説明

無機被膜形成用組成物

【課題】膜厚の厚い絶縁膜を形成することが可能な無機被膜形成用組成物であって、低コストで絶縁膜を形成することが可能な無機被膜形成用組成物を提供すること。
【解決手段】(a)無機酸化物微粒子、及び(b)バインダー化合物を含む無機固形分と、(c)溶剤とからなる無機被膜形成用組成物であって、前記(b)バインダー化合物が、ベーマイト型アルミナゾル、又は擬似ベーマイト型アルミナゾルを含む無機被膜形成用組成物。本発明の無機被膜形成用組成物によれば、膜厚の厚い絶縁膜を形成した場合でも、クラックを発生することがない。更に、シリコン基板上に形成された被膜の焼成後において、十分な硬度の絶縁膜を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に太陽電池において、電極間を絶縁する絶縁膜を形成するために用いられる無機被膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光等から得られる光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池は、環境問題に対する関心の高まりとともに、次世代の発電手段として、その注目を集めている。近年においては、様々な太陽電池が開発されているが、その中でも、結晶シリコン型太陽電池が変換効率の高さや製造コストの低さ等から、現在最も一般的に用いられている。
【0003】
従来用いられている太陽電池は、その受光面にn電極が形成され、裏面にp電極が形成されている。しかしながら、受光面にn電極を形成した場合、n電極の下方のシリコン基板には太陽光が入射せず、当該部位においては、電流が発生しない。このため、n電極とp電極の両者をシリコン基板の裏面に形成することにより、シリコン基板への太陽光の入射量を増加させて、発電効率を高めた太陽電池が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、p型シリコン基板の受光面を粗面状にするとともに、裏面側にp領域とn領域を形成し、このp領域とn領域上に電極を形成した裏面電極型太陽電池において、前記p型シリコン基板の受光面側に針状の微細な突起を多数形成して粗面状にするとともに、この粗面状部に二酸化珪素膜を形成したことを特徴とする裏面電極型太陽電池素子が開示されている。特許文献1に記載の発明によれば、シリコン基板の受光面側には電極が存在せず、光影損失とキャリアの再結合損失が発生しないものとされている。
【0005】
ここで、裏面電極型太陽電池においては、p電極とn電極をシリコン基板の裏面に交互に配置するため、p電極とn電極との間を絶縁するための絶縁膜を設ける必要がある。絶縁膜を形成するための絶縁膜形成用組成物としては、半導体素子の製造に用いられる絶縁膜形成用組成物が広く知られており、例えば、特許文献2には、特定のケイ素化合物、その加水分解物、及び/又は、それらの縮合物、及び溶剤を含有し、全溶媒中、沸点が85℃〜250℃の有機溶剤が25質量%以上占めることを特徴とする絶縁膜形成用組成物が開示されている。特許文献2に記載の発明によれば、低比誘電率を有する絶縁膜を安定に形成することができるものとされている。
【特許文献1】特開2002−164556号公報
【特許文献2】特開2007−045966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、太陽電池の電極には、半導体素子に比べて多量の電流が通電されるため、太陽電池の電極間を絶縁するための絶縁膜には、膜厚の厚い絶縁膜を用いる必要があった。ここで、特許文献2に記載の発明のような半導体素子製造用の絶縁膜形成用組成物で所定の膜厚以上の絶縁膜を形成する場合には、クラックが生じる等の問題があった。更に、特許文献2に記載の絶縁膜形成用組成物は、塗布型の絶縁膜形成用組成物であるため、絶縁膜形成用組成物の塗布後に被膜のパターンニングを行う必要があり、絶縁膜の形成に要するコストが高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、膜厚の厚い絶縁膜を形成することが可能な無機被膜形成用組成物であって、焼成後にクラックを生じず、低コストで絶縁膜を形成することが可能な無機被膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物を含む無機固形分と、溶剤とからなる無機被膜形成用組成物であって、前記バインダー化合物が、所定のアルミナゾルを含む無機被膜形成用組成物を用いたとき、膜厚の厚い絶縁膜を形成してもクラックを生じないことを見出した。
【0009】
更に、本発明の発明者らは、少なくとも、無機酸化物微粒子、バインダー化合物、及び溶剤を含み、前記バインダー化合物が、所定のアルミナゾルを含み、前記溶剤が、所定の多価アルコールを含む無機被膜形成用組成物を用いたとき、上記の効果に加え、膜厚の厚い絶縁膜を形成可能で、低コストで絶縁膜を形成することが可能であることを見出した。
【0010】
以上より、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
本発明の第一の態様は、(a)無機酸化物微粒子、及び(b)バインダー化合物を含む無機固形分と、(c)溶剤とからなる無機被膜形成用組成物であって、前記(b)バインダー化合物が、ベーマイト型アルミナゾル、又は擬似ベーマイト型アルミナゾルを含む無機被膜形成用組成物である。
【0013】
また、本発明の第二の態様は、少なくとも、(a)無機酸化物微粒子、(b)バインダー化合物、及び(c)溶剤を含み、前記(b)バインダー化合物が、ベーマイト型アルミナゾル、又は擬似ベーマイト型アルミナゾルを含み、前記(c)溶剤が、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを含む無機被膜形成用組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の無機被膜形成用組成物は、バインダーとして所定のアルミナゾルを用いているので、当該無機被膜形成用組成物を用いて膜厚の厚い絶縁膜を形成した場合でも、クラックを発生することがない。更に、本発明の無機被膜形成用組成物は、有機高分子化合物を含有していないため、シリコン基板上に形成された被膜の焼成後において、十分な硬度の絶縁膜を形成することができる。
【0015】
加えて、溶剤として、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを利用した場合には、無機被膜形成用組成物の高粘度化、及び高固形分濃度化が可能となるため、スクリーン印刷等を用いて、低コストで絶縁膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
<<第1の実施形態>>
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0018】
<無機被膜形成用組成物>
本実施形態の無機被膜形成用組成物は、(a)無機酸化物微粒子、及び(b)バインダー化合物を含む無機固形分と、(c)溶剤とからなる無機被膜形成用組成物である。更に、本実施形態の無機被膜形成用組成物は、必要に応じて(d)無機アルコキシド、及び/又は無機アルコキシドの加水分解物、並びに(e)無機塩を含む。
【0019】
[(a)無機酸化物微粒子]
本実施形態の無機被膜形成用組成物は、無機酸化物微粒子を含む。無機被膜形成用組成物が無機酸化物微粒子を含むことにより、形成される絶縁膜の誘電率を低下させることができ、結果として、絶縁膜の絶縁性を向上させることができる。
【0020】
無機酸化物微粒子としては、特に限定されるものではないが、酸化ケイ素微粒子、酸化チタン微粒子、及び酸化ジルコニウム粒子等を用いることができる。これらの無機酸化物微粒子の中でも、絶縁膜の絶縁性を良好に保つという観点からIV族元素の酸化物から形成される無機酸化物微粒子を用いることが好ましく、酸化ケイ素微粒子、及び酸化チタン微粒子を用いることが更に好ましい。
【0021】
無機酸化物微粒子の平均粒径は、5nm以上1000nm以下であることが好ましい。無機酸化物微粒子の平均粒径が上記範囲内であることにより、無機被膜形成用組成物中における無機酸化物微粒子の分散状態が良好に保たれ、均質な絶縁膜を形成することができる。
【0022】
本実施形態の無機被膜形成用組成物における、無機酸化物微粒子の含有量は、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。無機酸化物微粒子の含有量が、上記範囲内であることにより、無機被膜形成用組成物における無機酸化物微粒子の分散状態を良好に保ちつつ、形成される絶縁膜の絶縁性を好適に維持することができる。上記含有量は、2質量%以上35質量%以下であることが更に好ましい。
【0023】
[(b)バインダー化合物]
本実施形態の無機被膜形成用組成物は、バインダー化合物を含む。バインダー化合物としては、ベーマイト型アルミナゾル、及び擬似ベーマイト型アルミナゾルを用いる。ベーマイト型アルミナゾル、及び擬似ベーマイト型アルミナゾルは、1200℃から1600℃の条件下において焼成されることによりアルミナに変化するため、本実施形態の無機被膜形成用組成物を用いた絶縁膜において、被膜形成成分として用いることができる。更に、アルミナは誘電率が低いため、本実施形態の無機被膜形成用組成物から形成される絶縁膜の絶縁性を良好に保つことができる。
【0024】
ベーマイト型アルミナゾル、及び擬似ベーマイト型アルミナゾルは、市販されているものを用いることができる。そのような市販品としては、アルミナゾル100、アルミナゾル200、及びアルミナゾル520(いずれも日産化学社製)、コロイダルアルミナCataloid−AS(触媒化成工業社製)、並びにアルミゾル10(川研ファインケミカル社製)を挙げることができる。
【0025】
本実施形態の無機被膜形成用組成物においては、バインダー化合物として、有機高分子化合物を含有しない。このため、本実施形態の無機被膜形成用組成物を焼成することにより形成された絶縁膜の硬度を高く保つことができるとともに、絶縁膜中に有機分が残留するおそれがない。また、ベーマイト型アルミナゾル、及び擬似ベーマイト型アルミナゾルを焼成することにより形成される絶縁被膜は、その強度に優れるため、厚膜を形成した場合でもクラック等が発生することがない。
【0026】
本実施形態の無機被膜形成用組成物における、バインダー化合物の含有量は、1質量%以上49質量%以下であることが好ましい。バインダー化合物の含有量が、上記範囲内にあることにより、無機被膜形成用組成物中における分散性が良好に保たれるとともに、無機被膜形成用組成物が十分に粘性を有するものとなる。上記含有量は、2質量%以上35質量%以下であることが更に好ましい。
【0027】
[(c)溶剤]
本実施形態の無機被膜形成用組成物に用いられる溶剤としては、特に限定されるものではないが、無機被膜形成用組成物中における無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物の分散性を良好に保つという観点から、多価アルコールを用いることが好ましい。多価アルコールを用いることにより、無機被膜形成用組成物の固形分濃度や粘度を十分に高めることができ、スクリーン印刷等の手法により、低コストで被膜の形成を行うことができる。
【0028】
上記多価アルコールとしては、1,2−エタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、及びジプロピレングリコール等の2価のアルコール、並びに1,2,3−トリヒドロキシプロパン、及び3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール等の3価のアルコールを挙げることができる。これらの多価アルコールは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。上記多価アルコールの中でも、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、及び2−メチル−2,4−ペンタンジオールを用いることが好ましく、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを用いることが特に好ましい。
【0029】
また、粘度調整用溶剤として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノオクチルエーテル等のグリコールエーテル類を使用してもよい。
【0030】
溶剤として、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを用いる場合、無機被膜形成用組成物における3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールの含有量が、溶剤の全量に対して、10質量%以上であることが好ましい。3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールの含有量が上記範囲内であることにより、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物の分散性を良好に保つことができる。上記含有量は、20質量%以上であることが更に好ましい。
【0031】
(極性溶剤)
本実施形態の無機被膜形成用組成物においては、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物の分散性を更に向上させるために、極性溶剤を添加することが好ましい。上記極性溶剤としては、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを挙げることができる。これらの極性溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。上記極性溶剤の中でも、γ−ブチロラクトン、及びN−メチルピロリドンを用いることが好ましい。
【0032】
無機被膜形成用組成物における上記極性溶剤の含有量は、溶剤の全量に対して、3質量%以上70質量%以下であることが好ましい。極性溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物の分散性を良好に保つことができる。上記含有量は、5質量%以上40質量%以下であることが更に好ましい。
【0033】
本実施形態の無機被膜形成用組成物においては、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物を分散させるために、有機高分子化合物からなる分散剤を必要としない。即ち、本実施形態の無機被膜形成用組成物においては、用いられる溶剤の溶剤分子が無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物を構成する金属元素に配位し、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物の分散性を良好に保つので、分散剤を特に添加しなくとも、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物の分散性が低下することがない。無機被膜形成用組成物に、有機高分子化合物からなる分散剤を含有しないことにより、焼成後の絶縁膜の硬度を良好に保つことができるとともに、絶縁膜中に有機分が残留するおそれがない。
【0034】
[(d)無機アルコキシド、及び/又は無機アルコキシドの加水分解物]
本実施形態の無機被膜形成用組成物は、必要に応じて、無機アルコキシド、及び/又は無機アルコキシドの加水分解物を含んでいてもよい。上記無機アルコキシドとしては、特に限定されるものではないが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、及びテトラブトキシシラン等のアルコキシシラン;モノメトキシトリエトキシシラン、モノメトキシトリプロポキシシラン、モノエトキシトリプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノエトキシトリブトキシシラン、及びモノプロポキシトリブトキシシラン等のアルコキシシラン;ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、及びジエトキシジブトキシシラン等のアルコキシシラン;モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリプロポキシシラン、モノメチルトリブトキシシラン、モノフェニルトリメトキシシラン、モノフェニルトリエトキシシラン、及びモノフェニルトリブトキシシラン等のモノアルキルトリアルコキシシラン;並びにジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、及びジメチルジブトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン等を挙げることができる。
これらの無機アルコキシドの中でもテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン等のアルコキシシランを用いることが好ましい。本実施形態の無機被膜形成用組成物に、無機アルコキシド、及び/又は無機アルコキシドの加水分解物を含有させた場合、バインダー化合物とともに複合体を形成し、無機被膜形成用組成物から形成される絶縁膜の強度を高いものとすることができる。
【0035】
無機被膜形成用組成物における、無機アルコキシド、及び/又は無機アルコキシドの加水分解物の含有量は、無機酸化物微粒子とバインダー化合物とを含む固形分量に対して3質量%以上50質量%以下であることが好ましい。無機アルコキシド、及び/又は無機アルコキシドの加水分解物の含有量が上記範囲内にあることにより、無機被膜形成用組成物から形成される絶縁膜の強度を十分に保つことができる。上記含有量は、5質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0036】
[(e)無機塩]
本実施形態の無機被膜形成用組成物は、更に、無機塩を含有していてもよい。無機塩を含有することにより、被膜強度を向上させることができる。上記無機塩としては、硝酸アルミニウム水和物を用いることが好ましい。
【0037】
本実施形態の無機被膜形成用組成物における無機塩の含有量は、無機酸化物微粒子とバインダー化合物とを含む固形分量に対して1質量%以上35質量%以下であることが好ましい。無機塩の含有量が、上記範囲内にあることにより、被膜強度を十分に保つことができる。上記含有量は、5質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0038】
[無機被膜形成用組成物の物理的特性]
本実施形態の無機被膜形成用組成物は、スクリーン印刷等の手段によって、シリコン基板等の基板上にパターン化された被膜を転写するために、十分に高い固形分濃度と、粘度とを有することが好ましい。無機被膜形成用組成物の固形分濃度としては、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上35質量%以下であることが更に好ましい。また、無機被膜形成用組成物の粘度としては、50mPa・s以上100000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以上10000mPa・s以下であることが更に好ましい。上記の固形分濃度、及び粘度とすることにより、無機被膜形成用組成物をシリコン基板上に転写する際に、良好な被膜パターンを得ることができる。
【0039】
本実施形態の無機被膜形成用組成物に含まれる無機固形分は、上記無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物を含むものである。本実施形態の無機被膜形成用組成物においては、固形分として有機成分を含まない。当該有機成分としては、有機高分子化合物、並びに有機基が直接ケイ素原子に結合したシリカ系材料、及び有機基を有するシリカ系高分子化合物等、無機被膜形成用組成物から形成される被膜の形成時に、焼失する化合物を含む。このように、有機成分を含有しないことにより、本実施形態の無機被膜形成用組成物から形成される被膜を焼成した絶縁膜が、十分な硬度を有するものとなる。
【0040】
[無機被膜形成用組成物の用途]
本実施形態の無機被膜形成用組成物の用途としては、特に限定されるものではなく、半導体素子製造用の層間絶縁膜形成用組成物として、或いは、太陽電池製造用の層間絶縁膜形成用組成物として用いることができる。しかしながら、本実施形態の無機被膜形成用組成物は、膜厚の厚い絶縁膜を形成することが可能であるという観点から、特に裏面電極型太陽電池に代表される太陽電池等、通電される電流の容量が大きな電子機器において絶縁膜を形成するための絶縁膜形成用組成物として用いられることが好ましい。
【0041】
また、本実施形態の無機被膜形成用組成物が、溶剤として多価アルコールを含有する場合には固形分濃度や粘度を高くすることができるため、スクリーン印刷等の手法により、基板上にパターン化された状態で転写することができる。このため、本実施形態の無機被膜形成用組成物は、塗布型の絶縁膜形成用組成物と比べて原料コストを低く抑えることができ、価格競争の激しい電子機器に用いられる絶縁膜形成用組成物として、好適に用いることができる。
【0042】
<無機被膜形成用組成物を用いた絶縁膜の形成方法>
本実施形態の無機被膜形成用組成物を用いた絶縁膜の形成方法においては、シリコン基板等の基板上に、本実施形態の無機被膜形成用組成物を塗布、又は転写し、乾燥させて被膜を形成する。そして、この被膜を焼成して、絶縁膜を形成する。
【0043】
[塗布・転写]
基板上に本実施形態の無機被膜形成用組成物を塗布、又は転写する方法は特に限定されず、絶縁膜の形成に従来用いられている公知の方法を採用することができる。しかしながら、本実施形態の無機被膜形成用組成物は、高い固形分濃度と高い粘性を有するため、スクリーン印刷等の手法により、基板上に転写することが好ましい。
【0044】
[乾燥・焼成]
基板に転写された無機被膜形成用組成物は、60℃以上150℃以下で、5分以上30分以下加熱することにより乾燥する。形成された被膜は、300℃以上600℃以下で、10分以上60分以下加熱することにより焼成されて、絶縁膜となる。
【0045】
<<第2の実施形態>>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、上記第1の実施形態と同一の事項については、その説明を省略する。
【0046】
<無機被膜形成用組成物>
本実施形態の無機被膜形成用組成物は、少なくとも、(a)無機酸化物微粒子、(b)バインダー化合物、及び(c)溶剤を含む無機被膜形成用組成物である。更に、本実施形態の無機被膜形成用組成物は、必要に応じて(d)無機アルコキシド、及び/又は無機アルコキシドの加水分解物、並びに(e)無機塩を含む。
【0047】
[(b)バインダー化合物]
本実施形態の無機被膜形成用組成物は、バインダー化合物を含む。バインダー化合物としては、ベーマイト型アルミナゾル、及び擬似ベーマイト型アルミナゾルを用いる。ベーマイト型アルミナゾル、及び擬似ベーマイト型アルミナゾルは、1200℃から1600℃の条件下において焼成されることによりアルミナに変化するため、本実施形態の無機被膜形成用組成物を用いた絶縁膜において、被膜形成成分として用いることができる。更に、アルミナは誘電率が低いため、本実施形態の無機被膜形成用組成物から形成される絶縁膜の絶縁性を良好に保つことができる。
【0048】
ベーマイト型アルミナゾル、及び擬似ベーマイト型アルミナゾルは、市販されているものを用いることができる。そのような市販品としては、アルミナゾル100、アルミナゾル200、及びアルミナゾル520(いずれも日産化学社製)、コロイダルアルミナCataloid−AS(触媒化学工業社製)、並びにアルミゾル10(川研ファインケミカル社製)を挙げることができる。
【0049】
ベーマイト型アルミナゾル、及び擬似ベーマイト型アルミナゾルを焼成することにより形成される絶縁皮膜は、その強度に優れるため、厚膜を形成した場合でもクラック等が発生することがない。
【0050】
本実施形態の無機被膜形成用組成物における、バインダー化合物の含有量は、1質量%以上49質量%以下であることが好ましい。バインダー化合物の含有量が、上記範囲内にあることにより、無機被膜形成用組成物中における分散性が良好に保たれるとともに、無機被膜形成用組成物が十分に粘性を有するものとなる。上記含有量は、2質量%以上35質量%以下であることが更に好ましい。
【0051】
[(c)溶剤]
本実施形態の無機被膜形成用組成物に用いられる溶剤は、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを含むものである。3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを用いることにより、無機被膜形成用組成物の固形分濃度や粘度を十分に高めることができ、スクリーン印刷等の手法により、低コストで被膜の形成を行うことができる。
【0052】
無機被膜形成用組成物における3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールの含有量は、溶剤の全量に対して、10質量%以上であることが好ましい。3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールの含有量が、上記範囲内であることにより、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物の分散性を良好に保つことができる。上記含有量は、20質量%以上であることが更に好ましい。
【0053】
また、本実施形態においては、溶剤として、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールのほかにも、他の多価アルコール、及び極性溶剤を含んでもよい。
【0054】
(多価アルコール)
上記多価アルコールとしては、1,2−エタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、及びジプロピレングリコール等の2価のアルコール、並びに1,2,3−トリヒドロキシプロパン等の3価のアルコールを挙げることができる。これらの多価アルコールは、単独で添加してもよく、2種以上を混合して添加してもよい。上記多価アルコールの中でも、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、及び2−メチル−2,4−ペンタンジオールを用いることが好ましい。
【0055】
また、粘度調整用溶剤として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノオクチルエーテル等のグリコールエーテル類を使用してもよい。
【0056】
無機被膜形成用組成物における上記多価アルコールの含有量は、溶剤の全量に対して、10質量%以上であることが好ましい。極性溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物の分散性を良好に保つことができる。上記含有量は、20質量%以上であることが更に好ましい。
【0057】
(極性溶剤)
本実施形態の無機被膜形成用組成物においては、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物の分散性を更に向上させるために、極性溶剤を添加することが好ましい。上記極性溶剤としては、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを挙げることができる。これらの極性溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。上記極性溶剤の中でも、γ−ブチロラクトン、及びN−メチルピロリドンを用いることが好ましい。
【0058】
無機被膜形成用組成物における上記極性溶剤の含有量は、溶剤の全量に対して、3質量%以上70質量%以下であることが好ましい。極性溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物の分散性を良好に保つことができる。上記含有量は、5質量%以上40質量%以下であることが更に好ましい。
【0059】
本実施形態の無機被膜形成用組成物においては、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物を分散させるために、有機高分子化合物からなる分散剤を必要としない。即ち、本実施形態の無機被膜形成用組成物においては、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールの溶剤分子や、その他の溶剤の溶剤分子が無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物を構成する金属元素に配位し、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物の分散性を良好に保つので、分散剤を特に添加しなくとも、無機酸化物微粒子、及びバインダー化合物の分散性が低下することがない。無機被膜形成用組成物に、有機高分子化合物からなる分散剤を含有しないことにより、焼成後の絶縁膜の硬度を良好に保つことができるとともに、絶縁膜中に有機分が残留するおそれがない。
【0060】
[その他の成分]
本実施形態の無機被膜形成用組成物においては、絶縁膜形成用組成物に通常用いられる他の添加剤を添加してもよい。
【0061】
[無機被膜形成用組成物の物理的特性]
本実施形態の無機被膜形成用組成物は、スクリーン印刷等の手段によって、シリコン基板等の基板上にパターン化された被膜を転写するために、十分に高い固形分濃度と、粘度とを有することが好ましい。無機被膜形成用組成物の固形分濃度としては、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上35質量%以下であることが更に好ましい。また、無機被膜形成用組成物の粘度としては、50mPa・s以上100000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以上10000mPa・s以下であることが更に好ましい。固形分濃度、及び粘度をすることにより、無機被膜形成用組成物をシリコン基板上に転写する際に、良好な被膜パターンを得ることができるとともに、膜厚の厚い被膜を容易に形成することができる。
【0062】
[無機被膜形成用組成物の用途]
本実施形態の無機被膜形成用組成物の用途としては、特に限定されるものではなく、半導体素子製造用の層間絶縁膜形成用組成物として、或いは、太陽電池製造用の層間絶縁膜として用いることができる。しかしながら、本実施形態の無機被膜形成用組成物は、膜厚の厚い絶縁膜を形成することが可能であるという観点から、特に裏面電極型太陽電池に代表される太陽電池等、通電される電流の容量が大きな電子機器において絶縁膜を形成するための絶縁膜形成用組成物として用いられることが好ましい。
【0063】
また、本実施形態の無機被膜形成用組成物は固形分濃度や粘度を高くすることができるため、スクリーン印刷等の手法により、基板上にパターン化された状態で転写することができる。このため、本実施形態の無機被膜形成用組成物は、塗布型の絶縁膜形成用組成物と比べて原料コストを低く抑えることができ、価格競争の激しい電子機器に用いられる絶縁膜形成用組成物として、好適に用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の無機被膜形成用組成物について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0065】
<実施例1>
[分散液A−1の調製]
「AEROSIL R812」(商品名、酸化ケイ素微粒子、日本アエロジル社製)300.0gを2−メチル−2,4−ペンタンジオール900.0gに浸漬して膨潤させた後、分散機としてプラネタリウムミキサーを用いて4時間分散して、固形分濃度24.9質量%の分散液を得た(分散液A−1)。なお、分散時は分散機の容器外部を冷却しながら分散し、最高温度は33℃であった。
【0066】
[分散液A−2の調製]
「AEROSIL 300」(商品名、酸化ケイ素微粒子、日本アエロジル社製)300.0gを3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール900.0gに浸漬して膨潤させた後、分散機としてプラネタリウムミキサーを用いて4時間分散して、固形分濃度24.5質量%の分散液を得た(分散液A−2)。なお、分散時は分散機の容器外部を冷却しながら分散し、最高温度は36℃であった。
【0067】
[分散液A−3の調製]
「AEROSIL 300」(商品名、酸化ケイ素微粒子、日本アエロジル社製)300.0gを2−メチル−2,4−ペンタンジオール700.0gに浸漬して膨潤させた後、分散機としてプラネタリウムミキサーを用いて4時間分散して、固形分濃度29.7質量%の分散液を得た(分散液A−3)。なお、分散時は分散機の容器外部を冷却しながら分散し、最高温度は33℃であった。
【0068】
[分散液A−4の調製]
「AEROSIL 300」(商品名、酸化ケイ素微粒子、日本アエロジル社製)300.0gを1,2−ペンタンジオール900.0gに浸漬して膨潤させた後、分散機としてプラネタリウムミキサーを用いて4時間分散して、固形分濃度24.7質量%の分散液を得た(分散液A−4)。なお、分散時は分散機の容器外部を冷却しながら分散し、最高温度は34℃であった。
【0069】
[分散液A−5の調製]
「AEROSIL 300」(商品名、酸化ケイ素微粒子、日本アエロジル社製)200.0gを2−メチル−2,4−ペンタンジオール1000.0gに浸漬して膨潤させた後、分散機としてプラネタリウムミキサーを用いて4時間分散して、固形分濃度16.4質量%の分散液を得た(分散液A−5)。なお、分散時は分散機の容器外部を冷却しながら分散し、最高温度は33℃であった。
【0070】
[分散液A−6の調製]
「AEROSIL R812」(商品名、酸化ケイ素微粒子、日本アエロジル社製)200.0gを2−メチル−2,4−ペンタンジオール1000.0gに浸漬して膨潤させた後、分散機としてプラネタリウムミキサーを用いて4時間分散して、固形分濃度16.4質量%の分散液を得た(分散液A−6)。なお、分散時は分散機の容器外部を冷却しながら分散し、最高温度は33℃であった。
【0071】
[分散液A−7の調製]
「AEROSIL 300」(商品名、酸化ケイ素微粒子、日本アエロジル社製)200.0gを1,2−ペンタンジオール1000.0gに浸漬して膨潤させた後、分散機としてプラネタリウムミキサーを用いて4時間分散して、固形分濃度16.4質量%の分散液を得た(分散液A−7)。なお、分散時は分散機の容器外部を冷却しながら分散し、最高温度は33℃であった。
【0072】
[分散液A−8の調製]
「AEROSIL R812」(商品名、酸化ケイ素微粒子、日本アエロジル社製)300.0gを1,2−ペンタンジオール900.0gに浸漬して膨潤させた後、分散機としてプラネタリウムミキサーを用いて4時間分散して、固形分濃度25.0質量%の分散液を得た(分散液A−8)。なお、分散時は分散機の容器外部を冷却しながら分散し、最高温度は33℃であった。
【0073】
[分散液B−1の調製]
「アルミナゾル 520」(商品名、ベーマイト型アルミナゾル、日産化学工業社製)1500gに3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール1200gを加え、40℃の恒温槽にて保温しながら、エバポレーターで溶剤置換を行い、固形分濃度は15.1質量%の分散液B−1を得た。
【0074】
[分散液B−2の調製]
「アルミゾル 10」(商品名、擬似ベーマイト型アルミナゾル、川研ファインケミカル社製)3000gに3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール1200gを加え、40℃の恒温槽にて保温しながら、エバポレーターで溶剤置換を行い、固形分濃度15.4質量%の分散液B−2を得た。
【0075】
[分散液B−3の調製]
「アルミゾル 10」(商品名、擬似ベーマイト型アルミナゾル、川研ファインケミカル社製)3000gに3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール600g及びジプロピレングリコール600gを加え、40℃の恒温槽にて保温しながら、エバポレーターで溶剤置換を行い、固形分濃度15.0質量%の分散液B−3を得た。
【0076】
[分散液B−4の調製]
「アルミナゾル 520」(商品名、ベーマイト型アルミナゾル、日産化学工業社製)1500gに1,2−ペンタンジオール2000gを加え、40℃の恒温槽にて保温しながら、エバポレーターで溶剤置換を行い、固形分濃度10.2質量%の分散液B−4を得た。
【0077】
[分散液B−5の調製]
「アルミゾル 10」(商品名、擬似ベーマイト型アルミナゾル、川研ファインケミカル社製)1500gに1,2−ペンタンジオール2000gを加え、40℃の恒温槽にて保温しながら、エバポレーターで溶剤置換を行い、固形分濃度10.5質量%の分散液B−5を得た。
【0078】
[溶解液C−1の調製]
「エチルセルロール STD 4CPS」(商品名、日新化成株式会社製)16.0gを1,2−ペンタンジオール620gに加え、80℃の恒温槽にて保温しながら撹拌・溶解し、固形分濃度2.5質量%の溶解液C−1を得た。
【0079】
[溶解液C−2の調製]
「エチルセルロール STD 4CPS」(商品名、日新化成株式会社製)14.0gを2−メチル−2,4−ペンタンジオール613gに加え、80℃の恒温槽にて保温しながら撹拌・溶解し、固形分濃度2.2質量%の溶解液C−2を得た。
【0080】
<<無機被膜形成用組成物の調製>>
<実施例1>
分散液A−1 200gと、分散液B−1 780gとを混合し、超音波分散機を用いて十分に混合した。得られた混合液(無機被膜形成用組成物1)は、固形分濃度が16.2質量%、粘度が2100mPa・sであった。上記の無機被覆形成用組成物1をスクリーン印刷法により基板上に印刷し、その後100℃にて15分間の乾燥処理を施し、更に電気炉にて500℃で30分間の焼結を行った。その後、形成されたラインパターンの膜厚を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
<実施例2>
分散液A−2 100gと、分散液B−2 650gとを混合し、超音波分散機を用いて十分に混合した。得られた混合液(無機被膜形成用組成物2)は、固形分濃度が16.6.質量%、粘度が2600mPa・sであった。上記の無機被膜形成用組成物2を用い、乾燥処理時の温度を100℃から140℃に変えた以外は実施例1と同様にしてスクリーン印刷法によりラインパターンを形成した。形成されたラインパターンの膜厚を測定した結果を表1に示す。
【0082】
<実施例3>
分散液A−2 100gと分散液B−3 650gとを混合し、超音波分散機を用いて十分に混合した。得られた混合液(無機被膜形成用組成物3)は、固形分濃度が16.6質量%、粘度が160mPa・sであった。上記の無機被膜形成用組成物3をスピン塗布により基板上に塗布し、その後140℃にて15分間の乾燥処理を施し、更に電気炉にて500℃、30分間の焼結を行った。その後、形成された被膜の膜厚を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
<実施例4>
分散液A−3 300gと、分散液B−4 600gとを混合し、超音波分散機を用いて十分に混合した。得られた混合液(無機被膜形成用組成物4)は、固形分濃度が16.1質量%、粘度が1400mPa・sであった。上記の無機被膜形成用組成物4を用い、実施例2と同様にしてスクリーン印刷法によりラインパターンを形成した。形成されたラインパターンの膜厚を測定した結果を表1に示す。
【0084】
<実施例5>
分散液A−3 300gと、分散液B−5 650gと、極性溶剤N−メチルピロリドン 50gと混合し、超音波分散機を用いて十分に混合した。得られた混合液(無機被膜形成用組成物5)は、固形分濃度が15.2質量%、粘度が110mPa・sであった。上記の無機被膜形成用組成物5を用い、実施例3と同様にしてスピン塗布法により被膜の形成を行った。形成された被膜の膜厚を測定した結果を表1に示す。
【0085】
<実施例6>
分散液A−4 300gと、分散液B−5 650gとを混合し、超音波分散機を用いて十分に混合した。得られた混合液(無機被膜形成用組成物6)は、固形分濃度が15.8質量%、粘度が180mPa・sであった。上記の無機被膜形成用組成物6を用い、実施例3と同様にしてスピン塗布法により被膜の形成を行った。形成された被膜の膜厚を測定した結果を表1に示す。
【0086】
<<有機物含有無機被膜形成用組成物の調製>>
<比較例1>
分散液A−5 500gと、溶解液C−2 500gとを混合し、超音波分散機を用いて十分に混合した。得られた混合液(有機物含有被膜形成用組成物1)は、固形分濃度が8.4質量%、粘度が125mPa・sであった。上記の有機物含有無機被膜形成用組成物1を用い、実施例3と同様にしてスピン塗布法により被膜の形成を行った。形成された被膜の膜厚を測定した結果を表1に示す。
【0087】
<比較例2>
分散液A−6 500gと、溶解液C−2 500gとを混合し、超音波分散機を用いて十分に混合した。得られた混合液(有機物含有被膜形成用組成物2)は、固形分濃度が9.6質量%、粘度が110mPa・sであった。上記の有機物含有被膜形成用組成物2を実施例3と同様にしてスピン塗布法により被膜の形成を行った。形成された被膜の膜厚を測定した結果を表1に示す。
【0088】
<比較例3>
分散液A−7 500gと、溶解液C−1 500gとを混合し、超音波分散機を用いて十分に混合した。得られた混合液(有機物含有被膜形成用組成物3)は、固形分濃度が9.6質量%、粘度が190mPa・sであった。上記の有機物含有被膜形成用組成物3を用い、実施例3と同様にしてスピン塗布法により被膜の形成を行った。形成された被膜の膜厚を測定した結果を表1に示す。
【0089】
<比較例4>
分散液A−8 500gと、溶解液C−1 500gとを混合し、超音波分散機を用いて十分に混合した。得られた混合液(有機物含有被膜形成用組成物4)は、固形分濃度が13.8質量%、粘度が370mPa・sであった。上記の有機物含有被膜形成用組成物4を用い、実施例3と同様にしてスピン塗布法により被膜の形成を行った。形成された被膜の膜厚を測定した結果を表1に示す。
【0090】
<評価>
[絶縁膜の硬度]
実施例1から6、比較例1から4で得られた被膜について、以下の条件にて被膜の硬度を測定した。結果を表1に示す。
(鉛筆硬度試験)
試験機:JIS K−5400規格準拠の鉛筆硬度試験機「PS−320 MKS電動式鉛筆硬度試験機(製品名、株式会社丸菱科学機製作所製)」
試験方法:被膜が形成された基板を100mm×100mmの大きさにカットし、上記の鉛筆硬度試験機の測定台に当該基板をセットし、柔らかい鉛筆硬度(6B)の鉛筆から順に、鉛筆を50mmの距離走らせて膜と基板との剥がれ(又は削れ)具合を確認した。
【0091】
【表1】

【0092】
実施例1から6の無機被膜形成用組成物においては、クラックを発生させること無く膜厚が厚い絶縁膜を形成することができた。一方、比較例1から4の有機物含有被膜形成用組成物から形成された絶縁膜には、クラックが多く発生した。また、表1より、実施例1から6の無機被膜形成用組成物においては、非常に硬度の高い絶縁膜を形成できたが、比較例1から4の有機物含有被膜形成用組成物から形成された絶縁膜は、6Bの鉛筆でも容易に削れてしまい、硬度の低いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)無機酸化物微粒子、及び(b)バインダー化合物を含む無機固形分と、(c)溶剤とからなる無機被膜形成用組成物であって、
前記(b)バインダー化合物が、ベーマイト型アルミナゾル、又は擬似ベーマイト型アルミナゾルを含む無機被膜形成用組成物。
【請求項2】
前記(c)溶剤が、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを含む、請求項1に記載の無機被膜形成用組成物。
【請求項3】
少なくとも、(a)無機酸化物微粒子、(b)バインダー化合物、及び(c)溶剤を含み、
前記(b)バインダー化合物が、ベーマイト型アルミナゾル、又は擬似ベーマイト型アルミナゾルを含み、
前記(c)溶剤が、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを含む無機被膜形成用組成物。
【請求項4】
前記(c)溶剤における、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールの含有量が、10質量%以上である、請求項2又は3に記載の無機被膜形成用組成物。
【請求項5】
前記(a)無機酸化物微粒子が、IV族元素の酸化物微粒子である、請求項1から4のいずれかに記載の無機被膜形成用組成物。
【請求項6】
前記IV族元素の酸化物微粒子が、酸化ケイ素粒子、及び/又は酸化チタン粒子である、請求項1から5のいずれかに記載の無機被膜形成用組成物。
【請求項7】
前記(c)溶剤が、極性溶剤を含む、請求項1から6のいずれかに記載の無機被膜形成用組成物。
【請求項8】
前記極性溶剤が、γ−ブチロラクトン、及び/又はN−メチルピロリドンである、請求項7に記載の無機被膜形成用組成物。
【請求項9】
太陽電池の電極間に絶縁膜を形成するために用いられる、請求項1から8のいずれかに記載の無機被膜形成用組成物。

【公開番号】特開2009−194120(P2009−194120A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32688(P2008−32688)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】