説明

焼結性レジスト組成物及びマイクロ構造体の製造方法

【課題】優れた熱分解性及び感光性を有し、充分な膜厚を有する被膜を形成することが可能な焼結性レジスト組成物を提供する。また、該焼結性レジスト組成物を用いたマイクロ構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】マイクロ構造体の製造に用いられる焼結性レジスト組成物であって、(メタ)アクリル樹脂、光重合開始剤及び有機溶剤を含有し、上記(メタ)アクリル樹脂の含有量が20〜50重量%であり、上記(メタ)アクリル樹脂は、分岐構造を有する(メタ)アクリレートに由来するセグメントを40〜90重量%、及び、両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーに由来するセグメントを4〜20重量%含有する焼結性レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた熱分解性及び感光性を有し、充分な膜厚を有する被膜を形成することが可能な焼結性レジスト組成物に関する。また、該焼結性レジスト組成物を用いたマイクロ構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細技術の進展に伴い、いわゆるMEMS(Micro Electro−Mechanical System)素子、及び、このようなMEMS素子を組み込んだ小型機器が、注目されている。MEMS素子は、シリコン基板、ガラス基板等の基板上に微細構造体として形成され、機械的駆動力を出力する駆動体と、駆動体を駆動する駆動機構と、駆動機構を制御する半導体集積回路等とを電気的に、更には機械的に結合させた素子である。
MEMS素子の基本的な特徴は、機械的構造として構成されている駆動体が素子の一部に組み込まれていることであって、駆動体の駆動は、電極間のクーロン引力などを応用して電気的に行われる。例えば、MEMS素子の一例として、駆動体の動きを光の反射や回折に利用して光変調素子として機能させる光学MEMS素子が開発されている。
【0003】
MEMS素子の製造には、マイクロマシニング技術が用いられており、このようなマイクロマシニング技術は、大きく2種類に分類できる。
1つは、シリコンバルクエッチング(bulk etching)によるバルクマイクロマシニングである。この方法はシリコン自体を加工することによって3次元的な構造体を作製する技術であり、現在のマイクロマシニング技術の主流となっている。
【0004】
もう1つは、表面マイクロマシニングである。この方法は、シリコン基板の表面側に互いに異なる材料からなる犠牲層及び薄膜を順に積層した後、最表面側の薄膜を所望の形状にパターニングし、犠牲層を選択的にエッチングすることにより、空洞部を有する構造体を作製する技術である。例えば、特許文献1には、このような方法を用いたインクジェットプリントヘッドの製造方法が開示されている。
【0005】
従来の表面マイクロマシニングでは、犠牲層の材料としてアルミニウムやポリイミド等を用いているが、公知の方法で犠牲層のエッチングを行った場合、エッチング後に形成される空洞部のスペースが充分に確保されず、歩留まりが低下してしまうことがあった。
また、アルカリ溶液やHFやXeF等のガスを用いて犠牲層の除去を行うことは、環境保護の面からも好ましくなかった。
【特許文献1】特開2005−104156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、優れた熱分解性及び感光性を有し、充分な膜厚を有する被膜を形成することが可能な焼結性レジスト組成物を提供することを目的とする。また、該焼結性レジスト組成物を用いたマイクロ構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、マイクロ構造体の製造に用いられる焼結性レジスト組成物であって、(メタ)アクリル樹脂、光重合開始剤及び有機溶剤を含有し、上記(メタ)アクリル樹脂の含有量が20〜50重量%であり、上記(メタ)アクリル樹脂は、分岐構造を有する(メタ)アクリレートに由来するセグメントを40〜90重量%、及び、両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーに由来するセグメントを4〜20重量%含有する焼結性レジスト組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、表面マイクロマシニングの犠牲層を除去する工程において、従来エッチングで行っていた犠牲層の除去を、高温焼結によって分解する方法に変更することで、犠牲層の除去を容易に行うことができ、環境保護の観点からも優れた方法となることがわかった。
しかしながら、従来から用いられている焼結性レジスト組成物を犠牲層の材料として用いた場合、熱分解性が悪いことに起因して、焼結後に形成された空洞部に未分解成分が残存し、充分なスペースを有する空洞部が得られないという不具合があった。また、感光性が不充分であったり、膜厚の厚い犠牲層を形成することが難しかったりするという問題もあった。
これに対して、本発明者らは更に鋭意検討した結果、所定のセグメントを有する(メタ)アクリル樹脂、光重合開始剤及び有機溶剤を含有する焼結性レジスト組成物を用いた場合、驚くべきことに、熱分解性に顕著な改善が見られ、分解温度が大幅に低下するだけでなく、良好な感光性を発揮することができ、充分な膜厚を有する犠牲層が形成可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の焼結性レジスト組成物は、マイクロ構造体の製造に用いられるものである。
なお、本明細書において、マイクロ構造体とは、シリコン基板やガラス基板等の表面に各種の3次元構造物等が形成された構造体のことをいい、具体的には例えば、自動車に搭載される圧力センサやDMD(Digital Micromirror Device)等の各種デバイスを構成する部品等や、SAWフィルター(Surface Acoustic Wave Filter)等が挙げられる。
【0010】
本発明の焼結性レジスト組成物は、分岐構造を有する(メタ)アクリレートに由来するセグメントを40〜90重量%、及び、両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーに由来するセグメントを4〜20重量%含有する(メタ)アクリル樹脂を含有する。
本発明では、上記2種類のセグメントを有し、かつ、各セグメントの含有量が所定量である(メタ)アクリル樹脂を含有することで、焼結後の未分解成分の低減を図ることが可能となる。
【0011】
上記(メタ)アクリル樹脂は、分岐構造を有する(メタ)アクリレートに由来するセグメントに由来するセグメントを有する。
上記分岐構造を有する(メタ)アクリレートに由来するセグメントを有することで、分解開始温度を低減させて分解性を向上させることができる。
なお、本明細書において、上記分岐構造を有するとは、分岐構造の炭化水素基を有することを意味する。
【0012】
上記分岐構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0013】
上記(メタ)アクリル樹脂中の上記分岐構造を有する(メタ)アクリレートに由来するセグメントの含有量の下限は40重量%、上限は90重量%である。上記分岐構造を有する(メタ)アクリレートに由来するセグメントの含有量が40重量%未満であると、焼結後の未分解成分が多くなり、90重量%を超えると、両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーの添加量が少なくなり、感光性が低下する。
【0014】
上記(メタ)アクリル樹脂は、両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーに由来するセグメントを有する。
上記両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーに由来するセグメントを有することで、分解開始温度を低減させて分解性を向上させることができる。また、感光性を向上させることができる。なお、本発明において、両末端とはポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーの主鎖の両末端を意味する。
【0015】
上記両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジメタクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジメタクリレート等が挙げられる。
【0016】
上記(メタ)アクリル樹脂は、両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーの重合度の好ましい下限は14、好ましい上限は23である。上記重合度が14未満であると、熱分解性と感光性を両立させることができず、23を超えると、ポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーをアクリレート変性する際に、片末端のみが変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーが作製されやすくなるため感光性が低下する。
【0017】
上記(メタ)アクリル樹脂中の両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーの含有量の下限は4重量%、上限は20重量%である。上記上記(メタ)アクリル樹脂中の両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーの含有量が4重量%未満であると、焼結後の未分解成分が多くなり、20重量%を超えると、熱分解温度が高くなる。上記両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーの含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は20重量%である。
【0018】
上記(メタ)アクリル樹脂は、更に、ポリオキシアルキレンエーテルモノ(メタ)アクリレートに由来するセグメントを有することが好ましい。上記ポリオキシアルキレンエーテルモノ(メタ)アクリレートに由来するセグメントを有することで、焼結工程において、本発明の焼結性レジスト組成物を350℃以下の低温で分解させることが可能となる。
【0019】
上記ポリオキシアルキレンエーテルモノ(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、ポリメチレングリコール、ポリアセタール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでも、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。また、繰り返し単位がPPOである場合、繰り返し単位がPEOである場合と比較して分解性が良好となり、低温で分解可能となることから、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。更に、複数のポリアルキレンエーテルが共重合されたものを用いてもよい。
【0020】
上記(メタ)アクリル樹脂中のポリオキシアルキレンエーテルモノ(メタ)アクリレートに由来するセグメントの含有量の好ましい下限が5重量%、好ましい上限が10重量%である。上記ポリオキシアルキレンエーテルモノ(メタ)アクリレートに由来するセグメントの含有量が5重量%未満であると、熱分解温度が高くなる。また、上記ポリオキシアルキレンエーテルモノ(メタ)アクリレートに由来するセグメントの含有量が10重量%を超えると、焼結後の未分解成分が多くなる。
【0021】
上記(メタ)アクリル樹脂は、更に、メチルメタクリレートに由来するセグメントを有することが好ましい。
上記メチルメタクリレートは本来低温で分解する樹脂であるが、その高次構造が分解温度を高める働きをもたらすため、分岐構造を有する(メタ)アクリレートと共重合させることでメチルメタクリレートの高次構造が解消され、低温分解特性を充分に発揮することができ、より低温での脱脂を実現することが可能となる。また、焼結性レジスト組成物のガラス転移温度を適度な範囲に調整することができる。
【0022】
上記バインダー樹脂中のメチルメタクリレートに由来するセグメントの含有量の好ましい上限が30重量%である。上記バインダー樹脂中のメチルメタクリレートに由来するセグメントの含有量が30重量%を超えると、熱分解温度が高くなることがある。
【0023】
上記(メタ)アクリル樹脂は、上記分岐構造を有する(メタ)アクリレートに由来するセグメント、両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーに由来するセグメント、ポリオキシアルキレンエーテルモノ(メタ)アクリレートに由来するセグメント、及び、メチルメタクリレートに由来するセグメントに加えて、所望の機能性を付加するため、本発明の効果を損なわない範囲で、極性基を有するモノマーに由来するセグメントを有していてもよい。
上記極性基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等が挙げられる。
【0024】
上記極性基を有するモノマーに由来するセグメントを有する場合、上記極性基を有するモノマーに由来するセグメントの含有量は5重量%未満であることが好ましい。上記極性基を有するモノマーに由来するセグメントの含有量が5重量%以上であると、低温での熱分解性が損なわれたり、焼結後の未分解成分が多くなったりすることがある。
【0025】
上記(メタ)アクリル樹脂は、分子末端のみに水素結合性官能基を少なくとも1個有することが好ましい。上記水素結合性官能基が分子末端のみに存在することで、低温熱分解性等の本発明の効果を損なうことなく、焼結性レジスト組成物とした場合に、多量に配合しなくても適度な粘度を確保することができる。
【0026】
上記水素結合性官能基としては特に限定されず、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。なかでも、熱分解時の影響が少ない等の理由から、水酸基、カルボキシル基が好適である。また、上記水素結合性官能基は少なくとも1個有すればよいが、多いほど相分離構造は安定化する。
【0027】
上記(メタ)アクリル樹脂は、ポリスチレン換算による数平均分子量の好ましい下限が3000、好ましい上限が15000である。数平均分子量が上記範囲であると、適度な粘度とすることができる。上記数平均分子量が3000未満であると、焼結性レジスト組成物とした場合に充分な粘度が得られないことがあり、上記数平均分子量が15000を超えると、本発明の焼結性レジスト組成物を塗工しにくくなることがある。
なお、ポリスチレン換算による数平均分子量の測定は、カラムとして例えばSHOKO社製カラムLF−804を用いてGPC測定を行うことで得ることができる。
【0028】
本発明の焼結性レジスト組成物における(メタ)アクリル樹脂の含有量の下限は20重量%、上限は50重量%である。(メタ)アクリル樹脂の含有量が20重量%未満であると、充分な膜厚が得られず、更に熱分解性が低下する。(メタ)アクリル樹脂の含有量が50重量%を超えると、粘度が高くなり、本発明の焼結性レジスト組成物を塗工しにくくなる。上記(メタ)アクリル樹脂の含有量の好ましい下限は25重量%、好ましい上限は45重量%である。
【0029】
上記(メタ)アクリル樹脂を製造する方法としては特に限定されず、例えば、分岐構造を有する(メタ)アクリレート、両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマー、ポリオキシアルキレンエーテルモノ(メタ)アクリレート及びメチルメタクリレートを原料モノマーとし、連鎖移動剤及び有機溶剤等を含有するモノマー混合液を調製した後、該モノマー混合液に重合開始剤を添加し、上記原料モノマーを共重合させる方法が挙げられる。
【0030】
本発明の焼結性レジスト組成物は、光重合開始剤を含有する。
上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、光ラジカル重合開始剤が好ましく、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、又は、オキシムエステル系光重合開始剤等が好ましい。具体的には、例えば、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフォンオキサイド等が挙げられ、市販のものとしてそれぞれ、イルガキュア819、イルガキュア OXE01、DAROCURE TPO(いずれもチバスペシャリティケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0031】
本発明の焼結性レジスト組成物における上記光重合開始剤の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は4重量%である。上記光重合開始剤の含有量が1重量%未満であると、感光性が不充分となることがあり、上記光重合開始剤の含有量が4重量%を超えると、犠牲層の強度が低下したり、焼結後の未分解成分が多くなったりすることがある。
【0032】
本発明の焼結性レジスト組成物は、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテートテキサノール、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
なかでも、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましく、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。なお、これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記有機溶剤は、沸点が100℃以上であることが好ましい。100℃未満であると、焼結性レジスト組成物を塗布するプロセス中に溶剤が揮発してしまい、塗布できなくなることがある。
【0033】
上記有機溶剤の粘度の好ましい下限は0.5cPである。上記粘度が0.5cP未満であると、充分な膜厚を形成することができないことがある。なお、上記粘度は25℃にて測定したものである。
【0034】
本発明の焼結性レジスト組成物における上記有機溶剤の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は5重量%、好ましい上限は60重量%である。上記有機溶剤の含有量が、この範囲を外れると、塗工性等の面で問題となることがある。
【0035】
本発明の焼結性レジスト組成物は、架橋剤として、オキシアルキレンエーテル部分の繰り返し数が14以上である化合物を含有することが好ましい。
上記オキシアルキレンエーテル部分の繰り返し数が14未満であると、充分な膜厚が得られず、さらに焼結後の未分解成分が多くなることがある。
上記架橋剤としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジメタクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジメタクリレート等が好適である。
【0036】
本発明の焼結性レジスト組成物における上記架橋剤の含有量としては特に限定されないが、好ましい上限は20重量%である。上記架橋剤の含有量が20重量%を超えると、本発明のレジスト材料の熱分解性が不充分となることがある。
【0037】
本発明の焼結性レジスト組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0038】
本発明の焼結性レジスト組成物を用いて、マイクロ構造体を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、本発明の焼結性レジスト組成物を塗工した後、フォトリソグラフィー処理を行ってパターン状のレジストを形成する工程、上記レジストに金属薄膜を形成する工程、及び、加熱処理によりレジストを分解させる工程を有する方法等が挙げられる。このようなマイクロ構造体の製造方法もまた本発明の1つである。
【0039】
本発明の焼結性レジスト組成物を塗工する方法としては、特に限定されず、例えば、アプリケータやスクリーン印刷、ロールコーター、ブレードコーター、スピンコーター等が挙げられる。
【0040】
上記加熱処理によりレジストを分解させる工程における加熱温度の好ましい下限は250℃、好ましい上限は400℃である。上記加熱温度が250℃未満であると、(メタ)アクリル樹脂が充分に分解せず、上記加熱温度が400℃を超えると、レジストパターンを作製した処理基板が破傷することがある。
【0041】
本発明のマイクロ構造体の製造方法のその他の工程については、従来公知の方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、優れた熱分解性及び感光性を有し、充分な膜厚を有する被膜を形成することが可能な焼結性レジスト組成物を提供することができる。また、該焼結性レジスト組成物を用いたマイクロ構造体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
((メタ)アクリル樹脂の作製)
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、モノマーとしてイソブチルメタクリレート(IBMA)56重量部、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート(オリゴマーの重合度14、共栄社化学社製、ライトアクリレート14EG−A)4重量部、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油社製、ブレンマーPP1000)10重量部、メチルメタクリレート(MMA)30重量部、連鎖移動剤としてメルカプトコハク酸4重量部と、有機溶剤として酢酸エチル100重量部とを混合し、モノマー混合液を得た。
【0045】
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながら湯浴が沸騰するまで昇温した。重合開始剤を酢酸エチルで希釈した溶液を加え、重合を開始させた。また、重合中に重合開始剤を含む酢酸エチル溶液を数回添加した。
重合開始から8時間経過後、室温まで冷却して重合を終了させ、(メタ)アクリル樹脂を得た。
【0046】
(ビヒクル組成物の作製)
攪拌機、冷却器、及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、(メタ)アクリル樹脂の酢酸エチル溶液100重量部と、グリシジルメタクリレート(GMA)1.2重量部と、トリエチルアミン0.02重量部とを混合した後、攪拌しながら還流に達するまでに昇温した。反応開始から6時間後、室温まで冷却し、ビヒクル組成物を得た。
【0047】
(焼結性レジスト組成物の作製)
得られたビヒクル組成物の溶媒を酢酸エチルからプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに置換した。得られた(メタ)アクリル樹脂のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液に、架橋剤としてポリエチレングリコール#600ジアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレート14EG−A)、及び、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア819)を表1の組成となるように添加して焼結性レジスト組成物を得た。
【0048】
(実施例2〜6、比較例1〜3)
(メタ)アクリル樹脂、ビヒクル組成物及び焼結性レジスト組成物の組成を表1のように変更したこと以外は実施例1と同じ方法にて(メタ)アクリル樹脂、ビヒクル組成物及び焼結性レジスト組成物を作製した。なお、ポリエチレングリコール#1000ジアクリレートとしては「新中村化学工業社製、NKエステルA−1000(オリゴマーの重合度23)」を用い、1,2−オクタンジエン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]としては「チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュアOXE01」を用いた。
【0049】
<評価>
実施例及び比較例で得られた(メタ)アクリル樹脂、及び、焼結性レジスト組成物について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0050】
(1)数平均分子量測定
得られた(メタ)アクリル樹脂について、カラムとしてSHOKO社製カラムLF−804を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行うことにより、ポリスチレン換算による数平均分子量を測定した。
【0051】
(2)レジストパターンの厚み測定
(レジストパターンの形成)
シリコンウェハ上に実施例及び比較例で作製した焼結性レジスト組成物をスピンコーターを用いて塗布した。その後、115℃で4分間プリベークし有機溶剤を揮発させて乾燥し、膜厚が20μmのレジスト層を形成した。
次いで、100μm×100μmのネガ型フォトマスクを接触させ、超高圧水銀灯により300mJ/cmの紫外線を照射した。その後、未露光部を、エタノール溶液を用いて5分間、現像を行うことにより、シリコンウェハ上にレジストパターンを形成した。
【0052】
(レジストパターンの厚み測定)
得られたレジストパターンについて、表面粗さ形状測定機(SURFCOM1400D−R、東京精密社製)を用いて、レジストパターンの厚みを測定した。
【0053】
(3)分解性
「(2)レジストパターンの厚み測定」で得られたレジストパターンから採取した試料について、熱分析レオロジー測定器(EXSTAR6000、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、300℃で60分間保持し、室温に戻した後における焼結物の重量を測定した。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、優れた熱分解性及び感光性を有し、充分な膜厚を有する被膜を形成することが可能な焼結性レジスト組成物を提供することができる。また、該焼結性レジスト組成物を用いたマイクロ構造体の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ構造体の製造に用いられる焼結性レジスト組成物であって、
(メタ)アクリル樹脂、光重合開始剤及び有機溶剤を含有し、
前記(メタ)アクリル樹脂の含有量が20〜50重量%であり、
前記(メタ)アクリル樹脂は、分岐構造を有する(メタ)アクリレートに由来するセグメントを40〜90重量%、及び、両末端が(メタ)アクリレートで変性されたポリオキシアルキレンエーテルオリゴマーに由来するセグメントを4〜20重量%含有する
ことを特徴とする焼結性レジスト組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル樹脂は、更に、ポリオキシアルキレンエーテルモノ(メタ)アクリレートに由来するセグメントを5〜10重量%含有することを特徴とする請求項1記載の焼結性レジスト組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリル樹脂は、更に、メチルメタクリレートに由来するセグメントを30重量%以下含有することを特徴とする請求項1又は2記載の焼結性レジスト組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリル樹脂は、ポリスチレン換算による数平均分子量が3000〜15000であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の焼結性レジスト組成物。
【請求項5】
光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、又は、オキシムエステル系光重合開始剤であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の焼結性レジスト組成物。
【請求項6】
有機溶剤は、粘度が0.5cP以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の焼結性レジスト組成物。
【請求項7】
更に、架橋剤として、オキシアルキレンエーテル部分の繰り返し数が14以上である化合物を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の焼結性レジスト組成物。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の焼結性レジスト組成物を塗工した後、フォトリソグラフィー処理を行ってパターン状のレジストを形成する工程、前記レジストに金属薄膜を形成する工程、及び、加熱処理によりレジストを分解させる工程を有する
ことを特徴とするマイクロ構造体の製造方法。



【公開番号】特開2009−271101(P2009−271101A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118640(P2008−118640)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】