説明

無線装置

【課題】
簡単な回路構成で2つの周波数帯域を出力可能とし、無線装置の小型化及びコストの低減を図る。
【解決手段】
発振回路部26から発せられる基本周波数を逓倍回路部27を介して出力する様にし、該逓倍回路部に給電する電圧を2つの異なる電圧に切換え可能とし、1つの電圧では前記逓倍回路部が増幅作動する様にし、他の電圧では該逓倍回路部が逓倍作動する様構成し、2つの周波数帯を択一的に発信可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2つの周波数帯域で、出力が可能な無線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの周波数帯域で出力が可能な、従来の無線装置について図3、図4により説明する。
【0003】
図3は、無線装置が具備する従来の発振器1を示している。
【0004】
図3中、2は共振子、3はコレクタ電源、4は発振回路部、5は増幅回路部、6は前記発振回路部のトランジスタ11にベース電圧を給電する発振回路部用ベース電源、7は前記増幅回路部のトランジスタ12にベース電圧を給電する増幅回路部用ベース電源を示し、前記増幅回路部5は第1カップリングコンデンサ8を介して前記発振回路部4に接続され、又第2カップリングコンデンサ9を介して出力端子10に接続されている。
【0005】
前記共振子2からの共振周波数信号で前記発振回路部4を励振し、前記増幅回路部5により所定のレベルに増幅され、前記出力端子10より出力される。
【0006】
図4は、2つの周波数帯域を出力可能な従来の無線装置15を示している。
【0007】
該無線装置15は、第1周波数帯域f4を出力する第1回路網16と第2周波数帯域f5を出力する第2回路網17を備え、前記第1回路網16、前記第2回路網17はそれぞれ前記発振器1と同等の構成の発振器1a,1bを有している。
【0008】
又、図4中、18a,18bはミキサ18、19a,19bは増幅器、20a,20bはバンドパスフィルタ、21はダイプレクサ、22はアンテナ、23は端子を示す。
【0009】
前記発振器1aが発生する第1の周波数f1は前記ミキサ18aへ入力され、該ミキサ18aで前記端子23から入力された周波数f3と混合され、前記ミキサ18aは周波数f4(=f1+f3)を出力する。前記ミキサ18aから出力される周波数f4は前記増幅器19aで増幅され、前記バンドパスフィルタ20aで周波数f4以外の不要な周波数成分が除去され、その後異なる周波数帯を合成する為の前記ダイプレクサ21を経由して前記アンテナ22から放射される。
【0010】
又、前記発振器1bが発生する第2の周波数f2は前記ミキサ18bへ入力され、該ミキサ18bで前記端子23から入力された周波数f3と混合される。前記ミキサ18bから出力される周波数f5(=f2+f3)は前記増幅器19bで増幅され、周波数f5以外の不要な周波数成分が前記バンドパスフィルタ20bで除去された後、異なる周波数帯を合成する為の前記ダイプレクサ21を経由して前記アンテナ22から放射される。
【0011】
上記した従来の無線装置15では、前記第1回路網16と前記第2回路網17の2系統の回路網が必要であり、装置の大型化及びコスト高を招く要因となっていた。
【0012】
【特許文献1】特開2005−175768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は斯かる実情に鑑み、簡単な回路構成で2つの周波数帯域を出力可能とし、無線装置の小型化及びコストの低減を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、発振回路部から発せられる基本周波数を逓倍回路部を介して出力する様にし、該逓倍回路部に給電する電圧を2つの異なる電圧に切換え可能とし、1つの電圧では前記逓倍回路部が増幅作動する様にし、他の電圧では該逓倍回路部が逓倍作動する様構成し、2つの周波数帯を択一的に発信可能とした無線装置に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発振回路部から発せられる基本周波数を逓倍回路部を介して出力する様にし、該逓倍回路部に給電する電圧を2つの異なる電圧に切換え可能とし、1つの電圧では前記逓倍回路部が増幅作動する様にし、他の電圧では該逓倍回路部が逓倍作動する様構成し、2つの周波数帯を択一的に発信可能としたので、1系統の回路網により、2つの周波数帯が発信可能であり、構成が簡単となり、無線装置の小型化、コストの低減が可能となるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0017】
先ず、図1に於いて、本発明に用いられる発振器を説明する。
【0018】
図1中、25は発振器、26は発振回路部、27は逓倍回路部、28は増幅回路部、29は共振子、31は後述する発振回路部トランジスタ33、逓倍回路部トランジスタ38、増幅回路部トランジスタ40にコレクタ電圧を給電するコレクタ電源、32は前記発振回路部トランジスタ33にベース電圧を給電するベース電源、35,36はそれぞれスイッチ37を介して前記逓倍回路部トランジスタ38に異なる電位のベース電圧Va,Vbを給電する様設定されたベース電源、39は前記増幅回路部トランジスタ40にベース電圧を給電するベース電源、42は出力端子を示している。前記発振回路部26と前記逓倍回路部27とはカップリングコンデンサ34を介して結合され、前記逓倍回路部27と前記増幅回路部28とはカップリングコンデンサ43を介して結合され、又前記増幅回路部28と前記出力端子42とはカップリングコンデンサ44を介して結合されている。
【0019】
又、前記逓倍回路部27と前記増幅回路部28とを接続するラインにはスイッチ46を介して第1バンドパスフィルタ47、第1終端器48及び第2バンドパスフィルタ49、第2終端器50がそれぞれ接続されている。
【0020】
前記スイッチ37、前記スイッチ46は、端子51から切換え信号が入力されることにより、同期して作動し、増幅動作と逓倍動作とが切換る様になっている。
【0021】
前記発振回路部26に前記コレクタ電源31からコレクタ電圧、前記ベース電源32からベース電圧が給電された状態で前記共振子29の共振周波数で前記発振回路部26が励振され、所定周波数で発振された基本周波数f1が出力される。
【0022】
先ず、増幅動作について説明する。
【0023】
前記端子51から切換え信号が前記スイッチ37、前記スイッチ46に入力され、前記逓倍回路部トランジスタ38には前記ベース電源35から電圧Vaが給電され、前記逓倍回路部27には前記第1バンドパスフィルタ47、前記第1終端器48が接続される。
【0024】
前記電圧Vaは、前記逓倍回路部トランジスタ38を線形領域で動作させるものであり、又前記第1バンドパスフィルタ47は基本周波数f1の2倍の周波数のみを通過させ、前記第1終端器48は基本周波数f1の2倍の周波数を吸収する様になっている。
【0025】
前記逓倍回路部トランジスタ38は線形領域で動作し、前記逓倍回路部27は増幅器として動作する為、入力された基本周波数f1は増幅され、更に次段の前記増幅回路部28で出力レベル調整を行った後、前記出力端子42から出力される。
【0026】
この時、前記第1バンドパスフィルタ47、前記第1終端器48は、不要な周波数成分となる基本周波数f1の2倍の周波数を吸収する為、前記増幅回路部28へは基本周波数f1の2倍の周波数は伝達されない。
【0027】
次に、逓倍動作の場合は、前記端子51から切換え信号が前記スイッチ37、前記スイッチ46に入力され、前記逓倍回路部トランジスタ38には前記ベース電源36から電圧Vbが給電され、前記逓倍回路部27には前記第2バンドパスフィルタ49、前記第2終端器50が接続される。
【0028】
前記電圧Vbは、前記逓倍回路部トランジスタ38を非線形領域で動作させるものであり、又前記第2バンドパスフィルタ49は基本周波数f1のみを通過させ、前記第2終端器50は基本周波数f1を吸収する様になっている。
【0029】
前記逓倍回路部トランジスタ38は非線形領域で動作し、前記発振回路部26で発振している基本周波数f1を前記逓倍回路部27へ入力すると基本周波数f1を含む高調波成分の信号が出力される。前記第2バンドパスフィルタ49、前記第2終端器50は基本周波数f1を吸収する為、前記増幅回路部28へは基本周波数f1を除いた高調波成分fxが入力され、前記増幅回路部28で増幅された後、前記出力端子42から出力される。
【0030】
而して、前記発振器25は、前記端子51から前記スイッチ37及び前記スイッチ46に切換え信号を入力することで、第1の周波数帯及び基本周波数f1を除いた基本周波数f1の高調波成分fxの周波数帯域の内、選択された1つの周波数帯域を出力する。
【0031】
図2は、前記発振器25が用いられた無線装置53を示している。尚、図2中、図4中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0032】
図中、55は基本周波数f1及び2次高調波f2を通過させるバンドパスフィルタ、56は端子23から入力される周波数f3と前記基本周波数f1又は前記2次高調波f2とを混合して第1周波数f4(=f1+f3)又は第2周波数f5(=f2+f3)を出力するミキサ、57は増幅器、58は第1周波数f4のみを通過させるバンドパスフィルタ、59は第2周波数f5のみを通過させるバンドパスフィルタ、21は異なる周波数帯を合成する為のダイプレクサを示している。
【0033】
前記発振器25からは基本周波数f1又は2次高調波f2のいずれかが出力される。
【0034】
先ず、基本周波数f1が出力された場合を説明する。
【0035】
増幅動作する様に、切換え信号が与えられ、前記発振器25から基本周波数f1が出力され、基本周波数f1は、前記バンドパスフィルタ55を通過して3次高調波以上の周波数が除去された後、前記ミキサ56へ入力される。該ミキサ56では、前記端子23から入力された周波数f3と基本周波数f1とが混合される。
【0036】
前記ミキサ56から出力される第1周波数f4は前記増幅器57で増幅され、前記バンドパスフィルタ58を通過する。該バンドパスフィルタ58を通過することで、第1周波数f4以外の不要な周波数成分が除去され、異なる周波数帯を合成する為の前記ダイプレクサ21へ入力される。この結果、前記アンテナ22からは、基本周波数f1に前記端子23から入力された周波数f3を加えた第1周波数f4のみが放射される。
【0037】
次に、前記発振器25が、逓倍動作する様切換え信号が与えられ、前記発振器25からは基本周波数f1を除いた基本周波数f1の高調波成分fxが出力される。
【0038】
基本周波数f1を除いた基本周波数f1の高調波成分fxは前記バンドパスフィルタ55を通過して3次高調波以上の高調波成分を除去され、第2の周波数となる基本周波数f1の2次高調波f2のみが前記ミキサ56へ入力される。該ミキサ56では、前記端子23から入力された周波数f3と混合され、第2周波数f5が出力される。第2周波数f5は、前記増幅器57で増幅され、前記バンドパスフィルタ59を通過することで第2周波数f5以外の不要な周波数成分が除去される。増幅された第2周波数f5は異なる周波数帯を合成する為の前記ダイプレクサ21へ入力される。この結果、前記アンテナ22から2次高調波f2に周波数f3を加えた第2周波数f5のみが放射される。
【0039】
上記した様に、本発明では2つの異なる周波数帯を1つの前記発振器25で出力でき、発振器、ミキサ、増幅器等で構成される回路網は1系統でよく、構成が簡単となり、小型化、コストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係る発振器を示す回路図である。
【図2】本発明に係る発振器を具備した無線装置を示す回路図である。
【図3】従来の発振器を示す回路図である。
【図4】従来の無線装置を示す回路図である。
【符号の説明】
【0041】
25 発振器
26 発振回路部
27 逓倍回路部
28 増幅回路部
29 共振子
35 ベース電源
36 ベース電源
37 スイッチ
38 逓倍回路部トランジスタ
46 スイッチ
48 第1終端器
49 第2バンドパスフィルタ
50 第2終端器
51 端子
55 バンドパスフィルタ
56 ミキサ
57 増幅器
58 バンドパスフィルタ
59 バンドパスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振回路部から発せられる基本周波数を逓倍回路部を介して出力する様にし、該逓倍回路部に給電する電圧を2つの異なる電圧に切換え可能とし、1つの電圧では前記逓倍回路部が増幅作動する様にし、他の電圧では該逓倍回路部が逓倍作動する様構成し、2つの周波数帯を択一的に発信可能としたことを特徴とする無線装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−28276(P2010−28276A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184746(P2008−184746)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】