説明

火力発電システム

【課題】火力発電システムの発電効率を高め、設備を小型化し、操作性、保守、メンテナンス性の向上をはかること。
【解決手段】熱エネルギによって回転作動する発電蒸気タービン4(発電タービン)を備え、この発電蒸気タービン4によって発電機2を駆動する火力発電システムであって、発電蒸気タービン4から排出される排出ガス(水蒸気B)の熱エネルギによって回転する蒸気タービン18と、この蒸気タービン18によって駆動される水圧ポンプ14とを備え、この水圧ポンプ14から吐出される作動水Fによって水圧ポンプ14、給水ポンプ13、燃料調整弁23、蒸気加減弁17、蒸気加減弁17a(補機)を駆動する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギによって回転作動する蒸気タービンまたはガスタービンを備える火力発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の火力発電システムとして、特許文献1には、ボイラから送られる水蒸気によって回転する蒸気タービンを備え、この蒸気タービンによって発電機を駆動し、蒸気ガスによる汽力発電を行うものが開示されている。
【0003】
特許文献2には、蒸気タービンに供給される水蒸気の流量を制御する蒸気加減弁の開度を制御するものが開示されている。
【特許文献1】特開2008−248822号公報
【特許文献2】特開2000−204905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の火力発電システムにあっては、ボイラで高温に熱せられた水蒸気は、蒸気タービンを回転させた後も高温で多くの熱エネルギをもったまま復水器に戻り、冷却されていたため、水蒸気の熱エネルギを十分に回収できないという問題点があった。
【0005】
蒸気加減弁等の補機は、電動サーボ機構(電磁アクチュエータ)または油圧サーボ機構(油圧アクチュエータ)等によって駆動されていた。電動サーボ機構は高温、高湿度環境下では適していなく、漏電を防ぐ設備、防火、防暴の設備等を設ける必要があり、これらの設備が大型化するという問題点があった。油圧サーボ機構は油漏れによる環境汚染を防ぐ設備を設ける必要があり、この設備が大型化するという問題点があった。
【0006】
また、補機の駆動源に電気、油圧の両方が用いられると、操作、保守、メンテナンスが複雑になるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、火力発電システムの発電効率を高め、設備を小型化し、操作性、保守、メンテナンス性の向上をはかることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱エネルギによって回転作動する発電タービンを備え、この発電タービンによって発電機を駆動する火力発電システムであって、発電タービンから排出される水蒸気もしくは排出ガスを熱源として発生する水蒸気によって回転する蒸気タービンと、この蒸気タービンによって駆動される水圧ポンプとを備え、この水圧ポンプから吐出される高圧の作動水によって補機を駆動することを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、発電タービンから排出される水蒸気もしくは排出ガスの熱エネルギにより回転する蒸気タービンによって駆動される水圧ポンプから吐出される作動水で補機を駆動することで、補機は、余剰エネルギを回収して駆動され、発電効率を高められる。補機の駆動源を水圧に統一することが可能となり、これにより、油漏れや漏電の心配がなく、防火、防暴の設備を設ける必要がなく、設備を小型化し、操作性、保守、メンテナンス性の向上がはかられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、蒸気ガスによる汽力発電を行う火力発電システムの概略構成図である。この火力発電システムは、主要構成部として、ボイラ1、発電蒸気タービン4、発電機2、復水器3を備える。
【0012】
ボイラ1は、例えば石炭焚きや重油焚きの火炉を備える。この火炉で燃料を燃焼させ、その燃焼熱によって液体の水を加熱し、水蒸気Aを発生させる。
【0013】
図示しない燃料供給源から送られる燃料Jが燃料供給ライン11を通してボイラ1に供給される。燃料供給ライン11には燃料調整弁23が介装され、この燃料調整弁23によってボイラ1に供給される燃料の流量が調整される。
【0014】
ボイラ1で高温に熱せられた水蒸気Aは、水蒸気ライン7を通って発電蒸気タービン4に送られる。水蒸気ライン7に蒸気加減弁17が介装され、この蒸気加減弁17によって発電蒸気タービン4に送られる水蒸気Aの流量が調整される。
【0015】
発電タービンとして設けられる発電蒸気タービン4は、蒸気Aの熱エネルギを運動エネルギに変換し、回転作動する。
【0016】
発電蒸気タービン4は、発電機2を回転駆動する。発電機2はその回転によって電力を出力する。
【0017】
発電蒸気タービン4から排出される水蒸気Bは復水器3に送られる。復水器3は、発電蒸気タービン4から排出される水蒸気Bを冷却し液体の水に変換する。図示しない水源から供給される冷却水Dは、冷却水ライン5を通り、給水ポンプ13によって復水器3に送られる。復水器3にて冷却水ライン5を通る冷却水が、水蒸気の熱を吸収し、水蒸気を液体の水に変換する。
【0018】
復水器3にて液体の水に変換された復水Eは、給水ライン24を通り、水圧ポンプ14によってボイラ1に送られる。ボイラ1に戻された復水Eは、火炉の燃焼熱によって再び水蒸気Aに変換される。
【0019】
そして本発明の要旨とするところであるが、発電機2を駆動する発電蒸気タービン4から排出される水蒸気B(排出ガス)の熱エネルギによって回転する蒸気タービン18を設け、この蒸気タービン18によって水圧ポンプ14と給水ポンプ13とを駆動する構成とする。
【0020】
発電蒸気タービン4から排出される水蒸気Bは、蒸気排出ライン16aを通って蒸気タービン18に送られる。蒸気排出ライン16aに蒸気加減弁17aが介装され、この蒸気加減弁17aによって蒸気タービン18に送られる水蒸気Bの流量が調整される。
【0021】
蒸気タービン18は、水蒸気Bの熱エネルギを運動エネルギに変換し、水圧ポンプ14と給水ポンプ13とを回転駆動する。
【0022】
蒸気タービン18から排出される排出蒸気Hは、蒸気排出ライン16を通って復水器3に送られる。
【0023】
蒸気タービン18の出力を水圧ポンプ14と給水ポンプ13に伝達する流体継ぎ手15が設けられる。流体継ぎ手15は、作動流体として水またはオイル等の作動液が封入され、この作動流体を媒体として蒸気タービン18の回転が減速して水圧ポンプ14と給水ポンプ13に伝達される。
【0024】
水圧ポンプ14から吐出される作動水Fは、作動水供給ライン22を通って蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aと燃料調整弁23に導かれる。
【0025】
蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aと燃料調整弁23は、水圧サーボ機構(水圧アクチュエータ、水圧サーボ弁等)によりサーボ制御される。この水圧サーボ機構は、弁体を開閉駆動する水圧シリンダと、この水圧シリンダの作動を制御するための水圧電磁比例弁または水圧サーボ弁とを備える。
【0026】
蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aと燃料調整弁23とを作動させた後にこれらから排出される排出水Gは、排水ライン19を通って復水器3に導かれる。
【0027】
以上のように、火力発電システムは構成され、次に作用を説明する。
【0028】
ボイラ1で高温に熱せられた水蒸気Aは、水蒸気ライン7を通って発電蒸気タービン4に送られる。発電蒸気タービン4は、水蒸気Aの熱エネルギを運動エネルギに変換し、発電機2を回転駆動し、発電機2による発電が行われる。発電蒸気タービン4から排出される水蒸気Bの一部は、復水器3にて液体の水に変換される。復水器3にて水蒸気から液体の水に変換された復水Eは、給水ライン24を通り、水圧ポンプ14によってボイラ1に送られる。ボイラ1に戻された復水Eは、火炉の燃焼熱によって再び水蒸気Aに変換され、水蒸気ライン7を通って発電蒸気タービン4に送られる。このサイクルによって蒸気ガスによって発電蒸気タービン4が回転する汽力発電が行われる。
【0029】
発電蒸気タービン4から排出される水蒸気Bの一部は、蒸気排出ライン16aを通って蒸気タービン18に送られる。蒸気タービン18は、水蒸気Bの熱エネルギを運動エネルギに変換し、水圧ポンプ14と給水ポンプ13を回転駆動する。こうして、蒸気タービン18が廃棄される熱エネルギを回収して水圧ポンプ14と給水ポンプ13を駆動することにより、水圧ポンプ14と給水ポンプ13を駆動するのに必要な電力を極めて低く抑えることができ、結果として発電効率を高められる。
【0030】
燃料調整弁23と蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aは、水圧ポンプ14から吐出される復水Eの一部が作動水Fとして導かれ、作動水Fの水圧によって作動する。これにより、燃料調整弁23と蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aを駆動するのに必要な電力を極めて低く抑えることができ、結果として発電効率を高められる。
【0031】
水圧ポンプ14、給水ポンプ13、燃料調整弁23、蒸気加減弁17、蒸気加減弁17aが、火力発電システムの作動を制御する補機として設けられる。これらの補機は、全て、水圧によって作動するため、油圧サーボ機構(油圧アクチュエータ)、電動サーボ機構(電動アクチュエータ)等を設ける必要がない。
【0032】
油圧サーボ機構に関連する油圧ユニット等が設けられないため、油漏れによる環境汚染の心配がなく、防火、防暴の設備を設ける必要がない。
【0033】
電動サーボ機構が設けられないため、漏電の心配がなく、引火防止等の設備を設ける必要がない。
【0034】
また、補機の駆動源が水圧に統一されることにより、安全性、操作性、保守、メンテナンス性の向上がはかられ、維持コストを低減できる。
【0035】
蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aと燃料調整弁23とを作動させた後にこれらから排出される排出水Gは、排水ライン19を通って復水器3に流入し、復水器3から復水Eとして給水ライン24を通り、水圧ポンプ14によってボイラ1に供給される。ボイラ1に戻された復水Eは、火炉の燃焼熱によって再び水蒸気Aに変換される。
【0036】
これにより、蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aと燃料調整弁23とから排出される排出水Gを冷却する設備が不要になる。
【0037】
本実施の形態では、熱エネルギによって回転作動する発電タービン(発電蒸気タービン4)を備え、この発電タービン(発電蒸気タービン4)によって発電機2を駆動する火力発電システムであって、発電タービン(発電蒸気タービン4)から排出される水蒸気Bによって回転する蒸気タービン18と、この蒸気タービン18によって駆動される水圧ポンプ14とを備え、この水圧ポンプ14から吐出される作動水Fによって補機(燃料調整弁23、蒸気加減弁17、蒸気加減弁17a)を駆動する構成とした。
【0038】
上記構成に基づき、水蒸気Bの熱エネルギにより回転する蒸気タービン18によって駆動される水圧ポンプ14から吐出される作動水Fによって補機を駆動することで、補機は余剰エネルギを回収して駆動されることになるので、結果として発電効率を高められる。
【0039】
補機の駆動源が水圧に統一されることにより、油漏れや漏電の心配がなく、防火、防暴の設備を設ける必要がなく、操作性、保守、メンテナンス性の向上がはかられる。
【0040】
本実施の形態では、燃料Jを燃焼させ水蒸気Aを発生させるボイラ1を備え、発電タービンとしてボイラ1から送られる水蒸気Aによって回転する発電蒸気タービン4を備え、この発電蒸気タービン4から排出される水蒸気Bを冷却し液体の復水Eに変換する復水器3を備え、蒸気ガスによる汽力発電を行う火力発電システムであって、蒸気タービン18によって駆動される水圧ポンプ14が復水器3の復水Eをボイラ1に送るとともに、復水Eの一部を作動水Fとして補機へ送る構成とした。
【0041】
上記構成に基づき、蒸気タービン18が発電蒸気タービン4から排出される水蒸気Bによって回転し、水圧ポンプ14を駆動するので、ポンプを駆動するのに必要な電力を極めて低く抑えることができるので、発電効率を高められる。
【0042】
本実施の形態では、補機として、ボイラ1に供給される燃料Jの流量を調整する燃料調整弁23と、発電蒸気タービン4に供給される水蒸気Aの流量を調整する蒸気加減弁17と、蒸気タービン18に供給される水蒸気Bの流量を調整する蒸気加減弁17aとを備え、燃料調整弁23と蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aに水圧ポンプ14から吐出される復水Eの一部が作動水Fとして導かれる構成とした。
【0043】
上記構成に基づき、燃料調整弁23と蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aは、水圧ポンプ14から吐出される復水Eの一部が作動水Fとして導かれ、作動水Fの水圧によって作動する。これにより、燃料調整弁23と蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aを電動サーボ機構等によって駆動する必要がなくなり、燃料調整弁23と蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aを余剰エネルギを回収して駆動するので、発電効率を高められる。
【0044】
本実施の形態では、蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aと燃料調整弁23から排出される排出水Gを復水器3に流入させる構成とした。
【0045】
上記構成に基づき、排出水Gは復水器3に流入し、復水器3から復水Eとしてボイラ1に供給される。これにより、蒸気加減弁17と蒸気加減弁17aと燃料調整弁23とから排出される排出水Gを冷却する設備が不要になる。
【0046】
次に図2に示す他の実施の形態を説明する。これは基本的には図1の実施の形態と同じ構成を有し、相違する部分のみ説明する。なお、前記実施の形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0047】
この火力発電システムは、水蒸気Bを再加熱する排熱回収ボイラ35と、ボイラ1の排熱Iを回収して排熱回収ボイラ35に導く排熱回収ライン38を備える。
【0048】
発電蒸気タービン4から排出される水蒸気Bは、蒸気排出ライン16を通って排熱回収ボイラ35に送られ、排熱回収ボイラ35にて再加熱された後、蒸気排出ライン16aを通って蒸気タービン18に送られる。
【0049】
本実施の形態では、発電蒸気タービン4から蒸気タービン18に送られる水蒸気Bを再加熱する排熱回収ボイラ35を備え、この排熱回収ボイラ35にボイラ1の排熱Iを導く排熱回収ライン38を備える構成とした。
【0050】
上記構成に基づき、ボイラ1の排熱Iを回収して水蒸気Bを再加熱するため、水蒸気Bの熱エネルギが高めて蒸気タービン18の出力を高められる。
【0051】
次に図3に示す他の実施の形態を説明する。図3は、ガスタービン発電を行う火力発電システムの概略構成図である。なお、前記実施の形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0052】
この火力発電システムは、主要構成部として、燃焼室30、空気圧縮機33、発電ガスタービン34を備える。
【0053】
図示しない燃料供給源から送られる燃料Jが燃料供給ライン11を通して燃焼室30に供給される。燃料供給ライン11には燃料調整弁23が介装され、この燃料調整弁23によって燃焼室30に供給される燃料の流量が調整される。
【0054】
燃焼室30は、空気圧縮機33から送られる加圧空気Lと燃料Jの混合ガスを燃焼させ、これによって発生する燃焼ガスKによって発電ガスタービン34を回転させる。
【0055】
燃焼室30と発電ガスタービン34の間に入口調整弁31が介装され、この入口調整弁31によって燃焼室30から発電ガスタービン34に送られる燃焼ガスKの流量が調整される。
【0056】
発電タービンとして設けられる発電ガスタービン34は、燃焼ガスKの熱エネルギを運動エネルギに変換し、回転作動する。
【0057】
発電ガスタービン34は、発電機2を回転駆動する。発電機2はその回転によって電力を出力する。
【0058】
発電ガスタービン34と空気圧縮機33は同軸上に設けられる。空気圧縮機33から吐出される加圧空気Lの流量は空気調整弁32によって調整される。
【0059】
空気圧縮機33は、その回転によって吸気ラインから空気を吸込み、加圧空気Lを吐出する。
【0060】
この火力発電システムは、発電ガスタービン34から排出される排出ガスMが導かれる排熱回収ボイラ35を備える。排熱回収ボイラ35は、発電ガスタービン34から排出される排出ガスMの熱によって液体の水を加熱し、水蒸気Bを発生させる。
【0061】
排熱回収ボイラ35にて発生した水蒸気Bが水蒸気ライン7を通って蒸気タービン18に送られる。水蒸気ライン7に蒸気加減弁17が介装され、この蒸気加減弁17によって蒸気タービン18に送られる水蒸気Bの流量が調整される。
【0062】
蒸気タービン18は、水蒸気Bの熱エネルギを運動エネルギに変換し、水圧ポンプ14と給水ポンプ13とを回転駆動する。
【0063】
蒸気タービン18の出力を水圧ポンプ14と給水ポンプ13に伝達する流体継ぎ手15が設けられる。流体継ぎ手15は、作動流体として水またはオイル等の作動液が封入され、この作動流体を媒体として蒸気タービン18の回転が減速して水圧ポンプ14と給水ポンプ13に伝達される。
【0064】
蒸気タービン18から排出される水蒸気Bは、復水器3に送られる。復水器3は、蒸気タービン18から排出される水蒸気Bを冷却し液体の水に変換する。
【0065】
水圧ポンプ14から吐出される作動水Fは、作動水供給ライン22を通って空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17と燃料調整弁23に導かれる。
【0066】
空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17と燃料調整弁23は、サーボ制御により行われ、図示しない弁体を開閉駆動する水圧シリンダと、この水圧シリンダの作動を制御する水圧電磁比例弁または水圧サーボ弁とを備える。
【0067】
空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17と燃料調整弁23とを作動させた後にこれらから排出される排出水Gは、排水ライン37を通って復水器3に導かれる。
【0068】
以上のように、火力発電システムは構成され、次に作用を説明する。
【0069】
燃焼室30にて発生する燃焼ガスKによって発電ガスタービン34を回転させる。発電ガスタービン34は燃焼ガスKの熱エネルギを運動エネルギに変換し、空気圧縮機33と発電機2を回転駆動し、発電機2による発電が行われる。
【0070】
排熱回収ボイラ35は、発電ガスタービン34から排出される排出ガスMの熱によって液体の水を加熱し、水蒸気Bを発生させる。この水蒸気Bは、水蒸気ライン7を通って蒸気タービン18に送られる。蒸気タービン18は、水蒸気Bの熱エネルギを運動エネルギに変換し、水圧ポンプ14と給水ポンプ13を回転駆動する。こうして、蒸気タービン18が廃棄される熱エネルギを回収して水圧ポンプ14と給水ポンプ13を駆動することにより、水圧ポンプ14と給水ポンプ13を駆動するのに必要な電力を極めて低く抑えることができ、結果として発電効率を高められる。
【0071】
空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17と燃料調整弁23は、水圧ポンプ14から吐出される復水Eの一部が作動水Fとして導かれ、作動水Fの水圧によって作動する。これにより、空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17と燃料調整弁23を電動サーボ機構(電磁アクチュエータ)によって駆動する必要がなくなり、これらを駆動するのに発電電力が消費されることがなく、発電効率を高められる。
【0072】
火力発電システムの作動を制御する補機として設けられる、空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17と燃料調整弁23が、全て水圧によって作動するため、油圧サーボ機構や電動サーボ機構を設ける必要がない。
【0073】
油圧サーボ機構に関連する油圧ユニット等が設けられないため、油漏れによる環境汚染の心配がなく、防火、防暴の設備を設ける必要がない。
【0074】
電動サーボ機構が設けられないため、漏電の心配がなく、引火防止等の設備を設ける必要がない。
【0075】
また、補機の駆動源が水圧に統一されることにより、操作性、保守、メンテナンス性の向上がはかられ、維持コストを低減できる。
【0076】
空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17と燃料調整弁23とを作動させた後にこれらから排出される排出水Gは、排水ライン37を通って復水器3に流入し、復水器3から復水Eとして給水ライン24を通り、水圧ポンプ14によって排熱回収ボイラ35に供給される。排熱回収ボイラ35に戻された復水Eは、発電ガスタービン34の排出ガスMの熱によって再び水蒸気Bに変換される。
【0077】
これにより、空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17と燃料調整弁23とから排出される排出水Gを冷却する設備が不要になる。
【0078】
本実施の形態では、加圧空気Lを吐出する空気圧縮機33と、この空気圧縮機33から送られる加圧空気Lと燃料Jの混合ガスを燃焼させる燃焼室30とを備え、発電タービンとして燃焼室30に発生する燃焼ガスKによって回転する発電ガスタービン34を備え、ガスタービン発電を行う火力発電システムであって、発電ガスタービン34から排出される排出ガスMの熱によって水蒸気Bを発生する排熱回収ボイラ35を備え、排熱回収ボイラ35にて発生した水蒸気B(排出ガス)の熱エネルギによって蒸気タービン18を回転させる構成とした。
【0079】
上記構成に基づき、蒸気タービン18が発電ガスタービン34から排出される排出ガスMの熱エネルギによって回転し、水圧ポンプ14を駆動するので、ポンプを駆動するのに必要な電力を極めて低く抑えることができるので、発電効率を高められる。
【0080】
次に図4に示す他の実施の形態を説明する。図4は、ガスタービン発電と汽力発電を併せたコンバインドサイクル発電を行う火力発電システムの概略構成図である。なお、前記実施の形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0081】
この火力発電システムは、主要構成部として、燃焼室30、空気圧縮機33、発電ガスタービン34、ボイラ1、発電蒸気タービン4、発電機2、復水器3を備える。
【0082】
図示しない燃料供給源から送られる燃料Jが燃料供給ライン11を通して燃焼室30に供給される。燃料供給ライン11には燃料調整弁23が介装され、この燃料調整弁23によって燃焼室30に供給される燃料の流量が調整される。
【0083】
燃焼室30は、空気圧縮機33から送られる加圧空気Lと燃料Jの混合ガスを燃焼させ、これによって発生する燃焼ガスKによって発電ガスタービン34を回転させる。
【0084】
燃焼室30と発電ガスタービン34の間に入口調整弁31が介装され、この入口調整弁31によって燃焼室30から発電ガスタービン34に送られる燃焼ガスKの流量が調整される。
【0085】
発電タービンとして設けられる発電ガスタービン34は、燃焼ガスKの熱エネルギを運動エネルギに変換し、回転作動する。
【0086】
発電ガスタービン34は、発電機2を回転駆動する。発電機2はその回転によって電力を出力する。
【0087】
発電ガスタービン34と空気圧縮機33は同軸上に設けられる。空気圧縮機33から吐出される加圧空気Lの流量は空気調整弁32によって調整される。
【0088】
空気圧縮機33は、その回転によって吸気ラインから空気を吸込み、加圧空気Lを吐出する。
【0089】
この火力発電システムは、発電ガスタービン34から排出される排出ガスMが導かれる排熱回収ボイラ35を備える。排熱回収ボイラ35は、発電ガスタービン34から排出される排出ガスMの熱によって液体の水を加熱し、水蒸気Bを発生させる。
【0090】
排熱回収ボイラ35にて発生した水蒸気Bが水蒸気ライン7を通って発電蒸気タービン4に送られる。水蒸気ライン7に蒸気加減弁17aが介装され、この蒸気加減弁17aによって発電蒸気タービン4に送られる水蒸気Bの流量が調整される。
【0091】
発電タービンとして設けられる発電蒸気タービン4は、蒸気Aの熱エネルギを運動エネルギに変換し、発電機2を回転駆動する。
【0092】
発電蒸気タービン4から排出される水蒸気Nは、蒸気加減弁17を介して蒸気タービン18に送られ、この蒸気加減弁17によって発電蒸気タービン4に送られる水蒸気Nの流量が調整される。
【0093】
蒸気タービン18は、水蒸気Nの熱エネルギを運動エネルギに変換し、水圧ポンプ14と給水ポンプ13とを回転駆動する。
【0094】
蒸気タービン18の出力を水圧ポンプ14と給水ポンプ13に伝達する流体継ぎ手15が設けられる。流体継ぎ手15は、作動流体として水またはオイル等の作動液が封入され、この作動流体を媒体として蒸気タービン18の回転が減速して水圧ポンプ14と給水ポンプ13に伝達される。
【0095】
蒸気タービン18から排出される水蒸気Nは復水器3に送られる。復水器3は、蒸気タービン18から排出される水蒸気Nを冷却し液体の水に変換する。
【0096】
水圧ポンプ14から吐出される作動水Fは、作動水供給ライン22を通って空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17aと蒸気加減弁17と燃料調整弁23に導かれる。
【0097】
蒸気加減弁17aと蒸気加減弁17と燃料調整弁23は、サーボ制御で行われ、図示しない弁体を開閉駆動する水圧シリンダと、この水圧シリンダの作動を制御する水圧電磁比例弁または水圧サーボ弁とを備える。
【0098】
空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17aと蒸気加減弁17と燃料調整弁23とを作動させた後にこれらから排出される排出水Gは、排水ライン37を通って復水器3に導かれる。
【0099】
以上のように、火力発電システムは構成され、次に作用を説明する。
【0100】
燃焼室30にて発生する燃焼ガスKによって発電ガスタービン34を回転させる。発電ガスタービン34は燃焼ガスKの熱エネルギを運動エネルギに変換し、空気圧縮機33と発電機2を回転駆動し、発電機2による発電が行われる。
【0101】
排熱回収ボイラ35は、発電ガスタービン34から排出される排出ガスMの熱によって液体の水を加熱し、水蒸気Bを発生させる。この水蒸気Bは、水蒸気ライン7を通って蒸気タービン18に送られる。蒸気タービン18は、水蒸気Bの熱エネルギを運動エネルギに変換し、水圧ポンプ14と給水ポンプ13を回転駆動する。こうして、蒸気タービン18が廃棄される熱エネルギを回収して水圧ポンプ14と給水ポンプ13を駆動することにより、水圧ポンプ14と給水ポンプ13を駆動するのに必要な電力を極めて低く抑えることができ、結果として発電効率を高められる。
【0102】
空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17aと蒸気加減弁17と燃料調整弁23は、水圧ポンプ14から吐出される復水Eの一部が作動水Fとして導かれ、作動水Fの水圧によって作動する。これにより、空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17aと蒸気加減弁17と燃料調整弁23駆動するのに必要な電力を極めて低く抑えることができ、結果として発電効率を高められる。
【0103】
火力発電システムの作動を制御する補機として設けられる、空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17aと蒸気加減弁17と燃料調整弁23が、全て水圧によって作動するため、油圧サーボ機構や電動サーボ機構を設ける必要がない。
【0104】
油圧サーボ機構に関連する油圧ユニット等が設けられないため、油漏れによる環境汚染の心配がなく、防火、防暴の設備を設ける必要がない。
【0105】
電動サーボ機構が設けられないため、漏電の心配がなく、引火防止等の設備を設ける必要がない。
【0106】
また、補機の駆動源が水圧に統一されることにより、操作性、保守、メンテナンス性の向上がはかられ、維持コストを低減できる。
【0107】
空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17aと蒸気加減弁17と燃料調整弁23とを作動させた後にこれらから排出される排出水Gは、排水ライン37を通って復水器3に流入し、復水器3から復水Eとして給水ライン24を通り、水圧ポンプ14によって排熱回収ボイラ35に供給される。排熱回収ボイラ35に戻された復水Eは、発電ガスタービン34の排出ガスMの熱によって再び水蒸気Bに変換される。
【0108】
これにより、空気調整弁32と入口調整弁31と蒸気加減弁17aと蒸気加減弁17と燃料調整弁23とから排出される排出水Gを冷却する設備が不要になる。
【0109】
本実施の形態では、加圧空気Lを吐出する空気圧縮機33と、この空気圧縮機33から送られる加圧空気Lと燃料Jの混合ガスを燃焼させる燃焼室30とを備え、発電タービンとして燃焼室30に発生する燃焼ガスKによって回転する発電ガスタービン34を備え、発電ガスタービン34から排出される排出ガスMの熱によって水蒸気Bを発生する排熱回収ボイラ35を備え、発電タービンとして排熱回収ボイラ35にて発生した水蒸気Bによって回転する発電蒸気タービン4を備え、コンバインドサイクル発電を行う火力発電システムであって、発電蒸気タービン4から排出される水蒸気N(排出ガス)の熱エネルギによって蒸気タービン18を回転させる構成とした。
【0110】
上記構成に基づき、蒸気タービン18が発電蒸気タービン4から排出される水蒸気N(排出ガス)の熱エネルギによって回転し、水圧ポンプ14を駆動するので、ポンプを駆動するのに必要な電力を極めて低く抑えることができるので、発電効率を高められる。
【0111】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の実施の形態を示す火力発電システムの概略構成図。
【図2】他の実施の形態を示す火力発電システムの概略構成図。
【図3】さらに他の実施の形態を示す火力発電システムの概略構成図。
【図4】さらに他の実施の形態を示す火力発電システムの概略構成図。
【符号の説明】
【0113】
1 ボイラ
2 発電機
3 復水器
4 発電蒸気タービン (発電タービン)
5 冷却水ライン
7 水蒸気ライン
11 燃料供給ライン
13 給水ポンプ
14 水圧ポンプ
15 流体継ぎ手
16 蒸気排出ライン
16a 蒸気排出ライン
17 蒸気加減弁
17a 蒸気加減弁
18 蒸気タービン
19 排水ライン
22 作動水供給ライン
23 燃料調整弁
24 給水ライン
30 燃焼室
31 入口調整弁
32 空気調整弁
33 空気圧縮機
34 発電ガスタービン (発電タービン)
35 排熱回収ボイラ
37 排水ライン
38 排熱回収ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギによって回転作動する発電タービンを備え、
この発電タービンによって発電機を駆動する火力発電システムであって、
前記発電タービンから排出される水蒸気もしくは排出ガスを熱源として発生する水蒸気によって回転する蒸気タービンと、
この蒸気タービンによって駆動される水圧ポンプとを備え、
この水圧ポンプから吐出される作動水によって補機を駆動する構成としたことを特徴とする火力発電システム。
【請求項2】
燃料を燃焼させ水蒸気を発生させるボイラを備え、
前記発電タービンとして前記ボイラから送られる水蒸気によって回転する発電蒸気タービンを備え、
この発電蒸気タービンから排出される水蒸気を冷却し液体の復水に変換する復水器を備え、
前記蒸気タービンによって駆動される前記水圧ポンプが前記復水器の復水を前記ボイラに送ることを特徴とする請求項1に記載の火力発電システム。
【請求項3】
前記発電蒸気タービンから蒸気タービンに送られる水蒸気を再加熱する排熱回収ボイラを備え、
この排熱回収ボイラに前記ボイラの排熱を導く排熱回収ラインを備えたことを特徴とする請求項2に記載の火力発電システム。
【請求項4】
加圧空気を吐出する空気圧縮機と、
この空気圧縮機から送られる加圧空気と燃料の混合ガスを燃焼させる燃焼室とを備え、
前記発電タービンとして前記燃焼室に発生する燃焼ガスによって回転する発電ガスタービンを備え、
この発電ガスタービンから排出される排出ガスの熱によって水蒸気を発生する排熱回収ボイラを備え、
この排熱回収ボイラにて発生した水蒸気によって前記蒸気タービンを回転させることを特徴とする請求項1に記載の火力発電システム。
【請求項5】
加圧空気を吐出する空気圧縮機と、
この空気圧縮機から送られる加圧空気と燃料の混合ガスを燃焼させる燃焼室とを備え、
前記発電タービンとして前記燃焼室に発生する燃焼ガスによって回転する発電ガスタービンを備え、
この発電ガスタービンから排出される排出ガスの熱によって水蒸気を発生する排熱回収ボイラを備え、
前記発電タービンとして排熱回収ボイラにて発生した水蒸気によって回転する発電蒸気タービンを備え、
前記発電蒸気タービンから排出される水蒸気によって前記蒸気タービンを回転させることを特徴とする請求項1に記載の火力発電システム。
【請求項6】
前記補機として、少なくとも蒸気タービンに供給される水蒸気の流量を調整する蒸気加減弁を備え、この蒸気加減弁に水圧ポンプから吐出される復水の一部が作動水として導かれることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の火力発電システム。
【請求項7】
前記蒸気加減弁と燃料調整弁から排出される排出水を復水器に流入させることを特徴とする請求項6に記載の火力発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−150960(P2010−150960A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327836(P2008−327836)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】