説明

炭化珪素単結晶製造装置

【課題】排出経路の詰まりを更に抑制し、よりSiC単結晶を長時間成長させることが可能なSiC単結晶製造装置を提供する。
【解決手段】台座9の外周にパージガス15が導入されるようにし、外周容器8bの内径が原料ガス3およびパージガス15の流動方向下流側に進むに連れて徐々に大きくなるようにする。これにより、パージガス15が外周容器8bの内周面に沿って流れる効果が高められるようにできる。したがって、効果的に排出経路にSiC多結晶が堆積することを抑制することが可能となり、SiC単結晶製造装置1をよりSiC単結晶を長時間成長させることが可能な構成にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下、SiCという)単結晶製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、SiC単結晶製造装置として、例えば特許文献1に示される構造の製造装置が提案されている。このSiC単結晶製造装置では、種結晶の下方に原料ガス導入口を設けて種結晶の下方から原料ガスを導入すると共に、種結晶の上方にガス排出口を設けて種結晶に供給された原料ガスの残りやキャリアガスを種結晶の上方から排出することで、種結晶に新しい原料ガスを供給し続け、SiC単結晶を成長させている。また、このSiC単結晶製造装置では、種結晶が配置される台座の周囲において、坩堝の内径を他の部分よりも大きくすることで排出口の開口面積を大きくすると共に、台座や坩堝に複数の穴を設け、これらの穴からエッチングガスを導入するようにしている。これにより、SiC単結晶の成長中に、種結晶が設置される台座の周囲にSiC多結晶などが堆積して排出口が詰まることを抑制し、SiC単結晶を長時間成長させられるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/022923号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、単に台座や坩堝に設けた複数の穴からエッチングガスを導入しただけでは、穴の近傍でのSiC多結晶の堆積が抑制できても、穴と穴の間や穴よりも上方部分でのSiC多結晶の堆積を防ぐことができない。このため、排出経路の詰まりの抑制が十分ではなく、SiC単結晶を長時間成長を十分に行うことができなかった。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、排出経路の詰まりを更に抑制し、よりSiC単結晶を長時間成長させることが可能なSiC単結晶製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、坩堝(8)は、台座(9)の外周にパージガス(15)を導入するガス噴出口(16)を有すると共に、台座(9)の外周を囲むように配置された外周容器(8b)を有し、台座(9)と外周面と外周容器(8b)の内周面との間を排出経路としてパージガス(15)と共に原料ガス(3)を排出させ、外周容器(8b)の内径がパージガス(15)の流動方向下流側に向かうに連れて徐々に大きくされていることを特徴としている。
【0007】
このように、台座(9)の外周にパージガス(15)が導入されるようにし、外周容器(8b)の内径が原料ガス(3)およびパージガス(15)の流動方向下流側に進むに連れて徐々に大きくなるようにしている。このような構造とすることで、パージガス(15)が外周容器(8b)の内周面に沿って流れる効果が高められるようにできる。これにより、効果的に排出経路にSiC多結晶が堆積することを抑制することが可能となり、SiC単結晶製造装置をよりSiC単結晶を長時間成長させることが可能な構成にできる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、坩堝(8)は、台座(9)の外周にパージガス(15)を導入するガス噴出口(16)を有すると共に、台座(9)の外周を囲むように配置された外周容器(8b)を有し、台座(9)と外周面と外周容器(8b)の内周面との間を排出経路としてパージガス(15)と共に原料ガス(3)を排出させ、外周容器(8b)の内周面には複数の穴(8ba)が形成されており、外周容器(8b)の内周面に沿って流動するパージガス(15)が複数の穴(8ba)内にも流動させられることを特徴としている。
【0009】
このように、外周容器(8b)の内周面に沿って流動するパージガス(15)が複数の穴(8ba)内にも流動させられる構造としている。このため、パージガス(15)が外周容器(8b)の内周面に沿って流れる効果が高まる。したがって、請求項1に記載の発明と同様、より効果的に排出経路にSiC多結晶が堆積することを抑制することが可能となる。
【0010】
例えば、請求項3に記載したように、複数の穴(8ba)が外周容器(8b)の内周面から斜め上方に向けて延設される構造であれば、よりパージガス(15)が流動し易い構造となるようにできる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、外周容器(8b)の内径がパージガス(15)の流動方向下流側に向かうに連れて徐々に大きくされていることを特徴としている。
【0012】
このように、外周容器(8b)に複数の穴(8ba)を形成する構造についても、請求項1に記載の発明のように、外周容器(8b)の内径がパージガス(15)の流動方向下流側に向かうに連れて徐々に大きくなる構造を適用することができる。これにより、よりパージガス(15)が外周容器(8b)の内周面に沿って流れる効果が高まるようにできる。したがって、より効果的に排出経路にSiC多結晶が堆積することを抑制することが可能となる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、坩堝(8)は、外周容器(8b)に繋がる加熱容器(8a)を有し、該加熱容器(8a)には、原料ガス(3)が導入される内側筒部(8ab)と該内側筒部(8ab)の外周に配置される外側筒部(8ac)とが備えられ、内側筒部(8ab)と外側筒部(8ac)の間の隙間(16)にてガス噴出口が構成されることで、ガス噴出口が台座(9)の外周を一周するリング状の形状とされていることを特徴としている。
【0014】
このように、隙間(16)により構成するガス噴出口がリング状の形状となるようにしていることから、台座(9)の外周の全周からパージガス(15)を導入することが可能となる。これにより、より効果的に排出経路にSiC多結晶が堆積することを抑制することが可能となり、更に上記効果を得ることが可能となる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、坩堝(8)の内周面が高融点金属炭化物にてコーティングされていることを特徴としている。このように、坩堝(8)の内周面を高融点金属炭化物にてコーティングすることにより、坩堝(8)の熱エッチングを抑制することができる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0019】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態のSiC単結晶製造装置1の部分断面斜視図を示す。以下、この図を参照してSiC単結晶製造装置1の構造について説明する。
【0020】
図1に示すSiC単結晶製造装置1は、底部に備えられた流入口2を通じてキャリアガスと共にSiおよびCを含有するSiCの原料ガス3(例えば、シラン等のシラン系ガスとプロパン等の炭化水素系ガスの混合ガス)を供給し、上部の流出口4を通じて排出することで、SiC単結晶製造装置1内に配置したSiC単結晶基板からなる種結晶5上にSiC単結晶を結晶成長させるものである。
【0021】
SiC単結晶製造装置1には、真空容器6、断熱材7、坩堝8、台座9、外周断熱材10、回転引上ガス導入機構11および第1、第2加熱装置12、13が備えられている。
【0022】
真空容器6は、石英ガラスなどで構成され、中空円筒状を為しており、キャリアガスや原料ガス3の導入導出が行え、かつ、SiC単結晶製造装置1の他の構成要素を収容すると共に、その収容している内部空間の圧力を真空引きすることにより減圧できる構造とされている。この真空容器6の底部に原料ガス3の流入口2が設けられ、上部に原料ガス3の流出口4が設けられている。
【0023】
断熱材7は、円筒形状を為しており、真空容器6に対して同軸的に配置され、中空部により原料ガス導入通路7aを構成している。また、断熱材7には、例えば環状に構成されたパージガス導入通路7bも備えられており、真空容器6の底面に形成されたパージガス導入口14を通じて導入されるパージガス15の流れを周方向の広範囲に拡げて台座9側に導ける構造とされている。この断熱材7は、例えば黒鉛で構成されるが、表面をTaC(炭化タンタル)やNbC(炭化ネオジウム)などの高融点金属炭化物にてコーティングした黒鉛などで構成されるようにすれば、熱エッチングを抑制することもできる。なお、パージガス15は、ArやHeなどの不活性ガスやH2やHClなどのエッチングガスにて構成され、原料ガス3のうちの未反応ガスを希釈化してSiC多結晶の付着を防止する付着防止ガスとして機能する。
【0024】
坩堝8は、加熱容器8aと外周容器8bとを備えた構成とされている。坩堝8は、例えば黒鉛で構成されるが、表面をTaC(炭化タンタル)やNbC(炭化ネオジウム)などの高融点金属炭化物にてコーティングした黒鉛などで構成されるようにすれば、熱エッチングを抑制することもできる。
【0025】
加熱容器8aは、原料ガス3を加熱分解する加熱室を構成しており、本実施形態では、加熱容器8aは、原料ガス導入管8aaと内側筒部8abおよび外側筒部8acを有した構成とされている。
【0026】
原料ガス導入管8aaは、中空部を有する円筒状部材で構成されており、断熱材7に形成された原料ガス導入通路7a内に配置されいる。この原料ガス導入管8aa内を通じて原料ガス3が坩堝8内に導入される。原料ガス導入管8aaは、台座9側において外径が拡大されたフランジ部とされており、フランジ部が断熱材7の外部に張り出し、パージガス導入通路7bの内周側端部の位置まで延設されている。つまり、坩堝8によって断熱材7が覆われ、加熱室側には断熱材7が露出しないようにしてある。
【0027】
内側筒部8abは、例えば中空部を有する円筒状部材で構成されている。この内側筒部8abの中空部は原料ガス導入管8aaの中空部と連通され、原料ガス導入管8aa内を通じて導入される原料ガス3を通過させる。この内側筒部8abの中空部によって加熱室が構成されている。本実施形態では、内側筒部8abは、原料ガス導入管8aaにおけるフランジ部の上に設置されており、内側筒部8abの外径とフランジ部の外径とが同寸法とされている。そして、内側筒部8abと原料ガス導入管8aaが同軸的に配置されることで、内側筒部8abの外周面とフランジ部の外周面とが一致させられている。
【0028】
外側筒部8acは、内側筒部8abと対応する形状とされ、例えば中空部を有する円筒状部材で構成されている。外側筒部8acの中空部内に内側筒部8abが配置されると共に、これらの中心軸が一致させられることで外側筒部8acおよび内側筒部8abが同心円状に配置されるようにしている。外側筒部8acの内径は、内側筒部8abの外径よりも所定寸法大きく設定されており、外側筒部8acと内側筒部8abとの間に所定の隙間16が形成されるようにしている。この隙間16が断熱材7のパージガス導入通路7bと連通され、この隙間16をパージガス導入経路の一部として、パージガス導入通路7bから導入されるパージガス15を台座9の外周部に導くと共に、隙間16の先端をガス噴出口としてパージガス15を導入するようにしている。また、外側筒部8acの内径は、断熱材7のパージガス導入通路7bの外周側の径と一致させられている。このため、隙間16とパージガス導入通路7bとが同じ幅になっている。そして、このような隙間16は内側筒部8abと外側筒部8acとの間の全域に構成されることから、パージガス15を導入するガス噴出口が台座9の外周を一周するリング状の形状となる。
【0029】
一方、外周容器8bは、台座9の外周を囲むように配置されている。外周容器8bは、中空部を有する円筒形状とされており、外径は一定とされているが、内径は原料ガス3やパージガス15の流動方向下流側に進むに連れて徐々に大きくされている。このため、外周容器8bの内周面によってテーパ面が構成され、原料ガス3およびパージガス15の流動経路の断面積が徐々に広がる構造となっている。また、外周容器8bのうち最も加熱容器8a側の端部では、内径が外側筒部8acの内径と一致させられており、外径が外側筒部8acの外径と一致させられている。このため、外周容器8bの内周面と外側筒部8acの内周面とは段差なく連続的に繋がり、外周容器8bの外周面と外側筒部8acの外周面も段差なく連続的に繋がった状態とされている。
【0030】
台座9は、加熱容器8aの中心軸と同軸的に配置された円盤状部材であり、加熱室側の一面を取付面として、種結晶5が下向きに取り付けられることで種結晶5の表面にSiC単結晶を成長させる。台座9は、種結晶5の取付面と反対側の一面に後述するパイプ材11aが接続されることで、所望位置に支持されている。この台座9も、例えば黒鉛で構成されるが、表面をTaC(炭化タンタル)やNbC(炭化ネオジウム)などの高融点金属炭化物にてコーティングした黒鉛などで構成されるようにすれば、熱エッチングを抑制することもできる。
【0031】
外周断熱材10は、坩堝8の外周面と真空容器6の内周面との間において、坩堝8の外周を囲むように配置されている。この外周断熱材10により、坩堝8と真空容器6との間の断熱が成され、坩堝8の保温が行われている。
【0032】
回転引上ガス導入機構11は、パイプ材11aを介して台座9の回転および引上げを行う。パイプ材11aは、一端が台座9のうちの種結晶5の取付面と反対側の一面に接続されており、他端が回転引上ガス導入機構11の本体に接続されている。このパイプ材11aは、例えばSUSや黒鉛によって構成されるが、表面をTaC(炭化タンタル)などの高融点金属炭化物にてコーティングした黒鉛などで構成されるようにすれば、熱エッチングを抑制することもできる。このような構成により、パイプ材11aと共に台座9、種結晶5およびSiC単結晶の回転および引き上げが行え、SiC単結晶の成長面が所望の温度分布となるようにしつつ、SiC単結晶の成長に伴って、その成長表面の温度が常に成長に適した温度に調整できる。
【0033】
第1、第2加熱装置12、13は、誘導加熱用コイルやヒータによって構成され、真空容器6の周囲を囲むように配置されている。これら第1、第2加熱装置12、13は、それぞれ独立して温度制御できるように構成されている。このため、より細やかな温度制御を行うことができる。第1加熱装置12は、加熱容器8aと対応した位置に配置されている。第2加熱装置13は、台座9や外周容器8bと対応した位置に配置されている。このような配置とされているため、第1、第2加熱装置12、13を制御することにより、SiC単結晶の成長表面の温度分布をSiC単結晶の成長に適した温度に調整できる。
【0034】
このような構造により、本実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1が構成されている。続いて、本実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1を用いたSiC単結晶の製造方法について説明する。
【0035】
まず、台座9に種結晶5を取り付けたのち、第1、第2加熱装置12、13を制御し、所望の温度分布を付ける。すなわち、種結晶5の表面において原料ガス3が再結晶化されることでSiC単結晶が成長しつつ、加熱容器8a内において再結晶化レートよりも昇華レートの方が高くなる温度となるようにする。
【0036】
また、真空容器6を所望圧力にしつつ、必要に応じてArやHeなどの不活性ガスによるキャリアガスやH2やHClなどのエッチングガスを導入しながら原料ガス導入管8aaを通じて原料ガス3を導入する。これにより、図1中の破線矢印で示したように、原料ガス3が流動し、種結晶5に供給されてSiC単結晶を成長させることができる。そして、原料ガス3のうちの未反応ガスについては、台座9の外周と坩堝8の内周面との間を排出経路として上方に流動させられ、流出口4を通じて排出させられる。
【0037】
また、このとき同時に、パージガス導入口14よりArやHeなどの不活性ガスやH2やHClなどのエッチングガスにて構成されるパージガス15を導入している。このため、断熱材7のパージガス導入通路7bおよび内側筒部8abと外側筒部8acとの間の隙間16をパージガス導入経路として、図1中の実線矢印に示したように、パージガス15が台座9の外周部に導入される。これにより、台座9の外周部において、原料ガス3のうちの未反応ガスがパージガス15によって希釈され、台座9の外周面と坩堝8の内周面との間を排出経路として流出口4から排出される際に、排出経路にSiC多結晶が堆積することを抑制することが可能となる。
【0038】
そして、本実施形態では、外周容器8bの内径が原料ガス3およびパージガス15の流動方向下流側に進むに連れて徐々に大きくなるようにしてあることから、パージガス15が外周容器8bの内周面に沿って流れる効果が高まる。具体的には、外周容器8bの内周面の径を徐々に拡大しているため、原料ガス3とパージガス15の流れの抵抗になり難いし、パージガス15が引き付けられることで、パージガス15が外周容器8bの内周面に沿って流れ易くなる。このため、より効果的に排出経路にSiC多結晶が堆積することを抑制することが可能となる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のSiC単結晶製造装置1によれば、台座9の外周にパージガス15が導入されるようにしている。そして、外周容器8bの内径が原料ガス3およびパージガス15の流動方向下流側に進むに連れて徐々に大きくなるようにすることで、パージガス15が外周容器8bの内周面に沿って流れる効果が高められるようにしている。これにより、効果的に排出経路にSiC多結晶が堆積することを抑制することが可能となり、SiC単結晶製造装置1をよりSiC単結晶を長時間成長させることが可能な構成にできる。
【0040】
また、本実施形態では、隙間16により構成するガス噴出口がリング状の形状となるようにしていることから、台座9の外周の全周からパージガス15を導入することが可能となる。これにより、より効果的に排出経路にSiC多結晶が堆積することを抑制することが可能となり、更に上記効果を得ることが可能となる。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して坩堝8の構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0042】
図2は、本実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、第1実施形態に対して、坩堝8の構造を変更している。具体的には外周容器8bの構成を変更しており、第1実施形態のように外周容器8bの内径を徐々に変化させるのではなく、外周容器8bの内周面に複数の穴8baを形成すると共に外周容器8bの内部に複数の穴8baが繋がる連通通路8bbを形成した構造としている。
【0043】
各穴8baは、坩堝8の中心軸を中心とした周方向に沿って複数個が等間隔に配置されていると共に、坩堝8の中心軸方向にも複数個が等間隔に配置されている。各穴8baは、原料ガス3およびパージガス15の流動方向下流方向と径方向に延びるように、つまり外周容器8bの内周面から斜め上方に向けて延設されている。そして、各穴8baは、外周容器8bの内部において連通通路8bbと繋がっている。連通通路8bbは、各穴8baと対応する位置に形成されており、例えば坩堝8の中心軸に沿って複数本形成されている。
【0044】
このように構成されたSiC単結晶製造装置1では、パージガス15が内側筒部8abと外側筒部8acとの間の隙間16を通じて導入されると、外周容器8bbの内周に沿ってパージガス15が流動させられると共に、各穴8ba内にも流動させられる。このため、パージガス15が外周容器8bの内周面に沿って流れる効果が高まる。したがって、第1実施形態と同様、より効果的に排出経路にSiC多結晶が堆積することを抑制することが可能となる。
【0045】
(他の実施形態)
上記各実施形態に示したSiC単結晶製造装置1の具体的な構造は、単なる一例であり、形状や材質などについて適宜変更することができる。
【0046】
例えば、上記第1実施形態では、加熱容器8aと外周容器8bとによって坩堝8を構成し、加熱容器8aを原料ガス導入管8aaと内側部8abおよび外側筒部8acを有した構成としたが、これらを一体構造としても良いし、これらの一部を一体構造としても良い。また、原料ガス導入管8aaにフランジ部を設けた構造としたが、内側筒部8abを中央が開口する有底筒状部材とすることで、原料ガス導入管8aaを単に断熱材7の原料ガス導入経路7bの内壁を覆うための部材として用いても良い。この場合、原料ガス導入管8aaを無くして、断熱材7の原料ガス導入経路7bの内周面をTaC(炭化タンタル)やNbC(炭化ネオジウム)などの高融点金属炭化物にてコーティングした構成としても良い。また、原料ガス導入管8aaのフランジ部を中央部が開口するプレート状の部材として構成しても良い。なお、内側筒部8abと外側筒部8acを一体化する場合には、部分的に隙間16に代えて内側筒部8abと外側筒部8acとの間を連結する部材が配置されるようにすればよい。
【0047】
また、種結晶5や台座9が円盤形状である場合について説明したが、これらは必ずしも円盤形状である必要はなく、正方形などの他の形状であっても構わない。
【0048】
また、第2実施形態のように、外周容器8bに対して複数の穴8baや連通通路8bbを備えた構造に対して、第1実施形態のように外周容器8bの内径がパージガス15の流動方向下流側に向かうに連れて徐々に大きくされる構造を組み合わせても良い。
【0049】
また、上記各実施形態すべてについて、誘導加熱方式と直接加熱方式の双方に対して本発明が適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 SiC単結晶製造装置
3 原料ガス
5 種結晶
8 坩堝
8a 加熱容器
8aa 原料ガス導入管
8ab 内側筒部
8ac 外側筒部
8b 外周容器
8ba 穴
8bb 連通通路
9 台座
12、13 第1、第2加熱装置
15 パージガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素単結晶を成長させる円筒形状の坩堝(8)内に、炭化珪素単結晶基板からなる種結晶(5)が貼り付けられる台座(9)を配置すると共に、前記台座(9)に貼り付けた前記種結晶(5)の下方から炭化珪素の原料ガス(3)を供給することにより、前記種結晶(5)の表面に前記炭化珪素単結晶を成長させると共に、前記原料ガス(3)のうちの未反応ガスを前記坩堝(8)の内周面と前記台座(9)の外周面との間を排出経路として排出させる炭化珪素単結晶の製造装置において、
前記坩堝(8)は、前記台座(9)の外周にパージガス(15)を導入するガス噴出口(16)を有すると共に、前記台座(9)の外周を囲むように配置された外周容器(8b)を有し、前記台座(9)と外周面と前記外周容器(8b)の内周面との間を前記排出経路として前記パージガス(15)と共に前記原料ガス(3)を排出させ、前記外周容器(8b)の内径が前記パージガス(15)の流動方向下流側に向かうに連れて徐々に大きくされていることを特徴とする炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項2】
炭化珪素単結晶を成長させる円筒形状の坩堝(8)内に、炭化珪素単結晶基板からなる種結晶(5)が貼り付けられる台座(9)を配置すると共に、前記台座(9)に貼り付けた前記種結晶(5)の下方から炭化珪素の原料ガス(3)を供給することにより、前記種結晶(5)の表面に前記炭化珪素単結晶を成長させると共に、前記原料ガス(3)のうちの未反応ガスを前記坩堝(8)の内周面と前記台座(9)の外周面との間を排出経路として排出させる炭化珪素単結晶の製造装置において、
前記坩堝(8)は、前記台座(9)の外周にパージガス(15)を導入するガス噴出口(16)を有すると共に、前記台座(9)の外周を囲むように配置された外周容器(8b)を有し、前記台座(9)と外周面と前記外周容器(8b)の内周面との間を前記排出経路として前記パージガス(15)と共に前記原料ガス(3)を排出させ、前記外周容器(8b)の内周面には複数の穴(8ba)が形成されており、前記外周容器(8b)の内周面に沿って流動する前記パージガス(15)が前記複数の穴(8ba)内にも流動させられることを特徴とする炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項3】
前記複数の穴(8ba)は、前記外周容器(8b)の内周面から斜め上方に向けて延設されていることを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項4】
前記外周容器(8b)の内径が前記パージガス(15)の流動方向下流側に向かうに連れて徐々に大きくされていることを特徴とする請求項2または3に記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項5】
前記坩堝(8)は、前記外周容器(8b)に繋がる加熱容器(8a)を有し、該加熱容器(8a)には、前記原料ガス(3)が導入される内側筒部(8ab)と該内側筒部(8ab)の外周に配置される外側筒部(8ac)とが備えられ、前記内側筒部(8ab)と前記外側筒部(8ac)の間の隙間(16)にて前記ガス噴出口が構成されることで、前記ガス噴出口が前記台座(9)の外周を一周するリング状の形状とされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項6】
前記坩堝(8)の内周面が高融点金属炭化物にてコーティングされていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の炭化珪素単結晶製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−35729(P2013−35729A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174775(P2011−174775)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】