説明

無線通信プロトコルを用いて無線リンクまたは有線リンク経由で通信信号を伝送する装置及び方法

通信装置(9)が、他の通信装置(9)と通信するためのWi−Fi装置(14)を有する。このWi−Fi装置(14)は、アンテナ(13)に接続された1つの出力、及びカプラ(11)経由で同軸ケーブルジャック(10)に接続された他の出力を有する。従って、アンテナ(13)は無線通信リンクを提供し、カプラ(11)は有線通信リンクを提供する。Wi−Fi装置(14)のダイバーシティスイッチ(18)は、Wi−Fi規格中に提供されたアンテナのダイバーシティ切換を用いて、監視される信号品質に応じて無線通信リンクと有線通信リンクとを切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信プロトコルを用いた通信の通信装置及び方法に関するものである。本発明の応用は特に、Wi−Fi(ワイファイ、登録商標)信号を無線リンクまたは有線リンク経由で他の通信装置に伝送する通信装置であるが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
Wi−Fiは、世界中の家庭及びオフィスの両方において普遍的になりつつある。Wi−Fiは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers:電気電子技術者協会)802.11仕様に基づく無線ローカルエリア・ネットワーク(WLAN:Wireless Local Area Network)用の無線通信プロトコルであり、http://standards.ieee.orgで見ることができる。基本的に、Wi−Fiは、通信装置が互いに、アンテナ間の無線リンク経由でアドホック(その場毎の)ベースでデータを伝送することを可能にする。現在では、Wi−Fiは通常、パーソナルコンピュータ(PC)相互間;PCとプリンタの間;あるいはPCと、有線ネットワークへのアクセスを可能にする無線アクセスポイント(WAP:Wireless Access Point)との間の通信に用いられている。しかし、Wi−Fiの使用は急速に他の用途に広がっている。ホームメデイアシステムは特に、Wi−Fiを利用して、ラジオ及びテレビジョン信号のコンテンツ(内容)のようなオーディオ(音声)及びオーディオ−ビジュアル(音響映像)データを、セットトップボックス、テレビジョン、ゲームコンソール(ゲーム操作器)、DVDプレーヤ、等のようなホームメディアシステムの構成要素間で送信することをますます期待される。
【0003】
しかし、Wi−Fi及び他のこうした無線通信プロトコルの使用が増加すると共に、その信頼性についての関心も増加する。Wi−Fiは2つの周波数帯域、即ち2.4GHz付近及び5GHz付近を使用し、これらの帯域は少数のチャンネルに分割することができ、各チャンネルは必然的に限られた帯域幅しか有しない。Wi−Fiの最近のバージョンは、この限られた帯域幅を用いて、テレビジョン信号等のオーディオビジュアル・データ・コンテンツを通信装置間でリアルタイムでストリーム伝送することができるほど、データを十分高速に伝送することができる。例えば、IEEE802.11g規格及び提唱されているIEEE802.11n規格は約54Mbpsの最大データレートを有する。しかし、このことは、例えば妨害が少ししか、あるいは全くない時のような良好な伝送条件においてのみ可能である。伝送条件が劣化すると共に、データ伝送の速度は急速に低下する。
【0004】
より詳細には、Wi−Fiは競合(コンテンション)ベースのサービスである。このことは、互いに近接した通信装置どうしが異なる通信リンク上で通信しようとする通信リンクの数が増加すると共に、利用可能な帯域幅は、必要な異なる通信リンクを収容できるようにするために、これらの通信リンク間でますます微細に分割されることを意味する。この帯域幅の分割は、各通信リンクの最大データレートを低減する。実際に、IEEE802.11g規格を用いれば、54Mbpsの最大データレートは通常、同じ周波数帯域内に他のWi−Fi信号のない、2つの通信装置間の単一通信リンクにおいてのみ達成することができる。従って、家庭内では、任意時点において1つの通信リンクのみが最大データレートで達成可能になりやすい。より多くのWi−Fi通信装置が家庭内に導入されると共に、家庭内のすべてのWi−Fi装置間の通信の速度が低下する。
【0005】
すべての無線通信と同様に、Wi−Fiも経路損失(パスロス)及び妨害を受ける。より詳細には、Wi−Fiは比較的低電力での伝送のみを可能にし、良好な伝送条件において約300mの最大距離を達成することができる。家庭内部では、壁、備品、及び通信装置の据付及び配置がWi−Fi信号を大幅に減衰させ得る。Wi−Fi信号は、強度が低下すると共にエラー(誤り)を含む傾向がある。同様に、Wi−Fi信号は互いに妨害しがちである。従って、より多くの通信装置がWi−Fiを用いて互いに通信しようとするほど、異なる通信リンク間の妨害が増加し、ここでも伝送中にエラーを導入する。特に、異なるWi−Fiチャンネル間の分離が相当限定され、隣接チャンネルにおけるWi−Fi信号が互いに大きく妨害し合い得る結果を伴い、ここでも通信エラーを生じさせる。これらのエラーを軽減するために、データパケットを2つの通信装置間で2回以上送信することができるが、このことは、これらの装置間のデータ伝送レートを全体的に低減する。最悪では、Wi−Fi信号を受信することができず通信が不可能になる。
【0006】
もちろん、帯域幅の競合及び妨害の影響は家庭内に置かれた装置に限定されない。むしろ、付近のすべての通信装置、例えば近所の家庭内の通信装置からのWi−Fi信号も家庭内の通信に影響しやすい。従って、近辺にわたるWi−Fi技術の広まりは一般に、Wi−Fi通信の速度に対する有害な影響を有する。
【0007】
従って出願人は、Wi−Fi通信装置は、例えばPC間でデータを共用することのような家庭内の一部のデータ通信の必要性に満たし続けることはできそうであるが、これらの通信装置は、すべての望ましい通信の要求を満足することはできにくい、ということを認識した。特に、複数のオーディオ及びオーディオ−ビジュアルデータ信号を、ホームメディアシステムの構成要素間でWi−Fiを用いて伝送することは達成できにくい。むしろ、出願人は、このことを達成するために有線通信が必要であり続けそうであると考える。しかし、有線通信は、大部分のオフィス及び一部の近代的な家庭のように適切な配線が既に敷設されている所、あるいは非常に短距離にわたっては特に問題はないが、新たな配線を家庭中(例えば異なる部屋間)に追加することは一般に不便である。特に、従来の有線イーサネット(登録商標)技術で使用されるプロトコルのような従来の有線通信プロトコルをサポートするための配線を追加することは、大部分の家庭内では不所望でありがちである。さらに、PC等は一般にこうした有線ネットワーク技術を含むが、こうした技術をホームメディアシステムの異なる構成要素内に含めることは高価になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこれらの問題を克服することを追求する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、無線通信プロトコルを用いて無線リンクまたは有線リンク経由で通信信号を他の通信装置に伝送する通信装置が提供され、この通信装置は前記無線通信プロトコルを用いて、前記他の通信装置から前記無線リンク及び前記有線リンク経由で受信した通信信号の品質を監視し、監視される通信信号の品質に応じて、この通信信号の前記無線リンク経由での前記他の通信装置への送信と、この通信信号の前記有線リンク経由での前記他の通信装置への送信とを切り換える。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、通信の方法が提供され、この方法は、無線通信プロトコルを用いて無線リンクまたは有線リンク経由で、通信信号を1つの通信装置から他の通信装置に送信するステップを含み、前記1つの通信装置は前記無線通信プロトコルを用いて、前記他の通信装置から前記無線リンク及び前記有線リンク経由で受信した通信信号の品質を監視し、監視される通信信号の品質に応じて、この通信信号の前記無線リンク経由での前記他の通信装置への送信と、この通信信号の前記有線リンク経由での前記他の通信装置への送信とを切り換える。
【0011】
従って、出願人は、無線通信プロトコルを、無線リンク上並びに有線リンク上の通信に使用することができることを認識した。有線リンクは無線リンクよりも良好な伝送経路を提供しやすい。従って、信号品質の推定値に応じて有線リンクと無線リンクとを切り換えることによれば、大部分は有線リンクが選択されやすい。しかし、有線リンクがプラグ接続されていないか損傷しているものとすれば、無線リンクを用いて通信を維持することができる。
【0012】
このことは多くの利点を有する。例えば、有線リンクは無線リンクより妨害を受けにくい。従って、通信装置間の通信の信頼性が改善される。同様に、無線リンクとは異なり、有線リンクは一般に秘匿性が高い。このことは、信号が無認可のユーザによって「乗っ取られ」ることを起こりにくくし、セキュリティ(安全性)を改善する。また重要なこととして、無線通信能力の需要が高い所では、有線リンク上で伝送される信号も、無線リンク上で伝送される他の信号との間でごくわずかしか妨害を生じさせない。従って、全体的な伝送能力が改善される。
【0013】
また、本発明は安価に実現される、というのは、2つの別個の通信技術ではなく、前記無線プロトコルを有線リンク及び無線リンクに共に用いるからである。例えば、無線通信プロトコルは一般に、2つ以上のアンテナによって提供される無線リンク間を切り換えるアンテナ・ダイバーシティ切換を内蔵し、出願人は、このアンテナ・ダイバーシティ切換を用いて有線リンクと無線リンクとを切り換えることができることを認識した。
【0014】
あらゆる無線通信プロトコルが、本発明を実現するのに適している。例えば、ブルートゥース(登録商標)通信には本発明が有益である。しかし、本発明はWi−Fiを用いて実現されることが一般に期待される。換言すれば、前記無線通信プロトコルはWi−Fiであるか、あるいはIEEE802.11規格に準拠することが好ましいが、本発明はこれに限定されない。従って、信号品質の監視は種々の方法で実行することができるが、一般に、Wi−Fi規格にあるように、受信した通信信号についての信号対雑音比または受信信号強度指標(インジケータ)の推定を含む。
【0015】
本発明は特に、既存のケーブル配線を前記有線リンク用に用いる際に有利である。このことは、家庭またはオフィスにおけるテレビジョン放送信号用のケーブル配線を使用することができる場合であり得る。換言すれば、前記有線リンクはテレビジョン放送信号も搬送することができる。同様に、前記有線リンクは同軸ケーブルとすることができる。実際に、同軸ケーブル配線はWi−Fi信号用の良好な伝送媒体を提供し、Wi−Fi信号は同軸ケーブル上のテレビジョン放送信号と大きな妨害なしに共存し得ることを、出願人は認識した。
【0016】
前記有線リンクは、通信装置間に延在する単一の同軸ケーブルとすることができる。あるいはまた、前記有線リンクはいくつかの同軸ケーブルにわたることができる。特に考えられることとして、前記有線リンクは、受信したテレビジョン放送信号を増幅して2つ以上のテレビジョン受信機に分配するための分配増幅器の両端に延在する必要があり得る。従って、前記有線リンクは、分配増幅器を経由した通信装置間の有線接続で構成することができ、この分配増幅器は、テレビジョン放送信号を増幅して前記有線接続経由で前記通信装置に分配し、前記分配増幅器は、前記通信装置間の通信信号を通過させる回路を有する。こうした分配増幅器自体が新規のものと考えられ、本発明の第3の態様によれば分配増幅器が提供され、この分配増幅器は:
前記分配増幅器によって受信したテレビジョン放送信号を増幅する増幅器と;
増幅した前記テレビジョン放送信号を2つ以上のテレビジョン受信機に分配する分配回路と;
1つの前記テレビジョン受信機の通信装置によって、無線通信プロトコルを用いて他の前記テレビジョン受信機の通信装置に送信される通信信号を通過させて、一方の前記通信装置から他方の前記通信装置に渡す回路と
を具えている。
【0017】
また、本発明の第4の態様によれば、テレビジョン放送信号を増幅して分配する方法が提供され、この方法は:
テレビジョン放送信号を増幅するステップと;
増幅した前記テレビジョン放送信号を2つ以上のテレビジョン受信機に分配するステップと;
1つの前記テレビジョン受信機の通信装置によって、無線通信プロトコルを用いて他の前記テレビジョン受信機の通信装置に送信される通信信号を通過させて、一方の前記通信装置から他方の前記通信装置に渡すステップと
を具えている。
【0018】
従って、この分配増幅器は、通信信号またはWi−Fi信号が前記増幅器を迂回(バイパス)することを可能にする。従って、通信信号はほとんど変化なしに前記分配増幅器を通り過ぎることができる。
【0019】
前記通信装置はあらゆる適切な通信ネットワークの一部を形成することができることは明らかである。しかし、これらの通信装置は特にホームメディアシステムに含まれることが特に考えられる。この目的のために、前記通信装置は例えば、テレビジョン受信機に内蔵させることができる。このテレビジョン受信機は、セットトップボックス、ホームメディアセンター、あるいはテレビジョン受像機とすることができる。あるいはまた、前記通信装置は、ハードディスクドライブ(HDD)またはディジタル多用途(バーサタイル)ディスク(DVD)レコーダのようなテレビジョン信号を記録する装置とすることができる。さらに他の代案では、前記通信装置は、ゲームコンソールまたはオーディオ増幅器のようなホームメディアシステムの他の構成要素に内蔵させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施例について図面を参照しながら説明し、これらの実施例は例示目的に過ぎない。
【0021】
図1に示すホームメディアシステムは、テレビジョン放送信号を受信するためのアンテナ2を有する。この実施例では、受信されるテレビジョン放送信号は、地上放送システムによって無線放送されているディジタルテレビジョン信号であり、通常の家庭用テレビジョンアンテナ上で受信される。しかし、本発明はこれに限定されず、他の実施例では、テレビジョン信号は衛星、ケーブル、または他のあらゆる適切な媒体経由で放送され得る。従ってアンテナ2は、衛星放送用パラボラアンテナ、ケーブル接続、等に適宜置き換えることができ、そして以下に説明する本発明の実施例には適切な変更を加えることができる。
【0022】
アンテナ2は分配増幅器3に接続され、分配増幅器3は、受信したテレビジョン放送信号を増幅し、これらの信号を同軸ケーブル4、5経由で、ホームメデイアシステム1のセットトップボックス6及びWi−Fiテレビジョン7に分配する。セットトップボックス6は、アンテナ2から分配増幅器3を経由して受信したテレビジョン放送信号を受信し復号化することができる。実際に、本実施例では、セットトップボックス6は、受信したテレビジョン信号のチャンネルを選択し、選択したチャンネルにおける信号を復号化するための複数のチューナ及びデコーダ(図示せず)を有する。セットトップボックス6は、復号化したテレビジョン信号のコンテンツを選択的に記録するためのレコーダ(図示せず)、並びにディジタル多用途ディスク(DVD)等のような通常の媒体からオーディオ及びオーディオ−ビジュアル・データを読み出して出力するメディアプレーヤを有し、本実施例では、上記レコーダはハードディスクドライブ(HDDレコーダ)で構成される。セットトップボックス6は通常のテレビジョン8に接続され、選択したチャンネルの復号化したテレビジョン信号、記録したテレビジョン信号、あるいはDVD等から読み出したオーディオまたはオーディオ−ビジュアル・データをテレビジョン8に出力することができる。こうしたセットトップボックス6はしばしば「ホームメディアセンター」と称される。
【0023】
Wi−Fiテレビジョン7も、アンテナ2から分配増幅器3を経由して受信したテレビジョン放送信号を受信し復号化することができる。しかし、本実施例では、Wi−Fiテレビジョン7はセットトップボックス6に比べれば限られた復号化機能しか持たず、このことは、特定チャンネルのテレビジョン信号を出力するためにはセットトップボックス6経由で信号を受信しなければならないことを意味する。この目的のために、セットトップボックス6及びWi−Fiテレビジョン7の各々が通信装置9を有する。セットトップボックス6とWi−Fiテレビジョン7の通信装置9とは互いに同一であり、従って以下では一方のみを説明する。
【0024】
図2に示す通信装置9は、分配増幅器3とセットトップボックス6との間の同軸ケーブル4、あるいは分配増幅器3とWi−Fiテレビジョン7との間の同軸ケーブル5への接続用の同軸ケーブルジャック10を有する。ジャック10はカプラ(結合器)11に接続され、カプラ11は、同軸ケーブル4、5上の受信したテレビジョン信号用のテレビジョン信号出力12への直接的な経路を提供する。従って、セットトップボックス6及びWi−Fiテレビジョン7は共に、分配増幅器3から自機の通信装置9を経由して、より詳細には、自機の通信装置9の同軸ケーブルジャック10、カプラ11、及びテレビジョン信号出力12を経由してテレビジョン信号を受信することができる。
【0025】
通信装置9は、無線リンク上の通信信号の送信及び受信用のアンテナ13も有する。アンテナ13は、通信信号の送信及び受信を処理するための、通信装置9のWi−Fi装置14に接続されている。Wi−Fi装置14は、セットトップボックス6またはテレビジョン7にデータを出力し、そしてこれらからデータを受信するためのデータインタフェース15に接続されている。Wi−Fi装置は基本的に、IEEE802.11規格のいずれかに準拠する点で従来型である。従って本明細書では詳細に説明しない。しかし、セットトップボックス6またはWi−Fiテレビジョン7とデータインタフェース15上でデータを交換するためのベースバンドユニット16、及び通信信号の無線リンク上での送信及び受信を処理するための無線周波数(RF)ユニット17を具えている。
【0026】
重要なこととして、Wi−Fi装置14は、RFユニット17とアンテナ13との間に接続されたダイバーシティスイッチ18を有する。このスイッチ18は、IEEE802.11規格に従い、例えば異なるアンテナを経由した複数の無線通信リンクの1つを、リンク上の信号品質に応じて選択すべく動作するダイオードスイッチである。しかし、本発明のこの実施例では、通信装置9は1つのアンテナのみを有し、ダイバーシティスイッチ18は、このアンテナ13に接続された1つの出力、及びカプラ11に接続された他の出力を有する。カプラ11は、スイッチ18の出力を、同軸ケーブルジャック10に接続された同軸ケーブルに整合させるための受動回路を有する。従ってスイッチ18は、アンテナ13(例えば無線リンク)またはカプラ11(例えば有線リンク)のいずれかを、通信信号の送信及び受信用に選択すべく動作する。
【0027】
図3に示す分配増幅器3は、他の同軸ケーブル経由でアンテナ2に接続するためのアンテナジャック21を有する。分配増幅器3は、セットトップボックス6及びWi−Fiテレビジョン7の同軸ケーブル4、5への接続用の2つの同軸ケーブルジャック22も有する。ダイバーシティ増幅器3は、アンテナ2経由で受信したテレビジョン信号を通常のように増幅する増幅器19を有する。増幅器19の出力は2つのブリッジ回路20間に分割される。各ブリッジ回路20は、増幅されたテレビジョン信号を同軸ケーブルジャック22の一方に出力する。またブリッジ回路20どうしはバイパス線23経由で互いに接続され、通信信号が同軸ケーブル4、5を経由して、セットトップボックス6及びWi−Fiテレビジョン7のそれぞれの通信装置9どうしの間を通うことを可能にする。換言すれば、ブリッジ回路20及びバイパス線23は、通信信号が増幅器19を迂回(バイパス)することを可能にする。従って一部の実施例では、ブリッジ回路20が、テレビジョン放送信号を通信信号から分離するためのフィルタ等(図示せず)を有する。しかし、図4に示すように、テレビジョン信号はアンテナ2において約50〜100MHzの帯域内で受信され、Wi−Fi信号は2.4GHz付近及び5GHz付近の2つの周波数帯域内の一方で受信される。従って、同軸ケーブル4、5上で伝送されるより高周波数のWi−Fi信号は、ケーブル4、5上のテレビジョン信号とは妨害し合わない。さらに、同軸ケーブル4、5はWi−Fi信号用の低ノイズ伝送環境を提供する。
【0028】
使用中には、テレビジョン信号はアンテナ2経由で受信されて分配増幅器3に渡される。分配増幅器3の増幅器19は、受信したテレビジョン信号を増幅し、増幅した信号をブリッジ回路20及び同軸ケーブル4、5経由でセットトップボックス6及びWi−Fiテレビジョン7に分配する。テレビジョン信号は、セットトップボックス6及びWi−Fiテレビジョン7の通信装置9の同軸ケーブルジャック10において受信され、同軸ケーブルジャック10からカプラ11を経由してテレビジョン信号出力12に通じる。従ってセットトップボックス6及びWi−Fiテレビジョン7は、自機の通信装置9を介してテレビジョン放送信号を受信し、そして共に、受信したテレビジョン信号のチャンネルを選択し、この信号を符号化し、そしてテレビジョン信号の所望のコンテンツを出力する
【0029】
しかし、時として、セットトップボックス6がオーディオまたはオーディオ−ビジュアルデータをWi−Fiテレビジョン7に出力することが望まれることがある。このデータは例えば、Wi−Fiテレビジョンでは復号化することができないが、セットトップボックス6では、例えば適切な暗号解読装置を有する;テレビジョン信号のコンテンツがセットトップボックス6によって記録されたものである;DVDのコンテンツである、等の理由で復号化することができるテレビジョン信号のコンテンツであり得る。このことを達成するために、セットトップボックス6の通信装置9はWi−Fiテレビジョン7の通信装置9との通信リンクを確立する。そしてセットトップボックス6は、オーディオまたはオーディオ−ビジュアル・データをインタフェース15経由で自機の通信装置9に出力し、セットトップボックス6の通信装置9は、このデータを上記通信リンク上の通信信号でWi−Fiテレビジョン7の通信装置9に送信する。
【0030】
2つの通信装置9間の通信信号はIEEE802.11規格に従って伝送される。特に、この通信信号は、同期等に使用されるパイロットシーケンスを有するデータパケットを含む。パイロットシーケンスの受信中に、各通信装置9のダイバーシティスイッチ18を、アンテナ13とカプラ11(即ち同軸ケーブル4、5)との間でトグル(交互切換)する。RFユニット17は、アンテナ13及びカプラ11経由で受信したパイロットシーケンスの信号品質を測定し、アンテナ13とカプラ11のうち最良の信号品質を提供する方をデータパケットの受信に使用する。より詳細には、IEEE802.11規格1999によれば、RFユニット17の物理メディア依存(PMD:Physical Media Dependent)層が、アンテナ13及びカプラ11の各々について、パイロットシーケンスについての受信信号強度指標(RSSI:Received Signal Strength Indication)の推定値を作成して、0から15までの値を有する”PMD_RSSI.indicate(STRENGTH)”パラメータを提供する。これらのパラメータから、アンテナ13またはカプラ11に対応する値を有する”ANTENNA_STATE”パラメータが生成され、このパラメータを用いてダイバーシティスイッチ18を制御する。
【0031】
カプラ11どうしの間の同軸ケーブル4、5は、アンテナ13どうしの間の無線通信経路よりも低損失かつ低妨害の信号経路をほぼ不変に提供し、Wi−Fi信号は常に、同軸ケーブル4、5、例えば「有線」リンク上で送信される。しかし、例えばWi−Fiテレビジョン7が同軸ケーブル5から切り離されている場合には、Wi−Fi信号はアンテナ13間の無線リンク上で受信することができる。この変化はパケット毎のベースで発生するのでシームレス(途切れなし)である。従って、ユーザは無線通信の柔軟性(フレキシビリティ)を保ち続ける。しかし、Wi−Fi信号は有線リンク上で送信されるが、他のWi−Fi信号からの妨害をほぼ完全に免れ、Wi−Fi信号どうしで妨害を生じさせない。従って、Wi−Fi通信の全体的能力が改善される。
【0032】
上述した本発明の実施例は、本発明を実現することのできる方法の例に過ぎない。上述した実施例に対する修正、変形、及び変更は、適切な技能及び知識を有する者によってなされる。これらの修正、変形及び変更は、請求項及びその等価なものによって規定された本発明の範囲を逸脱することなしに加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を含むホームメディアシステムを示す概略図である。
【図2】図1に示すホームメディアシステムの通信装置を示す図である。
【図3】図1に示すホームメディアシステムの分配増幅器を示す図である。
【図4】図1に示すホームメディアシステムが使用するテレビジョン信号及び通信信号の周波数範囲を図式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信プロトコルを用いて無線リンクまたは有線リンク経由で通信信号を伝送する通信装置において、
前記通信装置が、前記無線通信プロトコルを使用して、前記他の通信装置から前記無線リンク及び前記有線リンク経由で受信した通信信号の信号品質を監視し、監視される信号品質に応じて、前記通信信号の前記無線リンク経由での前記他の通信装置への送信と、前記通信信号の前記有線リンク経由での前記他の通信装置への送信とを切り換えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記無線通信プロトコルがWi−Fi(登録商標)であることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記監視される信号品質が受信信号強度指標であることを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記監視される信号品質が信号対雑音比であることを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項5】
テレビジョン放送信号を前記有線リンク上で受信すべく接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記有線リンクが同軸ケーブルで構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
前記他の通信装置への前記有線リンクが、前記通信装置と前記他の通信装置との間に分配増幅器を経由して構成され、前記分配増幅器は、テレビジョン放送信号を増幅し、前記有線リンク経由で前記通信装置及び前記他の通信装置に分配し、前記分配増幅器は、前記通信装置と前記他の通信装置との間の通信信号を通過させる回路を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項8】
受信したテレビジョン放送信号を増幅する増幅器と;
増幅した前記テレビジョン放送信号を2つ以上のテレビジョン受信機に分配する分配回路と;
1つの前記テレビジョン受信機の通信装置によって、無線通信プロトコルを用いて他の前記テレビジョン受信機の通信装置に送信される通信信号を通過させて、一方の前記通信装置から他方の前記通信装置に渡す回路と
を具えていることを特徴とする分配増幅器。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の通信装置を前記他の通信装置と共に含むネットワーク。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載の通信装置を内蔵したテレビジョン受信機。
【請求項11】
無線通信プロトコルを用いて無線リンクまたは有線リンク経由で通信信号を1つの通信装置から他の通信装置に送信するステップを具えた通信方法において、
前記1つの通信装置が、前記無線通信プロトコルを使用して、前記他の通信装置から前記無線リンク及び前記有線リンク経由で受信した通信信号の信号品質を監視し、監視される信号品質に応じて、前記通信信号の前記無線リンク経由での前記他の通信装置への送信と、前記通信信号の前記有線リンク経由での前記他の通信装置への送信とを切り換えることを特徴とする通信方法。
【請求項12】
前記無線通信プロトコルがWi−Fiであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記監視される信号品質が受信信号強度指標であることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記監視される信号品質が信号対雑音比であることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記通信装置が、テレビジョン放送信号を前記有線リンク上で受信すべく接続されていることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記有線リンクが同軸ケーブルで構成されることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項17】
前記他の通信装置への前記有線リンクが、前記通信装置と前記他の通信装置との間に分配増幅器を経由して構成され、前記分配増幅器は、テレビジョン放送信号を増幅し、前記有線リンク経由で前記通信装置及び前記他の通信装置に分配し、前記分配増幅器は、前記通信装置と前記他の通信装置との間の前記通信信号を通過させる回路を有することを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
テレビジョン放送信号を増幅して分配する方法において、
前記テレビジョン放送信号を増幅するステップと;
増幅した前記テレビジョン放送信号を2つ以上のテレビジョン受信機に分配するステップと;
1つの前記テレビジョン受信機の通信装置によって、無線通信プロトコルを用いて他の前記テレビジョン受信機の通信装置に送信される通信信号を通過させて、一方の前記通信装置から他方の前記通信装置に渡すステップと
を具えていることを特徴とするテレビジョン放送信号の増幅分配方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−527887(P2008−527887A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550902(P2007−550902)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【国際出願番号】PCT/IB2006/050092
【国際公開番号】WO2006/075294
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(507219491)エヌエックスピー ビー ヴィ (657)
【Fターム(参考)】