説明

炭素質物質を処理する方法及びシステム

【課題】炭素質物質のガス化工程中に二酸化炭素を増加させるための、より効果的なシステム及び方法を提供する。
【解決手段】炭素質物質と少なくとも90%液相である水を混合してスラリー化された混合物を提供する工程、燃焼ガスの存在下でスラリー化された混合物の少なくとも一部をガス化して炭素質固体及び、水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含有している合成ガスを提供する工程であって、前記合成ガスが約400℃〜約1,650℃の温度である工程、合成ガスから炭素質固体の少なくとも一部を選択的に分離して合成ガス生成物及び炭素質固体を提供する工程、及び酸化剤の存在下で分離された炭素質固体の少なくとも一部を燃焼して燃焼ガスの少なくとも一部を提供する工程、を含む炭素質物質を処理する方法、及びその方法を実施するためのシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、炭素質物質のガス化に関する。より特定すると、本発明は、ガス化された炭素質物質の二酸化炭素含量を増加させることに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素質物質のガス化は典型的には、還元(酸素不足)雰囲気中、高温及び高圧でガス化器において炭素質物質を反応させることを含む。得られる合成ガスは、水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含有している。次に、一酸化炭素の、もし全てでなければ、しばしば少なくとも一部が、二酸化炭素に転化され、有用な生成物が回収される前に取り出される。
典型的には、一酸化炭素は、一つ以上の二酸化炭素転化器、例えば、高温シフト転化器、続いて低温シフト転化器において、二酸化炭素に転化される。それらのシフト転化器は、化学物質、触媒、熱及び/又は圧力を必要とする。二酸化炭素転化器は、操作し、操作中に多量のエネルギーを消費することに、それ自体、高価である。更に、二酸化炭素転化器には、設備スペース要件及びコストが加わり、そしてプラント物資を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願第20050284797号明細書
【特許文献2】米国特許第5,621,155号明細書
【特許文献3】米国特許第6,682,711号明細書
【特許文献4】米国特許第6,331,575号明細書
【特許文献5】米国特許第6,313,062号明細書
【特許文献6】米国特許第6,284,807号明細書
【特許文献7】米国特許第6,136,868号明細書
【特許文献8】米国特許第4,568,663号明細書
【特許文献9】米国特許第4,663,305号明細書
【特許文献10】米国特許第5,348,982号明細書
【特許文献11】特許第6,319,960号明細書
【特許文献12】米国特許第6,124,367号明細書
【特許文献13】米国特許第6,087,405号明細書
【特許文献14】米国特許第5,945,459号明細書
【特許文献15】米国特許第4,992,406号明細書
【特許文献16】米国特許第6,117,814号明細書
【特許文献17】米国特許第5,545,674号明細書
【特許文献18】米国特許第6,300,268号明細書
【特許文献19】米国特許第5,075,269号明細書
【特許文献20】米国特許出願第11/311,766号明細書
【特許文献21】米国特許第3,716,619号明細書
【特許文献22】米国特許第3,816,513号明細書
【特許文献23】米国特許第4,216,339号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】LeBanc他著“Ammonia”、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、2巻、3版(1978年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭素質物質のガス化工程中に二酸化炭素を増加させるための、より効率的なシステム及び方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本願発明者らは、
炭素質物質を処理する方法であって、
炭素質物質と、少なくとも90%液相である水を混合してスラリー化された混合物を提供する工程、
燃焼ガスの存在下で、前記スラリー化された混合物の少なくとも一部をガス化して炭素質固体及び、水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含有している合成ガスを提供する工程であって、前記合成ガスが約400℃〜約1,650℃の温度である、工程、
前記合成ガスから前記炭素質固体の少なくとも一部を選択的に分離して合成ガス生成物及び炭素質固体を提供する工程、及び
酸化剤の存在下で、前記分離された炭素質固体の少なくとも一部を燃焼して前記燃焼ガスの少なくとも一部を提供する工程
を含む、方法を見出した。
又、本発明は、
炭素質物質を処理する方法であって、
炭素質物質と、少なくとも90%液相である水とを混合してスラリー化された混合物を提供する工程、
ガス化域中の燃焼ガスの存在下で、前記スラリー化された混合物の少なくとも一部をガス化して炭素質固体並びに水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含有している合成ガスを提供する工程であって、前記合成ガスが約400℃〜約1,650℃の温度を有している、工程、
分離域において前記合成ガスから前記炭素質固体の少なくとも一部を選択的に分離して合成ガス生成物及び炭素質物質を提供する工程、及び
燃焼域において酸化剤の存在下で、前記分離された炭素質固体の少なくとも一部を燃焼して前記燃焼ガスの少なくとも一部を提供する工程
を含む、方法に関する。
又、本発明は、
炭素質物質を処理するためのシステムであって、
炭素質物質、及び水混合物を燃焼ガスの存在下でガス化して炭素質固体及び、水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含有している合成ガスを提供するのに適合したガス化域であって、前記水混合物が少なくとも90%液相である、ガス化域、
前記合成ガスから前記炭素質固体の少なくとも一部を分離するのに適合した、ガス化域に流体連絡した分離器、及び
前記分離された炭素質固体の少なくとも一部を燃焼して前記燃焼ガスの少なくとも一部を提供するのに適合した、ガス化域と流体連絡した酸化域
を含む、システムに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、炭素質物質を効率的に処理する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一つ以上の実施形態による、炭素質物質をガス化するための例示的なガス化器を表す。
【図2】本発明の一つ以上の実施形態による、炭素質物質をガス化するための例示的なガス化器システムを表す。
【図3】本発明の一つ以上の実施形態による例示的なガス化システムを表す。
【図4】本発明の一つ以上の実施形態による他の例示的なガス化システムを表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。特許請求の範囲の各請求項は個別の発明を定義しており、権利侵害は、特許請求の範囲に特定された種々の要素又は限定と同等なものを包含すると認識される。文脈によって、「本発明」という以下のすべての言及は、いくつかの場合は、ある特定の実施形態のみを指し得る。他の場合には、「本発明」という言及は、一つ以上の、しかし必ずしもすべてのではない特許請求の範囲に記載の主題を指すと認識される。特定の実施形態、改変及び実施例を含めて、以下、本発明の各々をより詳細に記載するが、本発明は、それらの実施形態、改変又は実施例に限定されるものではなく、当業者が、本明細書中の情報を、入手可能な情報及び技術と組み合わせたときに本発明を実施及び使用することができるような形態も包含する。
【0010】
本発明は、炭素質物質を処理するためのシステム及び方法を提供する。一つ以上の実施形態において、炭素質物質と水とを混合し得て、スラリー化された混合物を提供する。炭素質物質と混合される水は、少なくとも90%液相であることができる。燃焼ガスの存在下で、スラリー化された混合物の少なくとも一部をガス化し、炭素質固体及び合成ガスを提供し、前記合成ガスは水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含有している。合成ガスは約400℃〜約1,650℃の温度であることができる。合成ガスから炭素質固体の少なくとも一部を選択的に分離し得て、合成ガス生成物及び炭素質固体を提供する。酸化剤の存在下で、分離された炭素質固体の少なくとも一部を燃焼させ得て、燃焼ガスの少なくとも一部を提供する。
【0011】
本発明の上記の特徴が詳細に理解できるように、先に簡単に要約された本発明の、より特定な記載は、そのいくらかが添付された図面に示されている実施形態を参照することにより表され得る。しかし、添付された図面は本発明の典型的な実施形態のみを例示しており、従って、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではなく、従って、本発明は、他の等しく有効な実施形態に対して認められ得る。
【0012】
図面を参照すると、図1は、一つ以上の実施形態による、炭素質物質をガス化するための例示的なガス化器100を表す。ガス化器100は、酸化域110、ガス化域115、輸送管路120、分離器130、生成物回収管路135及び再循環管路140を含み得る。酸化域110及びガス化域115は、いずれかの順序、構成及び/又は頻度で配列され得る。例えば、酸化域110の上に配置されたガス化域115を有して、酸化域110及びガス化域115は互いに垂直に配置され得る。他の例では、酸化域110の下に配置されたガス化域115を有して、酸化域110及びガス化域115は互いに垂直に配置され得る。
【0013】
管路102経由の炭素質物質はガス化域115に導入され得て、合成ガスを提供する。合成ガスは、水素(H)、一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO)を含有し得るが、それらに限定されない。水が管路104経由で、管路102における炭素質物質に導入され得て、管路102経由で炭素質物質/水の混合物(スラリー化された混合物)が提供される。炭素質物質は、水でスラリー化され得て、ガス化域115に導入され得る、一つ以上のポンプ(示されていない)により輸送可能な混合物が提供される。一つ以上の実施形態では、管路102におけるスラリー化された混合物は、ロックホッパー類又は他の一般的な固体導入装置なしに導入され得る。そのことは、加圧窒素又は他のキャリヤーガス、ロックホッパー類及び他の装置、プロットサイズ、並びにそれらに係わるコストについての必要性を低減し又はなくし得る。管路102におけるスラリー化された混合物は、連続的に、間欠的に、種々の流量で又はそれらのいずれかの組み合わせでガス化域115に導入され得る。示されていないが、管路102経由のスラリー化された混合物は、酸化域110とガス化域115との間に配置された混合域に導入され得る。
【0014】
管路102経由でガス化域115に導入されたスラリー化された混合物はガス化され得て、輸送管路120経由で合成ガスが提供され得て、前記合成ガスは分離器130に導入され得る。一つ以上の実施形態において、スラリー化された混合物は、燃焼ガス、固体、収着剤、又はそれらの組み合わせの存在下でガス化され得て、管路120経由で合成ガス及び炭素質固体の混合物を提供する。一つ以上の実施形態において、酸素を掃去するために、十分な速度及び量で収着剤が添加され得て、ガス化域100内で炭素質物質からのH(例えば水)との望ましくない副反応をもたらし得る濃度に達するのを遅らせる又は防ぐ。一つ以上の実施形態において、ガス化器100における炭素質物質の粒子に散布又は炭素質物質の粒子を被覆するために収着剤が用いられ得て、それらの粒子が凝集する傾向を低減させる。例示的な収着剤には、炭素富有灰、石灰石、ドロマイト及びコークス粉が含まれるが、それらに限定されない。供給原料から放出された残存する硫黄は、供給原料中の天然カルシウムにより又はカルシウム系収着剤により捕捉され得て硫化カルシウムを形成する。
【0015】
一つ以上の実施形態において、炭素質固体、及び用いられる場合、収着剤の一部は、混合物から分離され得て、管路135経由で合成ガス生成物そして管路140経由で炭素質固体、収着剤又は両方が提供される。一つ以上の実施形態において、炭素質固体の少なくとも一部は管路140経由で酸化域110に導入され得て、ガス化域115に導入される燃焼ガスの少なくとも一部が提供される。一つ以上の実施形態において、管路102経由で導入されたスラリー化された混合物中の炭素質物質の少なくとも一部は、固体上に沈積され得て、合成ガス及び炭素質含有固体を含有する混合物が提供される。一つ以上の実施形態において、炭素質含有固体の少なくとも一部は、分離器130において混合物から分離され得て、管路135経由で合成ガス生成物そして管路140経由で炭素質含有固体が提供される。
【0016】
一つ以上の態様において、管路140経由で酸化域110に導入された炭素質固体及び/又は炭素質含有固体の少なくとも一部は、管路108経由で導入された酸化剤の存在下で燃焼され得て、燃焼ガス、固体又は両方の少なくとも一部が提供される。一つ以上の実施形態において、炭素質固体及び/又は炭素質含有固体の少なくとも一部は、管路108経由で導入された酸化剤、及び管路106経由で導入された蒸気の存在下で燃焼され得て、燃焼ガス、固体又は両方の少なくとも一部が提供される。燃焼ガス、固体又は両方は、ガス化域115に熱を提供し得て、管路102経由で導入されたスラリー化された炭素質混合物がガス化される。
【0017】
一つ以上の実施形態において、炭素質固体及び/又は炭素質含有固体の他に、一つ以上の炭素質物質が酸化域110に導入され得る。一つ以上の実施形態において、炭素質固体、炭素質含有固体及び/又は一つ以上の炭素質物質の他に、一つ以上の炭化水素が酸化域110に導入され得る。一つ以上の炭素質物質、炭化水素、炭素質固体、炭素質含有固体又はそれらのいずれかの組み合わせの燃焼がガス化域115に熱を提供し得て、管路102経由で導入されたスラリー化された炭素質混合物をガス化する。
【0018】
スラリー化された混合物中の炭素含量は、約30重量%、約40重量%又は約50重量%の低含量から約75重量%、約85重量%又は約95重量%の高含量までの範囲であり得る。スラリー化された混合物中の水含量は、約5重量%、約15重量%又は約20重量%の低含量から約50重量%、約60重量%又は約70重量%の高含量までの範囲であり得る。例えば、スラリー化された混合物は、約30重量%の炭素質物質と約70重量%の水、約55重量%の炭素質物質と約45重量%の水、約62重量%の炭素質物質と約38重量%の水、又は約70重量%の炭素質物質と約30重量%の水を含有し得る。一つ以上の実施形態において、スラリー化された混合物の水含量は一定であり得るか又は変わり得る。
【0019】
ガス化器100に導入される酸化剤及び水の種類及び量は、管路135経由で提供される合成ガス及びそれから製造される下流生成物の組成及び物理的特性に影響を与え得る。例えば、酸化剤として空気を用いた場合、約2モル%、約3.5モル%、約7モル%又は約9モル%の低含量から約10モル%、約12モル%、約14モル%の又はそれより多い高含量までの範囲のCO含量を有する、管路135における合成ガスを提供し得る。管路135における合成ガスのCO含量は、約2.5モル%、約5モル%又は約9モル%の低含量から約10モル%、約14モル%、約18モル%の又はそれより多い高含量までの範囲であり得る。管路135における合成ガスのH含量は、約11モル%、約11.5モル%又は約12モル%の低含量から約12.5モル%、約13モル%、約14モル%の又はそれより多い高含量までの範囲であり得る。管路135における合成ガスの水含量は、約10モル%、約12モル%又は約14モル%の低含量から約16モル%、約18モル%又は約20モル%の高含量までの範囲であり得る。管路135における合成ガスの窒素含量は、約0モル%、約3モル%又は約5モル%の低含量から約40モル%、約44モル%、約48モル%の又はそれより多い高含量までの範囲であり得る。一つ以上の実施形態において、酸化剤として空気を用いた場合、約20モル%未満のCO及び約8モル%より多いCOを含有する合成ガスを提供し得る。
【0020】
一つ以上の実施形態において、酸化剤として酸素、又は本質的に窒素を含有しない酸化剤を用いた場合、約15モル%、約16.5モル%又は約18モル%の低含量から約18.5モル%、約20モル%、約22モル%の又はそれより多い高含量までの範囲のCO含量を有する、管路135における合成ガスを提供し得る。管路135における合成ガスのCO含量は、約16モル%、約18モル%又は約20モル%の低含量から約25モル%、約28モル%、約30モル%の又はそれより多い高含量までの範囲であり得る。管路135における合成ガスのH含量は、約20モル%、約21モル%又は約22モル%の低含量から約24モル%、約26モル%、約28モル%の又はそれより多い高含量までの範囲であり得る。管路135における合成ガスの水含量は、約20モル%、約22モル%又は約24モル%の低含量から約25モル%、約30モル%、約35モル%の又はそれより多い高含量までの範囲であり得る。一つ以上の実施形態において、酸素、又は本質的に窒素を含有しない酸化剤を用いた場合、約40モル%未満のCO及び約16モル%より多いCOを含有する合成ガスを提供し得る。
【0021】
管路102における炭素質物質は、固体、液体、気体又はそれらの組み合わせのいずれかである一つ以上の炭素含有物質を含み得るが、それらに限定されない。一つ以上の炭素含有物質は、石炭、コークス、石油コークス、分解残渣、完全原油、原油、真空軽油、重質軽油、残滓、常圧塔底部物質、真空塔底部物質、蒸留物、パラフィン類、溶媒脱歴ユニットからの芳香族に富んだ物質、芳香族炭化水素、アスファルテン類、ナフテン類、オイルシェール類、オイルサンド類、タール類、ビチューメン類、ケローゲン、廃油、バイオマス(例えば植物及び/もしくは動物物質又は植物及び/もしくは動物由来物質)、低灰系もしくは無灰系ポリマー類、炭化水素系ポリマー物質、炭化水素蝋のような石油精製所及び石油化学プラントからの重質炭化水素スラッジ及び底部生成物、製造操作から誘導される副成物、カーペット、及び/又はバンパー及びダッシュボードを含むプラスチック自動車用部品/構成物のような廃棄された消費者製品、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、それらの誘導体、それらのブレンドのような再循環されたプラスチック類又はそれらのいずれかの組み合わせを含み得るが、それらに限定されない。従って、本方法は、以前に製造された物質の適切な処分に対する特命に適応させるのに有用である。
【0022】
炭化水素系ポリマー物質には、例えば、ポリプロピレン類、ポリエチレン類、ポリスチレン類を含み、他のポリオレフィン類、ホモポリマー類、コポリマー類、ブロックコポリマー類及びそれらのブレンドを含む熱可塑性プラスチック類、エラストマー類、ゴム類;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブレンド類、他のポリオレフィン類、酸素を有する炭化水素重合体、それらの誘導体、それらのブレンド並びにそれらの組み合わせが含まれ得る。一つ以上の実施形態において、炭素質固体及び/又は炭素質含有固体の他に酸化域110に導入される炭素質物質及び/又は炭化水素は、管路102における炭素質物質に類似の物質であり得るか又はその物質を含み得る。
【0023】
一つ以上の実施形態において、炭素質物質、例えば石炭、の湿分濃度に応じて、炭素質物質は、ガス化器100への導入の前に乾燥され得る。炭素質物質は、一つ以上のボールミルのような微粉砕ユニットにより微粉砕され得て、加熱され得て、低減された量の湿分しか含有しない炭素質物質が提供される。例えば、炭素質物質は乾燥され得て、約50%未満の湿分、約30%未満の湿分、約20%未満の湿分、約15%未満の湿分又はそれより少ない湿分しか含有しない炭素質物質が提供され得る。炭素質物質は、気体、例えば窒素の存在下で加熱され得る。
【0024】
管路104における水は、精製水、プロセス水、部分的に処理された水、汚れた水、他の精油所水、他の精油所排水、塩水又はそれらの混合物であることができる。管路104における水は、サワー水、黒水、スラッグ含有水、アンモニア含有水、塩化水素及び/又は他の酸を含有する水、水酸化ナトリウム及び/又は他の塩基を含有する水、化学的排水、精油所流出水、プロセス水、タール含有水又はそれらのいずれかの混合物のような、いずれかの適する排水を含み得る。一つ以上の実施形態において、水は、約5℃、約10℃、約15℃又は約20℃の低温から約70℃、約80℃、約90℃又は約100℃の高温までの範囲の温度であることができる。一つ以上の実施形態において、水は約90%液相、約95%液相、約99%液相又は約99.9%液相であることができる。水は、約90%液相〜約100%液相、約93%液相〜約97%液相、又は約96%液相〜約99%液相の範囲であることができる。
【0025】
管路108経由で導入される酸化剤には、空気、酸素、本質的に酸素、酸素富有化空気、酸素と空気との混合物、酸素と、窒素及びアルゴンのような不活性ガスとの混合物並びにそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。本明細書で用いられているように、「本質的に酸素」という用語は、51容量%以上の酸素を含有する酸素供給原料をいう。本明細書で用いられているように、「酸素富有化空気」という用語は、21容量%以上の酸素を含有する空気をいう。酸素富有化空気は、例えば、空気の極低温蒸留、圧力スイング吸着、膜分離又はそれらのいずれかの組み合わせから得られ得る。一つ以上の実施形態において、管路108経由で導入される酸化剤は、窒素非含有であり得るか又は本質的に窒素非含有であり得る。「本質的に窒素非含有」は、管路108における酸化剤が、約5容量%未満の窒素、約4容量%未満の窒素、約3容量%未満の窒素、約2容量%未満の窒素又は約1容量%未満の窒素しか含有しないことを意味する。一つ以上の実施形態において、管路104経由の蒸気は、いずれかの適するタイプの蒸気、例えば低圧蒸気、中圧蒸気、高圧蒸気、過熱蒸気又は過熱高圧蒸気であることができる。
【0026】
管路108経由で酸化域110に導入される酸化剤の量は、炭素質固体及び/又は炭素質含有固体中の炭素質物質の総量を酸化するのに要求される化学量論量の酸素の約1%〜約90%の範囲であることができる。酸化域110内の酸素濃度は、酸化域110における炭素のモル濃度に基づく化学量論要求量の約1%、約3%、約5%又は約7%の低濃度から約30%、約40%、約50%又は約60%の高濃度までの範囲であることができる。酸化域110における酸素濃度は、酸化域110中の炭素のモル濃度に基づく化学量論要求量の約0.5%、約2%、約6%又は約10%の低濃度から約60%、約70%、約80%又は約90%の高濃度までの範囲であることができる。
【0027】
一つ以上の実施形態において、管路102経由でガス化域115に導入されたスラリー化された混合物は、約400℃以上、約550℃以上、約750℃以上、約1,000℃以上、約1,250℃以上、約1,400℃以上又は約1,650℃以上の温度に加熱され得る。例えば、管路102経由でガス化域115に導入されたスラリー化された混合物は、約900℃〜約1,065℃、約930℃〜約1,035℃、又は約970℃〜約1,000℃の範囲の温度に加熱され得る。一つ以上の実施形態において、酸化域110経由で提供される燃焼ガス及び固体は、管路102経由でガス化域115に導入されたスラリー化された混合物をガス化するのに必要な熱のすべて又は一部を供給し得る。一つ以上の実施形態において、付加的な燃焼ガス、蒸気、加熱ガスの導入、外部から加えられた熱による加熱又はそれらのいずれかの組み合わせにより、付加的な熱がガス化域115に導入され得る。
【0028】
一つ以上の実施形態において、酸化域110、ガス化域115、輸送管路120、分離器130及び再循環管路140を含み得るガス化器100は、約101kPa、約300kPa又は約600kPaの低圧から約2,500kPa、約3,500kPa、約4,500kPaの又はそれより高い圧力までの範囲の圧力において操作され得る。一つ以上の実施形態において、一つの域対他の域、例えば酸化域対ガス化域の圧力は同じであり得るか又は異なり得る。例えば、酸化域110は第一の圧力で操作され得て、ガス化域115は第二の圧力で操作され得て、第二の圧力は、第一の圧力より低く、第一の圧力と同じで又は第一の圧力より高くあり得る。
【0029】
管路102経由でガス化域115に導入された炭素質物質の滞留時間は約1ミリ秒(ms)〜約15秒(s)の範囲であり得る。管路102経由でガス化域115に導入されたスラリー化された混合物の滞留時間は、約50ms、約100ms、約150ms又は約200msの短時間から約1s、約5s、約10s又は約12sの長時間までの範囲であり得る。管路102経由でガス化域115に導入されたスラリー化された混合物の滞留時間は制御され得るか又は酸化域110から更なる下流に炭素質物質を導入することにより調整され得る。例えば、酸化域110のすぐ下流に炭素質物質を導入することにより、輸送管路120に炭素質物質を導入する場合より長い滞留時間が与えられる。示されていないが、スラリー化された混合物の一部又はすべては、ガス化域115及び/又は輸送管路120内の一つ以上の位置において、例えば、ガス化域115の中央で導入され得る。スラリー化された混合物をガス化域115及び/又は輸送管路120内の二つ以上の位置で導入することは、管路135経由で提供された合成ガスを調整し得るか又は改変し得る。例えば、管路102経由のスラリー化された混合物の一部を輸送管路120に導入することは、より短い滞留時間を与え得て、そのことは炭素質物質の一部を蒸発し得るか又は分解し得て、Cから約C20までの炭化水素の範囲の軽質炭化水素を含有し得る管路135における合成ガスを提供する。
【0030】
一つ以上の実施形態において、管路135における分離された合成ガスの温度は、約400℃、約500℃、約600℃又は約700℃の低温から約1,200℃、約1,500℃、約1,600℃又は約1,650℃の高温までの範囲であることができる。管路135における合成ガスの圧力は、約101kPa、約200kPa又は約300kPaの低圧から約6,975kPa、約8,350kPa又は約10,400kPaの高圧までの範囲であることができる。
【0031】
一つ以上の実施形態において、固体は、アルミナ、α−アルミナ、ジルコニア、チタニア、ハフニア、シリカ又はそれらの混合物のような耐火性酸化物;稀土類がいずれかの希土類金属(例えば、ランタン又はイットリウム)であり得る稀土類改質耐火性金属酸化物;アルカリ土類金属改質耐火性酸化物;灰;それらの誘導体;又はそれらの混合物であることができるが、それらに限定されない。固体は、反応条件において実質的に安定な表面積、例えば操作条件、例えば温度及び圧力において実質的に反応性でない表面積を有する物質として分類され得る。
【0032】
示されていないが、管路140における炭素質含有固体は、ストリッピングされ得て、連行された揮発性炭化水素を除去する。例えば、炭素質含有固体は、蒸気ストリッピング、熱ストリッピングされ得るか又は他の適する方法を用いてストリッピングされ得て、いずれかの連行された揮発性炭化水素の少なくとも一部が除去される。連行された揮発性炭化水素には、例えばC〜C12炭化水素が含まれ得る。
【0033】
一つ以上の実施形態において、一つ以上のガス化器100には、一つ以上の炭素質物質のガス化に適する、本技術において公知のいずれかのガス化器が含まれ得る。先に記載した酸化域110及びガス化域115の他に、ガス化器100には、酸化域とガス化域との間に配置された中間還元域が含まれ得る。一つ以上の実施形態において、ガス化器100には、上向き通風、下向き通風、向流、並流、横向き通風、流動床、ダブル点火された(double−fired)、輸送(transport)、噴流床及び溶融浴(molten−bath)タイプガス化器を含むがそれらに限定されない一つ以上のタイプのガス化器が含まれ得る。一つ以上の実施形態において、ガス化器100は、プラグ流れ、迅速混合マルチポート供給原料注入、冷却壁、加熱壁又はガス化効率を高めるための技術の組み合わせを含むがそれらに限定されない一つ以上の効率改良特徴を組み入れ得る。
【0034】
一つ以上の実施形態において、一つ以上の分離器130には、約10,000ppmw未満、約1,000ppmw未満、約500ppmw未満、約250ppmw未満、約100ppmw未満、約50ppmw未満、約10ppmw未満、約1ppmw未満又は約0.1ppmw未満の出口微粒状物質濃度を提供することができるいずれかのシステム、装置、又はシステム及び/もしくは装置の組み合わせが含まれ得る。一つ以上の実施形態において、一つ以上の分離器130には、直列で、並列で又はそれらの組み合わせで配置された一つ以上のサイクロン式及び/又は重力式の分離器が含まれ得る。一つ以上の実施形態において、一つ以上の分離器130には、一つ以上の高処理量、低効率及び/又は高効率のサイクロン式分離器が含まれ得る。一つ以上の実施形態において、分離器130には、一つ以上の微粒状物質制御装置類(PCDs)が含まれ得る。例示的なPCDsには、静電沈殿器類、焼結金属フィルター類、金属キャンドルフィルター類及び/又はセラミックキャンドルフィルター類[例えば、鉄アルミニド(iron aluminide)濾過物質]が含まれ得るが、それらに限定されない。
【0035】
管路135における合成ガスは、約1,863kJ/m〜約2,794kJ/m、約1,863kJ/m〜約3,726kJ/m、約1,863kJ/m〜約4,098kJ/m、約1,863kJ/m〜約5,516kJ/m、約1,863kJ/m〜約6,707kJ/m、約1,863kJ/m〜約7,452kJ/m、約1,863kJ/m〜約9,315kJ/m又は約1,863kJ/m〜約10,246kJ/mの、熱損失及び希釈効果に対して補正を行った燃焼熱を有し得る。
【0036】
図2は、一つ以上の実施形態による、炭素質物質をガス化するための例示的なガス化器システム200を表す。一つ以上の実施形態において、ガス化器システム200は、混合器205及び空気分離ユニット(ASU)210を含み得る。ガス化器システム200は又、図1に関して先に論じ、記載したのと同じか又は類似であり得る、酸化域110、ガス化域115、輸送管路120及び分離器130を含み得るガス化器を含み得る。一つ以上の実施形態において、管路202経由で導入された炭素質物質及び管路104経由で導入された水は混合され得るか、又は混合器205内で混合され得て、管路102におけるスラリー化された混合物を提供する。管路202における炭素質物質及び水は、図1に関して先に論じ、記載した通りであり得る。
【0037】
混合器205は、炭素質物質と水のバッチ混合、間欠的混合、種々の混合速度及び/又は連続的混合に適する、いずれかの装置、システム、又はシステム及び/又は装置の組み合わせであることができる。一つ以上の実施形態において、スラリーを安定化させ固体の沈降を防ぐために添加剤が混合物に添加される。混合器205は、非混和性の流体を均質化することが可能であり得る。例示的な混合器205には、エゼクター類、インライン静的混合器類、インライン機械的/電力混合器類、ホモジナイザー又はそれらの組み合わせが含まれ得るが、それらに限定されない。
【0038】
混合器205は、約5℃、約15℃又は約20℃の低温から約100℃、約125℃又は約150℃の高温までの範囲の温度で操作され得る。混合器205は、ガス化域115の圧力より低い、その圧力と等しい又はそれより高い圧力で操作され得る。一つ以上の実施形態において、混合器205は、約101kPa、約300kPa又は約600kPaの低圧から約2,500kPa、約3,500kPa、約4,500kPa又はそれより高い高圧までの範囲の圧力で操作され得る。
【0039】
一つ以上の実施形態において、ASU210からの酸素は、管路108経由で酸化域110に供給され得る。ASU210は、管路108経由で、窒素非含有の又は本質的に窒素を含有しない酸素に富んだ酸化剤を酸化域110に供給し得て、それにより、そのシステムにおける窒素濃度を最小にする。窒素非含有の又は本質的に窒素を含有しない酸化剤の使用により、ガス化器100が、本質的に窒素を含有しない、例えば、約5モル%未満、約4モル%未満、約3モル%未満、約2モル%未満、約1モル%未満、又はそれより少ない窒素/アルゴンしか含有しない管路135経由の合成ガスを提供することが可能になる。一つ以上の実施形態において、ASU210は、管路207経由で空気を補充し得る高圧で極低温タイプの分離器であることができる。分離された窒素は、管路212経由でASU210から除去され得る。示されていないが、分離された窒素は、下記に詳細に説明されるように、炭素質物質を乾燥するのに使用され得るか、燃焼タービンに添加され得るか又は有用品として用いられ得る。
【0040】
図3は、一つ以上の実施形態による例示的なガス化システム300を表す。ガス化システム300は、図1又は図2に関して先に論じ、記載したガス化器100及び/又は200と同じであり得るか又は類似であり得る一つ以上のガス化器300を含み得る。ガス化システム300は、熱交換器310、微粒状物質除去システム315及びガス精製システム325を更に含み得て、管路329経由で合成ガスを提供する。一つ以上の実施形態において、ガス化システム300は、COシフト及び/又は回収(転化器)システム330を含み得て、管路329における合成ガス中のCOの少なくとも一部を転化する。一つ以上の実施形態において、ガス化システム300は又、ガス転化器システム340を含み得て、一つ以上のフィッシャー・トロプシュ生成物類、化学物質類、供給原料類、メタン(合成天然ガスすなわちSNG)、アンモニア、メタノール、それらの誘導体及びそれらの組み合わせを製造する。一つ以上の実施形態において、ガス化システム300は又、H分離器350、燃料電池360、燃焼器365、ガスタービン370、蒸気タービン390、熱回収システム380及び発電機(2つ、375、395が示されている)を含み得て、燃料、動力、蒸気及び/又はエネルギーを産生する。
【0041】
管路135における合成ガスは、図1及び図2に関して先に論じ、記載した通りであり得る。合成ガスは熱交換器310に導入され得て、管路311における冷却された合成ガスを提供する。合成ガスからの熱は、管路309経由で導入される、ボイラー供給水のような熱伝達媒体に直接又は間接的に伝達され得る。蒸気又はいずれかの他の適する加熱された熱伝達媒体は、管路313経由で回収され得る。微粒状物質除去システム315経由で、管路311における冷却された合成ガスから微粒状物質が部分的に又は完全に除去され得て、管路317経由で、分離された微粒状物質及び管路319経由で微粒状物質がほとんどない合成ガスが供給され得る。示されていないが、管路313経由の蒸気は管路106経由で、ガス化器305、熱回収システム380、蒸気タービン390、他のプロセス装置又はそれらの組み合わせに導入され得る。
【0042】
示されていないが、一つ以上の実施形態において、一つ以上の微粒状物質除去システム315が任意に用いられ得て、冷却の前に管路135における合成ガスから微粒状物質を部分的に又は完全に除去する。例えば、管路135経由の合成ガスは、熱風微粒状物質除去(例えば約550℃〜約1,050℃の)をもたらす微粒状物質除去システム315に直接導入され得る。示されていないが、一つ以上の実施形態において、例えば一つの微粒状物質除去システム315が熱交換器310の上流にあり得て、一つの微粒状物質除去システム315が熱交換器310の下流にあり得る、2つの微粒状物質除去システム315が用いられ得る。
【0043】
一つ以上の微粒状物質除去システム315は、従来の遊離器(disengager)及び/又はサイクロンのような一つ以上の分離装置を含み得る(示されていない)。約0.1ppmwの検出可能限度より低い出口微粒状物質濃度を提供することができる微粒状物質制御装置(PCD)も用いられ得る。例示的なPCD類には、沈降金属フィルター、金属キャンドルフィルター類及び/又はセラミックキャンドルフィルター類[例えば、鉄アルミニド(iron aluminide)フィルター物質]が含まれ得るが、それらに限定されない。
【0044】
管路317経由の固体微粒状物質は、システムからパージされ得るか又はガス化器305に再循環され得る(示されていない)。示されていないが、管路319における分離された合成ガスは、一つ以上の熱交換器を用いて更に冷却され得る。管路319における合成ガスは、約150℃〜約300℃のような約350℃以下の温度を有し得る。
【0045】
管路319における冷却された分離された合成ガスは、一つ以上のガス精製システム325内で処理され得て、管路327経由の排ガスを与える汚染物質及び管路329経由の処理された合成ガスを取り出す。一つ以上のガス精製システム325は、管路329における処理された合成ガスから硫黄及び/又は硫黄含有化合物を除去するのに適するいずれかのシステム、装置又はシステム類及び/又は装置類の組み合わせを含み得る。例示的な触媒によるガス精製システム325には、チタン酸亜鉛、亜鉛フェライト、酸化錫、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化銅、酸化セリウム又はそれらの混合物を用いるシステムが含まれ得るが、それらに限定されない。例示的なプロセス系ガス精製システム325には、Selexol(商標)法、Rectisol(登録商標)法、CrystaSulf(登録商標)法及びSulfinol(登録商標)ガス処理法が含まれ得るが、それらに限定されない。
【0046】
メチルジエタノールアミン(MDEA)のような一つ以上のアミン溶媒が用いられ得て、管路319における合成ガスからいずれかの酸ガスを除去する。Selexol(商標)(ポリエチレングリコールのジメチルエーテル)又はRectisol(登録商標)(冷メタノール)のような物理的溶媒も用いられ得る。管路319における合成ガスが、硫化カルボニル(COS)を含有する場合、硫化カルボニルは、触媒上の水との反応による加水分解により硫化水素(HS)に転化され得て、次に、先に記載した方法を用いて吸収され得る。管路319における合成ガスが水銀を含有する場合、水銀は、硫黄含浸活性化炭素の床を用いて除去され得る。
【0047】
コバルト−モリブデン(Co−Mo)触媒が一つ以上の精製ユニット325に組み入れられ得て、合成ガスのサワーシフト転化を行う。Co−Mo触媒は、約290℃の温度において、約100ppmwのHSのようなHSの存在下で操作し得る。Co−Mo触媒が用いられサワーシフトを行う場合、続く下流での硫黄除去は、先に記載した硫黄除去法及び/又は技術のいずれかを用いて行われ得る。
【0048】
一つ以上の実施形態において、管路319における処理された合成ガスのすべて又は一部は、一つ以上の転下器330に導入され得て、COをCOに転化することにより合成ガスのH対CO比(H:CO)を調整する。転下器330は又、CO回収ユニットを含み得て、転化された合成ガスからCOの少なくとも一部を分離する。管路329経由で導入される合成ガス中及び/又は転化された合成ガス中に存在するCOは、管路333経由で転化器330から分離され得て及び/又は回収され得て、予め決められたH:CO比を有する、管路331経由の合成ガスを提供する。望ましいH:CO比は、アンモニア、メタノールの合成及び/又はフィッシャー・トロプシュ合成、燃料電池、動力産生等のような更に下流の処理工程及び/又は使用に依存する。
【0049】
一つ以上のシフト転化器内で、水性ガスシフト反応により、管路329経由で導入された処理された合成ガス中のCOの少なくとも一部が、触媒の存在下で及び/又は高温において、水と反応され得て、H及びCOを製造し得る。一つ以上のシフト転化器には、単一段階断熱固定床反応器;段間冷却、蒸気発生又は急冷反応器を有する複数段階断熱固定床反応器;蒸気発生又は冷却を有する管形固定床反応器;流動床反応器又はそれらのいずれかの組み合わせが含まれ得るが、それらに限定されない。収着増大水性ガスシフト(SEWGS)プロセス、シフト触媒及び高温(およそ475℃)CO吸着剤で充填された複数の固定床反応器を有する圧力スイング吸着ユニットの使用が用いられ得る。種々のシフト触媒が用いられ得る。転化器330は又、CO分離器を含み得て、管路329における合成ガスからCOの少なくとも一部を分離する。分離されたCOは、酢酸、ホスゲン/イソシアネート類、ギ酸及びプロピオン酸のような化学物質の製造に用いられ得る。
【0050】
転化器330は、直列、並列又はそれらの組み合わせで配列された一つ以上の転化器を含み得る。例えば、第一転化器(高温)は約300℃〜約530℃の高温で操作され得て、触媒を用いて比較的高い反応速度で、管路329経由で導入された処理された合成ガス中に存在するCOの大部分をCOに転化する。触媒には、酸化鉄、亜鉛フェライト、マグネタイト、酸化クロム、それらの誘導体又はそれらのいずれかの組み合わせが含まれ得るが、それらに限定されない。第二反応器(低温)は約150℃〜約300℃の比較的低温で操作され得て、酸化銅と酸化亜鉛との混合物を用いて残存するCOの少なくとも一部をCOに転化する。第二反応器では、銅、亜鉛、銅で促進されたクロム、それらの誘導体又はそれらのいずれかの組み合わせを含むがそれらに限定されない触媒が使用され得る。第一転化器の温度と第二転化器の温度との間の温度範囲で操作する第三転化器が、高温転化器、低温転化器、両転化器に替わり得るか又は2つの転化器に加えられ得る。中温転化器は、約250℃〜約350℃の温度で操作され得る。中温転化器中に配置される触媒には、酸化鉄、酸化クロム、それらの誘導体又はそれらのいずれかの組み合わせが含まれ得るが、それらに限定されない。示されていないが、一つ以上の実施形態において、転化器330は精製器325の上流であり得る。
【0051】
CO回収ユニットでは、プロピレンカーボネート、他のアルキルカーボネート、2〜12のグリコール単位のポリエチレングリコールのジメチルエーテル[Selexol(商標)法]、n−メチルピロリドン、スルホラン、Sulfinol(登録商標)ガス処理法、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、炭酸カリウム、メチルジエタノールアミン(MDEA)、ジグリコールアミン(DGA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、疎水性ゼオライト、それらの誘導体、それらの混合物、又はそれらのいずれかの組み合わせを使用し得て、合成ガスからCOの少なくとも一部を分離する。
【0052】
一つ以上の実施形態において、管路333経由で回収されたCOは燃料回収工程において用いられ得て、油及びガスの回収を増大させる。例示的な油回収工程において、COは「残」油(“stranded” oil)が存在する現存する油井の下の領域に注入され、フラッシされ得る。次に、原油とともに取り出された水及びCOは、分離され、再循環され得る。類似の方法において、COは、現存するガス井の下の領域に注入されフラッシされ得て、天然ガスの産生を増大する。
【0053】
一つ以上の実施形態において、管路333経由で回収されたCOは一時的に又は永久的に捕捉及び貯蔵され得て、大気中に放出されるCOの量を低減又は除去する。一つ以上の実施形態において、管路333におけるCOは、枯渇した油田及び/又はガス田、塩類層、採掘できない石炭層、塩類埋積玄武岩層等のような地下地質層に注入され得る。一つ以上の実施形態において、管路333におけるCOは、船、パイプライン又は他の適する方法により、1,000m又はそれより深い深さにおける水柱に注入され得て、続いてCOは水に溶解され得る。一つ以上の実施形態において、管路333におけるCOは、船、パイプライン又は他の適する方法により、COが水より濃密である、3,000mより深い深さにおける水塊の床、例えば海底の上に注入され得て、COを含有し得るCOの層を形成し得るか、又はCOの環境への溶解を少なくとも遅延し得る。一つ以上の実施形態において、管路333におけるCOは、COを金属酸化物と反応させることにより水和物に転化され得て、石灰石を用いてバイカーボネートのようなカーボネート、又は安定なカーボネートを製造する。
【0054】
一つ以上の実施形態において、管路333経由で回収されるCOは、光合成に付され得て、制御された環境下でバクテリア又は微小藻類のような生物有機体を用いてCOを固定する。生物有機体は、光合成の天然プロセスを用い得て、光、熱及びCOを、炭水化物、H及び酸素のような有用な生成物に転化し得る。
【0055】
一つ以上の実施形態において、管路331における処理された合成ガスの少なくとも一部は、管路339経由で回収され得て、物資として販売される。一つ以上の実施形態において、管路331経由の転化された合成ガスの少なくとも一部は、ガス転化器340に導入され得て、一つ以上の生成物を製造する。例えば、ガス転化器340には、精油所/石油化学供給原料、輸送機関燃料、合成原油、液体燃料、潤滑油、α−オレフィン類、蝋等が含まれ得るが、それらに限定されない一つ以上のフィッシャー・トロプシュ(F−T)生成物を提供するためにフィッシャー・トロプシュ合成ユニットが含まれ得るが、それらに限定されない。その反応は、いずれかのタイプの反応器、例えば固定床、移動床、流動床、スラリー気泡床等において、銅、ルテニウム、鉄又はコバルト系触媒又はそれらの組み合わせを用いて、反応器の構成によって約190℃〜約450℃の範囲を有する条件下で行われ得る。他の反応及び触媒についての詳細は、米国特許出願第20050284797号、米国特許第5,621,155号、米国特許第6,682,711号、米国特許第6,331,575号、米国特許第6,313,062号、米国特許第6,284,807号、米国特許第6,136,868号、米国特許第4,568,663号、米国特許第4,663,305号、米国特許第5,348,982号、特許第6,319,960号、米国特許第6,124,367号、米国特許第6,087,405号、米国特許第5,945,459号、米国特許第4,992,406号、米国特許第6,117,814号、米国特許第5,545,674号及び米国特許第6,300,268号に見出され得る。
【0056】
F−T生成物は、更に化学的に反応させ、種々の生成物に品質を向上させるために、精油所現場に船で輸送し得る液体であることができる。特定の生成物、例えば、C〜C炭化水素は、高品質のパラフィン溶媒であり得て、望まれる場合には、水素添加処理され得て、オレフィン不純物を除去する、又は水素添加処理せずに用いられ得て広範囲の蝋生成物を製造する。C16及びより高級の化合物を含む炭化水素は、種々の水素添加転化反応、例えば水素添加分解、水素添加異性化、接触脱蝋、イソ脱蝋(isodewaxing)又はそれらの組み合わせにより品質が向上され得て、中間蒸留物、ディーゼル燃料、ジェット燃料、イソパラフィン系溶媒、潤滑油、掘穿泥水中での使用に適する掘削油、工業銘柄及び医薬銘柄の白油、化学的原料物質及び種々の特殊生成物が製造され得る。
【0057】
一つ以上のガス転化器340の少なくとも一つは、一つ以上のスラリー気泡塔反応器を含み得て、一つ以上のF−T生成物を製造する。スラリー気泡塔反応器は、約0.01〜約1の範囲のRe:Co重量比を有し、約2重量%〜約50重量%のコバルトを含有する、レニウムで促進され、チタニア上に担持されたコバルト触媒を用いて、225℃より低い温度で真空から約4,140kPaまで、又は約1,720kPaから約2,410kPaまでにおいて操作できる。スラリー気泡塔反応器内の触媒には、触媒銅又は鉄族金属の塩、ポリオール、多価アルコール及び任意にレニウム化合物又は塩で含浸されたチタニア支持体が含まれるが、それらに限定されない。ポリオール又は多価アルコールの例には、グリコール、グリセロール、デリトリトール(derythritol)、トレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、ダルシトール、グルシトール、ソルビトール及びマンニトールが含まれる。濃厚塩水溶液としての触媒金属、銅又は鉄族金属、例えば硝酸コバルト又は酢酸コバルトは、前記溶液において15重量%のコバルトを得るために水の量を調整し、及び、任意に初期湿潤度技術を用いて任意に噴霧乾燥され焼成されたルチル又はアナターゼチタニア支持体上に触媒を含浸しながら、ポリオール及び任意に過レニウム酸と混合され得る。その方法はレニウム促進剤に対する必要性を低減させる。他の詳細は、米国特許第5,075,269号及び米国特許第6,331,575号に見出され得る。
【0058】
一つ以上の実施形態において、少なくとも一つ以上のガス転化器340の少なくとも一つが用いられ得て、SNG、メタノール、ギ酸アルキル、ジメチルエーテル、アンモニア、無水酢酸、酢酸、酢酸メチル、酢酸エステル、酢酸ビニル及びポリマー類、ケテン類、ホルムアルデヒド、ジメチルエーテル、オレフィン類、尿素、それらの誘導体並びに/又はそれらの組み合わせを製造する。メタノール製造のためには、例えば液相メタノール法(Liquid Phase Methanol Process)([LPMEOH(商標)])が用いられ得る。その方法において、スラリー気泡塔反応器、及び良好な触媒活性を維持しながら、オフピークの間、実質的な長さの時間、空転させながら、反応の熱を保存し得る不活性炭化水素油反応媒体中の触媒を用いて、管路412における合成ガス中のCOをメタノールに直接転化し得る。他の詳細は、米国特許出願第11/311,766号及び先に発表されたHeydorn,E.C.、Street,B.T.及びKornosky.R.M.による“Liquid Phase Methanol [LPMEOH(商標)] Project Operational Experience”(1998年、10月4−7日にサンフランシスコにおけるGasification Technology Council Meetingで発表された)に見出され得る。メタノールを製造するために気相プロセスも用いられ得る。例えば、銅系触媒を用いる公知の方法、インペリアル・ケミカル・インダストリーズ法、ルアージ(Lurgi)法及び三菱法が用いられ得る。
【0059】
アンモニア製造のためには、LeBancらによる“Ammonia”[Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、2巻、3版(1978年)、494−500頁]に記載されたハーバー・ボッシュ法を操作するように一つ以上のガス転化器340の少なくとも一つが適合され得る。例えばギ酸メチルのようなギ酸アルキル製造のためには、アルカリ触媒、又はアルカリもしくはアルカリ土類金属メトキシド触媒の存在下で液相又は気相においてCO及びメタノールが反応されるいくつかの方法のいずれかが用いられ得る。他の詳細は、米国特許第3,716,619号、米国特許第3,816,513号及び米国特許第4,216,339号に見出され得る。
【0060】
示されていないが、一つ以上の実施形態において、管路343経由の転化された合成ガスの少なくとも一部は、販売され得るか又は更に下流のプロセスを用いて品質が向上され得る。一つ以上の実施形態において、管路331における処理された合成ガスの少なくとも一部は、先に記載した一つ以上のガス転化器340を迂回し得て、管路347経由でH分離器350に直接供給され得る。
【0061】
一つ以上のH分離器350は、合成ガスからHを選択的に分離するのに適するいずれかのシステム、装置又はシステム類及び/又は装置類の組み合わせを含み得て、管路353経由で一つ以上の精製されたH生成物及び管路351経由で一つ以上の排水を提供する。例えば、H分離器350は、圧力スイング吸収、極低温蒸留及び半透膜を用い得る。適する吸収剤には、苛性ソーダ、炭酸カリウム又は他の無機塩基及び/又はアルカノールアミン類が含まれ得る。
【0062】
一つ以上の実施形態において、例えば転化器システム330においてCO除去システムは存在しない場合、転化器330経由で、COを含む管路331経由の合成ガスが提供され得る。管路331における合成ガス中にCOが残存する場合、H分離器350により、転化された合成ガスからCOの少なくとも一部を分離することができ、管路351経由でCO及び管路353経由でH生成物を提供し得る。管路351経由のCOは、CO、アルゴン、窒素、及びH分離器350においてCOとともにもしくはCOの不存在下で合成ガスから分離され得る他の成分を含有し得る。
【0063】
一つ以上の実施形態において、管路353経由のH生成物の全て又は一部は一つ以上の燃料電池360を供給するために用いられ得て、及び/又は一つ以上の燃焼器365における燃料として用いられる前に、全て又は一部は管路331における処理された合成ガスと混合され得る。示されていないが、管路353におけるH生成物は回収され得て、水素添加脱アルキル化、水素添加脱硫、水素添加分解、H化及び他の水素添加プロセスにおいて他の炭化水素の品質を向上させるような他のプロセスのために並びに金属鉱石のための還元剤として、原子水素溶接、冷却液及び他の使用に用いられ得る。
【0064】
一つ以上の実施形態において、管路331における転化された合成ガス及び/又は管路353におけるHのすべて又は一部は一つ以上の燃焼器365において燃焼され得て、管路367経由の高圧/高温の排ガスを与え得る。管路363経由の空気又は他の適する酸化剤は一つ以上の燃焼器365に導入され得る。管路367経由で排ガスが一つ以上のガスタービン370に導入され得て管路373経由の排ガス、及び一つ以上の発電機375を駆動させるための機械軸動力を提供する。管路373経由の排ガスは熱回収システム380に導入され得て、管路106経由の蒸気を提供する。
【0065】
熱回収システム380は、閉ループ加熱システム、例えば、管路373経由で導入された排ガスと管路397経由で導入されたボイラー供給水及び/又は蒸気との間の熱を交換し、管路106経由の蒸気を産生することができる廃熱ボイラー、多管熱交換器等であることができる。熱回収システム380は、補充燃料なしに管路106経由の10,350kPa以下及び550℃以下の過熱/再加熱蒸気を提供し得る。
【0066】
一つ以上の実施形態において、管路106経由の蒸気の少なくとも一部は、蒸気タービン390に導入され得て、機械軸動力を与え、一つ以上の発電機395を駆動させる。一つ以上の実施形態において、管路106経由の蒸気の少なくとも一部は、ガス化器100及び/又は他の補助的プロセス装置(示されていない)に導入され得る。蒸気タービン390からの、より低い圧力の蒸気は、管路397経由で一つ以上の熱回収システム380に再循環され得る。管路106経由の蒸気は、一つ以上の蒸気タービン390、熱回収システム380、ガス化器100又はそれらのいずれかの組み合わせに導入され得る。管路397における蒸気からの残余の熱は、凝縮システムに排除され得るか又はその地方の蒸気消費業者に販売され得る(示されていない)。
【0067】
図4は一つ以上の実施形態による他の例示的なガス化システム400を表す。一つ以上の実施形態において、ガス化システム400は、一つ以上の統合された燃焼タービン410を含み得て、更に効率を高める。一つ以上の実施形態において、ガス化システム400はASU425を含み得て、管路108経由で酸素富有化酸化剤をガス化器100に供給する。ガス化器100、熱交換器310、微粒子除去システム315、ガス精製システム325、転化器システム330、ガス転化器340、H分離器350、蒸気タービン390、熱回収システム380、発電機375、395及び空気分離ユニット425は、図1〜3に関して先に論じ、記載したのと同じか又は類似であり得る。
【0068】
一つ以上の実施形態において、管路331経由の合成ガスの少なくとも一部及び/又は管路353経由のHの少なくとも一部は一つ以上の燃焼タービン410用の燃料として用いられ得る。燃焼タービン410は、軸動力を産生し得て、高温の排ガス、及び一つ以上の発電機375を駆動する。管路373経由の燃焼タービン排ガスからの熱(一般的に約600℃)は、熱回収システム380を用いて回収され得て、蒸気タービン390、ガス化器100及び/又は他のプロセスにおける後の使用のために管路106経由の蒸気を発生させる。
【0069】
管路402経由の周囲空気は、燃焼タービン410を用いて圧縮され得て、管路412経由の圧縮された空気が直接、ガス化器100及び/又はASU425に提供され得る。ASU425内で分離された窒素はパージされ得て及び/又は管路427経由で一つ以上の燃焼タービン410にもどされ得て、燃焼タービンにおける燃焼温度を低下させることにより窒素酸化物放出を低減させる。窒素は、燃焼熱を有しない希釈剤、すなわち熱シンクとして作用する。燃焼タービン410に入る管路331経由の合成ガスは水で飽和され得て、窒素酸化物製造を更に最小にする(示されていない)。
【0070】
ASU425からの純粋な酸素、ほとんど純粋な酸素、本質的に酸素及び/又は酸素富有化空気は管路108経由でガス器100に供給され得る。ASU425は、窒素がほとんどなく酸素に富んだ供給原料を管路108経由でガス化器305に提供し得て、それにより管路135経由で提供される合成ガス中の窒素濃度を最小にし得る。純粋な又はほとんど純粋な酸素供給原料の使用により、本質的に窒素非含有であり得る、管路135経由の合成ガスをガス化器305が製造させることが可能になる。ASU425は、図2に関して先に論じ、記載したASUと同じか又は類似であり得る。ASU425は、高圧の極低温タイプの分離器であり得る。空気は管路416経由でASU425に導入され得る。ASU425から管路427経由で分離された窒素は燃焼タービン410に添加され得るか又は有用品として使用され得る。ASU425は、管路108経由でガス化器305に供給された総酸化剤の約10%、約30%、約50%、約70%、約90%又は約100%を提供し得る。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例を示す。
【0072】
本発明の実施形態を、以下のシミュレーションされた実施例で更に記載し得る。表1は、種々の供給原料:乾燥供給原料、すなわち、炭素質物質に水が添加されていない、水でスラリー化した55重量%の、62重量%の及び70重量%の炭素質物質(水が混合物の残分である)についての基本的なプロセス条件をまとめている。表2及び表3は、図1〜4で先に記載した一つ以上の実施形態により、酸化剤として空気(表2)及び酸化剤として酸素(表3)を用いる非スラリー化プロセスと比較した、水含量が増加するにつれてのCOにおける増加及びCOにおける低減を示している。
【表1】

【0073】
表1に示されているように、ガス化器の温度は982℃に維持され、圧力は3,600kPaに維持されている。混合物に添加された水の量が増加するにつれ、より多量の、示されているように空気である酸化剤が、例えば、図1において示されている管路108経由でガス化器100に導入されることが必要である。スラリー化された混合物をガス化するために必要な付加的な熱を提供するために、付加的な酸化剤が必要である。例えば、図1での熱交換器310において発生し得る付加的な高圧蒸気は、30重量%の水混合物では22%増大し、38重量%の水混合物では32%増大し、45重量%の水混合物では43%増大する。前記発生する付加的な蒸気は付加的な動力を発生させるために用いられ得る。例えば、その蒸気は、管路313経由で蒸気タービン390に導入され得て、現場又は現場外で、発電機395経由で電力又は他の適する使用を提供する。
【表2】

【0074】
表2に示されているように、炭素質物質に水が添加されていない乾燥炭素質物質は、酸化剤として空気を用いて、約7モル%のCO及び約22モル%のCOを含有する、ガス化器出口における合成ガスを提供する。約30重量%の水を含有するスラリー化された混合物では、ガス化器出口における合成ガス中のCO含量は約10モル%に増加し、COは約15モル%に低減する。より多くの、例えば、38重量%及び45重量%の水の添加により、それぞれ約11%のCO及び約12.5%のCO並びに約10%のCO及び約11.5%のCOを含有する合成ガスが製造される。ガス化器におけるCOの増加された製造は、合成ガスの特定の使用に依存して、下流でのCOシフト転化器の必要性を低減し得る又は除き得る。又、H製造の量は、炭素質物質に約45重量%の水を添加することにより、乾燥炭素質物質を用いたときの約11モル%から約12.3モル%に増加し、ガス化器出口における合成ガス中のメタン含量は約2.1モル%から約1.2モル%へと約50%低減する。
【表3】

【0075】
表3において示されているように、乾燥炭素質物質は、酸化剤として酸素を用いて約15モル%のCO及び約47モル%のCOを含有する、ガス化器出口における合成ガスを製造する。約30重量%の水を含有するスラリー化された混合物では、ガス化器出口における合成ガス中のCO含量は約20モル%に増加し、COは約29モル%に低減する。より多くの、例えば38重量%及び45重量%の水の添加により、それぞれ、約21モル%のCO及び約23モル%のCO、並びに約21モル%のCO及び約19モル%のCOを含有する合成ガスが製造される。
【0076】
一組の数的な上限及び一組の数的な下限を用いて、特定の実施形態及び特徴を記載した。他に示されていなければ、いずれかの下限からいずれかの上限までの範囲が企図されると考えるべきである。特定の下限、上限及び範囲が、特許請求の範囲の一つ以上の請求項に見出される。すべての数値は「約」又は「およそ」示された値であり、当業者により予測される実験的誤差及び変動を考慮に入れる。
【0077】
種々の用語を先に定義した。特許請求の範囲に用いられている用語が先に定義されていない範囲には、その用語には、少なくとも一つの印刷された刊行物又は発行された特許に反映されているように当業者がその用語に与えてきた最も広範な定義が与えられるべきである。更に、本明細書に引用されているすべての特許、試験手順及び他の文書は、その開示が本明細書と矛盾しない限り、かつそのような組み入れが許されるすべての管轄区域では、引用により完全に明細書に組み入れられる。
【0078】
以上の記載は、本発明の実施形態に向けられているが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく、本発明の他の更なる実施形態が考えられ得て、本発明の基本的な範囲は特許請求の範囲により決定される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、炭素質物質の、より効率的な処理に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
100 ガス化器
102 管路
104 管路
106 管路
108 管路
110 酸化域
115 ガス化域
120 輸送管路
130 分離器
135 生成物回収管路
140 再循環管路
200 ガス化器システム
202 管路
205 混合器
207 管路
210 空気分離ユニット
212 管路
300 ガス化システム
305 ガス化器
309 管路
310 熱交換器
311 管路
313 管路
315 微粒子除去システム
317 管路
319 管路
325 ガス精製システム
327 管路
329 管路
330 シフト及び/又は回収(転化器)システム
331 管路
333 管路
337 管路
339 管路
340 ガス転化器システム
343 管路
347 管路
350 H分離器
351 管路
353 管路
360 燃料電池
363 管路
365 燃焼器
367 管路
370 ガスタービン
373 管路
375 発電機
380 熱回収システム
390 蒸気タービン
395 発電機
397 管路
402 管路
410 統合された燃焼タービン
412 管路
416 管路
425 空気分離装置
427 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質物質を処理する方法であって、
炭素質物質と、少なくとも90%液相である水を混合してスラリー化された混合物を提供する工程、
燃焼ガスの存在下で、前記スラリー化された混合物の少なくとも一部をガス化して炭素質固体及び、水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含有している合成ガスを提供する工程であって、前記合成ガスが約400℃〜約1,650℃の温度である、工程、
前記合成ガスから前記炭素質固体の少なくとも一部を選択的に分離して合成ガス生成物及び炭素質固体を提供する工程、及び
酸化剤の存在下で、前記分離された炭素質固体の少なくとも一部を燃焼して前記燃焼ガスの少なくとも一部を提供する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記合成ガス生成物中の一酸化炭素の少なくとも一部を二酸化炭素に転化する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成ガス生成物から二酸化炭素の少なくとも一部を分離する工程、及び前記分離された二酸化炭素を地質層、水塊又は両方に貯蔵する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記合成ガス生成物から二酸化炭素の少なくとも一部を分離する工程の前に、前記合成ガス生成物中の一酸化炭素の少なくとも一部を二酸化炭素に転化する工程を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記合成ガス生成物から二酸化炭素の少なくとも一部を分離する工程、及び前記分離された二酸化炭素の少なくとも一部をカーボネート、炭水化物又は両方に転化する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記合成ガス生成物から二酸化炭素の少なくとも一部を分離する工程の前に、前記合成ガス生成物中の一酸化炭素の少なくとも一部を二酸化炭素に転化する工程を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記合成ガス生成物からの熱を水、蒸気又は両方に直接又は間接的に伝達して冷却された合成ガス生成物及び蒸気生成物を提供する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記スラリー化された混合物の水濃度が約20重量%〜約70重量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化剤が空気を含有しており、前記合成ガスが20モル%未満の一酸化炭素及び少なくとも8モル%の二酸化炭素を含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化剤が本質的に窒素非含有であり、前記合成ガスが40モル%未満の一酸化炭素及び少なくとも16モル%の二酸化炭素を含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
存在する酸化剤の量が、炭素質固体の総量を酸化するのに要求される化学量論量の酸素の約1%〜約60%である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
炭素質物質を処理する方法であって、
炭素質物質と、少なくとも90%液相である水とを混合してスラリー化された混合物を提供する工程、
ガス化域中の燃焼ガスの存在下で、前記スラリー化された混合物の少なくとも一部をガス化して炭素質固体並びに水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含有している合成ガスを提供する工程であって、前記合成ガスが約400℃〜約1,650℃の温度を有している、工程、
分離域において前記合成ガスから前記炭素質固体の少なくとも一部を選択的に分離して合成ガス生成物及び炭素質物質を提供する工程、及び
燃焼域において酸化剤の存在下で、前記分離された炭素質固体の少なくとも一部を燃焼して前記燃焼ガスの少なくとも一部を提供する工程
を含む、方法。
【請求項13】
前記合成ガス生成物から二酸化炭素の少なくとも一部を分離する工程、及び前記分離された二酸化炭素を、地質層に、水塊に、カーボネート化合物として又はそれらのいずれかの組み合わせで貯蔵する工程を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記二酸化炭素を分離する工程の前に、前記合成ガス生成物中の一酸化炭素の少なくとも一部を二酸化炭素に転化する工程を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記スラリー化された混合物の水濃度が約20重量%〜約70重量%の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記酸化剤が空気を含有しており、前記合成ガスが20モル%未満の一酸化炭素及び少なくとも8モル%の二酸化炭素を含有している、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記酸化剤が本質的に窒素非含有であり、前記合成ガスが40モル%未満の一酸化炭素及び少なくとも16モル%の二酸化炭素を含有している、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記合成ガス生成物からの熱を、水、蒸気又は両方に直接又は間接的に伝達して冷却された合成ガス生成物及び蒸気生成物を提供する工程を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
炭素質物質を処理するためのシステムであって、
炭素質物質、及び水混合物を燃焼ガスの存在下でガス化して炭素質固体及び、水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含有している合成ガスを提供するのに適合したガス化域であって、前記水混合物が少なくとも90%液相である、ガス化域、
前記合成ガスから前記炭素質固体の少なくとも一部を分離するのに適合した、ガス化域に流体連絡した分離器、及び
前記分離された炭素質固体の少なくとも一部を燃焼して前記燃焼ガスの少なくとも一部を提供するのに適合した、ガス化域と流体連絡した酸化域
を含む、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、
前記合成ガスから二酸化炭素の少なくとも一部を分離して約1モル%未満の二酸化炭素しか含有していない合成ガス生成物を提供するのに適合した分離器を更に含み、
分離された二酸化炭素が、地質層に、水塊に、カーボネート化合物として又はそれらのいずれかの組み合わせの貯蔵に適している、請求項19に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−132902(P2010−132902A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−271035(P2009−271035)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(508364749)ケロッグ ブラウン アンド ルート エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】