説明

火薬式リニアインフレータ

細長いアウターハウジング(12)を含むエアバッグインフレータ(10)であって、該アウターハウジングは、内部および、それに沿って形成され、アウターハウジング内部とアウターハウジング(12)外部との間の流体連通を可能にする、1つまたは2つ以上のオリフィス(22)を有する。アウターハウジングオリフィス(複数を含む)(22)は、アウターハウジング内部からインフレータの第1側面(F)へと開口している。細長いインナーハウジング(14)は、アウターハウジング内部に配置される。インナーハウジング(14)は、内部および、それに沿って形成され、インナーハウジング内部とインナーハウジング(14)外部との間の流体連通を可能にする、1つまたは2つ以上のオリフィス(20)を有する。インナーハウジングオリフィス(複数を含む)(20)は、インナーハウジング内部からインフレータの第2側面(S)へと開口している。ある量のガス発生剤組成物(16)は、インナーハウジング(14)内部の一部に沿って伸びる。ガス発生剤(16)は、実質的に「C」形状の断面と、ガス発生剤(16)の長さに沿って伸びるスロット(24)を有する。ガス発生剤スロット(24)は、インナーハウジングオリフィス(複数を含む)(20)に向いて配置される。フィルタ(15)は、インナーハウジングオリフィス(複数を含む)(20)とアウターハウジングオリフィス(複数を含む)(22)の中間に配置されて、ガス発生剤組成物(16)の燃焼により生成される燃焼生成物をフィルタリングする。点火装置(40)は、ガス発生剤組成物(16)に動作可能に連結され、これによってインフレータ(10)の作動時に、点火装置(40)とガス発生剤組成物(16)の間の流体連通を可能にする。ガス発生剤(16)のスロット状の「C」形状の断面は、スロット(24)なしで達成できるより大きい、ガス発生剤の暴露表面積を提供する。これにより、インフレータの作動時に、ガス発生剤組成物(16)の点火および燃焼を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年11月13日付仮出願第60/519,880号および2004年11月12日付出願された米国特許出願である代理人事件番号(attorney docket number)第5702-01058号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は車両エアバッグ用インフレータに関し、より具体的には、側面衝突用エアバッグまたはヘッドカーテンエアバッグに用いるための、インフレータの長さに沿って膨張ガスを排出するリニア(直線状)インフレータに関する。
典型的な側面衝突用またはヘッドカーテンエアバッグモジュールは、ガスをバッグへ供給するために配管へ排出する、1つまたは2つ以上の標準エアバッグインフレータを用いる。配管を通るガス流に付随する圧力損失が存在し、システム効率の低下につながる。さらに、デバイスのインフレータ部分を格納するための余分なスペースが、車両内に必要となる。
【発明の開示】
【0003】
発明の概要
本発明によれば、内部および、アウターハウジング内部とアウターハウジング外部との間の流体連通を可能にする1つまたは2つ以上のオリフィスを有する、細長いアウターハウジングを含む、エアバッグインフレータが提供される。このアウターハウジングオリフィス(複数を含む)は、アウターハウジング内部からインフレータの第1側面へと開口している。細長いインナーハウジングは、アウターハウジング内部に配置される。インナーハウジングは、内部および、インナーハウジング内部とインナーハウジング外部との間の流体連通を可能にする、1つまたは2つ以上のオリフィスを有する。インナーハウジングオリフィス(複数を含む)は、インナーハウジング内部からインフレータの第2側面へと開口している。ある量のガス発生剤組成物は、インナーハウジング内部の一部に沿って伸びている。このガス発生剤は、実質的に「C」形状の断面とガス発生剤の長さに沿って伸びるスロットを有する。ガス発生剤スロットは、インナーハウジングオリフィス(複数を含む)に面するように配置される。フィルタは、インナーハウジングオリフィス(複数を含む)とアウターハウジングオリフィス(複数を含む)の中間に配置されて、ガス発生剤組成物の燃焼により生成される燃焼生成物をフィルタリングする。インフレータの作動時に、点火装置とガス発生剤組成物の間の流体連通が可能となるように、点火装置はガス発生剤組成物に動作可能に連結される。
【0004】
衝突事象時に、衝突センサからの信号が点火装置に伝達され、これが点火装置を起動して、ガス発生剤に点火する。ガス発生剤の燃焼により生成される膨張ガスは、インナーハウジングオリフィス(複数を含む)から出て、インナーハウジングの両側の周りとフィルタを通って流れる。膨張ガスは次に、アウターハウジングオリフィス(複数を含む)を通って排出されて、エアバッグを膨張させる。
【0005】
ガス発生剤のスロット状の「C」形状断面は、スロットなしで達成されるより大きい、ガス発生剤暴露表面積を提供する。これによって、インフレータの作動時に、ガス発生剤組成物の点火および燃焼を強化し、一方でまた、ガス発生剤の比較的大きな表面積と、インナーハウジングオリフィス(複数を含む)との間の流体連通を提供する。本インフレータはまた内蔵式であり、配管に連結された別の従来のインフレータの必要なしに、その長さに沿って均一にガスを発生し排出する。これは、インフレータを囲む全体寸法を減少させる。本発明のインフレータはまた、多くの既知のデザインのものよりコストが低く、製造が簡単である。
【0006】
詳細な説明
図1および図2は、本発明によるインフレータ10の断面図を示す。インフレータ10は、細長いアウターハウジング12および、アウターハウジング12の内側に配置された細長いインナーハウジング14を含み、これによってインナーハウジング14とアウターハウジング12の間に空洞30を形成する。インフレータ10の全部品は、当分野に既知の材料および方法により製造される。
【0007】
アウターハウジング12は、第1端70、第2端71、および長手方向軸13を含む。アウターハウジング12は、それに沿って形成され、アウターハウジングの内部と外部の間の流体連通を可能とする、1つまたは2つ以上のオリフィス22を有する。オリフィス(複数を含む)22は、ガス発生剤組成物の燃焼により生成されるガスを、関連するエアバッグ(示されず)に移動させるように適合される。図1および図2に示す態様において、オリフィス(複数を含む)22はアウターハウジング12の長さ方向に沿って配置される。オリフィス(複数を含む)22はまた、アウターハウジング内部からインフレータの第1側面(「F」と表示)に向かって開いている。オリフィス(複数を含む)22は、アウターハウジング12に沿って伸びる1つまたは2つ以上の長手方向のスリットとして形成されてもよく、または、オリフィス(複数を含む)22は、アウターハウジング12に沿って間隔をあけて配置される穴として形成されてもよい。アウターハウジング12は、例えば押出し成形またはロール成形などの、種々の既知の方法の任意の1つを用いて製造することができる。アウターハウジング12は好ましくは、金属または合金から、例えば、スチールまたはアルミニウムから製造される。代替的に、アウターハウジング12は、ポリマーまたは他の好適な材料から製造してもよい。
【0008】
インナーハウジング14は、第1端74、第1端74の反対側の第2端75、および長手方向軸76を含む。インナーハウジング14はまた、内部および、それに沿って形成された1つまたは2つ以上のオリフィス20を有する。オリフィス(複数を含む)20は、ガス発生剤組成物の燃焼により生成されるガスを、空洞30に移動させるように適合される。1つの態様において、オリフィス(複数を含む)20はインナーハウジング14の長さ方向に沿って配置される。オリフィス(複数を含む)20はまた、インナーハウジング内部からインフレータの第2側面(「S」と表示)に向かって開いている。オリフィス(複数を含む)20は、インナーハウジング14に沿って伸びる1つまたは2つ以上の長手方向のスリットとして形成されてもよく、または、オリフィス(複数を含む)は、インナーハウジング14に沿って間隔をあけて配置される穴として形成されてもよい。インナーハウジング14は、例えば押出し成形またはロール成形などの、種々の既知の方法の任意の1つを用いて製造することができる。インナーハウジング14は好ましくは、金属または合金から、例えば、スチールまたはアルミニウムから製造される。代替的にインナーハウジング14は、ポリマーまたは他の好適な材料から製造してもよい。
【0009】
図1および図2に示される態様において、インナーハウジング14は、アウターハウジング12と同軸に配置される。さらに、図1および図2に見られるように、インフレータ10の第2側面Sは、インフレータ10の第1側面Fの反対側である。それぞれ外部および内部オリフィスがインフレータの反対側に向いた配置は、インフレータの作動時に生成される膨張ガスを強制的に、インナーハウジングオリフィス20からインナーハウジング14の周りへ流出させ、アウターハウジングオリフィス22を通ってインフレータ10から流出させることにより、フィルタ効率を最大化する。インナーハウジングオリフィス20からアウターハウジングオリフィス22へと流れるときに、膨張ガス流は分岐し、図2に矢印「B」で示されるように、流れの一部はインナーハウジング14の片側の周りを流れ、流れの他の部分はインナーハウジングの反対側の周りを流れる。インナーハウジングオリフィス(複数を含む)20を、アウターハウジングオリフィス(複数を含む)22の反対側に配置することにより、流れの各部分の実質的に均等なフィルタリングが提供され、これは、アウターハウジングオリフィス(複数を含む)22が、インナーハウジングオリフィス(複数を含む)からインナーハウジング14の両側に沿って測って等距離に配置されることによる。
【0010】
図3を参照すると、ある量のガス発生剤組成物16は、インナーハウジング14の内部に沿って伸びている。火薬(pyrotechnic)は点火されて、車両乗員拘束システムのエアバッグ(示されず)を膨張させるための膨張ガスを生成する。示された態様において、ガス発生剤組成物16はインナーハウジング14と実質的に同軸である。ガス発生剤16は、実質的に「C」形状の断面とガス発生剤の長さに沿って伸びるスロット24を有する。好ましい態様において、開口部24は、インナーハウジング14のオリフィス(複数を含む)20に向けて配置される。
【0011】
ガス発生剤の「C」形状の断面は、スロットなしで達成できるより大きい、ガス発生剤の暴露表面積を提供する。これにより、インフレータ作動時にガス発生剤組成物の点火および燃焼を強化し、また、ガス発生剤16の比較的大きな表面とインナーハウジングオリフィス(複数を含む)20との間の流体連通を提供する。
【0012】
図1および図2を参照すると、特定の態様において、ガス発生剤16の実質的に「C」形状の断面は、外半径rおよび内半径rを有する環状壁19と、壁19を通って伸びるスロット24を規定する。この態様において、図1および図2のガス発生剤ブロックの総外表面積Aは、次の関係式で近似される。
A=L(X(r+r)+2(r−r))+X(r−r) (1)
式中、
L=ガス発生剤ブロックの長さ;
=壁の外半径;
=壁の内半径;および
X=壁が占める弧のなす角(ラジアン)。
【0013】
比較例として、r=0.25インチ、r=0.15インチ、L=10インチ、および
【数1】

ラジアンに対して:
【数2】

対照的に、立体円柱の表面積は、次の関係式:
【数3】

式中、rは円柱の半径、およびLは円柱の長さ、
で与えられる。上記寸法の立体円柱に対する表面積は、
【数4】

である。従って、図3に示されたガス発生剤形態は、ガス発生剤の与えられた外部寸法に対して、立体円柱が提供するより大きな総表面積を提供する。
【0014】
1つの態様において(図4に示す)、ガス発生剤16は、1つの長手方向のブロックからなるストリップの形状をとる。ガス発生剤16を1つのブロックとして形成することにより、インナーハウジング14内でのガス発生剤形状のよりよい制御を達成することができる。これにより、より制御可能で予測可能なガス発生剤燃焼伝播を生じる。インフレータの組み立て中のガス発生剤組成物の取り扱いの容易さもまた、促進される。
【0015】
図4は、本発明による、ガス発生剤の押出し成形されたストリップ16a〜cの斜視図を示す。ガス発生剤ストリップ16aは細長く、実質的に長方形のストリップであり、インナーハウジング14内部に配置でき、ストリップ16bおよび16cに示すように、実質的にC形状の断面を有するように変形できる。ストリップ16cは、ストリップ16bより、さらに完全に閉じた形状(すなわち、より小さい開口部のスロット24)を有し、比較的大きく平らなストリップ16aを組み込んで変形した場合に形成されるような、比較的大量のガス発生剤に対応する。代替的な態様において、ガス発生剤は、平面ストリップとして押出し成形された後に変形されるのでなく、所望の最終断面曲線を有するように押出し成形される。
【0016】
他の代替的な態様において、図5に示すように、ガス発生剤組成物16は、インナーハウジング14の内部に沿って長手方向に積み重ねられた、複数のウェハー16eの形状をとる。ガス発生剤ウェハー16eの各々は、前に記載のように、実質的に「C」形状の断面とその中に形成されたスロット24を有する。個々のウェハー16eのスロット24は、インナーハウジング14の長さに沿って長手方向配列され、組み合わさって、前述のようなガス発生剤の長さに沿って伸びるスロットを提供する。
【0017】
ガス発生剤16の燃焼速度は、ガス発生剤のL/D率を変えることによっても影響され、L/D率は、ガス発生剤長さのガス発生剤外径に対する比率として定義される。より具体的には、比較的長く、細い(高いL/D率の)ガス発生剤ストリップは、厚いストリップ(すなわち、より大きな直径のストリップ)より速く均一に燃焼する。従って、特定の用途のために生成される膨張ガスの量を増したい場合には、ガス発生剤の外径を増さずに、インナーハウジング14の長さに沿って伸びるガス発生剤の長さを増加するのが望ましい。長さ対外径比を少なくとも10:1に維持することは、本明細書に記載の用途に対して、速く効率的な燃焼伝播を提供すると考えられている。
【0018】
ガス発生剤組成物16は、速く燃焼し、比較的容易に点火できる組成物である。1つの態様において、ガス発生剤16は、燃料としてシリコーンを約10〜25重量%;過塩素酸アンモニウム、過塩素酸リチウム、または過塩素酸カリウムなどの過塩素酸塩酸化剤;および、冷却剤として、硝酸ストロンチウムまたは炭酸ストロンチウムなどのストロンチウム塩を含む。酸化剤および冷却剤は一般に、推進剤の約75〜90重量%を構成する。シリコーンは、例えばGeneral Electricまたは他のよく知られた供給業者から購入することができる。シリコーンは、バインダーとして作用するという付加的な利点を提供し、本明細書に記載のように、ガス発生剤ストリップまたはリボンの押出しを促進する。他のガス発生剤成分は、供給業者から、または当分野によく知られた方法で製造することにより、供給することができる。例示の好適な組成物は、米国特許出願公報第2001/0045735号、出願番号第09/846,004号に開示されており、これらは本明細書に参照として組み込まれる。
【0019】
代替的な態様において、ガス発生剤組成物は、速い燃焼組成物および遅い燃焼組成物を組み込むように作製することができ、ここで、速い燃焼部分は押出し成形物の内部表面上に、インナーハウジング14に組み込むようにできる。速い燃焼組成物は点火機構を支援し、初期のエアバッグ膨張に必要なガスを生成する。遅い燃焼組成物は速い燃焼層により点火され、ロールオーバーエアバッグなどの、長期の膨張用途のために必要なガスを、比較的ゆっくりと生成する。
【0020】
図1および図2を再度参照すると、金属製のメッシュフィルタ15は、アウターハウジング12とインナーハウジング14の間に形成された空洞内に、インナーハウジングオリフィス(複数を含む)20とアウターハウジングオリフィス(複数を含む)の間に配置され、インフレータ作動時に生成される粒子状物質をフィルタリングし、また熱い膨張ガスに対するヒートシンク(放熱板)として作用する。好適な金属製メッシュは、Kalkaska, MichiganのWayne Wire Inc.などの供給業者から容易に入手可能である。
【0021】
図2を参照すると、点火装置40はガス発生剤組成物16に動作可能に連結され、インフレータの作動時に点火装置とガス発生剤組成物の間の流体連通を可能にする。示された態様において、点火装置40は、インナーハウジング14の端に連結される。点火装置40は、当分野で知られているように形成することができる。1つの例示の点火装置構成は米国特許第6,009,809号に記載されており、これは本明細書に参照により組み込まれる。
【0022】
点火装置はインフレータ構造に連結され、ここで、インフレータ作動時にインフレータの点火装置末端を通る膨張ガスの圧力損失を最小化するような設計の様式で連結される。図2aを参照すると、好ましい態様において、点火装置40は、アウターハウジング12内に固定された点火装置アセンブリ39内に組み込まれる。点火装置アセンブリ39は、アウタースリーブ41、点火装置40、および点火装置インサート42を含む。アウタースリーブ41は、点火装置端子40aを接続するために、はめ合い相互接続物(mating interconnect)または他の好適な電気的インターフェイスを受け入れるように、後部空洞41aを規定する。アウタースリーブ41はまた、前部空洞41cを規定する環状壁41bおよび、壁41bによって囲まれたオリフィス41dを含み、その中に点火装置40と点火装置インサート42を受け入れる。環状壁41bの内部表面41b−1にはねじ山を切り、以下に記載するように、点火装置インサート42の外表面に沿って形成された対応するねじ山とかみ合うようにする。
【0023】
点火装置インサート42は、インサートの中央部を通って伸びるオリフィス(開口)42aを含み、その中に点火装置40の一部を受け入れる。環状壁42bは、オリフィス42aを包含する。環状壁42bの外表面には、前に記載したように、アウタースリーブ41の内部表面41b−1に沿って形成された対応するねじ山とかみ合うように、ねじ山を切る。
【0024】
点火装置40は、アウタースリーブオリフィス41d内に挿入され、多数の既知の方法の1つ、例えば圧着、接着剤の適用、締りばめ(interference fit)の形成などを用いて、アウタースリーブ41に固定する。点火装置40がアウタースリーブ41内に固定されると、点火装置インサート42を、アウタースリーブ前部空洞41c内にねじ込む。点火装置インサート42とアウタースリーブ41のねじ式固定は、点火装置インサート42とアウタースリーブ41の間の接合部分を通る膨張ガス圧力損失を最小化すると考えられる。
【0025】
点火装置アセンブリ部品間および点火装置アセンブリ39とインフレータの他の部品間の接合部分に、付加的なシールを形成することもできる。1つの態様において、図2Aに詳細に示されるように、O環シールを適合するための環状空洞を、次の位置:アウタースリーブ41および点火装置インサート42内に、インナーハウジング14と点火装置インサート42の間の接合部分に隣接して、フィルタ15と点火装置インサート42の間に、フィルタとアウタースリーブ41の間に、およびアウターハウジング12とアウタースリーブ41の間に、設けることができる。これらのシールは、インフレータからの圧力損失の最小化を支援する。点火装置アセンブリ39は次に、アウターハウジング12に、例えばアウターハウジングとアウタースリーブ41の間に形成された締りばめなどにより固定することができる。アウターハウジング12の末端部分は次に、アウタースリーブ41上に圧着して、アウタースリーブをアウターハウジング内に固定する。
【0026】
インフレータの操作について、次に図1および図2を参照して考察する。
衝突事象時に、衝突センサからの信号(示されず)は点火装置40に伝達され、それによって点火装置が起動し、ガス発生剤16を点火する。点火装置40が起動すると、ガス発生剤16の点火は、インナーハウジング末端74からインナーハウジング末端75に向って迅速に進行する。点火装置40により生成された圧力波は、ガス発生剤16の内部表面の長さまで進み、それが通り抜けるに従って推進剤に点火する。ガス発生剤は迅速に点火され、圧力波を供給する。開示された組成および形状を有するガス発生剤を利用することにより、ある既知のデザインに必要とされる点火用コードは不要である。さらに、ガス発生剤16の実質的にC形状断面は、ガス発生剤の比較的円滑な点火を提供する。ある推進剤の圧力感度のため、この形状は多くの利点を与える。ガス発生剤16の燃焼により生成される膨張ガスは、インナーハウジングオリフィス(複数を含む)20から出て進行し、インナーハウジング14の両側の周りおよびフィルタ15を通って流れる。膨張ガスは次に、アウターハウジングオリフィス(複数を含む)22を通ってインフレータから排出される。図1の矢印「B」は、インフレータ作動時のガス流のおよその方向を示す。
【0027】
他の代替的な態様において、膨張ガスの流れはまた、軸方向(インフレータの長手方向の軸に沿って)および放射状にインフレータから外側に向けることもできる。これにより、純粋に放射方向のガス流の場合より迅速に、一定のエアバッグ構造の一部を充填することが可能である。図6および図7は軸方向流の成分を組み込んだ本発明によるインフレータの態様を示す。
【0028】
図6を参照すると、1つの態様において、インナーハウジング14はハウジングの第1端74に形成された開口部80を含む。同様に、アウターハウジング12は、アウターハウジング12の第1端70に形成された開口部82を含む。フィルタ90は、インナーハウジング第1端開口部80とアウターハウジング第1端開口部82の間に配置され、インナーハウジング14内でガス発生剤組成物16の燃焼により生成された燃焼生成物をフィルタリングする。インフレータの作動時に、ガス発生剤組成物16の燃焼により生成された膨張ガスは、インナーハウジング第1端開口部80から流れ、フィルタ90を通り、アウターハウジング第1端開口部82から排出されて、関連するエアバッグ(示されず)に入る。
【0029】
図7はインフレータの他の態様を示し、ここではインナーハウジング14で生成された膨張ガスはインフレータの両端から流れ出し、またインフレータから放射方向にも流れ出す。この態様において、追加の開口部83がインナーハウジング14の第2端75に、また追加の開口部85がアウターハウジング12の第2端71に形成される。他のフィルタ92は、インナーハウジング第2端開口部83とアウターハウジング第2端開口部85の間に配置され、ガス発生剤組成物の燃焼により生成された燃焼生成物をフィルタリングする。インフレータの作動時に、ガス発生剤組成物16の燃焼により生成された膨張ガスは、インナーハウジング第2端開口部83から流れてフィルタ92を通り、アウターハウジング第2端開口部85を通ってインフレータから排出される。点火装置40は、インナーハウジング第1端74とインナーハウジング第2端75の中間に、ガス発生剤のほぼ真ん中に配置されて、ガス発生剤16の燃焼伝播がインナーハウジング14の両端へと進行し、実質的に同時に終了するようにする。
【0030】
ここで図8を参照すると、上記の任意のインフレータの態様は、エアバッグシステム200に組み込むことができる。エアバッグシステム200は、少なくとも1つのエアバッグ202および、エアバッグ202に連結してエアバッグの内部と流体連結する、インフレータ10を含む。上に記載のようにインフレータ10は、その長さに沿って伸びるスロット24および実質的に「C」形状の断面を有する1つの長手方向のブロックからなる、長手方向のガス発生剤アレンジメント16、ガス発生剤ストリップ16を包含するハウジング構造、およびガス発生剤ストリップ16に動作可能に連結し、インフレータの作動時にガス発生剤ストリップ16との間の流体連通を可能にする点火装置40を組み込む。エアバッグシステム200はまた、既知の衝突センサアルゴリズムを含む衝突事象センサ210と接続することができ、該アルゴリズムは、衝突の際に、例えばエアバッグインフレータ204の作動を介して、エアバッグシステム200の作動の信号を送る。
【0031】
図8を再度参照すると、エアバッグシステム200はまた、安全ベルトアセンブリ150などの付加的な要素を含む、より広く総合的な車両乗員拘束システム180内に組み込むこともできる。図8は、かかる拘束システムの1つの例示の態様の概略図である。
【0032】
安全ベルトアセンブリ150は、安全ベルトハウジング152および、ハウジング152から伸びる、本発明による安全ベルトを含む。安全ベルト格納機構154(例えば、バネ仕掛け機構)を、ベルトの端末部分153に連結することができる。さらに、安全ベルトプリテンショナ156をベルト格納機構154に連結して、衝突時にベルト格納機構を作動させることができる。本発明の安全ベルトの態様と組み合わせて用いることのできる、典型的なシートベルト格納機構は、米国特許第5,743,480号、第5,553,803号、第5,667,161号、第5,451,008号、第4,558,832号、および第4,597,546号に記載されており、これらは本明細書に参照として組み込まれる。本発明の安全ベルトの態様と組み合わせて用いることのできる、典型的なプリテンショナの説明に役立つ実例は、米国特許第6,505,790号および第6,419,177号に記載されており、これらは本明細書に参照として組み込まれる。
【0033】
安全ベルトシステム150は、衝突事象センサ158(例えば、慣性センサまたは加速度計)と連通することができ、該センサは、例えばプリテンショナに組み込まれた火薬式点火装置(示されず)の起動を介してベルトプリテンショナ156の作動の信号を送る、既知の衝突センサアルゴリズムを含む。本明細書に参照として前に組み込まれた米国特許第6,505,790号および第6,419,177号は、かかる方式で作動されるプリテンショナの説明に役立つ実例を提供する。
【0034】
本発明は、側面衝突またはヘッドカーテンエアバッグシステムにおいて第一の用途を見出すことが意図されるが、これらに限定されるものではない。本発明の態様の前述の記載は、説明目的のみであることも理解される。従って、本明細書に開示された種々の構造的および操作的特徴は、当業者の能力に相応した多数の改変を受けることができ、これらのいずれもが、添付のクレームに規定された本発明の範囲から逸脱するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明によるインフレータの1つの態様の断面端面図である。
【図2】図1に示されたインフレータの態様の断面側面図である。
【図2A】本発明のインフレータに組み込まれた点火装置アセンブリの態様の断面側面図である。
【図3】本発明のインナーハウジングに組み込まれたガス発生剤ストリップの断面端面図である。
【図4】本発明によるガス発生剤ストリップの種々の態様の斜視図である。
【図5】本発明のインフレータ第2の態様の断面側面図である。
【図6】本発明のインフレータ第3の態様の断面側面図である。
【図7】本発明のインフレータ第4の態様の断面側面図である。
【図8】本発明によるインフレータを組み込んだ車両乗員拘束システムの例の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータであって、
細長いアウターハウジングであって、内部および、前記アウターハウジング内部と前記アウターハウジング外部との間の流体連通を可能にする少なくとも1つのオリフィスを有する、前記アウターハウジング、ここで前記少なくとも1つのアウターハウジングオリフィスが、前記アウターハウジング内部から前記インフレータの第1側面へと開口しており;
前記アウターハウジング内部に位置する細長いインナーハウジングであって、内部および、前記インナーハウジング内部と前記インナーハウジング外部との間の流体連通を可能にする少なくとも1つのオリフィスを有する、前記インナーハウジング、ここで前記少なくとも1つのインナーハウジングオリフィスが、前記インナーハウジング内部から前記インフレータの第2側面へと開口しており;
前記インナーハウジング内部の少なくとも一部に沿って伸びるある量のガス発生剤組成物、ここで前記ガス発生剤は、長さおよび実質的に「C」形状の断面と前記ガス発生剤の長さに沿って伸びるスロットを有し;
前記ガス発生剤組成物に動作可能に連結された点火装置であって、これにより前記インフレータの作動時にガス発生剤組成物の燃焼を開始させる、前記点火装置;
を含む、前記インフレータ。
【請求項2】
ガス発生剤組成物が単一ブロックに形成されている、請求項1に記載のインフレータ。
【請求項3】
インナーハウジングが長手方向軸を有し、ガス発生剤組成物が前記長手方向軸に沿って積み重ねられた複数のウェハーを含む、請求項1に記載のインフレータ。
【請求項4】
インナーハウジングがアウターハウジングと同軸に配置されている、請求項1に記載のインフレータ。
【請求項5】
実質的に「C」形状の断面が、外半径および内半径を有する環状壁を規定し、ここでスロットが該壁を通って伸びる、請求項1に記載のインフレータ。
【請求項6】
ガス発生剤が、外径および、少なくとも10:1の長さ対外径比を有する、請求項5に記載のインフレータ。
【請求項7】
インフレータの第2側面が、インフレータの第1側面の反対側にある、請求項1に記載のインフレータ。
【請求項8】
ガス発生剤組成物が、インナーハウジングと実質的に同一の広がりを有する、請求項1に記載のインフレータ。
【請求項9】
スロットが、少なくとも1つのインナーハウジングオリフィスと連通する、請求項1に記載のインフレータ。
【請求項10】
インナーハウジングが、第1端、第1端の反対側の第2端、およびインナーハウジング第1端に形成された開口部を含み;
アウターハウジングが、インナーハウジング第1端に近接する第1端、インナーハウジング第2端に近接する第2端、およびアウターハウジング第1端に形成された開口部を含み;および
第2フィルタが、インナーハウジング第1端開口部とアウターハウジング第1端開口部の間に配置されて、ガス発生剤組成物の燃焼により生成される燃焼生成物をフィルタリングし、これによって、インフレータの起動に続き、ガス発生剤組成物の燃焼により生成される膨張ガスが、インナーハウジング第1端開口部から流出して、第2フィルタを通り、アウターハウジング第1端開口部から排出される;
請求項1に記載のインフレータ。
【請求項11】
インナーハウジング第2端に形成された開口部、アウターハウジング第2端に形成された開口部、およびインナーハウジング第2端開口部とアウターハウジング第2端開口部との間に配置された第3フィルタをさらに含み、第3フィルタはガス発生剤組成物の燃焼により生成される燃焼生成物をフィルタリングし、これによって、インフレータの起動に続き、ガス発生剤組成物の燃焼により生成される膨張ガスが、インナーハウジング第2端開口部から流出して、第3フィルタを通り、アウターハウジング第2端開口部から排出される、請求項10に記載のインフレータ。
【請求項12】
点火装置が、インナーハウジング第1端とインナーハウジング第2端の間に配置される、請求項11に記載のインフレータ。
【請求項13】
点火装置が、インナーハウジング第2端の近傍に配置される、請求項10に記載のインフレータ。
【請求項14】
少なくとも1つのインナーハウジングオリフィスと少なくとも1つのアウターハウジングオリフィスの間に配置されたフィルタをさらに含み、ガス発生剤組成物の燃焼により生成される燃焼生成物をフィルタリングする、請求項1に記載のインフレータ。
【請求項15】
少なくとも1つのアウターハウジングオリフィスから排出される膨張ガス流の方向が、少なくとも1つのインナーハウジングオリフィスから排出される膨張ガス流の方向から約180度離れている、請求項1に記載のインフレータ。
【請求項16】
点火装置が、アウターハウジング内にネジ式に受け入れられる、請求項1に記載のインフレータ。
【請求項17】
請求項1に記載のインフレータおよび、前記インフレータエアバッグに連結された少なくとも1つのエアバッグを含み、これによって、前記インフレータの作動時に、前記インフレータと前記エアバッグの内部との間の流体連通を提供する、エアバッグシステム。
【請求項18】
インフレータが、
ガス発生剤ストリップを囲むインナーハウジングであって、少なくとも1つのオリフィスを有することにより、ガス発生剤ストリップと前記インナーハウジングの外部との間の流体連通を可能にしている、前記インナーハウジング;
前記インナーハウジングを囲み、その間に空洞を形成しているアウターハウジングであって、少なくとも1つのオリフィスを有することにより、前記インナーハウジングと前記アウターハウジングの外部との間の流体連通を可能にしている、前記アウターハウジング;および
前記空洞内に配置され、前記ガス発生剤ストリップの燃焼により生成される燃焼生成物をフィルタリングするためのフィルタ;
を含む、請求項17に記載のエアバッグシステム。
【請求項19】
点火装置と接続される衝突事象センサをさらに含み、前記衝突事象センサは、衝突時にエアバッグシステムの作動の信号を出す既知の衝突センサアルゴリズムを含む、請求項18に記載のエアバッグシステム。
【請求項20】
少なくとも1つのエアバッグが、サイドカーテンエアバッグである、請求項17に記載のエアバッグシステム。
【請求項21】
少なくとも1つのエアバッグが、ヘッドカーテンエアバッグである、請求項17に記載のエアバッグシステム。
【請求項22】
請求項1に記載のインフレータを含む、車両乗員拘束システム。
【請求項23】
ガス発生剤組成物が、長さに沿って伸びるスロットおよび実質的に「C」形状の断面を有する1つの長手方向のブロックを含むガス発生剤ストリップである、請求項1に記載のインフレータ。
【請求項24】
車両乗員拘束システムであって、少なくとも1つのエアバッグと、エアバッグに連結されたインフレータであって、前記インフレータの作動時にエアバッグの内部と流体連通する前記インフレータとを有するエアバッグシステムを含み、前記インフレータが、
長さに沿って伸びるスロットおよび実質的に「C」形状の断面を有する1つの長手方向のブロックを含む、ガス発生剤ストリップ;
ガス発生剤ストリップを囲むハウジング構造;および
ガス発生剤ストリップに動作可能に連結された点火装置であって、前記インフレータの作動時に、前記点火装置とガス発生剤ストリップの間の流体連通を可能にする、前記点火装置;
を含む、前記車両乗員拘束システム。
【請求項25】
ハウジングおよび該ハウジングから伸びる安全ベルトを含む、安全ベルトアセンブリをさらに含む、請求項24に記載の車両乗員拘束システム。
【請求項26】
ハウジング構造が、
ガス発生剤ストリップを囲むインナーハウジングであって、少なくとも1つのオリフィスを有することにより、ガス発生剤ストリップと前記インナーハウジングの外部との間の流体連通を可能にしている、前記インナーハウジング;
前記インナーハウジングを囲み、その間に空洞を形成しているアウターハウジングであって、少なくとも1つのオリフィスを有することにより、前記インナーハウジングと前記アウターハウジングの外部との間の流体連通を可能にしている、前記アウターハウジング;および
前記空洞内に配置され、前記ガス発生剤ストリップの燃焼により生成される燃焼生成物をフィルタリングするためのフィルタ;
を含む、請求項24に記載の車両乗員拘束システム。
【請求項27】
エアバッグシステムに接続される衝突事象センサをさらに含み、前記衝突事象センサは、衝突時にエアバッグシステムの作動の信号を出す衝突センサアルゴリズムを含む、請求項24に記載の車両乗員拘束システム。
【請求項28】
インフレータ内で用いるための、長さに沿って伸びるスロットおよび実質的に「C」形状の断面を有する1つの長手方向のブロックを含む、ガス発生剤ストリップ。
【請求項29】
「C」形状の断面が、外半径および内半径を有する環状壁を規定し、ここでスロットが該壁を通って形成されている、請求項28に記載のガス発生剤ストリップ。
【請求項30】
ガス発生剤ブロックの総外表面積Aが、関係式:
A=L(X(r+r)+2(r−r))+X(r−r
式中、
L=ガス発生剤ブロックの長さ;
=壁の外半径;
=壁の内半径;および
X=壁が占める弧のなす角(ラジアン);
によって近似される、請求項29に記載のガス発生剤ストリップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2007−523786(P2007−523786A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539953(P2006−539953)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/038014
【国際公開番号】WO2005/049374
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(506091492)オートモーティブ システムズ ラボラトリー インコーポレーテッド (11)
【Fターム(参考)】