説明

無線装置

【課題】可動式のアンテナで通信品質の低下を招かないように最適な通信位置を把握して実際の通信を常に高品質で行うこと。
【解決手段】アンテナ駆動部12に測定用アンテナ136を回動移動させながら最適通信状況を検索し、この最適通信状況が通信用アンテナ13aで受信された通信状況よりも高品質であれば、アンテナ駆動部12により当該通信用アンテナ13aをその最適通信状況受信時のアンテナ角度位置に移動させる制御を行う制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式のアンテナを備え、このアンテナの位置を通信の良好な位置に自動的に移動可能な無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動式のアンテナを備える無線装置として特許文献1に記載の無線カード端末がある。この無線カード端末は、0〜90度の回転角度で可動する可動式アンテナを有し、この可動式アンテナを自動制御し、アンテナを角度0〜90度の全可動ポイントでRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)や、CINR(Carrierto Interferenceand Noise Ratio:搬送波レベル対干渉・雑音比)を測定することで受信状況を把握し、その中で最も受信状況が良いと思われるポイントにアンテナを移動させ、高品質な受信を実現している。
【0003】
また、現在のアンテナ位置でRSSIやCINRの値が変化し、設定した閾値を下回った場合には、再びアンテナの全可動ポイントにおいてRSSI及びCINRの測定を行い、最適なアンテナ位置を再決定することで、時々刻々と変化する通信状況に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−74715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の無線カード端末においては、最適な通信状況の把握と実際の通信を1本のアンテナで行っている。このため、最適なアンテナ位置で通信を行っていても、通信状況が悪くなってきた場合に、アンテナを再度全可動ポイントに移動させて通信状況を把握する必要がある。この把握の最中に、通信状況が悪いアンテナ位置でも通信を行う可能性があるため、この場合、通信品質が低下してしまうという問題がある。
【0006】
また、見通しのよい場所での通信であれば、通信状況が大きく変化することが少ないため、アンテナ位置を変更する制御は起こりづらいが、見通しが悪い場所では、通信状況が時々刻々と変化するため、アンテナの最適位置を見つける制御が増加する。このため、必然的に通信品質の低下が生じる。
【0007】
また、無線カード端末では、主にRSSIとCINRを用いて通信状況の把握を行っているが、基地局と無線カード端末との通信状況の把握において、例えば第3世代携帯電話方式のデータ通信を高速化した規格であるHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)や、新たな携帯電話の通信規格であるLTE(Long Term Evolution)においては、CQI(Channel Quality Indivator:チャネル品質指数)を元にして、使用する変調方式を高速な方式を使用するか、低速な方式を使用するかを判断している。このような通信規格の場合、RSSIとCINRだけでは通信状況の把握としては充分とは言えず、結果的に通信品質が低下してしまう場合が考えられる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、可動式のアンテナで通信品質の低下を招かないように最適な通信位置を把握して実際の通信を常に高品質で行うことができる無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために本発明は、通信用アンテナと、測定用アンテナと、前記通信用アンテナおよび前記測定用アンテナを駆動するアンテナ駆動部と、前記測定用アンテナの可動域における通信状況に応じて前記測定用アンテナの位置または前記位置のそばに前記通信用アンテナが位置するようにアンテナ駆動部を制御する制御部とを備えるよう構成される。
【0010】
本発明において、前記制御部は、前記アンテナ駆動部に、前記可動域の内の複数の所定位置に、前記測定用アンテナを移動させるように第1制御を行うと共に、前記所定位置で測定された通信状況が、前記通信用アンテナの現在の通信状況より良い場合、前記所定位置で測定された位置または前記位置のそばに前記通信用アンテナが位置するように第2制御を行うよう構成される。
【0011】
本発明において、前記制御部は、前記第1制御を所定時間間隔で行うよう構成される。
【0012】
本発明において、前記通信状況は、受信信号強度を示すRSSI、搬送波レベル対干渉・雑音比を示すCINR、チャネル品質指数を示すCQIであるよう構成される。
【0013】
本発明において、前記制御部は、前記通信用アンテナで受信された通信状況が所定の閾値以下となったときに前記第1制御を行うよう構成される。
【0014】
本発明において、前記制御部は、前記最適通信状況に1未満の比率をかけて前記閾値を算出するよう構成される。
【0015】
本発明において、前記制御部は、前記最適通信状況から所定の劣化量を減算することによって前記閾値を算出するよう構成される。
【0016】
本発明において、前記制御部は、前記閾値を、前記測定用アンテナで受信された通信状況において最適通信状況の次に良かった通信状況を前記閾値として設定するよう構成される。
【0017】
本発明において、前記制御部は、前記測定用アンテナの可動域のうち最適な通信状況の前記測定用アンテナの位置または前記位置のそばに前記通信用アンテナが位置するようにアンテナ駆動部を制御するよう構成される。
【0018】
本発明において、通信用アンテナおよび測定用アンテナは、共通の軸を基準に回動して隣り合うよう配備されるよう構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、可動式のアンテナで通信品質の低下を招かないように最適な通信位置を把握して実際の通信を常に高品質で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は実施形態に係る無線装置としてのPCカードの外観構成を示す斜視図、(b)はPCカードの平面及び一部を透視した平面透視図である。
【図2】PCカード本体の構成を示すブロック図である。
【図3】PCカードの測定用アンテナの回動角度を示す図である。
【図4】PCカードにおける制御部の位置情報テーブルを示す図である。
【図5】PCカードの通信用アンテナ及び測定用アンテナの動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】無線装置であるPCカード10の動作の第2実施形態について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適時省略する。
【0022】
(実施形態の構成)
図1(a)は実施形態に係る無線装置としてのPCカード10の外観構成を示す斜視図、(b)はPCカード10の平面及び一部を透視した平面透視図である。
【0023】
図1(a)に示すように、PCカード10は、パーソナルコンピュータ(PC)等のホスト装置20に設けられたカード挿入口20aに矢印Y1で示すように着脱自在となっており、通信時にカード挿入口20aに装着して使用される。なお、ホスト装置20は、PCカード10に接続可能であれば、PC以外の装置であってもよい。PCカード10は、例えば、WiMAX(WorldwideInteroperabilityforMicrowaveAccess)データ通信、PHS(PersonalHandy−phoneSystem)データ通信や、携帯電話網を利用したデータ通信などを行うモバイル端末装置である。
【0024】
図1(b)に示すように、PCカード10は、PCカード本体11と、アンテナ駆動部12と、実際の通信を行う可動式の通信用アンテナ13aと、RSSI、CINR及びCQI等による通信状況の測定を行う可動式の測定用アンテナ13bとを備える。
【0025】
アンテナ駆動部12は、その内部に、2つのモータM1,M2を備え、通信用アンテナ13a及び測定用アンテナ13bを次のように駆動させる。一方のモータM1は、この回転軸が通信用アンテナ13aの基端部に取り付けられており、モータM1の回転によって通信用アンテナ13aを所定の角度範囲、例えば双方向矢印Y2、Y3で示すように0〜90度(又は°と表現)の範囲で回動移動させる。他方のモータM2は、この回転軸が測定用アンテナ13bの基端部に取り付けられており、モータM2の回転によって測定用アンテナ13bを通信用アンテナ13aと同角度範囲で回動移動させる。つまり、通信用アンテナ13aと測定用アンテナ13bとは、各モータM1,M2によって別々に移動される。なお、通信用アンテナ13a及び測定用アンテナ13bが移動可能な範囲を全可動ポイントともいう。
【0026】
PCカード本体11は、図2に示すように、データIF(インターフェース)14と、制御部15と、無線部16と、アンテナ位置制御部17a,17bとを備えて構成され、これら構成要素はバス接続されている。
【0027】
データIF14は、ホスト装置20のデータIF21に接続され、ホスト装置20との間で各種データを遣り取りする。
【0028】
無線部16は、データを無線信号にて送受信する送受信手段であり、ホスト装置20からデータIF14に転送されたデータを通信用アンテナ13aから発信させ、通信用アンテナ13aで受信されたデータをデータIF14へ出力する。この出力されたデータはデータIF14からホスト装置20へ転送される。また、無線部16は、通信状況の測定時に測定用アンテナ13bによる電波の送受信を行う。
【0029】
アンテナ位置制御部17aは、制御部15のアンテナ移動指示に応じてモータM1の回動を制御することにより通信用アンテナ13aを0度〜90度の範囲で移動させる制御(第2制御)を行う。アンテナ位置制御部17bは、制御部15のアンテナ移動指示に応じてモータM2の回動を制御することにより測定用アンテナ13bを0度〜90度の範囲で移動させる制御(第1制御)を行う。
【0030】
制御部15は、記憶手段としての位置情報テーブル15a及び記憶部15bを備え、アンテナ位置制御部17bに通信状況測定時のアンテナ移動指示を行って、図3に示すように測定用アンテナ13bを0〜90度の全可動ポイントで移動させながら、RSSI、CINR、CQIの通信状況を取得し、図4に示すように位置情報テーブル15aに、その取得した全可動ポイントのアンテナ角度情報(0°,a°,b°,...90°)に通信状況情報(RSSI,CINR,CQI)を対応付けて記憶する。この記憶は、通信の初期時には測定用アンテナ13bで受信された通信状況情報がそのまま記憶されるが、2回目以降は上書きされる。
【0031】
更に、制御部15は、その各アンテナ角度位置での通信状況情報の記憶後、この記憶された通信状況情報の中から最適な通信状況情報を判別し、この最適通信状況情報とこの際のアンテナ角度情報とを対応付けて記憶部15bに記憶する。
【0032】
また、制御部15は、現在の通信用アンテナ13aで受信されるRSSI,CINR,CQIの通信状況を取得し、この取得された通信状況情報と、先に記憶部15bに記憶された測定用アンテナ13bでの最適通信状況情報とを比較し、この結果、取得通信状況情報の方が良ければ通信用アンテナ13aをそのままのアンテナ角度位置とし、最適通信状況情報の方がよければこの最適通信状況情報に対応付けられたアンテナ角度情報で示されるアンテナ角度に通信用アンテナ13aを移動させる制御を行う。
【0033】
(第1実施形態の動作)
次に、PCカード10の通信用アンテナ13a及び測定用アンテナ13bの動作を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。まず、制御部15によってアンテナ位置制御部17bに測定用アンテナ13bによる全可動ポイントでの通信状況の測定指示が行われる。この指示に応じてアンテナ位置制御部17bにより、測定用アンテナ13bが0〜90度における例えば5°刻みの角度で移動するようにモータM2が回動制御される。これによって測定用アンテナ13bが0°から5°刻みで順次移動し、これら移動時に測定用アンテナ13bでRSSI,CINR,CQIの通信状況が受信される(ステップS1)。
【0034】
この受信された通信状況情報は無線部16を介して制御部15に送られ、その通信状況情報受信時のアンテナ角度情報に対応付けられて、図4に示すように位置情報テーブル15aに記憶される。この記憶は初期時にはそのまま情報が記憶され、2回目以降は上書きされる(ステップS2)。
【0035】
この記憶は例えばアンテナ角度が0°の際にRSSIが−60dBm、CINRが1dB、CQIが3であり、5°の際にRSSIが−55dBm、CINRが1.1dB、CQIが10、10°の際にRSSIが−540dBm、CINRが1.1dB、CQIが25、...、90°の際にRSSIが−40dBm、CINRが3dB、CQIが30である。
【0036】
次に、制御部15によって、ステップS2の位置情報テーブル15aへの記憶後、その記憶された通信状況情報の中から最適な通信状況情報が選択され、この選択された最適通信状況情報とこの際のアンテナ角度情報とが対応付けられて記憶部15bに記憶される。この記憶は初期時にはそのまま情報が記憶され、2回目以降は上書きされる(ステップS3)。このステップS3の記憶処理後、予め定められた一定時間後、ステップS1に戻って上記ステップS3までの処理が行われる。
【0037】
次に、制御部15によって、現在の通信用アンテナ13aで受信されるRSSI,CINR,CQIの通信状況が測定されて取得される(ステップS4)。更に制御部15では、その取得された通信状況情報と、ステップS3で記憶部15bに記憶された測定用アンテナ13bでの最適通信状況情報とが比較され、この結果、取得通信状況情報の方が良い(高品質)と判断された場合は、通信用アンテナ13aはそのままのアンテナ角度位置とされる(ステップS5)。このステップS5の後、上記ステップS3において新たな最適通信状況情報が記憶された後に、ステップS1に戻って上記ステップS4までの処理が行われる。
【0038】
一方、ステップS5の結果、取得通信状況情報の方が悪い(低品質)と判断された場合、言い換えれば、記憶部15bに記憶された測定用アンテナ13bでの最適通信状況の方がよいと判断された場合、制御部15によってその最適通信状況情報に対応付けられたアンテナ角度(例えば90°)に通信用アンテナ13aを移動する指示がアンテナ位置制御部17aに行われる。この指示に応じてアンテナ位置制御部17aにより、通信用アンテナ13aが90°のアンテナ角度に移動するようにモータM1が回動制御され、これによって通信用アンテナ13aが90°のアンテナ角度に移動する(ステップS6)。この移動後、通信用アンテナ13aは実通信を行う(実施形態の効果)。
【0039】
このように本実施形態のPCカード10は、実際の通信を行う可動式の通信用アンテナ13aと、無線通信の通信状況を測定する測定用アンテナ13bと、通信用アンテナ13a及び測定用アンテナ13bを別々に回動移動させるアンテナ駆動部12と、アンテナ駆動部12に測定用アンテナ13bを所定の角度範囲で回動移動させるように第1制御を行うと共に、アンテナ駆動部12に通信用アンテナ13aを所定の角度位置に回動移動させるように第2制御を行うアンテナ位置制御部17とを備える。
【0040】
更に、アンテナ位置制御部17に第1制御を行う指示を行い、この指示で測定用アンテナ13bが所定の角度範囲を移動しながら受信した通信状況の情報を取得し、この取得した各通信状況情報の中の最適通信状況情報を、この受信時のアンテナ角度情報に対応付けて記憶手段に記憶し、通信用アンテナ13aで受信される通信状況を取得し、この取得された通信状況情報が記憶手段に記憶された最適通信状況情報よりも高品質であれば通信用アンテナ13aをそのままのアンテナ角度位置とし、上記の取得された通信状況情報が最適通信状況情報よりも低品質であれば第2制御の指示を行って通信用アンテナ13aを当該最適通信状況情報に対応付けられたアンテナ角度情報で示されるアンテナ角度に移動させる制御を行う制御部15とを備えて構成されている。
【0041】
つまり、アンテナ位置制御部17及び制御部15による制御手段は、測定用アンテナ13bで最適通信状況を検索しながら、この最適通信状況が通信用アンテナ13aで受信された通信状況よりも高品質であれば、通信用アンテナ13aをその最適通信状況受信時のアンテナ角度位置に移動させる制御を行う。これによって、通信状況が悪化する前にアンテナ角度位置を変更して、通信品質を低下させることなく通信を行うことが可能となる。
【0042】
また、制御部15は、上記の第1制御を所定時間間隔で行う。この場合、測定用アンテナ13bを必要最小限の駆動時間に収めることができるので、アンテナ駆動部12の高寿命化を図ることが出来る。
【0043】
更に、通信状況は、受信信号強度を示すRSSI、搬送波レベル対干渉・雑音比を示すCINR、チャネル品質指数を示すCQIとした。この場合、CQIも通信状況として用いて判断しているので、RSSI,CINRが同値を示すアンテナ角度位置が検出されたとしても、より高速な変調方式を使用することができる通信路を選択することができ、より通信品質を高めることができる。
【0044】
(第2実施形態の動作)
上述したように第1実施形態の動作によれば、測定用アンテナ13bによって最適な通信位置を把握し、可動式の通信用アンテナ13aをその最適な通信位置に移動させることにより、無線通信の通信状況を測定している最中においても通信用アンテナ13aの通信品質の低下を招くことなく、常に高い通信品質を確保することができる。
【0045】
ここで、ホスト装置であるPC20が移動していない場合、それに装着されるPCカード10も当然にして移動することはなく、PCカード10の通信状況ひいては通信品質にはあまり変化が生じない。しかしながら、第1実施形態の構成であると、測定用アンテナ13bは、このように通信品質にあまり変化が生じない場合であっても常時通信状況の測定(ステップS1)を行うため、無駄な動作が多くなり、消費電力の増大を招いてしまう。
【0046】
そこで第2実施形態では、通信品質(通信状況)があまり変化しない場合におけるPCカード10の通信用アンテナ13a及び測定用アンテナ13bの動作について説明する。図6は、無線装置であるPCカード10の動作の第2実施形態について説明するフローチャートである。なお、以下の説明では、第1実施形態と共通の動作については同一の符号を付して略載する。
【0047】
図6に示すように、第2実施形態の動作においても、まず第1実施形態の動作と同様に、制御部15(アンテナ位置制御部17b)は、測定用アンテナ13bによる全可動ポイントでの通信状況の測定を行い(ステップS1)、測定された通信状況(通信状況情報)を、その通信状況情報受信時のアンテナ角度(アンテナ角度情報)に対応付けて、位置情報テーブル15a(図4参照)に記憶する(ステップS2)。そして、制御部15は、位置情報テーブル15aに記憶された通信状況情報の中から最適な通信状況(最適通信状況情報)を選択して、かかる最適通信状況情報およびこの際のアンテナ角度を対応付けて記憶部15bに記憶する(ステップS3)。
【0048】
次に、本実施形態の1つめの特徴として、制御部15は通信状況の閾値を設定し、記憶部15bに記憶する(ステップS102)。このステップS102において、制御部15は、最適通信状況に1未満(例えば0.8等)の比率をかけて算出し、この値を閾値としてもよい。また閾値としては、最適通信状況から所定の劣化量(例えば3dB)を減算した値を用いてもよいし、更に例えば、ステップS1において測定用アンテナで受信された通信状況において、最適通信状況の次に良かった通信状況を閾値としてもよい。
【0049】
続いて、制御部15は、通信用アンテナ13aを、ステップS3で記憶部15bに記憶された測定用アンテナ13bでの最適通信状況情報に対応付けられたアンテナ角度に移動する(ステップS104)。そして、制御部15は、通信用アンテナ13aで受信されるRSSI,CINR,CQIなど、すなわち現在の通信状況を測定する(現在通信状況情報を取得する)(ステップS4)。
【0050】
ステップS4において現在通信状況を取得したら、本実施形態の2つめの特徴として、制御部15は、ステップS4で取得された現在通信状況情報と、ステップS102で記憶部15bに記憶された閾値とを比較する(ステップS106)。この結果、現在通信状況情報が閾値以下でない場合(現在通信状況情報が閾値を越えている場合)、換言すればステップS4で取得された現在通信状況情報の方が良い(高品質である)と判断された場合(ステップS106のNO)、制御部15は、通信用アンテナ13aをそのままのアンテナ角度とし(アンテナ角度を変更せず)、ステップS4に戻って現在通信状況情報の取得を継続する。
【0051】
一方、現在通信状況情報が閾値以下であった場合、換言すればステップS102で記憶部15bに記憶された閾値の方が良い(高品質である)と判断された場合(ステップS106のYES)、ステップS1に戻る。そして、制御部15は、測定用アンテナ13bを動かして通信状況の測定し(ステップS1)、測定された通信状況およびそのときのアンテナ角度を記憶することにより位置情報テーブル15aを更新し(ステップS2)、位置情報テーブル15aから選択した最適通信状況とそのときのアンテナ角度情報とを対応付けて記憶部15bに記憶することによりそれらを更新する(ステップS3)。すると、ステップS102では、更新された最適通信状況に基づいて新たな閾値が設定され(閾値が更新され)、ステップS104では、通信用アンテナ13aが、ステップS3で更新された最適通信状況に対応付けられたアンテナ角度に移動する。
【0052】
以上説明したように第2実施形態の動作によれば、測定用アンテナ13bを所定の角度範囲で回動移動させる第1制御(ステップS1)は、通信開始時に行われた後は、ステップS4において通信用アンテナ13aで受信される現在通信状況が所定の閾値以下となったときにのみに行われる。換言すれば本実施形態では、制御部15は、通信用アンテナ13aの現在位置での通信状況(現在通信状況)が、通信開始時以降に所定の閾値以下にならない限りは、通信用アンテナ13aおよび測定用アンテナ13bを回転移動させないように制御する。
【0053】
上記構成によれば、通信状況の変化が少ない場合には通信用アンテナ13aおよび測定用アンテナ13bを動作させないことにより、無駄な動作ひいては消費電力の抑制が図れる。一方、PCカード10(無線装置)の移動により通信状況が頻繁に変化する際には、測定用アンテナ13bの第1制御によって常に最適な通信状況を確保することができる。
したがって、良好な通信品質の確保、および消費電力の削減の両立を図ることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10...PCカード、11...PCカード本体、12...アンテナ駆動部、13a...通信用アンテナ、13b...測定用アンテナ、14...データIF、15...制御部、15a...位置情報テーブル、15b...記憶部、16...無線部、17a...アンテナ位置制御部、17b...アンテナ位置制御部、20...ホスト装置、20a...カード挿入口、21...データIF


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信用アンテナと、
測定用アンテナと、
前記通信用アンテナおよび前記測定用アンテナを駆動するアンテナ駆動部と、
前記測定用アンテナの可動域における通信状況に応じて前記測定用アンテナの位置または前記位置のそばに前記通信用アンテナが位置するようにアンテナ駆動部を制御する制御部と
を備える無線装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記アンテナ駆動部に、前記可動域の内の複数の所定位置に、前記測定用アンテナを移動させるように第1制御を行うと共に、前記所定位置で測定された通信状況が、前記通信用アンテナの現在の通信状況より良い場合、前記所定位置で測定された位置または前記位置のそばに前記通信用アンテナが位置するように第2制御を行う請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1制御を所定時間間隔で行う請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記通信状況は、受信信号強度を示すRSSI、搬送波レベル対干渉・雑音比を示すCINR、チャネル品質指数を示すCQIであることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記通信用アンテナで受信された通信状況が所定の閾値以下となったときに前記第1制御を行う請求項2の記載の無線装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記最適通信状況に1未満の比率をかけて前記閾値を算出することを特徴とする請求項5に記載の無線装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記最適通信状況から所定の劣化量を減算することによって前記閾値を算出することを特徴とする請求項5に記載の無線装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記閾値を、前記測定用アンテナで受信された通信状況において最適通信状況の次に良かった通信状況を前記閾値として設定することを特徴とする請求項5に記載の無線装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記測定用アンテナの可動域のうち最適な通信状況の前記測定用アンテナの位置または前記位置のそばに前記通信用アンテナが位置するようにアンテナ駆動部を制御する請求項1に記載の無線装置。
【請求項10】
通信用アンテナおよび測定用アンテナは、共通の軸を基準に回動して隣り合うよう配備されている請求項1に記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−17156(P2013−17156A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−56129(P2012−56129)
【出願日】平成24年3月13日(2012.3.13)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】