説明

無線通信システム、送信機及び受信機

【課題】無線通信システムに係わり、無線通信環境に応じた受信側での表示映像等の品質低下を抑制または改善等できる技術を提供する。
【解決手段】本無線通信システムにおいて、送信機100では、無線伝送路の混雑度(空き時間率)を検出し、その検出結果に応じて、受信機110へ伝送する映像データの符号化レートを変更する。また対応して、受信機110は、受信映像データに対し、画質改善処理(超解像処理など)を施すか否かを切り替え制御する。例えば、混雑時に送信側で低レートに変更して伝送したデータを、受信側で画質改善処理して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線により映像や音声等のデータ(信号)を伝送するシステム(無線通信システム)に関し、特に、映像レート制御や画像処理などに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANをはじめとした近距離無線通信システムは、インターネット接続の広がりと相俟ってオフィス等から家庭内に至るまで急速に普及が進んでいる。その用途も近年ではコンピュータ間のファイル転送に留まらず、AV機器を結んで映像や音声の配信に利用する需要が高まっている。
【0003】
一方で、無線伝送時の伝送品質は、有線に比べ、通信環境(伝送路環境、周囲環境)による影響を大きく受けることが知られている。一般に高い伝送品質を必要とする映像や音声は、環境の影響により所望の品質での無線伝送が困難な場合がある。例えば、無線LANなどで使われるアクセス方式であるCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance)を用いた場合、近隣で同種の機器が同じ周波数を使って動作すると、それが干渉となって働く。これにより無線伝送のスループットが大きく低下し、無線伝送後の映像や音声の品質に重大な支障をきたす。即ち、無線伝送品質(無線伝送路での干渉や混雑等)に由来して、受信映像における乱れや停止などの破綻が発生し、品質が大きく低下する。
【0004】
こうした映像乱れ等の品質低下を抑えるための一つの方法として、以下のような技術(映像レート制御技術、第1の技術とする)が知られている。この技術では、変化する通信環境に合わせて、送信(伝送)する映像等のレート(圧縮率等)を変化させることにより、通信環境で実際に伝送するデータの量を調整する。これにより受信側での品質低下を抑制する。この技術では、特に、通信環境(無線伝送路状況)が悪い場合には(通信環境の悪化に応じて)、映像レート制御により、送信する映像データ(ストリームデータ)の圧縮率を高く(符号化レートを低く)して伝送する。これにより無線伝送路で伝送するデータ量を減少させる。また一方、通信環境が良好な場合には、当該映像データの圧縮率を低く(符号化レートを高く)して伝送する。
【0005】
上記のような技術は、例えば、特開2002−204278号公報(特許文献1)、特開2004−153610号公報(特許文献2)に記載されている。
【0006】
しかしながら、上記のような技術では、レートを低下させた映像データは、受信側(受信機)で当該映像を表示する際の品質(画質)も当然低下することとなり、視聴者の満足度を低下させることは否めない。
【0007】
一方、低画質の画像から高画質の画像を得る技術として、超解像処理技術(第2の技術とする)が知られている。この技術は、時間軸又は空間軸上で近い条件の複数の低解像度の画像から1枚の高解像度の画像を合成して得るものである。この技術については、例えば特開平8−336046号公報(特許文献3)に記載されている。また、この技術の応用として、動画像(映像)データ中の複数のフレーム(画像)を用いて、より高画質のフレームのデータを得ることにより、動画像の高画質化を実現する方法が知られている。
【特許文献1】特開2002−204278号公報
【特許文献2】特開2004−153610号公報
【特許文献3】特開平8−336046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来技術において、無線により映像等(映像データ等)を送信(伝送)する際、周囲環境(伝送路状況の悪化)により所望の伝送レートが得られないことがあり、この場合、受信映像等に乱れや停止等の破綻や画質劣化等が発生する。これを防ぐために上記映像等の伝送レート(符号化レート)を低く設定した場合には、受信映像等の品質が低下し、視聴者の満足度を低下させる。
【0009】
換言すれば、前記第1の技術において、周囲環境に応じて、受信映像が破綻等しないように、送信側(送信機)で、送信(伝送)する映像等のレートを制御(低い符号化レートへの変更等)した場合には、受信側(受信機)で、表示(再生)する映像等の品質が低下することとなる。
【0010】
本発明は以上のような問題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、無線通信システムに係わり、無線通信環境(無線伝送路状況)に応じた受信側での表示映像等の品質低下を抑制または改善等できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。前記目的を達成するために、代表的な実施の形態は、送信機(送信側)と受信機(受信側)の間で無線により映像等のデータ(信号)を伝送(送受信)する無線通信システムの技術であって、以下に示す構成を有することを特徴とする。
【0012】
本無線通信システムでは、無線通信環境(周囲環境)に応じて、送信側から受信側へ伝送(送信)する対象データ(特に映像データ)のレート(画質)を変更する処理制御(前記第1の技術(映像レート制御技術)に対応した第1の処理制御)を、例えば送信側が行う。そして、その第1の処理制御に対応して、受信側では、受信した対象データに対し、そのレートに応じて、当該データの表示(再生)等における画質の改善(回復)のための処理を施す処理制御(前記第2の技術(超解像処理技術)に対応した第2の処理制御)を行う。これらにより、無線通信環境における伝送効率(伝送データ量の調整)と共に、受信側での映像表示等の品質(画質)の低下が抑制または改善される。
【0013】
本無線通信システムでは、例えば、送信側(送信機)には、無線伝送路(自機及び周辺の他機が使用する無線周波数)等の状況(干渉や混雑(空き)等)を検出または測定等する手段と、その検出の結果に応じて、対象データ(映像データ等)の伝送レート(符号化レート、圧縮率など)を変更する手段と、を有する。
【0014】
また、送信側の構成と対応して、受信側(受信機)には、受信した対象データに対する画質改善処理(超解像処理等)を施す手段と、その処理を施すか否か(オン/オフ)の切り替え等を制御する手段と、を有する。
【0015】
前記レートを変更する手段では、例えば、映像ソースまたは符号化映像データ等の切り替え(選択)、あるいは符号化処理の符号化レートの変更等を行う。
【0016】
前記画質改善処理の手段では、例えば、受信映像データを構成する画像(フレーム)群に対し、超解像処理(フレーム単位の解像度変換処理)、フレームレート変換処理などを行う。超解像処理では、複数の低解像度の画像から1つの高解像度の画像を得る処理を施す。
【0017】
本システムにおける処理動作(例えば送信機から受信機への映像データの伝送)及び制御は、例えば以下である。送信機では、第1の処理制御として、送信機と受信機の間の無線伝送路(使用する無線周波数チャネル(電波))の状況として混雑度を検出し、混雑度が低い(即ち状況が良好な)場合には、対象データの伝送レートを相対的に高くして(例えば元の高レートのままで)送信する。そしてその場合、受信機では、第2の処理制御として、受信対象データに対する画質改善処理(超解像処理等)をオフする。また、送信機では、第1の処理制御として、上記状況として混雑度が高い(即ち状況が悪い)場合には、対象データの伝送レートを相対的に低くして(例えば元の高レートから低レートへ変更して)送信する。そしてその場合、受信機では、第2の処理制御として、受信対象データに対する画質改善処理(超解像処理等)をオンすることにより、表示映像の画質を上げる(少なくとも伝送レート(受信映像データのレート)よりも表示時のレート(画質)を高くする)。
【0018】
上記により、前記第1の処理制御で通信環境(その変化)に合わせて対象データの伝送レートを変化させることにより、無線伝送時の伝送効率(伝送データ量の調整)が実現され、また、受信側での受信以後には、前記第2の処理制御で画質改善することにより、元の高レートまたは画質改善後のレートでの表示映像が得られる。
【0019】
本システムは、例えば、送信機と受信機の間で無線により映像等のデータを伝送する無線通信システムであって、前記送信機は、当該送信機と前記受信機の間の無線伝送路の状況に応じて、前記受信機へ送信する第1の映像データの符号化レートを変更し、前記受信機は、前記送信機から受信した前記第1の映像データに対しそのレートに応じて、フレーム単位で画素間を補完して解像度を上げる超解像処理を含む画質改善処理を施すものであり、前記無線伝送路の状況が良好でない場合に、前記送信機では、前記第1の映像データの符号化レートを低く変更して伝送し、それに対応して、前記受信機では、前記超解像処理を含む画質改善処理をオンすること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。代表的な実施の形態によれば、無線通信システムに係わり、無線通信環境(無線伝送路状況)に応じた受信側での表示映像等の品質低下を抑制または改善等できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
(実施の形態1)
図1,図2を用いて、本発明の実施の形態1の無線通信システムを説明する。図1において、実施の形態1の無線通信システムにおける機能ブロック構成を示している。なお、実施の形態1では、アクセス制御に、無線LANで用いられるCSMA/CAを採用した無線通信システムとする。本システムは、無線通信を行う送信機100と受信機110を含んで成る。送信機100は、符号化レート変更部101、ベースバンド部102、無線送信部103、アンテナ(送信アンテナ)104、アンテナ(受信アンテナ)105、無線受信部106、制御部107を有する。受信機110は、アンテナ111、無線受信部112、ベースバンド部113、映像復号部114、超解像処理部115及びスイッチ116,117(画質改善部118)等を有する。受信機110には例えば表示部(ディスプレイ)120が接続されている。
【0023】
図1を用いて、本システムにおける処理等の全体の流れを説明する。本処理は、送信機100から受信機110への無線伝送路(無線周波数チャネル)を通じた映像データ等の伝送(送信)、及び受信機110での当該受信した映像データ等の表示(再生)、等である。
【0024】
送信機100には、映像ソース108が入力される。映像ソース108は特に限定されない。符号化レート変更部101では、制御部107からの指示(制御)に応じて、映像ソース108に対し、当該映像を構成する各フレーム(画像)の解像度を変換する処理(符号化レートを変更する処理)を施す。これにより、無線伝送路で伝送すべき映像データ量を調整するものである。制御部107から符号化レート変更部101へは、映像レート指示の信号(A3)を入力する。制御部107の指示等については後述する。
【0025】
送信機100は、符号化レート変更部101の後、ベースバンド部102及び無線送信部103での処理を通じて、アンテナ104から当該映像データ109(伝送無線信号:パケットまたはそれ以外の電波等)を無線送信する。無線送信部103では、当該映像データ109(パケット等)を当該送信機100から無線送信開始及び終了したタイミング(自機送信タイミング)を、制御部107に通知する。無線送信部103から制御部107へは、その自機送信タイミングの信号(A1)を入力する。
【0026】
一方、送信機100のもう一つのアンテナ105では、送信機100と受信機110の間の無線伝送路(無線周波数チャネル)に関係する電波を受信する。アンテナ105では、当該送信機100の近隣に存在する機器(無線通信機器)における当該送信機100が伝送に使用する無線周波数チャネルに含まれる無線周波数を用いるパケット及びそれ以外の電波を受信する。そして、アンテナ105から、無線受信部106を通じて、その受信開始及び終了タイミング(他機送信タイミング)を、制御部107に他機送信タイミングの信号(A2)として通知する。換言すれば、送信機100は、CSMA/CAに基づくキャリアセンス(送信機100が使用する無線周波数チャネル内の電波の検出)を行うことにより、他機送信タイミングの情報を得る。
【0027】
実施の形態1では、送信機100に送受それぞれのアンテナ104,105を備える構成としたが、これに限らず、送受兼用のアンテナを設ける構成などとしてもよい。
【0028】
以上により、制御部107には、送信機100の周囲環境の関連する電波の情報が集まることとなる。この情報は、送信機100で受信できる範囲に位置し送信機100の使用する無線周波数チャネルと同様の無線周波数の電波を用いて通信等を行うすべての機器についての送信開始及び終了タイミングの情報である。これにより、制御部107は、時間軸上で、送信機100(自機)が送信に用いた時間(自機送信時間)及び他機が送信に用いた時間(他機送信時間)を、算出できる。この情報(時間)は、送信機100が対象データの伝送に使用する無線周波数の混雑具合の指標(混雑度)となる。即ち、制御部107は、使用する無線伝送路(無線周波数)における干渉や混雑(空き)の状況を、混雑度(空き時間率)として検出及び把握することができる。
【0029】
上記情報に基づいて、制御部107は、その混雑度に応じた符号化レート(伝送レート)を、信号(A3)として、符号化レート変更部101に指示することができる。例えば、制御部107は、混雑度が大きい場合(空き時間率が小さい場合)は、低い符号化レートを指示し、混雑度が小さい場合(空き時間率が大きい場合)は、高い符号化レートを指示する。
【0030】
以上により、送信機100では、受信機110への映像データ109の伝送レートに関し、周辺機器からの無線干渉によりCSMA/CAによる送信機会が十分とれないとき(混雑度が大きい場合)には、低い符号化レートに変更して送信し、そうでないとき(混雑度が小さい場合)には、高い符号化レートのまま送信することができる。その結果、無線伝送における映像データ109のパケットの損失や廃棄を抑制しつつ、受信機110へ当該映像データ109を届けることができる。
【0031】
図2を用いて、送信機100での処理制御について更に詳細に説明する。図2において、送信機100の制御部107における無線伝送路状況検出及び符号化レート指示(機能切り替え動作)の処理フローを示している(なおSは処理ステップを表す)。
【0032】
制御部107から符号化レート変更部101への制御及び指示は、例えば以下のように実現可能である。制御部107は、周囲環境において、一定観測時間中で、送信機100(自機)を含むすべての機器について、無線送信を行わなかった時間の割合(空き時間率)を算出し、この値を予め定めた閾値と比較し、この閾値よりも大きい場合には、高い符号化レートを指示し、逆に小さい場合には、低い符号化レートを指示する。これは詳しくは以下のような処理になる。
【0033】
S201では、制御部107は、以下のような空き時間率算出処理(混雑度算出処理)を行う。前述のように、制御部107には、無線伝送路の状況、即ち、送信機100(自機)が無線送信を行っている時間、及び自機と同様の周波数を用いる周辺機器(他機)が無線送信を行っている時間の情報が集められる。ここで、時間軸上、現時点t0(t0=0)から予め定めた大きさの観測時間Tmだけ過去に遡った時間t1(t1=−Tm)を起点として、現時点t0を終点とする、Tmの長さの時間内で、送信機100(自機)が無線送信していた時間(自機送信時間Tx)と他機が無線送信していた時間(他機送信時間Ty)とを除いた時間(Tm−Tx−Ty)、即ち自機含め周辺のどの機器も無線送信していなかった時間、がTm中に占める割合を算出することができる。ここでは、この割合を、空き時間率(α)と呼ぶ。算出式としては、α=(Tm−Tx−Ty)÷Tmである。この空き時間率(α)は、送信機100が使用する無線周波数についての、時間軸上での混雑具合を示す指標(混雑度)に対応するものとして用いることができる(空き時間率(α)が大きいことは、混雑度が低いことに対応する)。
【0034】
S202において、上記算出した空き時間率(α)を、予め定めた閾値と比較する。αが閾値よりも大きかった場合(S202−Y)、送信機100が送信する機会は十分にあると看做して、S203で、制御部107は、符号化レート変更部101に、信号(A3)により、高い符号化レートを指示する(換言すれば高解像度設定を通知する)。具体的には例えば、制御部107は、映像データの各フレームの画素数(解像度)をそのまま(映像ソース108のレート(解像度)のまま)にして送信すること(機能オフ)を、所定値(例えば0)により指示する。
【0035】
一方、空き時間率(α)が閾値以下であった場合には(S202−N)、送信機100が送信する機会が十分無かったと看做して、制御部107は、符号化レート変更部101に対して、低い符号化レートを指示する(換言すれば低解像度設定を通知する)。具体的には例えば、制御部107は、映像データの各フレームの画素数(解像度)を、元(映像ソース108)よりも少なくなるように変換(符号化)してから送信すること(機能オン)を、所定値(例えば1)により指示する。
【0036】
なお、上記のように機能(符号化レート変更)のオン(1)/オフ(0)の切り替えを指示する構成に限らず、符号化レートの値を直接に指示する構成などとしてもよい。
【0037】
符号化レート変更部101は、対象映像データ(映像ソース108)に対し、上記各指示(S203,S204)に応じた符号化処理を行う。本例では特に低レートへの変更の指示(S204)の場合のみ当該処理を実行(機能オン)する。
【0038】
以上のような処理を、対象映像データの画像(フレーム)群の送信中に繰り返す。これにより、時間軸上の各時点(画像と対応付けられる)における混雑度(空き時間率(α))に応じた映像レート(伝送レート)で無線送信を行うことができる。
【0039】
一方、図1で、受信機110では、アンテナ111から入力(受信)された無線信号(映像データ109)を、無線受信部112、ベースバンド部113、及び映像復号部114を通じて、映像信号(映像データ)に復元(復号)する。復元した信号は、必要に応じ画質改善部118などを経由してから、表示部120などに送られ、表示部120(画面)で映像が表示(再生)される。表示部120は、受信機110に外部接続されてもよいし、受信機110内に具備されてもよいし、また、受信機110に接続されるホスト装置などに具備されてもよい。
【0040】
ここで、受信機110では、送信機100での処理制御(映像データ109の伝送レート)に応じて、以下のような処理制御を行う。受信機110は、送信機100での処理制御により当該映像データ109の符号化レート(伝送レート)が低く変更されていた場合(前記S204)には、以下の処理制御を行う。即ち、受信機110では、映像復号部114からの信号(データ)を、スイッチ116,117の切り替え動作を通じて、画質改善処理部118(超解像処理部115)を通すようにする。即ち当該映像データに対し超解像処理をオンする。この超解像処理により、当該映像における各フレームの解像度を回復する(高める)ことによって、当該映像の表示の画質を改善する。
【0041】
また一方、受信機110は、送信機100での処理制御により当該映像データ109の符号化レート(伝送レート)が高くされていた場合(前記S203)には、映像復号部114からの信号(データ)を、スイッチ116,117の切り替え動作を通じて、画質改善処理部118(超解像処理部115)を通さないようにする。即ち当該映像データに対し超解像処理をオフする。
【0042】
以上のように、受信機110では、送信機100でレートが低く変更された映像データ109を受信したときには、画質改善(回復)して表示でき、そうでないときには、そのまま高画質の映像データ109を得て表示できる。いずれも、受信映像表示における低画質や破綻などを避けることができる。
【0043】
本システムでは、送信機100と受信機110の間の無線伝送路(無線区間)において、使用する無線周波数が周辺他機にも用いられること(干渉有り)により空きが少なく、送信(伝送)可能なデータレートが制限され十分に確保できないときには、当該無線区間での伝送レートを低く設定して無線伝送することで伝送データ量を減少する(混雑の緩和)。そして、それによる当該映像データの画質の低下を、受信側(受信機110)にて画質改善部118(超解像処理部115)を通すことで改善(回復)した後に、映像表示(再生)することができる。また、本システムで、無線区間において、使用する無線周波数における混雑が少なく、データレートが十分に確保できるときには、映像の画質をできるだけ低下させないように伝送レートを高く設定して無線伝送する。そして、受信側(受信機110)でも送信側(送信機100)と同等の画質で映像表示(再生)することができる。以上のように、通信環境(無線伝送路状況等)に応じて、受信側(受信機110)での表示映像等の品質低下を抑制または改善等できる。
【0044】
なお、図1の構成では特に記載していないが、受信機110は、送信機100側同様に、スイッチ116,117の切り替え(超解像処理機能のオン/オフ)制御等を行う制御部を備えてもよい。また、図1の構成では、受信機110は、機能のオン/オフの制御を、スイッチ116,117の切り替えにより、ハードウェア、回路的に行う構成としたが、プロセッサによるプログラム処理等によりソフトウェア的に行う構成などとしてもよい。
【0045】
また、高/低の伝送レート及び機能のオン/オフなど、2つの状態を切り替える制御の構成としたが、これに限らず、例えば複数の状態を段階的に切り替える構成などとしてもよい。
【0046】
また、送信機100が周囲機器すべての送信開始及び終了タイミング(他機送信タイミング及び時間)を観測する構成としたが、これに限らず、例えば受信機110が他機送信タイミングを観測してその結果を送信機100に伝える構成(受信機側が無線伝送路状況を検出して伝送レートを制御する構成)などとしてもよい。
【0047】
(実施の形態2)
次に、図3を用いて、本発明の実施の形態2の無線通信システムを説明する。図3において、実施の形態2の無線通信システムの送信機300の機能ブロック構成を示している。前述の形態と主に異なる部分として、送信機300は、予めメモリ304に異なるレートの映像データ(301,302)を準備して格納しており、それらをスイッチ303の切り替え等により利用するものである。受信側(受信機110)は前述の形態と同様の構成である。
【0048】
図3を用いて、本システムの処理動作等の全体の流れを説明する。送信機300は、予め、メモリ304に、異なる符号化レートで符号化(符号化処理)された映像データ{符号化映像データA301,B302}を持っている。例えば、高い符号化レートのデータA301と、低い符号化レートのデータB302である。そして、送信機300は、これらのデータ(301,302)のいずれかを、制御部107からの指示(A3)に従いスイッチ303により切り替えて、ベースバンド部102及び無線送信部103を経由してアンテナ104から送信する。
【0049】
実施の形態1同様に、制御部107には、無線送信部103からは、送信機300(自機)の送信タイミング(A1)が通知され、また、無線受信部106からは、アンテナ105で受信した他機(自機と同様周波数を用いているもの)の送信タイミング(A2)が通知される。そして、制御部107は、無線伝送路で使用する無線周波数における時間軸上の混雑度(空き時間率(α))から、映像データ(301,302)のいずれを送信するかを選択決定し、それに対応する切り替え制御を行う。
【0050】
本システムにおいて、例えば、送信機300では、周辺機器からの無線干渉によりCSMA/CAによる送信機会が十分取れないときには、低い符号化レートで符号化された符号化映像データB302を、そうでないときには、高い符号化レートで符号化された符号化映像データA301を、受信機110へ送信することができる。そして、送信機300から送信された映像データを受信する受信機110では、実施の形態1と同様の構成により、低い符号化レートの符号化映像データB302を受信したときのみ、画質改善部118(超解像処理部115)の処理をオンし、画質を改善(回復)して表示することができる。
【0051】
(実施の形態3)
次に、図4を用いて、本発明の実施の形態3の無線通信システムを説明する。図4において、実施の形態3の無線通信システムの送信機400の機能ブロック構成を示している。前述の形態と主に異なる部分として、送信機300は、指示されたレートで符号化(符号化処理)を行う映像符号化部402を備えるものである。受信側(受信機110)は前述の形態と同様の構成である。
【0052】
図4を用いて、本システムの処理動作等の全体の流れを説明する。本システムの送信機400は、予め蓄積された映像データ(映像ソース)401を持ち、これを、映像符号化部402で符号化する。この際、映像符号化部402は、制御部107から符号化レートの指示を信号(A3)により受け、その指示に従った符号化レート(解像度など)での符号化を行う。これにより符号化された映像データは、ベースバンド部102及び無線送信部103を経由してアンテナ104から送信される。
【0053】
実施の形態1同様に、制御部107は、自機送信タイミング(A1)及び他機送信タイミング(A2)から無線伝送路状況(混雑度)を把握し、それに基づき、映像符号化部402での符号化レートを決定し、信号(A3)により指示・切り替えを行う。
【0054】
以上により、本システムの送信機400では、前述の形態と同様に、無線伝送路状況に応じた符号化レートで映像データを伝送し、受信機110では、受信映像データのレートに応じて画質改善処理(超解像処理)をオンし、画質を改善(回復)して表示することができる。
【0055】
(実施の形態4)
次に、図5,図6を用いて、本発明の実施の形態4の無線通信システムを説明する。図5において、実施の形態4の無線通信システムの受信機510の機能ブロック構成を示している。前述の形態と主に異なる部分として、受信機510は、映像復号部114からの信号に従い、画質改善部118(超解像処理部115)の処理を切り替えるものである。送信側(送信機100等)は前述の形態と同様の構成である。
【0056】
図5を用いて、本システムの処理動作等の全体の流れを説明する。本システムの受信機510は、送信機100から送信された映像データ109を受信するものとする。受信機510は、アンテナ111から入力された無線信号(映像データ109)を、無線受信部112、ベースバンド部113、及び映像復号部114を通じて、映像信号(データ)に復元(復号)する。復元(復号)した映像(復号映像データ)は、前述の形態と同様に、必要に応じ画質改善部118を通して表示部120等へ送られる。
【0057】
映像復号部114では、復号映像データから、対象映像データのレート情報を得る。ここで、映像データ109の形式を例えばMPEGとする。映像復号部114では、例えばMPEG映像データ(ストリームデータ)におけるシーケンス・ヘッダ中の画素数情報と画像レート情報のように、復号映像データについての、画素数すなわち解像度(フレーム単位の解像度)の情報と、画像レートすなわちフレームレート(単位時間あたりのフレーム数)の情報と、を得ることができる。
【0058】
ここで、映像復号部114において、復号映像データの画像(フレーム)の解像度が、予め定めた閾値以下である場合には、画質改善部118の超解像処理部115を通す(超解像処理をオンする)ことにより、映像の画像の解像度を回復する。一方、閾値より高い場合には、画質改善部118の超解像処理部115を通さない(超解像処理をオフする)。上記切り替えは、例えば、映像復号部114からスイッチ116,117へ超解像処理切り替え指示の信号(B1)を与えることにより行う。
【0059】
以上により、受信機510では、解像度が設定よりも低い映像データを受信したときには当該解像度を回復し、そうでないときは受信したままの解像度の映像データを得て、表示することができる。なお、受信機510は、本処理制御のための制御部を具備してもよい。
【0060】
図6を用いて、受信機510での処理制御について更に詳細に説明する。図6において、受信機510におけるレート情報に基づいた画質改善処理(超解像処理)の切り替え指示動作の処理フローを示している。
【0061】
S601で、映像復号部114では、入力される映像ストリームデータから、復号映像データを得ると共に、ヘッダから、画素数(P)の情報を抽出する(その他、フレームレート情報などを抽出してもよい)。S602で、映像復号部114は、この抽出された画素数(フレーム解像度)(P)を、予め定めた閾値と比較する。抽出された画素数(P)が閾値よりも小さいときには(S602−Y)、S603で、復号映像データに対して超解像処理をオンするように、信号(B1)により指示する。一方、画素数(P)が閾値以上であるときには(S602−N)、S604で、超解像処理をオフするように指示する。
【0062】
これらの処理を、映像ストリーム受信中に繰り返すことにより、各時点での受信映像(画像)の解像度に応じて、超解像処理による画質の回復を施して表示することができる。
【0063】
以上により、本システムの受信機510では、前述の形態と同様に、無線伝送路状況に応じた符号化レートで伝送された映像データを受信し、それ(特にフレーム解像度)に応じて画質改善(回復)してから映像表示することができる。
【0064】
なお、上記構成に限らず、例えば、受信機510が、送信機100から、映像ストリームデータとは別に制御情報(符号化レート情報)を受信し、受信機510がそのレート情報を参照して同様に画質改善処理の切り替えを行う構成なども可能である。
【0065】
(実施の形態5)
次に、図7,図8を用いて、本発明の実施の形態5の無線通信システムを説明する。図7において、実施の形態5の無線通信システムの機能ブロック構成を示している。前述の形態と主に異なる部分として、送信機700では、ベースバンド部702で制御部107からの指示(制御情報)の信号(A3)を入力してデータとの多重化を行い、受信機710では、ベースバンド部713でデータと制御情報の分離を行い、分離した制御情報に従い画質改善処理の切り替え制御を行うものである。
【0066】
図7を用いて、本システムの処理動作等の全体の流れを説明する。本システムの送信機700は、入力された映像ソースに対し符号化レート変更部101にて符号化レート変更を施し、送信すべき映像データ量を調整した後、ベースバンド部702及び無線送信部103を通じてアンテナ104から無線送信する。
【0067】
実施の形態1同様に、制御部107には、無線送信部103からの自機送信タイミングの情報(A1)、及び無線受信部106からの他機送信タイミングの情報(A2)が集まり、これにより、使用する無線周波数に係わる混雑度(空き時間率(α))を把握する。制御部107は、混雑度に応じた符号化レートを、信号(A3)により、符号化レート変更部101に指示する。例えば、制御部107は、最新の一定時間中で、空き時間率(α)が閾値より大きかった場合には高い符号化レートを、閾値以下であった場合には低い符号化レートを、符号化レート変更部101へ指示する。
【0068】
本システムでは、制御部107は、決定した符号化レートを、符号化レート変更部101に通知するのみでなく、ベースバンド部702にも通知する。ベースバンド部702では、符号化レート変更部101から入力される符号化された映像データ(符号化映像データ)と、制御部107から入力される符号化レート情報(A3)とを、多重化して、無線送信部103に送る。
【0069】
ここで、制御部107及びベースバンド部702において、制御情報としては、決定した符号化レートそのもの(A3a)だけでなく、使用する無線周波数での混雑が原因で符号化レートを低く抑えたか否かを伝える情報(A3b)を併せて含ませるあるいは多重化する構成としてもよい。なお、上記情報(A3b)は、受信側(受信機710)の機能オン/オフの切り替え指示制御の情報と捉えることができる。
【0070】
上記から、送信機700では、前述の形態と同様に混雑度に応じた符号化レートの符号化映像データと、それに係わる制御情報(本例ではA3a,A3b)とを、多重化した信号709を、無線伝送する。
【0071】
一方、本システムの受信機710では、アンテナ111から入力された無線信号(信号709)を、無線受信部112、ベースバンド部713、及び映像復号部114を通じて映像信号(映像データ)に復元(復号)する。ここで、映像データに多重化されていた制御情報(A3a,A3b)のうち、送信機700により映像符号化レートが低く変更されているか否かを表す情報(A3b)は、ベースバンド部713で符号化レート情報(A3a)を分離すること等により得ることができる。ベースバンド部713は、この情報(A3a)を、画質改善部118(超解像処理部115)のスイッチ116,117に与えることにより、超解像処理のオン/オフを制御する。
【0072】
以上により、受信機710では、前述の形態と同様に、無線伝送路状況に応じた符号化レートで伝送された映像データを受信し、それに応じて画質改善(回復)してから映像表示することができる。
【0073】
図8を用いて、受信機710の機能切り替え動作について更に詳細に説明する。S801で、ベースバンド部713では、送信機700で多重化されて送信された信号709を受信した信号から符号化レート情報(A3)を分離することにより、受信中の映像データの画像(フレーム)の画素数(P)等を把握することができる。S802で、ベースバンド部713は、符号化レート情報のうちの例えば画素数(P)を、予め定めた閾値と比較する。ベースバンド部713は、画素数(P)が閾値より小さいときには(S802−Y)、S803で、映像復号部114からの復号映像データに対して画質改善処理(超解像処理)をオンするように、信号(B1)により指示する。一方、ベースバンド部713は、画素数(P)が閾値以上であるときには(S802−N)、S804で、画質改善処理(超解像処理)をオフするように、信号(B1)により指示する。
【0074】
これらの処理を、映像ストリームデータの受信中に繰り返すことにより、各時点での受信映像(画像)の解像度に応じて、超解像処理による画質の回復を施して表示することができる。
【0075】
(実施の形態6)
次に、図9を用いて、本発明の実施の形態6の無線通信システムを説明する。図9において、実施の形態6の無線通信システムの受信機910の機能ブロック構成を示している。前述の形態と主に異なる部分として、画質改善部918は、解像度変換部(超解像処理部)911と、フレーム数変換部(フレームレート処理部)912と、を備える。
【0076】
図9を用いて、本システムの処理動作等の全体の流れを説明する。本システムの受信機910は、前述の形態と同様の送信機100等から送信された映像データ109を受信するものとする。受信機910は、アンテナ111から入力された無線信号を、無線受信部112、ベースバンド部113、及び映像復号部114を通じて、映像信号(映像データ)に復元(復号)する。ここで、受信機910では、送信機100により映像の符号化レートが低く変更されていた場合には、画質改善部918による画質回復の処理を行い、そうでない場合には、画質回復の処理を行わない。
【0077】
本システムでは、画質改善部918での処理として、解像度変換部911による解像度変換処理(超解像処理)と、フレーム数変換部912によるフレームレート変換処理と、を有する。解像度変換部911では、映像データ(フレーム群)のうち1フレームの画素数(フレーム解像度)を増す処理(超解像処理)を行うことにより、フレーム単位の画質を回復(改善)する。また、フレーム数変換部912では、映像データ(フレーム群)におけるフレームを補完してフレーム数(フレームレート)を増す処理を行うことにより、動画像の画質を回復(改善)する。
【0078】
解像度変換部911を経由(オン)するか否かと、フレーム数変換部912を経由(オン)するか否かとは、それぞれ切り替え制御することが可能である。即ち、画質改善処理の各処理のオン/オフの組み合わせとして、両方オフ、一方のみオン、両方オン、といった中から適宜選択可能である。
【0079】
また、画質改善処理の各処理の程度(解像度やフレームレートの変化の程度や、処理パラメータ等)を適宜制御してもよい。また、上記切り替え(選択)は、送信機100側が指示する構成としてもよいし、受信機910側が決定する構成としてもよい。
【0080】
上記により、受信機910では、映像の符号化レートが設定よりも低い映像データを受信したときには、フレーム解像度及び/又はフレーム数の回復をオン/オフすることができ、そうでないときは、そのままの映像データを得ることができる。
【0081】
以上により、受信機910では、前述の形態と同様に、無線伝送路状況に応じた符号化レートで伝送された映像データを受信し、それに応じて画質改善(回復)してから映像表示することができる。
【0082】
(実施の形態7)
図10,図11を用いて、本発明の実施の形態7の無線通信システムを説明する。図10において、実施の形態7の無線通信システムの受信機1010の機能ブロック構成を示している。前述の形態と主に異なる部分として、受信機1010は、制御部1011を備え、符号化レート等の情報(B1)と、表示部1020からの性能情報(C1)とに基づき、画質改善部1018の処理のオン/オフを切り替え制御するものである。
【0083】
図10を用いて、本システムの処理動作等の全体の流れを説明する。本システムの受信機1010は、前述の形態と同様の送信機100から送信された映像データ109を受信するものとする。受信機1010は、アンテナ111から入力された無線信号を、無線受信部112、ベースバンド部113、及び映像復号部114を通じて映像信号(映像データ)に復元(復号)する。ここで、送信機100により映像符号化レートが低く変更されていた場合には、画質回復の処理を行い、そうでない場合には、画質回復の処理を行わない。受信機1010は、画質改善部1018として、例えば前述の形態と同様に、解像度変換部911と、フレーム数変換部912と、を備える。
【0084】
受信機1010で受信した映像データは、例えば受信機1010に接続されている表示部1020において映像として表示(再生)される。なお、本例では、受信機1010と表示部1020をそれぞれ設けているが、これに限らず、受信機1010が表示部1020の機能を具備する構成や、逆に表示部1020が受信機1010の機能を具備する構成なども可能である。
【0085】
本システムで、表示部1020は、表示部1020の性能、即ち再生可能な映像データの解像度及びフレームレート等の情報(性能情報C1)を、受信機1010に通知する。あるいは、受信機1010から表示部1020の性能情報C1を取得する。あるいは、例えば、受信機1010に表示部1020が一旦接続されると、性能情報C1が、制御部1011へ得られ、また、別の表示部1020が接続されると、同様に、その性能情報C1が得られる。
【0086】
受信機1010の制御部1011は、表示部1020の性能情報C1と、映像復号部114から通知される受信映像データ(復号映像データ)の解像度及びフレームレート等の情報(B1)とから、当該映像データに対して画質改善部1018の処理を適用するか否か(解像度変換部911を経由するか否か、及び/又は、フレーム数変換部912を経由するか否か)を選択決定し、信号を画質改善部1018のスイッチに与えること等により切り替えを行う。
【0087】
上記切り替え制御の判断は、例えば以下のように実現できる。制御部1011は、受信映像データのフレーム解像度が、表示部1020により表示可能な解像度の上限よりも低い場合には、解像度変換部911を経由するように切り替え、そうでない場合には、解像度変換部911を経由しないように切り替える。また、制御部1011は、受信映像データのフレームレートが、表示部1020により表示可能なフレームレートの上限よりも低い場合には、フレーム数変換部912を経由するように切り替え、そうでない場合には、経由しないように切り替える。
【0088】
図11を用いて、本システムの受信機1010の処理制御(機能切り替え動作)について更に詳細に説明する。S1101で、制御部1011は、表示部1020から、性能情報C1として、表示部1020で表示可能な画素数(フレーム解像度)の上限値(最大解像度情報c1)、及び同じく表示可能なフレームレートの上限値(最大フレームレートc2)の情報を取得する。S1102で、映像復号部114では、映像ストリームデータ(例えばヘッダ)から、画素数(P)の情報と、フレームレート(Q)の情報と、を抽出する。
【0089】
S1113で、制御部1011は、この抽出した画素数(フレーム解像度)(P)を、解像度変換部911で超解像処理した場合の結果の画素数(p)と、表示部1020で表示可能な画素数の上限値(最大解像度情報c1)とを比較する。超解像処理後の画素数(p)が、上限値(c1)よりも大きいときには(S1103−Y)、S1104で、制御部1011から画質改善部1018へ、復号映像データに対して超解像処理をオフするように指示する。一方、超解像処理後の画素数(p)が上限値(c1)以下であるときには(S1103−N)、S1105で、制御部1011から画質改善部1018へ、超解像処理をオンするように指示する。
【0090】
また同様に、S1106では、S1102で抽出したフレームレート(Q)に対して、フレーム数変換部912でフレーム変換処理を施した場合の結果のフレームレート(q)と、表示部1020で表示可能なフレームレートの上限値(最大フレームレートc2)とを比較する。変換後のフレームレート(q)が、上限値(c2)よりも大きいときには(S1106−Y)、S1107で、制御部1101から画質改善部1108へ、復号映像データに対してフレームレート変換処理をオフするように指示する。一方、フレームレート変換後のフレームレート(q)が、上限値(c2)以下であるときには(S1106−N)、S1108で、制御部1101から画質改善部1108へ、フレームレート変換処理をオンするように指示する。
【0091】
これらの切り替え処理を、映像ストリームデータ受信中に繰り返すことにより、各時点での受信映像のフレーム解像度とフレームレート、及び表示部1020で表示可能な解像度上限(c1)とフレームレート上限(c2)に応じて、超解像処理及び/又はフレームレート変換処理による画質の回復(改善)を、それぞれオン/オフすることができる。なお上記オン/オフの処理の順番等は一例である。
【0092】
上記により、受信機1010では、受信映像データの符号化レートと、表示部1020の表示の性能とに応じて、映像の解像度やフレームレートの回復を適宜選択することができ、表示部1020で適切な画質で表示することができる。
【0093】
(実施の形態8)
次に、図12を用いて、本発明の実施の形態8の無線通信システムを説明する。図12において、実施の形態8の無線通信システムの全体構成を示している。前述の形態と主に異なる部分として、送信機1200から複数の各受信機1210A〜Cへ映像データを伝送する場合である。なお前述の形態において単一の受信機ではなく複数の受信機を有するシステムの構成として捉えれば、本実施の形態と同様になる。
【0094】
本システムにおいて、無線通信装置として、送信機1200と、受信機1210(1210A,B,C)とを有する。送信機1200は、例えば実施の形態1(図1)の送信機100と同様の構成である。受信機1210は、例えば実施の形態7(図10)の受信機1010と同様の構成である。また、各受信機1210A〜Cに接続される表示部1220として、1220(1220A,B,C)を有する。表示部1220は、例えば実施の形態7(図10)の表示部1020と同様の構成である。なお前述同様に、受信機1210と表示部1220は一体構成でもよい。本例では、1台の送信機1200と3台の受信機1210を有する場合を示している。
【0095】
送信機1200(例えばそのうちの制御部1201)は、周囲環境の複数の他機(受信機1210)を含む無線伝送路状況の検出、及び、それに応じた無線区間の伝送レートの変更・調整などを制御する。即ち、送信機1200は、自機と同様の無線周波数を使用する各受信機1210A〜Cの状況に基づく時間軸上の混雑度(空き時間率(α))を検出(算出)し、それに応じて、通信相手機器(例えば各受信機1210A〜C)へ送信(伝送)する映像データ等の符号化レートを変更・調整する。
【0096】
各受信機1210A〜Cは、送信機1200から送信される映像データ等を受信する。そして、各受信機1210A〜C(例えばそのうちの制御部1211)は、対応する表示部1220A〜Cの性能(表示可能な映像の解像度及びフレームレート等)に応じて、受信映像データ等に対する画質改善処理のオン/オフを制御する。上記画質改善処理は、例えば各画質改善部1212による解像度変換処理(超解像処理)及びフレーム数変換処理等である。
【0097】
上記により、周囲環境における他機を含む状況に応じて、無線区間のデータレートを変更することで、受信側(各受信機1210A〜C)での映像の破綻などを防ぐことができる。尚且つ、各受信機1210A〜Cに接続された各表示部1220A〜Cの性能に応じて、受信映像データの画質(解像度及びフレームレート等)を変換することで、無線区間のデータレートを低くした場合でも、受信側(各受信機1210A〜C)で画質の改善(回復)を行って適切に表示することができる。
【0098】
送信機1200から受信機1210A〜Cへ同じレートで映像データが送信された場合、各受信機1210A〜Cの表示部1220A〜Cの性能が異なる場合には、それぞれに応じた画質で表示されるので、効率的である。
【0099】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、無線通信システムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態1である無線通信システムの機能ブロック構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1の無線通信システムにおける送信機での切り替え制御の処理フローを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2である無線通信システムにおける送信機の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態3である無線通信システムにおける送信機の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態4である無線通信システムにおける受信機の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態4の無線通信システムにおける受信機での切り替え制御の処理フローを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態5である無線通信システムの機能ブロック構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態5の無線通信システムにおける受信機での切り替え制御の処理フローを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態6である無線通信システムにおける受信機の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態7である無線通信システムにおける受信機の構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態7の無線通信システムにおける受信機での切り替え制御の処理フローを示す図である。
【図12】本発明の実施の形態8である無線通信システムにおける全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
100,300,400,700,1200…送信機、101…符号化レート変更部、102…ベースバンド部、103…無線送信部、104…アンテナ、105…アンテナ、106…無線受信部、107,1201…制御部、108…映像ソース、109…映像データ(伝送無線信号)、110,510,710,910,1010,1210A〜C…受信機、111…アンテナ、112…無線受信部、113…ベースバンド部、114…映像復号部、115…超解像処理部、116,117…スイッチ、118,918,1018,1212…画質改善部、120,1020,1220A〜C…表示部、301…符号化映像データA、302…符号化映像データB、303…スイッチ、304…メモリ、401…映像データ(映像ソース)、402…映像符号化部、702…ベースバンド部、709…信号、713…ベースバンド部、911…解像度変換部(超解像処理部)、912…フレーム数変換部、1011,1211…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機と受信機を有しその間で無線により映像等のデータを伝送する無線通信システムであって、
前記送信機は、当該送信機と前記受信機の間の無線伝送路の状況に応じて、前記受信機へ送信する第1の映像データの符号化レートを変更する処理制御を行う制御部を有し、
前記受信機は、映像データに対しフレーム単位で画素間を補完して解像度を上げる超解像処理を含む画質改善処理を施す画質改善部を有し、前記送信機から受信した前記第1の映像データに対し、その符号化レートに応じて、前記画質改善処理を施す処理制御を行い、
前記無線伝送路の状況が良好でない場合に、前記送信機では、前記制御部により、前記第1の映像データの符号化レートを低く変更して伝送し、それに対応して、前記受信機では、前記画質改善部による前記画質改善処理をオンすること、を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信システムにおいて、
前記送信機は、自機の使用する無線周波数チャネルに含まれる無線周波数を使用する他の送信機を含む環境において、自機の無線送信タイミングの情報と、キャリアセンスにより得られる前記他の送信機の無線送信タイミングの情報と、を参照することにより、前記無線伝送路の状況を時間軸上の混雑度または空き時間率として検出または測定する手段を有すること、を特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1記載の無線通信システムにおいて、
前記送信機の制御部は、複数種類の異なる符号化レートを持つ各符号化映像データを予めメモリに用意しておき、これらの中から、前記無線伝送路の状況に応じて、前記第1の映像データとして送信するデータを選択すること、を特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1記載の無線通信システムにおいて、
前記送信機の制御部は、前記無線伝送路の状況に応じて前記符号化レートを決定し、その符号化レートで映像データを符号化処理したデータを、前記第1の映像データとして送信すること、を特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1記載の無線通信システムにおいて、
前記受信機は、前記受信した前記第1の映像データを復号したデータから、当該映像データの符号化レートの情報を参照して、前記画質改善処理を施すか否かを切り替え制御すること、を特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1記載の無線通信システムにおいて、
前記送信機の制御部は、前記第1の映像データに加えて、当該第1の映像データの符号化レートの情報を、多重化して、もしくは別のデータとして、前記受信機へ送信し、
前記受信機は、前記送信機からの前記第1の映像データの前記符号化レートの情報を、分離して、もしくは別のデータとして受信して、前記画質改善処理を施すか否かを切り替え制御すること、を特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項1記載の無線通信システムにおいて、
前記受信機は、前記画質改善部による前記画質改善処理として、前記フレーム単位の超解像処理と、フレーム間を補完してフレーム数を増すことによりフレームレートを上げる処理と、の組み合わせを行うこと、を特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項7記載の無線通信システムにおいて、
前記受信機は、前記受信した前記第1の映像データを映像として表示する表示部の性能に応じて、前記画質改善処理のオン/オフまたはその程度を制御する制御部を有すること、を特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
請求項1または8に記載の無線通信システムにおいて、
前記送信機から送信した前記第1の映像データを受信する前記受信機を複数有し、
各受信機には、前記受信した前記第1の映像データを映像として表示する表示部が接続または内蔵され、
各受信機は、前記表示部の性能に応じて、前記画質改善処理を施すか否かの切り替え制御を行うこと、を特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
送信機と受信機を有しその間で無線により映像等のデータを伝送する無線通信システムにおける前記送信機であって、
前記送信機は、当該送信機と前記受信機の間の無線伝送路の状況に応じて、前記受信機へ送信する第1の映像データの符号化レートを変更する処理制御を行う制御部を有し、
前記受信機は、映像データに対しフレーム単位で画素間を補完して解像度を上げる超解像処理を含む画質改善処理を施す画質改善部を有し、前記送信機から受信した前記第1の映像データに対し、その符号化レートに応じて、前記画質改善処理を施す処理制御を行い、
前記無線伝送路の状況が良好でない場合に、前記送信機では、前記制御部により、前記第1の映像データの符号化レートを低く変更して伝送し、それに対応して、前記受信機では、前記画質改善部による前記画質改善処理をオンすること、を特徴とする送信機。
【請求項11】
送信機と受信機を有しその間で無線により映像等のデータを伝送する無線通信システムにおける前記受信機であって、
前記送信機は、当該送信機と前記受信機の間の無線伝送路の状況に応じて、前記受信機へ送信する第1の映像データの符号化レートを変更する処理制御を行う制御部を有し、
前記受信機は、映像データに対しフレーム単位で画素間を補完して解像度を上げる超解像処理を含む画質改善処理を施す画質改善部を有し、前記送信機から受信した前記第1の映像データに対し、その符号化レートに応じて、前記画質改善処理を施す処理制御を行い、
前記無線伝送路の状況が良好でない場合に、前記送信機では、前記制御部により、前記第1の映像データの符号化レートを低く変更して伝送し、それに対応して、前記受信機では、前記画質改善部による前記画質改善処理をオンすること、を特徴とする受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−81753(P2009−81753A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250446(P2007−250446)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】