説明

炉からスラグを除去する方法

固定型炉からスラグを出湯する方法は、固定型炉からスラグを除去する出湯開口を有する固定型炉を提供する段階と、上記出湯開口にクレイまたはマッドを詰める段階と、上記出湯開口の上記クレイまたはマッドにドリルで孔を開けて、上記スラグが通れる出湯孔を形成する段階であって、上記クレイまたはマッドにドリルで開けられる孔が、上記出湯開口の幅よりも著しく短い直径を持っているような段階と、上記孔のサイズを調整することで、上記孔を通るスラグの流れを制御する段階とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉からスラグを除去する改良された方法に関する。さらに具体的に言えば、本発明は、トップエントラント・サブマージド・ランス炉などの固定型炉からスラグを除去する方法に関する。本発明は、この方法で使用される装置にも及ぶ。
【背景技術】
【0002】
乾式製錬法は一般に、スラグ層を形成することになる。炉からスラグを除去することがしばしば必要である。炉からスラグを除去する方法はいろいろある。例えば、可傾炉または移動炉では、炉の通常使用中、炉内のスラグのレベルよりも高い位置に穴を設けることが標準的である。その場合、この穴を通ってスラグが流れ出るように、炉を傾けるか、または回転させることがある。
【0003】
固定型炉では、スラグは従来の通り、次の2つのやり方のいずれかで除去される。
i)炉の側面に、出湯開口が設けられる。このような出湯開口は、炉壁に設けられた円形開口を含む。この出湯開口は通常、クレイガンまたはマッドガンを使用して出湯開口に注入されるクレイまたはマッドを用いて締め切られる。このクレイまたはマッドは、溶融した炉生成物が出湯開口を通して漏れないようにする効果的なバリア(障害物)を形成する。炉からスラグを除去することが必要であるか、または望ましいときには、ドリルを使用して、このクレイまたはマッドに出湯孔を開ける。このドリルは通常、出湯開口の直径よりもほんのわずかに短い直径を持っている。出湯開口からドリルが取り去られると、スラグが、出湯孔を通って流れ出ることもある。炉から充分なスラグが除去されているときに、マッドガンまたはクレイガンを用いて、出湯開口が締め切られる。このように炉からスラグを除去する方法では、スラグは、間欠式またはバッチ式に、炉から除去される。
ii)一部の固定型炉では、炉の側壁に出湯開口が設けられる。炉の外側にはスラグ受容器を取り付けて、この出湯開口を通るいかなるスラグも、スラグ受容器に受け止められるようにしている。スラグ受容器内にスラグがいっぱいになると、スラグが、スラグ受容器の堰から溢れて、捕集されるか、または、別の場所に運ばれる。このようなスラグ出湯作業では、スラグは、連続的に炉から出湯されることがある。この出湯開口をクレイまたはマッドで塞ぐことは、一般に必要でない。
【0004】
乾式製錬法による金属産出には、トップエントラント・サブマージド・ランス炉が使用される。トップエントラント・サブマージド・ランス炉は、耐火材料で通常、内張りされた固定型炉容器を含む。燃料と空気または酸素は通常、上方から炉装入物中に挿入されているランスを通して炉装入物に注入される。ランスを通して空気または酸素が注入されるときには、この空気または酸素により、炉装入物が撹拌される。それゆえ、それらの溶融した炉内容物が、トップエントラント・サブマージド・ランス炉の中で激しくかき混ぜられる。トップエントラント・サブマージド・ランス炉の一例として、本出願人により製造され、販売されているISASMELTTM(登録商標)炉がある。
【0005】
ISASMELTTM(登録商標)炉の設備は、現在、銅と鉛の産出に使用されている。他の金属も、ISASMELTTM(登録商標)炉の設備を使用して産出されることがある。
【0006】
本発明者らの国際特許出願番号PCT/AU2006/001460(その全体が、相互参照によって本明細書中に組み入れられている)において、本発明者らは、ISASMELTTM(登録商標)炉に鉛鉱または鉛精鉱が供給される鉛産出方法を述べている。これにより、粗鉛と鉛スラグが形成される。この鉛スラグは、炉から除去されて、塊状にされ(例えば、鉛スラグを鋳造機に供給することにより)、次に、これらの鉛スラグの塊が、供給材料として溶鉱炉に供給される。この鉛スラグは、溶鉱炉の中で粗鉛と廃棄鉛に変換される。
【0007】
本出願人は、本明細書中に述べられている先行技術が、オーストラリアその他の国での一般常識の一部を成すとは認めていない。
【0008】
この明細書の全体を通じて、「comprising(含む)」という語、あるいは、それと文法的に同等な語は、このことに関連して特に指示がない限り、包括的な意味を持つものと見なされるものとする。
【発明の概要】
【0009】
第1の面では、本発明は、固定型炉からスラグを出湯する方法であって、
・ 固定型炉からスラグを除去する出湯開口が付けられている固定型炉を提供するステップと、
・ 上記出湯開口にクレイまたはマッドを詰めるステップと、
・ 上記出湯開口の上記クレイまたはマッドにドリルで孔を開けて、上記スラグが通れる出湯孔を形成するステップであって、上記クレイまたはマッドにドリルで開けられる孔が、上記出湯開口の幅よりも著しく短い直径を持っているようなステップと、
・ 上記孔のサイズを調整することで、上記孔を通るスラグの流れを制御するステップと、
を含む方法を提供する。
【0010】
上記固定型炉は、トップエントラント・サブマージド・ランス炉から成ることがある。
【0011】
スラグが通るクレイまたはマッドの孔のサイズは、この開口を広げることで、あるいは、この開口の周縁から凝固スラグを除去することで、調整されることがある。一実施形態では、スラグが通るクレイまたはマッドの孔のサイズは、ジャックハンマーまたはピックツールを用いて、この開口を広げるか、あるいはこの開口から凝固スラグを除去することで、調整されることがある。
【0012】
上記固定型炉に設けられた出湯開口は、概ね長方形の開口から成ることがある。この概ね長方形の開口は、丸まったかどを持つこともある。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記出湯孔のサイズは、クレイまたはマッドの出湯孔の水平方向の幅を広げることで調整される。
【0014】
いくつかの実施形態では、この方法はさらに、固定型炉からのスラグの流れを監視し、スラグの流れが少なすぎる場合には、この開口を広げ、また、スラグの流れが多すぎる場合には、この開口の周りにスラグを付着させ、それにより、この開口を狭くするか、あるいは、さらなるマッドまたはクレイをこの開口に詰め込み、それにより、この開口を狭くするステップも含むことがある。
【0015】
固定型炉からのスラグの流れは、固定型炉の操作者で実行される目視検査により監視されることがある。別法として、固定型炉からのスラグの流れは、自動化流量監視手段を用いて監視されることもある。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、スラグが通る孔のサイズは、ジャックハンマーまたはピックツールを用いて、大きくされることがある。好都合にも、ジャックハンマーまたはピックツールは、このジャックハンマーまたはピックツールから遠い所にいる操作者により操作されることがある。これにより、炉のすぐ近くの高温の(しばしば危険な)環境から離れた位置に操作者を配備することができる。
【0017】
ジャックハンマーまたはピックツールが上記孔に対して進退し得るように、ジャックハンマーまたはピックツールは、そのジャックハンマーまたはピックツールの縦軸線に沿って延びている第1の軸線に沿って移動できるように構成されることがある。ジャックハンマーまたはピックツールが上記孔に対して水平方向に移動できるように、ジャックハンマーまたはピックツールはまた、側方の方向に移動できるように構成されることもある。ラフと呼ばれる垂直方向のわずかな動きもあることがある。ジャックハンマーまたはピックツールをこのように移動するように構成すると、そのジャックハンマーまたはピックツールの動きと取付けが簡単になるものと了解されよう。ジャックハンマーまたはピックツールはまた、上記孔に対して水平方向に旋回できるように構成されることもある(このような動きは、ヨーとも呼ばれる)。垂直方向のわずかな旋回運動もあることがある(このような動きは、ピッチとも呼ばれる)。
【0018】
本発明の特徴は、クレイまたはマッドにドリルで開けられる孔が、炉に設けられた出湯開口のサイズよりも著しく短い直径を持っていることである。例えば、このようにクレイまたはマッドにドリルで開けられる出湯孔の直径が、炉に設けられた出湯開口の幅の50%よりも短い直径、さらに好ましくは炉に設けられた出湯開口の幅の40%よりも短い直径、好ましくは炉に設けられた出湯開口の幅の30%よりも短い直径を持つことがある。
【0019】
クレイまたはマッドにドリルで開けられる出湯孔のサイズよりも著しく大きい開口サイズを持つ出湯開口を炉に設ければ、クレイまたはマッドにドリルで開けられる出湯孔の内壁と、上記出湯開口の内壁との間にあるさらなるクレイまたはマッドを除去することで、この出湯孔を通して除去されるスラグの流量を調整する有意な余地が残る。
【0020】
上述の通り、一実施形態では、上記出湯開口は、概ね長方形の開口から成っている。しかしながら、他の形状の出湯開口も使用されることがある。例えば、出湯開口は、円形開口、長円形開口、正方形開口、三角形開口、あるいは、実際は他の任意形状の開口から成ることがある。この開口は、丸まったかどを持つことがある。
【0021】
本発明の方法の一実施形態では、炉内の溶融した装入物が確立されて、スラグが炉内に溜まり始めると、出湯開口に詰めているクレイまたはマッドにドリルで出湯孔が開けられる。この出湯孔は、公知の任意の出湯孔開け機械を用いて開けられることがある。このようなドリル機械の供給者は多数あり、当業者であれば、このドリル機械の組立て方法および操作方法を容易に理解できよう。それゆえ、このドリル機械をさらに詳しく説明する必要はなかろう。
【0022】
このクレイまたはマッドにドリルで出湯孔が開けられると、炉の操作者は、炉からのスラグの流量を目で見て監視できる。炉からのスラグの流量が少なすぎると操作者で判定される場合には、操作者は、さらに機械(例えば、ジャックハンマーまたはピックツール)を操作して、出湯孔の周縁から、さらなるクレイまたはマッドを除去することがある。これは、出湯孔のサイズを大きくし、それにより、出湯孔を通るスラグの流量を増加させるように働く。いくつかの実施形態では、出湯孔のサイズは、出湯孔の水平方向の幅を長くすることで大きくされる。出湯孔の水平方向の幅が長くされる場合でも、炉に設けられた出湯孔の高さは、事実上一定のままであろう。このことは、出湯孔を通して溶湯が除去するのではなく、出湯孔を通してスラグを確実に除去できるようにする上で重要である。
【0023】
いくつかの実施形態では、スラグは、事実上連続したやり方で炉から除去されることがある。
【0024】
いくつかの実施形態では、出湯開口は、クレイまたはマッドにドリルで開けられる出湯孔の直径よりも著しく長い高さを持っている。これらの実施形態では、出湯孔の高さは、運転要件に応じて、上位レベルか、または下位レベルにドリルでクレイまたはマッドに出湯孔を開けることだけで調整できる。
【0025】
第2の局面では、本発明は、耐火材料で内張りされた炉容器を含むトップエントランス・サブマージド・ランス炉であって、この炉容器の側壁が、概ね長方形の出湯開口を含むことを特徴とするトップエントランス・サブマージド・ランス炉を提供する。
【0026】
一実施形態では、この概ね長方形の出湯開口は、その出湯開口に詰め込まれるクレイまたはマッドに出湯孔を開けるのに用いられるドリルの直径よりも著しく長い幅を持っている。例えば、この出湯開口は、ドリルの直径よりも2倍〜10倍長い幅、さらに好ましくはドリルの直径よりも2倍〜5倍長い幅、さらに好ましくはドリルの直径よりも3倍〜5倍長い幅を持つことがある。
【0027】
この概ね長方形の出湯開口は、丸まったかどを持つことがある。
【0028】
この概ね長方形の出湯開口は、その出湯開口に詰め込まれるクレイまたはマッドに出湯孔を開けるのに用いられるドリルの直径よりも著しく長い高さを持つことがある。例えば、この出湯開口は、ドリルの直径よりも2倍〜15倍長い高さ、さらに好ましくはドリルの直径よりも2倍〜10倍長い高さ、さらに好ましくはドリルの直径よりも3倍〜5倍長い高さを持つことがある。
【0029】
第3の局面では、本発明は、耐火材料で内張りされた炉容器を含むトップエントランス・サブマージド・ランス炉であって、この炉容器の側壁が、出湯開口に詰め込まれるマッドまたはクレイにドリルで開けられる孔の直径よりも実質的に長い幅を持つ出湯開口を含み、しかも、この孔を利用して、この炉からスラグを除去することを特徴とするトップエントランス・サブマージド・ランス炉を提供する。
【0030】
一実施形態では、この出湯開口は、その出湯開口に詰め込まれるクレイまたはマッドに出湯孔を開けるのに用いられるドリルの直径よりも著しく長い幅を持っている。例えば、この出湯開口は、ドリルの直径よりも2倍〜10倍長い幅、さらに好ましくはドリルの直径よりも2倍〜6倍長い幅、さらに好ましくはドリルの直径よりも2倍〜5倍長い幅、さらに好ましくはドリルの直径よりも3倍〜5倍長い幅を持つことがある。
【0031】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態によるトップエントラント・サブマージド・ランス炉容器の側面図を示す。
【図2】図1に示されるトップエントラント・サブマージド・ランス炉容器に使用される出湯ブロックアセンブリの正面図である。
【図3】図2中の切断線Aに沿って切った図2に示される出湯ブロックアセンブリの水平断面図を示す。
【図4】図2中の切断線Bに沿って切った図2に示される出湯ブロックアセンブリの垂直断面図を示す。
【図5】トップエントラント・サブマージド・ランス炉容器に対する出湯孔ドリルの位置づけを示す正面図を示す。
【図6】トップエントラント・サブマージド・ランス炉容器に対するジャックハンマーの位置づけを示す正面図を示す。
【図7】本発明の実施形態において利用される可能な出湯孔開口の図を示す。
【図8】本発明の実施形態において利用される可能な出湯孔開口の図を示す。
【図9】本発明の実施形態において利用される可能な出湯孔開口の図を示す。
【図10】本発明の実施形態において利用される可能な出湯孔開口の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
これらの図面は、本発明の好ましい実施形態を図解する目的で提供されているものと了解されよう。それゆえ、本発明は、これらの図面に示される特徴のみに限定されると見なされるべきでないことが理解されよう。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態によるトップエントラント・サブマージド・ランス炉の側面図を示す。図1に示される炉は、ISASMELTTM(登録商標)炉であることがある。このような炉は固定型炉である。
【0035】
図1に示される炉10は、全体が参照番号14で示される外殻を含む。この外殻は一般に、鋼または合金鋼で構成される。当業者により充分理解されるように、この外殻は、運転中、炉内で受ける強熱から外殻を保護するために、耐火材料で内張りされる。
【0036】
炉10は側壁16を持っている。炉10の上部18は、製錬反応のガス生成物用の出口を提供する幅広領域20を含む。
【0037】
炉の使用中、供給材料の装入物が添加される。トップエントラント・サブマージド・ランスを通して燃料と空気または酸素が注入される。次に、製錬反応が行われて、溶湯層またはマット層と、スラグ層を形成する。トップエントラント・サブマージド・ランスを通して空気または酸素を注入することに起因する極度の乱れにより、炉内の溶融物が激しく撹拌される。
【0038】
製錬が継続すると、炉内のスラグの量が増えて、炉からスラグを除去することが必要になる。運転中、炉からスラグを出湯または除去できるようにするために、炉の側壁に出湯開口28が設けられる。出湯開口28は、側壁において、炉内のスラグ/溶湯の界面、またはスラグ/マットの界面に対する設計高さよりも高い高さに位置づけられる。このようにして、ほとんどスラグは、出湯開口28を介して、炉から除去される。他の場所において別の出湯動作を介して、溶湯またはマットが炉から除去される。
【0039】
図2、図3、図4は、出湯開口28のさらに詳しい細部を示した。
【0040】
図3に示されるように、出湯開口28は、水冷銅から作られた出湯ブロック44を含む出湯ブロックアセンブリ30の中に形成される。
【0041】
再度、図3を参照すると、この銅製出湯ブロック(44)が炉殻48に固着されている。
【0042】
出湯開口28の最外面は、外プレート68により保護される。外プレート68の中に形成された開口の実際の形状は、図2にもっとも良く示されている。この炉は、耐火材料の層(64と32)で内張りされている。出湯孔も、耐火材料の層(64と32)を貫通している。それゆえ、開口28、開口60、開口66は、出湯ブロック44の外面から炉の内部へ開口を形成している。
【0043】
図2からもっと良く見られるように、出湯開口28は、概ね長方形の開口である。
【0044】
炉の運転中、それぞれの開口28、開口60、および開口66により形成される開口は、当初、その開口を封止するために、クレイまたはマッドが詰められる。当業者であれば、この目的で購入できる市販のクレイ組成物またはマッド組成物がいくつかあることを容易に理解できよう。さらに、クレイまたはマッドを開口に塗布するか、または開口に詰め込んで、開口を塞ぐのに使用できる市販のクレイガンまたはマッドガンもいくつかある。それゆえ、これらの特徴をさらに詳しく説明する必要はまったくない。
【0045】
固定型炉からスラグを出湯するのに従来使用されてきた公知の出湯開口と比較して、図2、図3、図4に示される出湯開口28は、出湯開口に詰めて、出湯開口を塞ぐのに利用されたクレイまたはマッドに孔を開けるのに用いられる出湯用ドリルの直径よりも実質的に長い幅を持っている。例えば、概ね長方形の出湯開口28は、出湯用ドリルの直径よりも約2倍〜6倍広い幅を持つことがある。
【0046】
図5は、出湯開口に出湯孔を開けるのに用いられる出湯用ドリルの略正面図を示している。図5では、出湯孔ドリル80が二次フレーム82に取り付けられ、さらに、二次フレーム82が、車輪84、車輪86に取り付けられる。車輪84、車輪86により、二次フレーム82(それゆえ、出湯孔ドリル80)が、左方に、または右方に移動することができる。車輪84、車輪86はそれら自体、別のフレーム88上で移動する。別のフレーム88は、一次フレームと見なされることがある。一次フレーム88には車輪90、車輪92が取り付けられている。車輪90、車輪92は、それぞれレール94上、レール96上で回転するように取り付けられて、一次フレーム88が、炉に対して進退できるようにしている。
【0047】
溶融した炉内生成物を炉から出湯したいときには、ドリルビットが出湯開口28と同心になるように、出湯孔ドリル80を移動させる(図5では、出湯開口28は、出湯孔ドリル80で覆い隠されている)。出湯孔ドリル80が作動し、そのドリルビットは移動して、出湯孔開口28に詰めているクレイまたはマッドと接触する。二次フレーム82を移動させれば、出湯の位置を所望の位置に側方調整することができる。出湯孔開口28にドリルで開けられる出湯孔の深さは、ドリルが動作するときに、一次フレーム88を炉にさらに近づけることで増す。上の説明から、出湯孔ドリル80は、側方にも、長手方向にも進むことができるものと了解されよう。出湯孔ドリル80が出湯孔を開けると、溶融した炉内生成物が、その出湯孔から出て、樋98を下って流れるように、樋98を位置づける。
【0048】
上述の通り、図1〜図4に示される出湯孔開口28は、出湯孔開口28に詰めるクレイまたはマッドに出湯孔を開けるのに用いられるドリルビットの直径よりも実質的に長い幅を持っている。出湯孔開口28を通る溶融した炉内生成物の流量を多くしたい場合には、ジャックハンマーまたはピックツールを用いて、出湯開口のサイズを大きくすることがある。図6は、図5に示される二次フレーム82および一次フレーム88の取付けと同様なやり方で、二次フレーム112および一次フレーム114に取り付けられるジャックハンマー110を示している。これにより、ジャックハンマー110は、横向き(側方の方向)にも、長手方向(炉に向かい、また炉から遠ざかる方向)にも移動することができる。それゆえ、ジャックハンマー110は、互いに垂直な2つの方向に、事実上直線状に移動できる。
【0049】
図7〜図10は、出湯開口に設けられる出湯孔の形状のいくつかの可能な変形を示している。図7では、出湯開口28が示されている。出湯開口28は、マッドまたはクレイ120が詰められる。上記出湯孔ドリルを用いて、マッドまたはクレイ120に、円形の出湯孔122が新たに開けられている。円形の出湯孔122により、溶融した炉内生成物が、炉から流出することができる。
【0050】
概ね円形の出湯孔122を通って炉から流出する溶融した炉内生成物の流量が、充分多くはない場合には、ジャックハンマー110を使用して、その開口のサイズを大きくすることがある。例えば、図8に示されるように、ジャックハンマー110を使用して、側部124、側部126を拡張することで、概ね円形の出湯孔122が広げられることがある。もちろん、この処置により、その開口の面積が大きくなり、それにより、炉から流出する溶融した炉内生成物の流量をさらに多くすることができる。図8に示される開口を通じて得られる流量がまだ充分多くはない場合には、ジャックハンマー110を使用して出湯開口の側縁をさらに掘り取ることで、出湯孔は、さらに広げられることがある。これは、図9に示されており、その図では、出湯開口の側縁128、側縁130が、図8と比較して、さらに広げられている。
【0051】
溶融した炉内生成物の流量が多すぎるようになれば、単純な問題として、出湯孔を通って流れている溶融した炉内生成物の一部を、出湯孔の側縁上で凝固させ、それにより、出湯孔のサイズが小さくなる。これは、図10に示されており、そこでは、出湯孔の側縁上にスラグを凝固させることで、図9の出湯孔を、図10に示される出湯孔132まで近づかせている。
【0052】
図10に示される出湯孔132は、ジャックハンマー110を使用して、元の通りに開かれて、凝縮したスラグの一部を出湯開口から除去できることも理解されよう。
【0053】
出湯孔132のサイズを選択的に変更して、出湯孔132を通る溶融した炉内生成物(例えば、スラグ)の流量を変えられる能力は、本発明に特異なものと考えられる特徴である。このような特徴は可能である。なぜなら、出湯開口のサイズは、その出湯開口に詰めているクレイまたはマッドにドリルで開けられる出湯孔のサイズよりも著しく大きいからである。先行技術の出湯開口は、概ね円形であり、出湯孔を開けるのに用いられるドリルビットの直径とほぼ同じ直径を持った。それゆえ、先行技術の出湯開口は、このドリルビットによって形成された出湯孔のサイズでもたらされる最大流量よりも多く、流量を増加させる可能性を考慮しなかった。これと対照的に、本発明では、出湯孔がドリルで開けられると、出湯孔の壁と出湯開口の側面との間には、有意な広がりのクレイまたはマッドがある。これにより、出湯孔の壁と出湯開口の側面との間にある上記クレイまたはマッドの一部を除去し、それにより、出湯開口のサイズを大きくすることができる。
【0054】
本発明のさらに他の特徴として、出湯開口の高さまたは上下の広がりも、出湯孔を開けるのに用いられるドリルビットの直径よりも著しく長い。これにより、出湯孔がいつも炉の内容物に対して適正に位置づけられるように、出湯孔の垂直位置を変えることができる。例えば、出湯孔が、スラグの出湯に使用される場合には、この出湯孔は当初、出湯開口に詰めているクレイまたはマッドにおいて、スラグ層と溶湯層との界面よりも高い高さの所にドリルで開けられるべきである。
【0055】
本発明により、出湯孔を通る溶融した炉内生成物の流量は、その出湯孔のサイズを調整し、変更する(必要に応じて)ことで、変えることができる。従来のツールを使用して、本発明を実施することもある。本発明は、出湯開口を通る溶融した炉内生成物の流量の制御を向上させる。この流量は、自動的に制御されるか、あるいは、操作者の監視および介入により制御されることもある。
【0056】
本発明は、炉から除去される液状の炉内生成物が、さらに他の下流処理に供給材料として使用されるような作業での利用に特に適している。このことは、トップエントラント・サブマージド・ランス炉からの供給材料の流量が、断続するか、または一定しない流量である場合に、普通なら下流処理容器に対して供給材料を貯蔵するのに必要であるはずの中間貯蔵容器を避けることができるか、あるいは、それらの任意の中間貯蔵容器に対して求められるサイズを極力小さくすることができる可能性を考慮しているという点で望ましい。
【0057】
本発明は、炉のフットプリント鋳造機部分を最小限に抑えており、既存炉での設計変更、または新しい炉での実施には理想的である。
【0058】
当業者であれば、本発明は、具体的に説明されたもの以外の変形および変更を受ける場合があるものと理解されよう。本発明は、その精神および範囲に属するような変形および変更をすべて含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型炉からスラグを出湯する方法であって、
固定型炉からスラグを除去するための出湯開口を有する固定型炉を提供する段階と、
前記出湯開口にクレイまたはマッドを詰める段階と、
前記出湯開口の前記クレイまたは前記マッドにドリルで孔を開けて、前記スラグが通れる出湯孔を形成する段階であって、前記クレイまたは前記マッドにドリルで開けられる前記孔が、前記出湯開口の幅よりも著しく短い直径を持っているような段階と、
前記孔のサイズを調整することで、前記孔を通るスラグの流れを制御する段階と、
を有する方法。
【請求項2】
前記スラグが通る前記クレイまたは前記マッドの前記孔のサイズが、その開口を広げることで、又は、前記開口の周縁から凝固スラグを除去することで、調整される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固定型炉に設けられた前記出湯開口が、随意に丸まったかどを持つ概ね長方形の開口を有する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記出湯孔のサイズが、前記クレイまたは前記マッドの前記出湯孔の水平方向の幅を広げることで調整される請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記固定型炉からのスラグの流れを監視し、前記スラグの流れが少なすぎる場合には、前記開口を広げ、前記スラグの流れが多すぎる場合には、前記開口の周りにスラグを付着させ、それにより前記開口を狭くするか、または、さらなるマッドまたはクレイを前記開口に詰め込み、それにより前記開口を狭くする段階をさらに有する請求項1ないし4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記固定型炉からの前記スラグの流れが、前記固定型炉の操作者が行なう目視検査により監視されるか、または、自動化流量監視手段を用いて監視される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スラグが通る前記孔のサイズが、ジャックハンマーまたはピックツールから遠い所にいる操作者により操作される前記ジャックハンマーまたは前記ピックツールを用いて、大きくされる請求項1ないし6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記ジャックハンマーまたは前記ピックツールが前記孔に対して進退し得るように、前記ジャックハンマーまたは前記ピックツールが、前記ジャックハンマーまたは前記ピックツールの縦軸線に沿って延びている第1の軸線に沿って移動できるように構成されている請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ジャックハンマーまたは前記ピックツールが前記孔に対して水平方向に移動できるように、前記ジャックハンマーまたは前記ピックツールが、側方の方向に移動できるように構成されている請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記ジャックハンマーまたは前記ピックツールが、前記孔に対して水平方向に旋回する(ヨーイング)ように構成されており、また、随意に、前記ジャックハンマーまたは前記ピックツールが、垂直方向のわずかな旋回運動(ピッチ)も取る請求項7ないし9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記クレイまたは前記マッドにドリルで開けられる前記出湯孔の直径が、前記固定型炉に設けられた前記出湯開口の幅の50%よりも短い直径、好ましくは前記固定型炉に設けられた前記出湯開口の幅の40%よりも短い直径、さらに好ましくは前記固定型炉に設けられた前記出湯開口の幅の30%よりも短い直径を有する請求項1ないし10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記固定型炉に設けられた前記出湯孔の高さを事実上一定に保ちながら、前記出湯孔の水平方向の幅を長くすることで、前記出湯孔のサイズが大きくされる請求項1ないし11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記スラグが、事実上連続したやり方で前記固定型炉から除去される請求項1ないし12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記出湯開口が、前記クレイまたは前記マッドにドリルで開けられる前記出湯孔の直径よりも著しく長い高さを有する請求項1ないし13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
耐火材料で内張りされた炉容器を有するトップエントランス・サブマージド・ランス炉であって、前記炉容器の側壁が、概ね長方形の出湯開口を有することを特徴とするトップエントランス・サブマージド・ランス炉。
【請求項16】
前記概ね長方形の出湯開口が、前記出湯開口に詰め込まれるクレイまたはマッドに出湯孔を開けるのに用いられるドリルの直径よりも著しく長い幅を持っている請求項15に記載のトップエントランス・サブマージド・ランス炉。
【請求項17】
前記出湯開口が、前記ドリルの直径よりも2倍から10倍長い幅、さらに好ましくは前記ドリルの直径よりも2倍から5倍長い幅、さらに好ましくは前記ドリルの直径よりも3倍から5倍長い幅を持っている請求項16に記載のトップエントランス・サブマージド・ランス炉。
【請求項18】
前記概ね長方形の出湯開口が、丸まったかどを持っている請求項15ないし17のいずれか1つに記載のトップエントランス・サブマージド・ランス炉。
【請求項19】
前記概ね長方形の出湯開口が、前記出湯開口に詰め込まれるクレイまたはマッドに出湯孔を開けるのに用いられる前記ドリルの直径よりも著しく長い高さを有する請求項15ないし18のいずれか1つに記載のトップエントランス・サブマージド・ランス炉。
【請求項20】
前記出湯開口が、前記ドリルの直径よりも2倍から15倍長い高さ、さらに好ましくは前記ドリルの直径よりも2倍から10倍長い高さ、さらに好ましくは前記ドリルの直径よりも3倍から5倍長い高さを持っている請求項19に記載のトップエントランス・サブマージド・ランス炉。
【請求項21】
耐火材料で内張りされた炉容器を含むトップエントランス・サブマージド・ランス炉であって、前記炉容器の側壁が、出湯開口に詰め込まれたマッドまたはクレイにドリルで開けられる孔の直径よりも十分に長い幅を持つ前記出湯開口を有しており、この孔を利用して、トップエントランス・サブマージド・ランス炉からスラグを除去することを特徴とするトップエントランス・サブマージド・ランス炉。
【請求項22】
前記出湯開口が、前記ドリルの直径よりも2倍から10倍長い幅、さらに好ましくは前記ドリルの直径よりも2倍から6倍長い幅、さらに好ましくは前記ドリルの直径よりも2倍から5倍長い幅、さらに好ましくは前記ドリルの直径よりも3倍から5倍長い幅を持っている請求項20に記載のトップエントランス・サブマージド・ランス炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−511690(P2013−511690A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539142(P2012−539142)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001491
【国際公開番号】WO2011/060483
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(508046834)エクストラータ テクノロジー プロプライアタリー リミテッド (6)
【Fターム(参考)】