説明

無電解金めっき浴、無電解金めっき方法及び電子部品

【解決手段】水溶性金化合物、錯化剤、アルデヒド化合物、及びR1−NH−C24−NH−R2又はR3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4(R1〜R4は−OH、−CH3、−CH2OH、−C24OH、−CH2N(CH32、−CH2NH(CH2OH)、−CH2NH(C24OH)、−C24NH(CH2OH)、−C24NH(C24OH)、−CH2N(CH2OH)2、−CH2N(C24OH)2、−C24N(CH2OH)2又は−C24N(C24OH)2、nは1〜4の整数)で表されるアミン化合物を含有する無電解金めっき浴。
【効果】めっき処理を施す下地金属が侵食されず、安定した析出速度で無電解金めっき処理することができ、析出速度が速く、置換・還元タイプであるので、1液でめっき皮膜の厚膜化が可能であり、皮膜の色が劣化することなく金特有のレモンイエロー色が保たれ、外観も良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無電解金めっき浴、これを用いた無電解金めっき方法、及びこの方法により無電解金めっき処理した電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
金は、金属の中で最もイオン化傾向が小さい、つまり最も安定で錆びにくい金属である。またそれだけでなく、電気伝導性にも優れていることから、電子工業分野に広く用いられている。置換金めっきは、プリント基板の回路やICパッケージの実装部分や端子部分等の最終表面処理として幅広く使用されている。具体的には、例えば以下の方法があり、各々以下のような特徴がある。
【0003】
(1)ENIG(Electroless Nickel Immersion Gold:無電解ニッケル/置換金)
・下地無電解ニッケルめっき皮膜上に、置換金めっき皮膜を形成する方法である。
・銅の拡散防止、ニッケルの酸化防止、回路や端子の耐食性向上が可能である。
・はんだ接合に使用可能である。
・ENIG処理後、厚付け金を施すことでワイヤボンディングにも使用可能である。
・ワイヤボンディングの場合、めっき処理後に加熱処理を行なうが、それにより金皮膜上にニッケルが拡散する。それを防ぐためにニッケル/置換金皮膜上に更に無電解金めっきを施し、金の膜厚を増やすことでニッケルの拡散に対応する。
【0004】
(2)DIG(Direct Immersion Gold:直接置換金)
・銅上に直接置換金めっき皮膜を形成する方法である。
・銅の酸化防止、銅の拡散防止、回路や端子の耐食性向上が可能である。
・はんだ接合、ワイヤボンディングにも使用可能である。
・ニッケル/金やニッケル/パラジウム/金に比べると、長期信頼性にはやや劣るが、熱負荷があまりかからない条件(熱処理温度が低い、リフロー回数が少ない等の条件)では十分使用可能である。
・シンプルなプロセスなので低コストである。
【0005】
(3)ENEPIG(Electroless Nickel Electroless Palladium Immersion Gold:無電解ニッケル/無電解パラジウム/置換金)
・下地無電解ニッケルめっき皮膜と置換金めっき皮膜の間に無電解パラジウムめっき皮膜を設ける方法である。
・銅の拡散防止、ニッケルの酸化防止と拡散防止、回路や端子の耐食性向上が可能である。
・近年推進されている鉛フリーはんだ接合に最適である(鉛フリーはんだは、錫鉛共晶はんだに比べ、はんだ接合時に熱負荷がかかり、ニッケル/金では接合特性が低下するため。)。
・ワイヤボンディングに適している。
・金膜厚を厚くしなくてもニッケル拡散が生じない。
・ニッケル/金で対応可能のものでも、より信頼性をあげたい場合に好適である。
【0006】
置換金めっきはニッケルなどの下地とのめっき浴中での酸化還元電位の差を利用して金を析出させるため、金がニッケルを侵食することで酸化(溶出)による腐食点が発生する。この酸化による腐食点は、その後のはんだリフロー時において、はんだ層の錫とニッケルを接続させる際の阻害因子となり、強度などの接合特性を低下させるという問題がある。
【0007】
この問題を解決するために、アルデヒドの亜硫酸塩付加物を含有する無電解金めっき浴が、特開2004−137589号公報(特許文献1)に、ヒドロキシアルキルスルホン酸を含有する金めっき浴が、国際公開第2004/111287号パンフレット(特許文献2)に各々開示されている。これらの技術は下地金属の腐食を抑えることを目的としたものである。
【0008】
しかしながら、これらの無電解金めっき浴は、還元剤にスルホン酸基又は亜硫酸成分を有するため、スルホン酸基又は亜硫酸成分を含有した場合に特有の以下のような不具合を生じる。
【0009】
(1)析出速度の低下
スルホン酸基又は亜硫酸成分は金析出においては安定剤であるため、金の析出速度を低下させる。
(2)析出速度が不安定
スルホン酸基又は亜硫酸成分の管理は非常に困難なことから、安定した析出速度を得ることが困難である。
(3)厚膜化した場合の外観不良
亜硫酸成分を含む無電解金めっき浴で厚膜化(0.1μm以上)を行なった場合、皮膜外観が赤っぽくなる。これは、粒子状の金が析出するためである。
【0010】
また、国際公開第2004/111287号パンフレット(特許文献2)に記載されているトリエチレンテトラミンのような、アミノ基(−NH2)が存在する1級アミン化合物を用いると、ニッケル表面の粒界侵食が進行することにより金の被覆力が低下し、皮膜外観が赤くなるという不具合が生じる。
【0011】
【特許文献1】特開2004−137589号公報
【特許文献2】国際公開第2004/111287号パンフレット
【特許文献3】特開2002−226975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、析出速度を安定、かつ十分に確保できると共に、厚膜化した場合に外観不良を引き起こさない無電解金めっき浴、これを用いた無電解金めっき方法、及びこの方法により無電解金めっき処理した電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記問題を解決するため鋭意検討を行なった結果、水溶性金化合物、錯化剤、還元剤としてアルデヒド化合物を含有し、かつ下記一般式(1)又は(2)
1−NH−C24−NH−R2 (1)
3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4 (2)
(式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4は−OH、−CH3、−CH2OH、−C24OH、−CH2N(CH32、−CH2NH(CH2OH)、−CH2NH(C24OH)、−C24NH(CH2OH)、−C24NH(C24OH)、−CH2N(CH2OH)2、−CH2N(C24OH)2、−C24N(CH2OH)2又は−C24N(C24OH)2を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数である。)
で表される特有の構造のアミン化合物を含有する無電解金めっき浴が、下地金属の腐食を抑えて無電解金めっき皮膜を形成することができ、この金めっき皮膜を厚膜化した場合においても、粒子状の金の析出を抑えて良好な外観を有する無電解金めっき皮膜を形成することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
即ち、本発明は、以下の無電解金めっき浴、無電解金めっき方法及び電子部品を提供する。
[1] 水溶性金化合物、錯化剤、アルデヒド化合物、及び下記一般式(1)又は(2)
1−NH−C24−NH−R2 (1)
3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4 (2)
(式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4は−OH、−CH3、−CH2OH、−C24OH、−CH2N(CH32、−CH2NH(CH2OH)、−CH2NH(C24OH)、−C24NH(CH2OH)、−C24NH(C24OH)、−CH2N(CH2OH)2、−CH2N(C24OH)2、−C24N(CH2OH)2又は−C24N(C24OH)2を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数である。)
で表されるアミン化合物を含有することを特徴とする無電解金めっき浴。
[2] 上記アルデヒド化合物及びアミン化合物の含有量のモル比が、アルデヒド化合物:アミン化合物=1:30〜3:1であることを特徴とする[1]記載の無電解金めっき浴。
[3] 上記水溶性金化合物がシアン化金塩であることを特徴とする[1]又は[2]記載の無電解金めっき浴。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の無電解金めっき浴で、基体の金属表面を無電解金めっき処理することを特徴とする無電解金めっき方法。
[5] 上記基体の金属表面が、銅又は銅合金の表面であることを特徴とする[4]記載の無電解金めっき方法。
[6] 上記基体の金属表面が、ニッケル又はニッケル合金の表面であることを特徴とする[4]記載の無電解金めっき方法。
[7] 上記ニッケル又はニッケル合金が、無電解ニッケル又は無電解ニッケル合金めっき皮膜であることを特徴とする[6]記載の無電解金めっき方法。
[8] 上記基体の金属表面が、パラジウム又はパラジウム合金の表面であることを特徴とする[4]記載の無電解金めっき方法。
[9] 上記パラジウム又はパラジウム合金が、無電解パラジウム又は無電解パラジウム合金めっき皮膜であることを特徴とする[8]記載の無電解金めっき方法。
[10] 上記基体の金属表面が、無電解ニッケル又は無電解ニッケル合金めっき皮膜を介して形成された無電解パラジウム又は無電解パラジウム合金めっき皮膜の表面であることを特徴とする[4]記載の無電解金めっき方法。
[11] [4]〜[10]のいずれかに記載の無電解金めっき方法で無電解金めっき処理したことを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、めっき処理を施す下地金属が侵食されず、安定した析出速度で無電解金めっき処理することができる。また、析出速度が速く、置換・還元タイプであるので、1液でめっき皮膜の厚膜化が可能である。更に、厚膜化しても、皮膜の色が劣化することなく金特有のレモンイエロー色が保たれ、外観も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について更に詳述する。
本発明の無電解金めっき浴は、水溶性金化合物、錯化剤、アルデヒド化合物、及び下記一般式(1)又は(2)
1−NH−C24−NH−R2 (1)
3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4 (2)
(式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4は−OH、−CH3、−CH2OH、−C24OH、−CH2N(CH32、−CH2NH(CH2OH)、−CH2NH(C24OH)、−C24NH(CH2OH)、−C24NH(C24OH)、−CH2N(CH2OH)2、−CH2N(C24OH)2、−C24N(CH2OH)2又は−C24N(C24OH)2を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数である。)
で表されるアミン化合物を含有する。
【0017】
本発明の無電解金めっき浴は、従来の置換金めっき浴とは異なり、同一のめっき浴中で、置換反応と還元反応との双方が進行する置換−還元型無電解金めっき浴である。金めっき浴に、還元剤としてのアルデヒド化合物と、上記一般式(1)又は(2)で表される特有の構造を有するアミン化合物とを含有させることで、本発明の無電解金めっき浴は、銅、ニッケルなどの下地金属上で、置換反応により金が析出すると共に、その析出した金を触媒として還元剤により金が析出する。
【0018】
本発明の無電解金めっき浴は、下地金属の侵食が最低限に抑えられるため、めっき浴中への下地金属イオンの溶出が少なく、長期に亘って使用しても安定した析出速度が保たれる。例えば、通常の置換めっきであれば、析出した金と溶出した下地金属(例えば銅やニッケル)の量は化学量論に従って等量となるが、本発明のめっき浴では、例えば、銅を下地金属としてダイレクト無電解金めっきプロセスを行なった場合、金の析出の大部分が置換めっきから還元めっきにシフトするため、析出した金に対して溶出する下地金属の析出は非常に少なく、この場合、従来の通常の置換金めっきの1/8程度に抑えられる。
【0019】
これによって、下地金属の侵食を最低限に抑え、かつ均一で緻密な金めっき皮膜を得ることができる。また、還元剤を含有していることで、析出した金上に、連続して金が析出するので、別途厚付け用の金めっきを行なうことなく、1つのめっき浴で厚膜化が可能である。また、金の析出速度を安定して維持することができ、厚膜化してもめっき皮膜が赤っぽくならず、金特有のレモンイエロー色を保持することができる。
【0020】
下地がパラジウムの場合、ニッケルや銅の場合と異なり、パラジウムと金は電位差が小さい。そのため、従来の置換型の金めっき浴を用いてパラジウム上に金めっきを行なうと、均一な膜厚が得られず、更に十分な膜厚を得ることもできない。これに対して、本発明の無電解金めっき浴は、パラジウム表面を活性化し、パラジウムを触媒として還元剤により金を析出させることができ、また、析出した金を触媒として更に金を析出させることができることから、パラジウム上においても金めっき皮膜の厚膜化が可能である。
【0021】
本発明の無電解金めっき浴中に含まれる水溶性金化合物としては、シアン化金、シアン化金カリウム、シアン化金ナトリウム、シアン化金アンモニウム等のシアン化金塩、金のチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、メタンスルホン酸塩、テトラアンミン錯体、塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物、酸化物等が挙げられるが、特にシアン化金塩であることが好ましい。
【0022】
水溶性金化合物の含有量は、金基準で0.0001〜1モル/Lであることが好ましく、0.001〜0.5モル/Lであることがより好ましい。上記範囲未満であると析出速度が低下するおそれがあり、上記範囲を超えると経済的に不利となる場合がある。
【0023】
本発明の無電解金めっき浴中に含まれる錯化剤としては、無電解めっき浴で用いられている公知の錯化剤を用いることができるが、例えば、リン酸、ホウ酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジヒドロキシルグリシン、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、ヒドロキシエチリデンニリン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンリン酸)、又はそのアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0024】
錯化剤濃度は0.001〜1モル/Lであることが好ましく、0.01〜0.5モル/Lであることがより好ましい。上記範囲未満であると溶出した金属によって析出速度が低下するおそれがあり、上記範囲を超えると経済的に不利となる場合がある。
【0025】
本発明の無電解金めっき浴中には、還元剤としてアルデヒド化合物が含まれる。このアルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、α−メチルバレルアルデヒド、β−メチルバレルアルデヒド、γ−メチルバレルアルデヒド等の脂肪族飽和アルデヒド、グリオキサール、スクシンジアルデヒド等の脂肪族ジアルデヒド、クロトンアルデヒド等の脂肪族不飽和アルデヒド、ベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド等の芳香族アルデヒド、グルコース、ガラクトース、マンノース、リボース、マルトース、ラクトース等のアルデヒド基(−CHO)を有する糖類などが挙げられるが、特に、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0026】
これらのアルデヒド化合物の濃度は0.0001〜0.5モル/Lであることが好ましく、0.001〜0.3モル/Lであることがより好ましい。上記範囲未満であると析出速度が低下するおそれがあり、上記範囲を超えると浴が不安定になるおそれがある。
【0027】
本発明の無電解金めっき浴は、下記一般式(1)又は(2)
1−NH−C24−NH−R2 (1)
3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4 (2)
(式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4は−OH、−CH3、−CH2OH、−C24OH、−CH2N(CH32、−CH2NH(CH2OH)、−CH2NH(C24OH)、−C24NH(CH2OH)、−C24NH(C24OH)、−CH2N(CH2OH)2、−CH2N(C24OH)2、−C24N(CH2OH)2又は−C24N(C24OH)2を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数である。)
で表されるアミン化合物を含有する。本発明のめっき浴において、アルデヒド化合物は、アルデヒド化合物のみでは還元剤として作用せず、このアミン化合物と共存することで還元作用が生じる。
【0028】
これらのアミン化合物濃度は0.001〜3モル/Lであることが好ましく、0.01〜1モル/Lであることがより好ましい。上記範囲未満であると析出速度が低下するおそれがあり、上記範囲を超えると浴が不安定になるおそれがある。
【0029】
なお、上記アルデヒド化合物及びアミン化合物の含有量のモル比は、アルデヒド化合物:アミン化合物=1:30〜3:1、特に1:10〜1:1であることが好ましい。アルデヒド化合物が上記範囲より多いと浴が不安定になるおそれがあり、アミン化合物が上記範囲より多いと経済的に不利になる場合がある。
【0030】
本発明の無電解金めっき浴には、公知の無電解めっきで用いられている安定剤を添加することができる。この安定剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプト酢酸、メルカプトコハク酸、チオ硫酸、チオグリコール、チオ尿素、チオリンゴ酸等の硫黄化合物、ベンゾトリアゾール、1,2,4−アミノトリアゾール等の窒素化合物が挙げられる。
【0031】
安定剤濃度は0.0000001〜0.01モル/Lであることが好ましく、0.000001〜0.005モル/Lであることがより好ましい。上記範囲未満であると浴が不安定になるおそれがあり、上記範囲を超えると析出速度が低下するおそれがある。
【0032】
なお、本発明の無電解金めっき浴は、亜硫酸ナトリウムのような亜硫酸塩、ヒドロキシメタンスルホン酸のような亜硫酸誘導体、及びスルホン酸化合物の含有量がより少ないことが好ましく、特に10mg/L以下であることが好ましい。10mg/Lを超えて含有すると、金の析出速度を安定して維持することができなくなるおそれがあり、また、厚膜化した場合めっき皮膜の外観が赤っぽくなる不具合が生じるおそれがある。もちろん、無電解金めっき浴が、上記亜硫酸塩、亜硫酸誘導体及びスルホン酸化合物を含有していないことが最も好ましいことはいうまでもない。
【0033】
本発明の無電解金めっき浴のpHは、5〜10であることが好ましい。上記範囲未満であると析出速度が低下するおそれがあり、上記範囲を超えると浴が不安定になるおそれがある。pH調整剤としては、公知のめっき浴で使用されている水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、硫酸、リン酸、ホウ酸等を使用することができる。
【0034】
また、本発明の無電解金めっき浴の使用温度は、40〜90℃であることが好ましい。上記範囲未満であると析出速度が低下するおそれがあり、上記範囲を超えると浴が不安定になるおそれがある。
【0035】
本発明の無電解金めっき浴を用い、金属表面を無電解金めっき浴に接触させることにより、基体の金属表面を無電解金めっき処理することができる。この場合、例えば5〜60分の接触時間で、厚さ0.01〜2μmの金めっき皮膜を形成することが可能であり、例えば、0.002〜0.03μm/分の析出速度で金めっき皮膜を成膜することができる。
【0036】
基体の金属表面(被めっき面)の材質としては、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、パラジウム、パラジウム合金などを対象とすることができる。上記ニッケル合金としては、ニッケルーリン合金、ニッケル−ホウ素合金など、パラジウム合金としては、パラジウム−リン合金などを挙げることができる。このような金属表面は、基体自体が金属(合金)であるものの表面の他、基体表面に金属皮膜が形成された該皮膜の表面であってもよい。金属皮膜は、電気めっきにより形成されたもの、無電解めっきにより形成されたもののいずれであってもよいが、ニッケル、ニッケル合金、パラジウム、パラジウム合金の場合、無電解めっきによって形成されたものが一般的である。更に、基体にニッケル又はニッケル合金皮膜を介して形成された、パラジウム又はパラジウム合金皮膜表面を無電解金めっき処理する場合にも好適である。
【0037】
本発明の無電解金めっき浴は、例えば、ENIG(Electroless Nickel Immersion Gold)、即ち、(銅上に形成された)下地無電解ニッケルめっき皮膜上に金めっき皮膜を形成する方法、DIG(Direct Immersion Gold)、即ち、銅上に直接金めっき皮膜を形成する方法、ENEPIG(Electroless Nickel Electroless Palladium Immersion Gold)、即ち、(銅上に形成された)下地無電解ニッケルめっき皮膜上に無電解パラジウムめっき皮膜を介して金めっき皮膜を形成する方法のいずれの金めっき皮膜の形成にも用いることが可能であり、いずれの場合においても本発明の無電解金めっき浴を用いることにより、ニッケル表面上、銅表面上、パラジウム表面上で上記範囲において所定の厚さの金めっき皮膜を形成することができる。
【0038】
本発明の無電解金めっき浴及びこれを用いた無電解金めっき方法は、例えばプリント配線基板やICパッケージ等の電子部品の配線回路実装部分や端子部分を金めっき処理する場合に好適である。
【0039】
なお、本発明のめっき浴は金属表面(被めっき面)が銅の場合でも良好な皮膜が得られ、下地が銅の場合、銅の酸化、拡散が抑制され良好なはんだ接合特性が得られる。また、厚膜化することで、ワイヤボンディングにも使用可能である。また、本発明のめっき浴は、パラジウム上にも良好な金皮膜を析出させることができるため、鉛フリーはんだ接合やワイヤボンディングへの利用に最適である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1〜6、比較例1〜8]
表1〜3に示される組成の金めっき浴を用い、(1)Direct無電解金めっきプロセス、(2)ニッケル/金めっきプロセス、(3)ニッケル/パラジウム/金プロセスとして、各々銅張りプリント基板に対して表4〜6に示される処理を施し、次いで処理された銅張りプリント基板を金めっき浴に浸漬して、金めっきを施した。得られた金めっき皮膜の膜厚、顕微鏡観察により確認したピットの有無、及び外観を表1〜3に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
アミン化合物−1:R1−NH−C24−NH−R2[式中、R1=−C24OH、R2=−C24OH]
アミン化合物−2:R3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4[式中、n=1、R3=−CH2NH(CH2OH)、R4=−CH2NH(CH2OH)]
アミン化合物−3:R3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4[式中、n=2、R3=−CH2N(CH32、R4=−CH2N(CH32
【0046】
(1)Direct無電解金めっきプロセス
【表4】

各工程間 水洗
【0047】
(2)ニッケル/金めっきプロセス
【表5】

各工程間 水洗
【0048】
(3)ニッケル/パラジウム/金プロセス
【表6】

各工程間 水洗
【0049】
比較例1〜3,7では、置換反応のみのため、Direct無電解金プロセス、ニッケル/金プロセスでは膜厚不足となり、ニッケル/パラジウム/金プロセスではほとんど析出しなかった。
比較例4,5では、析出速度が低下し、外観が赤っぽくなった。
比較例8では、外観が赤っぽくなった。
【0050】
以上の結果から、本発明の無電解金めっき浴が以下の点で優れていることがわかる。
(1)ピットのない金皮膜が形成できる。
(2)亜硫酸成分及びスルホン酸成分を含まないことで析出速度が極めて速くなる。
(3)厚膜化しても金特有のレモンイエローの良好な外観を示す。
(4)1液で金めっき皮膜の厚膜化が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性金化合物、錯化剤、アルデヒド化合物、及び下記一般式(1)又は(2)
1−NH−C24−NH−R2 (1)
3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4 (2)
(式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4は−OH、−CH3、−CH2OH、−C24OH、−CH2N(CH32、−CH2NH(CH2OH)、−CH2NH(C24OH)、−C24NH(CH2OH)、−C24NH(C24OH)、−CH2N(CH2OH)2、−CH2N(C24OH)2、−C24N(CH2OH)2又は−C24N(C24OH)2を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数である。)
で表されるアミン化合物を含有することを特徴とする無電解金めっき浴。
【請求項2】
上記アルデヒド化合物及びアミン化合物の含有量のモル比が、アルデヒド化合物:アミン化合物=1:30〜3:1であることを特徴とする請求項1記載の無電解金めっき浴。
【請求項3】
上記水溶性金化合物がシアン化金塩であることを特徴とする請求項1又は2記載の無電解金めっき浴。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の無電解金めっき浴で、基体の金属表面を無電解金めっき処理することを特徴とする無電解金めっき方法。
【請求項5】
上記基体の金属表面が、銅又は銅合金の表面であることを特徴とする請求項4記載の無電解金めっき方法。
【請求項6】
上記基体の金属表面が、ニッケル又はニッケル合金の表面であることを特徴とする請求項4記載の無電解金めっき方法。
【請求項7】
上記ニッケル又はニッケル合金が、無電解ニッケル又は無電解ニッケル合金めっき皮膜であることを特徴とする請求項6記載の無電解金めっき方法。
【請求項8】
上記基体の金属表面が、パラジウム又はパラジウム合金の表面であることを特徴とする請求項4記載の無電解金めっき方法。
【請求項9】
上記パラジウム又はパラジウム合金が、無電解パラジウム又は無電解パラジウム合金めっき皮膜であることを特徴とする請求項8記載の無電解金めっき方法。
【請求項10】
上記基体の金属表面が、無電解ニッケル又は無電解ニッケル合金めっき皮膜を介して形成された無電解パラジウム又は無電解パラジウム合金めっき皮膜の表面であることを特徴とする請求項4記載の無電解金めっき方法。
【請求項11】
請求項4〜10のいずれか1項記載の無電解金めっき方法で無電解金めっき処理したことを特徴とする電子部品。

【公開番号】特開2008−144188(P2008−144188A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328895(P2006−328895)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】