無線タグ通信システムの質問器
【課題】送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減し、情報送受信精度を向上する。
【解決手段】IC回路部150及びタグ側のアンテナ151を備えた無線タグ回路素子Toに対し、少なくとも搬送波を含む信号を非接触で送信し、IC回路部150にアクセスを行う送信用のアンテナ素子1a〜1cと、この送信用のアンテナ素子1a〜1cと別個に設けられ、送信用のアンテナ素子1a〜1cにより送信された信号に応じてIC回路部150より返信された返答信号を非接触で受信する受信用のアンテナ素子1d〜1fとを有し、送信用のアンテナ素子1a〜1cと、受信用のアンテナ素子1d〜1fとを、互いに利得が略最小となる領域に位置するように配置する。
【解決手段】IC回路部150及びタグ側のアンテナ151を備えた無線タグ回路素子Toに対し、少なくとも搬送波を含む信号を非接触で送信し、IC回路部150にアクセスを行う送信用のアンテナ素子1a〜1cと、この送信用のアンテナ素子1a〜1cと別個に設けられ、送信用のアンテナ素子1a〜1cにより送信された信号に応じてIC回路部150より返信された返答信号を非接触で受信する受信用のアンテナ素子1d〜1fとを有し、送信用のアンテナ素子1a〜1cと、受信用のアンテナ素子1d〜1fとを、互いに利得が略最小となる領域に位置するように配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部と情報の無線通信が可能な無線タグ回路素子に対し情報の読み取りを行う無線タグ通信システムの質問器に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の無線タグに対し、リーダ/ライタより非接触で問い合わせの送信及び返答の受信を行うことで、無線タグの情報の読み取り/書き込みを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。
【0003】
例えばラベル状の無線タグに備えられた無線タグ回路素子は、所定の無線タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されて情報の送受信を行うアンテナとを備えている。質問器としてのリーダ/ライタの送信アンテナより応答器としての無線タグに対し送信波の送信を行うと、無線タグ回路素子はその送信波の電波の持つエネルギを利用して応答の送信を行う。すなわちリーダ/ライタが電波を送信するとほぼ同時に返信された無線タグからの電波をリーダ/ライタの受信アンテナが受信する。このとき、リーダ/ライタ内における送信アンテナ及び受信アンテナの間の電波の減衰量(送受信分離度)は有限であるので、必然的に送信波が受信アンテナから受信系により受信され混入するので干渉信号となって無線タグからの応答信号の受信に妨害を与えることとなる。
【0004】
ここで、このような送受信の干渉を解決するため、一般的な無線通信機の従来技術として、例えば特許文献1に記載のものが既に提唱されている。この従来技術では、一方の無線通信機からある偏波方向の送信信号を発して他方の無線通信機で受信し、これに応じ他方の無線通信機から上記と異なる偏波方向の返答信号を発して一方の無線通信機で受信する。このように一方から送信→他方で受信(往信)、他方から送信→一方で受信(返信)のそれぞれにおける偏波方向を変えることにより、最初に送信を行った(一方の)無線通信機における送信信号と返答信号の偏波方向を異なるものとし、返答信号の受信への送信信号の干渉(=受信妨害)を防止するようになっている。
【特許文献1】特開昭54−121093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の無線タグを用いた通信システムに上記従来技術の構成を適用しようとした場合、以下の問題点がある。
【0006】
すなわち、質問器としてのリーダ/ライタと応答器としての無線タグ回路素子との間の通信(往信と返信)に上記のような異なる偏波を用いようとすると、無線タグ回路素子側にそれら異なる2つの偏波方向に対応した複雑な構成(大型で特殊なアンテナ)が必要となり、限られた大きさの無線タグにおいて実際上そのような構成を実現するのは困難である。
【0007】
本発明の目的は、送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減することができ、情報送受信精度を向上できる無線タグ通信システムの質問器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、所定の情報を記憶するIC回路部及びこのIC回路部に接続されたタグ側アンテナを備えた無線タグ回路素子に対し、少なくとも搬送波を含む信号を非接触で送信し、前記IC回路部にアクセスを行う送信アンテナと、この送信アンテナと別個に設けられ、前記送信アンテナにより送信された前記信号に応じて前記IC回路部より返信された返答信号を非接触で受信する受信アンテナとを有し、前記送信アンテナと、前記受信アンテナとを、互いに利得が略最小となる方向に位置するように配置したことを特徴とする。
【0009】
送信アンテナより搬送波を含む信号が無線タグ回路素子へと送信されて、非接触で当該無線タグ回路素子のIC回路部へのアクセスが行われる。そして、その信号に応じて返信された返答信号は受信アンテナで非接触で受信され、これによって無線タグ回路素子との間で情報の送受が行われる。このとき、送信アンテナと受信アンテナとの間の電波の減衰量(送受信分離度)は有限であるので、送信波が受信アンテナで受信され混入した場合、干渉信号となって無線タグ回路素子からの返答信号の受信に妨害を与える可能性がある。
【0010】
本願第1発明においては、送信アンテナと受信アンテナを、互いに利得が略最小となる方向(いわゆるヌル方向)に配置している。これにより、送信アンテナ側から見ると送信波が受信アンテナへはほとんど届かないこととなり、受信アンテナ側から見ると利得がほとんどないので送信波は受信されないこととなる。この結果、上記送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減することができ、情報送受信精度を向上することができる。
【0011】
第2発明は、上記第1発明において、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、略一直線上に延設されたダイポールアンテナであることを特徴とする。
【0012】
送信アンテナ及び受信アンテナとしてダイポールアンテナを用い、例えばそれらダイポールアンテナを互いに素子の軸線同士が略一直線上になるように配置することで、互いに利得が略最小となる配置とすることができ、これによって送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減することができる。
【0013】
第3発明は、上記第1発明において、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、複数のアンテナ素子からなるアレイアンテナであることを特徴とする。
【0014】
送信アンテナ及び受信アンテナとしてアレイアンテナを用い、例えばダイポールアンテナの場合、アレイアンテナを構成するアンテナ素子の軸線同士が、送信側と受信側とで略一直線上になるように配置することで、互いに利得が略最小となる配置とすることができ、これによって送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減することができる。
【0015】
第4発明は、上記第3発明において、前記送信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔と、前記受信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔とを、異なる間隔としたことを特徴とする。
【0016】
アンテナ素子の間隔を大きくするほど分解能を向上することができることから、アンテナ素子同士の配置間隔を送信側と受信側とで異ならせることにより、送信側と受信側とで分解能を異ならせることができる。
【0017】
第5発明は、上記第4発明において、前記受信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔を、前記送信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔より大きくしたことを特徴とする。
【0018】
これにより、受信側における分解能を、送信側における分解能よりも大きくすることができる。
【0019】
第6発明は、上記第3発明乃至第5発明のいずれかにおいて、前記送信アンテナ又は前記受信アンテナは、前記複数のアンテナ素子のそれぞれを、所定の曲率を備えた曲面に沿って配置したことを特徴とする。
【0020】
複数のアンテナ素子を略平面上に配置した場合、中心側に位置するアンテナ素子から両端側に位置するアンテナ素子になるほど、感度が低下する。本願第6発明においては、所定曲率の曲面に沿って各アンテナ素子を配置することにより、曲面の向き及び曲率を適宜に設定することで、上記弊害を回避し、どのアンテナ素子においても略同等の通信条件とすることが可能となる。
【0021】
第7発明は、上記第1発明において、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、平面アンテナであることを特徴とする。
【0022】
送信アンテナ及び受信アンテナとして平面アンテナを用い、例えばそれら平面アンテナを互いに略同一平面上又は曲面上になるように配置することで、互いに利得が略最小となる配置とすることができ、これによって送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減することができる。
【0023】
第8発明は、上記第7発明において、複数の前記送信アンテナ及び複数の前記受信アンテナが略同一平面上に配置され、当該平面上において送信アンテナと受信アンテナとが交互に千鳥配列となるように配置されていることを特徴とする。
【0024】
送信側の複数の平面アンテナと、受信側の複数の平面アンテナを、略同一平面上で千鳥配列とすると、送信側でみた通信可能領域(送信信号が到達可能な無線タグ回路素子の存在範囲)と、受信側でみた通信可能範囲(返答信号を受信可能な無線タグ回路素子の存在範囲)との重なりをより広くすることができる。この結果、質問器全体で見た通信範囲をより大きくすることができる。
【0025】
第9発明は、上記第7発明において、複数の前記送信アンテナ又は複数の前記受信アンテナを、所定の曲率を備えた曲面に沿って配置したことを特徴とする。
【0026】
所定曲率の曲面に沿って平面アンテナである送信又は受信アンテナを配置することにより、曲面の向き及び曲率を適宜に設定することで、曲面上の配置位置に関係なくどのアンテナにおいても略同等の通信条件とすることが可能となる。
【0027】
第10発明は、上記第6又は第8発明において、前記曲面の曲率半径を、最大通信距離に応じて設定したことを特徴とする。
【0028】
曲面上に配置されたアンテナ素子又は平面アンテナから、曲率中心までは略同一距離(=曲率半径)となることから、この曲率半径を最大通信距離に対応させて設定することにより、どのアンテナ素子又は平面アンテナについても、略同等の通信条件で、確実に当該最大通信距離までの良好な通信を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減することができ、情報送受信精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1は、第1の実施形態の適用対象である無線タグ通信システムの全体概略を表すシステム構成図である。
【0032】
図1において、この無線タグ通信システムSは、本実施形態による質問器100と、これに対応する応答器としての複数の無線タグTとから構成される。
【0033】
無線タグTは、アンテナ151とIC回路部150とを備えた無線タグ回路素子Toを有している。
【0034】
質問器100は、この例では後述する6つのアンテナ素子1a〜1fで構成するアレイ型のアンテナユニット1と、このアンテナユニット1を介して無線タグ回路素子ToのIC回路部150へアクセスする(この例では読み取りを行う)ための高周波回路2と、無線タグ回路素子Toから読み出された信号を処理するための信号処理回路3と、上記アンテナ1と高周波回路2を介して無線タグ回路素子Toから読み取った情報等を表示する表示部4と、読み取った情報等を格納保持するデータベース(図中ではDBと省略)5と、上記信号処理回路3を介し無線タグ回路素子Toから読み出された信号を処理するとともに表示部4及びデータベース5にも接続され、質問器100全体を制御するための中央制御部6とを有する。
【0035】
中央制御部6は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、中央演算処理装置であるCPU、ROM、及びRAM等から構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。
【0036】
図2は、本実施形態の場合の質問器のうちアンテナユニット1の詳細構成を表す機能ブロック図である。なお、アンテナユニット1は各アンテナ素子1a〜1fを配置した同一平面の正面から見て表している。
【0037】
各アンテナ素子1a〜1fは、後述する高周波送信部34A,34B,34C又は高周波受信部35A,35B,35Cにそれぞれ同軸フィーダ11を介して接続されたバラン12と、このバラン12に同一直線で接続されている2本のアンテナ線13とを有しており、これらが一体となって略一直線上に延設された中央給電型ダイポールアンテナを構成している(詳しくは後述する)。そしてこの例における3つのアンテナ素子(送信アンテナ)1a〜1cは、互いに第1間隔δ1で離間しつつ略平行な配置で設けられて送信アレイアンテナ部(アレイアンテナ)1Aを構成している。また、この例における他の3つのアンテナ素子(受信アンテナ)1d〜1fは、上記第1間隔δ1より大きい第2間隔δ2で互いに離間しつつ略平行な配置で設けられて受信アレイアンテナ部(アレイアンテナ)1Bを構成している。
【0038】
そして、送信アレイアンテナ部1A全体の長手方向D1(つまりアンテナ素子1a〜1cどうしの離間方向)と受信アレイアンテナ部1B全体の長手方向D2(つまりアンテナ素子1d〜1fどうしの離間方向)は互いに略平行な配置関係にあり、全てのアンテナ素子1a〜1fは互いに略平行かつ略同一平面上に位置する配置でアンテナユニット1に並設配置されている。
【0039】
送信アレイアンテナ部1Aは、無線タグ回路素子Toの上記アンテナ151に対し無線通信により少なくとも搬送波を含む信号(=質問波)の送信を行い、受信アレイアンテナ部1Bは、上記送信アレイアンテナ部1Aから送信した信号に無線タグ回路素子Toが応答して出力する信号(=応答波)の受信を行う。そして、それぞれの場合でこの例では後述する指向性制御が行われ、アンテナユニット1全体としての放射パターン(メインローブの方向)が電子的に制御されるように構成されている。
【0040】
このような配置構成において、送信アレイアンテナ部1Aの各アンテナ素子1a〜1cからの信号放射パターン(アンテナ素子1bのみ例示して図示)について、受信アレイアンテナ部1Bのアンテナ素子1d〜1fは送信アレイアンテナ部1Aの各アンテナ素子1a〜1cのメインローブの範囲R外であってほぼヌル方向Nにあることになる。また逆に、受信アレイアンテナ部1Bの各アンテナ素子1d〜1fからの信号放射パターン(アンテナ素子1eのみ例示して図示)と送信アレイアンテナ部1Bの各アンテナ素子1a〜1cとの位置関係についても同様の関係となる。
【0041】
図3は、アンテナ素子1a〜1fの詳細構成を表す図である。
【0042】
ここで、アンテナ素子1a〜1fが備えるバラン12について説明する。バラン12は、この例のように同軸フィーダ11にダイポールアンテナを接続した場合にアンテナの効率を著しく低下させる原因となる不平衡電流の発生を抑えるための変換器である。まず、同軸フィーダ11の接地済みの外周アース線11aをゼロ点としてそこにインダクタンスが同じ2つのコイル14,15のそれぞれの一端を接続し、それらの他端にそれぞれアンテナ線13を接続する。そして一方のコイル15とアンテナ線13の接続点と、同軸フィーダ11の信号線11bとの間に上記2つのコイル14,15と同じインダクタンスのコイル16を接続する。この同軸フィーダ11と2本のアンテナ線13を結合するコイルの回路がバラン12を構成する。このバラン12を設けていることにより、ダイポールアンテナに接続する同軸フィーダ11の外周アース線11aと信号線11bのそれぞれには不平衡電流が相殺されて流れなくなり、同軸フィーダ11自体がアンテナとして動作してしまうことを防ぐことができる。
【0043】
図4は、質問器100の詳細構成を表す機能ブロック図である。この図4に示すように、信号処理回路3は、無線タグTへの送信信号に対応するコマンドビット列を生成するコマンドビット列生成部20と、そのコマンドビット列生成部20から出力されたディジタル信号をパルス幅変調等の所定の公知の手法により符号化する符号化部22と、この符号化部22により符号化された信号をAM方式で変調して送信メモリ部26に供給(記憶)するAM変調部24と、その送信メモリ部26に記憶された送信信号を随時読み出して所定の送信PAAウェイトを掛算する送信PAA(Phased Array
Antenna)処理部としての送信ウェイト掛算部28とを有している。
【0044】
高周波回路2は、所定の周波数の局発信号を出力する局部発振器32と、その局部発振器32から出力される局発信号に応じて上記送信ウェイト掛算部28から出力される送信信号をアップコンバートして所定の増幅率で増幅し上記送信アレイアンテナ部1Aの3つのアンテナ素子1a〜1cから上記質問波として送信する3つの高周波送信部34A,34B,34Cと、上記受信アレイアンテナ部1Bの3つのアンテナ素子1d〜1fによりそれぞれ受信される受信信号を所定の増幅率で増幅し上記局部発振器32から出力される局発信号に応じてダウンコンバートして受信メモリ部36に供給(記憶)する3つの高周波受信部35A,35B,35Cとを有している。
【0045】
また、一方、信号処理回路3は、上記受信メモリ部36と、この受信メモリ部36に記憶された受信信号を随時読み出して所定の受信PAAウェイトを掛算する受信PAA処理部としての受信ウェイト掛算部38と、その受信ウェイト掛算部38から出力される受信信号をAM方式で復調してAM復調波を検出するAM復調部40と、送信ウェイト掛算部28において掛算される送信PAAウェイト、受信ウェイト掛算部38において掛算される受信PAAウェイト、及び、高周波送信部34A,34B,34C及び高周波受信部35A,35B,35Cにおいて送信信号及び受信信号を増幅する増幅率を個別に制御(算出)するPAAウェイト制御部(指向性制御手段)46も有している。
【0046】
さらに、信号処理回路3は、上記AM復調部40により復調されたAM復調波を所定の公知の手法により復号する復号部42と、その復号部42により復号された復号信号を解釈して上記無線タグTの変調に関する情報信号を読み出す返答ビット列解釈部44も有している。
【0047】
図5は、送信ウェイト掛算部28の詳細機能を表す機能ブロック図である。この図5に示すように、送信ウェイト掛算部28は、送信メモリ部26から読み出される送信信号に上記PAAウェイト制御部46から供給される送信PAAウェイトをそれぞれ掛算して各高周波送信部34A,34B,34Cに供給する複数(図5では3つ)の掛算器48a,48b,48cを備えている。ここで、上記掛算器48aが高周波送信部34Aに、上記掛算器48bが高周波送信部34Bに、掛算器48cが高周波送信部34Cに、それぞれ対応しており、各掛算器48a,48b,48cからの出力が対応する高周波送信部34A,34B,34Cに供給されるようになっている。
【0048】
図6は、高周波送信部34A,34B,34Cの詳細機能を表す機能ブロック図である。この図6に示すように、高周波送信部34A,34B,34Cは、送信ウェイト掛算部28から供給される送信信号をアナログ信号に変換する送信信号D/A変換器50と、その送信信号D/A変換器50によりアナログ変換された送信信号の周波数を上記局部発振器32から出力される局発信号の周波数だけ高くするアップコンバータ52と、そのアップコンバータ52によりアップコンバートされた送信信号を後述するPAAウェイト制御部46から設定される増幅率で増幅して上記送信アレイアンテナ部1Aの各アンテナ素子1a〜1cに供給する送信信号増幅器54とを有している。
【0049】
図7は、高周波受信部35A,35B,35Cの詳細機能を表す機能ブロック図である。この図7に示すように、高周波受信部35A,35B,35Cは、上記受信アレイアンテナ部の各受信アンテナ素子1d〜1fから供給される受信信号を上記同様PAAウェイト制御部46から設定される増幅率で増幅する受信信号増幅器59と、その受信信号増幅器59から出力される受信信号の周波数を局部発振器32から出力される局発信号の周波数だけ低くするダウンコンバータ61と、そのダウンコンバータ61によりダウンコンバートされた受信信号をディジタル信号に変換して上記受信メモリ部36に供給する受信信号A/D変換器63とを有している。
【0050】
図8は、受信ウェイト掛算部38の詳細機能を表す機能ブロック図である。この図8に示すように、受信ウェイト掛算部38は、受信メモリ部36から読み出される受信信号それぞれにPAAウェイト制御部46から供給される所定の受信PAAウェイトを掛算する複数(図8では3つ)の掛算器64a、64b、64cと、それら掛算器64a〜64cから出力される信号を合成してAM復調部40に供給する合成器66とを有している。ここで、上記掛算器64aが高周波受信部35Aに、掛算器64bが高周波受信部35Bに、掛算器64cが高周波受信部35Cに、それぞれ対応している。
【0051】
以上の構成の質問器100においては、中央制御部6が設定した送信PAAウェイトを順次変化させながらPAAウェイト制御部46に出力することによって送受信時における最大指向性方向(以下、メインローブ方向という)を順次対応する角度に変化させ、3つの送信用のアンテナ素子1a,1b,1cによるメインローブ方向を、上記送信PAAウェイトに対応する一つの方向のみ強くなるように保持しつつその方向を順次変化させる、いわゆるフェイズドアレイ制御を行うことができる。
【0052】
図9は、上記無線タグTに備えられた無線タグ回路素子Toの機能的構成の一例を表すブロック図である。
【0053】
図9において、無線タグ回路素子Toは、上記質問器100側の上記アンテナ素子1a〜1fとUHF帯等の高周波を用いて非接触で信号の送受信を行う上記アンテナ(タグ側アンテナ)151と、このアンテナ151に接続された上記IC回路部150とを有している。
【0054】
IC回路部150は、アンテナ151により受信された搬送波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された搬送波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部153と、上記アンテナ151により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部157に供給するクロック抽出部154と、無線タグTの識別情報(以下、タグIDという)などの所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部155と、上記アンテナ151に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部156と、上記整流部152、クロック抽出部154、及び変復調部156等を介して上記無線タグ回路素子Toの作動を制御するための制御部157とを備えている。
【0055】
変復調部156は、アンテナ151により受信された上記質問器100のアンテナ素子1a〜1cからの通信信号の復調を行うと共に、上記制御部157からの返信信号に基づき、アンテナ1a〜1cから送信された搬送波を反射変調する。
【0056】
この制御部157は、質問器100と通信を行うことにより上記メモリ部155に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ151により受信された質問波を上記変復調部156において上記メモリ部155に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波として上記アンテナ151から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0057】
クロック抽出部154は受信した信号からクロック成分を抽出して制御部157にクロックを抽出するものであり、受信した信号のクロック成分の速度に対応したクロックを制御部157に供給する。
【0058】
以上において、本実施形態の最も大きな特徴は、送信用のアンテナ素子1a〜c及び受信用のアンテナ素子1d〜1fを互いの方向において利得が最小となる(送信用のアンテナ素子1a〜c及び受信用のアンテナ素子1d〜1fのそれぞれ互いの方向からの信号の強度が小さくなる)いわゆるヌル領域に配置していることにある。以下、本実施形態の質問器の制御手順について説明する。
【0059】
図10は、上記構成の質問器100の中央制御部6によって実行される制御手順を表すフローチャートである。なお、このフローチャートの例では、指定した1つのタグIDに対応する無線タグTを探索対象としてその存在方向を探索する制御手順を表している。
【0060】
この図10において、特に図示しない操作手段またはPCなどの上位の制御手段により、タグIDの指定とそれに対応する無線タグTの探索の開始が指令されるとこのフローが開始される。
【0061】
まずステップS5において、探索対象の無線タグTが存在しているか否か(応答があったか否か)を示す応答フラグFを0にリセットし、次のステップS10へ移る。
【0062】
ステップS10では、指定タグIDを含む「Scroll ID」(指定したタグの応答を求めるコマンド)などのコマンドを信号処理回路3のコマンドビット列生成部20へ出力する。これにより、信号処理回路3において、入力したコマンドに対応するコマンドビット列が生成されて符号化部22により符号化され、その符号化情報が信号処理回路3のAM変調部24によりAM変調されて送信メモリ部26に記憶される。
【0063】
次にステップS15へ移り、送信PAAウェイトを送信開始時の初期値に設定する。この例では、送信時のフェイズドアレイ制御におけるメインローブ方向θを最初のθoの値に設定し、それに対応する送信PAAウェイトを算出し設定する。
【0064】
次にステップS20へ移り、送信PAAウェイトをPAAウェイト制御部46を介し信号処理回路3の送信ウェイト掛算部28に出力する。これにより、送信ウェイト掛算部28においてメインローブ方向がθ方向になるよう各送信信号の位相を制御し、各高周波送信部34A,34B,34Cが送信メモリ26に記憶されている送信信号を所定の増幅率で増幅し、実際に送信アレイアンテナ部の各アンテナ素子1a〜1cから発信される送信信号(質問波)が合成されて、主にメインローブ方向θを中心に向けて送信される。
【0065】
ここで、探索対象の無線タグTが上記発信された送信信号を受信した場合それに応答するリプライ信号(返答信号)が発信されるが、そのリプライ信号は受信アレイアンテナ部の3つのアンテナ素子1d〜1fでそれぞれ受信される。このとき、各アンテナ素子1d〜1fから受信されたリプライ信号は所定の増幅率で増幅され、受信メモリ36に記憶される。
【0066】
そして次のステップS100の探索演算処理により、受信メモリ36に記憶されている3つのリプライ信号に基づいてフェイズドアレイ制御の演算により無線タグTの存在方向を探索する。
【0067】
次にステップS30へ移り、メインローブ方向θにこの例でのきざみ角であるΔθを加算するよう送信PAAウェイトを更新し、ステップS35へ移る。
【0068】
ステップS35では、メインローブ方向θがこの例で最後に取るべき値であるθendを超えているか否か、すなわち探索すべき全てのメインローブ方向θに対して探索が終了したか否かを判定する。なおこの判定は、送信PAAウェイトがメインローブ方向θ=θendの場合に対応する値を超えているか否かで判定してもよい。メインローブ方向θがθendを超えていない場合、判定が満たされず、すなわちその時点のメインローブ方向θでも無線タグTの探索を行う必要があるとしてステップS20に戻り同様の手順を繰り返す。一方、メインローブ方向θがθendを超えている場合、判定が満たされ、すなわち探索が終了したとして次のステップS40へ移る。
【0069】
ステップS40では、応答フラグFが1となっているか否か、すなわち探索対象の無線タグTからのリプライ信号を受信してその存在が確認できたか否かを判定する(後述の図11におけるステップS120参照)。応答フラグFが1である場合、判定が満たされ、すなわち探索対象の無線タグTが存在していたとして次のステップS45へ移り、データベース5に記録されているリプライ信号の受信信号強度のうち最大強度に対応するメインローブ方向θ(後述の図11におけるステップS125参照)を無線タグTの存在方向として表示部4に表示させ、このフローを終了する。一方、応答フラグFが1ではない場合(=0のままの場合)、判定が満たされず、すなわち探索対象の無線タグTが探索対象範囲に存在していなかったとしてステップS50へ移り、表示部4に無線タグTが存在していなかった旨の表示を行わせ、このフローを終了する。
【0070】
図11は、上記図10におけるステップS100の探索演算処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0071】
この図11において、まずステップS110において、その時点における送信用のメインローブ方向θをそのまま受信用のメインローブ方向θとしてそれに対応する受信PAAウェイトを設定し、PAAウェイト制御部46を介し信号処理回路3の受信ウェイト掛算部38に出力する。これにより、受信ウェイト掛算部38が受信メモリ36に記憶されている3つのリプライ信号のそれぞれの位相を制御し、メインローブ方向θを指向性方向として受信した場合の受信信号として合成することができる。そして、この受信信号がAM復調部40によりAM復調され、この復調化情報が信号処理回路3の復号部42により復号されて返答ビット列解釈部44により中央制御部6で判別可能なリプライ信号となって、中央制御部6に入力される。
【0072】
次にステップS115へ移り、入力されたリプライ信号が探索対象の無線タグTからのリプライ信号として正常な状態であるか否かを(例えばCRC符号等を用いた)公知の誤り検出の手法により判定する。入力されたリプライ信号が正常である場合、判定が満たされ、すなわち探索対象の無線タグTが検出されたとみなされて、次のステップS120へ移る。
【0073】
ステップS120では、探索対象の無線タグTの存在が確認されたことを示すよう応答フラグFを1に更新し、次のステップS125でその時点でのメインローブ方向θとAM復調部40から得られるリプライ信号の受信信号強度をデータベース5に保存する(なお図4においてAM復調部40から中央制御部6へ受信信号強度を入力する信号線については図示省略している)。そしてこのフローを終了する。
【0074】
なお、一方、上記ステップS115の判定において、入力されたリプライ信号が正常でない場合、判定が満たされず、すなわち探索対象の無線タグTは検出されなかったとみなされて、そのままこのフローを終了する。
【0075】
以上のように構成した本実施形態においては、送信アレイアンテナ部1Aの各アンテナ素子1a〜1cより搬送波を含む送信信号が無線タグ回路素子Toへと送信されて、非接触で無線タグ回路素子ToのIC回路部150へのアクセスが行われる。そして、その信号に応じて返信された返答信号は受信アレイアンテナ部1Bの各アンテナ素子1d〜1fで非接触で受信され、これによって無線タグ回路素子Toとの間で情報の送受が行われる。このとき、送信側の各アンテナ素子1a〜1cと受信側の各アンテナ素子1d〜1fとの間の電波の減衰量(送受信分離度)は有限であるので、送信波が受信側の各アンテナ素子1d〜1fで受信され混入した場合、干渉信号となって無線タグ回路素子Toからの返答信号の受信に妨害を与える怖れがある。
【0076】
本実施形態の質問器100においては、送信アレイアンテナ部1Aの各アンテナ素子1a〜1cと受信アレイアンテナ部1Bの各アンテナ素子1d〜1fを、互いに利得が略最小となる方向(いわゆるヌル方向)に配置している。これにより、送信側の各アンテナ素子1a〜1cの側から見ると送信波が受信側の各アンテナ素子1d〜1fへとほとんど届かないこととなり、受信側の各アンテナ素子1a〜1cの側から見ると受信時の利得がほとんどない方向に送信側の各アンテナ素子1a〜1cが配置されている(送信側のアンテナ素子1a〜1cと受信側のアンテナ素子1d〜1fのそれぞれ互いの方向からの信号の強度が小さくなる)状態となる。この結果、上記送信側の各アンテナ素子1a〜1cから受信側の各アンテナ素子1d〜1fへの送信波の混入による受信妨害を低減することができ、情報送受信精度を向上することができる。
【0077】
また、この実施形態では特に、アレイアンテナで構成される送信アレイアンテナ部1A及び受信アレイアンテナ部1Bを用い、それぞれにおいて送信用のアンテナ素子1a〜1c及び受信用のアンテナ素子1d〜1fとしてダイポールアンテナを設け、それらダイポールアンテナを互いに素子の軸線同士が略一直線上になるように配置する(図2中における送信側のアンテナ素子1bと受信側のアンテナ素子1eのように配置する)。これにより、確実に互いに利得が略最小となる配置とすることができ、これによって送信側の各アンテナ素子1a〜1cから受信側の各アンテナ素子1d〜1fへの送信波の混入による受信妨害を低減することができる。
【0078】
また、アンテナ素子の間隔を大きくするほど分解能を向上することができることに基づき、この実施形態では特に、送信アレイアンテナ部1Aの複数のアンテナ素子1a〜1cどうしの配置間隔δ1と、受信アレイアンテナ部1Bの複数のアンテナ素子1d〜1fどうしの配置間隔δ2とを異ならせ、δ2>δ1としている。これにより、受信側における分解能を、送信側における分解能よりも大きくすることができるので、応答波を受信した指向性方向を明確にして無線タグTの存在位置の探索を確実かつ高い精度で行うことができる。
【0079】
なお、上記第1実施形態では、送信側、受信側にかかわらず全てのアンテナ素子を同一平面上に並設配置したが、本発明はこれに限らず、各アンテナ素子を曲面に沿った配置で設けるよう構成してもよい。
【0080】
本変形例の構成は、上記実施形態の構成とアンテナユニットの構成のみが異なるだけであり、以下その相違する構成のみを説明し、同等の構成については同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0081】
図12は、本変形例の場合の質問器200のうちアンテナユニット201の詳細構成を表す図である。なお、アンテナユニット201は送信アレイアンテナ部201Aと受信アレイアンテナ部201Bから構成され、互いに利得が最小の方向に配置される。
【0082】
この図12において、送信アレイアンテナ部201Aは3本の送信用のアンテナ素子1a〜1cを有している。また受信アレイアンテナ部201Bは3本の受信用のアンテナ素子1d〜1fを備えている。3本の送信用のアンテナ素子1a〜1cが、各アンテナ素子1a〜1cの最大通信距離Lを共通の曲率半径とした曲面Fcに沿う配置で、互いに平行となるよう送信アレイアンテナ部201Aに設けられている。
【0083】
受信アレイアンテナ部201Bの各アンテナ素子1d〜1fは、それぞれ送信アレイアンテナ部201Aの各アンテナ素子1a〜1cと同一直線上に位置しており、すなわち同じ曲面Fcに沿う配置で互いに平行となるよう受信アレイアンテナ部201Bが設けられている。
【0084】
そして図示する3本の送信用のアンテナ素子1a〜1cが本変形例における送信アレイアンテナ部201Aを構成し、3本の受信用のアンテナ素子1d〜1fが本変形例における受信アレイアンテナ部201Bを構成している。
【0085】
以上のように構成した本変形例においては、上記第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、さらに加えて以下の効果を得ることができる。
【0086】
すなわち、例えば複数のアンテナ素子を略平面上に配置した場合(特に図示せず)、中心側に位置するアンテナ素子から両端側に位置するアンテナ素子になるほど、同一の無線タグTに対する送信性能及び受信感度が低下してしまう。
【0087】
そこで本変形例では、曲面Fcに沿って各アンテナ素子1a〜1fを配置し、曲率半径を共通として各アンテナ素子1aと無線タグTまでの距離を略同一とすることで、上記弊害を回避し、どのアンテナ素子1a〜1fにおいても略同等の通信条件とすることが可能となる。
【0088】
また、この変形例では特に、曲面Fcの曲率半径Lを各アンテナ素子1a〜1fの最大通信距離に対応させて設定していることにより、どのアンテナ素子1a〜1fについても、確実に良好な通信を確保することが可能となる。
【0089】
次に、本発明の第2の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、各アンテナ素子を平面アンテナで構成した例のものである。なお、本実施形態の構成は、上記第1実施形態の構成とアンテナユニットの構成のみが異なるだけであり(適宜、高周波送信部34、高周波受信部35の設置数も異なる)、以下その相違する構成のみを説明し、同等の構成については同じ符号を付して適宜説明を省略する(以下の変形例についても同様)。
【0090】
図13は、本実施形態の場合の質問器のうちアンテナユニットの詳細構成を表す図であり、上記図2に対応する図である。また図14は、図13中のXIV−XIV′断面による横断面図である。
【0091】
この図13において、アンテナユニット301は2つの送信用のアンテナ301a,301bと2つの受信用のアンテナ301d,301eを備えている。各アンテナ301a,301b,301d,301e(以下において便宜上、各アンテナ301a〜301eとする)は、同じ大きさで略四角形の平板形状に形成された平面アンテナ(マイクロストリップアンテナ)で構成されている。そして送信用の2つのアンテナ301a,301bと受信用の2つのアンテナ301d,301eとが交互に千鳥配列となる配置でアンテナユニット301に並設配置されている。
【0092】
また、図14において、隣り合う1対のアンテナ301a,301d(送信用と受信用)は互いに近接した配置関係となっているため、図示するようにそれぞれの信号放射パターンR1,R2の一部が重複している。本実施形態の質問器200は、この信号放射パターンR1,R2の重複部分の内部で無線タグTとの信号の送受信が可能となる。そして、送信側のアンテナ301aからの信号放射パターンR1について、受信側のアンテナ301dは送信側のアンテナ301aのほぼヌル方向Nにあることになる。また逆に、受信側のアンテナ301dからの信号放射パターンR2と送信側のアンテナ301aとの位置関係についても同様の関係となる。さらに、他の組合せで隣り合う送信側と受信側のアンテナどうしについても、同様の配置関係となる。
【0093】
図15(a)は、上記平面アンテナの詳細構造を表す側面図であり、図15(b)はその断面図である。これら図15(a)及び図15(b)において、平面アンテナ301a〜301dは、一方側(図中上側)にマイクロストリップアンテナ素子51を備え、他方側(図中下側)に地板52を備え、それらに挟まれるように中間に誘電体53を備えている。地板52及び誘電体53の1箇所には貫通孔54が備えられている。そして、一端が高周波送信部34又は高周波受信部35に接続された(上記の図4参照)平面アンテナ301a〜301dへの給電線としてのマイクロストリップライン55が貫通孔54を介してマイクロストリップアンテナ素子51に設けた給電点Pへと延設され、接続されている。
【0094】
なお、中央制御部6が実施する制御手順についても、上記実施形態と同じ図10、図11のフローチャートに従って同様の制御を行うことができる。
【0095】
以上のように構成した第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に送信及び受信におけるフェイズドアレイ制御によって無線タグTの探索を行うことができる。また、送信用のアンテナ及び受信用のアンテナとして平面アンテナ301a〜301eを用い、それら平面アンテナ301a〜301eを互いに同一平面上になるように配置していることで、互いに利得が略最小となる配置とすることができ、これによって上記第1実施形態と同様に送信側のアンテナ301a,301bから受信側のアンテナ301d,301eへの送信波の混入を減少せしめて受信妨害を低減することができる。
【0096】
また、この実施形態では特に、送信側の複数の平面アンテナ301a,301bと、受信側の複数の平面アンテナ301d,301eを、同一平面上で千鳥配列としていることにより、送信側でみた通信可能領域(送信信号が到達可能な無線タグ回路素子Toの存在範囲、前述の図14の信号放射パターンR1参照)と、受信側でみた通信可能範囲(返答信号を受信可能な無線タグ回路素子Toの存在範囲、前述の図14の信号放射パターンR2参照)との重複部分をより広くすることができる。この結果、質問器200全体で見た通信範囲をより大きくすることができる。
【0097】
これは、例えば送信側のアンテナどうしを隣り合わせ、受信側のアンテナどうしを隣合わせ、それらアンテナの対どうしを隣合わせる配置関係で設けた場合よりも、無線タグTと信号の送受が可能な上記重複部分を広く形成することが可能であることを意味する。
【0098】
なお、この第2実施形態においても、上記第1実施形態の変形例と同様に、送信側、受信側にかかわらず全ての平面アンテナのアンテナを曲面に沿った配置で設けるよう構成してもよい。すなわち、図16に示すように、交互に配置された送信側のアンテナ401a,401bと受信側のアンテナ401dとをそれぞれ同一の無線タグの中心を共通の曲率中心とし、各アンテナ401a,401b,401dの最大通信距離を共通の曲率半径とした曲面Fcに沿う配置でアンテナユニット401に設けてもよい。また、送信側のアンテナ401cと受信側のアンテナ401e,401fが交互に千鳥配列で、紙面から見て送信側のアンテナ401a,401b及び受信側のアンテナ401dの奥側にそれぞれ重なる配置で設けられている。このように構成しても、上記第1実施形態の変形例と同様の効果が得られる。
【0099】
なお、以上で用いた「Scroll ID」信号等は、EPC globalが策定した仕様に準拠しているものとする。EPC globalは、流通コードの国際機関である国際EAN協会と、米国の流通コード機関であるUniformed Code Council(UCC)が共同で設立した非営利法人である。なお、他の規格に準拠した信号でも、同様の機能を果たすものであればよい。
【0100】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0101】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】第1実施形態の適用対象である無線タグ通信システムの全体概略を表すシステム構成図である。
【図2】図1に示した質問器のうちアンテナユニットの詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図3】図1に示したアンテナ素子の詳細構成を表す図である。
【図4】質問器の詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図5】送信ウェイト掛算部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図6】高周波送信部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図7】高周波受信部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図8】受信ウェイト掛算部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図9】無線タグに備えられた無線タグ回路素子の機能的構成の一例を表すブロック図である。
【図10】質問器の中央制御部によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図11】図10におけるステップS100の探索演算処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図12】各アンテナ素子を曲面に沿った配置で設ける変形例の場合の質問器のうちアンテナユニットの詳細構成を表す図である。
【図13】第2実施形態の場合の質問器のうちアンテナユニットの詳細構成を表す図である。
【図14】図13中のXIV−XIV′断面による横断面図である。
【図15】平面アンテナの詳細構造を表す側面図及び断面図である。
【図16】第2実施形態において各アンテナ素子を曲面に沿った配置で設ける変形例の場合の質問器のうちアンテナユニットの詳細構成を表す図である。
【符号の説明】
【0103】
1 アンテナユニット
1A 送信アレイアンテナ部(アレイアンテナ)
1B 受信アレイアンテナ部(アレイアンテナ)
1a アンテナ素子(送信アンテナ、ダイポールアンテナ)
1b アンテナ素子(送信アンテナ、ダイポールアンテナ)
1c アンテナ素子(送信アンテナ、ダイポールアンテナ)
1d アンテナ素子(受信アンテナ、ダイポールアンテナ)
1e アンテナ素子(受信アンテナ、ダイポールアンテナ)
1f アンテナ素子(受信アンテナ、ダイポールアンテナ)
2 高周波回路
3 信号処理回路
4 表示部
5 データベース
6 中央制御部
100 質問器
300 質問器
301 アンテナユニット
301a アンテナ(送信アンテナ、平面アンテナ)
301b アンテナ(送信アンテナ、平面アンテナ)
301d アンテナ(受信アンテナ、平面アンテナ)
301e アンテナ(受信アンテナ、平面アンテナ)
T 無線タグ
To 無線タグ回路素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部と情報の無線通信が可能な無線タグ回路素子に対し情報の読み取りを行う無線タグ通信システムの質問器に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の無線タグに対し、リーダ/ライタより非接触で問い合わせの送信及び返答の受信を行うことで、無線タグの情報の読み取り/書き込みを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。
【0003】
例えばラベル状の無線タグに備えられた無線タグ回路素子は、所定の無線タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されて情報の送受信を行うアンテナとを備えている。質問器としてのリーダ/ライタの送信アンテナより応答器としての無線タグに対し送信波の送信を行うと、無線タグ回路素子はその送信波の電波の持つエネルギを利用して応答の送信を行う。すなわちリーダ/ライタが電波を送信するとほぼ同時に返信された無線タグからの電波をリーダ/ライタの受信アンテナが受信する。このとき、リーダ/ライタ内における送信アンテナ及び受信アンテナの間の電波の減衰量(送受信分離度)は有限であるので、必然的に送信波が受信アンテナから受信系により受信され混入するので干渉信号となって無線タグからの応答信号の受信に妨害を与えることとなる。
【0004】
ここで、このような送受信の干渉を解決するため、一般的な無線通信機の従来技術として、例えば特許文献1に記載のものが既に提唱されている。この従来技術では、一方の無線通信機からある偏波方向の送信信号を発して他方の無線通信機で受信し、これに応じ他方の無線通信機から上記と異なる偏波方向の返答信号を発して一方の無線通信機で受信する。このように一方から送信→他方で受信(往信)、他方から送信→一方で受信(返信)のそれぞれにおける偏波方向を変えることにより、最初に送信を行った(一方の)無線通信機における送信信号と返答信号の偏波方向を異なるものとし、返答信号の受信への送信信号の干渉(=受信妨害)を防止するようになっている。
【特許文献1】特開昭54−121093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の無線タグを用いた通信システムに上記従来技術の構成を適用しようとした場合、以下の問題点がある。
【0006】
すなわち、質問器としてのリーダ/ライタと応答器としての無線タグ回路素子との間の通信(往信と返信)に上記のような異なる偏波を用いようとすると、無線タグ回路素子側にそれら異なる2つの偏波方向に対応した複雑な構成(大型で特殊なアンテナ)が必要となり、限られた大きさの無線タグにおいて実際上そのような構成を実現するのは困難である。
【0007】
本発明の目的は、送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減することができ、情報送受信精度を向上できる無線タグ通信システムの質問器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、所定の情報を記憶するIC回路部及びこのIC回路部に接続されたタグ側アンテナを備えた無線タグ回路素子に対し、少なくとも搬送波を含む信号を非接触で送信し、前記IC回路部にアクセスを行う送信アンテナと、この送信アンテナと別個に設けられ、前記送信アンテナにより送信された前記信号に応じて前記IC回路部より返信された返答信号を非接触で受信する受信アンテナとを有し、前記送信アンテナと、前記受信アンテナとを、互いに利得が略最小となる方向に位置するように配置したことを特徴とする。
【0009】
送信アンテナより搬送波を含む信号が無線タグ回路素子へと送信されて、非接触で当該無線タグ回路素子のIC回路部へのアクセスが行われる。そして、その信号に応じて返信された返答信号は受信アンテナで非接触で受信され、これによって無線タグ回路素子との間で情報の送受が行われる。このとき、送信アンテナと受信アンテナとの間の電波の減衰量(送受信分離度)は有限であるので、送信波が受信アンテナで受信され混入した場合、干渉信号となって無線タグ回路素子からの返答信号の受信に妨害を与える可能性がある。
【0010】
本願第1発明においては、送信アンテナと受信アンテナを、互いに利得が略最小となる方向(いわゆるヌル方向)に配置している。これにより、送信アンテナ側から見ると送信波が受信アンテナへはほとんど届かないこととなり、受信アンテナ側から見ると利得がほとんどないので送信波は受信されないこととなる。この結果、上記送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減することができ、情報送受信精度を向上することができる。
【0011】
第2発明は、上記第1発明において、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、略一直線上に延設されたダイポールアンテナであることを特徴とする。
【0012】
送信アンテナ及び受信アンテナとしてダイポールアンテナを用い、例えばそれらダイポールアンテナを互いに素子の軸線同士が略一直線上になるように配置することで、互いに利得が略最小となる配置とすることができ、これによって送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減することができる。
【0013】
第3発明は、上記第1発明において、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、複数のアンテナ素子からなるアレイアンテナであることを特徴とする。
【0014】
送信アンテナ及び受信アンテナとしてアレイアンテナを用い、例えばダイポールアンテナの場合、アレイアンテナを構成するアンテナ素子の軸線同士が、送信側と受信側とで略一直線上になるように配置することで、互いに利得が略最小となる配置とすることができ、これによって送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減することができる。
【0015】
第4発明は、上記第3発明において、前記送信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔と、前記受信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔とを、異なる間隔としたことを特徴とする。
【0016】
アンテナ素子の間隔を大きくするほど分解能を向上することができることから、アンテナ素子同士の配置間隔を送信側と受信側とで異ならせることにより、送信側と受信側とで分解能を異ならせることができる。
【0017】
第5発明は、上記第4発明において、前記受信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔を、前記送信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔より大きくしたことを特徴とする。
【0018】
これにより、受信側における分解能を、送信側における分解能よりも大きくすることができる。
【0019】
第6発明は、上記第3発明乃至第5発明のいずれかにおいて、前記送信アンテナ又は前記受信アンテナは、前記複数のアンテナ素子のそれぞれを、所定の曲率を備えた曲面に沿って配置したことを特徴とする。
【0020】
複数のアンテナ素子を略平面上に配置した場合、中心側に位置するアンテナ素子から両端側に位置するアンテナ素子になるほど、感度が低下する。本願第6発明においては、所定曲率の曲面に沿って各アンテナ素子を配置することにより、曲面の向き及び曲率を適宜に設定することで、上記弊害を回避し、どのアンテナ素子においても略同等の通信条件とすることが可能となる。
【0021】
第7発明は、上記第1発明において、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、平面アンテナであることを特徴とする。
【0022】
送信アンテナ及び受信アンテナとして平面アンテナを用い、例えばそれら平面アンテナを互いに略同一平面上又は曲面上になるように配置することで、互いに利得が略最小となる配置とすることができ、これによって送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減することができる。
【0023】
第8発明は、上記第7発明において、複数の前記送信アンテナ及び複数の前記受信アンテナが略同一平面上に配置され、当該平面上において送信アンテナと受信アンテナとが交互に千鳥配列となるように配置されていることを特徴とする。
【0024】
送信側の複数の平面アンテナと、受信側の複数の平面アンテナを、略同一平面上で千鳥配列とすると、送信側でみた通信可能領域(送信信号が到達可能な無線タグ回路素子の存在範囲)と、受信側でみた通信可能範囲(返答信号を受信可能な無線タグ回路素子の存在範囲)との重なりをより広くすることができる。この結果、質問器全体で見た通信範囲をより大きくすることができる。
【0025】
第9発明は、上記第7発明において、複数の前記送信アンテナ又は複数の前記受信アンテナを、所定の曲率を備えた曲面に沿って配置したことを特徴とする。
【0026】
所定曲率の曲面に沿って平面アンテナである送信又は受信アンテナを配置することにより、曲面の向き及び曲率を適宜に設定することで、曲面上の配置位置に関係なくどのアンテナにおいても略同等の通信条件とすることが可能となる。
【0027】
第10発明は、上記第6又は第8発明において、前記曲面の曲率半径を、最大通信距離に応じて設定したことを特徴とする。
【0028】
曲面上に配置されたアンテナ素子又は平面アンテナから、曲率中心までは略同一距離(=曲率半径)となることから、この曲率半径を最大通信距離に対応させて設定することにより、どのアンテナ素子又は平面アンテナについても、略同等の通信条件で、確実に当該最大通信距離までの良好な通信を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、送信アンテナから受信アンテナへの送信波の混入による受信妨害を低減することができ、情報送受信精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1は、第1の実施形態の適用対象である無線タグ通信システムの全体概略を表すシステム構成図である。
【0032】
図1において、この無線タグ通信システムSは、本実施形態による質問器100と、これに対応する応答器としての複数の無線タグTとから構成される。
【0033】
無線タグTは、アンテナ151とIC回路部150とを備えた無線タグ回路素子Toを有している。
【0034】
質問器100は、この例では後述する6つのアンテナ素子1a〜1fで構成するアレイ型のアンテナユニット1と、このアンテナユニット1を介して無線タグ回路素子ToのIC回路部150へアクセスする(この例では読み取りを行う)ための高周波回路2と、無線タグ回路素子Toから読み出された信号を処理するための信号処理回路3と、上記アンテナ1と高周波回路2を介して無線タグ回路素子Toから読み取った情報等を表示する表示部4と、読み取った情報等を格納保持するデータベース(図中ではDBと省略)5と、上記信号処理回路3を介し無線タグ回路素子Toから読み出された信号を処理するとともに表示部4及びデータベース5にも接続され、質問器100全体を制御するための中央制御部6とを有する。
【0035】
中央制御部6は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、中央演算処理装置であるCPU、ROM、及びRAM等から構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。
【0036】
図2は、本実施形態の場合の質問器のうちアンテナユニット1の詳細構成を表す機能ブロック図である。なお、アンテナユニット1は各アンテナ素子1a〜1fを配置した同一平面の正面から見て表している。
【0037】
各アンテナ素子1a〜1fは、後述する高周波送信部34A,34B,34C又は高周波受信部35A,35B,35Cにそれぞれ同軸フィーダ11を介して接続されたバラン12と、このバラン12に同一直線で接続されている2本のアンテナ線13とを有しており、これらが一体となって略一直線上に延設された中央給電型ダイポールアンテナを構成している(詳しくは後述する)。そしてこの例における3つのアンテナ素子(送信アンテナ)1a〜1cは、互いに第1間隔δ1で離間しつつ略平行な配置で設けられて送信アレイアンテナ部(アレイアンテナ)1Aを構成している。また、この例における他の3つのアンテナ素子(受信アンテナ)1d〜1fは、上記第1間隔δ1より大きい第2間隔δ2で互いに離間しつつ略平行な配置で設けられて受信アレイアンテナ部(アレイアンテナ)1Bを構成している。
【0038】
そして、送信アレイアンテナ部1A全体の長手方向D1(つまりアンテナ素子1a〜1cどうしの離間方向)と受信アレイアンテナ部1B全体の長手方向D2(つまりアンテナ素子1d〜1fどうしの離間方向)は互いに略平行な配置関係にあり、全てのアンテナ素子1a〜1fは互いに略平行かつ略同一平面上に位置する配置でアンテナユニット1に並設配置されている。
【0039】
送信アレイアンテナ部1Aは、無線タグ回路素子Toの上記アンテナ151に対し無線通信により少なくとも搬送波を含む信号(=質問波)の送信を行い、受信アレイアンテナ部1Bは、上記送信アレイアンテナ部1Aから送信した信号に無線タグ回路素子Toが応答して出力する信号(=応答波)の受信を行う。そして、それぞれの場合でこの例では後述する指向性制御が行われ、アンテナユニット1全体としての放射パターン(メインローブの方向)が電子的に制御されるように構成されている。
【0040】
このような配置構成において、送信アレイアンテナ部1Aの各アンテナ素子1a〜1cからの信号放射パターン(アンテナ素子1bのみ例示して図示)について、受信アレイアンテナ部1Bのアンテナ素子1d〜1fは送信アレイアンテナ部1Aの各アンテナ素子1a〜1cのメインローブの範囲R外であってほぼヌル方向Nにあることになる。また逆に、受信アレイアンテナ部1Bの各アンテナ素子1d〜1fからの信号放射パターン(アンテナ素子1eのみ例示して図示)と送信アレイアンテナ部1Bの各アンテナ素子1a〜1cとの位置関係についても同様の関係となる。
【0041】
図3は、アンテナ素子1a〜1fの詳細構成を表す図である。
【0042】
ここで、アンテナ素子1a〜1fが備えるバラン12について説明する。バラン12は、この例のように同軸フィーダ11にダイポールアンテナを接続した場合にアンテナの効率を著しく低下させる原因となる不平衡電流の発生を抑えるための変換器である。まず、同軸フィーダ11の接地済みの外周アース線11aをゼロ点としてそこにインダクタンスが同じ2つのコイル14,15のそれぞれの一端を接続し、それらの他端にそれぞれアンテナ線13を接続する。そして一方のコイル15とアンテナ線13の接続点と、同軸フィーダ11の信号線11bとの間に上記2つのコイル14,15と同じインダクタンスのコイル16を接続する。この同軸フィーダ11と2本のアンテナ線13を結合するコイルの回路がバラン12を構成する。このバラン12を設けていることにより、ダイポールアンテナに接続する同軸フィーダ11の外周アース線11aと信号線11bのそれぞれには不平衡電流が相殺されて流れなくなり、同軸フィーダ11自体がアンテナとして動作してしまうことを防ぐことができる。
【0043】
図4は、質問器100の詳細構成を表す機能ブロック図である。この図4に示すように、信号処理回路3は、無線タグTへの送信信号に対応するコマンドビット列を生成するコマンドビット列生成部20と、そのコマンドビット列生成部20から出力されたディジタル信号をパルス幅変調等の所定の公知の手法により符号化する符号化部22と、この符号化部22により符号化された信号をAM方式で変調して送信メモリ部26に供給(記憶)するAM変調部24と、その送信メモリ部26に記憶された送信信号を随時読み出して所定の送信PAAウェイトを掛算する送信PAA(Phased Array
Antenna)処理部としての送信ウェイト掛算部28とを有している。
【0044】
高周波回路2は、所定の周波数の局発信号を出力する局部発振器32と、その局部発振器32から出力される局発信号に応じて上記送信ウェイト掛算部28から出力される送信信号をアップコンバートして所定の増幅率で増幅し上記送信アレイアンテナ部1Aの3つのアンテナ素子1a〜1cから上記質問波として送信する3つの高周波送信部34A,34B,34Cと、上記受信アレイアンテナ部1Bの3つのアンテナ素子1d〜1fによりそれぞれ受信される受信信号を所定の増幅率で増幅し上記局部発振器32から出力される局発信号に応じてダウンコンバートして受信メモリ部36に供給(記憶)する3つの高周波受信部35A,35B,35Cとを有している。
【0045】
また、一方、信号処理回路3は、上記受信メモリ部36と、この受信メモリ部36に記憶された受信信号を随時読み出して所定の受信PAAウェイトを掛算する受信PAA処理部としての受信ウェイト掛算部38と、その受信ウェイト掛算部38から出力される受信信号をAM方式で復調してAM復調波を検出するAM復調部40と、送信ウェイト掛算部28において掛算される送信PAAウェイト、受信ウェイト掛算部38において掛算される受信PAAウェイト、及び、高周波送信部34A,34B,34C及び高周波受信部35A,35B,35Cにおいて送信信号及び受信信号を増幅する増幅率を個別に制御(算出)するPAAウェイト制御部(指向性制御手段)46も有している。
【0046】
さらに、信号処理回路3は、上記AM復調部40により復調されたAM復調波を所定の公知の手法により復号する復号部42と、その復号部42により復号された復号信号を解釈して上記無線タグTの変調に関する情報信号を読み出す返答ビット列解釈部44も有している。
【0047】
図5は、送信ウェイト掛算部28の詳細機能を表す機能ブロック図である。この図5に示すように、送信ウェイト掛算部28は、送信メモリ部26から読み出される送信信号に上記PAAウェイト制御部46から供給される送信PAAウェイトをそれぞれ掛算して各高周波送信部34A,34B,34Cに供給する複数(図5では3つ)の掛算器48a,48b,48cを備えている。ここで、上記掛算器48aが高周波送信部34Aに、上記掛算器48bが高周波送信部34Bに、掛算器48cが高周波送信部34Cに、それぞれ対応しており、各掛算器48a,48b,48cからの出力が対応する高周波送信部34A,34B,34Cに供給されるようになっている。
【0048】
図6は、高周波送信部34A,34B,34Cの詳細機能を表す機能ブロック図である。この図6に示すように、高周波送信部34A,34B,34Cは、送信ウェイト掛算部28から供給される送信信号をアナログ信号に変換する送信信号D/A変換器50と、その送信信号D/A変換器50によりアナログ変換された送信信号の周波数を上記局部発振器32から出力される局発信号の周波数だけ高くするアップコンバータ52と、そのアップコンバータ52によりアップコンバートされた送信信号を後述するPAAウェイト制御部46から設定される増幅率で増幅して上記送信アレイアンテナ部1Aの各アンテナ素子1a〜1cに供給する送信信号増幅器54とを有している。
【0049】
図7は、高周波受信部35A,35B,35Cの詳細機能を表す機能ブロック図である。この図7に示すように、高周波受信部35A,35B,35Cは、上記受信アレイアンテナ部の各受信アンテナ素子1d〜1fから供給される受信信号を上記同様PAAウェイト制御部46から設定される増幅率で増幅する受信信号増幅器59と、その受信信号増幅器59から出力される受信信号の周波数を局部発振器32から出力される局発信号の周波数だけ低くするダウンコンバータ61と、そのダウンコンバータ61によりダウンコンバートされた受信信号をディジタル信号に変換して上記受信メモリ部36に供給する受信信号A/D変換器63とを有している。
【0050】
図8は、受信ウェイト掛算部38の詳細機能を表す機能ブロック図である。この図8に示すように、受信ウェイト掛算部38は、受信メモリ部36から読み出される受信信号それぞれにPAAウェイト制御部46から供給される所定の受信PAAウェイトを掛算する複数(図8では3つ)の掛算器64a、64b、64cと、それら掛算器64a〜64cから出力される信号を合成してAM復調部40に供給する合成器66とを有している。ここで、上記掛算器64aが高周波受信部35Aに、掛算器64bが高周波受信部35Bに、掛算器64cが高周波受信部35Cに、それぞれ対応している。
【0051】
以上の構成の質問器100においては、中央制御部6が設定した送信PAAウェイトを順次変化させながらPAAウェイト制御部46に出力することによって送受信時における最大指向性方向(以下、メインローブ方向という)を順次対応する角度に変化させ、3つの送信用のアンテナ素子1a,1b,1cによるメインローブ方向を、上記送信PAAウェイトに対応する一つの方向のみ強くなるように保持しつつその方向を順次変化させる、いわゆるフェイズドアレイ制御を行うことができる。
【0052】
図9は、上記無線タグTに備えられた無線タグ回路素子Toの機能的構成の一例を表すブロック図である。
【0053】
図9において、無線タグ回路素子Toは、上記質問器100側の上記アンテナ素子1a〜1fとUHF帯等の高周波を用いて非接触で信号の送受信を行う上記アンテナ(タグ側アンテナ)151と、このアンテナ151に接続された上記IC回路部150とを有している。
【0054】
IC回路部150は、アンテナ151により受信された搬送波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された搬送波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部153と、上記アンテナ151により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部157に供給するクロック抽出部154と、無線タグTの識別情報(以下、タグIDという)などの所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部155と、上記アンテナ151に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部156と、上記整流部152、クロック抽出部154、及び変復調部156等を介して上記無線タグ回路素子Toの作動を制御するための制御部157とを備えている。
【0055】
変復調部156は、アンテナ151により受信された上記質問器100のアンテナ素子1a〜1cからの通信信号の復調を行うと共に、上記制御部157からの返信信号に基づき、アンテナ1a〜1cから送信された搬送波を反射変調する。
【0056】
この制御部157は、質問器100と通信を行うことにより上記メモリ部155に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ151により受信された質問波を上記変復調部156において上記メモリ部155に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波として上記アンテナ151から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0057】
クロック抽出部154は受信した信号からクロック成分を抽出して制御部157にクロックを抽出するものであり、受信した信号のクロック成分の速度に対応したクロックを制御部157に供給する。
【0058】
以上において、本実施形態の最も大きな特徴は、送信用のアンテナ素子1a〜c及び受信用のアンテナ素子1d〜1fを互いの方向において利得が最小となる(送信用のアンテナ素子1a〜c及び受信用のアンテナ素子1d〜1fのそれぞれ互いの方向からの信号の強度が小さくなる)いわゆるヌル領域に配置していることにある。以下、本実施形態の質問器の制御手順について説明する。
【0059】
図10は、上記構成の質問器100の中央制御部6によって実行される制御手順を表すフローチャートである。なお、このフローチャートの例では、指定した1つのタグIDに対応する無線タグTを探索対象としてその存在方向を探索する制御手順を表している。
【0060】
この図10において、特に図示しない操作手段またはPCなどの上位の制御手段により、タグIDの指定とそれに対応する無線タグTの探索の開始が指令されるとこのフローが開始される。
【0061】
まずステップS5において、探索対象の無線タグTが存在しているか否か(応答があったか否か)を示す応答フラグFを0にリセットし、次のステップS10へ移る。
【0062】
ステップS10では、指定タグIDを含む「Scroll ID」(指定したタグの応答を求めるコマンド)などのコマンドを信号処理回路3のコマンドビット列生成部20へ出力する。これにより、信号処理回路3において、入力したコマンドに対応するコマンドビット列が生成されて符号化部22により符号化され、その符号化情報が信号処理回路3のAM変調部24によりAM変調されて送信メモリ部26に記憶される。
【0063】
次にステップS15へ移り、送信PAAウェイトを送信開始時の初期値に設定する。この例では、送信時のフェイズドアレイ制御におけるメインローブ方向θを最初のθoの値に設定し、それに対応する送信PAAウェイトを算出し設定する。
【0064】
次にステップS20へ移り、送信PAAウェイトをPAAウェイト制御部46を介し信号処理回路3の送信ウェイト掛算部28に出力する。これにより、送信ウェイト掛算部28においてメインローブ方向がθ方向になるよう各送信信号の位相を制御し、各高周波送信部34A,34B,34Cが送信メモリ26に記憶されている送信信号を所定の増幅率で増幅し、実際に送信アレイアンテナ部の各アンテナ素子1a〜1cから発信される送信信号(質問波)が合成されて、主にメインローブ方向θを中心に向けて送信される。
【0065】
ここで、探索対象の無線タグTが上記発信された送信信号を受信した場合それに応答するリプライ信号(返答信号)が発信されるが、そのリプライ信号は受信アレイアンテナ部の3つのアンテナ素子1d〜1fでそれぞれ受信される。このとき、各アンテナ素子1d〜1fから受信されたリプライ信号は所定の増幅率で増幅され、受信メモリ36に記憶される。
【0066】
そして次のステップS100の探索演算処理により、受信メモリ36に記憶されている3つのリプライ信号に基づいてフェイズドアレイ制御の演算により無線タグTの存在方向を探索する。
【0067】
次にステップS30へ移り、メインローブ方向θにこの例でのきざみ角であるΔθを加算するよう送信PAAウェイトを更新し、ステップS35へ移る。
【0068】
ステップS35では、メインローブ方向θがこの例で最後に取るべき値であるθendを超えているか否か、すなわち探索すべき全てのメインローブ方向θに対して探索が終了したか否かを判定する。なおこの判定は、送信PAAウェイトがメインローブ方向θ=θendの場合に対応する値を超えているか否かで判定してもよい。メインローブ方向θがθendを超えていない場合、判定が満たされず、すなわちその時点のメインローブ方向θでも無線タグTの探索を行う必要があるとしてステップS20に戻り同様の手順を繰り返す。一方、メインローブ方向θがθendを超えている場合、判定が満たされ、すなわち探索が終了したとして次のステップS40へ移る。
【0069】
ステップS40では、応答フラグFが1となっているか否か、すなわち探索対象の無線タグTからのリプライ信号を受信してその存在が確認できたか否かを判定する(後述の図11におけるステップS120参照)。応答フラグFが1である場合、判定が満たされ、すなわち探索対象の無線タグTが存在していたとして次のステップS45へ移り、データベース5に記録されているリプライ信号の受信信号強度のうち最大強度に対応するメインローブ方向θ(後述の図11におけるステップS125参照)を無線タグTの存在方向として表示部4に表示させ、このフローを終了する。一方、応答フラグFが1ではない場合(=0のままの場合)、判定が満たされず、すなわち探索対象の無線タグTが探索対象範囲に存在していなかったとしてステップS50へ移り、表示部4に無線タグTが存在していなかった旨の表示を行わせ、このフローを終了する。
【0070】
図11は、上記図10におけるステップS100の探索演算処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0071】
この図11において、まずステップS110において、その時点における送信用のメインローブ方向θをそのまま受信用のメインローブ方向θとしてそれに対応する受信PAAウェイトを設定し、PAAウェイト制御部46を介し信号処理回路3の受信ウェイト掛算部38に出力する。これにより、受信ウェイト掛算部38が受信メモリ36に記憶されている3つのリプライ信号のそれぞれの位相を制御し、メインローブ方向θを指向性方向として受信した場合の受信信号として合成することができる。そして、この受信信号がAM復調部40によりAM復調され、この復調化情報が信号処理回路3の復号部42により復号されて返答ビット列解釈部44により中央制御部6で判別可能なリプライ信号となって、中央制御部6に入力される。
【0072】
次にステップS115へ移り、入力されたリプライ信号が探索対象の無線タグTからのリプライ信号として正常な状態であるか否かを(例えばCRC符号等を用いた)公知の誤り検出の手法により判定する。入力されたリプライ信号が正常である場合、判定が満たされ、すなわち探索対象の無線タグTが検出されたとみなされて、次のステップS120へ移る。
【0073】
ステップS120では、探索対象の無線タグTの存在が確認されたことを示すよう応答フラグFを1に更新し、次のステップS125でその時点でのメインローブ方向θとAM復調部40から得られるリプライ信号の受信信号強度をデータベース5に保存する(なお図4においてAM復調部40から中央制御部6へ受信信号強度を入力する信号線については図示省略している)。そしてこのフローを終了する。
【0074】
なお、一方、上記ステップS115の判定において、入力されたリプライ信号が正常でない場合、判定が満たされず、すなわち探索対象の無線タグTは検出されなかったとみなされて、そのままこのフローを終了する。
【0075】
以上のように構成した本実施形態においては、送信アレイアンテナ部1Aの各アンテナ素子1a〜1cより搬送波を含む送信信号が無線タグ回路素子Toへと送信されて、非接触で無線タグ回路素子ToのIC回路部150へのアクセスが行われる。そして、その信号に応じて返信された返答信号は受信アレイアンテナ部1Bの各アンテナ素子1d〜1fで非接触で受信され、これによって無線タグ回路素子Toとの間で情報の送受が行われる。このとき、送信側の各アンテナ素子1a〜1cと受信側の各アンテナ素子1d〜1fとの間の電波の減衰量(送受信分離度)は有限であるので、送信波が受信側の各アンテナ素子1d〜1fで受信され混入した場合、干渉信号となって無線タグ回路素子Toからの返答信号の受信に妨害を与える怖れがある。
【0076】
本実施形態の質問器100においては、送信アレイアンテナ部1Aの各アンテナ素子1a〜1cと受信アレイアンテナ部1Bの各アンテナ素子1d〜1fを、互いに利得が略最小となる方向(いわゆるヌル方向)に配置している。これにより、送信側の各アンテナ素子1a〜1cの側から見ると送信波が受信側の各アンテナ素子1d〜1fへとほとんど届かないこととなり、受信側の各アンテナ素子1a〜1cの側から見ると受信時の利得がほとんどない方向に送信側の各アンテナ素子1a〜1cが配置されている(送信側のアンテナ素子1a〜1cと受信側のアンテナ素子1d〜1fのそれぞれ互いの方向からの信号の強度が小さくなる)状態となる。この結果、上記送信側の各アンテナ素子1a〜1cから受信側の各アンテナ素子1d〜1fへの送信波の混入による受信妨害を低減することができ、情報送受信精度を向上することができる。
【0077】
また、この実施形態では特に、アレイアンテナで構成される送信アレイアンテナ部1A及び受信アレイアンテナ部1Bを用い、それぞれにおいて送信用のアンテナ素子1a〜1c及び受信用のアンテナ素子1d〜1fとしてダイポールアンテナを設け、それらダイポールアンテナを互いに素子の軸線同士が略一直線上になるように配置する(図2中における送信側のアンテナ素子1bと受信側のアンテナ素子1eのように配置する)。これにより、確実に互いに利得が略最小となる配置とすることができ、これによって送信側の各アンテナ素子1a〜1cから受信側の各アンテナ素子1d〜1fへの送信波の混入による受信妨害を低減することができる。
【0078】
また、アンテナ素子の間隔を大きくするほど分解能を向上することができることに基づき、この実施形態では特に、送信アレイアンテナ部1Aの複数のアンテナ素子1a〜1cどうしの配置間隔δ1と、受信アレイアンテナ部1Bの複数のアンテナ素子1d〜1fどうしの配置間隔δ2とを異ならせ、δ2>δ1としている。これにより、受信側における分解能を、送信側における分解能よりも大きくすることができるので、応答波を受信した指向性方向を明確にして無線タグTの存在位置の探索を確実かつ高い精度で行うことができる。
【0079】
なお、上記第1実施形態では、送信側、受信側にかかわらず全てのアンテナ素子を同一平面上に並設配置したが、本発明はこれに限らず、各アンテナ素子を曲面に沿った配置で設けるよう構成してもよい。
【0080】
本変形例の構成は、上記実施形態の構成とアンテナユニットの構成のみが異なるだけであり、以下その相違する構成のみを説明し、同等の構成については同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0081】
図12は、本変形例の場合の質問器200のうちアンテナユニット201の詳細構成を表す図である。なお、アンテナユニット201は送信アレイアンテナ部201Aと受信アレイアンテナ部201Bから構成され、互いに利得が最小の方向に配置される。
【0082】
この図12において、送信アレイアンテナ部201Aは3本の送信用のアンテナ素子1a〜1cを有している。また受信アレイアンテナ部201Bは3本の受信用のアンテナ素子1d〜1fを備えている。3本の送信用のアンテナ素子1a〜1cが、各アンテナ素子1a〜1cの最大通信距離Lを共通の曲率半径とした曲面Fcに沿う配置で、互いに平行となるよう送信アレイアンテナ部201Aに設けられている。
【0083】
受信アレイアンテナ部201Bの各アンテナ素子1d〜1fは、それぞれ送信アレイアンテナ部201Aの各アンテナ素子1a〜1cと同一直線上に位置しており、すなわち同じ曲面Fcに沿う配置で互いに平行となるよう受信アレイアンテナ部201Bが設けられている。
【0084】
そして図示する3本の送信用のアンテナ素子1a〜1cが本変形例における送信アレイアンテナ部201Aを構成し、3本の受信用のアンテナ素子1d〜1fが本変形例における受信アレイアンテナ部201Bを構成している。
【0085】
以上のように構成した本変形例においては、上記第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、さらに加えて以下の効果を得ることができる。
【0086】
すなわち、例えば複数のアンテナ素子を略平面上に配置した場合(特に図示せず)、中心側に位置するアンテナ素子から両端側に位置するアンテナ素子になるほど、同一の無線タグTに対する送信性能及び受信感度が低下してしまう。
【0087】
そこで本変形例では、曲面Fcに沿って各アンテナ素子1a〜1fを配置し、曲率半径を共通として各アンテナ素子1aと無線タグTまでの距離を略同一とすることで、上記弊害を回避し、どのアンテナ素子1a〜1fにおいても略同等の通信条件とすることが可能となる。
【0088】
また、この変形例では特に、曲面Fcの曲率半径Lを各アンテナ素子1a〜1fの最大通信距離に対応させて設定していることにより、どのアンテナ素子1a〜1fについても、確実に良好な通信を確保することが可能となる。
【0089】
次に、本発明の第2の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、各アンテナ素子を平面アンテナで構成した例のものである。なお、本実施形態の構成は、上記第1実施形態の構成とアンテナユニットの構成のみが異なるだけであり(適宜、高周波送信部34、高周波受信部35の設置数も異なる)、以下その相違する構成のみを説明し、同等の構成については同じ符号を付して適宜説明を省略する(以下の変形例についても同様)。
【0090】
図13は、本実施形態の場合の質問器のうちアンテナユニットの詳細構成を表す図であり、上記図2に対応する図である。また図14は、図13中のXIV−XIV′断面による横断面図である。
【0091】
この図13において、アンテナユニット301は2つの送信用のアンテナ301a,301bと2つの受信用のアンテナ301d,301eを備えている。各アンテナ301a,301b,301d,301e(以下において便宜上、各アンテナ301a〜301eとする)は、同じ大きさで略四角形の平板形状に形成された平面アンテナ(マイクロストリップアンテナ)で構成されている。そして送信用の2つのアンテナ301a,301bと受信用の2つのアンテナ301d,301eとが交互に千鳥配列となる配置でアンテナユニット301に並設配置されている。
【0092】
また、図14において、隣り合う1対のアンテナ301a,301d(送信用と受信用)は互いに近接した配置関係となっているため、図示するようにそれぞれの信号放射パターンR1,R2の一部が重複している。本実施形態の質問器200は、この信号放射パターンR1,R2の重複部分の内部で無線タグTとの信号の送受信が可能となる。そして、送信側のアンテナ301aからの信号放射パターンR1について、受信側のアンテナ301dは送信側のアンテナ301aのほぼヌル方向Nにあることになる。また逆に、受信側のアンテナ301dからの信号放射パターンR2と送信側のアンテナ301aとの位置関係についても同様の関係となる。さらに、他の組合せで隣り合う送信側と受信側のアンテナどうしについても、同様の配置関係となる。
【0093】
図15(a)は、上記平面アンテナの詳細構造を表す側面図であり、図15(b)はその断面図である。これら図15(a)及び図15(b)において、平面アンテナ301a〜301dは、一方側(図中上側)にマイクロストリップアンテナ素子51を備え、他方側(図中下側)に地板52を備え、それらに挟まれるように中間に誘電体53を備えている。地板52及び誘電体53の1箇所には貫通孔54が備えられている。そして、一端が高周波送信部34又は高周波受信部35に接続された(上記の図4参照)平面アンテナ301a〜301dへの給電線としてのマイクロストリップライン55が貫通孔54を介してマイクロストリップアンテナ素子51に設けた給電点Pへと延設され、接続されている。
【0094】
なお、中央制御部6が実施する制御手順についても、上記実施形態と同じ図10、図11のフローチャートに従って同様の制御を行うことができる。
【0095】
以上のように構成した第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に送信及び受信におけるフェイズドアレイ制御によって無線タグTの探索を行うことができる。また、送信用のアンテナ及び受信用のアンテナとして平面アンテナ301a〜301eを用い、それら平面アンテナ301a〜301eを互いに同一平面上になるように配置していることで、互いに利得が略最小となる配置とすることができ、これによって上記第1実施形態と同様に送信側のアンテナ301a,301bから受信側のアンテナ301d,301eへの送信波の混入を減少せしめて受信妨害を低減することができる。
【0096】
また、この実施形態では特に、送信側の複数の平面アンテナ301a,301bと、受信側の複数の平面アンテナ301d,301eを、同一平面上で千鳥配列としていることにより、送信側でみた通信可能領域(送信信号が到達可能な無線タグ回路素子Toの存在範囲、前述の図14の信号放射パターンR1参照)と、受信側でみた通信可能範囲(返答信号を受信可能な無線タグ回路素子Toの存在範囲、前述の図14の信号放射パターンR2参照)との重複部分をより広くすることができる。この結果、質問器200全体で見た通信範囲をより大きくすることができる。
【0097】
これは、例えば送信側のアンテナどうしを隣り合わせ、受信側のアンテナどうしを隣合わせ、それらアンテナの対どうしを隣合わせる配置関係で設けた場合よりも、無線タグTと信号の送受が可能な上記重複部分を広く形成することが可能であることを意味する。
【0098】
なお、この第2実施形態においても、上記第1実施形態の変形例と同様に、送信側、受信側にかかわらず全ての平面アンテナのアンテナを曲面に沿った配置で設けるよう構成してもよい。すなわち、図16に示すように、交互に配置された送信側のアンテナ401a,401bと受信側のアンテナ401dとをそれぞれ同一の無線タグの中心を共通の曲率中心とし、各アンテナ401a,401b,401dの最大通信距離を共通の曲率半径とした曲面Fcに沿う配置でアンテナユニット401に設けてもよい。また、送信側のアンテナ401cと受信側のアンテナ401e,401fが交互に千鳥配列で、紙面から見て送信側のアンテナ401a,401b及び受信側のアンテナ401dの奥側にそれぞれ重なる配置で設けられている。このように構成しても、上記第1実施形態の変形例と同様の効果が得られる。
【0099】
なお、以上で用いた「Scroll ID」信号等は、EPC globalが策定した仕様に準拠しているものとする。EPC globalは、流通コードの国際機関である国際EAN協会と、米国の流通コード機関であるUniformed Code Council(UCC)が共同で設立した非営利法人である。なお、他の規格に準拠した信号でも、同様の機能を果たすものであればよい。
【0100】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0101】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】第1実施形態の適用対象である無線タグ通信システムの全体概略を表すシステム構成図である。
【図2】図1に示した質問器のうちアンテナユニットの詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図3】図1に示したアンテナ素子の詳細構成を表す図である。
【図4】質問器の詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図5】送信ウェイト掛算部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図6】高周波送信部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図7】高周波受信部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図8】受信ウェイト掛算部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図9】無線タグに備えられた無線タグ回路素子の機能的構成の一例を表すブロック図である。
【図10】質問器の中央制御部によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図11】図10におけるステップS100の探索演算処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図12】各アンテナ素子を曲面に沿った配置で設ける変形例の場合の質問器のうちアンテナユニットの詳細構成を表す図である。
【図13】第2実施形態の場合の質問器のうちアンテナユニットの詳細構成を表す図である。
【図14】図13中のXIV−XIV′断面による横断面図である。
【図15】平面アンテナの詳細構造を表す側面図及び断面図である。
【図16】第2実施形態において各アンテナ素子を曲面に沿った配置で設ける変形例の場合の質問器のうちアンテナユニットの詳細構成を表す図である。
【符号の説明】
【0103】
1 アンテナユニット
1A 送信アレイアンテナ部(アレイアンテナ)
1B 受信アレイアンテナ部(アレイアンテナ)
1a アンテナ素子(送信アンテナ、ダイポールアンテナ)
1b アンテナ素子(送信アンテナ、ダイポールアンテナ)
1c アンテナ素子(送信アンテナ、ダイポールアンテナ)
1d アンテナ素子(受信アンテナ、ダイポールアンテナ)
1e アンテナ素子(受信アンテナ、ダイポールアンテナ)
1f アンテナ素子(受信アンテナ、ダイポールアンテナ)
2 高周波回路
3 信号処理回路
4 表示部
5 データベース
6 中央制御部
100 質問器
300 質問器
301 アンテナユニット
301a アンテナ(送信アンテナ、平面アンテナ)
301b アンテナ(送信アンテナ、平面アンテナ)
301d アンテナ(受信アンテナ、平面アンテナ)
301e アンテナ(受信アンテナ、平面アンテナ)
T 無線タグ
To 無線タグ回路素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の情報を記憶するIC回路部及びこのIC回路部に接続されたタグ側アンテナを備えた無線タグ回路素子に対し、少なくとも搬送波を含む信号を非接触で送信し、前記IC回路部にアクセスを行う送信アンテナと、
この送信アンテナと別個に設けられ、前記送信アンテナにより送信された前記信号に応じて前記IC回路部より返信された返答信号を非接触で受信する受信アンテナとを有し、
前記送信アンテナと、前記受信アンテナとを、互いに利得が略最小となる方向に位置するように配置したことを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項2】
請求項1記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、略一直線上に延設されたダイポールアンテナであることを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項3】
請求項1記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、複数のアンテナ素子からなるアレイアンテナであることを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項4】
請求項3記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記送信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔と、前記受信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔とを、異なる間隔としたことを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項5】
請求項4記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記受信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔を、前記送信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔より大きくしたことを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記送信アンテナ又は前記受信アンテナは、前記複数のアンテナ素子のそれぞれを、所定の曲率を備えた曲面に沿って配置したことを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項7】
請求項1記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、平面アンテナであることを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項8】
請求項7記載の無線タグ通信システムの質問器において、
複数の前記送信アンテナ及び複数の前記受信アンテナが略同一平面上に配置され、
当該平面上において送信アンテナと受信アンテナとが交互に千鳥配列となるように配置されていることを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項9】
請求項7記載の無線タグ通信システムの質問器において、
複数の前記送信アンテナ又は複数の前記受信アンテナを、所定の曲率を備えた曲面に沿って配置したことを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項10】
請求項6又は8記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記曲面の曲率半径を、最大通信距離に応じて設定したことを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項1】
所定の情報を記憶するIC回路部及びこのIC回路部に接続されたタグ側アンテナを備えた無線タグ回路素子に対し、少なくとも搬送波を含む信号を非接触で送信し、前記IC回路部にアクセスを行う送信アンテナと、
この送信アンテナと別個に設けられ、前記送信アンテナにより送信された前記信号に応じて前記IC回路部より返信された返答信号を非接触で受信する受信アンテナとを有し、
前記送信アンテナと、前記受信アンテナとを、互いに利得が略最小となる方向に位置するように配置したことを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項2】
請求項1記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、略一直線上に延設されたダイポールアンテナであることを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項3】
請求項1記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、複数のアンテナ素子からなるアレイアンテナであることを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項4】
請求項3記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記送信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔と、前記受信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔とを、異なる間隔としたことを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項5】
請求項4記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記受信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔を、前記送信アンテナの前記複数のアンテナ素子間の配置間隔より大きくしたことを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記送信アンテナ又は前記受信アンテナは、前記複数のアンテナ素子のそれぞれを、所定の曲率を備えた曲面に沿って配置したことを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項7】
請求項1記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、平面アンテナであることを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項8】
請求項7記載の無線タグ通信システムの質問器において、
複数の前記送信アンテナ及び複数の前記受信アンテナが略同一平面上に配置され、
当該平面上において送信アンテナと受信アンテナとが交互に千鳥配列となるように配置されていることを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項9】
請求項7記載の無線タグ通信システムの質問器において、
複数の前記送信アンテナ又は複数の前記受信アンテナを、所定の曲率を備えた曲面に沿って配置したことを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【請求項10】
請求項6又は8記載の無線タグ通信システムの質問器において、
前記曲面の曲率半径を、最大通信距離に応じて設定したことを特徴とする無線タグ通信システムの質問器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−221557(P2007−221557A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40936(P2006−40936)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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