説明

無段変速機の制御装置

【課題】無段変速機のドライブプーリの回転を検出するセンサを除去あるいは使用不要としつつ、ニュートラルポジションでの変速比の制御精度を向上させるようにした変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】前進クラッチが解放されるニュートラルポジションにあると判断されるとき(S10)、エンジン回転数NEとタービン回転数NTの偏差を算出し(S14)、算出された偏差に基づいてフィードバックゲインを設定し(S16)、設定されるフィードバックゲインなどからドライブプーリとドリブンプーリの推力を算出し(S18)、算出された推力からドライブプーリとドリブンプーリに供給される油圧を算出する(S20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は無段変速機の制御装置に関し、より具体的には無段変速機のドライブプーリの回転を検出するセンサを除去あるいは使用不要としつつ、ニュートラルポジションでの変速比の制御精度を向上させるようにした装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無段変速機のドライブプーリの回転を決定するセンサを除去しつつ、タービン回転数とドリブンプーリの回転数によって変速制御する装置の従来技術としては、特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術にあっては、走行ポジション(レンジ)が選択されて入力クラッチが係合されたときはドライブプーリの回転数はタービン回転数に一致することから、変速比をフィードバック制御すると共に、入力クラッチが解放されるニュートラルポジションにおいては変速比をフィードフォワード制御している。
【特許文献1】特開2005−172010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
即ち、特許文献1記載の技術にあっては、入力クラッチが解放されるニュートラルポジションにおいて車速に基づいてドライブプーリの目標回転数を算出し、算出された目標回転数とドリブンプーリの回転数とで目標変速比を算出し、次いで算出された目標変速比に基づいて目標ドライププーリ圧フィードフォワード値が算出され、算出値となるように油圧調整バルブ(電磁バルブ)の通電が調整されるように構成される。
【0004】
このように特許文献1記載の技術にあっては、入力クラッチが解放されるニュートラルポジションにおいてはフィードフォワード制御であるため、目標値と実際の値に間のずれが大きくなると、停止時のロー側の戻り遅れによる発進性能不足などが起こる恐れがある。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した不都合を解消し、無段変速機のドライブプーリの回転を検出するセンサを除去あるいは使用不要としつつ、ニュートラルポジションでの変速比の制御精度を向上させるようにした無段変速機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、車両に搭載される内燃機関にトルクコンバータとクラッチを介して接続されると共に、ドライブプーリとドリブンプーリを有するベルト式の無段変速機の制御装置において、前記内燃機関の回転数を検出する機関回転数センサと、前記トルクコンバータのタービン回転数を検出するタービン回転数センサと、前記ドライブプーリとドリブンプーリのそれぞれの油室と油圧供給源との間の油路に介挿され、前記油路の油圧を調整する油圧調整バルブと、スロットル開度が全閉位置にあると共に、前記クラッチが解放されるニュートラルポジションにあると判断されるとき、前記機関回転数に前記タービン回転数が一致するように、前記ドライブプーリとドリブンプーリに供給される油圧を前記油圧調整バルブを介してフィードバック制御するフィードバック制御手段とを備える如く構成した。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る無段変速機の制御装置においては、スロットル開度が全閉位置にあると共に、クラッチが解放されるニュートラルポジションにあると判断されるとき、機関回転数にタービン回転数が一致するように、ドライブプーリとドリブンプーリに供給される油圧を油圧調整バルブを介してフィードバック制御する如く構成したので、変速比の制御精度を向上させることができる。
【0008】
これについて説明すると、発明者は、ニュートラルポジションにあるとき、クラッチは解放されるが、作動油によってタービン回転数は機関回転数およびドライブプーリの回転数にひきずられる傾向にあり、機関回転数にタービン回転数が一致すると、ドライブプーリの回転数もそれらに一致することを知見してこの発明をなした。
【0009】
即ち、ニュートラルポジションでのアイドル回転数は一定となるが、そのアイドル回転数にドライブプーリの回転数が車速によらず一致するようにドライブプーリとドリブンプーリに供給される油圧をフィードバック制御するようにした。
【0010】
このように車速の如何に関わらずドライブプーリ回転数は一定とみなすことで、変速比(ドライブプーリ回転数/ドリブンプーリ回転数)が車速の低下につれてロー側に戻るときの軌跡を同一にすることができ、よって変速比の制御精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に即してこの発明に係る無段変速機の制御装置を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、この発明の実施例に係る無段変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
【0013】
図1において、符号10は内燃機関(以下「エンジン」という)を示す。エンジン10は、車両(駆動輪Wなどで部分的に示す)14に搭載される。
【0014】
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席に配置されるアクセルペダル(図示せず)との機械的な接続が絶たれ、電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構16が接続されて駆動される。
【0015】
スロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルド(図示せず)を通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ(燃料噴射弁)20から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブ(図示せず)が開弁されたとき、当該気筒の燃焼室(図示せず)に流入する。燃焼室において混合気は点火されて燃焼し、ピストン(図示せず)を駆動してクランクシャフト22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
【0016】
エンジン10のクランクシャフト22の回転は、トルクコンバータ24を介して変速機26に入力される。即ち、クランクシャフト22はトルクコンバータ24のポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(ミッション入力軸)MSに接続される。
【0017】
変速機26は無段変速機(Continuous Variable Transmission。以下「CVT」という)からなり、メインシャフトMSに配置されたドライブプーリ26aと、メインシャフトMSに平行なカウンタシャフトCSに配置されたドリブンプーリ26bと、その間に掛け回される金属製のベルト26cからなる。
【0018】
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSに配置された固定プーリ半体26a1と、固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26a2からなる。ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSに固定された固定プーリ半体26b1と、固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26b2からなる。
【0019】
CVT26は、前後進切換装置30に接続される。前後進切換装置30は、前進クラッチ30aと、後進ブレーキ30bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構30cからなる。
【0020】
プラネタリギヤ機構30cにおいて、サンギヤ30c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ30c2は前進クラッチ30aを介してドライブプーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。
【0021】
サンギヤ30c1とリングギヤ30c2の間には、ピニオン30c3が配置される。ピニオン30c3は、キャリア30c4でサンギヤ30c1に連結される。キャリア30c4は、後進ブレーキ30bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
【0022】
カウンタシャフトCSの回転は減速ギヤ34,36を介してセカンダリシャフトSSに伝えられると共に、セカンダリシャフトSSの回転はギヤ40とディファレンシャルDを介して左右の駆動輪(タイヤ。右側のみ示す)Wに伝えられる。駆動輪Wの付近にはディスクブレーキ42が配置される。
【0023】
前進クラッチ30aと後進ブレーキ30bの切換は、車両運転席に設けられた、例えばP,R,N,D,S,Lのポジションを備えるシフトレバー44を運転者が操作することによって行われる。運転者によってシフトレバー44のいずれかのポジションが選択されたとき、その選択動作はCVT26などの油圧機構(後述)のマニュアルバルブに伝えられる。
【0024】
例えばD,S,Lポジションが選択されると、それに応じてマニュアルバルブのスプールが移動し、後進ブレーキ30bのピストン室から作動油(油圧)が排出される一方、前進クラッチ30aのピストン室に油圧が供給されて前進クラッチ30aが係合(締結)される。
【0025】
前進クラッチ30aが係合されると、全ギヤがメインシャフトMSと一体に回転し、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSと同方向(前進方向)に駆動される。
【0026】
他方、Rポジションが選択されると、前進クラッチ30aのピストン室から作動油が排出される一方、後進ブレーキ30bのピストン室に油圧が供給されて後進ブレーキ30bが作動する。それによってキャリア30c4が固定されてリングギヤ30c2はサンギヤ30c1とは逆方向に駆動され、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSとは逆方向(後進方向)に駆動される。
【0027】
また、PあるいはNポジションが選択されると、両方のピストン室から作動油が排出されて前進クラッチ30aと後進ブレーキ30bが共に解放され、前後進切換装置30を介しての動力伝達が断たれ、エンジン10とCVT26のドライブプーリ26aとの間の動力伝達が遮断される。
【0028】
図2は上記したCVT26などの油圧機構を模式的に示す油圧回路図である。
【0029】
図示の如く、油圧機構(符号46で示す)には油圧ポンプ46aが設けられる。油圧ポンプ46aはギヤポンプからなり、エンジン10によって駆動され、リザーバ(油圧供給源)46bに貯留された作動油を汲み上げてPH制御バルブ(PH REG VLV)46cに圧送する。
【0030】
PH制御バルブ46cの出力(PH圧(ライン圧))は、一方では油路46dから第1、第2のレギュレータバルブ(DR REG VLV, DN REG VLV)46e,46fを介してCVT26のドライブプーリ26aの可動プーリ半体26a2のピストン室(DR)26a21とドリブンプーリ26bの可動プーリ半体26b2のピストン室(DN)26b21に接続されると共に、他方では油路46gを介してCRバルブ(CR VLV)46hに接続される。
【0031】
CRバルブ46hはPH圧を減圧してCR圧(制御圧)を生成し、油路46iから第1、第2、第3の(電磁)リニアソレノイドバルブ46j,46k,46l(LS-DR, LS-DN, LS-CPC)に供給する。第1、第2のリニアソレノイドバルブ46j,46kはそのソレノイドの励磁に応じて決定される出力圧を第1、第2のレギュレータバルブ46e,46fに作用させ、よって油路46dからPH圧の作動油を可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室(油室)26a21,26b21に供給し、それに応じてプーリ側圧を発生させる。
【0032】
従って、図1に示す構成においては、可動プーリ半体26a2,26b2を軸方向に移動させるプーリ側圧が発生させられてドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bのプーリ幅が変化し、ベルト26cの巻掛け半径が変化する。このように、プーリの側圧を調整することで、エンジン10の出力を駆動輪Wに伝達する変速比を無段階に変化させることができる。
【0033】
図2の説明に戻ると、CRバルブ46hの出力(CR圧)はCRシフトバルブ(CR SFT VLV)46nにも接続され、そこから前記したマニュアルバルブ(MAN VLV。符号46oで示す)を介して前後進切換装置30の前進クラッチ30aのピストン室(FWD)30a1と後進ブレーキ30bのピストン室(RVS)30b1に接続される。
【0034】
マニュアルバルブ46oは図1を参照して説明した如く、運転者によって操作(選択)されたシフトレバー44の位置に応じてCRシフトバルブ46nの出力を前進クラッチ30aと後進ブレーキ30bのピストン室の30a1,30b1のいずれかに接続する。
【0035】
また、PH制御バルブ46cの出力は、油路46pを介してTCレギュレータバルブ(TC REG VLV)46qに送られ、TCレギュレータバルブ46qの出力はLCコントロールバルブ(LC CTL VLV)46rを介してLCシフトバルブ(LC SFT VLV)46sに接続される。LCシフトバルブ46sの出力は一方ではトルクコンバータ24のロックアップクラッチ24cのピストン室24c1に接続されると共に、他方ではその背面側の室24c2に接続される。
【0036】
CRシフトバルブ46nとLCシフトバルブ46sは第1、第2(電磁)オン・オフソレノイド(SOL-A, SOL-B)46u,46vに接続され、その励磁・非励磁によって前進クラッチ30aへの油路の切り替えとロックアップクラッチ24cの締結(オン)・開放(オフ)が制御される。
【0037】
ロックアップクラッチ24cについていえば、LCシフトバルブ46sを介して作動油がピストン室24c1に供給される一方、背面側の室24c2から排出されると、ロックアップクラッチ24cが係合(締結。オン)され、背面側の室24c2に供給される一方、ピストン室24c1から排出されると、解放(非締結。オフ)される。ロックアップクラッチ24cのスリップ量、即ち、係合と解放の間でスリップさせられるときの係合容量は、ピストン室24c1と背面側の室24c2に供給される作動油の量(油圧)によって決定される。
【0038】
先に述べた第3のリニアソレノイド46lは、油路46wとLCコントロールバルブ46rを介してLCシフトバルブ46sに接続され、さらに油路46xを介してCRシフトバルブ46nに接続される。即ち、前進クラッチ30aと、ロックアップクラッチ24cの係合容量(滑り量)は、第3のリニアソレノイドバルブ46lのソレノイドの励磁・非励磁によって調整(制御)される。
【0039】
図1の説明に戻ると、エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ48が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流の適宜位置には絶対圧センサ50が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
【0040】
DBW機構16のアクチュエータにはスロットル開度センサ52が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットル開度THに比例した信号を出力すると共に、アクセルペダル付近にはアクセル開度センサ54が設けられ、運転者のアクセルペダル操作量に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力する。
【0041】
さらに、エンジン10の冷却水通路(図示せず)の付近には水温センサ56が設けられ、エンジン冷却水温TW、換言すればエンジン10の温度に応じた出力を生じると共に、吸気系には吸気温センサ58が設けられ、エンジン10に吸入される吸気温(外気温)に応じた出力を生じる。
【0042】
上記したクランク角センサ48などの出力は、エンジンコントローラ60に送られる。エンジンコントローラ60はマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいて目標スロットル開度を決定してDBW機構16の動作を制御すると共に、燃料噴射量を決定してインジェクタ20を駆動する。
【0043】
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)62が設けられ、タービン・ランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数、より具体的には前進クラッチ30aの入力軸回転数を示すパルス信号を出力する。
【0044】
CVT26のドリブンプーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)66が設けられ、ドリブンプーリ26bの回転数を示すパルス信号を出力する。
【0045】
尚、この実施例は、CVT26のドライブプーリ26aの付近に配置されてドライブプーリ26aの回転数、換言すれば前進クラッチ30aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力するNDRセンサが除去された構成(あるいは配置されていても制御で使用しない構成)を前提とする。
【0046】
セカンダリシャフトSSのギヤ36の付近にはVELセンサ(回転数センサ)70が設けられ、ギヤ36の回転数を通じてCVT26の出力軸あるいは車速VELを示すパルス信号を出力する。前記したシフトレバー44の付近にはシフトレバーポジションセンサ72が設けられ、運転者によって選択されたR,N,Dなどのポジションに応じたPOS信号を出力する。
【0047】
上記したNTセンサ62などの出力は、図示しないその他のセンサの出力も含め、シフトコントローラ74に送られる。シフトコントローラ74もマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ60と通信自在に構成される。
【0048】
シフトコントローラ74はそれら検出値に基づき、油圧機構46の第1、第2オン・オフソレノイド46u,46v、および第1、第2、第3のリニアソレノイドバルブ46j,46k,46lのうちのいずれかの電磁ソレノイドを励磁・非励磁して前進切換装置30とCVT26とトルクコンバータ24のロックアップクラッチ24aのロックアップの係合(締結、オン)・解放(非締結、オフ)を制御する。
【0049】
図3はシフトコントローラ74のその動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムはシフトコントローラ74によってインギヤ時に所定時間、例えば10msecごとに実行される。
【0050】
以下説明すると、S10において運転者によってニュートラル(N)ポジションが選択されていると共に、前進クラッチ30aが解放されているか否か判断する。
【0051】
S10で肯定されるときはS12に進み、アクセルOFF、即ち、運転者によってアクセルペダルが操作されていないか、換言すればスロットル開度が全閉か否か判断し、肯定されるときはS14に進み、エンジン回転数NEを目標値、タービン回転数NTを制御量として両者の偏差を算出する。尚、エンジン回転数NEなどはエンジンコントローラ60を介して検出する。
【0052】
次いでS16に進み、算出された偏差に基づいてニュートラルポジション用のフィードバックゲインを設定(算出)する。フィードバックゲインはPI制御のP項とI項として設定する。
【0053】
次いでS18に進み、ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bの推力を算出する。
【0054】
ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bの推力はエンジン回転数NEとエンジン負荷(吸気管内絶対圧PBA)から決定される入力トルクに基づいてベルト滑り保証推力として算出する。ドリブンプーリ26bについては、ベルト滑り保証推力に目標変速比(RATIO)から決定される変速比保持推力を加算すると共に、さらにS16で設定されたフィードバックゲインに基づいて(エンジン回転数NEとタービン回転数NTが等しくなるように)算出される推力を加算して算出する。
【0055】
次いでS20に進み、算出された推力を適宜な変換特性に従って変換し、ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bに供給すべき油圧を算出する。
【0056】
図4は、図3の処理を示すブロック図である。
【0057】
前記した如く、この発明は、前進クラッチ30aが解放されるニュートラル位置にあるとき、前進クラッチに残留する作動油によってタービン回転数NTはエンジン回転数NEとドライブプーリ26aの回転数にひきずられる傾向にあり、エンジン回転数NEにタービン回転数NTが一致すると、ドライブプーリの回転数NDRもそれらに一致するという知見を前提とする。
【0058】
即ち、ニュートラルポジションでのアイドル回転数は一定となるが、そのアイドル回転数にドライブプーリの回転数NDRが車速によらず一致するようにドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bに供給される油圧をフィードバック制御するようにした。
【0059】
このように車速の如何に関わらずドライブプーリ回転数は一定とみなすことで、RATIO(変速比。ドライブプーリ回転数NDR/ドリブンプーリ回転数NDN)が車速の低下につれてロー側に戻るときの軌跡を同一にすることができ、よってRATIOの制御精度を向上させることができる。
【0060】
他方、S10で否定されるときはS22に進み、前進クラッチ30aが係合されていることから、NTセンサ62の出力をドライブプーリ26aの回転数NDRとみなすと共に、適宜設定されるドライブプーリ26aの目標NDR(目標回転数)との偏差を算出する。
【0061】
次いでS24に進み、算出された偏差に基づいてDなどの走行(ポジション用)のフィードバックゲインを同様にPI制御のP項とI項として設定する。
【0062】
次いでS26に進み、ドライブプーリ26aの推力をベルト滑り保証推力として算出すると共に、ドリブンプーリ26bの推力をベルト滑り保証推力と変速比保持推力とS24で設定されたフィードバックゲインに基づいて算出される推力の加算値として算出する。
【0063】
他方、S12で否定されるときはS28に進み、ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bの推力比を固定値に設定する。
【0064】
上記の如く、この実施例にあっては、車両14に搭載されるエンジン(内燃機関)10にトルクコンバータ24と前進クラッチ30aを介して接続されると共に、ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bを有するベルト式のCVT(無段変速機)26の制御装置(シフトコントローラ)74において、前記エンジンの回転数NEを検出するクランク角センサ(機関回転数センサ)48と、前記トルクコンバータ24のタービン回転数NTを検出するNTセンサ(タービン回転数センサ)62と、前記ドライブプーリ26とドリブンプーリの26bのそれぞれの油室、即ち、可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室26a21,26b21とリザーバ(油圧供給源)46bとの間の油路46dに介挿され、前記油路46dの油圧を調整する第1、第2の(電磁)リニアソレノイドバルブ(油圧調整バルブ)46j,46kと、スロットル開度が全閉位置にあると共に、前記前進クラッチ30aが解放されるニュートラルポジションにあると判断されるとき、前記エンジン回転数NEに前記タービン回転数NTが一致するように、前記ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bに供給される油圧を第1、第2のリニアソレノイドバルブ(油圧調整バルブ)46j,46kを介してフィードバック制御するフィードバック制御手段(S14からS20)とを備える如く構成したので、RATIO(変速比)の制御精度を向上させることができる。
【0065】
尚、上記においてCVT26のドライブプーリ26aの付近に配置されてドライブプーリ26aの回転数、換言すれば前進クラッチ30aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力するNDRセンサを除去したが、この発明は、NDRセンサが配置されていても制御で使用しない構成であれば、妥当する。
【0066】
また、自動変速機としてCVT26を開示したが、それに限定されるものではなく、この発明は他の自動変速機にも妥当する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の実施例に係る無段変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示す無段変速機とトルクコンバータの油圧機構を示す油圧回路図である。
【図3】図1に示す装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図4】図3に示す動作を説明する制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0068】
10 内燃機関(エンジン)、14 車両、16 DBW機構、24 トルクコンバータ、26 無段変速機(CVT)、30 前後進切換装置、30a 前進クラッチ(クラッチ)、46 油圧機構、46j,46k 油圧調整バルブ(第1、第2のリニアソレノイドバルブ)、46s 切換バルブ(LCシフトバルブ)、56 水温センサ、58 吸気温センサ、60 エンジンコントローラ、74 シフトコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される内燃機関にトルクコンバータとクラッチを介して接続されると共に、ドライブプーリとドリブンプーリを有するベルト式の無段変速機の制御装置において、
a.前記内燃機関の回転数を検出する機関回転数センサと、
b.前記トルクコンバータのタービン回転数を検出するタービン回転数センサと、
c.前記ドライブプーリとドリブンプーリのそれぞれの油室と油圧供給源との間の油路に介挿され、前記油路の油圧を調整する油圧調整バルブと、
d.スロットル開度が全閉位置にあると共に、前記クラッチが解放されるニュートラルポジションにあると判断されるとき、前記機関回転数に前記タービン回転数が一致するように、前記ドライブプーリとドリブンプーリに供給される油圧を前記油圧調整バルブを介してフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
を備えたことを特徴とする無段変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−92208(P2009−92208A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265876(P2007−265876)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】