説明

無菌充填包装体の製造方法、及び製造装置

【課題】内容物の注出具の保護性、内容物の注出性及びタンパーエビデント性が改善された、折り畳み誘導線が形成されたプラスチック容器本体内に内容物を無菌的に充填すると共に、前記容器本体と一体成形された保護ケース内に注出具を収納した無菌充填包装体の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】次の工程で無菌充填包装体を製造する。(1)パリソン27をプラスチック容器本体用金型32に配置し(2)パリソン27内に挿入したノズル24から無菌エアーを吹き出して容器本体2のブロー成形を行った後に、(3)該ノズル24から容器本体2内に内容物を充填後、該ノズル24を退避させ、ついで(4)内容物の注出具5を容器本体2の上部のパリソン27に挿入した後に、(5)保護ケース用金型31の型締めを行い、(6)前記容器本体2の上部のパリソン27から保護ケース6を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の注出具を一体に収納した無菌充填包装体の製造方法、及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1回で使い切る小容量の医薬、医薬部外品等の内容物を容器内に収納し、容器口部に内容物を注出する注射針等の注出具を取り付けた注出具付プラスチック容器が知られている。(例えば、特許文献1〜2参照)
また、このような注出具付プラスチック容器を製造する際に、衛生管理の観点から容器の成形と同時に内容物を充填することも公知である。(特許文献3参照)
【0003】
しかしながら、これらの注出具付容器では、製造時や流通時において落下衝撃等の外力により容器が開封する、いたずらや不正による開封を防止するタンパーエビデント性に欠ける、等の問題点がある。
このため、内容物を充填した注出具付プラスチック容器では、カートンやパウチ等の外装材を使用したり、テープやシュリンクラベル等の別部材を使用することによって、注出具の保護を図るとともにタンパーエビデント性を得ることが行なわれている。しかしながら、外装材や別部材を用いる方法は、追加の工程を必要とし、コストアップの原因となる。
【0004】
そして、このような容器に収納された内容物を1回で使い切るためには、容器本体を手指で潰すことによって内容物全量を注出可能とすることが必要である。しかしながら、円筒形等の容器では、容器の底部が邪魔になり内容物を最後迄注出することが困難となる。
したがって、従来の注出具付容器では、底部の無い容器を採用することによって内容物の注出性を向上させており、容器に自立性を持たせることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭35−24295号公報
【特許文献2】特公昭61−2380号公報
【特許文献3】特開2002−128126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、注出具の保護性、内容物の注出性及びタンパーエビデント性が改善された、注出具を一体に収納した無菌充填包装体の製造方法であって、内容物を充填するプラスチック容器本体の成形と内容物の無菌充填、容器本体と一体の保護ケースの成形、及び保護ケース内への注出具の収納を連続して行なうことができる、前記無菌充填包装体の製造方法、及びその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記課題を解決するために、つぎの1.〜9.の構成を採用する。
1.次の工程を採用することを特徴とする折り畳み誘導線が形成されたプラスチック容器本体内に内容物を無菌的に充填すると共に、前記容器本体と一体成形された保護ケース内に注出具を収納した無菌充填包装体の製造方法:
(1)パリソンをプラスチック容器本体用金型に配置し、
(2)パリソン内に挿入したノズルから無菌エアーを吹き出して容器本体のブロー成形を行った後に、
(3)該ノズルから容器本体内に内容物を充填後、該ノズルを退避させ、ついで
(4)注出具を容器本体の上部のパリソンに挿入した後に、
(5)保護ケース用金型の型締めを行い、
(6)前記容器本体の上部のパリソンから保護ケースを形成する。
前記無菌充填包装体としては、前記注出具を無菌的に前記保護ケース内に収納したものが好ましい。また、前記注出具としては、無菌的にケース内に注出部材を収納してなる注出具を用いることが好ましく、前記注出具の下端部に逆止部材を設けたものを用いることが特に好ましい。
2.少なくとも前記工程(2)及び(3)において、ノズルがパリソン内壁と接触しないように、ノズルから無菌エアーをパリソン内に導入しながら、ノズルの挿入、退避を行うことを特徴とする1.に記載の無菌充填包装体の製造法方法。ノズルから導入する無菌エアーの圧力は、0.001〜0.1MPa程度とすることが好ましい。
3.少なくとも前記工程(4)において、注出具挿入ユニット及び注出具がパリソン内壁と接触しないように、前記注出具挿入ユニットに設けた連通孔から無菌エアーをパリソン内に導入しながら、前記注出具挿入ユニットの挿入、退避を行うことを特徴とする1.又は2.に記載の無菌充填包装体の製造法方法。前記注出具挿入ユニットに設けた連通孔から導入する無菌エアーの圧力は、0.001〜0.1MPa程度とすることが好ましい。
4.前記工程(5)において、予め注出具の下部とプラスチック容器本体上部の間のパリソンをヒートシールすることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の無菌充填包装体の製造法方法。
5.前記工程(6)において、真空成形により保護ケースを形成することを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の無菌充填包装体の製造方法。
6.前記工程(6)において、保護ケースの側面からブローピンを前記ケース内に突刺し、ブローピンから無菌エアーを前記ケース内に導入しながら真空成形を行うことを特徴とする5.に記載の無菌充填包装体の製造方法。前記ブローピンから導入する無菌エアーの圧力は、0.1〜0.6MPa程度とすることが好ましい。
7.前記パリソンがガスバリヤー性樹脂層を含む多層パリソンであることを特徴とする1.〜6.のいずれかに記載の無菌充填包装体の製造方法。
8.無菌ボックス内に、ブロー成形用無菌エアーの供給と内容物の充填を兼用するノズルユニット、及び注出具挿入用ユニットを具備し、前記無菌ボックスの下方に接続されたパリソンの押出ダイ、保護ケース用金型、プラスチック容器本体用金型を順次配列したことを特徴とする折り畳み誘導線が形成されたプラスチック容器本体内に内容物を無菌的に充填すると共に、前記容器本体と一体成形された保護ケース内に注出具を収納した無菌充填包装体の製造装置。
9.前記保護ケース用金型と前記プラスチック容器本体用金型の間にヒートシール用金型を設けたことを特徴とする8.に記載の無菌充填包装体の製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の無菌充填包装体の製造方法では、内容物を充填するプラスチック容器本体の成形と内容物の無菌充填、容器本体と一体の保護ケースの成形、及び保護ケース内への注出具の収納を連続して行なうことができるので、無菌充填包装体を効率良く低コストで製造することができる。
本発明の無菌充填包装体の製造装置は単純な構成でコンパクトなサイズとすることが可能であり、装置の無菌状態の管理が容易で製造コストを大幅に下げることができる。
また、本発明で得られる無菌充填包装体は、注出具の保護性とタンパーエビデント性に優れ、包装体の製造時や流通時において外力による包装体の開封や、いたずらや不正による包装体の開封を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明で得られる無菌充填包装体(使い捨て注射剤包装体)の1例を示す参考図である。
【図2】図1の無菌充填包装体の注出具(ニードルユニット)を示す拡大断面図である。
【図3】本発明で得られる無菌充填包装体(使い捨て注射剤包装体)の他の例における注出具(ニードルユニット)を示す拡大断面図である。
【図4】本発明で得られる無菌充填包装体の他の例を示す図である。
【図5】本発明の無菌充填包装体の製造装置の1例を示す模式図で、図1の無菌充填包装体の製造装置を示す図である。
【図6】図5の製造装置を使用して無菌充填包装体を製造する工程の1例を説明する図である。
【図7】本発明の無菌充填包装体を製造する工程の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明を使い捨て注射剤包装体の製造に適用した例について、図面に基づいて説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
図1及び図2は、本発明で得られる無菌充填包装体(使い捨て注射剤包装体)の1例を示す参考図である。図1の(A)は包装体の正面図、同(B)は一部断面側面図、そして同(C)はこの包装体の注出具の保護ケースを開封する状況を示す図である。また、図2はこの包装体の注出具(ニードルユニット)の拡大断面図である。図2の(D)は使用前の注出具(ニードルユニット)の状態を示す図であり、同(E)は注出具を構成する注出部材の注射針を容器本体と連通させた状態を示す図である。
【0011】
この注射剤包装体1は、折り畳み誘導線3を設けた容器本体2と、内容物を注出する注出部材の両頭針14等とケース11から成る注出具(ニードルユニット)5を収納した保護ケース6を、連結部4を介して一体に成形したものである。容器本体2内には、注射剤が容器本体2の成形時に無菌的に充填されている。また、保護ケース6の上部には、充填された注射剤を表示するラベル7が設けられている。
【0012】
図2にみられるように、この注出具5では、ストッパー12を設けたケース11内にゴム等の弾性体からなるハブ13を介して両頭針14が固定されている。注出具5の容器本体2との連結部15の下端部には、ゴム等の弾性体からなる栓体16が設置されている。この注出具5では、内容物を注出する両頭針14はケース11内で無菌状態に保持されている。
【0013】
この注射剤包装体1を使用する際には、図1の(C)にみられるように、まず保護ケース6を指でねじ切って開封する。つぎに、図2の(E)の位置まで注出具5のケース11を押し下げると、ハブ13に固定された注出部材の両頭針14の一端が栓体16を貫通し、容器本体2と連通する。ついで、ケース11を取り除いて患者の静脈等に両頭針14の他端を刺通し、容器本体2を指で押さえると、容器本体2は折り畳み誘導線3により折り畳まれて、注射剤を完全に注出することができる。
この注射剤包装体1は、両頭針14を容器本体2と連通させた状態で自立させることが可能である。したがって、包装体の保護ケース6を開封後患者に使用する前に、汚染を生じずに包装体を保管ケース等に一時的に自立させて置くことができる。
【0014】
図3は、本発明で得られる無菌充填包装体の他の例を示す参考図で、包装体の保護ケース6を開封した注出具(ニードルユニット)5の拡大断面図である。図3の(A)は使用前の注出具5の状態を示す図であり、同(B)は注出部材の両頭針14を容器本体に向けて押し込み、両頭針14を容器本体2と連通可能とした状態を示す図である。そして、同(C)は、両頭針14を押し込んだ後に、注出具5のケース11を取り除いて、容器本体内の注射剤を注出可能とした状態を示す図である。
本例の無菌充填包装体1では、注出具5のプラスチック容器本体2との連結部15に設けた栓体16の下端部に、即ち、注出具5の下端部に、逆止弁17等の逆止部材が設けられている。
この逆止弁17を設けることによって、内容物をプラスチック容器本体2から両頭針14を介して容器本体外へ注出することは可能であるが、外部に注出した内容物や他の薬剤が両頭針14を介して前記容器本体2内へ逆流することを防止することができる。
そして、この逆止部材17を注出具5の下端部に設けることにより、本発明の無菌充填体の使用後に、容器内に覚醒剤等の危険物のような他の内容物を吸引し、容器を悪用することを防止することができる。
【0015】
図4は、本発明で得られる無菌充填包装体の他の例を示す参考図で、図4の(A)は包装体の正面図、同(B)は一部断面側面図、そして同(C)はこの包装体の注出具の保護ケースを開封する状況を示す図である。
この例では、図1の無菌充填包装体において、注出部材の両頭針14等とケース11から成る注出具(ニードルユニット)5に代えて、先端が封鎖された円筒状の注出部材のみから成る注出具5’を使用するものである。この注出具5’は、ニードルユニット5におけるケース11を省略し、容器本体2内に連通するものであり、その先端部9には、先端部9を開封するための環状の薄肉部8が設けられている。この包装体1’を使用する際には、図4の(C)にみられるように、まず保護ケース6を指でねじ切って開封し、ついで薄肉部8を折り取って先端部9を開封する。ついで患者の患部等に注出具5’を適用し、容器本体2を指で押さえると、容器本体2は折り畳み誘導線3により折り畳まれて、内容物を完全に注出することができる。この無菌充填包装体1’は、例えばジェル状、或いはクリーム状の坐薬等を収納するのに好適に用いられる。
【0016】
つぎに、図面に基づいて、本発明の無菌充填包装体の製造装置及び製造工程について説明する。図5は、本発明の無菌充填包装体の製造装置の1例を示す模式図である。また、図6は、この製造装置を使用して本発明の無菌充填包装体を製造する工程の1例を説明する模式図である。
【0017】
この製造装置21は、無菌ボックス22内に、ブロー成形用無菌エアーの供給管P1と内容物供給管P2に接続されたノズル24を具備するノズルユニット23、及び注出具マガジン25を具備する注出具挿入ユニット26を収納したものである。ノズルユニット23及び注出具挿入ユニット26は、それぞれ駆動装置M1及びM2によって、交互に水平方向に往復運動することができる。
【0018】
無菌ボックス22の下方には、パリソン27を押出すダイヘッド28を備えたパリソン押出機29が設置されている。ダイヘッド28の内側側面には、無菌ボックス22内の無菌性を向上させるため、ダイヘッド側から無菌ボックス22に向かって上昇気流となるように無菌エアーを出すことができる吹き出し口34と、パリソン内部を加圧してパリソンの形状を安定させるために、下降気流となるように無菌エアーを出すことができる吹き出し口35とが設けられている。さらに、その下方にはプラスチック容器本体と注出具の保護ケースを一体に成形する金型30が設けられている。この金型30は、保護ケース用金型31、プラスチック容器本体用金型32、及び保護ケース用金型31と容器本体用金型32の間に配置され、連結部をヒートシールするヒートシール用金型33により構成されている。(図6参照)
【0019】
本発明による無菌充填包装体は、例えばこの製造装置21を使用して、つぎの工程(1)〜(11)により製造することができる(図6参照)。
(1)金型30内にパリソン27を押出す。
(2)プラスチック容器本体用金型32を型締する。(第1型締め)
(3)パリソン27上部にノズル24を挿入する。
(4)無菌エアーにより容器本体をブロー成形する。
(5)ノズル24から注射剤(内容物)を容器本体2内に充填する。
(6)ノズル24をパリソン27の上部から退避させた後に、無菌ボックス22内のノズルユニット23と注出具挿入ユニット26の位置を入れ換える。
(7)注出具挿入ユニット26によりパリソン27の上部に注出具5を挿入する。
(8)ヒートシール金型33を型締して、容器本体2と保護ケース6の連結部4をヒートシールする。
(9)保護ケース用金型31を型締し、保護ケース6の上部をヒートシールして注出具5を保護ケース6内に密封する。
(10)保護ケース用金型31内で真空成形により保護ケース6を成形する。
(11)全ての金型を開いて容器本体2の下部及び保護ケース6上部のパリソンを切断して、目的とする無菌充填包装体を得る。
従って、容器本体2内の内容物と保護ケース6内の無菌性が保たれ、図2及び図3のようにケース11内に内容物の注出部材である両頭針14を収納した注出具(ニードルユニット)5を用いる場合、或いは図4のように先端が封鎖された円筒状の注出部材のみから成る注出具5’を用いる場合、いずれの場合も使用前に注出部材が汚染されるおそれはない。
【0020】
図7は、本発明の無菌充填包装体を製造する工程の他の例を説明する模式図である。
(1)金型30内にパリソン27を押出す。
(2)プラスチック容器本体用金型32を型締する。(第1型締め)
(3)、(4)ノズル24がパリソン内壁と接触しないように、ノズル先端部から低圧(0.001〜0.1MPa程度)の無菌エアー(Parison Control Air:以下「PCA」という)をパリソン内に導入しながら、パリソン27上部にノズル24を挿入する。
(5)無菌エアーにより容器本体をブロー成形する。
(6)ノズル24から注射剤(内容物)を容器本体2内に充填する。
(7)PCAをパリソン27内に導入しながら、ノズル24をパリソン27の上部から退避させた後に、無菌ボックス22内のノズルユニット23と注出具挿入ユニット26の位置を入れ換える。
(8)注出具挿入ユニット26の側壁に設けた連通孔から、低圧(0.001〜0.1MPa程度)のPCAをパリソン27内に導入しながら、注出具挿入ユニット26によりパリソン27の上部に注出具5を挿入する。
(9)PCAをパリソン27内に導入しながら、注出具挿入ユニット26を退避させてヒートシール金型33を型締し、容器本体2と保護ケース6の連結部4をヒートシールする。
(10)保護ケース用金型31を型締し、保護ケース6の上部をヒートシールして注出具5を保護ケース6内に密封する。
(11)保護ケース6の側面からブローピン34を保護ケース6内に突刺し、ブローピン34から無菌エアー(0.1〜0.6MPa程度)を保護ケース6内に導入しながら、保護ケース用金型31内で真空成形により保護ケース6を成形する。
(12)全ての金型を開いて容器本体2の下部及び保護ケース6上部のパリソンを切断して、目的とする無菌充填注射剤包装体を得る。
【0021】
上記図7の製造工程(1)〜(12)は、図6の製造工程(1)〜(11)を改良したものである。
上記(2)の第1型締め工程や、ノズルや注出具挿入ユニットの挿入、退避を行う(3)、(7)、(8)、(9)の工程では、パリソンのドローダウン或いはノズルや注出具挿入ユニットの出し入れによる内圧変化等によってパリソンの断面形状が変形することがある。その結果、ノズルや注出具挿入ユニット或いは注出具がパリソン内壁と接触して、無菌充填包装体の成形が困難になるといった問題があった。図7の製造工程では、PCAを導入しながらノズルや注出具挿入ユニットの挿入、退避を行うことによって、このような問題を回避し、無菌充填包装体を効率良く製造することが可能となる。
尚、図7の製造工程におけるPCAの導入は、上記(3)から(9)の工程間で連続して行っても良い。この場合、工程毎のPCAの導入、停止の切り替えを行う必要がなく、上記問題を回避して無菌充填包装体をより効率良く製造することが可能となる。
【0022】
また、保護ケース6の成形を真空成形だけで行った場合には、成形時に保護ケース6内が減圧になるため、ケースの成形を妨げる抵抗力が発生し、精密な形状を有する保護ケースを成形することが困難であった。
上記(11)の工程では、保護ケース6の側面からブローピン34を保護ケース6内に突刺し、ブローピン34から無菌エアー(0.1〜0.6MPa程度)を保護ケース6内に導入して保護ケース6内を陽圧化する。したがって、保護ケース6の真空成形を行う際に、減圧による抵抗力が発生せず、精密な形状を有する保護ケース6を成形することが可能となる。ブローピン34を抜き取った後の孔にはラベル(図示せず)等が貼着される。この際に、保護ケース6内の無菌性が損なわれることがあるが、図2及び図3の無菌充填包装体において、無菌状態のケース11内に、内容物の注出部材である両頭針14を収納した注出具(ニードルユニット)5を用いることにより、注出具5が使用前に汚染されるおそれはない。
【0023】
従来の技術では、多数の金型を順次回転可能に配置した水平ロータリー式或いは2つの金型が往復運動するシャトル式の製造装置を使用し、パリソンを金型内に押出し型締後〔上記図6又は図7の工程(2)に対応〕パリソンを切断し、金型を移動させて容器本体のブロー成形と内容物の充填を行っていた。このような製造装置は全工程を無菌環境下に置くことは実際上不可能であり、パリソンの切断時、或いは金型を移動させる際に、外気により金型内に配置されたパリソン内部が汚染されるおそれがあった。
【0024】
本発明では単純な構成のコンパクトなサイズの製造装置を使用し、パリソンを切断することなく無菌充填包装体を製造するものである。したがって、装置の無菌状態の管理が容易で製造コストを大幅に下げることができる。
また、本発明で得られる無菌充填包装体では、容器本体2と注出具5の保護ケース6が一体に形成されているので、製造時や流通時における外力による包装体の開封や、いたずらや不正による包装体の開封を防止することができる。
【0025】
本発明において、プラスチック容器本体2及びこれと一体の保護ケース6を構成する材料としては特に制限はなく、通常プラスチック容器を構成するのに使用される熱可塑性樹脂は、いずれも使用することができる。このような材料としては、例えば、低−、中−、或いは高−密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、EVAケン化物、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;ポリアクリル系樹脂;アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;フッ素系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類;ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸等の生分解性樹脂類等が挙げられる。
好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0026】
本発明のプラスチック容器本体及び保護ケースは、1種類の樹脂層からなる単層構造あるいは複数の樹脂層からなる多層構造を有するものとすることができる。
容器本体内に収納する内容物が、医薬品等のようにガスバリヤー性を必要とするものである場合には、中間層としてポリ塩化ビニリデン樹脂、EVAケン化物、ポリアミド樹脂又は環状オレフィンコポリマー等のガスバリヤー性樹脂層を含む多層構造の容器とすることが好ましい。また、更に高いガスバリヤー性を必要とする場合には、酸化性重合体等を含む酸素吸収性樹脂層を併用した多層構造の容器とすることもできる。このような多層構造の容器は、常法により多層ブロー用ダイを用いて得られる多層パリソンを使用し、上記図6又は図7に示した工程により製造することができる。
【符号の説明】
【0027】
1、1’ 無菌充填包装体
2 プラスチック容器本体
3 折り畳み誘導線
4、15 連結部
5 注出具(ニードルユニット)
5’ 注出具(注出部材)
6 保護ケース
7 ラベル
8 薄肉部
9 先端部
11 ケース
12 ストッパー
13 ハブ
14 両頭針(注出部材)
16 栓体
17 逆止弁
21 無菌充填包装体製造装置
22 無菌ボックス
23 ノズルユニット
24 ノズル
25 注出具マガジン
26 注出具挿入ユニット
27 パリソン
28 ダイヘッド
29 パリソン押出機
30 金型
31 保護ケース用金型
32 容器本体用金型
33 ヒートシール用金型
34 ブローピン
M1、M2 駆動装置
P1 無菌エアー供給管
P2 内容物供給管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を採用することを特徴とする折り畳み誘導線が形成されたプラスチック容器本体内に内容物を無菌的に充填すると共に、前記容器本体と一体成形された保護ケース内に注出具を収納した無菌充填包装体の製造方法:
(1)パリソンをプラスチック容器本体用金型に配置し、
(2)パリソン内に挿入したノズルから無菌エアーを吹き出して容器本体のブロー成形を行った後に、
(3)該ノズルから容器本体内に内容物を充填後、該ノズルを退避させ、ついで
(4)注出具を容器本体の上部のパリソンに挿入した後に、
(5)保護ケース用金型の型締めを行い、
(6)前記容器本体の上部のパリソンから保護ケースを形成する。
【請求項2】
少なくとも前記工程(2)及び(3)において、ノズルがパリソン内壁と接触しないように、ノズルから無菌エアーをパリソン内に導入しながら、ノズルの挿入、退避を行うことを特徴とする請求項1に記載の無菌充填包装体の製造法方法。
【請求項3】
少なくとも前記工程(4)において、注出具挿入ユニット及び注出具がパリソン内壁と接触しないように、前記注出具挿入ユニットに設けた連通孔から無菌エアーをパリソン内に導入しながら、前記注出具挿入ユニットの挿入、退避を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の無菌充填包装体の製造法方法。
【請求項4】
前記工程(5)において、予め注出具の下部とプラスチック容器本体上部の間のパリソンをヒートシールすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無菌充填包装体の製造法方法。
【請求項5】
前記工程(6)において、真空成形により保護ケースを形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無菌充填包装体の製造方法。
【請求項6】
前記工程(6)において、保護ケースの側面からブローピンを前記ケース内に突刺し、ブローピンから無菌エアーを前記ケース内に導入しながら真空成形を行うことを特徴とする請求項5に記載の無菌充填包装体の製造方法。
【請求項7】
前記パリソンがガスバリヤー性樹脂層を含む多層パリソンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の無菌充填包装体の製造方法。
【請求項8】
無菌ボックス内に、ブロー成形用無菌エアーの供給と内容物の充填を兼用するノズルユニット、及び注出具挿入用ユニットを具備し、前記無菌ボックスの下方に接続されたパリソンの押出ダイ、保護ケース用金型、プラスチック容器本体用金型を順次配列したことを特徴とする折り畳み誘導線が形成されたプラスチック容器本体内に内容物を無菌的に充填すると共に、前記容器本体と一体成形された保護ケース内に注出具を収納した無菌充填包装体の製造装置。
【請求項9】
前記保護ケース用金型と前記プラスチック容器本体用金型の間にヒートシール用金型を設けたことを特徴とする請求項8に記載の無菌充填包装体の製造装置。






【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−71606(P2012−71606A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216264(P2011−216264)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【分割の表示】特願2007−502587(P2007−502587)の分割
【原出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】