無限軌道帯用履板の計測システムおよび計測方法
【課題】照明装置や暗室を必要とせず、測定誤差を小さくして高精度に計測することが可能な履板の計測システムおよび計測方法の提供。
【解決手段】履板1の主ラグ(13)の先端面(13f)および副ラグ(14)の先端面(14f)が搬送コンベア(5)に接触して搬送されるように構成されており、収束性の高い光を照射する投光側(21)とその光を受光する受光側(22)とが対となって搬送コンベア(5)上に設けられており、履板(1)が通過する際に履板(1)の被計測領域(11)により遮られる位置を投光側(21)から照射される光の軸が経由するように設定されており、投光側(21)と受光側(22)とが斜めに向かい合って配置されている。
【解決手段】履板1の主ラグ(13)の先端面(13f)および副ラグ(14)の先端面(14f)が搬送コンベア(5)に接触して搬送されるように構成されており、収束性の高い光を照射する投光側(21)とその光を受光する受光側(22)とが対となって搬送コンベア(5)上に設けられており、履板(1)が通過する際に履板(1)の被計測領域(11)により遮られる位置を投光側(21)から照射される光の軸が経由するように設定されており、投光側(21)と受光側(22)とが斜めに向かい合って配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の下部走行体を構成する無限軌道帯(履帯)の構成部品である履板を製造する際に、製造された履板の全長や溝位置等を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
履板の製造では、圧延工程が終了し、熱処理が行われる前の段階で、「測長」と呼ばれるラインあるいは工程において、履板の全長や溝位置が計測される。「測長」が行われるラインにおける履板の平面形状が、図10で示されており、その履板の断面形状が図11で示されている。計測の対象となるのは、図10における上縁部11(被計測領域11)である。
なお、図10において、履板の溝12は、履帯が湾曲したときに、履板1と履帯の他の構成部品であるリンク(図示省略)が干渉しないようにするための逃げとして形成されている。
【0003】
図11は履板1の断面を示している。そして、図11の矢印Hで示す方向から履板1を見た状態が、図10で示されている。
図11において、図10で示す面の裏側(図11における右側)には、主ラグと呼ばれる突起(符号13)と、副ラグと呼ばれる突起(符号14)が形成されている。主ラグ13の中央を通る直線C(図11において、2点鎖線で示す直線)が、履板1の設計基準であり、圧延工程における基準となる。
なお、図11において、符号13fは主ラグの先端面を示しており、符号14fは副ラグ14の先端面を示している。
【0004】
図10において、点線で示されている4個所の貫通孔15は、ボルトを貫通してナットで締結することにより、その履板と図示しないリンクとを結合するために形成されている。そして、貫通孔15は、測長工程の後、熱処理の段階で加熱された際に孔抜き加工により形成される。
【0005】
図10、図11で示すような履板1は、測長ラインで、履板の全長L1、溝位置(履板の端部から溝までの長さ)L2を測定して、その寸法が適正範囲から逸脱しているワーク(履板)は、不良品として、ラインから払い出される(除去される)。
ここで、測長ライン(測長工程)における係る処理は、自動化されている品質管理処理である。
【0006】
「測長」ラインで履板1の全長L1、溝位置L2を計測するために、従来は、ラインスキャンカメラを用いて計測することが行われている。
ラインスキャンカメラを用いた計測について、その概要を図12で示す。
【0007】
図12において、ラインスキャンカメラは、CCDイメージセンサ素子2Sと、レンズ3Sと、図示しないドライバー・コントロール回路により構成されている。
図12において、被測定物Mの寸法Wを計測する場合には、CCDイメージセンサ素子2S上に映像されている光の量と位置を求めることにより行う。
図12において、符号Yは被測定物の移動方向を示している。なお、図12中、符号4Sは測長の際に点灯する照明装置を示す。
【0008】
従来のカメラにより撮影する測長エリアでは、外乱光の影響を除去するため、暗室が必要である。
これに対して、ラインスキャンカメラでは、センサ素子2Sが一列に並んでいるため、外乱光の影響を受け難く、暗室の必要性が低いという利点を有している。
【0009】
ラインスキャンカメラを用いて履板1の計測(測長)を行う場合が、図13および図14で示されている。
図13は測長ラインを水平方向から見た状態、より詳しくは、図14の左方から右方を見た状態を示している。そして、図14は測長ラインを進行方向に向かって見た状態を示している。
【0010】
図13において、測長ラインは、第1の搬送コンベア50および第2の搬送コンベア60と、略測定対象の長手方向寸法に等しい距離に離されて配置された2台のラインスキャンカメラ、すなわち、第1のカメラ(先端検出用カメラ)7および第2のカメラ(後端検出用カメラ)8と、照明装置9とから構成されている。
なお、図13において、符号Lpは地面に平行なラインであるパスラインを示し、矢印Xは搬送方向を示している。
【0011】
特に図14で示されているように、ラインスキャンカメラ7、8は履板1の側方(横)に設けられており、履板1の上方には設けない。以下に、その理由を説明する。
工場内は暗いので、写真撮影のためには照明装置9が必要である。また、明暗エッジ差を大きくして計測結果を安定させるために、照明装置9を用いている。
【0012】
ここで、ラインスキャンカメラ7、8を履板1の上方に位置せしめ、照明装置9を履板1の下方に位置せしめると、履板1に付着した圧延スケール等が落下して、照明装置9を覆ってしまう恐れがある。一方、照明装置9を履板1の上方に位置せしめ、ラインスキャンカメラ7、8を履板1の下方に位置せしめると、履板1に付着した圧延スケール等がラインスキャンカメラ7、8に落下してしまう。
そのため、カメラ7、8を履板1の側方(横)に設け、履板1の反対側に照明装置9をセットして、圧延スケール等が落下しても悪影響が無い状態で、撮影を行っているのである。
【0013】
しかし、カメラ7、8を搬送コンベア50の側方に配置した結果、測長エリア(カメラ7、8で撮影するためのエリア)のスペース(面積)を広くしなければならないという問題が生じる。
カメラ7、8で履板1を撮影するに際しては、カメラ7、8と履板1との間にある程度の距離(2m程度:履板1から離隔した位置から撮影しなければ、履板1全体の写真が撮れない)が必要だからである。
【0014】
また、図13、図14で示すように、ラインスキャンカメラ7、8を用いた計測システムでは、市販のシステムをそのまま適用できないという問題がある。
これは、図13、図14で示すような計測システムでは、誤差が非常に大きくなってしまい、誤差の較正のために複雑な処理が必要となるので、演算装置として専用品を用いなければならないからである。そして、専用品の演算装置を用いるため、ラインスキャンカメラを用いて履板の測長を行う計測システムは、システム構築のためのコストが、高騰してしまうという問題を有している。
【0015】
ここで、図13、図14で示すような計測システムでは、誤差が非常に大きくなってしまう理由について、説明する。
図15は、図14の一部を拡大して示している。
図15で示すように、図13、図14で示すような計測システムでは、カメラ7、8を履板1の横方向に位置させたため、履板1において全長(図10のL1)および溝位置(図10のL2)が計測される被計測領域11が、履板1の最上部となるように、履板1を立てるようにして、断面円柱状の上方搬送コンベア(第2のコンベア)60と、断面が鼓状の下方搬送コンベア(第1のコンベア)50により、履板1を搬送している。
【0016】
そして、履板1の図15における最下方の辺(長辺あるいは稜線:図15において、紙面に垂直な方向に延びる辺)16が断面鼓状の下方搬送コンベア50の鞍部50aに突き当てられた状態となっている。
そのような状態で履板1を搬送する結果、履板1の測長(全長L1および溝位置L2の計測)時における基準(計測の基準)は、履板1が断面鼓状の下方搬送コンベア50と接触する辺(長辺あるいは稜線)16となる。
【0017】
上述したように、履板1の設計基準(圧延の基準)は主ラグ13の中心線Cである。そして、図13、図14で示すような計測システムにおける計測の基準16は、設計基準Cから最も離隔した個所であり、最も誤差あるいは公差が大きい個所である。
そして、最も誤差あるいは公差が大きい個所16を計測の基準としているため、図13、図14で示すような計測システムでは、履板1の被計測領域11も設計基準Cに対して非常に大きな誤差(公差)を有した状態で、撮影されることになる。
【0018】
図16で示すように、最も誤差あるいは公差が大きい個所16を計測の基準として、履板1の被計測領域11を撮影して計測すると、本来は、図16において実線で示す個所が測定位置であるのに対して、当該誤差(公差)が存在することにより、図16において点線で示す個所が測定位置となってしまう。その結果、図13、図14で示すシステムでは、誤差(図16における符号δ)が非常に大きくなる。
【0019】
カメラ7、8の映像により、履板1の全長L1や溝位置L2を計測する場合には、映像から複数の点を特定し、特定された複数の点の座標を用いて全長や溝位置を決定する。しかし、履板1の被計測領域11が設計基準Cに対して非常に大きな誤差(公差)を有した状態で撮影されたのであれば、その誤差を補正しなければ、本来は合格品である履板を不合格と判定し、あるいは、本来は不合格品となる履板を合格と判定してしまう恐れがある。
したがって、そのような大きな誤差を補正するために、大変複雑な処理を行わなければならず、上述したように専用品のシステムを使用しなければならないのである。そのため、コスト高となってしまう。
【0020】
また、履板の製造における測長ラインにおいて、CCDカメラ3台を用いた計測システムを用いる場合がある。
係るシステムが図17および図18に示されている。
【0021】
図17において、CCDカメラ3台を用いた計測システムは、履板1の先端を検出する第1のCCDカメラ70と、溝位置を検出する第2のCCDカメラ78と、履板1の後端を検出する第3のCCDカメラ80とを備えている。
なお、第1のCCDカメラ70は、タイミングセンサを兼ねている。上記以外の構成については、図13、図14で説明したシステムと、ほぼ同様である。
【0022】
ここで、図13、図14で示すシステムでは、ラインスキャンカメラ7、8と履板1とは相当距離(たとえば2m程度)を離隔させる必要があったが、図17、図18のシステムでは、CCDカメラ70、78、80と履板1とは、ラインスキャンカメラの場合ほどは離隔する必要はない。図18において、CCDカメラ70、78、80と履板1との距離は、たとえば、0.5m程度である。
そのため、図18で示すように、カメラ70、78、80および照明装置9を履板1の側方に設けても、さほどスペースを必要とはしない。
【0023】
図17、図18のシステムにおいても、履板1を製造する工場内は暗いので、写真撮影のためには照明が必要である。また、明暗エッジ差を大きくして計測結果を安定させるために、照明装置9を用いている。
【0024】
ここで、外乱光の影響を除去するため、図17、図18のシステムにおいて履板1を撮影して測長するためには、暗室N内で行う必要がある。すなわち、図17、図18のシステム全体を暗室Nで覆う必要がある。
しかし、システム全体を暗室Nで覆うためには、大きなスペースが必要となる。
【0025】
また、図18から明らかなように、図17、図18のシステムにおいても、履板1を立てた状態で搬送しているので、測定の基準が、設計の基準である主ラグ13の中心線Cから最も遠い個所、すなわち履板1と鼓状の下方搬送コンベア50とが接触する辺(長辺)16となる。そのため、図17、図18のシステムにおいても、図15、図16を参照して前述したように、誤差が大きくなってしまい、較正のために専用の処理システムが必要になってしまう。
【0026】
その他の従来技術として、画素数がさほど多くない2台のカメラを用いて、当該カメラから送信された画像を処理することにより、鋼材の長さを計測する測定装置が存在する(特許文献1参照)。
また、CCDカメラと光電センサとを有し、光電センサとCCDカメラの応答速度の違いにかかわらず、搬送材料の長さを高精度に測定する測定技術も提案されている(特許文献2参照)。
しかし、これ等の従来技術は、何れも、履板の全長や溝位置の計測(測長)に特有な上述した各種問題点を解消するものではない。
【特許文献1】特開11−14311号公報
【特許文献2】特開2001−317920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、照明装置や暗室を必要とせず、測定誤差を小さくして高精度に計測することが可能な履板の計測システムおよび計測方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の無限軌道帯用履板の計測システムは、無限軌道帯用履板(1)の主ラグ(13)の先端面(13f)および副ラグ(14)の先端面(14f)が搬送コンベア(5)に接触して搬送されるように(履板1が「寝た」状態で搬送されるように)構成されており、収束性の高い光(たとえばレーザー光R)を照射する投光側(センサ投光側21)とその光を受光する受光側(センサ受光側22)とが対となって搬送コンベア5上に(たとえば3個所)設けられており、前記履板(1)が通過する際に前記履板(1)の被計測領域(11)により遮られる位置を投光側(センサ投光側21)から照射される光の軸が経由するように設定されており、投光側(センサ投光側21)と受光側(センサ投光側22)とが斜めに向かい合って配置されていることを特徴としている(請求項1)。
【0029】
本発明の実施に際して、センサ(2)の投光側(21)から受光側(22)に収束性の高い光(たとえばレーザー光R)を照射するのは、タイミングセンサ2Tから照射された別のレーザー光が履板(1)の被計測領域(11)で遮られて、計測開始を指示する信号が発生した時であるのが好ましい。
【0030】
本発明において、前記搬送コンベア(5)に沿って案内部材(幅寄せガイド6)を設け、その搬送コンベア(5)は無限軌道帯用履板(1)を案内部材(幅寄せガイド6)側(矢印Y方向)へ付勢して、前記履板(1)の主ラグ(13)が案内部材(6)へ常に突き当てられるように構成されている(搬送・幅寄せ用斜行コンベアとして構成されている)のが好ましい(請求項2)。
【0031】
また上述した計測システム(請求項1、2の何れかの計測システム)を用いた本発明の履板の計測方法は、搬送コンベア(5)で搬送された前記履板(1)が所定個所に到達した時に(タイミングセンサ2Tから計測開始を指示する信号が発生した時に)センサ(2)の投光側(21)から受光側(22)に収束性の高い光(たとえばレーザー光R)を照射する工程(S1)と、収束性の高い光(たとえばレーザー光R)が受光された部分と前記履板の被計測領域(11)により収束性の高い光が遮られた部分(影の部分)とをセンサ(2)の受光側(22)で識別して、前記履板(1)の被計測領域(11)を計測し(S3)、以って、計測するべき寸法(たとえば、履板1の全長L1や、履板の溝位置L2)を決定する寸法決定工程(S4)とを有し、前記履板(1)を搬送する際に、搬送コンベア(5)に沿って設けられた案内部材(幅寄せガイド6)側(矢印Y方向)へ前記履板(1)を付勢して、前記履板(1)の主ラグ(13)を案内部材(6)へ突き当てることを特徴としている(請求項3)。
【0032】
本発明の計測方法において、計測するべき履板(1)を(既存のノギス等を使用した手作業により)別途計測し、その別途計測した結果と寸法決定工程(S4)の結果とから誤差(ΔA)を求め、求められた誤差(ΔA)を寸法決定工程(S4)における較正の際に使用することが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0033】
上述する構成を具備する本発明によれば、センサ(2)の投光側(21)から受光側(22)に向けて収束性の高い光(たとえばレーザー光R)を照射する際に、その光が受光された部分と、履板(1)の被計測領域(11)により収束性の高い光(たとえばレーザー光R)が遮られた部分(影の部分)とを、センサ(2)の受光側(22)で識別することにより、図4を参照して後述するように、被計測領域(11)が計測される。それによって、必要な寸法、たとえば、履板(1)の全長(L1)や、履板(1)の溝位置(L2)が決定される。
【0034】
上述したように、図示の実施形態では、履板(1)の被計測領域(11)が収束性の高い光(たとえば、レーザー光R)を遮るか否かにより計測を行うので、上述した従来技術のように、カメラを用いて映像から判断する必要はない。したがって、カメラを履板(1)から離すためのスペースが不要になる。
【0035】
また、収束性の高い光(たとえばレーザー光R)がセンサ受光側(22)で受光されたか否かを判定するに際しては、外乱光の影響を受け難いので、暗室を設ける必要もない。
【0036】
さらに、本発明によれば、工場内が暗くても、収束性の高い光(たとえばレーザー光R)の照射および受光には何ら問題はなく、写真撮影を行う場合のように明暗エッジ差を大きくして計測結果を安定させる必要もないので、照明装置が不要となる。
【0037】
本発明において、履板(1)は搬送コンベア(5:搬送・幅寄せ用斜行コンベア)により、案内部材(幅寄せガイド6)側(矢印Y方向)に付勢されており、案内部材(幅寄せガイド6)に突き当てられる(押し付けられる)。
そのため、本発明によれば、主ラグ(13)の側面(13s)と幅寄せガイド(6)とが接触している面の最下方の辺(稜線17)が計測の基準となる。
【0038】
係る計測の基準(主ラグ13の側面13sと幅寄せガイド6とが接触している面の最下方の辺17)は、設計の基準(主ラグの中心線C)から極めて近い位置にあり、両者の距離は極めて短い。そして、設計の基準(あるいは圧延の基準:直線C)との距離が極めて短いため、本発明における計測の基準(17)は、誤差あるいは公差は極めて微小である。
設計の基準(C)に対する誤差(公差)が極めて小さい個所(17)が計測の基準となっているので、本発明によれば、履板(1)の被計測領域(11)における計測の誤差も小さく、全長(L1)あるいは溝位置(L2)の寸法計測においても、計測値に包含される誤差が小さく、計測の精度が向上する。
【0039】
そして、計測値に包含される誤差が小さく、計測の精度が向上している本発明によれば、計測値の補正あるいは較正が容易となり、複雑な専用ソフトによる処理を必要とすることなく、履板(1)の計測を行うことができる。
【0040】
本発明において、計測するべき履板(1)を(既存のノギス等を使用した手作業により)別途計測し、その別途計測した結果と寸法決定工程の結果とから誤差(ΔA)を求め、求められた誤差(ΔA)を寸法決定工程(S4)における較正の際に使用すれば(請求項4)、本発明が稼動した際における最初の履板(1)に対する計測や、履板(1)の種類が変更になった場合に、対処することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る計測システムの全体的な構成を示している。
図1の計測システムでは、搬送コンベア(搬送・幅寄せ斜行用コンベア)5が地面に対して水平に配置されている。被搬送物(被測定物:履板)1の進行方向は、図1において矢印Zで示す方向であるが、搬送コンベア5を構成する各ローラー51は、搬送方向Zと直交する方向(図1の矢印Yと平行な方向)に対してわずかに傾斜するように配置されている。
【0042】
図1において、ローラー51の右端側には、矩形断面の案内部材(幅寄せガイド)6が、搬送方向Zと同一方向へ延在するように設けられている。ここで、幅寄せガイド6の下面が、ローラー51の回転を妨げないように構成されている。
【0043】
履板1は、図10、図11で説明した従来技術と同様に構成されている。図1では明示されていないが、履板1は、その主ラグ13および副ラグ14の先端面13f、14f(図2参照)が搬送コンベア5の上面に接触して搬送されるように構成されている。
図2で示すように、図示の実施形態では、履板1が寝た状態、すなわち主ラグ13が搬送コンベア(搬送・幅寄せ用斜行コンベア)5と接触した状態で搬送される。
【0044】
図1において、履板1は、搬送方向Zと直交する方向(図1の矢印Yと平行な方向)に対して傾斜したローラー51の回転運動によって、常に矢印Y方向へ付勢される。
より詳細に説明すると、搬送コンベア(搬送・幅寄せ用斜行コンベア)5を構成する複数のローラー51・・・は、図1において、履板1の進行方向に対してローラー51左端が前方にせり出すように若干の傾斜をつけて配置されている。そして、搬送コンベア5の図1において右端近傍には、幅寄せガイド6が設けられている。そして、幅寄せガイド6は、履板1の搬送方向Zと平行に延在するように配置されている。
【0045】
搬送コンベア5の各ローラー51は、図1の矢印Y方向で見た場合に、反時計回りに回転している。したがって、幅寄せガイド6が存在しない場合は、搬送コンベア5上の履板1は、図1における斜め右前方(図1の矢印C方向)に移動する。
ここで、搬送コンベア5の右端側には幅寄せガイド6が存在するので、詳細が図2で示されているように、履板1の主ラグ13の右測面13sが幅寄せガイド6に当接するので、図1において履板1は幅寄せガイド6よりも右側へは移動しない。
【0046】
図1において、測長手段であるセンサは、CCDイメージセンサを用いた汎用センサ2が3個(図1参照)用いられている。センサ2は収束性の高い光(たとえばレーザー光)Rを照射する投光側21と、その光Rを受光する受光側22とが1対となって構成されている。なお、レーザー光に代えて、収束性が良好なその他の種類の光を照射してもよい。
図2を参照して後述するように、図示の実施形態では、投光側21が上方、受光側22が下方に配置されている。
【0047】
各センサ2の構成は共通であるが、特に設置位置を特定するために必要の際には履板の先端を計測するセンサを「2A」、履板の溝位置を計測するセンサを「2B」、履板の後端を計測するセンサを「2C」として、説明する。
【0048】
上述した3個のセンサ2において、第1のセンサ2Aは、たとえば、履板1の先端位置にレーザー光線の照射幅の中心が位置するように配置されている。
第2のセンサ2Bは、たとえば、履板1の溝位置(溝12の傾斜が開始する点)にレーザー光線の照射幅の中心が位置するように配置されている。
第3のセンサ2Cは、たとえば、履板1の後端位置にレーザー光線の照射幅の中心が位置するように配置されている。
【0049】
第1のセンサ2A、第2のセンサ2B、第3のセンサ2Cはコンベアラインに対して位置が固定可能に構成されている。より詳細には第1のセンサ2Aは固定されている。これに対して、第2および第3のセンサ2B、2Cは、履板の種類が変更となった場合にも計測ができるようにするため、センサ移動装置23B、23Cによって取り付け位置を移動可能に構成されている。
【0050】
センサ移動装置23B、23Cは、図4を参照して後述するコントロールユニット3の移動制御部35によって、センサ(投光側および受光側)2B、2Cを計測に適切な位置へ固定するべく、センサ2B、2Cを移動する。
なお、移動装置23B、23C自体は、公知・市販の機器をそのまま適用可能である。
【0051】
搬送コンベア5のライン上の進行方向で、第1のセンサ2Aと同じ位置あるいは近傍の位置には、履板1の先端部分が通過したことを検出するタイミングセンサ2Tが設けられている。
このタイミングセンサ2Tは、レーザー光線をピンポイントで照射するように構成されており、照射されたレーザー光線を履板1が遮ったならば、計測開始を指示する信号(たとえばOFF信号)を発生する。そして、発生した計測開始を指示する信号は、センサ2A、2B、2Cによる計測開始のタイミング信号として用いられる。
【0052】
次に、図2〜図5を参照して、本実施形態の計測について説明する。
図2において、搬送コンベア(搬送・幅寄せ斜行用コンベア)5が地面に対して水平に配置されている。
図2において、符号Lpは「パスライン」を示している。パスラインは搬送コンベア5の搬送経路であって、地表面と平行な面である。
【0053】
図2において、履板1の主ラグ13および副ラグ14の先端面13f、14fは搬送コンベア5の上面に接触した状態で搬送されている。
図14、図15、図18で示すように、従来技術では履板1が立った状態で搬送される。特に図14、図15で詳細に示されているように、従来技術においては、主ラグ13が下方の鼓状の搬送ローラー50とは接触しない状態で搬送される。
【0054】
これに対して図示の実施形態では、図2で示すように、搬送コンベア(搬送・幅寄せ用斜行コンベア)5における搬送ローラーはローラー51のみであり、履板1の主ラグ13の端面13fが搬送コンベア(搬送・幅寄せ用斜行コンベア)5における搬送ローラー51と接触した状態で搬送される。
なお、本明細書において、履板1が「寝た状態」とは、主ラグ13の端面13fが搬送ローラー51と接触する状態を意味している。
【0055】
図1で説明したように、履板1は傾斜したローラー51の回転運動によって、常に図2の右方に付勢される。しかし、ローラー51搬送コンベア5の図2における右端部には幅寄せガイド6が存在するため、履板1は、幅寄せガイド6よりも右側には移動しないように構成されている。このように構成することにより、図5を参照して後述するように、計測作業における労力が軽減され、計測精度が向上する。
【0056】
図2で示すように、図示の実施形態では、センサ2ではレーザー光Rが照射される。そのレーザー光Rは、その光軸が履板1の先端近傍である被計測領域11を通過するように照射されると共に、図2で示すように、水平方向および鉛直方向に対して傾斜するように、斜め方向へ照射される。
上述したように、センサ2において、投光側21が上方に配置され、受光側22が下方に配置されており、投光側21と受光側22とは、搬送される履板1と衝突してしまうことがないように、所定距離だけ離れて配置されている。
【0057】
レーザー光Rの光軸について、図2を参照してさらに述べる。
センサ投光側21からセンサ受光側22に照射されるレーザー光Rの光軸は、パスラインLpに平行でも垂直でもなく、パスラインLpに対して斜めに傾斜した方向に延びている。別の表現をすれば、センサ受光側22はセンサ投光側21と同一平面上に配置されているわけではなく、センサ受光側22がセンサ投光側21の鉛直方向真下に位置しているわけでもなく、両者は斜め方向に向かい合っている。
【0058】
図2において、履板1は、上述したように寝た状態で搬送される。すなわち、履板1の主ラグ13の端面13fが搬送ローラー51と接触した状態で搬送される。
履板1が寝た状態で搬送されるため、履板1から剥離したスケールが、履板1下方に設けたセンサ受光側22に落下して、センサ受光側22がセンサ投光側21からのレーザー光を遮って、誤信号を発生させる恐れがある。
【0059】
しかし、図2で示されているように、センサ投光側21とセンサ受光側22とが斜めに向かい合っており、センサ受光側22は履板1の下方には位置しているが、履板1の直下に位置してはいない。
そのため、履板1の直下の領域であって、センサ受光側22が位置している領域(図2において、符号「λ」で示す領域)は極めて小さく、履板1から圧延スケール等が剥離してセンサ受光側22に落下することによる弊害は、ほとんど無視することができる。
【0060】
図13、図14で説明したラインスキャンカメラを用いたシステムや、図17、図18で説明した3台のCCDカメラを用いたシステムにおいて、図2で示すように履板を「寝た」状態で搬送した場合であって、照明が履板の下側に位置している場合には、履板1の全範囲にわたって圧延スケール等が照明に落下してしまうので、計測作業が困難になる。
【0061】
これに対して、図2で示すように、図示の実施形態では、センサ受光側22の直上における履板1の部分(符号λで示す領域の部分)のみが問題となり、図2において符号「λ」で示される当該部分(領域λ)は、履板1全体に比較して、極めて小さい。その結果、図示の実施形態では、履板1からのスケール落下による影響は無視できるほど小さいのである。
【0062】
図1でも説明したが、図2において、履板1の主ラグ13の右側面13sが幅寄せガイド6に当接するので、履板1は、主ラグ13が幅寄せガイド6に当接した個所よりも右方向への移動が阻止される。
すなわち、図示しない手段(たとえば、ロボット等)により搬送コンベア5上に載置された履板1は、図2の右方向へ移動して、主ラグ13の右測面13sが幅寄せガイド6に当接する。ここで、履板1は、搬送コンベア5によって右方向に付勢(幅寄せ)されながら搬送されるので、主ラグ13が幅寄せガイド6に当接した以降は、主ラグ13の右測面13sが幅寄せガイド6に当接している状態を維持しつつ、搬送ライン5を搬送される。
【0063】
図5を参照して後述するように、図示の実施形態では、主ラグ13の側面13sと幅寄せガイド6とが当接した個所(短辺側の個所)で、かつ、主ラグ端面13fを包含する平面と交差する位置17を計測の基準としている。
図2において、位置17は「点」として示されているが、実際には、位置17は、図2の紙面と垂直な方向へ延在する「辺」となる。
【0064】
計測の基準である位置17を正確に定義するために、履板1の主ラグ13側面13sが確実に突き当てられる必要がある。そのため、図示の実施形態においては、搬送・幅寄せ用斜行コンベア5により、履板を図1の矢印Y方向へ移動して、幅寄せガイド6に突き当てている。
【0065】
次に、図3および図4を参照して、図示の実施形態における計測の態ようを説明する。
図3において、センサ2の投光側21からレーザー光Rを計測対象である履板1の被計測領域11に照射している。そして、被計測領域11によってレーザー光Rが遮られることにより生じる影の部分と、レーザー光Rが遮られることなく照射される部分とを、センサ受光側22で受光して、好適に処理することにより、被計測領域11の矢印L方向の座標が特定される。
【0066】
詳細には、センサ2の投光側21からレーザー光Rを履板1に向かって、幅Aで照射し、履板1によってできる影の部分δの長さ寸法を求める。
各センサ2A、2B、2Cの位置は予め定められているので、影の部分δの長さ寸法が求まれば、図4を参照して後述するように、その時点における全長寸法と、溝位置寸法を計算することができる。
【0067】
図3を参照して、さらに説明すれば、図示しないタイミングセンサ(図1の2T参照)がONになった瞬間における履板1の前端(図3における左端)の位置の矢印L方向座標を決定するには、測定範囲Aに対して履板1がレーザー光Rを遮っている長さδを決定すればよい。
【0068】
具体的には、図3において、タイミングセンサ2TがONとなった瞬間におけるレーザー光Rが遮られていない領域「B」の長さ寸法の値(センサ受光側22でレーザー光Rを検知した長さ)を求める。
測定範囲A(センサ投光側21でレーザー光Rを照射した範囲:定数)は一定(たとえば30mm)なので、δ(履板1により、照射された光が遮られた長さ)は、 δ=A−Bとなる。
なお、タイミングセンサ2TがONのタイミングは、履板1の前端(図3における左端)が、測定範囲A内に位置していればよい。
【0069】
図4を参照して、図3で示すセンサ2の作動原理を利用して、(実際の)履板1の全長寸法L11および溝位置寸法L12を算出する手順を説明する。
【0070】
図4では、計測のための制御手段であるコントロールユニット3と、3個のセンサ2A、2B、2Cと、タイミングセンサ2Tと、被測定物である履板1と、それらの位置関係および信号の伝達経路が示されている。
コントロールユニット3は、計測処理部31と演算処理部32と結果表示機33と製品寸法データ記憶部34と移動制御部35とによって構成されている。
【0071】
計測処理部31は、各センサ2A、2B、2Cからの信号を受信して、計測データとして処理し、その計測データを演算処理部32に伝送する。演算処理部32は、各計測データを処理して、履板1全体の正確な寸法を演算して求め、結果表示部33に演算結果を伝送する。
製品寸法データ記憶部34には、製品ごとの全長データや溝位置データが記憶されており、必要に応じて移動制御部35にそのデータを送る。
移動制御部35は、測定物が変更される際には、変更される測定物のデータを製品寸法データ記憶部34から入手し、演算処理部32において、センサ2B、2Cの移動量を演算し、その演算した移動量情報によって、前記センサ移動装置23B、23Cを操作してセンサ2B、2Cを適正位置に移動させる。
【0072】
先端側のセンサ2Aの測定範囲(検出幅)はA1、溝位置のセンサ2Bの測定範囲はA2、後端側センサ2Cの測定範囲はA3である。
先端側のセンサ2Aにおける測定範囲A1の先端(図4では右端)から、溝位置のセンサ2Bにおける測定範囲A2の先端(右端)までの長さは、履板1の溝位置の設計値L2に等しくなるように設定されている。
また、先端側のセンサ2Aにおける測定範囲A1の先端(右端)から、後端のセンサ2Cにおける測定範囲A3の先端(右端)までの長さは、履板1の全長の設計値L1に等しくなるように設定されている。
【0073】
タイミングセンサ2Tが計測開始を指示する信号を発した瞬間に、先端側センサ2Aの測定範囲A1において、測定物(製品履板)1がレーザー光を遮っていない領域の距離は、受信側において、距離「b1」として認識される。
タイミングセンサ2Tが計測開始を指示する信号を発した瞬間に、溝位置センサ2Bの測定範囲A2において、測定物(製品履板)1の溝位置までの距離、あるいは、測定物(製品履板)1がレーザー光を遮っている領域は、受信側において、距離「b2」として認識される。
タイミングセンサ2Tが計測開始を指示する信号を発した瞬間に、後端側センサ2Cの測定範囲A3において、測定物(製品履板)1の後端までの距離、あるいは、測定物(製品履板)1がレーザー光を遮っている領域は、受信側において、距離「b3」として認識される。
【0074】
図4において、製品全長寸法L11および製品溝位置の実寸法L12は、以下の演算式によって求められる。
製品全長の実寸法L11は
L11=L1−b1+b3
製品溝位置の実寸法L12は
L12=L2−b1+b2
となる。
なお、上述したように、L1は履板1の全長の設計値L1であり、L2は履板1の溝位置の設計値である。
【0075】
図示の実施形態では、履板1がレーザー光を遮るか否かにより計測を行うので、上述した従来技術のように、カメラを用いて映像から判断する必要はない。したがって、カメラを履板から離すためのスペースは不要である。
また、レーザー光がセンサ受光側22で受光されたか否かを判定するに際しては、外乱光の影響を受け難いので、暗室を設ける必要もない。
さらに、図示の実施形態によれば、工場内が暗くてもレーザー光の照射および受光には何ら問題はなく、写真撮影を行う場合のように明暗エッジ差を大きくして計測結果を安定させる必要もないので、照明が不要となる。
【0076】
次に、図5を参照して、図示の実施形態により計測精度が向上し、誤差較正のための専用の処理システムが不要となる理由を説明する。
図5で示すように、図示の実施形態では、搬送・幅寄せ用斜行コンベア5により、履板1は常時矢印Y方向に付勢されており、幅寄せガイド6に突き当てられる(押し付けられる)。その結果、図示の実施形態では、履板1における計測の基準が、主ラグ13の側面13sと幅寄せガイド6とが接触している面の最下方の辺17となる。なお、図5では、辺17は「点」として示される。
【0077】
図5から明らかなように、図示の実施形態における計測の基準17は、設計の基準Cから極めて近い位置にあり、両者の距離は図5における距離Δで示されている。そして、計測の基準17と、設計の基準(あるいは圧延の基準:直線C)との距離が極めて短いため、計測の基準17における誤差あるいは公差は極めて微小である。
【0078】
すなわち、図示の実施形態では、設計の基準Cに対する誤差(公差)が極めて小さい個所17が計測の基準となっているので、履板1全体における計測の誤差が減少する。そのため、全長L1あるいは溝位置L2の寸法計測においても、計測値に包含される誤差が非常に小さくなり、計測の精度が向上する。
さらに、図示の実施形態では、設計基準(圧延の基準)に密接した個所17を計測基準にしており、計測結果に包含される誤差が非常に小さいので、計測結果の補正あるいは較正が容易である。そのため、複雑な専用ソフトによる処理の必要がなくなるのである。
【0079】
図5において、従来の計測の基準16(図15参照)から被計測対象11までの寸法の公差は、たとえば、2mmである。これに対して、図示の実施形態における設計の基準である主ラグ13の中心線Cと被計測対象11との寸法公差は、たとえば0.8mmである。すなわち、公差のみを考慮した場合でも、図示の実施形態における計測の基準から被計測対象11までの寸法の公差は、従来の公差の40%でしかない。
【0080】
次に、図6を参照して、図示の実施形態における計測の誤差の較正について説明する。
図6で示すように、CCDイメージセンサによる計測では、たとえば、溝位置L2を決定する際に、符号Lrで示す直線上を計測してしまう。そのため、本来の溝位置L2に対して、CCDイメージセンサによる計測では、図6において、符号L2fで示す寸法を溝位置と認識してしまう傾向が存在する。そして、寸法L2fと寸法L2との差ΔAは、計測の誤差となる。
【0081】
そのため、図示の実施形態では、新しい種類の履板の測長を行うに当たって、システムが稼動した直後の履板1(最初の履板)や、製造される履板の種類が変更された後に、最初に測長ラインに送られて来た履板1を、図示の実施形態によるシステムで計測した後に、たとえばノギス等の計測器具を用いて手作業で実測する。
言い換えれば、ノギス等で実測するのは、図6におけるΔA(=L2f−L2)を求め、補正(較正)用の定数とするためである。
【0082】
すなわち、溝位置の実寸法をL2、センサが「溝位置」として計測してしまう寸法をL2fとすれば、誤差ΔAは、
ΔA=L2f−L2 となる。
この誤差ΔAは、センサ2の出力から全長、溝位置を算出する際に、較正のために用いられる。
【0083】
次に、図示の実施形態による計測の手順を、図7のフローチャートにより説明する。
図7において、コントロールユニット3は、タイミングセンサ2Tからの信号によりレーザー光を照射し(ステップS1)、計測開始を指示する信号があったか否かを判断する(ステップS2)。
計測開始を指示する信号があれば(ステップS2がYES)、ステップS3に進み、計測開始を指示する信号が無ければ(ステップS2がNO)、ステップS1に戻り、ステップS2がNOのループを繰り返す。
【0084】
ステップS3では3つのセンサ2A〜2Cで計測を行い、図4を参照して説明したように、履板1の全長L11および溝位置L12を演算する(ステップS4)。
そして、演算された全長L11および溝位置L12が許容範囲内にあるか否かを判定することにより、コントロールユニット3は履板1が合格品であるか不合格かを判断する(ステップS5)。不合格であれば、履板1を払出して(ステップS7)、制御を終える。
【0085】
合格品であれば、計測(測長)を終了するか否かを判断する(ステップS6)。
測定の被対象物である履板1が残っており、計測(測長)を続行するならば(ステップS6がNO)、ステップS1まで戻り、ステップS1以降の工程を繰り返す。全ての履板1について計測が終了したなら(ステップS6がYES)、計測を終了する。
【0086】
次に、図示の実施形態を自動制御する場合における構成について、図8、図9を参照して説明する。
図8は、3個のセンサ2A〜2Cと、タイミングセンサ2Tと、制御装置(コントロールユニット)300との関係をブロック図として示しており、図9では、制御装置300の構成を主として示している。
図8において、符号Rはレーザー光照射部21tから照射されたレーザー光を示す。
【0087】
図8において、タイミングセンサ2Tはレーザー照射部21tとレーザー受光部22tとから構成されており、レーザー照射部21tはレーザー光照射信号ラインLtiで、レーザー受光部22tは計測開始を指示する信号(レーザー光が被測定物である履板1で遮られた旨の信号)ラインLtoで夫々コントロールユニット300に接続されている。
【0088】
測長用の先端側のセンサ2A、溝位置のセンサ2B、後端側のセンサ2Cは、何れもデータ要求信号ラインLiによってコントロールユニット300と接続され、コントロールユニット300からは各センサ2A、2B、2Cにデータ要求信号が送られる。
また、先端側のセンサ2A、溝位置のセンサ2B、後端側のセンサ2Cは、何れもデータラインLoによってコントロールユニット300と接続され、各センサ2A、2B、2からコントロールユニット300に測定物の全長L11および溝位置L12に関するデータが送られる。
【0089】
図9において、コントロールユニット300は、タイミングセンサ信号回路310と、データ要求信号回路320と、補正乗数決定回路330と、演算回路340と、合否判定回路350と、払出信号発生回路360とを備えている。
タイミングセンサ信号判定回路310は、タイミングセンサ2Tの受光部21tからインターフェースF1を介して計測開始を指示する信号を受信し、計測開始を指示する信号が発信された旨をデータ要求信号発信回路320に発する。
【0090】
データ要求信号回路320は、データ要求信号をインターフェースF2経由で各センサ2A、2B、2Cの投光側(図9では図示せず)に発信する。
各センサ2A、2B、2Cの受光側(図9では図示せず)は、測定(測長)した結果のデータをインターフェースF4経由で演算回路340に送る。
【0091】
図6を参照して前述したように、計測の被対象物である履板1の最初の1枚については、ノギス等の計測機器を用いた手作業による計測を行い、自動計測による数値との誤差Δを決定する必要がある。
そのため、実測ブロックDnで、履板1の全長と溝位置とを、たとえばノギスを用いて実測し、実測した結果である実測データを、インターフェースF3経由で補正定数決定回路330に入力しておく。そして、補正定数決定回路330では、図6を用いて前述した誤差(図6における誤差Δ)に相当する補正定数(ΔA)が決定され、補正定数(ΔA)が前記演算回路340に送られる。
【0092】
演算回路340では、各センサ2A、2B、2Cからの情報と、補正定数決定回路330で決定された補正定数ΔAとにより、履板1の正確な全長L11、および溝位置L12が演算され、演算結果(すなわちL11およびL12)が合否判定回路350に送られる。
【0093】
合否判定回路350には、インターフェースF5経由でメインフレーム380から製品寸法データおよび閾値が送られ、演算回路340における演算結果である全長L11および溝位置L12と比較される。そして、演算回路340で演算された全長L11および溝位置L12と、合否判定基準である閾値とが比較照合されて、製品として合格か否かが判定される。
なお、メインフレーム380には、製品寸法データや閾値が記憶されている。
【0094】
合否判定回路350で履板1が不合格と判定された場合は、払出信号発生回路360に不合格品があった旨が伝達され、払出信号発生回路360は、インターフェースF6を介して払出部370に払出信号を発信する。払出信号を受けた払出部370は、公知の機構によって、不合格と判定された履板1をラインから払い出す。
以上の制御および作動が自動制御によって行われる。
【0095】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
たとえば、図示の実施形態においては、履板の全長と溝位置とを計測しているが、センサの位置を適宜設定することにより、その他の長さの計測を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態を示す平面図。
【図2】実施形態における計測の態ようを説明する図。
【図3】実施形態における計測の原理を説明する図。
【図4】履板の全長寸法および溝位置寸法を算出する手順の説明図。
【図5】実施形態の計測精度が高い理由を説明するための図。
【図6】新たな種類の履板を計測する際の誤差を説明するための図。
【図7】実施形態に係る計測方法の手順を示すフローチャート。
【図8】実施形態を自動制御するためのブロック図。
【図9】図8のブロック図における制御装置の詳細を示すブロック図。
【図10】計測の対象物である履板を示す平面図。
【図11】履板の側面図
【図12】ラインスキャンカメラによる計測の説明図。
【図13】ラインスキャンカメラを用いた従来技術の説明図。
【図14】図13の従来技術の搬送方向から見た説明図。
【図15】従来技術の測定精度が低い理由を説明するための図。
【図16】従来技術の測定精度が低いことを示す説明図。
【図17】複数のCCDカメラを用いた従来技術を示す説明図。
【図18】図17の従来技術を搬送方向から見た説明図。
【符号の説明】
【0097】
1・・・履板
2・・・センサ
2T・・・タイミングセンサ
3・・・制御手段/コントロールユニット
5・・・搬送コンベア/搬送・幅寄せ用斜行コンベア
6・・・案内部材/幅寄せガイド
11・・・被計測領域
12・・・溝
13・・・主ラグ
13f・・・主ラグの先端面
13s・・・主ラグの側面
14・・・副ラグ
14f・・・副ラグの先端面
17・・・設計の基準
21・・・投光側
22・・・受光側
23B、23C・・・センサ移動装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の下部走行体を構成する無限軌道帯(履帯)の構成部品である履板を製造する際に、製造された履板の全長や溝位置等を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
履板の製造では、圧延工程が終了し、熱処理が行われる前の段階で、「測長」と呼ばれるラインあるいは工程において、履板の全長や溝位置が計測される。「測長」が行われるラインにおける履板の平面形状が、図10で示されており、その履板の断面形状が図11で示されている。計測の対象となるのは、図10における上縁部11(被計測領域11)である。
なお、図10において、履板の溝12は、履帯が湾曲したときに、履板1と履帯の他の構成部品であるリンク(図示省略)が干渉しないようにするための逃げとして形成されている。
【0003】
図11は履板1の断面を示している。そして、図11の矢印Hで示す方向から履板1を見た状態が、図10で示されている。
図11において、図10で示す面の裏側(図11における右側)には、主ラグと呼ばれる突起(符号13)と、副ラグと呼ばれる突起(符号14)が形成されている。主ラグ13の中央を通る直線C(図11において、2点鎖線で示す直線)が、履板1の設計基準であり、圧延工程における基準となる。
なお、図11において、符号13fは主ラグの先端面を示しており、符号14fは副ラグ14の先端面を示している。
【0004】
図10において、点線で示されている4個所の貫通孔15は、ボルトを貫通してナットで締結することにより、その履板と図示しないリンクとを結合するために形成されている。そして、貫通孔15は、測長工程の後、熱処理の段階で加熱された際に孔抜き加工により形成される。
【0005】
図10、図11で示すような履板1は、測長ラインで、履板の全長L1、溝位置(履板の端部から溝までの長さ)L2を測定して、その寸法が適正範囲から逸脱しているワーク(履板)は、不良品として、ラインから払い出される(除去される)。
ここで、測長ライン(測長工程)における係る処理は、自動化されている品質管理処理である。
【0006】
「測長」ラインで履板1の全長L1、溝位置L2を計測するために、従来は、ラインスキャンカメラを用いて計測することが行われている。
ラインスキャンカメラを用いた計測について、その概要を図12で示す。
【0007】
図12において、ラインスキャンカメラは、CCDイメージセンサ素子2Sと、レンズ3Sと、図示しないドライバー・コントロール回路により構成されている。
図12において、被測定物Mの寸法Wを計測する場合には、CCDイメージセンサ素子2S上に映像されている光の量と位置を求めることにより行う。
図12において、符号Yは被測定物の移動方向を示している。なお、図12中、符号4Sは測長の際に点灯する照明装置を示す。
【0008】
従来のカメラにより撮影する測長エリアでは、外乱光の影響を除去するため、暗室が必要である。
これに対して、ラインスキャンカメラでは、センサ素子2Sが一列に並んでいるため、外乱光の影響を受け難く、暗室の必要性が低いという利点を有している。
【0009】
ラインスキャンカメラを用いて履板1の計測(測長)を行う場合が、図13および図14で示されている。
図13は測長ラインを水平方向から見た状態、より詳しくは、図14の左方から右方を見た状態を示している。そして、図14は測長ラインを進行方向に向かって見た状態を示している。
【0010】
図13において、測長ラインは、第1の搬送コンベア50および第2の搬送コンベア60と、略測定対象の長手方向寸法に等しい距離に離されて配置された2台のラインスキャンカメラ、すなわち、第1のカメラ(先端検出用カメラ)7および第2のカメラ(後端検出用カメラ)8と、照明装置9とから構成されている。
なお、図13において、符号Lpは地面に平行なラインであるパスラインを示し、矢印Xは搬送方向を示している。
【0011】
特に図14で示されているように、ラインスキャンカメラ7、8は履板1の側方(横)に設けられており、履板1の上方には設けない。以下に、その理由を説明する。
工場内は暗いので、写真撮影のためには照明装置9が必要である。また、明暗エッジ差を大きくして計測結果を安定させるために、照明装置9を用いている。
【0012】
ここで、ラインスキャンカメラ7、8を履板1の上方に位置せしめ、照明装置9を履板1の下方に位置せしめると、履板1に付着した圧延スケール等が落下して、照明装置9を覆ってしまう恐れがある。一方、照明装置9を履板1の上方に位置せしめ、ラインスキャンカメラ7、8を履板1の下方に位置せしめると、履板1に付着した圧延スケール等がラインスキャンカメラ7、8に落下してしまう。
そのため、カメラ7、8を履板1の側方(横)に設け、履板1の反対側に照明装置9をセットして、圧延スケール等が落下しても悪影響が無い状態で、撮影を行っているのである。
【0013】
しかし、カメラ7、8を搬送コンベア50の側方に配置した結果、測長エリア(カメラ7、8で撮影するためのエリア)のスペース(面積)を広くしなければならないという問題が生じる。
カメラ7、8で履板1を撮影するに際しては、カメラ7、8と履板1との間にある程度の距離(2m程度:履板1から離隔した位置から撮影しなければ、履板1全体の写真が撮れない)が必要だからである。
【0014】
また、図13、図14で示すように、ラインスキャンカメラ7、8を用いた計測システムでは、市販のシステムをそのまま適用できないという問題がある。
これは、図13、図14で示すような計測システムでは、誤差が非常に大きくなってしまい、誤差の較正のために複雑な処理が必要となるので、演算装置として専用品を用いなければならないからである。そして、専用品の演算装置を用いるため、ラインスキャンカメラを用いて履板の測長を行う計測システムは、システム構築のためのコストが、高騰してしまうという問題を有している。
【0015】
ここで、図13、図14で示すような計測システムでは、誤差が非常に大きくなってしまう理由について、説明する。
図15は、図14の一部を拡大して示している。
図15で示すように、図13、図14で示すような計測システムでは、カメラ7、8を履板1の横方向に位置させたため、履板1において全長(図10のL1)および溝位置(図10のL2)が計測される被計測領域11が、履板1の最上部となるように、履板1を立てるようにして、断面円柱状の上方搬送コンベア(第2のコンベア)60と、断面が鼓状の下方搬送コンベア(第1のコンベア)50により、履板1を搬送している。
【0016】
そして、履板1の図15における最下方の辺(長辺あるいは稜線:図15において、紙面に垂直な方向に延びる辺)16が断面鼓状の下方搬送コンベア50の鞍部50aに突き当てられた状態となっている。
そのような状態で履板1を搬送する結果、履板1の測長(全長L1および溝位置L2の計測)時における基準(計測の基準)は、履板1が断面鼓状の下方搬送コンベア50と接触する辺(長辺あるいは稜線)16となる。
【0017】
上述したように、履板1の設計基準(圧延の基準)は主ラグ13の中心線Cである。そして、図13、図14で示すような計測システムにおける計測の基準16は、設計基準Cから最も離隔した個所であり、最も誤差あるいは公差が大きい個所である。
そして、最も誤差あるいは公差が大きい個所16を計測の基準としているため、図13、図14で示すような計測システムでは、履板1の被計測領域11も設計基準Cに対して非常に大きな誤差(公差)を有した状態で、撮影されることになる。
【0018】
図16で示すように、最も誤差あるいは公差が大きい個所16を計測の基準として、履板1の被計測領域11を撮影して計測すると、本来は、図16において実線で示す個所が測定位置であるのに対して、当該誤差(公差)が存在することにより、図16において点線で示す個所が測定位置となってしまう。その結果、図13、図14で示すシステムでは、誤差(図16における符号δ)が非常に大きくなる。
【0019】
カメラ7、8の映像により、履板1の全長L1や溝位置L2を計測する場合には、映像から複数の点を特定し、特定された複数の点の座標を用いて全長や溝位置を決定する。しかし、履板1の被計測領域11が設計基準Cに対して非常に大きな誤差(公差)を有した状態で撮影されたのであれば、その誤差を補正しなければ、本来は合格品である履板を不合格と判定し、あるいは、本来は不合格品となる履板を合格と判定してしまう恐れがある。
したがって、そのような大きな誤差を補正するために、大変複雑な処理を行わなければならず、上述したように専用品のシステムを使用しなければならないのである。そのため、コスト高となってしまう。
【0020】
また、履板の製造における測長ラインにおいて、CCDカメラ3台を用いた計測システムを用いる場合がある。
係るシステムが図17および図18に示されている。
【0021】
図17において、CCDカメラ3台を用いた計測システムは、履板1の先端を検出する第1のCCDカメラ70と、溝位置を検出する第2のCCDカメラ78と、履板1の後端を検出する第3のCCDカメラ80とを備えている。
なお、第1のCCDカメラ70は、タイミングセンサを兼ねている。上記以外の構成については、図13、図14で説明したシステムと、ほぼ同様である。
【0022】
ここで、図13、図14で示すシステムでは、ラインスキャンカメラ7、8と履板1とは相当距離(たとえば2m程度)を離隔させる必要があったが、図17、図18のシステムでは、CCDカメラ70、78、80と履板1とは、ラインスキャンカメラの場合ほどは離隔する必要はない。図18において、CCDカメラ70、78、80と履板1との距離は、たとえば、0.5m程度である。
そのため、図18で示すように、カメラ70、78、80および照明装置9を履板1の側方に設けても、さほどスペースを必要とはしない。
【0023】
図17、図18のシステムにおいても、履板1を製造する工場内は暗いので、写真撮影のためには照明が必要である。また、明暗エッジ差を大きくして計測結果を安定させるために、照明装置9を用いている。
【0024】
ここで、外乱光の影響を除去するため、図17、図18のシステムにおいて履板1を撮影して測長するためには、暗室N内で行う必要がある。すなわち、図17、図18のシステム全体を暗室Nで覆う必要がある。
しかし、システム全体を暗室Nで覆うためには、大きなスペースが必要となる。
【0025】
また、図18から明らかなように、図17、図18のシステムにおいても、履板1を立てた状態で搬送しているので、測定の基準が、設計の基準である主ラグ13の中心線Cから最も遠い個所、すなわち履板1と鼓状の下方搬送コンベア50とが接触する辺(長辺)16となる。そのため、図17、図18のシステムにおいても、図15、図16を参照して前述したように、誤差が大きくなってしまい、較正のために専用の処理システムが必要になってしまう。
【0026】
その他の従来技術として、画素数がさほど多くない2台のカメラを用いて、当該カメラから送信された画像を処理することにより、鋼材の長さを計測する測定装置が存在する(特許文献1参照)。
また、CCDカメラと光電センサとを有し、光電センサとCCDカメラの応答速度の違いにかかわらず、搬送材料の長さを高精度に測定する測定技術も提案されている(特許文献2参照)。
しかし、これ等の従来技術は、何れも、履板の全長や溝位置の計測(測長)に特有な上述した各種問題点を解消するものではない。
【特許文献1】特開11−14311号公報
【特許文献2】特開2001−317920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、照明装置や暗室を必要とせず、測定誤差を小さくして高精度に計測することが可能な履板の計測システムおよび計測方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の無限軌道帯用履板の計測システムは、無限軌道帯用履板(1)の主ラグ(13)の先端面(13f)および副ラグ(14)の先端面(14f)が搬送コンベア(5)に接触して搬送されるように(履板1が「寝た」状態で搬送されるように)構成されており、収束性の高い光(たとえばレーザー光R)を照射する投光側(センサ投光側21)とその光を受光する受光側(センサ受光側22)とが対となって搬送コンベア5上に(たとえば3個所)設けられており、前記履板(1)が通過する際に前記履板(1)の被計測領域(11)により遮られる位置を投光側(センサ投光側21)から照射される光の軸が経由するように設定されており、投光側(センサ投光側21)と受光側(センサ投光側22)とが斜めに向かい合って配置されていることを特徴としている(請求項1)。
【0029】
本発明の実施に際して、センサ(2)の投光側(21)から受光側(22)に収束性の高い光(たとえばレーザー光R)を照射するのは、タイミングセンサ2Tから照射された別のレーザー光が履板(1)の被計測領域(11)で遮られて、計測開始を指示する信号が発生した時であるのが好ましい。
【0030】
本発明において、前記搬送コンベア(5)に沿って案内部材(幅寄せガイド6)を設け、その搬送コンベア(5)は無限軌道帯用履板(1)を案内部材(幅寄せガイド6)側(矢印Y方向)へ付勢して、前記履板(1)の主ラグ(13)が案内部材(6)へ常に突き当てられるように構成されている(搬送・幅寄せ用斜行コンベアとして構成されている)のが好ましい(請求項2)。
【0031】
また上述した計測システム(請求項1、2の何れかの計測システム)を用いた本発明の履板の計測方法は、搬送コンベア(5)で搬送された前記履板(1)が所定個所に到達した時に(タイミングセンサ2Tから計測開始を指示する信号が発生した時に)センサ(2)の投光側(21)から受光側(22)に収束性の高い光(たとえばレーザー光R)を照射する工程(S1)と、収束性の高い光(たとえばレーザー光R)が受光された部分と前記履板の被計測領域(11)により収束性の高い光が遮られた部分(影の部分)とをセンサ(2)の受光側(22)で識別して、前記履板(1)の被計測領域(11)を計測し(S3)、以って、計測するべき寸法(たとえば、履板1の全長L1や、履板の溝位置L2)を決定する寸法決定工程(S4)とを有し、前記履板(1)を搬送する際に、搬送コンベア(5)に沿って設けられた案内部材(幅寄せガイド6)側(矢印Y方向)へ前記履板(1)を付勢して、前記履板(1)の主ラグ(13)を案内部材(6)へ突き当てることを特徴としている(請求項3)。
【0032】
本発明の計測方法において、計測するべき履板(1)を(既存のノギス等を使用した手作業により)別途計測し、その別途計測した結果と寸法決定工程(S4)の結果とから誤差(ΔA)を求め、求められた誤差(ΔA)を寸法決定工程(S4)における較正の際に使用することが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0033】
上述する構成を具備する本発明によれば、センサ(2)の投光側(21)から受光側(22)に向けて収束性の高い光(たとえばレーザー光R)を照射する際に、その光が受光された部分と、履板(1)の被計測領域(11)により収束性の高い光(たとえばレーザー光R)が遮られた部分(影の部分)とを、センサ(2)の受光側(22)で識別することにより、図4を参照して後述するように、被計測領域(11)が計測される。それによって、必要な寸法、たとえば、履板(1)の全長(L1)や、履板(1)の溝位置(L2)が決定される。
【0034】
上述したように、図示の実施形態では、履板(1)の被計測領域(11)が収束性の高い光(たとえば、レーザー光R)を遮るか否かにより計測を行うので、上述した従来技術のように、カメラを用いて映像から判断する必要はない。したがって、カメラを履板(1)から離すためのスペースが不要になる。
【0035】
また、収束性の高い光(たとえばレーザー光R)がセンサ受光側(22)で受光されたか否かを判定するに際しては、外乱光の影響を受け難いので、暗室を設ける必要もない。
【0036】
さらに、本発明によれば、工場内が暗くても、収束性の高い光(たとえばレーザー光R)の照射および受光には何ら問題はなく、写真撮影を行う場合のように明暗エッジ差を大きくして計測結果を安定させる必要もないので、照明装置が不要となる。
【0037】
本発明において、履板(1)は搬送コンベア(5:搬送・幅寄せ用斜行コンベア)により、案内部材(幅寄せガイド6)側(矢印Y方向)に付勢されており、案内部材(幅寄せガイド6)に突き当てられる(押し付けられる)。
そのため、本発明によれば、主ラグ(13)の側面(13s)と幅寄せガイド(6)とが接触している面の最下方の辺(稜線17)が計測の基準となる。
【0038】
係る計測の基準(主ラグ13の側面13sと幅寄せガイド6とが接触している面の最下方の辺17)は、設計の基準(主ラグの中心線C)から極めて近い位置にあり、両者の距離は極めて短い。そして、設計の基準(あるいは圧延の基準:直線C)との距離が極めて短いため、本発明における計測の基準(17)は、誤差あるいは公差は極めて微小である。
設計の基準(C)に対する誤差(公差)が極めて小さい個所(17)が計測の基準となっているので、本発明によれば、履板(1)の被計測領域(11)における計測の誤差も小さく、全長(L1)あるいは溝位置(L2)の寸法計測においても、計測値に包含される誤差が小さく、計測の精度が向上する。
【0039】
そして、計測値に包含される誤差が小さく、計測の精度が向上している本発明によれば、計測値の補正あるいは較正が容易となり、複雑な専用ソフトによる処理を必要とすることなく、履板(1)の計測を行うことができる。
【0040】
本発明において、計測するべき履板(1)を(既存のノギス等を使用した手作業により)別途計測し、その別途計測した結果と寸法決定工程の結果とから誤差(ΔA)を求め、求められた誤差(ΔA)を寸法決定工程(S4)における較正の際に使用すれば(請求項4)、本発明が稼動した際における最初の履板(1)に対する計測や、履板(1)の種類が変更になった場合に、対処することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る計測システムの全体的な構成を示している。
図1の計測システムでは、搬送コンベア(搬送・幅寄せ斜行用コンベア)5が地面に対して水平に配置されている。被搬送物(被測定物:履板)1の進行方向は、図1において矢印Zで示す方向であるが、搬送コンベア5を構成する各ローラー51は、搬送方向Zと直交する方向(図1の矢印Yと平行な方向)に対してわずかに傾斜するように配置されている。
【0042】
図1において、ローラー51の右端側には、矩形断面の案内部材(幅寄せガイド)6が、搬送方向Zと同一方向へ延在するように設けられている。ここで、幅寄せガイド6の下面が、ローラー51の回転を妨げないように構成されている。
【0043】
履板1は、図10、図11で説明した従来技術と同様に構成されている。図1では明示されていないが、履板1は、その主ラグ13および副ラグ14の先端面13f、14f(図2参照)が搬送コンベア5の上面に接触して搬送されるように構成されている。
図2で示すように、図示の実施形態では、履板1が寝た状態、すなわち主ラグ13が搬送コンベア(搬送・幅寄せ用斜行コンベア)5と接触した状態で搬送される。
【0044】
図1において、履板1は、搬送方向Zと直交する方向(図1の矢印Yと平行な方向)に対して傾斜したローラー51の回転運動によって、常に矢印Y方向へ付勢される。
より詳細に説明すると、搬送コンベア(搬送・幅寄せ用斜行コンベア)5を構成する複数のローラー51・・・は、図1において、履板1の進行方向に対してローラー51左端が前方にせり出すように若干の傾斜をつけて配置されている。そして、搬送コンベア5の図1において右端近傍には、幅寄せガイド6が設けられている。そして、幅寄せガイド6は、履板1の搬送方向Zと平行に延在するように配置されている。
【0045】
搬送コンベア5の各ローラー51は、図1の矢印Y方向で見た場合に、反時計回りに回転している。したがって、幅寄せガイド6が存在しない場合は、搬送コンベア5上の履板1は、図1における斜め右前方(図1の矢印C方向)に移動する。
ここで、搬送コンベア5の右端側には幅寄せガイド6が存在するので、詳細が図2で示されているように、履板1の主ラグ13の右測面13sが幅寄せガイド6に当接するので、図1において履板1は幅寄せガイド6よりも右側へは移動しない。
【0046】
図1において、測長手段であるセンサは、CCDイメージセンサを用いた汎用センサ2が3個(図1参照)用いられている。センサ2は収束性の高い光(たとえばレーザー光)Rを照射する投光側21と、その光Rを受光する受光側22とが1対となって構成されている。なお、レーザー光に代えて、収束性が良好なその他の種類の光を照射してもよい。
図2を参照して後述するように、図示の実施形態では、投光側21が上方、受光側22が下方に配置されている。
【0047】
各センサ2の構成は共通であるが、特に設置位置を特定するために必要の際には履板の先端を計測するセンサを「2A」、履板の溝位置を計測するセンサを「2B」、履板の後端を計測するセンサを「2C」として、説明する。
【0048】
上述した3個のセンサ2において、第1のセンサ2Aは、たとえば、履板1の先端位置にレーザー光線の照射幅の中心が位置するように配置されている。
第2のセンサ2Bは、たとえば、履板1の溝位置(溝12の傾斜が開始する点)にレーザー光線の照射幅の中心が位置するように配置されている。
第3のセンサ2Cは、たとえば、履板1の後端位置にレーザー光線の照射幅の中心が位置するように配置されている。
【0049】
第1のセンサ2A、第2のセンサ2B、第3のセンサ2Cはコンベアラインに対して位置が固定可能に構成されている。より詳細には第1のセンサ2Aは固定されている。これに対して、第2および第3のセンサ2B、2Cは、履板の種類が変更となった場合にも計測ができるようにするため、センサ移動装置23B、23Cによって取り付け位置を移動可能に構成されている。
【0050】
センサ移動装置23B、23Cは、図4を参照して後述するコントロールユニット3の移動制御部35によって、センサ(投光側および受光側)2B、2Cを計測に適切な位置へ固定するべく、センサ2B、2Cを移動する。
なお、移動装置23B、23C自体は、公知・市販の機器をそのまま適用可能である。
【0051】
搬送コンベア5のライン上の進行方向で、第1のセンサ2Aと同じ位置あるいは近傍の位置には、履板1の先端部分が通過したことを検出するタイミングセンサ2Tが設けられている。
このタイミングセンサ2Tは、レーザー光線をピンポイントで照射するように構成されており、照射されたレーザー光線を履板1が遮ったならば、計測開始を指示する信号(たとえばOFF信号)を発生する。そして、発生した計測開始を指示する信号は、センサ2A、2B、2Cによる計測開始のタイミング信号として用いられる。
【0052】
次に、図2〜図5を参照して、本実施形態の計測について説明する。
図2において、搬送コンベア(搬送・幅寄せ斜行用コンベア)5が地面に対して水平に配置されている。
図2において、符号Lpは「パスライン」を示している。パスラインは搬送コンベア5の搬送経路であって、地表面と平行な面である。
【0053】
図2において、履板1の主ラグ13および副ラグ14の先端面13f、14fは搬送コンベア5の上面に接触した状態で搬送されている。
図14、図15、図18で示すように、従来技術では履板1が立った状態で搬送される。特に図14、図15で詳細に示されているように、従来技術においては、主ラグ13が下方の鼓状の搬送ローラー50とは接触しない状態で搬送される。
【0054】
これに対して図示の実施形態では、図2で示すように、搬送コンベア(搬送・幅寄せ用斜行コンベア)5における搬送ローラーはローラー51のみであり、履板1の主ラグ13の端面13fが搬送コンベア(搬送・幅寄せ用斜行コンベア)5における搬送ローラー51と接触した状態で搬送される。
なお、本明細書において、履板1が「寝た状態」とは、主ラグ13の端面13fが搬送ローラー51と接触する状態を意味している。
【0055】
図1で説明したように、履板1は傾斜したローラー51の回転運動によって、常に図2の右方に付勢される。しかし、ローラー51搬送コンベア5の図2における右端部には幅寄せガイド6が存在するため、履板1は、幅寄せガイド6よりも右側には移動しないように構成されている。このように構成することにより、図5を参照して後述するように、計測作業における労力が軽減され、計測精度が向上する。
【0056】
図2で示すように、図示の実施形態では、センサ2ではレーザー光Rが照射される。そのレーザー光Rは、その光軸が履板1の先端近傍である被計測領域11を通過するように照射されると共に、図2で示すように、水平方向および鉛直方向に対して傾斜するように、斜め方向へ照射される。
上述したように、センサ2において、投光側21が上方に配置され、受光側22が下方に配置されており、投光側21と受光側22とは、搬送される履板1と衝突してしまうことがないように、所定距離だけ離れて配置されている。
【0057】
レーザー光Rの光軸について、図2を参照してさらに述べる。
センサ投光側21からセンサ受光側22に照射されるレーザー光Rの光軸は、パスラインLpに平行でも垂直でもなく、パスラインLpに対して斜めに傾斜した方向に延びている。別の表現をすれば、センサ受光側22はセンサ投光側21と同一平面上に配置されているわけではなく、センサ受光側22がセンサ投光側21の鉛直方向真下に位置しているわけでもなく、両者は斜め方向に向かい合っている。
【0058】
図2において、履板1は、上述したように寝た状態で搬送される。すなわち、履板1の主ラグ13の端面13fが搬送ローラー51と接触した状態で搬送される。
履板1が寝た状態で搬送されるため、履板1から剥離したスケールが、履板1下方に設けたセンサ受光側22に落下して、センサ受光側22がセンサ投光側21からのレーザー光を遮って、誤信号を発生させる恐れがある。
【0059】
しかし、図2で示されているように、センサ投光側21とセンサ受光側22とが斜めに向かい合っており、センサ受光側22は履板1の下方には位置しているが、履板1の直下に位置してはいない。
そのため、履板1の直下の領域であって、センサ受光側22が位置している領域(図2において、符号「λ」で示す領域)は極めて小さく、履板1から圧延スケール等が剥離してセンサ受光側22に落下することによる弊害は、ほとんど無視することができる。
【0060】
図13、図14で説明したラインスキャンカメラを用いたシステムや、図17、図18で説明した3台のCCDカメラを用いたシステムにおいて、図2で示すように履板を「寝た」状態で搬送した場合であって、照明が履板の下側に位置している場合には、履板1の全範囲にわたって圧延スケール等が照明に落下してしまうので、計測作業が困難になる。
【0061】
これに対して、図2で示すように、図示の実施形態では、センサ受光側22の直上における履板1の部分(符号λで示す領域の部分)のみが問題となり、図2において符号「λ」で示される当該部分(領域λ)は、履板1全体に比較して、極めて小さい。その結果、図示の実施形態では、履板1からのスケール落下による影響は無視できるほど小さいのである。
【0062】
図1でも説明したが、図2において、履板1の主ラグ13の右側面13sが幅寄せガイド6に当接するので、履板1は、主ラグ13が幅寄せガイド6に当接した個所よりも右方向への移動が阻止される。
すなわち、図示しない手段(たとえば、ロボット等)により搬送コンベア5上に載置された履板1は、図2の右方向へ移動して、主ラグ13の右測面13sが幅寄せガイド6に当接する。ここで、履板1は、搬送コンベア5によって右方向に付勢(幅寄せ)されながら搬送されるので、主ラグ13が幅寄せガイド6に当接した以降は、主ラグ13の右測面13sが幅寄せガイド6に当接している状態を維持しつつ、搬送ライン5を搬送される。
【0063】
図5を参照して後述するように、図示の実施形態では、主ラグ13の側面13sと幅寄せガイド6とが当接した個所(短辺側の個所)で、かつ、主ラグ端面13fを包含する平面と交差する位置17を計測の基準としている。
図2において、位置17は「点」として示されているが、実際には、位置17は、図2の紙面と垂直な方向へ延在する「辺」となる。
【0064】
計測の基準である位置17を正確に定義するために、履板1の主ラグ13側面13sが確実に突き当てられる必要がある。そのため、図示の実施形態においては、搬送・幅寄せ用斜行コンベア5により、履板を図1の矢印Y方向へ移動して、幅寄せガイド6に突き当てている。
【0065】
次に、図3および図4を参照して、図示の実施形態における計測の態ようを説明する。
図3において、センサ2の投光側21からレーザー光Rを計測対象である履板1の被計測領域11に照射している。そして、被計測領域11によってレーザー光Rが遮られることにより生じる影の部分と、レーザー光Rが遮られることなく照射される部分とを、センサ受光側22で受光して、好適に処理することにより、被計測領域11の矢印L方向の座標が特定される。
【0066】
詳細には、センサ2の投光側21からレーザー光Rを履板1に向かって、幅Aで照射し、履板1によってできる影の部分δの長さ寸法を求める。
各センサ2A、2B、2Cの位置は予め定められているので、影の部分δの長さ寸法が求まれば、図4を参照して後述するように、その時点における全長寸法と、溝位置寸法を計算することができる。
【0067】
図3を参照して、さらに説明すれば、図示しないタイミングセンサ(図1の2T参照)がONになった瞬間における履板1の前端(図3における左端)の位置の矢印L方向座標を決定するには、測定範囲Aに対して履板1がレーザー光Rを遮っている長さδを決定すればよい。
【0068】
具体的には、図3において、タイミングセンサ2TがONとなった瞬間におけるレーザー光Rが遮られていない領域「B」の長さ寸法の値(センサ受光側22でレーザー光Rを検知した長さ)を求める。
測定範囲A(センサ投光側21でレーザー光Rを照射した範囲:定数)は一定(たとえば30mm)なので、δ(履板1により、照射された光が遮られた長さ)は、 δ=A−Bとなる。
なお、タイミングセンサ2TがONのタイミングは、履板1の前端(図3における左端)が、測定範囲A内に位置していればよい。
【0069】
図4を参照して、図3で示すセンサ2の作動原理を利用して、(実際の)履板1の全長寸法L11および溝位置寸法L12を算出する手順を説明する。
【0070】
図4では、計測のための制御手段であるコントロールユニット3と、3個のセンサ2A、2B、2Cと、タイミングセンサ2Tと、被測定物である履板1と、それらの位置関係および信号の伝達経路が示されている。
コントロールユニット3は、計測処理部31と演算処理部32と結果表示機33と製品寸法データ記憶部34と移動制御部35とによって構成されている。
【0071】
計測処理部31は、各センサ2A、2B、2Cからの信号を受信して、計測データとして処理し、その計測データを演算処理部32に伝送する。演算処理部32は、各計測データを処理して、履板1全体の正確な寸法を演算して求め、結果表示部33に演算結果を伝送する。
製品寸法データ記憶部34には、製品ごとの全長データや溝位置データが記憶されており、必要に応じて移動制御部35にそのデータを送る。
移動制御部35は、測定物が変更される際には、変更される測定物のデータを製品寸法データ記憶部34から入手し、演算処理部32において、センサ2B、2Cの移動量を演算し、その演算した移動量情報によって、前記センサ移動装置23B、23Cを操作してセンサ2B、2Cを適正位置に移動させる。
【0072】
先端側のセンサ2Aの測定範囲(検出幅)はA1、溝位置のセンサ2Bの測定範囲はA2、後端側センサ2Cの測定範囲はA3である。
先端側のセンサ2Aにおける測定範囲A1の先端(図4では右端)から、溝位置のセンサ2Bにおける測定範囲A2の先端(右端)までの長さは、履板1の溝位置の設計値L2に等しくなるように設定されている。
また、先端側のセンサ2Aにおける測定範囲A1の先端(右端)から、後端のセンサ2Cにおける測定範囲A3の先端(右端)までの長さは、履板1の全長の設計値L1に等しくなるように設定されている。
【0073】
タイミングセンサ2Tが計測開始を指示する信号を発した瞬間に、先端側センサ2Aの測定範囲A1において、測定物(製品履板)1がレーザー光を遮っていない領域の距離は、受信側において、距離「b1」として認識される。
タイミングセンサ2Tが計測開始を指示する信号を発した瞬間に、溝位置センサ2Bの測定範囲A2において、測定物(製品履板)1の溝位置までの距離、あるいは、測定物(製品履板)1がレーザー光を遮っている領域は、受信側において、距離「b2」として認識される。
タイミングセンサ2Tが計測開始を指示する信号を発した瞬間に、後端側センサ2Cの測定範囲A3において、測定物(製品履板)1の後端までの距離、あるいは、測定物(製品履板)1がレーザー光を遮っている領域は、受信側において、距離「b3」として認識される。
【0074】
図4において、製品全長寸法L11および製品溝位置の実寸法L12は、以下の演算式によって求められる。
製品全長の実寸法L11は
L11=L1−b1+b3
製品溝位置の実寸法L12は
L12=L2−b1+b2
となる。
なお、上述したように、L1は履板1の全長の設計値L1であり、L2は履板1の溝位置の設計値である。
【0075】
図示の実施形態では、履板1がレーザー光を遮るか否かにより計測を行うので、上述した従来技術のように、カメラを用いて映像から判断する必要はない。したがって、カメラを履板から離すためのスペースは不要である。
また、レーザー光がセンサ受光側22で受光されたか否かを判定するに際しては、外乱光の影響を受け難いので、暗室を設ける必要もない。
さらに、図示の実施形態によれば、工場内が暗くてもレーザー光の照射および受光には何ら問題はなく、写真撮影を行う場合のように明暗エッジ差を大きくして計測結果を安定させる必要もないので、照明が不要となる。
【0076】
次に、図5を参照して、図示の実施形態により計測精度が向上し、誤差較正のための専用の処理システムが不要となる理由を説明する。
図5で示すように、図示の実施形態では、搬送・幅寄せ用斜行コンベア5により、履板1は常時矢印Y方向に付勢されており、幅寄せガイド6に突き当てられる(押し付けられる)。その結果、図示の実施形態では、履板1における計測の基準が、主ラグ13の側面13sと幅寄せガイド6とが接触している面の最下方の辺17となる。なお、図5では、辺17は「点」として示される。
【0077】
図5から明らかなように、図示の実施形態における計測の基準17は、設計の基準Cから極めて近い位置にあり、両者の距離は図5における距離Δで示されている。そして、計測の基準17と、設計の基準(あるいは圧延の基準:直線C)との距離が極めて短いため、計測の基準17における誤差あるいは公差は極めて微小である。
【0078】
すなわち、図示の実施形態では、設計の基準Cに対する誤差(公差)が極めて小さい個所17が計測の基準となっているので、履板1全体における計測の誤差が減少する。そのため、全長L1あるいは溝位置L2の寸法計測においても、計測値に包含される誤差が非常に小さくなり、計測の精度が向上する。
さらに、図示の実施形態では、設計基準(圧延の基準)に密接した個所17を計測基準にしており、計測結果に包含される誤差が非常に小さいので、計測結果の補正あるいは較正が容易である。そのため、複雑な専用ソフトによる処理の必要がなくなるのである。
【0079】
図5において、従来の計測の基準16(図15参照)から被計測対象11までの寸法の公差は、たとえば、2mmである。これに対して、図示の実施形態における設計の基準である主ラグ13の中心線Cと被計測対象11との寸法公差は、たとえば0.8mmである。すなわち、公差のみを考慮した場合でも、図示の実施形態における計測の基準から被計測対象11までの寸法の公差は、従来の公差の40%でしかない。
【0080】
次に、図6を参照して、図示の実施形態における計測の誤差の較正について説明する。
図6で示すように、CCDイメージセンサによる計測では、たとえば、溝位置L2を決定する際に、符号Lrで示す直線上を計測してしまう。そのため、本来の溝位置L2に対して、CCDイメージセンサによる計測では、図6において、符号L2fで示す寸法を溝位置と認識してしまう傾向が存在する。そして、寸法L2fと寸法L2との差ΔAは、計測の誤差となる。
【0081】
そのため、図示の実施形態では、新しい種類の履板の測長を行うに当たって、システムが稼動した直後の履板1(最初の履板)や、製造される履板の種類が変更された後に、最初に測長ラインに送られて来た履板1を、図示の実施形態によるシステムで計測した後に、たとえばノギス等の計測器具を用いて手作業で実測する。
言い換えれば、ノギス等で実測するのは、図6におけるΔA(=L2f−L2)を求め、補正(較正)用の定数とするためである。
【0082】
すなわち、溝位置の実寸法をL2、センサが「溝位置」として計測してしまう寸法をL2fとすれば、誤差ΔAは、
ΔA=L2f−L2 となる。
この誤差ΔAは、センサ2の出力から全長、溝位置を算出する際に、較正のために用いられる。
【0083】
次に、図示の実施形態による計測の手順を、図7のフローチャートにより説明する。
図7において、コントロールユニット3は、タイミングセンサ2Tからの信号によりレーザー光を照射し(ステップS1)、計測開始を指示する信号があったか否かを判断する(ステップS2)。
計測開始を指示する信号があれば(ステップS2がYES)、ステップS3に進み、計測開始を指示する信号が無ければ(ステップS2がNO)、ステップS1に戻り、ステップS2がNOのループを繰り返す。
【0084】
ステップS3では3つのセンサ2A〜2Cで計測を行い、図4を参照して説明したように、履板1の全長L11および溝位置L12を演算する(ステップS4)。
そして、演算された全長L11および溝位置L12が許容範囲内にあるか否かを判定することにより、コントロールユニット3は履板1が合格品であるか不合格かを判断する(ステップS5)。不合格であれば、履板1を払出して(ステップS7)、制御を終える。
【0085】
合格品であれば、計測(測長)を終了するか否かを判断する(ステップS6)。
測定の被対象物である履板1が残っており、計測(測長)を続行するならば(ステップS6がNO)、ステップS1まで戻り、ステップS1以降の工程を繰り返す。全ての履板1について計測が終了したなら(ステップS6がYES)、計測を終了する。
【0086】
次に、図示の実施形態を自動制御する場合における構成について、図8、図9を参照して説明する。
図8は、3個のセンサ2A〜2Cと、タイミングセンサ2Tと、制御装置(コントロールユニット)300との関係をブロック図として示しており、図9では、制御装置300の構成を主として示している。
図8において、符号Rはレーザー光照射部21tから照射されたレーザー光を示す。
【0087】
図8において、タイミングセンサ2Tはレーザー照射部21tとレーザー受光部22tとから構成されており、レーザー照射部21tはレーザー光照射信号ラインLtiで、レーザー受光部22tは計測開始を指示する信号(レーザー光が被測定物である履板1で遮られた旨の信号)ラインLtoで夫々コントロールユニット300に接続されている。
【0088】
測長用の先端側のセンサ2A、溝位置のセンサ2B、後端側のセンサ2Cは、何れもデータ要求信号ラインLiによってコントロールユニット300と接続され、コントロールユニット300からは各センサ2A、2B、2Cにデータ要求信号が送られる。
また、先端側のセンサ2A、溝位置のセンサ2B、後端側のセンサ2Cは、何れもデータラインLoによってコントロールユニット300と接続され、各センサ2A、2B、2からコントロールユニット300に測定物の全長L11および溝位置L12に関するデータが送られる。
【0089】
図9において、コントロールユニット300は、タイミングセンサ信号回路310と、データ要求信号回路320と、補正乗数決定回路330と、演算回路340と、合否判定回路350と、払出信号発生回路360とを備えている。
タイミングセンサ信号判定回路310は、タイミングセンサ2Tの受光部21tからインターフェースF1を介して計測開始を指示する信号を受信し、計測開始を指示する信号が発信された旨をデータ要求信号発信回路320に発する。
【0090】
データ要求信号回路320は、データ要求信号をインターフェースF2経由で各センサ2A、2B、2Cの投光側(図9では図示せず)に発信する。
各センサ2A、2B、2Cの受光側(図9では図示せず)は、測定(測長)した結果のデータをインターフェースF4経由で演算回路340に送る。
【0091】
図6を参照して前述したように、計測の被対象物である履板1の最初の1枚については、ノギス等の計測機器を用いた手作業による計測を行い、自動計測による数値との誤差Δを決定する必要がある。
そのため、実測ブロックDnで、履板1の全長と溝位置とを、たとえばノギスを用いて実測し、実測した結果である実測データを、インターフェースF3経由で補正定数決定回路330に入力しておく。そして、補正定数決定回路330では、図6を用いて前述した誤差(図6における誤差Δ)に相当する補正定数(ΔA)が決定され、補正定数(ΔA)が前記演算回路340に送られる。
【0092】
演算回路340では、各センサ2A、2B、2Cからの情報と、補正定数決定回路330で決定された補正定数ΔAとにより、履板1の正確な全長L11、および溝位置L12が演算され、演算結果(すなわちL11およびL12)が合否判定回路350に送られる。
【0093】
合否判定回路350には、インターフェースF5経由でメインフレーム380から製品寸法データおよび閾値が送られ、演算回路340における演算結果である全長L11および溝位置L12と比較される。そして、演算回路340で演算された全長L11および溝位置L12と、合否判定基準である閾値とが比較照合されて、製品として合格か否かが判定される。
なお、メインフレーム380には、製品寸法データや閾値が記憶されている。
【0094】
合否判定回路350で履板1が不合格と判定された場合は、払出信号発生回路360に不合格品があった旨が伝達され、払出信号発生回路360は、インターフェースF6を介して払出部370に払出信号を発信する。払出信号を受けた払出部370は、公知の機構によって、不合格と判定された履板1をラインから払い出す。
以上の制御および作動が自動制御によって行われる。
【0095】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
たとえば、図示の実施形態においては、履板の全長と溝位置とを計測しているが、センサの位置を適宜設定することにより、その他の長さの計測を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態を示す平面図。
【図2】実施形態における計測の態ようを説明する図。
【図3】実施形態における計測の原理を説明する図。
【図4】履板の全長寸法および溝位置寸法を算出する手順の説明図。
【図5】実施形態の計測精度が高い理由を説明するための図。
【図6】新たな種類の履板を計測する際の誤差を説明するための図。
【図7】実施形態に係る計測方法の手順を示すフローチャート。
【図8】実施形態を自動制御するためのブロック図。
【図9】図8のブロック図における制御装置の詳細を示すブロック図。
【図10】計測の対象物である履板を示す平面図。
【図11】履板の側面図
【図12】ラインスキャンカメラによる計測の説明図。
【図13】ラインスキャンカメラを用いた従来技術の説明図。
【図14】図13の従来技術の搬送方向から見た説明図。
【図15】従来技術の測定精度が低い理由を説明するための図。
【図16】従来技術の測定精度が低いことを示す説明図。
【図17】複数のCCDカメラを用いた従来技術を示す説明図。
【図18】図17の従来技術を搬送方向から見た説明図。
【符号の説明】
【0097】
1・・・履板
2・・・センサ
2T・・・タイミングセンサ
3・・・制御手段/コントロールユニット
5・・・搬送コンベア/搬送・幅寄せ用斜行コンベア
6・・・案内部材/幅寄せガイド
11・・・被計測領域
12・・・溝
13・・・主ラグ
13f・・・主ラグの先端面
13s・・・主ラグの側面
14・・・副ラグ
14f・・・副ラグの先端面
17・・・設計の基準
21・・・投光側
22・・・受光側
23B、23C・・・センサ移動装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無限軌道帯用履板の主ラグの先端面および副ラグの先端面が搬送コンベアに接触して搬送されるように構成されており、収束性の高い光を照射する投光側とその光を受光する受光側とが対となって搬送コンベア上に設けられており、前記履板が通過する際に前記履板の被計測領域により遮られる位置を投光側から照射される光の軸が経由するように設定されており、投光側と受光側とが斜めに向かい合って配置されていることを特徴とする無限軌道帯用履板の計測システム。
【請求項2】
前記搬送コンベアに沿って案内部材を設け、その搬送コンベアは無限軌道帯用履板を案内部材側へ付勢して、前記履板の主ラグが案内部材へ常に突き当てられるように構成されている請求項1の無限軌道帯用履板の計測システム。
【請求項3】
請求項1、2の何れかの計測システムを用いた無限軌道帯用履板の計測方法において、搬送コンベアで搬送された前記履板が所定個所に到達した時にセンサの投光側から受光側に収束性の高い光を照射する工程と、収束性の高い光が受光された部分と前記履板の被計測領域により収束性の高い光が遮られた部分とをセンサの受光側で識別して、前記履板の被計測領域を計測し、以って、計測するべき寸法を決定する寸法決定工程とを有し、前記履板を搬送する際に、搬送コンベアに沿って設けられた案内部材側へ前記履板を付勢して、前記履板の主ラグを案内部材へ突き当てることを特徴とする無限軌道帯用履板の計測方法。
【請求項4】
計測するべき無限軌道帯体用履板を別途計測し、その別途計測した結果と寸法決定工程の結果とから誤差を求め、求められた誤差を寸法決定工程における較正の際に使用する請求項3の無限軌道帯用履板の計測方法。
【請求項1】
無限軌道帯用履板の主ラグの先端面および副ラグの先端面が搬送コンベアに接触して搬送されるように構成されており、収束性の高い光を照射する投光側とその光を受光する受光側とが対となって搬送コンベア上に設けられており、前記履板が通過する際に前記履板の被計測領域により遮られる位置を投光側から照射される光の軸が経由するように設定されており、投光側と受光側とが斜めに向かい合って配置されていることを特徴とする無限軌道帯用履板の計測システム。
【請求項2】
前記搬送コンベアに沿って案内部材を設け、その搬送コンベアは無限軌道帯用履板を案内部材側へ付勢して、前記履板の主ラグが案内部材へ常に突き当てられるように構成されている請求項1の無限軌道帯用履板の計測システム。
【請求項3】
請求項1、2の何れかの計測システムを用いた無限軌道帯用履板の計測方法において、搬送コンベアで搬送された前記履板が所定個所に到達した時にセンサの投光側から受光側に収束性の高い光を照射する工程と、収束性の高い光が受光された部分と前記履板の被計測領域により収束性の高い光が遮られた部分とをセンサの受光側で識別して、前記履板の被計測領域を計測し、以って、計測するべき寸法を決定する寸法決定工程とを有し、前記履板を搬送する際に、搬送コンベアに沿って設けられた案内部材側へ前記履板を付勢して、前記履板の主ラグを案内部材へ突き当てることを特徴とする無限軌道帯用履板の計測方法。
【請求項4】
計測するべき無限軌道帯体用履板を別途計測し、その別途計測した結果と寸法決定工程の結果とから誤差を求め、求められた誤差を寸法決定工程における較正の際に使用する請求項3の無限軌道帯用履板の計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−20379(P2008−20379A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193640(P2006−193640)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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