説明

無線通信装置および半導体集積回路装置

【課題】電子レンジ信号の1周期時間前の無線LAN信号を高精度に復調し再変調して減算するという処理を必要とせず、かつ、メガbit級の大容量メモリを必要とせずに、電子レンジからの妨害信号を抑圧できる無線通信装置を提供する。
【解決手段】無線通信によってデータの送受信を行う無線通信装置1であって、データの受信のために信号を入力して復調するOFDM復調部14と、OFDM復調部14の前段に配置され、受信信号に対してOFDM復調部14にて等化可能な伝搬路遅延分散時間以下の所定の遅延時間だけ遅延させた遅延信号を取得し、前記受信信号から前記遅延信号を減算して出力する遅延減算部13とを有し、OFDM復調部14は、遅延減算部13から出力された信号を入力して復調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関し、特に、2.4GHz帯の電子レンジが使用される環境での無線LANシステムを主とする無線通信において、電子レンジからの妨害信号等を抑圧除去する無線通信装置および当該無線通信装置に用いられる半導体集積回路装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムとして、無線LAN(Local Area Network)が普及してきており、最近では、パーソナルコンピュータや家庭内ディジタル家電機器にも広く搭載されてきている。
【0003】
無線LANの代表的な規格にはIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.11a/b/gがある。このなかでIEEE802.11b/gは、2.4GHz帯を利用する方式であり、IEEE802.11aに代表される5.2GHz帯利用システムより、通信可能距離の面で良好な特性を有することが知られている。
【0004】
また無線LANシステムのIEEE802.11a/gでは、その変調方式にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex:直交周波数分割多重)と呼ばれるマルチキャリア方式が用いられ、IEEE802.11b/gでは、DSSS/CCK(Direct Sequence Spread Spectrum / Complementary Code Keying)と呼ばれるスペクトル拡散方式が用いられている。これら各方式の詳細については、例えば、非特許文献1に記載がある。
【0005】
一方、ISM(Industry, Scientific and Medical)バンドと呼ばれる上記2.4GHz帯は、医療機器などでの利用とあわせて、電子レンジの漏洩電波の周波数帯でもある。このため、家庭内で2.4GHz帯無線LANを利用する際には、電子レンジの漏洩電波が無線LANシステムへの妨害波となり、妨害波の強度に依存して無線LAN通信の品質が劣化する。この電子レンジからの信号モデルについては、例えば、非特許文献1のp.21−22に記載がある。また、非特許文献2にも記載がある。
【0006】
電子レンジのタイプには、マグネトロンの駆動方式の違いにより、インバータ型とトランス型があるが、主流のインバータ型では、家庭用交流電源をスイッチングに利用するため、非特許文献1のp.21−22に記載されているように、電子レンジからの妨害波レベルは、その交流電源を周期(関東では50Hz、関西では60Hz)とするON−OFF波形(矩形波形)に近い形として観測される。
【0007】
非特許文献3には、この周期性を利用した妨害除去方式が記載されている。非特許文献3に記載の手法では、電子レンジ信号の周期性を利用し、無線LANの受信システムにおいて、その1周期分(60Hzエリアでは1/60=16.6ms、50Hzエリアでは1/50=20ms)遅延させた信号を、対象無線信号の復調前に減じる。ただし、減じる電子レンジ信号に無線LAN信号が重畳されている場合は、無線LAN信号も同じく16.6msもしくは20ms遅延され、受信信号から復調前に減じられるため、復調対象の無線LAN信号からみれば、逆に干渉を大きく付加される結果となる可能性がある。
【0008】
非特許文献3に記載の手法では、これを回避するため、減じる電子レンジ信号に重畳された無線LAN信号が精度よく復調できており、これを再変調して、減じるべき信号からこの無線LAN信号を除去した上で減算処理ができることを前提としている。
【非特許文献1】「802.11高速無線LAN教科書」、改訂三版、インプレスR&D、2008年3月
【非特許文献2】“A Time-Domain Microwave Oven Noise Model for the 2.4GHz Band", IEEE Transactions on Electromagnetic Compatibility, Volume 45, Issue 3, August, 2003, p.561-566
【非特許文献3】「2.5GHz帯無線LANにおける電子レンジ干渉の周期性を利用した除去手法」、電子情報通信学会 スマートインフォメディアシステム研究会(SIS)技術報告、2008年6月8日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の非特許文献3に記載された妨害波の除去手法を利用した無線通信装置では、以下のような課題があることが本発明者により見出された。すなわち、上記非特許文献3に記載の従来技術では、電子レンジ信号1周期分だけ前の無線LAN信号を精度よく復調できていなければならないが、実際には、各種雑音下での復調には、ある程度の誤りが発生するため、種々の処理対策が必要と推察され、その実装実現の複雑度、難易度が高いという課題がある。
【0010】
また、遅延時間が、60Hzエリアでは16.6ms、50Hzエリアでは20msと長く、その分だけメモリに受信信号を記憶する必要がある。具体的には、無線LAN信号を25nsのサンプリング周期とした場合、60Hzエリアで666kワード(=13.2Mbit、1ワード=10bit×2=20bit時)、50Hzエリアでは800kワード(=16Mbit)の大容量メモリが必要となり、民生用での実現ではコスト上の課題がある。
【0011】
そこで本発明の目的は、電子レンジ信号の1周期時間前の無線LAN信号を高精度に復調し再変調して減算するという処理を必要とせず、かつ、メガbit級の大容量メモリを必要とせずに、電子レンジからの妨害信号を抑圧できる無線通信装置および当該無線通信装置に用いられる半導体集積回路装置を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0014】
本発明の代表的な実施の形態による無線通信装置は、データの受信のために信号を入力して復調する復調部と、前記復調部の前段に配置され、受信信号に対して前記復調部にて等化可能な伝搬路遅延分散時間以下の所定の遅延時間だけ遅延させた遅延信号を取得し、前記受信信号から前記遅延信号を減算して出力する遅延減算部とを有し、前記復調部は、前記遅延減算部から出力された信号を入力して復調することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
本発明の代表的な実施の形態によれば、電子レンジ信号の1周期時間前の無線LAN信号を高精度に復調し再変調して減算するという処理を必要とせず、かつ、メガbit級の大容量メモリを必要とせずに、電子レンジからの妨害信号を抑圧し、所要の無線信号を復調することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0018】
<概要>
一般の室内無線伝送システムでは、室内伝播で生じる伝送路の遅延分散特性に対応できるよう設計される。対象無線システムにも依存するが、無線LANシステムでは、通常、対応可能(等化可能)な伝搬路遅延分散時間は数百nsから1usのオーダーまでである。
【0019】
OFDM伝送方式では、よく知られている通り、1つのOFDMシンボルの先頭にガードインターバルと呼ばれる伝送路の遅延分散に対処する部分が設定されている。IEEE802.11a/gのOFDM規格値では、このガードインターバル部分が800nsであるため、これ以下の伝送路での遅延分散特性に対しては、復調部で等化処理が可能となっている。
【0020】
また、スペクトル拡散方式(広い意味でシングルキャリア方式)では、OFDMに見られるガードインターバル部は存在しないが、LMS(Least Mean Square)等化などにより、1伝送シンボル以下の伝搬路遅延分散を等化処理することが通常行われている。IEEE802.11b/gにおけるDSSS/CCKの1伝送シンボルは1usである。
【0021】
本発明の一実施の形態である無線通信装置では、電子レンジ信号のレベルの高い腹の部分では、数百ns程度離れていても信号相関が高いという事実を利用して、上述した等化可能な伝搬路遅延分散時間以下の時間(数百nsから1us程度以下)だけ遅延させた受信信号を、受信信号から減算(あるいは重み付けして減算)し、電子レンジ信号を除去する。
【0022】
その際、受信信号は、室内伝搬で生じる程度のマルチパス伝搬路を通過したのと同様の歪み現象を生じるが、受信側で復調部においてこれを等化処理できるため、上記の非特許文献3に記載の従来技術で必要とされていた、無線LAN信号の高精度復調・再変調による信号減算補正という仕組みを必要としない。
【0023】
また、本実施の形態の無線通信装置では、受信信号を遅延させる時間は、伝送路の遅延分散時間程度(1usオーダーまで)であるため、非特許文献3に記載の従来技術では電子レンジ信号1周期である16.6msもしくは20ms分が必要であった信号記憶用メモリを大幅に小容量化することができる。
【0024】
<実施の形態1>
図12は、本発明の実施の形態1である無線通信装置全体の構成例を示すブロック図である。本実施の形態の無線通信装置1は、IEEE802.11g規格のOFDM伝送方式(OFDMモード)に対応するものである。
【0025】
本実施の形態の無線通信装置1では、送信時は、図示しない外部機器からの送信データが、外部I/Oブリッジ5へ入力され、メディア制御部(MAC部)4により、パケット化される。パケット化された送信データは、ベースバンド送信処理部2にてベースバンド送信信号に変換され、RF部10により、2.4GHz帯の周波数へ変換、さらに高周波増幅され、アンテナ15から空中へ送出される。
【0026】
また、受信時は、アンテナ15から入力された2.4GHz帯の高周波信号が、RF部10にてベースバンド受信信号へ変換され、ベースバンド受信処理部3へ入力され、復調処理される。この際、受信信号に電子レンジ信号が妨害波として重畳されている場合は、ベースバンド受信処理部3にて、後述する妨害抑圧処理がなされた上で復調処理される。復調処理された受信信号は、MAC部4にてパケットの解析・分解・再構築がなされ、外部I/Oブリッジ5を経由して、図示しない外部機器へ受信データとして出力される。
【0027】
[ベースバンド受信処理部]
図1は、無線通信装置1におけるベースバンド受信処理部3の内部構成の例を示すブロック図であり、アンテナ15、RF部10を合わせて記載している。なお、図1では、電子レンジからの妨害信号を除去して信号復調する技術を説明するために必要な部位を中心に記載しており、MAC部4、ならびに、送信に係るベースバンド送信処理部2等については記載を省略している。以下、図1を用いて、本実施の形態の無線通信装置1における、電子レンジ信号を抑圧し、所要のOFDM信号を復調するベースバンド受信処理部3の構成について説明する。
【0028】
ベースバンド受信処理部3は、RF部10からの出力ベースバンド信号(アナログ信号)をディジタルのI/Q信号19に変換するA/D変換部11、I/Q信号19を入力信号として、電子レンジ信号の有無を検出する電子レンジ信号検出部12、妨害波である電子レンジ信号を抑圧除去する遅延減算部13、所要のOFDM信号を復調するOFDM復調部14から構成される。以下、各部位の構成の詳細について説明する。
【0029】
[遅延減算部]
図2は、ベースバンド受信処理部3における遅延減算部13の内部構成の例を示すブロック図である。遅延減算部13は、遅延部131、係数設定部132、減算部134、乗算部133、スイッチ135から構成される。
【0030】
遅延部131は、遅延減算部13への入力のI/Q信号19(以下、時刻kにおけるこの値をrと記載する場合がある)を、予め設定された時間Tだけ遅延させる。本実施の形態の無線通信装置1では、遅延部131で遅延させる時間Tは、T=400nsと設定されているものとする。係数設定部132は、I/Q信号19と遅延部131の出力信号(同じく、dと記載する場合がある)とを入力として、重み係数(同じく、hと記載する場合がある)を算出する。乗算部133は、遅延部131の出力に、係数設定部132によって求められた重み係数hを乗算する。減算部134は、乗算部133の出力を、I/Q信号19から減算する。
【0031】
これにより、遅延時間Tだけ遅延させた受信信号を、受信信号から減算することで電子レンジ信号を除去する。なお、遅延させた受信信号に乗算する重み係数hは、詳細は後述するが、受信信号に依存して決定される係数であり、電子レンジ信号の除去を効果的に行うために、受信信号と遅延させた受信信号との振幅位相差を適応制御するための係数である。
【0032】
スイッチ135は、減算部134での減算動作、すなわち電子レンジ信号の除去動作のON/OFF制御を行う。なお、スイッチ135は、電子レンジ信号検出部12からの制御信号16によりON/OFFが制御されるが、初期値はOFFである。
【0033】
[係数設定部]
図9は、遅延減算部13における係数設定部132の内部構成の例を示すブロック図である。係数設定部132は、共役複素部91、2乗部92、乗算部93a〜c、加算部94a、b、N用レジスタメモリ95、D用レジスタメモリ96、除算部97、忘却係数α発生部98から構成される。
【0034】
共役複素部91は、係数設定部132への入力であるdの共役複素数を得る。また、2乗部92は、dの絶対値の2乗を算出する。また、N用レジスタメモリ95、およびD用レジスタメモリ96は、それぞれ、後述するN、Dの値を記憶する。また、忘却係数α発生部98は、忘却係数α(0<α<1)を発生する。
【0035】
乗算部93aは、共役複素部91の出力dと、係数設定部132への入力であるrとの積を計算する。なお、文字の右肩の*印は、共役複素数を表す。加算部94aは、乗算部93aの出力d×rを、1クロック前のN用レジスタメモリ95の値Nk−1に乗算部93bにて忘却係数αを乗算した重み付き累積結果α・Nk−1と累積加算し、N用レジスタメモリ95および除算部97にNとして出力する。
【0036】
また、加算部94bは、2乗部92の出力|dを、1クロック前のD用レジスタメモリ96の値Dk−1に乗算部93cにて忘却係数αを乗算した重み付き累積結果α・Dk−1と累積加算し、D用レジスタメモリ96および除算部97にDとして出力する。除算部97は、加算部94a、bにて算出されたN、Dから、h=N/Dとしてhを求める。
【0037】
なお、図9の構成例の導出を簡単に説明しておくと以下の通りである。説明を簡単にするために、受信信号rが電子レンジ信号(抑圧したい妨害信号)のみと仮定し、重み係数hを設定するための評価関数Jを以下の式のように定める。
【0038】
【数2】

【0039】
この評価関数Jを極小化すれば、受信信号からhなる重み係数を乗算した遅延信号を減算した結果の信号系列の電力和(時間m方向にαの重み付けされた電力和)、すなわち誤差電力が極小化され、この意味で、妨害波が抑圧される。こためには、Jのhによる偏微分を0とすることが必要となる。実際、このようなhは、
【0040】
【数3】

【0041】
の式で表されるN、Dを用いて、h=N/Dで与えられる。ここで、N、Dは、それぞれ以下の漸化式で表現することができる。
【0042】
【数4】

【0043】
このN、Dについての漸化式を実装した構成例が図9である。
【0044】
なお、上述した評価関数J(誤差電力)に基づく重み係数hの導出のモデルは一例であり、他のモデルを適用する場合は、それに伴い係数設定部132の内部構成も異なるものとなる。
【0045】
[遅延部]
図10は、遅延減算部13における遅延部131の内部構成の例を示すブロック図である。ここで、無線通信装置1の動作クロック周波数を40MHz(周期25ns)とすると、T=400nsの遅延は16クロック分に相当する(25ns×16=400ns)。従って、遅延部131は、1ワード(ここではI、Q信号それぞれ10ビットとして、20ビット幅)単位のワードメモリ素子1001を1001a〜gで示されるように16段有する。入力されたrは、1クロック毎にワードメモリ素子1001を1つずつ前進(図10の右側へ移動)し、16クロック後に出力端子にdとして現れる。つまり、d=rk−16である。
【0046】
なお、本実施の形態では、ワードメモリ素子1001を16段有して、T=400nsの遅延時間を実現しているが、例えば、遅延時間Tの値を設定するレジスタを有してTの値を外部から可変とし、遅延部131は、当該レジスタの値を参照して、使用するワードメモリ素子1001の段数を調整する等により遅延時間Tを変更可能なように構成してもよい。
【0047】
[OFDM復調部]
図4は、ベースバンド受信処理部3におけるOFDM復調部14の内部構成の例を示すブロック図である。これはOFDM信号の復調を行う復調部としては一般的な構成である。主要部分のみを記載しているが、OFDM復調部14は、FIRフィルタ141、同期部142、FFT(高速フーリエ変換部)143、等化部144、デインタリーバ145、ビタビデコーダ146、デスクランブラ147から構成される。
【0048】
IEEE802.11gのOFDM仕様規格から、ガードインターバルに対応する伝送路遅延分散の800nsまでは、大きな性能劣化を伴わず等化部144の補償により受信することが可能である。なお、OFDM復調部14は、OFDMのパケット受信中に同期確立信号17をアサートする。
【0049】
[電子レンジ信号検出部]
図3は、ベースバンド受信処理部3における電子レンジ信号検出部12の内部構成の例を示すブロック図である。電子レンジ信号検出部12は、2乗部121〜122、加算部123、時間カウンタ124、受信状態判定部125から構成される。
【0050】
2乗部121、122は、A/D変換部11からのI/Q信号19におけるI信号、Q信号をそれぞれ2乗(検波)する。加算部123は、2乗部121、122のそれぞれの出力の和を算出する。時間カウンタ124は、加算部123の出力が予め設定された閾値以上となっている継続時間をカウントする。なお、加算部123の出力が閾値未満となったことを検出する毎にリセットされる。
【0051】
受信状態判定部125は、時間カウンタ124の値と、OFDM復調部14での同期が確立したか否かを表す同期確立信号(パケット受信中を表す信号)17とにより、受信信号状態(電子レンジ信号を受信しているのか否か)を判断する。
【0052】
[ベースバンド受信処理部の動作]
上述した無線通信装置1およびベースバンド受信処理部3の構成に基づき、以下に電子レンジ信号が対象無線LAN信号に重畳されて受信される場合の、ベースバンド受信処理部3の動作と効果について説明する。
【0053】
図5は、電子レンジ信号が対象無線LAN信号に重畳されて受信される場合の動作を説明するためのタイミング図である。電子レンジ信号は、上述した通り、その包絡線信号(I信号の2乗+Q信号の2乗)も、周期が16.6msもしくは20msの矩形状波形となる。一般に無線LAN信号のパケット長は数ms以下であるため、両者が重畳された信号の包絡線(信号レベル)は、図5の上段図のような時間波形になる。
【0054】
ここで、電子レンジ信号検出部12において、受信信号が電子レンジ信号であるか否かを判定するため、包絡線信号レベルが予め設定された閾値をある規定時間以上継続しているかどうかを判定する。本実施の形態では、閾値を−82dBm、規定時間を1msとする。この規定時間である1msの間、受信レベルが継続して閾値を超えている場合は、受信信号は電子レンジ信号である可能性がある。あるいは、通常の無線LAN信号である可能性もある。
【0055】
通常の無線LAN信号の場合、対象無線LAN信号が適当な信号強度以上であれば、OFDM復調部14で同期が確立する。従って、この同期が確立していないこと(対象無線システムのパケットを受信していないこと)を、同期確立信号17を参照することにより判断し、受信信号が電子レンジ信号(もしくは電子レンジ信号が主の受信信号)であるかを判定する。
【0056】
すなわち、閾値を超える信号レベルを規定時間(1ms)以上観測し、その規定時間以内に、OFDM復調部14からの同期確立信号17がアサートされない場合は、受信信号は電子レンジ信号であると判断し、遅延減算部13のスイッチ135をONにするよう制御信号16を出力して(図中の(1))、電子レンジ信号を抑圧する。なお、同期確立信号17およびスイッチ135の状態変化の様子を図5の中段および下段に示す。
【0057】
電子レンジ信号検出部12は、受信状態判定部125において、電子レンジ信号を受信したと判断した時刻から、時間カウンタ124がカウントアップを継続している限りは、遅延減算部13のスイッチ135をONにし続けるよう制御信号16を出力する。ひとたび遅延減算部13のスイッチ135をONにした後は、対象の無線LAN信号が受信され同期確立信号17がアサートされても、時間カウンタ124のカウントアップが続いている限りは、遅延減算部13のスイッチ135はOFFにせず、電子レンジ信号の除去動作を継続する(図中の(2))。
【0058】
その後、無線LAN信号が終了し、かつ、電子レンジ信号もOFFになると、時間カウンタ124でのカウントアップ動作が停止するため、この事象を受信状態判定部125で検知した場合は、遅延減算部13のスイッチ135をOFFにし、合わせて、時間カウンタ124のカウンタ値を初期値へリセットする(図中の(3))。
【0059】
一方、閾値を超える信号レベルを規定時間(1ms)以上観測した場合でも、その規定時間以内に対象の無線LAN信号が受信され同期確立信号17がアサートされた、もしくはされている場合は、遅延減算部13のスイッチ135をOFFにしたままとする(図中の(4)、(5))。これにより、無線LAN信号のみ、もしくは、無線LAN信号を主要信号として受信している場合に、遅延減算部13を動作させないようにする。
【0060】
同期確立信号17がなくなった時点以降で、受信信号レベルが閾値を超えている場合は、時間カウンタ124のカウントアップを再開し、閾値レベルを超える信号レベルを規定時間以上継続して観測した場合は、遅延減算部13のスイッチ135をONにして、電子レンジ信号を抑圧する(図中の(5))。
【0061】
遅延減算部13のスイッチ135のONに従い、遅延減算部13の係数設定部132は、電子レンジ信号を含む入力信号(I/Q信号19)から係数hを求め、求めた係数hを、遅延部131の出力に乗じ、その結果を遅延減算部13の入力から減じて出力する。本実施の形態では、遅延部131の遅延時間はT=400nsに設定されている。
【0062】
上述した通り、電子レンジ信号は、そのベースバンド信号(包絡線)として、周期16.6msもしくは20msのほぼ矩形パルスであるため、矩形波の腹の部位(両エッジ部を除く部分)では、usオーダー以下の短時間で見る限り、その相関はかなり高い。このため、usオーダー以下の時間遅延の信号であれば、遅延信号を減算することで受信信号から電子レンジ信号を抑圧することが可能となる。
【0063】
一方、400nsの遅延信号の重み付き減算は、所要の無線LAN信号に対しても同時になされるため、OFDM信号自体に400nsの遅延波が重畳された形となり、OFDM復調部14へ入力される。上述した通り、OFDM復調部14は、OFDM信号のガードインターバル長以下の伝搬遅延波については、等化部144等にて補償して復調することが可能な構成となっているため、遅延減算部13で重畳された400nsの遅延波の影響はあまり受けることなく対象のOFDM信号を復調することができる。
【0064】
本実施の形態では、対象無線伝送方式のOFDMガードインターバル長(≦1シンボル長)以内の遅延減算処理による電子レンジ信号除去であるため、等化部144が有効に働き、従来技術で必要とされていたような対象無線信号の復調および再変調信号の減算補正操作を必要としない。また、受信信号の遅延時間もT=400nsであるため、従来技術での16.6msもしくは20msといった信号遅延メモリを必要とせず、図10に示す通り、16ワード(=320bit)のメモリ容量にて装置規模を小型化することができる。
【0065】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2である無線通信装置について説明する。本実施の形態の無線通信装置は、IEEE802.11b規格対応の無線通信装置であり、全体の構成例を示すブロック図は図12と同様である。ただし、無線伝送方式がスペクトル拡散方式であるDSSS/CCK方式であるため、ベースバンド受信処理部3およびベースバンド送信処理部2は、当該方式に合わせた形として具備される。
【0066】
[ベースバンド受信処理部]
図6は、本実施の形態の無線通信装置1におけるベースバンド受信処理部3の内部構成の例を示すブロック図であり、アンテナ15、RF部10を合わせて記載している。なお、図6についても、図1と同様に、電子レンジからの妨害信号を除去して信号復調する技術を説明するために必要な部位を中心に記載しており、MAC部4、ならびに、送信に係るベースバンド送信処理部2等については記載を省略している。また、アンテナ15、RF部10、A/D変換部11、電子レンジ信号検出部12は、実施の形態1の図1に示すものと同様である。
【0067】
本実施の形態のベースバンド受信処理部3では、無線伝送方式がDSSS/CCK方式であることに対応するため、OFDM復調部14に代えて、IEEE802.11b規格の信号を復調するDSSS/CCK復調部18を有する。また、遅延減算部13aは、実施の形態1の図2に示す構成と同一の構成であるが、ここでは遅延部131における受信信号の遅延時間をT=100nsと設定している。
【0068】
なお、これに合わせて、図10で示される遅延部131も、実施の形態1での16段構成から4段構成(25ns×4=100ns)となる。本実施の形態の遅延部131についても、実施の形態1と同様に、例えば、遅延時間Tの値を設定するレジスタを有してTの値を外部から可変とし、遅延部131は、当該レジスタの値を参照して、使用するワードメモリ素子1001の段数を調整する等により遅延時間Tを変更可能なように構成してもよい。
【0069】
[DSSS/CCK復調部]
図7は、ベースバンド受信処理部3におけるDSSS/CCK復調部18の内部構成の例を示すブロック図である。これはDSSS/CCK信号の復調を行う復調部としては一般的な構成である。主要部分のみを記載しているが、DSSS/CCK復調部18は、FIRフィルタ181、同期部182、等化部183、逆拡散/符号相関検出部184、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)復調部185、並列−直列変換部186、デスクランブラ187から構成される。
【0070】
IEEE802.11bのDSSS/CCKのシンボル長は1usであり、一般的にはそれ以下のマルチパス干渉に対応できるよう等化部183が設計される。本実施の形態の無線通信装置1では、等化部183に16タップのLMS(Least Mean Square)型の等化器を用いる。ここでタップ間隔は22MHz相当である。これにより、100ns程度の遅延波であれば十分補正することが可能である。
【0071】
[ベースバンド受信処理部の動作]
上述した本実施の形態の無線通信装置1およびベースバンド受信処理部3の構成に基づき、以下に電子レンジ信号が対象無線LAN信号に重畳されて受信される場合の、ベースバンド受信処理部3の動作と効果について説明する。
【0072】
電子レンジ信号検出部12での電子レンジ信号の検出ならびに遅延減算部13aでの動作については実施の形態1と同様である。ただし、本実施の形態では、遅延減算部13aでの受信信号の遅延時間がT=100nsと設定されているので、電子レンジ信号に重畳されて無線LAN信号が受信されるときは、遅延減算部13aによる電子レンジ信号の抑圧動作により、100ns遅延されたDSSS/CCK信号がマルチパス伝搬結果と同様の形で重畳されて受信される。
【0073】
これにより、所要の無線LAN信号に対して上記のマルチパス干渉と同様の歪みを生じるが、DSSS/CCK復調部18における等化部183の動作によりこのマルチパス成分は等化補正され、所要のDSSS/CCK信号は電子レンジ信号による妨害が除去され適正に受信される。
【0074】
本実施の形態においては、対象無線伝送方式の1シンボル長以内の遅延減算処理による電子レンジ信号除去であるため、実施の形態1と同様に等化部183が有効に働き、従来技術で必要とされていたような対象無線信号の復調および再変調信号の減算補正操作を必要としない。また、受信信号の遅延時間も1us以下であるため、従来技術での16.6msもしくは20msといった大容量メモリを必要とせず、装置規模を小型化することができる。なお、本実施の形態では、遅延時間をT=100nsとしているため、必要となるメモリは実施の形態1の場合の4分の1である。
【0075】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3である無線通信装置について説明する。本実施の形態の無線通信装置は、IEEE802.11g規格のOFDM対応の無線通信装置であり、全体の構成例を示すブロック図は図12と同様である。
【0076】
[ベースバンド受信処理部]
図8は、本実施の形態の無線通信装置1におけるベースバンド受信処理部3の内部構成の例を示すブロック図であり、アンテナ15、RF部10を合わせて記載している。なお、図8についても、図1と同様に、電子レンジからの妨害信号を除去して信号復調する技術を説明するために必要な部位を中心に記載しており、MAC部4、ならびに、送信に係るベースバンド送信処理部2等については記載を省略している。また、アンテナ15、RF部10、A/D変換部11は、実施の形態1の図1に示すものと同様である。
【0077】
本実施の形態のベースバンド受信処理部3では、図1に示す構成から電子レンジ信号検出部12を削除した構成となっている。合わせて、遅延減算部13の動作を制御する制御信号16は、常時ONの設定となっている。
【0078】
[ベースバンド受信処理部の動作]
上述した無線通信装置1およびベースバンド受信処理部3の構成に基づき、以下に電子レンジ信号が対象無線LAN信号に重畳されて受信される場合の、ベースバンド受信処理部3の動作と効果について説明する。
【0079】
本実施の形態のベースバンド受信処理部3では、電子レンジ信号の有無を検出することなく、常に遅延減算部13を動作させる。このため、電子レンジ信号が存在する場合は、その受信時の動作特性は実施の形態1で説明したものとほぼ同様である。
【0080】
一方、電子レンジ信号が存在しない期間でも、遅延減算部13が動作するため、所要の無線LAN信号に対してマルチパス干渉を人工的に付加する作用が継続する。このため、受信特性は、遅延減算部13を動作させない場合より劣化することがあるが、上述した通り、ベースバンド受信処理部3が有する等化部144により受信信号の補償が行われるため、ある程度の通信品質を確保することができる。
【0081】
本実施の形態においても、対象無線伝送方式のOFDMガードインターバル長(≦1シンボル長)以内の遅延減算処理による電子レンジ信号除去であるため、等化部144が有効に働き、従来技術で必要とされていたような対象無線信号の復調および再変調信号の減算補正操作を必要としない。また、信号遅延に必要なメモリ量も実施の形態1と同じく従来技術と比較して十分削減されている。
【0082】
なお、本実施の形態では、OFDM方式に対応する無線通信装置1について説明しているが、本実施の形態で説明したような、電子レンジ信号検出部12を有さないベースバンド受信処理部3の構成は、実施の形態2で説明したようなDSSS/CCK方式に対応する無線通信装置1に対しても同様に適用することが可能である。
【0083】
<実施の形態4>
次に、本発明の実施の形態4である半導体集積回路装置について説明する。本実施の形態の半導体集積回路装置は、IEEE802.11b/g規格対応の無線通信装置に用いる半導体集積回路装置である。
【0084】
図11は、本実施の形態である半導体集積回路装置の構成例を示すブロック図である。本実施の形態の半導体集積回路装置30は、図12に示す無線通信装置1のアンテナ15、およびRF部10を除く部分を半導体集積回路に集積したものであり、外部のRF部からの受信(RX)信号を入力するベースバンド受信処理部3a、RF部へ送信(TX)信号を出力するベースバンド送信処理部2a、MAC部4、外部機器と送受信のためのデータ通信をするための外部I/Oブリッジ5、メインメモリ6、CPU7、ならびに、MAC部4、外部I/Oブリッジ5、メインメモリ6、CPU7等を相互接続する内部バス8などから構成されている。
【0085】
図11において、ベースバンド受信処理部3aは、A/D変換部11、遅延減算部13、電子レンジ信号検出部12、OFDM/DSSS/CCK復調部14aから構成され、ベースバンド送信処理部2aは、D/A変換部21、OFDM/DSSS/CCK変調部22から構成される。なお、OFDM/DSSS/CCK復調部14aは、伝送方式がOFDMモードの信号とDSSS/CCKモードの信号のいずれでも復調可能とする機能ブロックである。OFDM/DSSS/CCK変調部22についても、同様に、いずれのモードでも変調可能な機能ブロックである。また、電子レンジ信号検出部12ならびに遅延減算部13など、同一番号を付する部位は、実施の形態1〜3で説明した機能と同一機能を有する。
【0086】
本実施の形態の遅延減算部13における遅延部131の構成は、図10に示した通り、16段のワードメモリ素子群で、320bit分のフリップフロップで構成可能である。従来技術では、遅延部131に16Mbit分ものメモリが必要とされ、半導体集積回路を実現する場合、その回路規模(面積)が大きくなり、図11における他の処理部と合わせて、全体を1つの民生用の半導体集積回路装置として実現することはコスト面で難があったが、本実施の形態によればその規模を削減できるため、図11に示す構成全体を民生用の1つの半導体集積回路装置30として実現可能なレベルとなる。
【0087】
なお、本実施の形態の半導体集積回路装置30は、図11に示した各部を有する構成となっているが、上述の実施の形態1〜3で説明したような電子レンジ信号の抑圧動作を行うための半導体集積回路装置30として構成するには、少なくともベースバンド受信処理部3aの遅延減算部13およびOFDM/DSSS/CCK復調部14aに相当する部分(受信信号の等化補正を行う部分)が同一の半導体回路装置に集積されていればよい。
【0088】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0089】
例えば、上述の実施の形態1〜4では、2.4GHz帯の電子レンジ信号が妨害信号となる場合について具体例を開示したが、妨害信号源が電子レンジ以外であっても、また、利用周波数が2.4GHz帯以外であっても、妨害信号の波形が電子レンジのものと同様の形態、すなわち、OFDM復調部14等の復調部にて等化可能な伝搬路遅延分散時間程度離れていても、信号波形に相関を有するようなものであれば、本発明の技術を適用して同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、無線LANシステムを主とする無線通信において、電子レンジからの妨害信号等を抑圧除去する無線通信装置および当該無線通信装置に用いられる半導体集積回路装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態1の無線通信装置におけるベースバンド受信処理部の内部構成の例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1のベースバンド受信処理部における遅延減算部の内部構成の例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1のベースバンド受信処理部における電子レンジ信号検出部の内部構成の例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1のベースバンド受信処理部におけるOFDM復調部の内部構成の例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態1における電子レンジ信号が対象無線LAN信号に重畳されて受信される場合の動作を説明するためのタイミング図である。
【図6】本発明の実施の形態2の無線通信装置におけるベースバンド受信処理部の内部構成の例を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2のベースバンド受信処理部におけるDSSS/CCK復調部の内部構成の例を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態3の無線通信装置におけるベースバンド受信処理部の内部構成の例を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態1の遅延減算部における係数設定部の内部構成の例を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態1の遅延減算部における遅延部の内部構成の例を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態4である半導体集積回路装置の構成例を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態1である無線通信装置全体の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0092】
1…無線通信装置、
2、2a…ベースバンド送信処理部、3、3a…ベースバンド受信処理部、4…MAC部、5…外部I/Oブリッジ、6…メインメモリ、7…CPU、8…内部バス、10…RF部、11…A/D変換部、12…電子レンジ信号検出部、13…遅延減算部、13a…遅延減算部、14…OFDM復調部、14a…OFDM/DSSS/CCK復調部、15…アンテナ、16…制御信号、17…同期確立信号、18…DSSS/CCK復調部、19…I/Q信号、
21…D/A変換部、22…OFDM/DSSS/CCK変調部、30…半導体集積回路装置、
121、122…2乗部、123…加算部、124…時間カウンタ、125…受信状態判定部、
131…遅延部、132…係数設定部、133…乗算部、134…減算部、135…スイッチ、
141…FIRフィルタ、142…同期部、143…FFT、144…等化部、145…デインタリーバ、146…ビタビデコーダ、147…デスクランブラ、
181…FIRフィルタ、182…同期部、183…等化部、184…逆拡散/符号相関検出部、185…DQPSK復調部、186…並列−直列変換部、187…デスクランブラ、
91…共役複素部、92…2乗部、93a〜c…乗算部、94a、b…加算部、95…N用レジスタメモリ、96…D用レジスタメモリ、97…除算部、98…忘却係数α発生部、
1001a〜g…ワードメモリ素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信によってデータの送受信を行う無線通信装置であって、
前記データの受信のために信号を入力して復調する復調部と、
前記復調部の前段に配置され、受信信号に対して前記復調部にて等化可能な伝搬路遅延分散時間以下の所定の遅延時間だけ遅延させた遅延信号を取得し、前記受信信号から前記遅延信号を減算して出力する遅延減算部とを有し、
前記復調部は、前記遅延減算部から出力された信号を入力して復調することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
データの送受信を行う無線伝送方式にOFDM(直交周波数分割多重)方式を用いて無線通信によりデータの送受信を行う無線通信装置であって、
前記データの受信のために信号を入力して復調する復調部と、
前記復調部の前段に配置され、受信信号に対して前記OFDM方式で規定されるガードインターバル長以下の所定の遅延時間だけ遅延させた遅延信号を取得し、前記受信信号から前記遅延信号を減算して出力する遅延減算部とを有し、
前記復調部は、前記遅延減算部から出力された信号を入力して復調することを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信装置において、
データの送受信を行う無線伝送方式にスペクトル拡散方式を用いることを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線通信装置において、
前記受信信号を入力として、前記無線通信に対する妨害波であり、前記復調部にて等化可能な伝搬路遅延分散時間程度離れていても信号波形に相関を有する前記妨害波の存在を検出する妨害波検出部を有し、
前記妨害波検出部における前記妨害波の検出結果に基づいて、前記遅延減算部における前記遅延信号の減算実行の可否を制御することを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信装置において、
前記妨害波検出部にて検出する前記妨害波が、電子レンジからの漏洩電波であることを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線通信装置において、
前記遅延減算部は、前記受信信号に基づいて重み係数を算出する係数設定部を有し、
前記受信信号から前記遅延信号を減算する際に、前記遅延信号に前記係数設定部にて決定された前記重み係数を乗算した後に減算することを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の無線通信装置において、
前記係数設定部にて決定される時刻kにおける前記重み係数hが、時刻kでの前記受信信号をr、時刻kでの前記遅延信号をd、忘却係数をα(0<α<1)として、数1式によって表されるものであることを特徴とする無線通信装置。
【数1】

【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の無線通信装置に用いる半導体集積回路装置であって、
少なくとも前記復調部、および、前記遅延減算部を同一の半導体回路装置に集積することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体集積回路装置において、
前記遅延時間を設定可能であるレジスタを有することを特徴とする半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−62805(P2010−62805A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225724(P2008−225724)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】