説明

無段変速機の制御装置

【課題】アクセルペダルが踏み込まれた後に緩やかに全閉位置まで戻される緩減速操作がなされたとき、エンジン回転数を低く抑えて燃料消費率の増大を防止するようにした無段変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】車速Vとアクセル開度APに基づいて無段変速機の目標変速比NCSTを設定するブロック80aと、その目標変化速度dNCMDを同様のパラメータなどで算出するブロック80bと、それら目標変速比NCSTと目標変化速度dNCMDに基づいて目標変速比の最終値NCMDを決定し、その最終値となるように無段変速機の動作を制御するブロック80c、アクセルペダル52が踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたときに緩減速操作がなされたか否か判断するブロック80dと、緩減速操作がなされたとき、目標変速比NCSTの変化が速くなるように緩減速処理を実行するブロック80eを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は無段変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたエンジンの出力を無段階に変速して駆動輪に伝達する無段変速機の制御装置としては、例えば特許文献1記載の技術を挙げることができる。その技術にあってはアクセルペダルが踏み込まれた後に戻されるとき、変速速度を遅くするように無段変速機の動作を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3358541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無段変速機において目標変速比をアクセルペダルの開度(と車速)に基づいて求める場合、アクセルペダルの開度に応じた目標エンジン回転数は、通例、定常状態で正味燃料消費率(Brake Specific Fuel Consumption)で最小になるように設定される。
【0005】
その場合、アクセルペダルが踏み込まれた後に緩やかに全閉位置まで戻される緩減速操作がなされたとき、特許文献1記載の技術のように変速速度が遅くするように制御すると、加速時の高回転の影響によってアクセルペダルを戻したときのエンジン回転数が高くなり、正味燃料消費率が最小になる運転点から離れるため、燃料消費率が増大する。
【0006】
従って、この発明の目的は上記した不都合を解消し、アクセルペダルが踏み込まれた後に緩やかに全閉位置まで戻される緩減速操作がなされたとき、エンジン回転数を低く抑えて燃料消費率の増大を防止するようにした無段変速機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、車両に搭載されたエンジンの出力を無段階に変速して駆動輪に伝達する無段変速機の制御装置において、前記車両の走行速度とアクセルペダルの開度とに基づいて前記無段変速機の目標変速比を設定する目標変速比設定手段と、前記設定された目標変速比の目標変化速度を、前記目標変速比の前回の目標変速比の最終値との偏差と前記走行速度とアクセルペダルの開度とに基づいて算出する目標変速比変化速度算出手段と、前記設定された目標変速比と前記算出された目標変化速度に基づいて前記目標変速比の最終値を決定し、前記決定された目標変速比の最終値となるように前記無段変速機の動作を制御する変速比制御手段と、前記アクセルペダルが踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間前のアクセル開度が所定開度未満の緩減速操作がなされたか否か判断する緩減速操作判断手段と、前記緩減速操作がなされたと判断されるとき、前記目標変速比の変化が速くなるように前記目標変化速度を補正する緩減速処理を実行する緩減速処理手段とを備える如く構成した。
【0008】
請求項2にあっては、車両に搭載されたエンジンの出力を無段階に変速して駆動輪に伝達する無段変速機の制御装置において、前記車両の走行速度とアクセルペダルの開度とに基づいて低速側と高速側の2種の特性のいずれかに従って前記無段変速機の目標変速比を設定する目標変速比設定手段と、少なくとも前記補正された目標変速比に基づいて前記目標変速比の最終値を決定し、前記決定された目標変速比の最終値となるように前記無段変速機の動作を制御する変速比制御手段と、前記アクセルペダルが踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間前のアクセル開度が所定開度未満の緩減速操作がなされたか否か判断する緩減速操舵判断手段と、前記緩減速操作がなされたと判断されるとき、前記目標変速比設定手段に前記2種の特性のうちの低速側の特性に従って前記目標変速比を設定させる緩減速処理を実行する緩減速処理手段とを備える如く構成した。
【0009】
請求項3に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記設定された目標変速比の目標変化速度を、前記目標変速比の前回の目標変速比の最終値との偏差と前記走行速度とアクセルペダルの開度とに基づいて算出する目標変速比変化速度算出手段を備えると共に、前記緩減速処理手段は、前記緩減速操作がなされたと判断されるとき、前記目標変速比の変化が速くなるように前記目標変化速度を補正する緩減速処理を実行する如く構成した。
【0010】
請求項4に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記目標変速比設定手段は前記目標変速比を前記無段変速機の入力軸の回転数で設定すると共に、目標変速比変化速度算出手段は前記目標変速比の目標変化速度を前記無段変速機の入力軸の回転数の変化速度で算出する如く構成した。
【0011】
請求項5に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記目標変速比設定手段は、前記エンジンの正味燃料消費率に対するエンジン回転数の特性に基づいて前記無段変速機の目標変速比を設定する如く構成した。
【0012】
請求項6に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記車両の前方を走行する前走車との車間距離を検出する車間距離検出手段を備えると共に、前記緩減速処理手段は、前記検出された車間距離とその変化率の少なくともいずれかに基づいて前記緩減速処理を実行すべきか否か決定する如く構成した。
【0013】
請求項7に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記緩減速処理手段は、前記検出された車間距離が所定距離以上の場合あるいは前記検出された車間距離の変化率が増加方向にある場合、前記緩減速処理を実行する如く構成した。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る無段変速機の制御装置にあっては、車両の走行速度とアクセルペダルの開度とに基づいて無段変速機の目標変速比を設定し、設定された目標変速比の目標変化速度を、目標変速比の前回の目標変速比の最終値との偏差と走行速度とアクセルペダルの開度とに基づいて算出し、設定された目標変速比と算出された目標変速比変化速度に基づいて目標変速比の最終値を決定し、その値となるように無段変速機の動作を制御すると共に、アクセルペダルが踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間前のアクセル開度が所定開度未満の緩減速操作がなされたか否か判断し、緩減速操作がなされたと判断されるとき、目標変速比の変化が速くなるように目標変化速度を補正する如く構成したので、緩減速操作がなされたときに目標変速比の変化が速くなるように補正することで、エンジン回転数を早めに低下させることができる。
【0015】
よって加速から定速走行へ移行する際にアップシフトが速くなり、エンジン回転数を低く抑えることができ、正味燃料消費率が最小になる運転点に近づけることができて燃料消費率の増大を防止することができる。
【0016】
請求項2に係る無段変速機の制御装置にあっては、車両の走行速度とアクセルペダルの開度とに基づいて低速側と高速側の2種の特性のいずれかに従って無段変速機の目標変速比を設定し、少なくとも補正された目標変速比に基づいて目標変速比の最終値を決定し、決定された値となるように無段変速機の動作を制御すると共に、アクセルペダルが踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間前のアクセル開度が所定開度未満の緩減速操作がなされたか否か判断し、緩減速操作がなされたと判断されるとき、目標変速比設定手段に2種の特性のうちの低速側の特性に従って目標変速比を設定させる緩減速処理を実行する緩減速処理手段とを備える如く構成したので、緩減速操作がなされたときに低速側の特性に従って目標変速比を設定することで、エンジン回転数を早めに低下させることができる。
【0017】
よって加速から定速走行へ移行する際にアップシフトが速くなり、エンジン回転数を低く抑えることができ、正味燃料消費率が最小になる運転点に近づけることができて燃料消費率の増大を防止することができる。
【0018】
請求項3に係る無段変速機の制御装置にあっては、設定された目標変速比の目標変化速度を目標変速比の前回の目標変速比の最終値との偏差と走行速度とアクセルペダルの開度とに基づいて算出し、緩減速操作がなされたと判断されるとき、目標変速比の変化が速くなるように目標変化速度を補正する緩減速処理を実行する如く構成したので、目標変速比の設定に加え、目標変化速度も補正することで、エンジン回転数を一層早めに低下させることができる。
【0019】
請求項4に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記目標変速比を無段変速機の入力軸の回転数で設定すると共に、目標変速比変化速度算出手段は目標変速比の目標変化速度を無段変速機の入力軸の回転数の変化速度で算出する如く構成したので、上記した効果に加え、無段変速機の入力軸の回転数を目標値とすることで、エンジン回転数の調整が容易となり、構成を簡易にすることができる。
【0020】
請求項5に係る無段変速機の制御装置にあっては、エンジンの正味燃料消費率に対するエンジン回転数の特性に基づいて無段変速機の目標変速比を設定する如く構成したので、上記した効果に加え、正味燃料消費率が最小となる運転点に一層近づけることができ、よって燃料消費率の増大を一層良く防止することができる。
【0021】
請求項6に係る無段変速機の制御装置にあっては、車両の前方を走行する前走車との車間距離を検出し、検出された車間距離とその変化率の少なくともいずれかに基づいて緩減速処理を実行すべきか否か決定する如く構成したので、前走車追従運転を行なう場合にあっても、緩減速処理によって例えばエンジンブレーキが効き難くなる場合なども、緩減速処理の実行の適否を適正に決定することができ、前走車への追従性を損なうことがない。
【0022】
請求項7に係る無段変速機の制御装置にあっては、検出された車間距離が所定距離以上の場合あるいはその変化率が増加方向にある場合、緩減速処理を実行する如く構成したので、緩減速処理によって例えばエンジンブレーキが効き難くなる場合なども緩減速処理の実行の適否を一層適正に決定することができ、同様に前走車への追従性を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施例に係る無段変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示す無段変速機の制御装置の動作(処理)を機能的に示すブロック図である。
【図3】図2のアクセル戻し速度判断ブロックなどの処理を部分的に示すフロー・チャートである。
【図4】図3フロー・チャートの緩減速操作の有無判断を示すタイム・チャートである。
【図5】図4タイム・チャートの所定開度の特性を示す説明図である。
【図6】図3フロー・チャートで使用される変速比の特性を示す説明図である。
【図7】図2ブロック図の処理の効果を示す説明図である。
【図8】この発明の第2実施例に係る無段変速機の制御装置を全体的に示す、図1と同様の概略図である。
【図9】図9に示す無段変速機の制御装置の動作(処理)を部分的に示すフロー・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に即してこの発明に係る無段変速機の制御装置を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、この発明の第1実施例に係る無段変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
【0026】
図1において、符号10はエンジン(内燃機関)を示す。エンジン10は駆動輪12などを備えた車両14に搭載される。
【0027】
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席に配置されるアクセルペダル(図示せず)との機械的な接続が絶たれ、電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構16が接続されてDBW機構16で駆動される。
【0028】
スロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルド(図示せず)を通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ(燃料噴射弁)20から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブ(図示せず)が開弁されたとき、当該気筒の燃焼室(図示せず)に流入する。燃焼室において混合気は点火されて燃焼し、ピストン(図示せず)を駆動してクランクシャフト22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
【0029】
エンジン10のクランクシャフト22の回転は、トルクコンバータ24を介して無段変速機(Continuous Variable Transmission。以下「CVT」という)26に入力される。即ち、クランクシャフト22はトルクコンバータ24のドライブプレートを介してポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(入力軸)MSに接続される。
【0030】
CVT26はメインシャフトMSに配置されたドライブプーリ26aと、メインシャフトMSに平行なカウンタシャフト(出力軸)CSに配置されたドリブンプーリ26bと、その間に掛け回される金属製のベルト26cからなる。
【0031】
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSに相対回転自在で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26a1と、メインシャフトMSに相対回転不能で固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能で油圧シリンダ室(図示せず)を備えた可動プーリ半体26a2からなる。
【0032】
ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26b1と、カウンタシャフトCSに相対回転不能で固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能で油圧シリンダ室(図示せず)を備えた可動プーリ半体26b2からなる。
【0033】
このように、CVT26は、可動プーリ半体26a2の油圧シリンダ室に作動油を供給されるとき軸方向に移動自在なドライブプーリ26aと、駆動輪12に接続されると共に、可動プーリ半体26b2の油圧シリンダ室に作動油を供給されるとき軸方向に移動自在なドリブンプーリ26bと、ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bの間に掛け回されるベルト26cとを備える。
【0034】
ベルト26cはV面を備えた多数のエレメントとそれを支持する2束のリングとからなり、エレメントのV面が両側方のドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bのプーリ面と接触して押圧されることでエンジン10の駆動力(トルク)をドライブプーリ26aからドリブンプーリ26bに伝達する。
【0035】
CVT26は、前後進切換装置30に接続される。前後進切換装置30は、前進クラッチ30aと、後進ブレーキクラッチ30bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構30cからなる。CVT26はエンジン10に前進クラッチ30aを介して接続される。
【0036】
プラネタリギヤ機構30cにおいて、サンギヤ30c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ30c2は前進クラッチ30aを介してドライブプーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。
【0037】
サンギヤ30c1とリングギヤ30c2の間には、ピニオン30c3が配置される。ピニオン30c3は、キャリア30c4でサンギヤ30c1に連結される。キャリア30c4は、後進ブレーキクラッチ30bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
【0038】
カウンタシャフトCSの回転は減速ギヤ32,34を介してセカンダリシャフト(中間軸)SSに伝えられると共に、セカンダリシャフトSSの回転はギヤ36とディファレンシャルDを介して左右の駆動輪(片側のみ示す)12に伝えられる。
【0039】
前進クラッチ30aと後進ブレーキクラッチ30bの切換は、車両運転席に設けられた、例えばP,R,N,D,S,Lのポジションを備えるシフトレバー40を運転者が操作することによって行われる。運転者によってシフトレバー40のいずれかのポジションが選択されたとき、その選択動作はCVT26などの油圧供給機構42のマニュアルバルブに伝えられる。
【0040】
例えばD,S,Lポジションが選択されると、それに応じてマニュアルバルブのスプールが移動し、後進ブレーキクラッチ30bのピストン室から作動油(油圧)が排出される一方、前進クラッチ30aのピストン室に油圧が供給されて前進クラッチ30aが締結される。
【0041】
前進クラッチ30aが締結されると、全ギヤがメインシャフトMSと一体に回転し、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSと同方向(前進方向)に駆動される。
【0042】
他方、Rポジションが選択されると、前進クラッチ30aのピストン室から作動油が排出される一方、後進ブレーキクラッチ30bのピストン室に油圧が供給されて後進ブレーキクラッチ30bが作動する。それによってキャリア30c4が固定されてリングギヤ30c2はサンギヤ30c1とは逆方向に駆動され、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSとは逆方向(後進方向)に駆動される。
【0043】
また、PあるいはNポジションが選択されると、両方のピストン室から作動油が排出されて前進クラッチ30aと後進ブレーキクラッチ30bが共に開放され、前後進切換装置30を介しての動力伝達が断たれ、エンジン10とCVT26のドライブプーリ26aとの間の動力伝達が遮断される。
【0044】
エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ44が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流の適宜位置には絶対圧センサ46が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
【0045】
DBW機構16のアクチュエータにはスロットル開度センサ50が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットルバルブの開度THに比例した信号を出力すると共に、アクセルペダル52の付近にはアクセル開度センサ54が設けられ、運転者のアクセルペダル操作量に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力する。
【0046】
上記したクランク角センサ44などの出力は、エンジンコントローラ60に送られる。エンジンコントローラ60はマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいて目標スロットル開度を決定してDBW機構16の動作を制御すると共に、燃料噴射量を決定してインジェクタ20を駆動する。
【0047】
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)62が設けられ、タービン・ランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数、より具体的には前進クラッチ30aの入力軸回転数を示すパルス信号を出力する。
【0048】
CVT26のドライブプーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ(回転数センサ)64が設けられてドライブプーリ26aの回転数NDR、換言すればCVT26の入力軸の回転数に応じたパルス信号を出力すると共に、ドリブンプーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)66が設けられ、ドリブンプーリ26bの回転数NDN、換言すればCVT26の出力軸の回転数に応じたパルス信号を出力する。
【0049】
セカンダリシャフトSSのギヤ36の付近には車速センサ(回転数センサ)70が設けられ、ギヤ36の回転数を通じてCVT26の出力軸の回転数あるいは車速(車両14の走行速度)Vを示すパルス信号を出力する。前記したシフトレバー40の付近にはシフトレバーポジションセンサ72が設けられ、運転者によって選択されたR,N,Dなどのポジションに応じたPOS信号を出力する。
【0050】
また、油圧供給機構42の適宜位置には油温センサ74が配置され、油温(作動油ATFの温度)TATFに応じた信号を出力する。
【0051】
上記したNTセンサ62などの出力は、図示しないその他のセンサの出力も含め、シフトコントローラ80に送られる。シフトコントローラ80もマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ60と通信自在に構成される。
【0052】
シフトコントローラ80はそれら検出値に基づき、油圧供給機構42において電磁ソレノイドを励磁・非励磁して前後進切換装置30とトルクコンバータ24とCVT26の動作を制御する。
【0053】
即ち、シフトコントローラ80はトルクコンバータ24と前後進切換機構30とCVT26への作動油の供給を油圧供給機構42においてマニュアルバルブの位置に応じ、複数の電磁制御弁を励磁・消磁して行う。この実施例においてシフトコントローラ80はCVT26の制御装置として機能する。
【0054】
図2はそのシフトコントローラ80の動作(処理)を機能的に示すブロック図、図3は図2のアクセル戻し速度判断ブロックなどの処理を部分的に示すフロー・チャート、図4は図3フロー・チャートの緩減速操作の有無判断を示すタイム・チャート、図5は図4タイム・チャートの所定開度の特性を示す説明図、図6は図3フロー・チャートで使用される変速比の特性を示す説明図、図7は図2ブロック図の処理の効果を示す説明図である。尚、図2のブロック図の処理は所定時間、例えば10msecごとに実行される。
【0055】
図2に示す如く、シフトコントローラ80は、車速Vとアクセル開度(アクセルペダル52の開度)APとに基づいてCVT26の目標変速比を設定する目標変速比設定ブロック(目標変速比設定手段)80aと、設定された目標変速比の目標変化速度を目標変速比の前回の目標変速比の最終値との偏差と車速Vとアクセル開度APとに基づいて算出する目標変速比変化速度算出ブロック(目標変速比変化速度算出手段)80bと、設定された目標変速比と算出された目標変化速度に基づいて目標変速比の最終値を決定し、決定された目標変速比の最終値となるようにCVT26の動作を制御する変速比制御ブロック(変速比制御手段)80cと、アクセルペダル52が踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間前のアクセル開度が所定開度未満の緩減速操作がなされたか否か判断するアクセル戻し速度判断ブロック(緩減速操作判断手段)80dと、緩減速操作がなされたと判断されるとき、前記目標変速比の変化が速くなるように前記目標変化速度を補正する緩減速処理を実行する目標変速比変化速度補正ブロック(緩減速処理手段)80eを備える。
【0056】
アクセル戻し速度判断ブロック(緩減速操作判断手段)80dはまた、緩減速操作がなされたと判断されるとき、目標変速比設定ブロック80aに低速側と高速側の2種の特性のうちの低速側の特性に従って目標変速比を設定させる緩減速処理を実行する緩減速処理手段としても機能する。
【0057】
以下個別に説明する。
【0058】
目標変速比設定ブロック80aは、車速Vとアクセル開度APとに基づいてCVTの目標変速比NCSTを所定時間、例えば10msecごとに設定する。目標変速比設定ブロック80aは具体的には(後述する)図6(a)に示す低速側と図6(b)に示す高速側の2種の特性のいずれかに従って目標変速比NCSTを設定するが、それについては後述する。
【0059】
また目標変速比設定ブロック80aはCVT26の入力軸の回転数(ドライブプーリ26aの回転数)NDR[rpm]で目標変速比NCSTを設定すると共に、エンジン10の正味燃料消費率BSFCに対するエンジン回転数NEの特性に基づいて目標変速比NCSTを設定する。
【0060】
図7(a)は正味燃料消費率BSFCに対するエンジン回転数NEの特性を示す説明図であるが、目標変速比設定ブロック80aは図示のような特性に基づいてCVT26の目標変速比NCSTを設定する。
【0061】
目標変速比変化速度算出ブロック80bは,設定された目標変速比の目標変化速度を目標変速比の前回の目標変速比の最終値NCMDとの偏差と車速Vとアクセル開度APとに基づいて算出、より具体的には目標変速比NCSTと同様、目標変速比の目標変化速度dNCMDをCVT26の入力軸の回転数NDRで算出する。
【0062】
変速比制御ブロック80cの処理を説明する前に、アクセル戻し速度判断ブロック80dと目標変速比変化速度補正ブロック80eの処理を説明する。
【0063】
図3はそれらの処理を示すフロー・チャートである。
【0064】
以下説明すると、S(ステップ)10においてアクセルペダル52が踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間前のアクセル開度APが所定開度未満の緩減速操作がなされたか否か判断する
【0065】
図4はS10の処理を説明するタイム・チャートである。
【0066】
図4において符号Trefが所定時間、符号APrefが所定開度を示す。所定時間Trefは例えば200msecに設定される。所定開度APrefは固定値ではなく、図5に示す如く、車速Vとアクセル開度APから検索自在に設定される。
【0067】
S10の処理においては検出された車速Vとアクセル開度APから所定開度APrefを検索して判断する。図4を参照して詳細に説明すると、同図(a)の場合、全閉時から所定時間Tref前に検出された(実)アクセル開度APが所定開度APref以上なので、緩減速操作ではなく、急減速操作がなされたと判断する。
【0068】
他方、同図(b)の場合、全閉時から所定時間Tref前に検出された(実)アクセル開度APが所定開度APref未満なので、即ち、アクセルペダル52が踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間Tref前のアクセル開度APが所定開度APref未満なので、緩減速操作がなされたと判断する。
【0069】
また同図(c)の場合も全閉時から所定時間Tref前に検出された(実)アクセル開度APが所定開度APref未満なので、同様に緩減速操作がなされたと判断する。
【0070】
S10の処理において緩減速操作がなされたと判断されるときはフラグFdAPのビットを1にセットする一方、然らざる場合は急減速操作がなされたと判断される場合も含め、フラグFdAPのビットを0にリセットする。
【0071】
次いでS12に進み、フラグFdAPのビットを判断し、1と判断されるときはS14に進み、補正係数としてK1を選択すると共に、目標変速比特性としてNCSTMAP1を選択する。
【0072】
他方、S12でフラグFdAPのビットが0と判断されるときはS16に進み、補正係数としてK2を選択すると共に、目標変速比特性としてNCSTMAP2を選択する。
【0073】
補正係数K1,K2は乗算項として設定されると共に、補正係数K1は例えば2.0、補正係数K2はそれより小さい値、例えばK1の半分の1.0に設定される。逆にいえば、補正係数K1はK2の2倍の値に設定される。
【0074】
図6は目標変速比NCSTMAPの特性を示す説明図であり、同図(a)がNCSTMAP1、同図(b)がNCSTMAP2の特性を示す。特性NCSTMAP1,2は車速Vとアクセル開度APから検索自在にCVT26の入力回転数NDRで規定される。アクセル開度APは矢印で示すように上側が全開のときの値を示し、矢印で示す如く下側に向かうにつれて減少する。
【0075】
図6(a)(b)から明らかな如く、特性NCSTMAP1はCVT26の回転数NDRにおいて低速側、特性NCSTMAP2は高速側に設定される。
【0076】
図2の説明に戻ると、アクセル戻し速度判断ブロック80dはフラグFdAPを介して目標変速比設定ブロック80aに接続され、選択された特性NCSTMAP1(あるいは特性NCSTMAP2)は目標変速比設定ブロック80aに送られて、目標変速比設定ブロック80aに(目標変速比設定ブロック80aにおいて)低速側と高速側の2種の特性NCSTMAP1,2のうちの選択された特性に従って目標変速比NCSTを設定させるように構成される。
【0077】
変速比制御ブロック80cは、設定された目標変速比NCSTと算出された目標変化速度dNCMDと目標変化速度の補正値KdNCMDとに基づいて目標変速比の最終値NCMDを決定する。
【0078】
より具体的には変速比制御ブロック80cは乗算器80c1と加算器(積分器)80c2を備え、目標変速比の目標変化速度dNCMDと補正係数K1(あるいはK2)を乗算器80c1で乗算して得た積(補正目標変化速度)を加算器80c2で加算(積分)すると共に、目標変速比変化速度算出ブロック80bに戻し、目標変速比NCSTが補正目標変化速度で変化するように目標変速比の最終値NCMDを決定し、決定された目標変速比の最終値NCMDとなるようにCVT26の動作を制御する。
【0079】
ここで、目標変速比変化速度補正ブロック(緩減速処理手段)80eの処理を説明すると、目標変速比変化速度補正ブロック80eは、緩減速操作がなされたと判断されるとき、補正係数として(K2に比して倍の値からなる)K1を選択する(図3のS12,S14)。
【0080】
補正係数K1は変速比制御ブロック80cにおいて目標変速比の目標変化速度dNCMDに乗算器80c1で乗算されることから、目標変速比変化速度補正ブロック80eは結果として目標変速比NCSTの変化が速くなるように前記目標変化速度を補正する緩減速処理を実行する緩減速処理手段として機能する。
【0081】
また、アクセル戻し速度判断ブロック80dは、緩減速操作がなされたと判断されるとき、目標変速比特性として(CVT26の回転数NDRにおいて)特性NCSTMAP2に比して低速側の特性NCSTMAP1を選択する。
【0082】
変速比制御ブロック80cは、設定された目標変速比NCSTが補正目標変化速度で変化するように目標変速比の最終値NCMDを決定し、決定された目標変速比の最終値NCMDとなるようにCVT26の動作を制御することから、アクセル戻し速度判断ブロック80dは結果として目標変速比設定ブロック80aに低速側と高速側の2種の特性のうちの低速側の特性NCSTMAP1に従って目標変速比NCSTを設定させる緩減速処理を実行する緩減速処理手段としても機能する。
【0083】
図7(a)は正味燃料消費率BSFCに対するエンジン回転数NEの特性を示す説明図、同図(b)はこの実施例の処理を行わない場合、同図(c)はこの実施例の図2に示す処理を行った場合のエンジン回転数NEとアクセル開度APと吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAと車速Vの挙動を示すタイム・チャートである。
【0084】
第1実施例にあっては図示の如く、加速からクルーズに移行する際の緩慢なアクセル戻し(緩減速操作)がなされたとき、目標入力回転数を低減特性に切り替え、目標変速比NCSTへの最終値NCMDの応答性を高める(目標変速比の変化が速くなる)ように補正することで、エンジン回転数を早めに低下させている。
【0085】
即ち、緩減速操作がなされた場合、運転者に与える減速感を不要と判断してアップシフト応答を高く設定する。これにより、正味燃料消費率が最小になる運転点に近づけることができて燃料消費率の増大を防止することができる。他方、然らざる場合、例えば急減速操作がなされた場合は係数を小さく設定してアップシフト応答性を低下させているので、運転者に良好な減速感を与えることができる。
【実施例2】
【0086】
図8はこの発明の第2実施例に係る無段変速機の制御装置を全体的に示す、図1と同様の概略図である。
【0087】
第1実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第2実施例にあっては、第1実施例の構成に加え、車両14の運転席床面に配置されたブレーキペダル(図示せず)は、マスタバック、マスタシリンダおよびブレーキ油圧機構56を介して左右の駆動輪12(と従動輪)のそれぞれに装着されたブレーキ(図示せず)に接続され、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、その踏み込み力はマスタバックとマスタシリンダで増力されてブレーキ油圧機構56に伝えられ、ブレーキを動作させて車両14を減速させる。
【0088】
ブレーキ油圧機構56は、リザーバに接続される油路に介挿された電磁ソレノイドバルブ群、油圧ポンプ、および油圧ポンプを駆動する電動モータ(全て図示せず)などを備える。電磁ソレノイドバルブ群は駆動回路(図示せず)を介してシフトコントローラ78に接続され、よってブレーキは運転者によるブレーキペダル操作とは別に、シフトコントローラ90によって独立して作動させられる。
【0089】
また車両14の前部にはレーダ(レーザスキャンレーダ)58が設けられる。レーダ58は車両14の進行方向に向けてレーザ光(電磁波(搬送波))を発射し、進行方向に存在する物体からのレーザ光の反射波を受信することにより、前走車などの物体を検知する。
【0090】
レーダ58の出力はマイクロコンピュータからなるレーダ出力処理ECU(電子制御ユニット)58aに送られる。レーダ出力処理ECU58aでは、レーザ光を発射してから反射光を受信するまでの時間が測定されて物体までの相対距離が算出され、さらに相対距離を微分することで物体までの相対速度が求められる。また、反射波の入射方向から物体の方位を検知し、物体の二次元情報を得る。レーダ出力処理ECU58aの出力はシフトコントローラ80に送られる。
【0091】
シフトコントローラ80は、運転者から図示しないスイッチを介して前走車追従制御の実行指示がなされたとき、レーダ出力処理ECU58aの出力に基づき、DBW機構16とブレーキ油圧機構56を動作させて車速Vを増減させ、車両10と前走車との車間距離が指定された距離となるように前走車追従制御を実行する。
【0092】
第2実施例にあっては、緩減速処理手段は、検出された車間距離とその変化率の少なくともいずれかに基づいて緩減速処理を実行すべきか否か決定するように構成した。これは、緩減速処理がエンジンブレーキの効きを弱めて運転者に与える減速感が減少するように作用することから、前走車追従運転を実行するときは走行状況を限定して緩減速処理を実行するようにした。
【0093】
即ち、目標変速比変化速度補正ブロック80eおよび/またはアクセル戻し速度判断ブロック80dは、アクセルペダル52が踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間Tref前のアクセル開度APが所定開度APref未満の緩減速操作がなされたとき、検出された車間距離とその変化率の少なくともいずれか、具体的にはその両方に基づいて補正係数としてK1を選択あるいは目標変速比特性として低速側の特性NCSTMAP1を選択する緩減速処理を実行する。
【0094】
車間距離に基づいて緩減速処理を実行する場合を説明すると、目標変速比変化速度補正ブロック80eおよび/またはアクセル戻し速度判断ブロック80dは、車間距離が所定距離、例えば15m以上のとき、緩減速処理を実行する。
【0095】
車間距離の変化率に基づいて緩減速処理を実行する場合を説明すると、図9はその処理を示すフロー・チャートである。図示のフロー・チャートはシフトコントローラ80において所定時間、例えば100msecごとに実行される。
【0096】
以下説明すると、S100において車間距離の前回値からの変化率を算出する。次いでS102に進み、第1実施例と同様、緩減速操作がなされたか否か判断する。
【0097】
即ち、アクセルペダル52が踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間前のアクセル開度APが所定開度未満の緩減速操作がなされたか否か判断し、緩減速操作がなされたと判断されるときはフラグFdAPのビットを1にセットする一方、然らざる場合は急減速操作がなされたと判断される場合も含め、フラグFdAPのビットを0にリセットする。
【0098】
次いでS104に進み、フラグFdAPのビットを判断し、1と判断されるときはS106に進み、S100で算出された変化率から車間距離が増加方向に変化しているか否か判断する。S106で肯定されるときはS108に進み、補正係数としてK1、目標変速比特性として低速側の特性NCSTMAP1を選択する。
【0099】
一方、S106で否定されるときはS110に進み、補正係数としてK2、目標変速比特性として高速側の特性NCSTMAP2を選択する。S104でフラグFdAPのビットが0と判断されるときも同様である。
【0100】
尚、車間距離と車間距離の変化率に加え、FC(フューエルカット)からの復帰車速や車両14に搭載されるオルタネータ(発電機)の回生トルクなどを考慮して緩減速処理を実行すべきか否かを判断しても良い。
【0101】
第2実施例にあっても、上記のように構成することで、加速からクルーズに移行する際の緩慢なアクセル戻し(緩減速操作)がなされたとき、エンジン回転数を低く抑えて燃料消費率の増大を防止することができる。尚、残余の構成および効果は第1実施例と同様である。
【0102】
上記した如く、第1、第2実施例にあっては、車両14に搭載されたエンジン10の出力を無段階に変速して駆動輪12に伝達する無段変速機(CVT)26の制御装置(シフトコントローラ80)において、前記車両の走行速度(車速)とアクセルペダル52の開度APとに基づいて前記無段変速機の目標変速比NCSTを設定する目標変速比設定手段(ブロック)80aと、前記設定された目標変速比の目標変化速度dNCMDを、前記目標変速比NCSTの前回の目標変速比の最終値NCMDとの偏差と前記走行速度(車速)Vとアクセルペダル52の開度APとに基づいて算出する目標変速比変化速度算出手段(ブロック)80bと、前記設定された目標変速比と前記算出された目標変化速度に基づいて前記目標変速比の最終値NCMDを決定し、前記決定された目標変速比の最終値となるように前記無段変速機の動作を制御する変速比制御手段(ブロック)80cと、前記アクセルペダル52が踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間Tref前のアクセル開度APが所定開度APref未満の緩減速操作がなされたか否か判断する緩減速操作判断手段(アクセル戻し速度判断ブロック)80d(S10)と、前記緩減速操作がなされたと判断されるとき、前記目標変速比NCSTの変化が速くなるように前記目標変化速度dNCMDを補正する緩減速処理を実行する緩減速処理手段(目標変速比変化速度補正ブロック)80e(S12,S14)とを備える如く構成したので、緩減速操作がなされたときに目標変速比NCSTの変化が速くなるように補正することで、エンジン回転数NEを早めに低下させることができる。
【0103】
よって加速から定速走行へ移行する際にアップシフトが速くなり、エンジン回転数を低く抑えることができ、正味燃料消費率BSFCが最小になる運転点に近づけることができて燃料消費率の増大を防止することができる。
【0104】
また、車両14に搭載されたエンジン10の出力を無段階に変速して駆動輪12に伝達する無段変速機(CVT)26の制御装置(シフトコントローラ80)において、前記車両の走行速度(車速)Vとアクセルペダル52の開度APとに基づいて低速側と高速側の2種の特性NCSTMAP1,2のいずれかに従って前記無段変速機の目標変速比NCSTを設定する目標変速比設定手段(ブロック)80aと、少なくとも前記補正された目標変速比NCSTに基づいて前記目標変速比の最終値NCMDを決定し、前記決定された目標変速比の最終値となるように前記無段変速機の動作を制御する変速比制御手段(ブロック)80cと、前記アクセルペダル52が踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間Tref前のアクセル開度APが所定開度APref未満の緩減速操作がなされたか否か判断する緩減速操作判断手段(アクセル戻し速度判断ブロック)80d(S10)と、前記緩減速操作がなされたと判断されるとき、前記目標変速比設定手段(ブロック)80aに前記2種の特性のうちの低速側の特性NCSTMAP1に従って前記目標変速比NCSTを設定させる緩減速処理を実行する緩減速処理手段(目標変速比変化速度補正ブロック)80e(S12,S14)とを備える如く構成したので、緩減速操作がなされたときに低速側の特性NCSTMAP1に従って目標変速比NCSTを設定することで、エンジン回転数NEを早めに低下させることができる。
【0105】
よってアップシフトするときなどにエンジン回転数NEを低く抑えることができ、正味燃料消費率BSFCが最小になる運転点に近づけることができて燃料消費率の増大を防止することができる。
【0106】
また、前記設定された目標変速比NCSTの目標変化速度dNCMDを、前記目標変速比NCSTの前回の目標変速比の最終値NCMDとの偏差と前記走行速度(車速V)とアクセルペダル52の開度とに基づいて算出する目標変速比変化速度算出手段(ブロック)80bを備えると共に、前記緩減速処理手段は、前記緩減速操作がなされたと判断されるとき、前記目標変速比の変化が速くなるように(補正係数K1を選択することで)前記目標変化速度dNCMDを補正する緩減速処理を実行する如く構成したので、目標変速比NCSTの設定に加え、目標変化速度dNCMDも補正することで、エンジン回転数NEを一層早めに低下させることができる。
【0107】
また、前記目標変速比設定手段80aは前記目標変速比を前記無段変速機の入力軸の回転数(NDR)で設定すると共に、目標変速比変化速度算出手段80bは前記目標変速比の目標変化速度dNCMDを前記無段変速機の入力軸の回転数NDRの変化速度で算出する如く構成したので、上記した効果に加え、CVT26の入力軸の回転数NDRを目標値とすることで、エンジン回転数NEの調整が容易となり、構成を簡易にすることができる。
【0108】
また、前記目標変速比設定手段80aは、前記エンジン10の正味燃料消費率に対するエンジン回転数NEの特性に基づいて前記無段変速機の目標変速比NCSTを設定する如く構成したので、正味燃料消費率が最小になる運転点に一層近いエンジン負荷で走行することができ、よって燃料消費率の増大を一層良く防止することができる。
【0109】
また、第2実施例に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記車両14の前方を走行する前走車との車間距離を検出する車間距離検出手段(レーダ出力処理ECU58a)を備えると共に、前記緩減速処理手段は、前記検出された車間距離とその変化率の少なくともいずれか、より具体的にはその両方に基づいて前記緩減速処理を実行すべきか否か決定する如く構成したので、前走車追従運転を行なう場合にあっても、緩減速処理によって例えばエンジンブレーキが効き難くなる場合なども、緩減速処理の実行の適否を適正に決定することができ、前走車への追従性を損なうことがない。
【0110】
また、前記緩減速処理手段は、前記検出された車間距離が所定距離以上の場合あるいは前記検出された車間距離の変化率が増加方向にある場合(S10からS14)、前記緩減速処理を実行する如く構成したので、緩減速処理によって例えばエンジンブレーキが効き難くなる場合なども緩減速処理の実行の適否を一層適正に決定することができ、同様に前走車への追従性を損なうことがない。
【0111】
尚、上記の説明から明らかな如く、図2の構成において緩減速処理手段として機能する目標変速比変化速度補正ブロック80eと、アクセル戻し速度判断ブロック80dの機能のうちの、目標変速比設定手段(ブロック)80aに低速側の特性NCSTMAP1に従って目標変速比NCSTを設定させる緩減速処理を実行する緩減速処理手段として機能する部分を共に残しても良く、あるいは一方を除去しても良い。
【0112】
尚、上記においてCVT(無段変速機)としてベルト式を開示したが、それに限定されるものではなく、チェーン式やトロイダル式であっても良い。
【符号の説明】
【0113】
10 エンジン(内燃機関)、12 駆動輪、14 車両、16 DBW機構、24 トルクコンバータ、26 無段変速機(CVT)、26a ドライブプーリ、26a2 可動プーリ半体、26b ドリブンプーリ、26b2 可動プーリ半体、30 前後進切換装置、42 油圧供給機構、54 車速センサ、60 エンジンコントローラ、64 NDRセンサ、70 車速センサ、80 シフトコントローラ、80a 目標変速比設定ブロック(手段)、80b 目標変速比変化速度算出ブロック(手段)、80c 変速比制御ブロック(手段)、80c 目標変速比変化率算出ブロック(手段)、80d 緩減速操作判断ブロック(アクセル戻し速度判断ブロック)、80e 緩減速処理手段(目標変速比変化速度補正ブロック(手段)、MS メインシャフト、CS カウンタシャフト、SS セカンダリシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンの出力を無段階に変速して駆動輪に伝達する無段変速機の制御装置において、前記車両の走行速度とアクセルペダルの開度とに基づいて前記無段変速機の目標変速比を設定する目標変速比設定手段と、前記設定された目標変速比の目標変化速度を、前記目標変速比の前回の目標変速比の最終値との偏差と前記走行速度とアクセルペダルの開度とに基づいて算出する目標変速比変化速度算出手段と、前記設定された目標変速比と前記算出された目標変化速度に基づいて前記目標変速比の最終値を決定し、前記決定された目標変速比の最終値となるように前記無段変速機の動作を制御する変速比制御手段と、前記アクセルペダルが踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間前のアクセル開度が所定開度未満の緩減速操作がなされたか否か判断する緩減速操作判断手段と、前記緩減速操作がなされたと判断されるとき、前記目標変速比の変化が速くなるように前記目標変化速度を補正する緩減速処理を実行する緩減速処理手段とを備えたことを特徴とする無段変速機の制御装置。
【請求項2】
車両に搭載されたエンジンの出力を無段階に変速して駆動輪に伝達する無段変速機の制御装置において、前記車両の走行速度とアクセルペダルの開度とに基づいて低速側と高速側の2種の特性のいずれかに従って前記無段変速機の目標変速比を設定する目標変速比設定手段と、少なくとも前記補正された目標変速比に基づいて前記目標変速比の最終値を決定し、前記決定された目標変速比の最終値となるように前記無段変速機の動作を制御する変速比制御手段と、前記アクセルペダルが踏み込まれた後に全閉位置まで戻されたとき、所定時間前のアクセル開度が所定開度未満の緩減速操作がなされたか否か判断する緩減速操舵判断手段と、前記緩減速操作がなされたと判断されるとき、前記目標変速比設定手段に前記2種の特性のうちの低速側の特性に従って前記目標変速比を設定させる緩減速処理を実行する緩減速処理手段とを備えたことを特徴とする無段変速機の制御装置。
【請求項3】
前記設定された目標変速比の目標変化速度を、前記目標変速比の前回の目標変速比の最終値との偏差と前記走行速度とアクセルペダルの開度とに基づいて算出する目標変速比変化速度算出手段を備えると共に、前記緩減速処理手段は、前記緩減速操作がなされたと判断されるとき、前記目標変速比の変化が速くなるように前記目標変化速度を補正する緩減速処理を実行することを特徴とする請求項2記載の無段変速機の制御装置。
【請求項4】
前記目標変速比設定手段は前記目標変速比を前記無段変速機の入力軸の回転数で設定すると共に、目標変速比変化速度算出手段は前記目標変速比の目標変化速度を前記無段変速機の入力軸の回転数の変化速度で算出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の無段変速機の制御装置。
【請求項5】
前記目標変速比設定手段は、前記エンジンの正味燃料消費率に対するエンジン回転数の特性に基づいて前記無段変速機の目標変速比を設定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の無段変速機の制御装置。
【請求項6】
前記車両の前方を走行する前走車との車間距離を検出する車間距離検出手段を備えると共に、前記緩減速処理手段は、前記検出された車間距離とその変化率の少なくともいずれかに基づいて前記緩減速処理を実行すべきか否か決定することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の無段変速機の制御装置。
【請求項7】
前記緩減速処理手段は、前記検出された車間距離が所定距離以上の場合あるいは前記検出された車間距離の変化率が増加方向にある場合、前記緩減速処理を実行することを特徴とする請求項6記載の無段変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−225489(P2012−225489A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96196(P2011−96196)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】