説明

焦点をスイッチングするX線管の高速変調方法及び装置

照射量変調照射システムは電子ビームを方向付けるためのグリッド電極(110、112)を有する静電グリッドを有するX線管(20)を有する。グリッドバイアスは、電子ビーム(94)の第1時間変化強度変調を生成するグリッド電極(110、112)に時間変化電気バイアスを加えるために備えられている。フィラメントの電流(80)は、電子ビーム(94)の第2時間変化強度変調を生成するように変調される。制御器(52)は、結合された時間変化強度変調を生成するように第1及び第2時間変化強度変調の強調的な結合を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断技術に関する。本発明は、特に、コンピュータ断層撮影のためのグリッド電圧及びX線管フィラメント電流の周波数応答をカスケードすることにより照射量変調に関連する特定のアプリケーションを見出し、そのアプリケーションに関連して説明する。しかしながら、以下の内容は、より一般的には、照射量変調された他の種類のコンピュータ断層撮影及び他のアプリケーションにおいて用いられるX線管に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なコンピュータ断層撮影用装置において、X線管は、撮影用被検者が位置している検査領域内部を規定する回転ガントリに備えられている。X線管は、回転ガントリにおける被検者に関して回転され、検査領域を透過する楔形状、扇形状、円錐状又は他の形状のX線ビームを投射する。X線管による検査領域を横断する回転ガントリに備えられた二次元X線検出器は、検査領域を透過した後に、X線ビームを受ける。適切なエレクトロニクスは、検出されたX線強度に基づいてX線吸収データを評価し、画像再構成処理器はその吸収データに基づいて画像表示を再構成する。
【0003】
上記のような構成におけるX線管は、典型的には、電子を生成するフィラメントを有する。陰極カップは、特に、そのフィラメントを囲み、電子を電子ビームにフォーカシングするように負にバイアスされている。陰極カップと回転陽極との間のキロボルト領域のバイアスは陽極に電子ビームを加速し、その結果、X線が放出される。
【0004】
撮影データが回転方向においてアンダーサンプリングされる点で、問題点が生じる。サンプリングは検出器間隔に関連する空間周波数において起こる一方、サンプリング理論は、エイリアジング及び他のサンプリング関連アーチファクトを回避するように、倍化された空間周波数を必要とする。アンダーサンプリングの影響を弱めるために、サンプルを空間的にインターリーブするために測定間の回転方向において2つの離散位置間で焦点が変動される又は振動される、X線管が採用されている。代替として、180°反対の投射ビューからのX線が空間的にインターリーブされる、1/4波長のX線のオフセットを用いることができる。
【0005】
ビームの振動をもたらすために、X線管は、フィラメントの反対側に配列されたグリッド電極を有する。グリッド電極は、振動についての2つの焦点に対応する2つの経路間で電子ビームをシフトさせる、電子ビームに対して直交するスイッチングされる静電気力を発生するように交互に極性を変えてバイアスされる。代替として、電子ビームをスイッチング可能であるように操作するように、直交する電磁気力を用いることができる。
【0006】
コンピュータ断層撮影の他の関心は、被検者のX線被爆を制限することである。医療用の撮影のアプリケーションにおいては、患者に供給されるX線照射量は規制された安全性パラメータである。空港のセキュリティスキャンにおいては、異なる種類の手荷物の異なるX線吸収特性を捉えるために有利に適合される。種々の吸収量変調コンピュータ断層撮影技術が開発されてきた。しかしながら、それらの過去の方法には特定の不利点がある。
【0007】
Popescu等により出願された米国特許第5,867,555号明細書に記載されている一方法においては、角度位置の関数としての照射量変調が、X線管フィラメントの温度を同期して変調することにより得られる。その参考文献に特記されているように、フィラメント電流制御により得られる変調指数は、特に高い回転速度においては、フィラメントの冷却速度(熱式質量)により制限される。Popescu技術は、0.75乃至2.0秒毎に1回回転するスキャナにおいて180°毎に1回照射量が変化し、フィラメントの能力の限界が対応できるようにしている。熱式質量の限界は又、フィラメントの実質的冷却をもたらすより大きい動的変調領域のために行き過ぎてしまう。冷却速度は、温度が低下するにつれて減少する。
【0008】
現代のスキャナは1秒当たり2回回転し、製品において更に速い速度が現れ始めている。更に、回転当たりのより大きい照射量の変化は有利であるが、Popescu技術の物理的限界を超える変調速度に設定する必要がある。
【0009】
他の既知の方法においては、X線管に組み込まれたWehneltシリンダは、ビームのオン、オフを切り換えるためにビームをつまみとる。ビームの切り換えは、X線ビーム
のデューティサイクルを制御することにより照射量変調するようにCINEフレームシーケンスと同期される。しかしながら、この照射量変調方法は、収集された角度データの量を減少させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の制限及び他の制限を克服する、改善された装置及び方法について検討を加えたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一特徴に従って、X線管のための照射量変調照射システムについて開示している。X線管は、ビームにフォーカシングされる電子を生成するフィラメントを有する陰極と、電子ビームに応じてX線を生成する陽極とを有する。少なくとも1つの静電制御電極は、電子ビームの強度を静電気的に減少させるように備えられている。バイアス手段は、電子ビームの強度を変えるために静電制御電極に経時変化する電気バイアスを加えるために備えられている。
【0012】
他の特徴に従って、X線管の出力を照射量変調するための方法を提供する。X線管は、ビームにフォーカシングされる電子を生成するフィラメントを有する陰極と、電子ビームに応じてX線を生成する陽極と、電子ビームの強度を静電気的に調節する静電制御電極とを有する。経時変化する電気バイアスが、電子ビームの第1の経時変化する強度変調を生成するように、静電制御電極に加えられる。
【0013】
一有利点は、高変調周波数において照射量変調の大きいダイナミックレンジを提供することである。これは、120rpm又はそれ以上の速度で回転する、現在の及び次世代の
コンピュータ断層撮影用スキャナを使用する照射量変調を容易にする。
【0014】
他の有利点は、X線管のデザインを変更することなく、そのような照射量変調を提供することである。
【0015】
他の有利点は、付加的な高速度エレクトロニクスを用いることなく、そのような照射量変調を提供することである。
【0016】
多くの付加的な有利点及び優位性が、以下の好適な実施形態の詳細説明を読むことにより、当業者には明快になるであろう。
【0017】
本発明は、種々の構成要素及び構成要素の構成に、種々のプロセス操作及びプロセス操作の構成において具体化することが可能である。添付図面については、好適な実施形態を例示することのみを目的とするものであり、本発明を制限することを意図するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1を参照するに、コンピュータ断層撮影用イメージングスキャナ10は、医療患者のような被検者、セキュリティスキャンのための手荷物アイテム又は回転ガントリ16により基底される検査領域14内又はその中に向かっている対象物を移動させるための対象物支持部12を有する。回転ガントリ上に配置されたX線管20は、扇形状、楔形状、円錐状又は他の形状のX線ビームを検査領域14に送る。X線管20から検査領域14を横断する回転ガントリ16に配置された二次元X線検出器22は、X線ビームが検査領域14を通過した後に、空間的に変化するX線ビームの強度を測定する。典型的には、X線検出器22は回転ガントリ16に取り付けられている。他の適切な構成においては、検出器は、回転ガントリを取り囲んでいる定位ガントリ上であって、周囲に配置される。ガントリの回転は、ガントリ回転制御器24により制御される。
【0019】
螺旋状コンピュータ断層撮影用イメージングにおいては、ガントリ16は、検査領域14についてX線管20の螺旋状軌道をもたらすように対象物支持部12の線形の動きと同期して回転する。軸上コンピュータ断層撮影用イメージングにおいては、回転ガントリ16は回転する一方、対象物支持部12は、検査領域14についてX線管20の円形軌道をもたらすように定位を維持する。ボリュメトリック軸上断層撮影用イメージングにおいては、対象物支持部12は、軸方向に沿って複数の画像スライスを取得するように各々のステップに対して実行される軸上スキャンにより、線形的に繰り返してステッピングされる。
【0020】
扇形又は円錐形の頂点の又は扇形又は円錐形における軌道の指数を有する、取得されたイメージング投射データが、ガントリ16から送られ、ディジタルデータメモリ30に記憶される。再構成処理器32は、対象物の又は選択された対象物の一部の三次元画像表示を生成するために、フィルタリングされた逆投射又は他の再構成方法を用いて、取得された投射データを再構成し、それらは画像メモリ34に記憶される。画像表示は、グラフィックユーザインタフェース38又は他の表示装置、プリンティング装置、又はオペレータにより見えるようにされる装置等に表示される、人間が見ることができる画像を生成するように映像処理器36によりレンダリング又は操作される。好適には、グラフィックユーザインタフェース38が、放射線技師がコンピュータ断層撮影用イメージングセッションを実行且つ制御することが可能であるようにコンピュータ断層撮影用スキャナ10と放射線技師とのインタフェースをとるようにプログラムされている。
【0021】
イメージング中、対象物が受けたX線放射量を変調することは有利である。非円筒形対象物に対して、長軸に沿って大きいX線ビーム強度と、短軸に沿って小さいX線ビーム強度とを有することは有利である。例えば、迅速な空港の手荷物のセキュリティスキャニングにおいて、X線ビームの強度は、スキャンされる手荷物のX線吸収特性に依存して、好適に調節される。医療用イメージングアプリケーションにおいては、その強度は、異なるX線吸収密度を有するものの領域をイメージングスキャンが通過するとき、各々の軸上スライス又は各々の螺旋状回転に対する一定の放射線照射量を維持するように好適に調節される。本発明のコンピュータ断層撮影用スキャナは、約120乃至150rpmの回転速度を与え、180乃至240rpm及びそれ以上の高速の回転速度については予測可能な将来において検討することとする。
【0022】
120rpmの回転速度は、データの180°の角度範囲に対して0.25秒の取得時間に相当する一方、180rpmの回転速度は、データの180°の角度範囲に対して0.167秒の取得時間に相当する。それ故、照射量変調は、ガントリの回転を追跡する照射量変調を与えるために、120rpmのガントリ回転速度に対して約4Hz又はそれ以上の周波数応答を有する必要があり、180rpmのガントリ回転速度に対して約6Hz又はそれ以上の周波数応答を有する必要がある。医療用イメージングアプリケーションに対しては、少なくとも約8:1乃至10:1の放射線変調のダイナミックレンジが望ましい。即ち、回転速度全てにおける変調中の最小のX線ビーム強度に対する最大のX線ビーム強度の比は、好適には、8:1乃至10:1である必要がある。
【0023】
それらの仕様に一致する照射量変調をもたらすために、照射量供給速度処理器50は、X線検出器22の領域に対してX線吸収データを積分し、照射量変調制御器52に、連続的に更新される照射量供給速度を入力する。ガントリ回転制御器24は又、X線源20の角度位置との照射量変調の光学的同期に対して照射量変調制御器にガントリの角度位置を入力する。
【0024】
図1を継続して参照するに、照射量変調制御器52は、2つの同期された、協働する小車両変調制御信号であって、X線管フィラメント電源62の方に方向付けられたフィラメント変調信号60と、グリッド電源66の方に方向付けられたグリッド変調信号64とを
を出力する。グリッド電源66は、放射方向におけるエイリアジング及びアンダーサンプリングの影響を弱めるためにX線管20の焦点をウォッブル又は変化させるビームウォッブル入力信号70を付加的に受ける。X線管20は、フィラメント電源62、グリッド電源66、及び陰極と陽極との間の電位を設定するX線管電源72の出力により駆動且つ制御される。
【0025】
図1を継続して参照するに、そして、X線管20の構成要素を関連電子構成要素と共に模式的に示す図2を更に参照するに、好適には、従来のコイル状ワイヤフィラメントに対して8乃至10milのワイヤ直径を有する細長いフィラメント80が、陰極84の陰極カップ82内に備えられている。フィラメント80は、フィラメント電源62により供給されるフィラメント電流入力に応じて、熱電子放出、電界放出又は他の機構により電子を生成する。好適には、絶縁トランス86及び絶縁性スタンドオフ(図示せず)は、フィラメント80をX線管20の他の要素から電気的に分離している。典型的には、フィラメント電流は、数百mA乃至数Aの範囲内の振幅と約5kHz乃至30kHzの周波数とを有するパルス幅変調電流である。
【0026】
電気的共通部90を参照して、典型的には、陰極84は、バイポーラバイアス管に対して、約40kVから−70kVのバイアスに負にバイアスされ、陽極は、約40kVから+70kVのバイアスにバイアスされる。陰極カップ82は、負の電荷がフィラメント80により生成される電子を平行にする静電場を規定するように形作られている。電子ビームの電子は、典型的には約2cmである陰極と陽極とのギャップにおいて加速される。
【0027】
陽極92に衝突する加速された電子ビーム94に応じて、陽極は、フィラメント80、陰極84及び陽極92を有する真空体積(図示せず)の範囲外を通るX線ビーム96を放射する。陽極92は、軸100に関して回転し、陽極92が回転するにつれて、電子ビーム94と相互作用する、角度のついた周辺のX線生成表面102を有する。
【0028】
図1及び2を継続して参照するに、X線管20の陰極カップは、電子ビーム94がグリッド電極110、112間を通るように、フィラメント80の反対側に備えられた第1及び第2グリッド電極110、112を更に有する。グリッド電極110、112は、電子ビーム94を静電気的に修正するために用いられる。
【0029】
具体的には、両方の電極110、112を更に負にバイアスすることにより、陽極のフォーカスに影響を及ぼす静電気的制限又はアパーチャリングにより電子ビーム94の幅を狭くする。両方の電極110、112に加えられる比較的大きい負の合計電圧は、電子ビーム94の一部の静電気的ピンチオフ(pinchoff)により陽極92において電子ビーム94の強度を更に減少させる、即ち、管電流を減少させる。両方の電極110、112に加えられる十分大きい負バイアス電圧に対して、電子ビーム94は、完全にピンチオフされることとなる。
【0030】
更に、電圧合計において及びグリッド電極110、112間に課せられる、加えられる電圧差は、ビーム偏向に影響する。
【0031】
他の実施形態においては、各々のグリッドに対する電圧は、制限及び偏向に対する個々の電圧の合計として生成されることが可能であり、それ故、焦点は、正確にスポット間変位及び幅を維持しながら、回転する陽極表面に対して本質的にタンジェンシャルに一緒に移動されることが可能である。
【0032】
例えば、冗長性又は異なる電子ビーム特性等を実現するための1つ又はそれ以上の付加フィラメント等の付加要素が又、陰極アセンブリに付加的に含まれる。
【0033】
図1及び2を継続して参照するに、フィラメント電源62は、照射量変調制御器52により生成されるフィラメント変調信号60により制御される。フィラメント電流の変調は、フィラメント温度の変調及び対応する電子生成速度の変調をもたらす。これは、又、照射量変調に対する電子ビーム94の強度を変調する。フィラメント電流の変化は、電子の軌道を著しく変更することはなく、従って、一般に、電子ビームの焦点を変化させず、又は、焦点スポットのサイズを変化させる。しかしながら、フィラメント80は、この変調制御の周波数応答を制限する熱式質量を有する。200μm(8mil)の直径を有する好適なフィラメントに対して、4Hzにおけるフィラメント電流の変調は、対応する約2:1乃至3:1のダイナミックレンジを有する4Hzの照射量変調の周波数応答を達成する。大きい直径のフィラメント程、大きい熱式質量を有し、典型的には、より遅い周波数応答を示し、ダイナミックレンジを減少させる。
【0034】
フィラメント制御のみを用いて達成される場合より良好な周波数応答を有する照射量変調を得るために、照射量変調制御器52は、グリッド電源66の方に方向付けられたグリッド変調信号64を付加的に出力する。グリッド変調信号64は、結合されたグリッド電極バイアス電位を生成するようにX線管20の焦点をウォッブル又は変更するビームウォッブル入力信号70と結合される。
【0035】
具体的には、第1加算器120は、第1グリッド電極110に加えられる静電電位を制御する第1制御信号を生成するように、ビームウォッブル入力信号70とグリッド変調信号64とを付加的に結合させる。第2加算器122は、第2グリッド電極112に加えられる静電電位を制御する第2制御信号を生成するように、ビームウォッブル入力信号70とグリッド変調信号64とを付加的に結合させる。グリッド電極は、それ故、ビームウォッブルを制御するビームウォッブル入力信号70により制御される電位差と、グリッド変調信号64により制御される重畳された合計電位とを受ける。
【0036】
合計グリッド電位を変調することにより実行されるアナログ照射量変調の周波数応答は、グリッド電源66の周波数応答により制限される。静電ビームウォッブルに対して用いられる既存のグリッド電源は、グリッド電極110、112に加えられる電位差を用いて、2つの厳密に制御された位置の間で焦点を交互に位置付ける。ビームは、120rpmのガントリ回転に対する約2乃至4kHzと回転当たり2000投射ビューにおいて、方形状の電圧パルスビームウォッブル入力信号70に応じてそれらの焦点間でステッピングされる。
【0037】
方形波ビームウォッブル入力信号70の高調波成分は、グリッド電源66に対する高帯域幅の要求に繋がる。そのグリッド電源は、通常はスイッチング電源である。そのような電源は、今日、典型的には、制限されたアナログ周波数応答(非常に高い帯域幅を有するが又、コストが非常に掛かる電力増幅器とは反対の)を示し、それ故、グリッド電位のみの変調は、約8:1乃至10:1の照射量変調ダイナミックレンジを有する、約4Hz乃至6Hz又はそれ以上の好ましい周波数応答における照射量変調を達成しない。
【0038】
好ましい照射量変調周波数応答及びダイナミックレンジを達成するために、照射量変調制御器52は、フィラメント電流照射量変調及びグリッド電極照射量変調をカスケードするように、フィラメント変調信号60及びグリッド変調信号64を協調的に制御する。4乃至6Hzの変調周波数に対して、カスケードされたグリッド照射量変調とフィラメント照射量変調との積は、好ましい8:1乃至10:1の変調ダイナミックレンジを与える。
【0039】
結合されたグリッド及びフィラメント照射量変調の更なる有利点は、変調ダイナミックレンジの全体に亘って電子ビーム94の焦点を修正することである。X線管20は、比較的大きい出力パワーにおいて小さいスポットサイズで操作されるようにデザインされる。結合されたグリッド及びフィラメント照射量変調は、強調的に、フィラメント電流を減少させ且つグリッド電極110、112における合計電位を増加させることにより、出力パワーを減少させる。
【0040】
より高い合計グリッド電位によるビームの絞り込みは、照射量変調中の陽極92における改善された電子ビーム、及びそれ故に変調ダイナミックレンジの全体に亘って改善されたX線ビーム96の及び空間解像度をもたらす。
【0041】
図2においては、第1加算器120及び第2加算器122はグリッド電源66に統合されている。しかしながら、グリッド電源の外部にそれらの要素を備え、グリッド電源への入力として加算器出力を供給することを又、検討することができる。この代替としての構成は、カスケードされたフィラメント電流変調及びグリッド合計電位変調を用いる照射量変調能力を有するビームウォッブルのためのグリッド電源を有するコンピュータ断層撮影用イメージングシステムを改良することを容易にする。
【0042】
更に、同時の焦点切り替えを伴う又は伴わないに拘らず、カスケードされた照射量変調を実行することができることが認識できるであろう。即ち、ビームウォッブル入力信号70はオフにされるか又は、カスケードされた照射量変調特徴を維持しつつ、コンピュータ断層撮影用イメージングシステムから完全に除外される。
【0043】
図1を参照するに、上記のビーム変調を、種々の方法で用いることができる。適切な一照射量変調イメージングプロセスにおいては、照射量変調制御器52は、螺旋状軌道の一回旋又は軸上スライスに対応するガントリ16の360°回転に亘る照射量供給速度処理器50から受ける照射量供給速度を統合する。360°に亘って対象物に供給される統合された照射量に基づいて、照射量変調制御器52は、各々のスライス又は螺旋状回転に対して供給される一般に一定の放射線照射量を維持するように、次の360°回転に対してフィラメント80による電流を、及びグリッド電極110、112における合計電位を調節する。異なる吸収特性を有する対象物の領域間で軸方向にイメージングが処理されるにつれ、X線ビームは、対象物において一般に一定のX線吸収速度を維持するように変調される。
【0044】
他の適切な照射量変調イメージング処理においては、照射量変調制御器52は、照射量供給速度処理器50により報告される一般に一定の照射量供給速度を維持するように、フィラメント80による電流及びグリッド電極110、112における合計電位を連続的に調節する。この処理は、単一のスライスに対する投射データの取得中に放射線供給速度を調節することができ、各々の360°のガントリ回転中に実質的な軸上距離がサンプリングされる、大きいピッチの螺旋状スキャンに対して特に適切である。
【0045】
X線管20は、ビームウォッブルを実行するために静電ビーム偏向を用いる。それ故、グリッド電極110、112は、静電ビームウォッブルのために用いられ、加えられる合計電位により静電気的に照射量変調するために付加的に用いられる。しかしながら、一部の既存のX線管においては、静電グリッドは用いられない。そうではなく、静電グリッドは静電ビーム偏向器で置き換えられる。
【0046】
図3を参照するに、X線管20´は、照射量変調のための静電電子ビームの制限又はアパーチャリング、及びウォッブルのための個別の静電ビーム偏向を用いる。図3は、関連電気構成要素と共に断面図の状態のX線管20´の構成要素を模式的に示している。図2の構成要素と一般に対応する図3における構成要素は、対応する参照番号で示している。
【0047】
具体的には、X線管20´は、フィラメント80´、陰極カップ82´を有する陰極84´、並びに回転可能軸100´及び角度のついた周辺のX線生成表面102´を有する。それらの構成要素は、一般に、フィラメント80、陰極84、陰極カップ82、陽極92、回転軸100、並びにX線管20の表面102に対応する。更に、絶縁トランス86´及びX線管電源72´を有するフィラメント電源62´を有するX線管制御ハードウェアは、X線ビーム96´と電子ビーム94´とを生成し且つ共通部90´に対してバイアス電位を加えるようになっている、図2の対応する要素62、86、72に類似して動作する。ビームウォッブル入力信号70´及びフィラメント電流変調制御信号60´は、図1及び2のアナログ入力信号70、60に対応している。
【0048】
X線管20´は、X線管20により用いられる静電ビーム偏向ではなく、電磁ビーム偏向を用いている。具体的には、ビームウォッブル入力信号70´は偏向器電源120に入力される。反転経路122及び非反転経路124は、2つのウォッブル位置の焦点スポットの間で電子ビーム94´を操作するために入力信号70´に基づいて電磁石126、128を駆動するための電力を生成する。2つの電磁石126、128を示している。しかしながら、単一のソレノイド電磁石を用いることが又、できる。
【0049】
X線管20の静電グリッド電極110、112とは異なり、X線管20´の電磁石126、128は、照射量変調に影響するように電子ビームを制限することはできない。そうではなく、個々の静電ビーム制限要素はX線管20´に含まれる。
【0050】
Wehneltシリンダ140はWehnelt電源142により駆動される。図1及び2のグリッド変調入力信号64は、Wehnelt電源142に入力されるアナログ静電変調信号64´で置き換えられる。Wehneltシリンダ140に加えられる負電位は、電子ビーム94´の一部の静電ピンチオフにより陽極92´における電子ビーム94´の強度の減少に影響する。Wehneltシリンダ140に加えられる十分大きい負電位に対して、電子ビーム94´は完全にピンチオフされることができる。Wehneltシリンダ140は、典型的には、0Vの範囲において陰極84´より約3kV負であって、陰極84´に対して負にバイアスされる。
【0051】
Wehneltシリンダ140は、合計静電電位64に基づいて、X線管20のグリッド電極110、112が静電ビーム変調を実行する実質的に同じ方式で、静電変調信号64´に基づいて静電ビーム変調を実行する。Wehneltシリンダ140による静電照射量変調は、カスケードされた静電気且つフィラメント電流制御照射量変調を与えるために、フィラメント80´における電流の変調と適切に結合される。X線管20に関して上で述べたこのカスケードされた照射量変調の有利点は、例えば、動的変調領域に対してX線ビームの空間的解像度を改善され、放射線変調の動的範囲を改善されたX線管20´に又、適用される。更に、X線管20´は、能動的冷却のための流体流路、異なる電子ビーム特性を達成するため又は冗長性のための1つ又はそれ以上の付加フィラメント等の付加要素(要素については、図示していない)を任意に有する。
【0052】
本発明にてついて、好適な実施形態に関して説明した。上記の詳細説明を読み、理解することにより、当業者が修正及び変更を実行できることは明らかである。本発明は、同時提出の特許請求の範囲又はそれと同等な内容の範囲内にあるそのような修正及び変更全てを網羅するように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】照射線変調されたコンピュータ断層撮影用イメージング装置を示す図である。
【図2】静電ビームウォッブリングを用いる適切な照射量変調照射システムの模式図である。
【図3】電磁偏向ビームウェッブリングを用いる適切な照射量変調照射システムの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームにフォーカスされる電子を生成するフィラメントを有する陰極と電子ビームに応じてX線を生成する陽極とを有するX線管のための照射量変調照射システムであって:
前記電子ビームの強度を静電気的に減少させるように備えられた少なくとも1つの静電制御電極;及び
前記電子ビームの強度を変えるように前記静電制御電極に時間変化電気バイアスを加えるバイアス手段;
を更に有することを特徴とする照射量変調照射システム。
【請求項2】
請求項1に記載の照射量変調照射システムであって、前記静電制御電極は、加えられる電位差に応じて前記電子ビームを方向付けるように備えられたグリッド電極を有する静電グリッドを有する、ことを特徴とする照射量変調照射システム。
【請求項3】
請求項1に記載の照射量変調照射システムであって:
前記フィラメントにより時間変化フィラメント電流を加えるための電流変調手段;及び
前記電子ビームの選択された時間変化強度を与えるように前記電流変調手段と前記バイアス手段とを制御するための制御手段;
を更に有する、ことを特徴とする照射量変調照射システム。
【請求項4】
請求項3に記載の照射量変調照射システムであって、前記制御手段は、前記電子ビームの前記の選択された時間変化強度を強調的に生成する前記静電制御電極における前記時間変化電気バイアスと同時に前記フィラメント電流を変化させるように前記電流変調手段と前記バイアス手段とを同時に実行させる、ことを特徴とする照射量変調照射システム。
【請求項5】
請求項1に記載の照射量変調照射システムであって:
前記X線管が備えられている回転ガントリであって、X線管がX線ビームを出射する検査領域を規定する、回転ガントリ;
X線ビームが前記検査領域を通過した後に前記X線ビームの空間変化強度を測定する、X線管から前記検査領域を横切るように配置されている二次元X線検出器;並びに
複数のX線源の位置においてX線検出器により測定されるX線ビームの空間変化強度に基づいて前記検査領域に備えられているイメージング対象物のコンピュータ断層撮影画像を再構成する処理器;
を更に有する、ことを特徴とする照射量変調照射システム。
【請求項6】
請求項5に記載の照射量変調照射システムであって、前記静電制御電極は前記フィラメントの周りに配置されたグリッド電極を有する静電グリッドを有する、照射量変調照射システムであり:
第2バイアス手段は、交互の焦点間で前記電子ビームをウォッブルするように前記グリッド電極にスイッチング差動電気バイアスを加えるためのものである;
ことを特徴とする照射量変調照射システム。
【請求項7】
請求項5に記載の照射量変調照射システムであって:
前記フィラメントにより時間変化フィラメント電流を加えるフィラメント電流制御器;及び
前記イメージング対象物に加えられる選択された時間変化放射線照射量を生成するために前記フィラメント電流制御器と前記バイアス手段とを制御する制御器;
を更に有する、ことを特徴とする照射量変調照射システム。
【請求項8】
請求項5に記載の照射量変調照射システムであって:
前記フィラメントにより時間変化フィラメント電流を加えるフィラメント電流制御器; 前記X線検出器により測定される前記X線ビームの前記空間変化強度に基づいて前記イメージング対象物に供給される放射線の速度に対応する制御信号を計算するフィードバック要素;並びに
実質的に一定の制御信号を生成する前記フィラメント電流制御器と前記バイアス手段とを制御する制御器;
を更に有する、ことを特徴とする照射量変調照射システム。
【請求項9】
請求項1に記載の照射量変調照射システムであって、前記静電制御電極は、フィラメントの反対側に備えられた対を成すグリッド電極を有し、前記静電制御変調器は、前記電子ビームのウォッブリングをもたらす前記グリッド電極に加えられるスイッチング差動電気バイアス成分を付加的に加える、ことを特徴とする照射量変調照射システム。
【請求項10】
請求項1に記載の照射量変調照射システムであって、前記静電制御電極はWehneltシリンダを有する、ことを特徴とする照射量変調照射システム。
【請求項11】
請求項10に記載の照射量変調照射システムであって:
前記電子ビームを選択的に偏向する電磁偏向器;
を更に有する、ことを特徴とする照射量変調照射システム。
【請求項12】
請求項1に記載の照射量変調照射システムであって:
前記陰極、前記陽極及び前記静電制御電極は単一X線管ユニットとして備えられている
コンピュータ断層撮影用スキャナ;
を更に有する、ことを特徴とする照射量変調照射システム。
【請求項13】
ビームにフォーカスされる電子を生成するフィラメントを有する陰極と、電子ビームに応じてX線を生成する陽極と、前記電子ビームの強度を静電気的に調節する静電制御電極とを有するX線管の出力を照射量変調するための方法であって:
前記電子ビームの第1時間変化強度変調を生成するように前記静電制御電極に時間変化静電バイアスを加える段階;
を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって:
時間変化電気バイアスを加えるのと同時に、前記電子ビームの第2時間変化強度変調を生成するように時間変化フィラメント電流を加える段階であって、前記第1及び第2時間変化強度変調は、前記電子ビームの前記強度が変調されるダイナミックレンジをエンハンスするようにカスケードされる、段階;
を更に有する、ことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記時間変化強度変調の間の最大X線ビーム強度の最小X線ビーム強度に対する比が少なくとも8:1である、ことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって:
前記X線管が備えられているコンピュータ断層撮影装置の回転ガントリの回転と前記時間変化電気バイアスの印加を同期させる段階;
を更に有する、ことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であって、前記X線管はコンピュータ断層撮影用イメージングスキャナの放射線源構成要素である、方法であり:
前記コンピュータ断層撮影用イメージングスキャナを用いてイメージング対象物をイメージングする段階;
前記イメージング中に、前記コンピュータ断層撮影用イメージングスキャナのX線検出器構成要素を用いてX線強度を測定する段階;
前記測定されたX線強度に基づいて前記イメージング中に前記イメージング対象物に供給される時間的に変化されるX線放射の放射線照射量供給速度を評価する段階;並びに
前記の評価された時間的に変化されるX線放射の放射線照射量供給速度に基づいて、前記イメージング中に前記時間変化電気バイアスの印加を制御する段階;
を更に有する、ことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記の制御する段階は、選択された一般に一定の放射線照射量供給速度を維持するように前記時間変化電気バイアスの印加を制御する、ことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項13に記載の方法であって、前記X線管はコンピュータ断層撮影用イメージングスキャナの放射線源構成要素である、方法であり:
前記コンピュータ断層撮影用イメージングスキャナを用いてイメージング対象物をイメージングする段階であって、前記静電制御電極への前記時間変化電気バイアスの前記印加は放射線供給速度の変調を与えるように前記イメージング中に実行される、段階;
を更に有する、ことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって:
前記電子ビームの第2時間変化強度変調を生成するように前記陰極のフィラメント電流を制御する段階であって、前記電子ビームの前記第1及び第2時間変化強度変調は前記放射線供給速度の前記変調を与えるように時間的に協調されている、段階;
を更に有する、ことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記静電制御電極は前記フィラメントの周りに備えられたグリッド電極を有する静電グリッドを有する、方法であり:
前記電子ビームをウォッブルするように前記時間変化電気バイアスの印加を同時に前記グリッド電極にスイッチング差動電気バイアスを加える段階;
を更に有する、ことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項13に記載の方法であって、前記静電制御電極に加えられる前記時間変化電気バイアスはアナログ時間変化電気バイアスである、ことを特徴とする方法。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−516206(P2006−516206A)
【公表日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500270(P2006−500270)
【出願日】平成16年1月5日(2004.1.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000007
【国際公開番号】WO2004/061864
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】