説明

無線通信装置及び無線エントランスシステム

【課題】現用系装置と待機系装置との間での位相同期を効率よく行う無線通信装置及び無線エントランスシステムを提供する。
【解決手段】PLL回路14aは、インターフェース部100からの第1タイミング信号と読出カウンタ20aからの第2タイミング信号とが同相となるように、第2クロックを読出カウンタ20a、送信用無線フレーム処理部122a及びフレーム変調部124aに出力する。PLL回路14bは、前記第1タイミング信号と読出カウンタ20bからの第3タイミング信号とが同相となるように、第3クロックを読出カウンタ20b、送信用無線フレーム処理部122b及びフレーム変調部124bに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送データ部と、第1メモリ回路及び第1PLL回路を有する現用系装置と、第2メモリ回路及び第2PLL回路を有する待機系装置とを備える無線通信装置及びこの無線通信装置を備える無線エントランスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、送信側及び受信側に無線通信装置を配置した無線エントランスシステムでは、送信側無線通信装置に現用系装置及び待機系装置の2つの装置を具備した冗長構成とすることにより、該送信側無線通信装置の保守に必要な前記現用系装置から前記待機系装置への切替時に回線断とならないような信頼性の高いシステムを実現している。
【0003】
この場合、前記受信側無線通信装置は、前記送信側無線通信装置と同様に、現用系装置及び待機系装置を配置した冗長構成となっているので、送信側及び受信側のどちらかで前記切替を行うことが可能であるが、本明細書では、前記送信側での切替について説明する。
【0004】
送信側で現用系装置から待機系装置に切り替える際に、受信側無線通信装置が安定に動作して無瞬断とならないようにするためには、前記現用系装置と前記待機系装置との間で送信信号に係るフレーム同期と変調シンボルクロック(伝送データ)の位相同期とが各々取れていることが必要である。
【0005】
図6は、前記現用系装置で生成されるフレーム化された送信信号と、前記待機系装置で生成されるフレーム化された送信信号とを各々示すものであり、前記各送信信号は、伝送データにフレーム同期信号を挿入することにより生成される。この場合、前記現用系装置から前記待機系装置に切り替えても、前記現用系装置のフレーム同期信号と前記待機系装置のフレーム同期信号とが互いに位相同期し、且つ前記現用系装置の伝送データと前記待機系装置の伝送データとが互いに位相同期していれば、受信側無線通信装置でのフレーム同期信号の保持や前記伝送データのタイミング保持が保証される。
【0006】
図7は、特許文献1に係る送信側無線通信装置2のブロック図であり、この送信側無線通信装置2では、上記した位相同期を行っている。
【0007】
すなわち、送信側無線通信回路2は、伝送データ部4と現用系装置6aと待機系装置6bとを備え、現用系装置6aは、メモリ回路8a、無線フレーム処理部10a、変調部12a及びPLL回路14aを有し、一方で、待機系装置6bは、メモリ回路8b、無線フレーム処理部10b、変調部12b及びPLL回路14bを有する。また、各メモリ回路8a、8bは、書込カウンタ16a、16bとメモリ18a、18bと読出カウンタ20a、20bとスイッチ22a、22bとを有する。
【0008】
ここで、伝送データ部4は、メモリ回路8a、8bに、伝送データと該伝送データに基づく第1クロック及び第1タイミング信号とを各々出力する。書込カウンタ16a、16bは、入力された第1タイミング信号の周期内に順次取り込まれる前記第1クロックをカウントし、そのカウント値をメモリ18a、18bに順次出力する。メモリ18a、18bは、入力された前記カウント値に基づいて前記伝送データを順次書き込む。この結果、メモリ18aでの前記伝送データの書込タイミングと、メモリ18bでの前記伝送データの書込タイミングとの同期を取ることができる。
【0009】
メモリ18a、18bは、読出カウンタ20a、20bからの第2又は第3タイミング信号に基づいて、書き込まれている前記伝送データを順次読み出して無線フレーム処理部10a、10bに出力する。無線フレーム処理部10a、10bは、順次入力された前記伝送データにフレーム同期信号を挿入して送信信号を生成し、生成した前記送信信号を変調部12a、12bに出力する。変調部12a、12bは、入力された前記送信信号を変調して図示しない周波数変換部に出力する。
【0010】
この場合、読出カウンタ20aには、スイッチ22aの切替動作によって自己の第2タイミング信号又は読出カウンタ20bの第3タイミング信号が入力され、且つPLL回路14aからの第2クロックが入力される。一方、読出カウンタ20bには、スイッチ22bの切替動作によって自己の第3タイミング信号又は読出カウンタ20aの第2タイミング信号が入力され、且つPLL回路14bからの第3クロックが入力される。
【0011】
この結果、読出カウンタ20aは、自己の第2タイミング信号が入力したとき、前記第2タイミング信号に基づいて、入力された前記第2クロックをカウントし、そのカウント値を第2タイミング信号としてメモリ18aに順次出力し、一方で、前記第3タイミング信号が入力したとき、前記第3タイミング信号に基づいて、入力された前記第2クロックをカウントし、そのカウント値を第2タイミング信号としてメモリ18aに出力する。
【0012】
また、読出カウンタ20bは、自己の第3タイミング信号が入力したとき、前記第3タイミング信号に基づいて、入力された前記第3クロックをカウントし、そのカウント値を第3タイミング信号としてメモリ18aに出力し、一方で、前記第2タイミング信号が入力したとき、前記第2タイミング信号に基づいて、入力された前記第3クロックをカウントし、そのカウント値を第3タイミング信号としてメモリ18aに出力する。
【0013】
従って、メモリ回路8a、8bでは、読出カウンタ20a、20bに第2タイミング信号あるいは第3タイミング信号を各々供給することにより、メモリ18aでの伝送データの読出タイミングと、メモリ18bでの伝送データの読出タイミングとの同期を取ることができる。
【0014】
さらに、PLL回路14aは、第2及び第3クロックが同相となるように、前記第2クロックを出力し、一方で、PLL回路14bは、前記第2及び第3クロックが同相となるように、前記第3クロックを出力する。従って、PLL回路14aを自走型の同期回路とし、且つPLL回路14bをPLL回路14aに同期させるようにすれば、現用系装置6aでの伝送データと待機系装置6bでの伝送データとの位相同期や、伝送データの変調シンボルクロックの位相同期が可能である。
【0015】
【特許文献1】特開2004−266553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述した特許文献1の送信側無線通信装置2では、下記の問題点がある。
【0017】
(1)第2及び第3クロックを高速化させると、第2及び第3タイミング信号も高速化するので、読出カウンタ20a、20bから前記第2及び第3タイミング信号を出力することが困難となる。
【0018】
(2)PLL回路14a、14bの一方の回路を自走型の回路とし、他方の回路を前記自走型回路に同期する回路とし、PLL回路14a、14bの動作中に自走型回路及びこれに同期する回路の切替を行う場合には、前記第2及び第3クロックの変動を考慮したPLL回路14a、14bのループ設計や切替のタイミング制御が必要となる。
【0019】
(3)PLL回路14aとPLL回路14bとの間で第2及び第3クロックの伝送経路に起因する位相差が発生する。
【0020】
(4)第2及び第3クロックと第1クロックとの同期が取られていない。
【0021】
図8は、本出願人が(4)の問題に鑑みて案出した送信側無線通信装置30のブロック図である。
【0022】
この送信側無線通信装置30において、PLL回路14a、14bは、第1クロックと第2又は第3クロックとの間で位相比較を行うと共に、PLL回路14a、14b内の図示しない発振器の位相同期を行っている。
【0023】
しかしながら、送信側無線通信装置30では、上記の(1)〜(3)の問題を解決することができない。
【0024】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、現用系装置と待機系装置との間での位相同期を効率よく行うことを可能とする無線通信装置及びこの無線通信装置を備える無線エントランスシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係る無線通信装置は、伝送データ部と、第1メモリ回路及び第1PLL回路を有する現用系装置と、第2メモリ回路及び第2PLL回路を有する待機系装置とを備え、前記伝送データ部は、伝送データ、第1クロック及び第1タイミング信号を前記第1及び第2メモリ回路に各々出力すると共に、前記第1タイミング信号を前記第1及び第2PLL回路に出力し、前記第1メモリ回路は、入力された前記第1タイミング信号に基づいて該第1メモリ回路に入力される前記第1クロックの個数をカウントし、そのカウント値に基づいて前記伝送データを順次書き込み、一方で、前記第1PLL回路から前記第1メモリ回路に入力される第2クロックの個数をカウントし、そのカウント値に基づいて、書き込まれている前記伝送データを順次読み出すと共に、第2タイミング信号を前記第1PLL回路に出力し、前記第2メモリ回路は、入力された前記第1タイミング信号に基づいて該第2メモリ回路に入力される前記第1クロックの個数をカウントし、そのカウント値に基づいて前記伝送データを順次書き込み、一方で、前記第2PLL回路から前記第2メモリ回路に入力される第3クロックの個数をカウントし、そのカウント値に基づいて、書き込まれている前記伝送データを順次読み出すと共に、第3タイミング信号を前記第2PLL回路に出力し、前記第1PLL回路は、前記第1及び第2タイミング信号が同期するように、前記第2クロックを前記第1メモリ回路に出力し、前記第2PLL回路は、前記第1及び第3タイミング信号が同期するように、前記第3クロックを前記第2メモリ回路に出力することを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、前記第2及び第3タイミング信号や前記第2及び第3クロック信号を前記現用系装置と前記待機系装置との間でやり取りする必要がなくなる。そのため、前記現用系装置の伝送データと前記待機系装置の伝送データとの位相誤差は、前記第1及び第2PLL回路の定常位相誤差のみとなる。さらに、前記第1及び第2PLL回路は、互いに独立して動作しているので、前記第1及び第2PLL回路の切替制御が不要となり、この結果、前記第2及び第3クロックの出力変動が抑制される。
【0027】
従って、本発明に係る無線通信装置は、従来技術に係る無線通信装置や、本出願人が案出した無線通信装置と比較して、前記現用系装置と前記待機系装置との間での位相同期を効率よく行うことが可能となる。
【0028】
ここで、前記第1及び第2メモリ回路は、書込カウンタとメモリと読出カウンタとを有し、前記書込カウンタは、入力された前記第1タイミング信号に基づいて、入力される前記第1クロックをカウントし、そのカウント値を前記メモリに順次出力し、前記読出カウンタは、前記第2又は第3タイミング信号を生成し、且つ入力される前記第2又は第3クロックをカウントし、そのカウント値を前記メモリに順次出力し、前記メモリは、順次入力された前記第1クロックのカウント値に基づいて前記伝送データを書き込み、一方で、順次入力された前記第2又は第3クロックのカウント値に基づいて、書き込まれている前記伝送データを順次読み出すことが好ましい。
【0029】
これにより、前記メモリへの前記伝送データの書き込みや前記メモリからの前記伝送データの読み出しを効率よく行うことができる。
【0030】
この場合、前記メモリは、前記第1クロックに対する前記第1タイミング信号の分周数以上、前記第2クロックに対する前記第2タイミング信号の分周数以上、且つ前記第3クロックに対する前記第3タイミング信号の分周数以上の容量を有することが好ましい。
【0031】
また、前記第1及び第2メモリ回路は、前記書込カウンタから出力された前記第1クロックのカウント値を所定数だけオフセットして、オフセットされた前記カウント値を前記メモリに出力するオフセット部をさらに有することが好ましい。
【0032】
これにより、前記メモリに書き込まれるデータと、前記メモリから読み出されるデータとの衝突を回避することが可能となる。
【0033】
ここで、前記現用系装置及び前記待機系装置は、前記メモリ回路から順次読み出された前記伝送データに前記第2又は第3クロックに基づくフレーム同期信号を挿入して送信信号を生成するフレーム生成部と、前記第2又は第3クロックに基づいて前記送信信号を変調する変調部とをさらに有する。
【0034】
また、上記した無線通信装置は、無線エントランスシステムの送信側の無線通信装置として好適である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、現用系装置と待機系装置との間の位相同期を効率よく行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明に係る無線通信装置及びこの無線通信装置を備える無線エントランスシステムについて、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下に説明するが、その説明に先立ち、本実施形態の前提となる無線エントランスシステムの構成とその課題について説明する。
【0037】
先ず、本実施形態の前提となる無線エントランスシステム50の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0038】
図1は、無線エントランスシステム50を含む通信システム52の全体ブロック図である。図2は、無線エントランスシステム50の送信側と受信側とに各々配置される無線エントランス装置(無線通信装置)54、56の内部構成を示すブロック図である。
【0039】
無線エントランスシステム50は、有線による公衆回線網や電話網を用いて回線を接続することが困難である地域(例えば、本島と離島との間)で、無線により回線を確実に接続するために設けられるシステムであり、図1に示すように、通信システム52の送信側(図1の左側)に無線エントランス装置(送信側無線通信装置)54及びアンテナ58が各々配置され、一方で、その受信側(図1の右側)に無線エントランス装置(受信側無線通信装置)56及びアンテナ60が各々配置されている。そして、無線エントランス装置54は、アンテナ58から無線回線62を介して受信側のアンテナ60及び無線エントランス装置56と接続される。
【0040】
通信システム52の送信側には、上記した無線エントランス装置54及びアンテナ58以外に、例えば、アンテナ66が設置された基地局64及びマルチプレクサ(MUX)68が配置され、該マルチプレクサ68と無線エントランス装置54とは、光ファイバケーブル70を介して接続されている。
【0041】
一方、通信システム52の受信側には、上記した無線エントランス装置56及びアンテナ60以外に、例えば、マルチプレクサ72、74、78、無線エントランスシステム50と同一構成の無線エントランスシステム76及びアンテナ82が設置された基地局80が各々配置されている。この場合、無線エントランス装置56とマルチプレクサ72とは光ファイバケーブル84を介して接続され、マルチプレクサ72とマルチプレクサ74とは電話回線等の公衆回線網86を介して接続され、マルチプレクサ74と無線エントランスシステム76とは光ファイバケーブル88を介して接続され、無線エントランスシステム76とマルチプレクサ78とは光ファイバケーブル90を介して接続されている。
【0042】
この通信システム52では、無線エントランスシステム50、76を用いることにより、基地局64のアンテナ66に無線回線92を介して接続される携帯電話機94と、基地局80のアンテナ82に無線回線96を介して接続される携帯電話機98との間で、通話内容等の伝送データを伝送することが可能である。
【0043】
図2は、無線エントランス装置54、56の内部構成を示すブロック図であり、無線エントランスシステム76(図1参照)の図示しない無線エントランス装置も無線エントランス装置54、56と同様の構成を有する。ここでは、代表的に、無線エントランス装置54の構成について説明する。
【0044】
無線エントランス装置54は、インターフェース部100と、送信用現用系装置102aと、送信用待機系装置102bと、受信用現用系装置104aと、受信用待機系装置104bと、監視制御部110と、送受信部112とを備えている。
【0045】
ここで、携帯電話機94(図1参照)の通話者の通話内容が伝送データとして該携帯電話機94から無線回線92を介して基地局64のアンテナ66に送信され、マルチプレクサ68が、光ファイバケーブル70の伝送速度(例えば、STM−1)に対応し且つ前記伝送データを含むフレーム信号を生成し、このフレーム信号を電気信号から光に変換してインターフェース部100に出力する場合、該インターフェース部100は、入力された前記光を電気信号に変換して前記フレーム信号に含まれる前記伝送データをハイブリッド部(HYB)120を介して送信用現用系装置102aと送信用待機系装置102bとに各々出力する。
【0046】
送信用現用系装置102aは、送信用無線フレーム処理部122a及びフレーム変調部(MOD)124aを備える変調部126aと、周波数変換部(TX)128aとを有する。一方、送信用待機系装置102bは、送信用現用系装置102aと同様の構成を有し、送信用無線フレーム処理部122b及びフレーム変調部124bを備える変調部126bと、周波数変換部128bとを有する。また、送受信部112は、スイッチ130、送信フィルタ132、受信フィルタ134、低雑音増幅器136及びハイブリッド部138を有する。
【0047】
送信用無線フレーム処理部122a、122bは、入力された前記伝送データにフレーム同期信号を挿入して第1及び第2無線フレーム(送信信号)を各々生成し、生成した前記第1及び第2無線フレームをフレーム変調部124a、124bに出力する。フレーム変調部124a、124bは、入力された前記第1及び第2無線フレームに所定周波数(例えば、400[MHz])の搬送波信号を重畳させてディジタル変調を行い、変調された前記第1及び第2無線フレームを周波数変換部128a、128bに出力する。周波数変換部128a、128bは、入力された前記第1及び第2無線フレームを前記所定周波数よりも高周波の信号(例えば、10[GHz])に変換する。
【0048】
ここで、監視制御部110によるスイッチ130の切替動作によって、送信用現用系装置102aと送信フィルタ132とが接続されているとき、周波数変換部128aは、周波数変換した前記第1無線フレームをスイッチ130及び送信フィルタ132を介してアンテナ58に出力する。これにより、アンテナ58から無線回線62を介して受信側のアンテナ60に前記第1無線フレームが電波として送信される。
【0049】
一方、監視制御部110によるスイッチ130の切替動作によって、送信用待機系装置102bと送信フィルタ132とが接続されているとき、周波数変換部128bは、周波数変換した前記第2無線フレームをスイッチ130及び送信フィルタ132を介してアンテナ58に出力する。これにより、アンテナ58から無線回線62を介して受信側のアンテナ60に前記第2無線フレームが電波として送信される。
【0050】
一方、携帯電話機98(図1参照)の通話者の通話内容が伝送データとして無線エントランス装置56に伝送され、前記伝送データを含む第1又は第2無線フレームがアンテナ60から無線回線62を介してアンテナ58に電波として送信された場合、アンテナ58で電波から電気信号に変換された前記無線フレームは、受信フィルタ134を通過して低雑音増幅器136で増幅され、増幅された前記無線フレームは、ハイブリッド部138を介して受信用現用系装置104aと受信用待機系装置104bとに各々出力される。
【0051】
受信用現用系装置104aは、周波数変換部(RX)140aと、フレーム復調部(DEM)142a及び受信用無線フレーム処理部144aを備える復調部146aとを有する。一方、受信用待機系装置104bは、受信用現用系装置104aと同様の構成を有し、周波数変換部140bと、フレーム復調部142b及び受信用無線フレーム処理部144bを備える復調部146bとを有する。
【0052】
ここで、監視制御部110によるインターフェース部100内のスイッチ150の切替動作で、受信用現用系装置104aとインターフェース部100とが接続されるとき、受信用現用系装置104aの周波数変換部140aは、入力された前記第1又は第2無線フレームを所定周波数(例えば、10[GHz])よりも低周波の信号(例えば、400[MHz])に変換し、周波数変換した前記第1又は第2無線フレームをフレーム復調部142aに出力する。フレーム復調部142aは、入力された前記第1又は第2無線フレームを復調して受信用無線フレーム処理部144aに出力する。受信用無線フレーム処理部144aでは、入力された前記第1又は第2無線フレームに含まれるフレーム同期信号に基づいて前記第1又は第2無線フレームから前記伝送データを取り出し、取り出した前記伝送データをインターフェース部100に出力する。インターフェース部100では、入力された前記伝送データを含むSTM−1のフレーム信号を生成して、生成した前記フレーム信号を電気信号から光に変換し、変換した前記光を光ファイバケーブル70を介してマルチプレクサ68に出力する。
【0053】
なお、監視制御部110によるインターフェース部100内のスイッチ150の切替動作で、受信用待機系装置104bとインターフェース部100とが接続されるときには、受信用待機系装置104bは、受信用現用系装置104aと同様に、受信した前記第1又は第2無線フレームから前記伝送データを取り出し、取り出した前記伝送データをインターフェース部100に出力する。
【0054】
監視制御部110は、(1)インターフェース部100、送信用現用系装置102a、送信用待機系装置102b、受信用現用系装置104a、受信用待機系装置104b及び送受信部112を監視・制御すると共に、(2)スイッチ130、150の切替動作を制御することにより、無線エントランス装置54内で動作する装置を、送信用現用系装置102a及び受信用現用系装置104aの現用系装置から送信用待機系装置102b及び受信用待機系装置104bの待機系装置に切り替え、あるいは、前記待機系装置から前記現用系装置に切り替える。
【0055】
以上が、無線エントランスシステム50の構成に関する説明である。
【0056】
次に、無線エントランスシステム50の課題について、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0057】
無線エントランスシステム50は、システム全体の信頼性を確保するために、図2に示すように、送信用現用系装置102a及び受信用現用系装置104aの現用系装置と、送信用待機系装置102b及び受信用待機系装置104bの待機系装置とを備えたセット予備構成を採用している。この場合、前述したように、スイッチ130、150の切替動作により、前記現用系装置(送信用現用系装置102a及び受信用現用系装置104a)から前記待機系装置(送信用待機系装置102b及び受信用待機系装置104b)への切替、あるいは、前記待機系装置から前記現用系装置への切替が可能である。
【0058】
このような切替には、(1)無線エントランス装置54の保守作業時に、作業員による監視制御部110の操作により、前記現用系装置から前記待機系装置へ切り替え、あるいは前記待機系装置から前記現用系装置へ切り替える手動切替と、(2)前記現用系装置の異常時に、監視制御部110の制御に基づくスイッチ130、150の切替動作によって、前記現用系装置から前記待機系装置に自動的に切り替わり、あるいは、前記待機系装置から前記現用系装置に切り替わる自動切替とがある。
【0059】
ここで、前記手動切替は、無線エントランス装置54の正常時での切替を想定しているので、切替時に無線回線62及び無線エントランス装置56に与える受信側への衝撃をできる限り少なくすることを可能とする切替方式が要求されている。
【0060】
また、前記現用系装置と前記待機系装置との切替には、スイッチ130の切替動作により送信用現用系装置102aと送信用待機系装置102bとを切り替える送信側切替と、スイッチ150の切替動作により受信用現用系装置104aと受信用待機系装置104bとを切り替える受信側切替とがある。
【0061】
以下の説明では、切替時の受信側への衝撃が問題となる前記送信側切替、特に、送信用現用系装置102aから送信用待機系装置102bに切り替える場合について説明する。この場合、受信側のスイッチ150は切替動作を行わず、インターフェース部100と受信用現用系装置104a及び受信用待機系装置104bとが各々接続されているものとする。また、スイッチ130の切替前に送信用現用系装置102aから送受信部112に第1無線フレームが出力され、切替後に送信用待機系装置102bから送受信部112に第2無線フレームが出力されるものとする。
【0062】
さらに、以下の説明では、通信システム52の送信側(図1の無線エントランス装置54側)から受信側(図1の無線エントランス装置56側)に第1及び第2無線フレームが送信されるものとして説明する。
【0063】
図3は、送信用現用系装置102aから送信用待機系装置102bへの切替により受信側{無線エントランス装置56(図1及び図2参照)側}に加えられる衝撃の原因となる5つのオフセット要素を図示したブロック図である。
【0064】
図2及び図3において、スイッチ130の切替動作により、送信用現用系装置102aと送受信部112との接続を、送信用待機系装置102bと送受信部112との接続に切り替えると、その切替時において、送信用現用系装置102aから送受信部112に出力される第1無線フレームと、送信用待機系装置102bから送受信部112に出力される第2無線フレームとの間で、前記各無線フレームに関する下記の5つのオフセット要素が発生する。
【0065】
すなわち、5つのオフセット要素とは、(1)送信用無線フレーム処理部122a、122bでの第1及び第2無線フレームのタイミング差、(2)フレーム変調部124a、124bでの搬送波信号(前述した400[MHz]の信号)の周波数誤差及び位相差や周波数変換部128a、128bでの高周波信号(前述した10[GHz]の信号)の周波数誤差及び位相差、(3)フレーム変調部124a、124b及び周波数変換部128a、128bでの第1及び第2無線フレームの遅延差、(4)送信用現用系装置102aから送信用待機系装置102bへの切替時間、(5)送信用現用系装置102aから送受信部112に出力される第1無線フレームの電力と送信用待機系装置102bから送受信部112に出力される第2無線フレームの電力との偏差である。
【0066】
上記した(1)のタイミング差は、図示しない電源から送信用無線フレーム処理部122a、122bへの通電のタイミングに起因する。(2)の周波数誤差や位相差は、フレーム変調部124a、124bや周波数変換部128a、128bでの配線パターンに起因するものであり、このような周波数誤差や位相差が存在すると、第1及び第2無線フレームの位相差が大きくなる。(3)の遅延差は、フレーム変調部124a、124bや周波数変換部128a、128bでの配線パターンに起因するものであり、このような遅延差が存在すると、第1及び第2無線フレームの位相差が大きくなる。(4)の切替時間は、スイッチ130の切替時刻から第2無線フレームが安定化するまでの時間である。(5)の偏差は、送信用現用系装置102aや送信用待機系装置102bの構造に起因する。
【0067】
そこで、受信側の無線エントランス装置56では、送信用現用系装置102aから送信用待機系装置102bへの切替時に、(1)〜(5)のオフセット要素に起因する第1及び第2無線フレーム間の位相オフセットやゲインオフセット(衝撃)を確実に吸収して、前記第1及び第2無線フレームから伝送データを効率よく取り出すために、送信用現用系装置102aからの第1無線フレームと、送信用待機系装置102bからの第2無線フレームとのフレーム同期を取る必要がある。
【0068】
前記フレーム同期を取るために必要な送信側での切替方式としては、下記の(A)及び(B)の2つの方式が考えられている。
【0069】
(A)の方式は、送信用現用系装置102aと送信用待機系装置102bとの間で、第1及び第2無線フレームの同期や、搬送周波数の同期や、高周波信号の同期を取ることにより、切替時に発生する前記第1及び第2無線フレームの位相オフセットやゲインオフセットを最小限に抑え、この結果、無線エントランス装置56の受信用現用系装置104a及び受信用待機系装置104bにおける前記第1及び第2無線フレームの保持時間内、及び該無線エントランス装置56のインターフェース部100におけるSTM−1のフレーム信号の同期保持時間内で、フレーム復調部142a、142bへの伝送データの入力を完了させる方式(以下、高速引き込み方式又はヒットレス切り替え方式という。)である。
【0070】
(B)の方式は、スイッチ130の切替前に、無線エントランス装置56に切替を予告する切替予告信号を伝送データに挿入して第1無線フレームを構成し、スイッチ130の切替時(切替後)に、無線エントランス装置56に切替が完了したことを通知するオフセット推定信号を伝送データに挿入して第2無線フレームを構成して、前記第1及び第2無線フレームを無線エントランス装置56に送信するという方式(以下、エラーレス切り替えという。)である。これにより、無線エントランス装置56の復調部146a、146bでは、切替時に発生する位相オフセットやゲインオフセットを受信側で瞬時に吸収することが可能となり、インターフェース部100では、前記伝送データを含むSTM−1のフレーム信号を生成する際に、エラー発生を防止することが可能となる。
【0071】
しかしながら、(A)の高速引き込み方式では、送受信間でのシーケンスが不要となり且つSTM−1のフレーム信号のエラー頻出時間が短縮されるという利点がある一方で、無線回線62の状態(フェージングの発生や降雨による伝搬経路の変化等)に左右されやすい上に、搬送周波数や高周波信号の同期を取るためのハードウェア構成が複雑になるという問題がある。
【0072】
一方、(B)のエラーレス切り替え方式は、切替時の無線回線62の品質が確保されるという利点はあるが、(A)の高速引き込み方式と同様に、無線回線62の状態に左右されやすく且つ搬送周波数や高周波信号の同期を取るためのハードウェア構成が複雑になる上に、切替シーケンスが複雑化するという問題がある。
【0073】
さらに、(A)及び(B)では、第1及び第2無線フレームの変調方式が多値変調方式で且つ高シンボルレートである程、スイッチ130の切替時に発生する上記の(1)〜(5)のオフセット要素に対応することが困難になるという問題がある。
【0074】
従って、第1及び第2無線フレームの変調方式に関わり無く、送信用現用系装置102aから送信用待機系装置102bへの切替前後に発生する前記第1及び第2無線フレームのオフセット(位相オフセット及びゲインオフセット)を、受信側の無線エントランス装置56で効率よく吸収することが可能な無線エントランスシステムが望まれている。
【0075】
以上が、無線エントランスシステム50の課題に関する説明である。
【0076】
次に、本実施形態に係る無線エントランスシステム160について、図4及び図5を参照しながら説明する。なお、本実施形態の前提となる無線エントランスシステム50(図1〜図3参照)や、従来技術に係る送信側無線通信装置2(図7参照)や、本出願人が案出した送信側無線通信装置30(図8参照)の構成要素と同一の構成要素については、同一の参照符号を付け、その詳細な説明については省略する。
【0077】
この無線エントランスシステム160は、上記の(A)高速引き込み方式を採用し且つ(A)の欠点を改善したシステムであり、図4に示すように、送信用現用系装置102aの変調部126aにオフセット部162aを有するメモリ回路(第1メモリ回路)8a及びPLL回路(第1PLL回路)14aを各々配置し、且つ送信用待機系装置102bの変調部126b内にオフセット部162bを有するメモリ回路(第2メモリ回路)8b及びPLL回路(第2PLL回路)14bを各々配置し、PLL回路14aで第1及び第2タイミング信号の位相比較を行い且つPLL回路14bで第1及び第3タイミング信号の位相比較を行うことにより、第1及び第2無線フレームに含まれるフレーム同期信号や伝送データの位相同期を行う点で、本実施形態の前提となる無線エントランスシステム50(図1〜図3参照)とは異なる。
【0078】
なお、図4は、本実施形態に係る無線エントランスシステム160の特徴的な構成を図示しやすくするために、本実施形態の前提となる無線エントランスシステム50と同一の構成要素については、その一部を省略して図示している。
【0079】
以下の説明では、無線エントランス装置54は、第1及び第2無線フレーム(送信信号)をディジタル変調し、変調した前記第1及び第2無線フレームを無線回線62(図1参照)を介して無線エントランス装置56に送信するものとして説明する。なお、無線エントランス装置54では、送信用現用系装置102aと送信用待機系装置102bとの間で、前述した各種同期が取られているものとする。
【0080】
先ず、送信用現用系装置102a、送信用待機系装置102b及びインターフェース部100の構成について、図4を参照しながら説明する。
【0081】
インターフェース部100は、従来技術に係る無線送信装置2(図7参照)や本出願人が案出した送信側無線通信装置30(図8参照)の伝送データ部4に対応し、伝送データをメモリ18a、18bに各々出力し、第1クロック及び第1タイミング信号を書込カウンタ16a、16bに各々出力すると共に、PLL回路14a、14bに前記第1タイミング信号を出力する。
【0082】
オフセット部162a、162bは、書込カウンタ16a、16bから出力されたカウント値を所定数fだけオフセットし、オフセットした前記カウント値をDP−RAMで構成されるメモリ回路8aに出力する。
【0083】
読出カウンタ20aは、PLL回路14aから順次入力される第2クロックをカウントし、そのカウント値(例えば、8ビットのデータで表現されたカウント値)をメモリ回路8aに順次出力すると共に、前記カウント値のMSB(最上位ビット)を1ビットの第2タイミング信号としてPLL回路14a及び送信用無線フレーム処理部122aに出力する。一方、読出カウンタ20bは、PLL回路14bから順次入力される第3クロックをカウントし、そのカウント値をメモリ回路8bに順次出力すると共に、前記カウント値のMSBを1ビットの第3タイミング信号としてPLL回路14b及び送信用無線フレーム処理部122bに出力する。
【0084】
PLL回路14aは、入力された前記第1及び第2タイミング信号の位相比較を行い、これらの信号が同相となるように、第2クロックを読出カウンタ20a、送信用無線フレーム処理部122a及びフレーム変調部124aに各々出力する。一方、PLL回路14bは、入力された前記第1及び第3タイミング信号の位相比較を行い、これらの信号が同相となるように、第3クロックを読出カウンタ20b、送信用無線フレーム処理部122b及びフレーム変調部124bに各々出力する。
【0085】
また、前記第1タイミング信号が前記第1クロックに対して分周数sで分周され、前記第2タイミング信号が前記第2クロックに対して分周数tで分周され、前記第3タイミング信号が前記第3クロックに対して分周数tで分周されている場合、メモリ18a、18bは、これらの分周数s、t以上の容量を有することが好ましい。そして、メモリ18a、18bは、オフセットされた前記第1クロックのカウント値に基づいて前記伝送データを順次書き込み、一方で、既に書き込まれている伝送データを前記第2又は第3クロックのカウント値に基づいて順次読み出し、送信用無線フレーム処理部122a、122bに出力する。
【0086】
なお、これらの分周数s、t(分周比1/s、1/t)は、PLL回路14a、14bが正常に動作するような値に設定されていることが必要である。
【0087】
送信用無線フレーム処理部122aは、入力された前記第2クロック及び前記第2タイミング信号に基づいて、メモリ18aから順次読み出された前記伝送データにフレーム同期信号を挿入して第1無線フレーム(送信信号)を生成し、生成した前記第1無線フレームをフレーム変調部124aに出力する。フレーム変調部124aは、入力された前記第1無線フレームを変調して周波数変換部128a(図2参照)に出力する。
【0088】
一方、送信用無線フレーム処理部122bは、入力された前記第3クロック及び前記第3タイミング信号に基づいて、メモリ18bから順次読み出された前記伝送データにフレーム同期信号を挿入して第2無線フレーム(送信信号)を生成し、生成した前記第2無線フレームをフレーム変調部124bに出力する。フレーム変調部124bは、入力された前記第2無線フレームを変調して周波数変換部128b(図2参照)に出力する。
【0089】
次に、送信用現用系装置102aと送信用待機系装置102bとの間の伝送データ及びフレーム同期信号(第1及び第2無線フレーム)の位相同期について、図4のブロック図及び図5のタイムチャートを参照しながら説明する。
【0090】
ここでは、図5に示すように、図示しない第1クロックを分周数sで分周したパルス信号を第1タイミング信号とし、図示しない第2クロックを分周数tで分周したパルス信号を第2タイミング信号とし、図示しない第3クロックを分周数tで分周したパルス信号を第3タイミング信号とする。なお、図5では、s<tである。また、時刻T0から時刻T1までの時間を第1タイミング信号の1周期とする。
【0091】
時刻T0において、インターフェース部100(図4参照)は、書込カウンタ16a、16b及びPLL回路14a、14bに第1タイミング信号のパルスを各々出力すると共に、メモリ18a、18bへの伝送データの出力及び書込カウンタ16a、16bへの第1クロックの出力を開始する。
【0092】
この場合、書込カウンタ16a、16bは、時刻T0で入力された前記第1タイミング信号に基づいて、順次入力される前記第1クロックをカウントし、そのカウント値をオフセット部162a、162bに順次出力する。また、書込カウンタ16a、16bは、時刻T1で前記第1タイミング信号のパルスが再度入力されたときに前記カウント値をリセットする。
【0093】
前述したように、前記第1クロックの分周数はsであり、図5を参照すると、書込カウンタ16a、16b(図4参照)は、時刻T0で前記第1クロックのカウントを開始し、0から(s−1)までカウンタした後に、時刻T1で0にリセットして、前記第1クロックのカウントを再度実行する(図5の「オフセット前書込カウンタ」のデータストリームを参照)。
【0094】
また、オフセット部162a、162b(図4参照)は、順次入力されたカウント値を所定数fだけオフセットし、オフセットした前記カウント値をメモリ18a、18bに出力する。すなわち、図5を参照すると、オフセット部162a、162bは、上記したカウント値0〜(s−1)をf〜(f−1)にオフセットする(図5の「オフセット後書込カウンタ」のデータストリームを参照)。
【0095】
この結果、メモリ18a、18b(図4参照)は、オフセットされた前記カウント値f〜(f−1)に基づいて、インターフェース部100からの伝送データを順次書込む。
【0096】
さらに、PLL回路14a(図4参照)は、インターフェース部100から入力された前記第1タイミング信号の位相と、読出カウンタ20aから入力された第2タイミング信号の位相とが同期するように、第2クロックを出力し、一方で、PLL回路14bは、前記第1タイミング信号の位相と、読出カウンタ20bから入力された第3タイミング信号の位相とが同期するように、第3クロックを出力している。従って、前記第1〜第3タイミング信号の各位相は、図5に示すように、互いに同期し且つその周期も一致する(図5の「タイミング1」、「タイミング2」及び「タイミング3」を参照)。
【0097】
読出カウンタ20aは、時刻T0において、PLL回路14aから順次入力される前記第2クロックのカウントを開始し、そのカウント値をメモリ18aに順次出力すると共に、前記第1タイミング信号に同期した第2タイミング信号を生成する。また、読出カウンタ20aは、時刻T1で前記第1タイミング信号に同期する前記第2タイミング信号のパルスを再度生成したときに前記カウント値をリセットする。
【0098】
すなわち、前記第2クロックの分周数はtであるので、図5を参照すると、読出カウンタ20a(図4参照)は、時刻T0で前記第2クロックのカウントを開始し、0から(t−1)までカウンタした後に、時刻T1で0にリセットして、前記第2クロックのカウントを再度実行する(図5の「読出カウンタ1」のデータストリームを参照)。
【0099】
一方、読出カウンタ20b(図4参照)は、読出カウンタ20aと同様に、時刻T0において、PLL回路14bから順次入力される前記第3クロックのカウントを開始し、そのカウント値をメモリ18bに順次出力すると共に、前記第1タイミング信号に同期した第3タイミング信号を生成する。また、読出カウンタ20bは、時刻T1で前記第1タイミング信号に同期する前記第3タイミング信号のパルスを再度生成したときに前記カウント値をリセットする。すなわち、図5を参照すると、前記第3クロックの分周数もtであるので、読出カウンタ20bは、時刻T0で前記第3クロックのカウントを開始し、0から(t−1)までカウンタした後に、時刻T1で0にリセットして、前記第3クロックのカウントを再度実行する(図5の「読出カウンタ2」のデータストリームを参照)。
【0100】
これにより、メモリ18a、18b(図4参照)は、前記第2又は第3クロックのカウント数に基づいて、書き込まれている伝送データを読み出して送信用無線フレーム処理部122a、122bに出力する。
【0101】
すなわち、図5を参照すると、第1タイミング信号の1周期(時刻T0から時刻T1までの時間)では、メモリ18a、18bは、前記第2又は第3カウンタのカウント値0〜(t−1)に基づいて、書き込まれている伝送データを順次読み出す。
【0102】
ここで、メモリ18a、18bには、カウント数f〜(f−1)分{オフセットがない場合には0〜(s−1)分}の伝送データが書き込まれ、且つ前述したようにs<tであるので、メモリ18a、18b内には、前記第2又は第3クロックのカウント値s〜(t−1)に対応する伝送データの書き込みがない。
【0103】
この結果、前記1周期内でメモリ18a、18bから送信用無線フレーム処理部122a、122bに伝送データを順次読み出す際に、メモリ18a、18bは、前記第2又は第3クロックのカウント値が0〜(s−1)では伝送データを順次出力するが、前記カウント値がs〜(t−1)では伝送データを出力することができない。
【0104】
従って、送信用無線フレーム処理部122aでは、入力された第2クロック及び第2タイミング信号に基づいて、前記第2クロックのカウント値s〜(t−1)の区間にフレーム同期信号を挿入して第1無線フレームを生成する(図5の「第1無線フレーム」のデータストリームを参照)。一方、送信用無線フレーム処理部122bでは、入力された第3クロック及び第3タイミング信号に基づいて、前記第3クロックのカウント値s〜(t−1)の区間にフレーム同期信号を挿入して第2無線フレームを生成する(図5の「第2無線フレーム」のデータストリームを参照)。
【0105】
このように本実施形態に係る無線エントランス装置54、56及び無線エントランスシステム160では、第2及び第3タイミング信号や第2及び第3クロック信号を送信用現用系装置102aと送信用待機系装置102bとの間でやり取りする必要がなくなる。そのため、送信用現用系装置102aの伝送データ、フレーム同期信号及び第1無線フレームと送信用待機系装置102bの伝送データ、フレーム同期信号及び第2無線フレームとの位相誤差は、PLL回路14a、14bの定常位相誤差のみとなる。さらに、PLL回路14a、14bは、互いに独立して動作しているので、該PLL回路14a、14bの切替制御が不要となり、この結果、前記第2及び第3クロックの出力変動が抑制される。
【0106】
従って、本実施形態に係る無線エントランス装置54、56及び無線エントランスシステム160では、従来技術に係る無線通信装置2や、本出願人が案出した送信側無線通信装置30と比較して、送信用現用系装置102aと送信用待機系装置102bとの間での伝送データとフレーム同期信号と第1及び第2無線フレームとの各位相同期を効率よく行うことが可能となる。
【0107】
また、メモリ18a、18bの容量を分周数s、t以上とすることにより、該メモリ18a、18bへの前記伝送データの書き込みやメモリ18a、18bからの前記伝送データの読み出しを効率よく行うことができる。
【0108】
さらに、オフセット部162a、162bで前記第1クロックのカウント数を所定数fだけオフセットすることにより、メモリ18a、18bに書き込まれる伝送データと、該メモリ18a、18bから読み出される伝送データとのアドレスの衝突を回避することが可能となる。
【0109】
さらにまた、上述した本実施形態を周波数変換部128a、128bに適用して、高周波信号の周波数同期を行うことも可能である。
【0110】
なお、本発明に係る無線通信装置及びこの無線通信装置を備える無線エントランスシステムは、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本実施形態の前提となる無線エントランスシステムを含む通信システムのブロック図である。
【図2】図1の無線エントランス装置のブロック図である。
【図3】送信用現用系装置から送信用待機系装置への切替により発生するオフセット要素を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る無線エントランス装置の構成を示す部分ブロック図である。
【図5】図4の無線エントランス装置での位相同期を示すタイムチャートである。
【図6】現用系装置の送信信号と待機系装置の送信信号とを示すタイムチャートである。
【図7】従来技術に係る無線通信装置のブロック図である。
【図8】図7の無線通信装置に基づいて本出願人が案出した無線通信装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0112】
8a、8b…メモリ回路 14a、14b…PLL回路
16a、16b…書込カウンタ 18a、18b…メモリ
20a、20b…読出カウンタ 54、56…無線エントランス装置
100…インターフェース部 102a…送信用現用系装置
102b…送信用待機系装置
122a、122b…送信用無線フレーム処理部
124a、124b…フレーム変調部 126a、126b…変調部
160…無線エントランスシステム 162a、162b…オフセット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送データ部と、第1メモリ回路及び第1PLL回路を有する現用系装置と、第2メモリ回路及び第2PLL回路を有する待機系装置とを備え、
前記伝送データ部は、伝送データ、第1クロック及び第1タイミング信号を前記第1及び第2メモリ回路に各々出力すると共に、前記第1タイミング信号を前記第1及び第2PLL回路に出力し、
前記第1メモリ回路は、入力された前記第1タイミング信号に基づいて該第1メモリ回路に入力される前記第1クロックの個数をカウントし、そのカウント値に基づいて前記伝送データを順次書き込み、一方で、前記第1PLL回路から前記第1メモリ回路に入力される第2クロックの個数をカウントし、そのカウント値に基づいて、書き込まれている前記伝送データを順次読み出すと共に、第2タイミング信号を前記第1PLL回路に出力し、
前記第2メモリ回路は、入力された前記第1タイミング信号に基づいて該第2メモリ回路に入力される前記第1クロックの個数をカウントし、そのカウント値に基づいて前記伝送データを順次書き込み、一方で、前記第2PLL回路から前記第2メモリ回路に入力される第3クロックの個数をカウントし、そのカウント値に基づいて、書き込まれている前記伝送データを順次読み出すと共に、第3タイミング信号を前記第2PLL回路に出力し、
前記第1PLL回路は、前記第1及び第2タイミング信号が同期するように、前記第2クロックを前記第1メモリ回路に出力し、
前記第2PLL回路は、前記第1及び第3タイミング信号が同期するように、前記第3クロックを前記第2メモリ回路に出力する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信装置において、
前記第1及び第2メモリ回路は、書込カウンタとメモリと読出カウンタとを有し、
前記書込カウンタは、入力された前記第1タイミング信号に基づいて、入力される前記第1クロックをカウントし、そのカウント値を前記メモリに順次出力し、
前記読出カウンタは、前記第2又は第3タイミング信号を生成し、且つ入力される前記第2又は第3クロックをカウントし、そのカウント値を前記メモリに順次出力し、
前記メモリは、順次入力された前記第1クロックのカウント値に基づいて前記伝送データを書き込み、一方で、順次入力された前記第2又は第3クロックのカウント値に基づいて、書き込まれている前記伝送データを順次読み出す
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項2記載の無線通信装置において、
前記メモリは、前記第1クロックに対する前記第1タイミング信号の分周数以上、前記第2クロックに対する前記第2タイミング信号の分周数以上、且つ前記第3クロックに対する前記第3タイミング信号の分周数以上の容量を有する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の無線通信装置において、
前記第1及び第2メモリ回路は、前記書込カウンタから出力された前記第1クロックのカウント値を所定数だけオフセットして、オフセットされた前記カウント値を前記メモリに出力するオフセット部をさらに有する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線通信装置において、
前記現用系装置及び前記待機系装置は、前記メモリ回路から順次読み出された前記伝送データに前記第2又は第3クロックに基づくフレーム同期信号を挿入して送信信号を生成するフレーム生成部と、前記第2又は第3クロックに基づいて前記送信信号を変調する変調部とをさらに有する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線通信装置を送信側の無線通信装置として備える無線エントランスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−124491(P2007−124491A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316443(P2005−316443)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】