説明

無停電電源装置用停止制御システム

【課題】 本発明は、停電や瞬電により無停電電源装置の補助電源による運転となった際に、設備全体の運転稼動時間が最大となるように各設備の停止時間を決定できる、無停電電源装置用停止制御システムの提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、無停電電源装置20と、各設備50とを、ネットワーク30を介して管理サーバー10と接続し、管理サーバー10は停電時において、無停電電源装置20のバッテリー残容量を監視すると共に、各設備50の消費電力を計測し、各設備50の運転稼動時間が最大となるように、消費電力の大きい設備の順に動作停止時間を決定することにより、上記の課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置に接続された複数の設備において、停電等により補助電源が起動したときの停止制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、停電や瞬断(短時間の停電)および電圧低下などの対策としてUPS(UnonterruptiblPowerSupply)やCVCF(ConstantVoltageConstantFrequency)に代表される無停電電源装置が設備に接続されている。その殆どの目的は、コンピユーターが内臓されている設備の安全な停止方法にある。
【0003】
コンピユータにとって、電源供給の停止及び電圧の低下は大敵であって、OS(OperatingSystem)や起動しているアプリケーションは、コンピユーターが停止するまでにファイルやデータを保存してから停止するようになっている。
【0004】
コンピユーターは一般的に処理速度向上のため、ハードディスクへの書き込みのデータを一時的にメモリーに溜めておき後にハードディスクへ書き込む、ディスクキャッシング機能が備わっている。突然、コンピユーターへの電源の供給が停止されると、メモリー内にあるデータがすべて失われることになり、また、各電子部品にも異常な負担をかけることになり寿命を縮める要因ともなっている。
【0005】
さらに、このように異常な停止後の再起動は、通常の起動手順と異なることが多く、起動に多くの手間と時間を要し、業務の早期立ち上げを妨げるという問題もある。
【0006】
無停電電源装置は、基本的には、停電や瞬断によって主電源が切れたり、また設備の規定動作電圧より電圧が下がることがあると、直ちに内臓されているバッテリーから電源を供給するものである。電源を供給できる間に、コンピユーターはOSやアプリケーションを正常に終了させ停止する。
【0007】
特許文献1では、停電時の無停電電源装置のバッテリー容量を最小限に抑えるために、予め各設備の停止順位を動作電圧の高い順に停止する停止順位を設定し、停電時には停止順位に基づき停止することが提案されている。
【特許文献1】特開2010−73030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、稼動している設備の消費電力の大きさを考慮せずに停止順位が決定された場合、結果的に設備全体の運転稼動時間が短くなってしまう場合がある。また、停止している設備が多い場合や設備の更新が頻繁におこなわれる場合、停止順位の見直しが頻繁に発生し、現況の設備状況に即した停止順位の設定が出来ない。さらに、設備の使用状況によって消費電力が変わる場合、事前に適切な停止順位を決定することが難しいという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、停電等において主電源から補助電源に切り替わった際に、運転稼動時間が最大となるように各設備の消費電力の大きい順に動作を停止させ、また、主電源復帰時には速やかに動作の停止を解除することができる、無停電電源装置用停止制御システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無停電電源装置用停止制御システムは、以下の各態様に記載の手段により上記の課題を解決するものである。
【0011】
本発明の第1の態様は、主電源と補助電源からなる無停電電源装置につながる複数の設備の停止制御システムであって、無停電電源装置ならびに各設備は、ネットワークを介して管理サーバーに接続され、該管理サーバーは無停電電源装置の状態を監視する監視部と、各設備の消費電力を計測する計測部と、各設備の動作を停止させる条件を設定し保持させる停止条件設定部と、該停止条件設定部の条件に従って各設備の動作をネットワークを介して制御する制御部とを備え、前記監視部が、当該無停電電源装置が前記補助電源に切り替わった状態を検知したときに計測部により計測された各設備の消費電力のうち、消費電力が大きい設備の順に動作を停止させるようにしたことを特徴とする無停電電源装置用停止制御システムである。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様において、前記補助電源はバッテリー駆動の電源であって、前記バッテリー残容量を前記監視部により検出し、前記制御部は、検出されたバッテリー残容量と前記設備の個々の消費電力に基づき、運転稼働時間が最大となるように前記各設備の停止開始時間を決定することを特徴とする無停電電源装置用停止制御システムである。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記第2の態様において、前記制御部は、前記各設備の運転が停止する度に、前記監視部より検出されたバッテリー残容量と、残りの運転中の前記各設備の個々の消費電力に基づき、運転稼働時間が最大となるように運転中の前記各設備の停止開始時間を決定することを特徴とする無停電電源装置用停止制御システムである。
【0014】
本発明の第4の態様は、前記第2または第3の態様において、前記制御部は、決定された停止開始時間を前記各設備に通知することを特徴とする無停電電源装置用停止制御システムである。
【0015】
本発明の第5の態様は、前記第1から第4の態様のいづれかにおいて、前記制御部は、停止していた前記主電源が復帰した場合、運転中の前記各設備に運転停止の解除の通知をすることを特徴とする無停電電源装置用停止制御システムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1から第4の態様によれば、停電等により無停電電源装置が補助電源運転となった際に、各設備の消費電力を計測し、消費電力が大きい設備の順に動作の停止を決定することにより停止時間を動的に決定できるので、設備全体の運転稼動時間が長くなり、停電等による業務の停滞や遅延といった影響を小さくする効果がある。
【0017】
本発明の第5の態様によれば、主電源が復帰した場合、運転中の各設備への運転停止通知を解除するようにしたことで停止させる設備を減らせるので、より一層早期に業務の正常化を図れる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による無停電電源装置用停止システムの構成を示すブロック図の一例である。
【図2】本実施の形態における停止制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明による無停電電源装置用停止システムの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係わる無停電電源装置用停止制御システムの構成図である。
【0020】
無停電電源装置用停止制御システム1は、無停電電源装置20、設備51、設備52、設備53は、ネットワーク30を介して管理サーバー10に接続され、電源の供給は、無停電電源装置20から電源供給ライン40を介して各設備50に供給される構成となっている。
【0021】
無停電電源装置20は、主電源21と補助電源22とからなり、一般的に主電源21から補助電源22に切り替わる時に、切り替え時間が発生する装置と発生しない装置とがある。本実施形態に係わる設備51、設備52,設備53は、コンピユーターが内臓されている電子機器であり、前記切り替え時間の発生の影響により動作が異常停止する可能性もある。しかしながら、説明の便宜上、本実施の形態では、切り替え時間の発生による影響は無視できるものとする。
【0022】
管理サーバー10は、補助電源22のバッテリー残容量を監視する監視部11と、各設備50のそれぞれの消費電力を計測する計測部12と、各設備50の動作を停止させる条件を設定し保持している停止条件設定部13と、停止条件設定部13の条件に従って各設備50の動作をネットワーク30を介して制御する制御部14とからなる。
【0023】
次に、このように構成された本実施の形態にかかる停電時における管理サーバー10の各設備50の停止制御について図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態における各設備50の停止制御の流れを示すフローチャートである。
【0024】
停電が発生すると、無停電電源装置20は、主電源21から補助電源21に無瞬断で切り替わる。補助電源駆動に切り替わったことは、無停電電源装置20より管理サーバー10へ通知される。(Step1)
【0025】
管理サーバー10においては、停電の通知を受け、運転中の各設備の消費電力を計測部12によって測定し、ほぼ同時に監視部11によって、補助電源21のバッテリー残容量の常時監視を開始する。(Step2,Step3)
【0026】
計測部12より測定された各設備50のそれぞれの消費電力より、停止条件設定部13は、各設備の消費電力の大きい順に動作の停止を設定する。(Step4)
【0027】
次に制御部14は、停止条件設定部13により設定された各設備50の動作の停止条件に基づいて各設備50の停止開始時間を決定する。
【0028】
即ち、制御部14は、計測部12により測定された各設備50の消費電力と、監視部11により監視されている補助電源22のバッテリー残容量から、運転稼働時間が最大となるように各設備50の停止開始時間を決定する。(Step5)
【0029】
前記停止開始時間の決定には、各設備の動作停止に際し、OSやアプリケーションが正常に終了することのできる時間を考慮し決定される。
【0030】
制御部14は、前記決定された停止開始時間を各設備に通知し、各設備は通知された停止開始時間に基づき動作の停止を開始する。(Step6)
【0031】
このように停電時における各設備50の消費電力に基づき、動作の停止を動的に決定できる。これにより補助電源22のバッテリー容量を最大限に活用し、結果的に運転稼働時間を長くすることができる。
【0032】
さらに、各設備50の動作の停止順が、設備51、設備52、設備53と仮に設定された場合、制御部14は、停止開始時間通知に基づき設備51の停止を確認すると、残りの稼動中の設備52、と設備53の消費電力を計測部12により再度取得し、監視部11によりリアルタイムに監視されている補助電源22のバッテリー残容量より、再度、運転稼動時間が最大となるように設備52と設備53の停止開始時間を再決定し通知する。(Step7)
【0033】
このように、設備が停止する度に、残る稼動中の設備の消費電力を再測定し、常時監視されているバッテリーの残容量から停止開始時間を見直し、停止時間を再設定し通知する。これにより、設備全体の運転稼動時間が一層長くなる。さらに、バッテリー容量が予想以上の減少となっている場合は、動作停止を早めるように制御することも可能である。
【0034】
管理サーバー10は、全ての設備の停止を確認後、管理サーバー10も停止する。(Step8)
【0035】
(変形例) 本発明は以上説明した実施の形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。図1の無停電電源装置用停止制御システムは一例であり、図3のように設備の増設や複数の無停電電源装置を接続するような構成にも対応している。
【符号の説明】
【0036】
1 無停電電源装置用停止制御システム
10 管理サーバー
11 監視部
12 計測部
13 停止条件設定部
14 制御部
20 無停電電源装置
21 主電源
22 補助電源
25 無停電電源装置n
30 ネットワーク
40 電源供給ライン
50 各設備
51 設備51
52 設備52
53 設備53
54 設備n


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源と補助電源からなる無停電電源装置につながる複数の設備の停止制御システムであって、無停電電源装置ならびに各設備は、ネットワークを介して管理サーバーに接続され、該管理サーバーは無停電電源装置の状態を監視する監視部と、各設備の消費電力を計測する計測部と、各設備の動作を停止させる条件を設定し保持させる停止条件設定部と、該停止条件設定部の条件に従って各設備の動作をネットワークを介して制御する制御部とを備え、前記監視部が、当該無停電電源装置が前記補助電源に切り替わった状態を検知したときに計測部により計測された各設備の消費電力のうち、消費電力が大きい設備の順に動作を停止させるようにしたことを特徴とする無停電電源装置用停止制御システム。
【請求項2】
前記補助電源はバッテリー駆動の電源であって、前記バッテリー残容量を前記監視部により検出し、前記制御部は、検出されたバッテリー残容量と前記設備の個々の消費電力に基づき、運転稼働時間が最大となるように前記各設備の停止開始時間を決定することを特徴とする請求項1記載の無停電電源装置用停止制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記各設備の運転が停止する度に、前記監視部より検出されたバッテリー残容量と、残りの運転中の前記各設備の個々の消費電力に基づき、運転稼働時間が最大となるように運転中の前記各設備の停止開始時間を決定することを特徴とする請求項2記載の無停電電源装置用停止制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、決定された停止開始時間を前記各設備に通知することを特徴とする請求項2または3記載の無停電電源装置用停止制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、停止していた前記主電源が復帰した場合、運転中の前記各設備に運転停止の解除の通知をすることを特徴とする請求項1から4の何れか記載の無停電電源装置用停止制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−155503(P2012−155503A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13586(P2011−13586)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】