成系基油、好ましくは鉱油系基油
【0032】
ここで、(A2a)〜(A2c)の潤滑油基油の%Cとしては、通常0〜40であり、特に制限はないが、2以上であることが好ましく、5以上であることがさらに好ましく、7以上であることが特に好ましく、また15以下であることが好ましく、より好ましくは10以下であることが、疲労寿命と酸化安定性を両立できる点で望ましい。
【0033】
また、(A2a)〜(A2c)の潤滑油基油は、その粘度指数に格別の限定はないが、粘度指数は80以上が好ましく、より好ましくは90以上、特に好ましくは95以上であり、通常200以下、好ましくは120以下、より好ましくは110以下、特に好ましくは100以下であることが望ましい。粘度指数を80以上とすることによって、低温から高温にわたり良好な粘度特性を示す組成物を得ることができ、粘度指数が高すぎると疲労寿命に対して効果が小さい。
【0034】
また、本発明における(A2a)〜(A2c)の潤滑油基油は、その硫黄含有量に格別の限定はないが、通常0〜2質量%であり、好ましくは0.05〜1.5質量%、より好ましくは0.3〜1.2質量%、さらに好ましくは0.5〜1質量%、特に好ましくは0.7〜1質量%であることが望ましい。(A2)成分として硫黄分含有量が比較的高いものを使用することで、疲労寿命を高めることができ、1質量%以下のものを使用することで組成物の酸化安定性により優れた組成物を得ることができる。
【0035】
本発明において(A2)成分を使用する場合、(A2b)又は(A2c)を用いることが疲労寿命向上の点で好ましく、(A2b)を用いることが疲労寿命と酸化安定性を両立できる点で特に好ましい。また、(A1)成分として、(A1c)を用いることで、疲労寿命と酸化安定性及び低温粘度特性に優れた組成物を得ることができる。
【0036】
本発明の(A)成分において上記(A1)及び(A2)成分を併用する場合の配合量は、特に制限はないが、低温粘度特性により優れる点で、潤滑油基油全量基準で、(A1)成分を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは85質量%以上とし、(A2)成分を好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは15質量%以下とすることが望ましい。また、疲労寿命等の潤滑特性をより向上できる点で、(A2)成分を好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上とすることが望ましい。
【0037】
本発明における(A)潤滑油基油は上記のように、好ましくは(A1)成分、又は(A1)成分及び(A2)成分からなる潤滑油基油であるが、その100℃における動粘度は、好ましくは3〜8mm/sであり、好ましくは4〜7mm/s、より好ましくは4.5〜6.5mm/s、さらに好ましくは5〜6mm/s、特に好ましくは5.2〜5.5mm/sである。特に100℃における動粘度を6mm/s以下とすることによって、流体抵抗が小さくなるため潤滑箇所での摩擦抵抗がより小さい潤滑油組成物を得ることが可能となり、低温粘度に優れた組成物(例えば、−40℃におけるブルックフィールド粘度が15万mPa・s以下、好ましくは5万mPa・s以下)とすることができる。また、特に100℃における動粘度を4.5mm/s以上とすることによって、油膜形成が十分となり、耐焼付き性能により優れ、また、高温条件下での基油の蒸発損失がより小さい潤滑油組成物を得ることが可能となる。
【0038】
また、(A)潤滑油基油の%Cとしては、特に制限はないが、3以下であることが好ましく、2以下であることがさらに好ましく、1以下であることが特に好ましい。(A)潤滑油基油の%Cを3以下とすることでより酸化安定性に優れた組成物を得ることができる。また、(A)潤滑油基油の%Cとしては、特に制限はないが、好ましくは70以上、より好ましくは75以上、さらに好ましくは78以上であり、通常100以下、好ましくは95以下、より好ましくは90以下であり、低温粘度特性と酸化安定性により優れるとともに、極圧添加剤の効果をより高めることができる。
【0039】
また、本発明における(A)潤滑油基油は、その粘度指数に格別の限定はないが、粘度指数は80以上が好ましく、より好ましくは90以上、さらに好ましくは110以上、特に好ましくは120以上であることが望ましい。粘度指数を80以上とすることによって、低温から高温にわたり良好な粘度特性を示す組成物を得ることができる。
【0040】
また、本発明における(A)潤滑油基油は、その硫黄含有量に格別の限定はないが、好ましくは0〜0.3質量%、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.005質量%以下である。(A)成分の硫黄含有量を0.3質量%以下とすることで酸化安定性をより高めることができる。
【0041】
本発明の潤滑油組成物における(B)成分は、ポリ(メタ)アクリレート系添加剤であり、極性基を有しない非分散型ポリ(メタ)アクリレート系添加剤であっても、極性基を有する分散型ポリ(メタ)アクリレート系添加剤であってもよいが、非分散型ポリ(メタ)アクリレート系添加剤であることが好ましい。
【0042】
本発明における(B)成分としては、(B1)重量平均分子量が3万〜100万のポリ(メタ)アクリレート系添加剤が挙げられ、その重量平均分子量は、好ましくは5万〜60万、より好ましくは6万〜30万、さらに好ましくは8万〜25万、特に好ましくは20万〜23万である。
また、本発明の(B1)成分の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、特に制限はないが、好ましくは1.5〜4、より好ましくは2〜3.5、特に好ましくは2.2〜3である。
なお、ここでいう重量平均分子量及び数平均分子量は、ウォーターズ社製150−C ALC/GPC装置に東ソー社製のGMHHR−M(7.8mmID×30cm)のカラムを2本直列に使用し、溶媒としてはテトラヒドロフラン、温度23℃、流速1mL/分、試料濃度1質量%、試料注入量75μL、検出器示差屈折率計(RI)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量及び数平均分子量を意味する。
【0043】
また、(B1)成分は、その構造に特に制限はないが、実質的に下記一般式(1)で表される構造単位のみを含むポリ(メタ)アクリレートからなることが好ましい。
【化5】

一般式(1)において、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数5〜20の炭化水素基又は−(R)a−Eで表される基を示し、ここでRは炭素数5〜20のアルキレン基、Eは窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示し、aは0又は1の整数を示す。
【0044】
で示す炭素数5〜20の炭化水素基としては、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよい)等が例示できる。
Rで示す炭素数5〜20のアルキレン基としては、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等(これらアルキレン基は直鎖状でも分枝状でもよい)等が例示できる。
【0045】
また、Eがアミン残基である場合、その具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられ、複素環残基である場合には、その具体例として、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、ピラジノ基等が挙げられる。
【0046】
本発明の(B1)成分を構成する一般式(1)で表される構造単位を有するポリ(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(1’)で示されるモノマーの1種または2種以上を重合または共重合して得られるポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
CH=C(R)−C(=O)−OR(1’)
(一般式(1’)中におけるRおよびRは、一般式(1)のRおよびRと同じである。)
【0047】
このモノマーの例としては、具体的には下記(B1a)〜(B1c)に示されるものが挙げられる。
(B1a)炭素数5〜15のアルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリレート:
(B1a)成分としては、具体的には、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート(これらは直鎖でも分枝状であってもよい);オクテニル(メタ)アクリレート、ノネニル(メタ)アクリレート、デセニル(メタ)アクリレート、ウンデセニル(メタ)アクリレート、ドデセニル(メタ)アクリレート、トリデセニル(メタ)アクリレート、テトラデセニル(メタ)アクリレート、ペンタデセニル(メタ)アクリレート(これらは直鎖でも分枝状であってもよい)等が挙げられ、炭素数12〜15の直鎖アルキル基を主成分として有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0048】
(B1b)炭素数16〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリレート:
(B1b)成分としては、好ましくは炭素数16〜20の直鎖アルキル基、より好ましくは炭素数16又は18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート、具体的には、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−イコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
(B1c)極性基含有モノマー:
(B1c)成分としては、アミド基含有ビニルモノマー、ニトロ基含有モノマー、1〜3級アミノ基含有ビニルモノマー、含窒素複素環含有ビニルモノマーおよびこれらの塩酸塩、硫酸塩、燐酸塩、低級アルキル(炭素数1〜8)モノカルボン酸塩、第4級アンモニウム塩基含有ビニルモノマー、酸素及び窒素を含有する両性ビニルモノマー、ニトリル基含有モノマー、脂肪族炭化水素系ビニルモノマー、脂環式炭化水素系ビニルモノマー、芳香族炭化水素系ビニルモノマー、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類、エポキシ基含有ビニルモノマー、ハロゲン元素含有ビニルモノマー、不飽和ポリカルボン酸のエステル、ヒドロキシル基含有ビニルモノマー、ポリオキシアルキレン鎖含有ビニルモノマー、アニオン性基、燐酸基、スルホン酸基、又は硫酸エステル基含有イオン性基含有ビニルモノマー及びこれらの1価金属塩、2価金属塩、アミン塩若しくはアンモニウム塩等が挙げられる。
【0050】
(B1c)成分としては、具体的には、これらのうち、4−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド、2−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、2−ビニル−5−メチルピリジン、N−ビニルピロリドン等の窒素含有モノマーが好ましい例として挙げられる。
【0051】
本発明においては、上記のうち、(B1a)のモノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーと(B1b)のモノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーとからなるモノマーの共重合体であるポリ(メタ)アクリレート(必要に応じ、(B1c)のモノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーを共重合させても良い)であることが好ましく、(B1a)炭素数12〜15の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート混合物と(B1b)炭素数16の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート及び炭素数18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートを主成分とするモノマー混合物との共重合体であるポリ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0052】
本発明の潤滑油組成物における(B1)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤の配合量は、組成物の100℃における動粘度(Vc)が3〜15mm/s、組成物の粘度指数が95〜200、かつ、前記Vb/Vcが0.60以上となるような量であるが、より具体的には、組成物全量基準で、通常0.1〜2質量%、好ましくは0.2〜1質量%である。
【0053】
また、本発明の潤滑油組成物は、組成物の100℃における動粘度(Vc)が3〜15mm/s、組成物の粘度指数が95〜200、かつ、前記Vb/Vcが0.60以上となる限りにおいて、(B)成分として、(B2)少なくとも下記一般式(2)で表される構造単位を有するポリ(メタ)アクリレート系添加剤を含有してなることが望ましい。
【化6】

一般式(2)において、Rは水素又はメチル基、Rはメチル基を示す。
【0054】
本発明における(B2)成分を構成する、少なくとも一般式(2)で表される構造単位を有するポリ(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(2’)で示されるモノマー(B2’)を重合して得られるポリ(メタ)アクリレートであっても、一般式(2’)で表されるモノマーと、一般式(2’)で表されるモノマー以外のモノマーとの共重合体であっても良い。
CH=C(R)−C(=O)−OR(2’)
(一般式(2’)中におけるRおよびRは、一般式(2)のRおよびRと同じである。)
【0055】
一般式(2’)で表されるモノマー(B2’)の例としては、具体的にはメチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0056】
一般式(2’)で表されるモノマー(B2’)以外のモノマーとしては、例えば、下記(B2a)〜(B2e)に示されるものが挙げられる。
【0057】
(B2a)炭素数2〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリレート:
(B2a)成分としては、具体的には、エチル(メタ)アクリレート、n−又はi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、i−又はsec−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
(B2b)炭素数5〜15のアルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリレート:
(B2b)成分としては、具体的には、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート(これらは直鎖でも分枝状であってもよい);オクテニル(メタ)アクリレート、ノネニル(メタ)アクリレート、デセニル(メタ)アクリレート、ウンデセニル(メタ)アクリレート、ドデセニル(メタ)アクリレート、トリデセニル(メタ)アクリレート、テトラデセニル(メタ)アクリレート、ペンタデセニル(メタ)アクリレート(これらは直鎖でも分枝状であってもよい)等が挙げられ、炭素数12〜15の直鎖アルキル基を主成分として有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0059】
(B2c)炭素数16〜30の直鎖アルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリレート:
(B2c)成分としては、好ましくは炭素数16〜20の直鎖アルキル基、より好ましくは炭素数16又は18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、具体的には、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−イコシル(メタ)アクリレート、n−ドコシル(メタ)アクリレート、n−テトラコシル(メタ)アクリレート、n−ヘキサコシル(メタ)アクリレート、n−オクタコシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、特に、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0060】
(B2d)炭素数16〜30の分枝アルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリレート:
(B2d)成分としては、好ましくは炭素数20〜28の分枝アルキル基、より好ましくは炭素数22〜26分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、具体的には、分枝ヘキサデシル(メタ)アクリレート、分枝オクタデシル(メタ)アクリレート、分枝イコシル(メタ)アクリレート、分枝ドコシル(メタ)アクリレート、分枝テトラコシル(メタ)アクリレート、分枝ヘキサコシル(メタ)アクリレート、分枝オクタコシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、好ましくは−C−C(R)Rで表されるような、炭素数16〜30、好ましくは炭素数20〜28、より好ましくは炭素数22〜26の分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。ここで、R及びRは、Rの炭素数が16〜30となる限りにおいて何ら制限はないが、Rとしては、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは炭素数10〜12の直鎖アルキル基、Rとしては、好ましくは炭素数10〜16、より好ましくは炭素数14〜16の直鎖アルキル基である。
(B2d)成分としては、より具体的には、2−デシル−テトラデシル(メタ)アクリレート、2−ドデシル−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−デシル−テトラデシルオキシエチル(メタ)アクリレート等の炭素数20〜30の分枝状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
(B2e)極性基含有モノマー:
(B2e)成分としては、アミド基含有ビニルモノマー、ニトロ基含有モノマー、1〜3級アミノ基含有ビニルモノマー、含窒素複素環含有ビニルモノマーおよびこれらの塩酸塩、硫酸塩、燐酸塩、低級アルキル(炭素数1〜8)モノカルボン酸塩、第4級アンモニウム塩基含有ビニルモノマー、酸素及び窒素を含有する両性ビニルモノマー、ニトリル基含有モノマー、脂肪族炭化水素系ビニルモノマー、脂環式炭化水素系ビニルモノマー、芳香族炭化水素系ビニルモノマー、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類、エポキシ基含有ビニルモノマー、ハロゲン元素含有ビニルモノマー、不飽和ポリカルボン酸のエステル、ヒドロキシル基含有ビニルモノマー、ポリオキシアルキレン鎖含有ビニルモノマー、アニオン性基、燐酸基、スルホン酸基、又は硫酸エステル基含有イオン性基含有ビニルモノマー含有ビニルモノマー及びこれらの1価金属塩、2価金属塩、アミン塩若しくはアンモニウム塩等が挙げられる。
【0062】
(B2e)成分としては、具体的には、これらのうち、4−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド、2−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、2−ビニル−5−メチルピリジン、N−ビニルピロリドン等の窒素含有モノマーが好ましい例として挙げられる。
【0063】
本発明における(B2)成分としては、上記(B2’)を重合して得られるポリ(メタ)アクリレート系化合物又は上記(B2’)及び、(B2a)〜(B2e)から選ばれるモノマーの1種または2種以上を共重合させて得られるポリ(メタ)アクリレート系化合物であり、より好ましい具体例としては、
1)(B2’)及び(B2b)の共重合体である非分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
2)(B2’)、(B2b)及び(B2c)の共重合体である非分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
3)(B2’)、(B2b)、(B2c)及び(B2d)の共重合体である非分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
4)(B2’)、(B2b)及び(B2e)の共重合体である分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
5)(B2’)、(B2b)、(B2c)及び(B2e)の共重合体である分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
6)(B2’)、(B2b)、(B2c)、(B2d)及び(B2e)の共重合体である分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
が挙げられ、上記1)〜3)の非分散型ポリ(メタ)アクリレート系化合物であることがより好ましく、上記2)又は3)の非分散型ポリ(メタ)アクリレート系化合物であることがさらに好ましく、上記3)の非分散型ポリ(メタ)アクリレート系化合物であることが特に好ましい。
【0064】
本発明における(B2)成分において、一般式(2)で表される構造単位の構成比は、ポリ(メタ)アクリレートを構成するモノマー全量基準で、モル比で、5モル%以上であり、より好ましくは15モル%以上であり、特に好ましくは30モル%以上であり、低温粘度特性の観点から、好ましくは80モル%以下、より好ましくは60モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。
【0065】
本発明における(B2)成分の重量平均分子量は、特に制限はなく、通常5千〜100万であるが、せん断安定性に優れ、初期の極圧性能を長期間維持しやすい点で、50万以下であることが好ましく、30万以下であることがより好ましく、15万以下であることがさらに好ましく、低温粘度特性と疲労寿命向上効果により優れる点で、好ましくは1万〜6万、より好ましくは1.5万〜3万、特に好ましくは1.5万〜2.4万である。また、低温粘度特性と粘度指数向上効果に優れる点で、好ましくは10万〜60万、より好ましくは15万〜55万、さらに好ましくは30万〜50万である。
なお、ここでいう重量平均分子量は、ウォーターズ社製150−C ALC/GPC装置に東ソー社製のGMHHR−M(7.8mmID×30cm)のカラムを2本直列に使用し、溶媒としてはテトラヒドロフラン、温度23℃、流速1mL/分、試料濃度1質量%、試料注入量75μL、検出器示差屈折率計(RI)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0066】
本発明の潤滑油組成物において、(B2)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤を配合する場合、その配合量は、組成物の100℃における動粘度(Vc)が3〜15mm/s、組成物の粘度指数が95〜200、かつ、前記Vb/Vcが0.60以上となるような量であるが、より具体的には、その配合量は、組成物全量基準で、希釈剤込みの配合量として、通常0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜2質量%、特に好ましくは0.8〜1.5質量%である。(B2)成分を上記範囲内で配合することで、低温粘度特性により優れた組成物を得ることができ、(B2)成分の配合量が上記範囲を超える場合、配合量に見合う効果が期待できないだけでなく、せん断安定性に劣り、初期の極圧性能を長期間維持しにくいため好ましくない。なお、本発明においては、(B)成分として、(B1)成分のみ、あるいは(B2)成分のみからなっても良いが、(B1)成分と(B2)成分を併用することで低温粘度特性をより改善できるため、より好ましい。
【0067】
本発明の潤滑油組成物には、低粘度であっても耐焼付き性等の潤滑性能及び酸化安定性を向上させる目的で、(C)金属系清浄剤、(D)無灰分散剤、(E)ジチオリン酸亜鉛の各種添加剤を特定量配合する必要がある。
【0068】
(C)金属系清浄剤としては、特に制限はなく、公知のアルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート系清浄剤、アルカリ金属又はアルカリ土類金属フェネート系清浄剤、アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ナフテネート系清浄剤、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート系清浄剤及びこれらの2種以上の混合物(コンプレックスタイプも含む)等が挙げられるが、耐焼付き性をより高めることができる点で、アルカリ土類金属スルホネートが特に好ましい。
ここでいうアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属であることが好ましく、カルシウム又はマグネシウムであることが特に好ましい。なお、これら金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択することができる。
なお、上記金属系清浄剤には、中性の金属系清浄剤だけでなく、(過)塩基性金属系清浄剤も含まれるが、本発明においては、炭酸カルシウム及び/又はホウ酸カルシウムを有する(過)塩基性金属系清浄剤であることが好ましい。
【0069】
金属系清浄剤の塩基価は、特に制限はないが、通常0〜500mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは150〜450mgKOH/g、特に好ましくは200〜400mgKOH/gである。なお、ここでいう塩基価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する(以下同じ)。
【0070】
本発明の潤滑油組成物において、(C)成分の含有量は、潤滑油組成物全量基準で、金属量として0.03〜0.5質量%であり、好ましくは0.08〜0.3質量%、特に好ましくは0.1〜0.25質量%である。(C)成分の含有量が金属量として0.03質量%未満の場合、耐焼付き性が著しく悪化するとともに、酸化安定性を十分高めることができず、また、0.5質量%を越えても含有量に見合うだけの効果が得られないため、それぞれ好ましくない。
【0071】
本発明の潤滑油組成物における(D)成分は、無灰分散剤である。
無灰分散剤としては、潤滑油用の無灰分散剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、例えば、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、コハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン等の含窒素化合物又はその誘導体が挙げられる。
このアルキル基又はアルケニル基としては、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
このアルキル基又はアルケニル基の炭素数は40〜400、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0072】
また、無灰分散剤の1例として挙げた含窒素化合物の誘導体としては、具体的には例えば、前述したような含窒素化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆる酸変性化合物;前述したような含窒素化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性化合物;前述したような含窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物;及び前述したような含窒素化合物に酸変性、ホウ素変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせた変性化合物等が挙げられる。
【0073】
本発明の潤滑油組成物には、(D)成分として、これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を使用することができる。
本発明のおいては、モノタイプのコハク酸イミド系無灰分散剤、ビスタイプのコハク酸イミド系無灰分散剤、及びこれらの混合物を使用することが好ましく、耐焼付き性と酸化安定性をより向上させることができる点で、ビスタイプのコハク酸イミド系無灰分散剤を必須として含有させることが望ましい。
【0074】
本発明の潤滑油組成物において、(D)成分の含有量は、組成物全量基準で、窒素量として0.005〜0.15質量%であり、好ましくは0.01〜0.1質量%、さらに好ましくは0.02〜0.04質量%である。(D)成分の含有量が0.005質量%未満の場合、耐焼付き性が十分でなく、0.15質量%を越えても含有量に見合うだけの効果が得られないため、それぞれ好ましくない。
【0075】
本発明の潤滑油組成物における(E)成分は、ジチオリン酸亜鉛である。
ジチオリン酸亜鉛としては、具体的には例えば、次の一般式(3)で表される化合物等が挙げられる。
【化7】

【0076】
式(3)中、R〜Rは、同一でも異なっていてもよく、炭素数3〜24のアルキル基、好ましくは炭素数3〜8のアルキル基である。アルキル基としては、第1級、第2級、第3級のいずれでも良いが、第1級及び/または第2級アルキル基であることが好ましく、酸化安定性に優れる点で第1級アルキル基であることがより好ましく、耐焼付性に優れる点で第2級であることが特に好ましい。
【0077】
本発明の潤滑油組成物における(E)成分のジチオリン酸亜鉛の含有量は、潤滑油組成物全量基準で、リン量として0.02〜0.3質量%であり、好ましくは0.04〜0.2質量%、より好ましくは0.12〜0.18質量%である。(E)成分の含有量が潤滑油組成物全量基準で、0.02質量%未満の場合、耐焼付き性能が不十分となり、また、0.3質量%を越えても含有量に見合うだけの効果が得られず、潤滑油組成物の酸化安定性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
なお、本発明の潤滑油組成物を、手動変速機等のギヤの潤滑条件が特に厳しい用途に使用する場合には、組成物全量基準で、リン量として0.12質量%以上とすることが好ましく、0.13〜0.18質量%とすることが特に好ましい。また、本発明の潤滑油組成物を、エンジン油として使用する場合、排ガス浄化処理装置への影響を極力回避するために、その含有量は、好ましくはリン量として0.12質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下とすることが望ましい。
【0078】
本発明の潤滑油組成物には、その性能をさらに向上させる目的で、又は各種潤滑油に必要な性能を付与するために、必要に応じて、極圧剤、粘度指数向上剤、低温流動性向上剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、消泡剤、着色剤等の各種添加剤を単独で又は数種類組み合わせて配合しても良い。
【0079】
極圧剤としては、亜リン酸、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類、リン酸、リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類、リン酸トリエステル類及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のリン系極圧剤;硫化油脂類、硫化オレフィン類、(ジヒドロカルビル)ポリスルフィド類、ジチオカーバメート類、チアジアゾール類、及びベンゾチアゾール類から選ばれる少なくとも1種の硫黄系極圧剤;チオ亜リン酸、チオ亜リン酸モノエステル類、チオ亜リン酸ジエステル類、チオ亜リン酸トリエステル類、ジチオ亜リン酸、ジチオ亜リン酸モノエステル類、ジチオ亜リン酸ジエステル類、ジチオ亜リン酸トリエステル類、トリチオ亜リン酸、トリチオ亜リン酸モノエステル類、トリチオ亜リン酸ジエステル類、トリチオ亜リン酸トリエステル類、チオリン酸、チオリン酸モノエステル類、チオリン酸ジエステル類、チオリン酸トリエステル類、ジチオリン酸、ジチオリン酸モノエステル類、ジチオリン酸ジエステル類、ジチオリン酸トリエステル類、トリチオリン酸、トリチオリン酸モノエステル類、トリチオリン酸ジエステル類、トリチオリン酸トリエステル類、及びこれらの塩又は誘導体から選ばれる少なくとも1種のリン−硫黄系極圧剤を挙げることができる。
【0080】
本発明においては、上記リン系極圧剤、硫黄系極圧剤及びリン−硫黄系極圧剤の中から選ばれる1種又は2種以上を本発明の潤滑油組成物に配合することができ、エンジン、変速機等のギヤ、特に手動変速機のギヤのピッチングや摩耗等に対する耐久性を格段に向上させることができる点で、リン系極圧剤及び/または硫黄系極圧剤を使用することが好ましく、リン系極圧剤及び硫黄系極圧剤を併用することが特に好ましい。ここで、リン系極圧剤としては、亜リン酸エステル類が好ましく、硫黄系極圧剤としては、通常2〜60質量%、好ましくは5〜50質量%の硫黄を含有する硫黄系極圧剤が好ましく、硫化油脂類、ポリスルフィド類がさらに好ましい。
【0081】
本発明の潤滑油組成物において、これら極圧剤を含有させる場合、その含有量は特に制限はないが、通常リン量として0.005〜0.2質量%、好ましくは0.01〜0.05質量%及び/又は硫黄量として0.01〜2質量%、好ましくは0.1〜1質量%、特に好ましくは0.2〜0.5質量%である。リン量として0.005質量%未満又は硫黄量として0.01質量%未満の場合、ギヤの耐久性向上効果が小さく、リン量として0.2質量%又は硫黄量として2質量%を越えても含有量に見合うだけの効果が得にくく、酸化安定性が悪化する傾向にあるため、それぞれ好ましくない。
【0082】
粘度指数向上剤としては、(B)成分以外の粘度指数向上剤を使用することもでき、具体的には、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等から選ばれる1種又は2種以上を配合することもできる。これらを配合する場合、その配合量は、特に制限はないが、通常組成物全量基準で、0.01〜10質量%である。なお、これらを配合する場合、前記Vc及びVb/Vc比の規定に特に限定されないが、組成物の低粘度化による省燃費性向上の観点から、その配合量は、前記Vc及びVb/Vc比が前記規定となるようにすることが望ましい。
【0083】
また、低温流動性向上剤としては、10℃以下で析出するワックスの結晶構造を改質する性質を有する公知の低温流動性向上剤が挙げられ、例えば、不飽和エステルを含むモノマーの(共)重合体;ポリアルキレングリコールのカルボン酸エステル;ヒドロカルビルアミン、該アミンとカルボン酸との反応生成物;フェノール樹脂;及びこれらの混合物等が挙げられる。
低温流動性向上剤を添加する場合の添加量は、組成物全量基準で、好ましくは0.005〜0.5質量%であり、より好ましくは0.01〜0.2質量%、特に好ましくは0.02〜0.15質量%である。なお、低温流動性向上剤と称して市販されている商品は、ハンドリング性や油溶性向上のために、低温流動性に寄与する有効成分が適当な溶剤で希釈されていることがあるが、こうした市販品を本発明の潤滑油組成物に添加する場合にあたっては、上記の添加量は、希釈剤を含む添加量を意味する。
【0084】
摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、イミド化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩等が好ましく用いられる。
本発明においては、上記摩擦調整剤の中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、組成物全量基準で0.01〜5.0質量%、好ましくは0.03〜3.0質量%である。
【0085】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。
具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、メチレン−4,4−ビスフェノール(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛等のジアルキルジチオリン酸亜鉛類、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)あるいは(3−メチル−5−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)と1価又は多価アルコール、例えばメタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等とのエステル等が挙げられる。
これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を含有させることができるが、通常、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%であるのが望ましい。
【0086】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0087】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0088】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0089】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0090】
消泡剤としては、潤滑油用の消泡剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン等のシリコーン類が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で配合することができる。
【0091】
シール膨潤剤としては、潤滑油用のシール膨潤剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、エステル系、硫黄系、芳香族系等のシール膨潤剤が挙げられる。
【0092】
着色剤としては、通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、また任意の量を配合することができるが、通常その配合量は、組成物全量基準で0.001〜1.0質量%である。
【0093】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、流動点降下剤、金属不活性化剤では0.005〜2質量%、シール膨潤剤では0.01〜5質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%の範囲で通常選ばれる。
【0094】
また、本発明の潤滑油組成物は、上記構成とすることで蒸発損失が少なく、耐焼付性、極圧性、疲労寿命等の向上による歯車や軸受け等の十分な耐久性、低温粘度特性及び酸化安定性に優れた性能を付与することができるが、従来のエンジン用、自動変速機用、無段変速機用、手動変速機用潤滑油組成物に比べ攪拌抵抗低減による省燃費性能をより高めるために、組成物の100℃における動粘度を15mm/s以下、好ましくは9mm/s以下、より好ましくは7mm/s以下、より好ましくは6.5mm/s以下、特に好ましくは6mm/s以下とすることが望ましい。また、40℃における動粘度は、好ましくは150mm/s以下、より好ましくは50mm/s以下、さらに好ましくは35mm/s以下、特に好ましくは32mm/s以下とすることが望ましい。また、エンジン用、自動変速機用、無段変速機用、手動変速機用潤滑油組成物としての極圧性をより高めるために、組成物の100℃における動粘度を3mm/s以上、好ましくは4mm/s以上、より好ましくは4.5mm/s以上、さらに好ましくは5mm/s以上、特に好ましくは5.5mm/s以上とすることがより望ましく、組成物の40℃における動粘度を好ましくは20mm/s以上、より好ましくは25mm/s以上とすることが望ましい。
【0095】
本発明の潤滑油組成物は、従来品を低粘度化しても蒸発損失が少なく、耐焼付き性、極圧性、疲労寿命等の向上による歯車や軸受け等の十分な耐久性、低温粘度特性及び酸化安定性に優れ、潤滑油起因の攪拌抵抗を低減できるため、例えばエンジン用、自動車用変速機用、特に自動変速機用、無段変速機用又は手動変速機用あるいは自動車用終減速機用として使用することで自動車の燃費の向上に寄与することが可能となる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0097】
(実施例1〜4、比較例1〜5)
表1に示す組成に従い、本発明に係る潤滑油組成物(実施例1〜4)を調製した。これらの組成物につき、以下に示す性能評価試験を行い、その結果も表1に示した。
また、表1に示す組成に従い、比較のための潤滑油組成物(比較例1〜5)を調製し、これらの組成物についても同様の性能評価試験を行い、その結果も表1に示した。
【0098】
[1]低温粘度測定(BF粘度(−40℃)
ASTM D2983に準拠し潤滑油組成物の−40℃における低温粘度を測定した。本発明においては、150,000mPa・s以下であることが好ましく、50,000mPa・s以下であることがより好ましい。
[2]Falex Pin Vee Block 焼付き荷重(lb)
ASTM D3233に準拠し、焼付き荷重(B)法により耐焼付き性能を評価した。本発明においては、1,000lb以上であることが好ましい。
[3]酸化安定性試験
JIS K 2514の4.項の方法(ISOT)に準じて行った。酸化安定度は試験前後における潤滑油の全酸価の増加量で評価した。本発明においては、酸価増加が0.7mgOH/g以下であることが好ましい。
【0099】
表1に示したとおり、潤滑油組成物の100℃における動粘度(Vc)に対する(A)潤滑油基油の100℃における動粘度(Vb)の比(Vb/Vc)が0.60以上であり、(B)〜(E)成分を特定量含有する本発明にかかる潤滑油組成物(実施例1〜4)は、低粘度であっても低蒸発性、耐焼付性能、低温粘度特性及び酸化安定性に優れることがわかる。
一方、本発明における(B)成分を含有しない場合(比較例1)、(B)成分を含有していてもVb/Vcが0.60未満である場合(比較例2)、(C)成分、(D)成分及び(E)成分のいずれかを所定量含有しない場合(比較例3〜5)、本発明の効果のいずれかが劣ることがわかる。
【0100】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)潤滑油基油に(B)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤を組成物の100℃における動粘度(Vc)が3〜15mm/s、組成物の粘度指数が95〜200であり、Vcに対する(A)潤滑油基油の100℃における動粘度(Vb)の比(=Vb/Vc)が0.60以上となる量含有する潤滑油組成物であって、組成物全量基準で、(C)金属系清浄剤を金属量として0.03〜0.5質量%、(D)無灰分散剤を窒素量として0.005〜0.15質量%及び(E)ジチオリン酸亜鉛をリン量として0.02〜0.3質量%含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、(B1)重量平均分子量が5万〜30万のポリ(メタ)アクリレート系添加剤であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記(B1)成分のMw/Mnが1.5以上であることを特徴とする請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記(B1)成分が、実質的に下記一般式(1)で表される構造単位のみを含むポリ(メタ)アクリレートからなることを特徴とする請求項2又は3に記載の潤滑油組成物。
【化1】

(一般式(1)において、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数5〜20の炭化水素基又は−(R)a−Eで表される基を示し、ここでRは炭素数5〜20のアルキレン基、Eは窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示し、aは0又は1の整数を示す。)
【請求項5】
前記(B)成分が、(B2)少なくとも下記一般式(2)で表される構造単位を有するポリ(メタ)アクリレート系添加剤を含有してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
【化2】

(一般式(2)において、Rは水素又はメチル基、Rはメチル基を示す。)

【公開番号】特開2007−284635(P2007−284635A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116556(P2006−116556)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】