説明

炭化珪素単結晶製造装置

【課題】原料ガスのガス流の安定化を図り、長時間安定してSiC単結晶を成長させることを可能とする。
【解決手段】台座10とヒータ11とを別体にすると共に、排気ガス出口11aが台座10よりも下方位置に配置されるようにすることで台座10によって覆われないようにし、台座10が引上げられても面積の変動が無いようにする。このような構成とすることで、SiC単結晶の成長中に原料ガス3のガス流が変化しないようにできる。これにより、原料ガス3のガス流の安定化を図ることが可能となり、長時間安定してSiC単結晶を成長させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下、SiCという)単結晶製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、SiC単結晶製造装置として、例えば特許文献1に示される構造の製造装置が提案されている。図3は、この従来のSiC単結晶製造装置J1の断面図である。
【0003】
このSiC単結晶製造装置J1では、有底円筒状の台座J2を開口部側が下方に向くように配置すると共に、台座J2の底部に種結晶J3を配置し、真空容器J4の底部から導入される原料ガスJ5がプレートJ6の透孔J6aおよび筒体J7を通じて種結晶J3に供給されるようにしている。そして、高周波誘導コイルJ8によって台座J2の円筒部分および筒体J7を誘導加熱し、これらをヒータとして台座J2の内部や筒体J7の内部を所望温度に加熱することにより、種結晶J3の表面にSiC単結晶を成長させる。
【0004】
このようなSiC単結晶製造装置J1では、台座J2の底部のうち種結晶J3が配置される面と反対側はパイプ材J9に連結されており、このパイプ材J9を介して台座J2が真空容器J4に組み付けられている。また、台座J2の円筒部分の内側に筒体J7を部分的に挿入することで、原料ガスJ5が種結晶J3の表面に集中的に供給されるようにすると共に、台座J2の円筒部分と筒体J7の間の隙間や台座J2の先端とプレートJ6との間を排出経路として原料ガスJ5のうちの未反応ガスが排出できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−187269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に示される構造のSiC単結晶製造装置J1において、SiC単結晶を長尺成長させられるように、引上機構によりパイプ材J9と共に台座J2を引き上げられる構造にすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、上記SiC単結晶製造装置J1では、台座J2の円筒部分をヒータとして機能させる構造、つまりヒータを台座J2と一体構造としているため、引上機構により台座J2を引上げると、台座J2の円筒部分も引上げられることになり、台座J2の円筒部分とプレートJ6との間に構成される排出経路の面積が大きくなっていく。このため、原料ガスJ5のガス流が変化してしまい、長時間安定してSiC単結晶を成長させることを妨げていた。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、原料ガスのガス流の安定化を図り、長時間安定してSiC単結晶を成長させることを可能にできるSiC単結晶製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、真空容器(6)の底面に配置され、原料ガス(3)の導入を行う導入口(2)と、導入口(2)と繋がる透孔(8a)が形成されたプレート(8)と、プレート(8)の上に位置し、導入口(2)から台座(10)側に向けて延設され、原料ガス(3)を通過させる中空部を有し、原料ガス(3)を加熱分解して種結晶(5)に向けて供給する筒体(9)と、筒体(9)および台座(10)の外周に配置されたヒータ(11)と、真空容器(6)のうち筒体(9)と対応する場所の外周に配置され、筒体(9)の加熱を行う第1加熱装置(14)と、真空容器(6)のうち台座(10)と対応する場所の外周に配置され、ヒータ(11)のうち台座(10)の外周に位置する部分の加熱を行う第2加熱装置(15)と、台座(10)の引き上げを行う引上機構(13)とを有し、台座(10)よりも下方位置において、ヒータ(11)もしくはプレート(8)には排気ガス出口(8b、11a)が備えられており、原料ガス(3)のうちの未反応ガスが筒体(9)とヒータ(11)との間の隙間より排気ガス出口(8b、11a)を通じて排出される構造とされていることを特徴としている。
【0010】
このように、台座(10)とヒータ(11)とを別体にすると共に、排気ガス出口(11a)が台座(10)よりも下方位置に配置されるようにすることで台座(10)によって覆われないようにし、台座(10)が引上げられても排出経路の面積の変動が無いようにしている。このような構成とすることで、SiC単結晶の成長中に原料ガス(3)のガス流が変化しないようにできる。これにより、原料ガス(3)のガス流の安定化を図ることが可能となり、長時間安定してSiC単結晶を成長させることが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、排気ガス出口(11a)は、ヒータ(11)に備えられており、原料ガス(3)のうちの未反応ガスが排気ガス出口(11a)を通じて該排気ガス出口(11a)の径方向外方に向けて排出されることを特徴としている。
【0012】
このように、ヒータ(11)に排気ガス出口(11a)を設けることで、原料ガス(3)のうちの未反応ガスが坩堝の径方向外方に向かって排出されるようにしている。この場合、未反応ガスが徐々により広い範囲に流動していくことになり、未反応ガスの排出経路を広くすることが可能となる。これにより、未反応ガスを希釈化することが可能となり、より排気ガス出口(11a)を通じる排出経路にSiC多結晶が析出することを抑制することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、排気ガス出口(8b)は、プレート(8)に備えられており、原料ガス(3)のうちの未反応ガスが排気ガス出口(8b)を通じてプレート(8)の下方から排出されることを特徴としている。
【0014】
このように、プレート(8)に排気ガス出口(8b)を形成することで、原料ガス(3)のうちの未反応ガスが坩堝の下方から排出されるようにしても良い。
【0015】
この場合において、請求項4に記載の発明のように、導入口(2)の外周を囲む断熱材(7)を備え、断熱材(7)の上にプレート(8)が配置された構成とする場合には、例えば、断熱材(7)の外周面がプレート(8)に備えられた排気ガス出口(8b)よりも内側に位置するようにすれば良い。
【0016】
請求項5に記載の発明では、台座(10)は、種結晶(5)が配置される配置面を構成する底部と、筒状部分とを有した有底筒状部材にて構成され、筒状部分を囲むようにヒータ(11)が配置されており、ヒータ(11)の厚みが台座(10)の筒状部分の厚みよりも厚くされていることを特徴としている。
【0017】
このように、ヒータ(11)の厚みが台座(10)における筒状部分の厚みよりも厚くなるようにしている。台座(10)における筒状部分の厚みが厚すぎると、台座(10)側でヒータ(11)側の温度を遮ってしまう。これにより、第2加熱装置(15)によるヒータ(11)の温度制御に対して応答性よくSiC単結晶の成長表面の温度を制御できなくなる可能性がある。このため、ヒータ(11)の厚みが台座(10)における筒状部分の厚みよりも厚くなるようにすることで、ヒータ(11)の温度制御によって応答性よくSiC単結晶の成長表面の温度を制御することが可能となる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、筒体(9)と台座(10)における筒状部分との間に隙間が構成された状態で、台座(10)における筒状部分によって筒体(9)の外周が囲まれており、筒体(9)と台座(10)における筒状部分との間の隙間から排気ガス出口(8b、11a)を通じて排出される経路を排出経路として原料ガス(3)のうちの未反応ガスが排出されることを特徴としている。
【0019】
このように、台座(10)に筒状部分を備える場合には、筒体(9)と台座(10)における筒状部分との間の隙間から排気ガス出口(8b、11a)を通じて排出される経路を排出経路として原料ガス(3)のうちの未反応ガスが排出されるようにすることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、排気ガス出口(8b、11a)は、第1、第2加熱装置(14、15)による加熱時に2250〜2500℃とされる位置に配置されていることを特徴としている。
【0021】
このように、加熱時に、ヒータ(11)の排気ガス出口(11a)の位置が2250〜2500℃となるようにすれば、排気ガス出口(11a)がSiC多結晶によって詰まることを抑制することもできる。
【0022】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1の断面図である。
【図3】従来のSiC単結晶製造装置J1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0025】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態のSiC単結晶製造装置1の断面図を示す。以下、この図を参照してSiC単結晶製造装置1の構造について説明する。
【0026】
図1に示すSiC単結晶製造装置1は、底部に備えられた導入口2を通じてキャリアガスと共にSiおよびCを含有するSiCの原料ガス3(例えば、珪素含有ガスとしてシラン等のシラン系ガスと炭素含有ガスとしてプロパン等の炭化水素系ガスの混合ガス)を供給し、排出口4を通じて排出することで、SiC単結晶製造装置1内に配置したSiC単結晶基板からなる種結晶5上にSiC単結晶を結晶成長させるものである。
【0027】
SiC単結晶製造装置1には、真空容器6、断熱材7、プレート8、筒体9、台座10、ヒータ11、外周断熱材12、回転引上機構13および第1、第2加熱装置14、15が備えられている。
【0028】
真空容器6は、石英ガラスなどで構成され、中空円筒状を為しており、キャリアガスや原料ガス3の導入排出が行え、かつ、SiC単結晶製造装置1の他の構成要素を収容すると共に、その収容している内部空間の圧力を真空引きすることにより減圧できる構造とされている。この真空容器6の底部に原料ガス3の導入口2が設けられていると共に原料ガス3のうちの未反応ガスの排出口4が設けられている。
【0029】
断熱材7は、導入口2の周囲に配置され、導入口2から外周方向への熱の拡散を抑制するものであり、円筒形状を為しており、真空容器6および筒体9に対して同軸的に配置されている。この断熱材7は、例えば黒鉛、もしくは、表面がTaC(炭化タンタル)などの高融点金属炭化物にてコーティングされた黒鉛などで構成される。
【0030】
プレート8は、断熱材7上に配置された円盤状の部材であり、例えば黒鉛、もしくは、表面がTaC(炭化タンタル)などの高融点金属炭化物にてコーティングされた黒鉛などで構成されている。このプレート8の上には、筒体9およびヒータ11が設置されている。そして、プレート8の中央部には導入口2と連結される透孔8aが形成されており、この透孔8aを通じて、導入口2から導入される原料ガス3が筒体9内に供給されるようになっている。
【0031】
筒体9は、プレート8上において、導入口2から台座10における種結晶5の配置場所に向けて延設されている。具体的には、筒体9は、中空部を有する筒状部材、例えば中空円筒状部材で構成され、真空容器6に対して同軸的に配置されている。原料ガス3は、導入口2およびプレート8の透孔8aを通じたのち、この筒体9の中空部を通過してから種結晶5の表面に供給される。
【0032】
例えば、筒体9は、例えば黒鉛、もしくは、表面がTaC(炭化タンタル)などの高融点金属炭化物にてコーティングされた黒鉛などで構成され、台座10よりも原料ガス3の流動経路上流側に配置されている。この筒体9により、導入口2から供給された原料ガス3を種結晶5に導くまでに、原料ガス3に含まれたパーティクルを排除しつつ、原料ガス3を加熱分解している。この筒体9内で加熱分解された原料ガス3が種結晶5に供給され、種結晶5の表面において炭素や珪素原子が過飽和な状態となることで、SiC単結晶が種結晶5の表面に析出させられる。
【0033】
台座10は、円盤状の底部を種結晶5の配置面とする有底筒形状にて構成されており、本実施形態では有底円筒形状とされている。台座10は、開口する一端側を下方に向け、筒体9に覆い被せるように配置されており、筒体9の中心軸を同軸として配置されている。この台座10も、例えば黒鉛、もしくは、表面がTaC(炭化タンタル)などの高融点金属炭化物にてコーティングされた黒鉛などで構成される。この台座10の底部に、種結晶5を貼り付けて保持し、種結晶5の表面にSiC単結晶を成長させる。また、台座10は、種結晶5が配置される面と反対側となる裏面において回転引上機構13と連結されている。
【0034】
台座10のうちの筒状部分の厚みは、例えば5〜10mmとされている。台座10のうちの筒状部分の軸方向長さは、回転引上機構13によって台座10を引上げる前の状態において、台座10の開口している側の先端が後述するヒータ11に形成された排気ガス出口11aよりも上方に位置する長さとされている。また、台座10における種結晶5の配置面は、成長させたいSiC単結晶の形状となっていればよく、円盤状以外の形状であっても構わないが、例えば台座10が円盤状とされる場合には、台座10の内径は、筒体9の外径よりも大きくされる。このため、台座10における筒状部分の内周面と筒体9の外周面との間に隙間が形成される。本実施形態では、この隙間とヒータ11の排気ガス出口11aを排出経路として、原料ガス3のうちの未反応ガスが排出口4に導かれるようになっている。
【0035】
ヒータ11は、台座10が収容される中空部を有した筒形状とされ、台座10の外周を囲むように配置されている。ヒータ11は、台座10の外径と対応する形状とされており、本実施形態では円筒形状とされている。ヒータ11の厚みは、台座10における筒状部分の厚みよりも厚くされており、例えば15mmとされている。ヒータ11の内径は、台座10の外径と同じないし若干大きくされており、ヒータ11の内周面に沿って台座10が中心軸方向および周方向に移動可能に構成されている。また、ヒータ11のうち台座10の開口している側の先端よりも下方位置には、排気ガス出口11aが形成されている。排気ガス出口11aの数は1つでも複数個であっても良いが、原料ガス3の未反応ガスが偏りなく排出されるようにするために、周方向等間隔に複数個設けられるようにするのが好ましい。排気ガス出口11aの形状については任意であり、円形、四角形、その他の多角形などどのような形状であっても構わない。
【0036】
このような構造によりプレート8、筒体9、台座10およびヒータ11が構成されており、これらによってSiC単結晶の成長空間を構成する坩堝が構成される。
【0037】
外周断熱材12は、断熱材7やヒータ11等を含む坩堝の外周を囲むように配置され、真空容器6の外壁面に熱が拡散することを抑制する。この外周断熱材12も、例えば黒鉛、もしくは、表面がTaC(炭化タンタル)などの高融点金属炭化物にてコーティングされた黒鉛などで構成される。
【0038】
回転引上機構13は、パイプ材13aおよび本体13bを有した構成とされている。パイプ材13aは、一端が台座10のうち種結晶5が貼り付けられる面と反対側となる裏面に接続されており、他端が回転引上機構13の本体13bに接続されている。このパイプ材13aは、例えばSUSなどで構成される。本体13bは、パイプ材13aの回転および引上げを行うモータなどを内蔵している。
【0039】
このような構成により、SiC単結晶の成長中に、本体13bを駆動することにより、パイプ材13aの回転および引上げ動作を行うことが可能となる。これにより、パイプ材13aと共に、台座10、種結晶5およびSiC単結晶の回転および引き上げが行え、SiC単結晶の成長面が所望の温度分布となるようにしつつ、SiC単結晶の成長に伴って、その成長表面の温度が常に成長に適した温度となるように調整できる。
【0040】
第1、第2加熱装置14、15は、誘導加熱コイルによって構成されている。第1加熱装置14は、真空容器6のうち筒体9と対応する場所の外周を囲むように配置されており、第2加熱容器14は、真空容器6のうち台座10の底部近傍、つまりSiC単結晶の成長表面と対応する場所の外周を囲むように配置されている。これら第1、第2加熱装置14、15は、それぞれ独立して温度制御できるように構成されており、第1、第2加熱装置14、15による加熱対象部位の温度制御を独立して細やかに行うことができる。すなわち、第1加熱装置14によって筒体9を加熱することで、筒体9が原料ガス3を加熱分解できる温度に制御でき、第2加熱装置15によってヒータ11を加熱してSiC単結晶の成長表面を加熱することで、SiC単結晶の成長表面の温度分布をSiC単結晶の成長に適した状態に調整できる。
【0041】
このような構造により、本実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1が構成されている。続いて、本実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1を用いたSiC単結晶の製造方法について説明する。
【0042】
まず、台座10に種結晶5を取り付けたのち、第1、第2加熱装置14、15を制御し、所望の温度分布を付ける。具体的には、第1加熱装置14を制御することで筒体9およびヒータ11の下方部分を誘導加熱して例えば2500℃にすると共に、第2加熱装置15を制御することでヒータ11のうちの上方部分(台座10の外周と対応する部分、つまりSiC単結晶の成長表面と対応する部分)を誘導加熱して例えば2200℃に保持する。このような温度とすることで、筒体9ではこの後導入される原料ガス3を加熱分解できると共に、種結晶5の表面において原料ガス3を再結晶化することが可能となる。また、ヒータ11の排気ガス出口11aの位置を加熱時に2250〜2500℃となる場所に設定しておけば、排気ガス出口11aがSiC多結晶によって詰まることを抑制することもできる。
【0043】
また、真空容器6を所望圧力にしつつ、必要に応じてArやHeなどの不活性ガスによるキャリアガスやH2やHClなどのエッチングガスを導入しながら導入口2を通じて原料ガス3を導入する。例えば、シラン1リットル/分、プロパン0.33リットル/分、水素15リットル/分のレートで導入する。これにより、原料ガス3は筒体9の内部を通じて種結晶5の表面に供給されたのち、筒体9の外周面と台座10の筒状部分の内周面との間の隙間およびヒータ11の排気ガス出口11aを通じる経路で流動する。そして、加熱された筒体9内において原料ガス3が加熱分解された状態で種結晶5の表面に供給され、種結晶5の表面上にSiC単結晶が成長させられる。
【0044】
また、SiC単結晶の成長に伴って、回転引上機構13より、パイプ材12aと台座10および種結晶5を回転させながら引上げる。これにより、SiC単結晶を長尺させることができる。このようにして、SiC単結晶を成長させることが可能となる。このとき、台座10が引き上げられることになるが、台座10を引上げても台座10と別体とされたヒータ11は引上げられない。そして、ヒータ11に形成されている排気ガス出口11aについては台座10の開口する側の先端よりも下方に位置していることから、台座10の引上げによって面積が変化することもない。したがって、SiC単結晶の成長中に原料ガス3のガス流が変化しないようにできる。これにより、原料ガス3のガス流の安定化を図ることが可能となり、長時間安定してSiC単結晶を成長させることが可能となる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、台座10とヒータ11とを別体にすると共に、排気ガス出口11aが台座10よりも下方位置に配置されるようにすることで台座10によって覆われないようにし、台座10が引上げられても面積の変動が無いようにしている。このような構成とすることで、SiC単結晶の成長中に原料ガス3のガス流が変化しないようにできる。これにより、原料ガス3のガス流の安定化を図ることが可能となり、長時間安定してSiC単結晶を成長させることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、ヒータ11の厚みが台座10における筒状部分の厚みよりも厚くなるようにしている。台座10における筒状部分の厚みが厚すぎると、台座10側でヒータ11側の温度を遮ってしまう。これにより、第2加熱装置15によるヒータ11の温度制御に対して応答性よくSiC単結晶の成長表面の温度を制御できなくなる可能性がある。このため、本実施形態のように、ヒータ11の厚みが台座10における筒状部分の厚みよりも厚くなるようにすることで、ヒータ11の温度制御によって応答性よくSiC単結晶の成長表面の温度を制御することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態のように、ヒータ11に排気ガス出口11aを設ける場合、原料ガス3のうちの未反応ガスが坩堝の径方向外方に向かって排出されることになる。この場合、未反応ガスが徐々により広い範囲に流動していくことになり、未反応ガスの排出経路を広くすることが可能となる。これにより、未反応ガスを希釈化することが可能となり、より排気ガス出口11aを通じる排出経路にSiC多結晶が析出することを抑制することが可能となる。
【0048】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してヒータおよび排気ガス出口の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0049】
図2は、本実施形態にかかるSiC単結晶製造装置1の断面図である。第1実施形態では、ヒータ11に排気ガス出口11aを設けていたが、図2に示すように、本実施形態では、プレート8に対してプレート8を貫通する排気ガス出口8bを設けている。排気ガス出口8bの数は1つでも複数個であっても良いが、原料ガス3の未反応ガスが偏りなく排出されるようにするために、周方向等間隔に複数個設けられるようにするのが好ましい。また、排気ガス出口8bの形状については任意であり、円形、四角形、その他の多角形などどのような形状であっても構わない。また、断熱材8は、断熱材8の外周面が排気ガス出口8bよりも内側に位置するように外径寸法が設定されており、断熱材8によって排気ガス出口8bが塞がれないようにしてある。
【0050】
このように、プレート8に排気ガス出口8bを形成することで、原料ガス3のうちの未反応ガスが坩堝の下方から排出されるようにしても良い。
【0051】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、SiC単結晶製造装置1の構成の一例を示したが、適宜設計変更可能である。
【0052】
例えば、回転引上機構13により台座10を回転させながら引上げられる構造としたが、単なる引上機構であっても良い。また、台座10を種結晶5の配置面を構成する底部と、底部を囲む筒状部分とによって構成したが、種結晶5の配置面を構成する部分のみとしても良い。
【0053】
また、坩堝を構成する部分について、適宜、一体構造とすることもできる。例えば、プレート8とヒータ11とを一体構造としたり、プレート8と筒体9とを一体構造としたり、プレート8と筒体9およびヒータ11を一体構造とすることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 SiC単結晶製造装置
3 原料ガス
5 種結晶
8 プレート
8a 透孔
9 筒体
10 台座
11 ヒータ
11a 排気ガス出口
13 回転引上機構
14 第1加熱装置
15 第2加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器(6)内に配置された台座(10)に対して炭化珪素単結晶基板にて構成された種結晶(5)を配置し、該種結晶(5)の下方から炭化珪素の原料ガス(3)を供給することにより、前記種結晶(5)の表面に炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶製造装置において、
前記真空容器(6)の底面に配置され、前記原料ガス(3)の導入を行う導入口(2)と、
前記導入口(2)と繋がる透孔(8a)が形成されたプレート(8)と、
前記プレート(8)の上に位置し、前記導入口(2)から前記台座(10)側に向けて延設され、前記原料ガス(3)を通過させる中空部を有し、前記原料ガス(3)を加熱分解して前記種結晶(5)に向けて供給する筒体(9)と、
前記筒体(9)および前記台座(10)の外周に配置されたヒータ(11)と、
前記真空容器(6)のうち前記筒体(9)と対応する場所の外周に配置され、前記筒体(9)の加熱を行う第1加熱装置(14)と、
前記真空容器(6)のうち前記台座(10)と対応する場所の外周に配置され、前記ヒータ(11)のうち前記台座(10)の外周に位置する部分の加熱を行う第2加熱装置(15)と、
前記台座(10)の引き上げを行う引上機構(13)とを有し、
前記台座(10)よりも下方位置において、前記ヒータ(11)もしくは前記プレート(8)には排気ガス出口(8b、11a)が備えられており、前記原料ガス(3)のうちの未反応ガスが前記筒体(9)と前記ヒータ(11)との間の隙間より前記排気ガス出口(8b、11a)を通じて排出される構造とされていることを特徴とする炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項2】
前記排気ガス出口(11a)は、前記ヒータ(11)に備えられており、前記原料ガス(3)のうちの未反応ガスが前記排気ガス出口(11a)を通じて該排気ガス出口(11a)の径方向外方に向けて排出されることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項3】
前記排気ガス出口(8b)は、前記プレート(8)に備えられており、前記原料ガス(3)のうちの未反応ガスが前記排気ガス出口(8b)を通じて前記プレート(8)の下方から排出されることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項4】
前記導入口(2)の外周を囲む断熱材(7)を有し、
前記断熱材(7)の上に前記プレート(8)が配置されており、該断熱材(7)の外周面が前記プレート(8)に備えられた前記排気ガス出口(8b)よりも内側に位置していることを特徴とする請求項3に記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項5】
前記台座(10)は、前記種結晶(5)が配置される配置面を構成する底部と、筒状部分とを有した有底筒状部材にて構成され、前記筒状部分を囲むように前記ヒータ(11)が配置されており、
前記ヒータ(11)の厚みが前記台座(10)の前記筒状部分の厚みよりも厚くされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項6】
前記筒体(9)と前記台座(10)における前記筒状部分との間に隙間が構成された状態で、前記台座(10)における前記筒状部分によって前記筒体(9)の外周が囲まれており、
前記筒体(9)と前記台座(10)における前記筒状部分との間の隙間から前記排気ガス出口(8b、11a)を通じて排出される経路を排出経路として前記原料ガス(3)のうちの未反応ガスが排出されることを特徴とする請求項5に記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項7】
前記排気ガス出口(8b、11a)は、前記第1、第2加熱装置(14、15)による加熱時に2250〜2500℃とされる位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の炭化珪素単結晶製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−43805(P2013−43805A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182609(P2011−182609)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】