説明

照明装置及びこの照明装置を備えたズーム顕微鏡

【課題】 複雑な構成となる像及び瞳の共役関係を保ったズーム系とすることなく、ズーミングによる瞳面の移動に対処する手段を設けた照明装置、及び、この照明装置を備えたズーム顕微鏡を提供する。
【解決手段】 標本面から順に、対物レンズ11と、アフォーカルズーム光学系13とを有し、アフォーカルズーム光学系13の標本面側に対物レンズ11の瞳が位置するズーム顕微鏡30において、アフォーカルズーム光学系13及び対物レンズ11を介して標本面10aに照明光を照射する照明装置20であって、アフォーカルズーム光学系13から光源側に向かって順に、結像レンズ15と、結像レンズ15によってできる標本共役面近傍に挿脱可能に配置されるフィールドレンズ16と、コレクタレンズG5と、光源18とを有し、アフォーカルズーム光学系13のズーミングに起因して生じる、照明光学系の光源側に形成される射出瞳と光源18との位置ずれを補正するフィールドレンズ16が挿脱可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸落射型の照明装置、及び、この照明装置を備えたズーム顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ズーム光学系はズーミングに際し、標本面と像面位置の共役関係(以後、「像面の共役関係」という)は維持されるが、瞳位置の共役関係は変化してしまうという現象が生じる。例えば、対物レンズの像側でアフォーカルズーム光学系の標本面側に開口絞りを有するズーム顕微鏡の場合、像面の共役関係は当然一定に保たれるが、同時に瞳面の共役関係を一定に保つのは装置の構成上極めて困難であり、瞳面の共役関係は変化するのはやむを得ない現象となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−178440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、ズーム系においては、ズーミングに際し像面の共役関係が保たれるのは当然であるが、光学系を構成する際のもう一つの重要な要素である瞳面の共役位置は移動するのが一般的である。ズーム系と観察用鏡筒部の間に配置される反射照明装置の場合、ズーミングによる瞳共役位置の移動は照明状態に影響を与えてしまい好ましくない。即ち、ズーム系を含む装置を構成する上で、ズーミングにより像面と共に瞳面の共役関係も一定に保たれ、入射瞳位置も射出瞳位置も変化しないのが理想である。しかしながら、像面及び瞳面の双方の共役関係を一定に保ったままのズーム系を構成しようとすると、大きなスペースと複雑な機構及び光学系とが必要になるという課題がある。特にズーム系の標本面側に固定開口絞りを有する顕微鏡の場合、ズーム系の中に開口絞りがある場合に比べて射出瞳面の移動は大きくなりがちである。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、複雑な構成となる像及び瞳の共役関係を一定に保ったズーム系とすることなく、ズーミングによる瞳面の移動に対処する手段を設けた照明装置を提供することを目的とし、さらに、この照明装置を備えたズーム顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するため、本発明に係る照明装置は、標本面から順に、対物レンズと、アフォーカルズーム光学系とを有し、前記アフォーカルズーム光学系の標本面側に前記対物レンズの瞳(例えば、実施形態に係る開口絞り12)が位置するズーム顕微鏡において、前記アフォーカルズーム光学系及び前記対物レンズを介して前記標本面に照明光を照射する照明装置であって、前記アフォーカルズーム光学系から光源側に向かって順に、結像レンズと、前記結像レンズによってできる標本共役面近傍に挿脱可能に配置されるフィールドレンズと、コレクタレンズと、光源とを有し、前記アフォーカルズーム光学系のズーミングに起因して生じる、照明光学系の光源側に形成される射出瞳と前記光源との位置ずれを補正する前記フィールドレンズが挿脱可能に構成される。
【0007】
また、本発明に係る照明装置は、標本面から順に、対物レンズと、アフォーカルズーム光学系とを有し、前記アフォーカルズーム光学系の標本面側に前記対物レンズの瞳(例えば、実施形態に係る開口絞り12)が位置するズーム顕微鏡において、前記アフォーカルズーム光学系及び前記対物レンズを介して前記標本面に照明光を照射する照明装置であって、前記アフォーカルズーム光学系から光源側に向かって順に、結像レンズと、コレクタレンズと、光源とを有し、前記光源が、前記アフォーカルズーム光学系のズーミングによって生じる照明光学系の光源側に形成された射出瞳と略共役の位置になるように構成される。
【0008】
このような本発明に係る照明装置において、前記光源は、LED、ハロゲンランプ、及び、光ファイバの射出端のいずれかであることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る照明装置において、前記光源は、拡散板を含んでユニット化されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るズーム顕微鏡は、標本面から順に、対物レンズと、アフォーカルズーム光学系と、前記アフォーカルズーム光学系及び前記対物レンズを介して前記標本面に照明光を照射する上記いずれかに記載の照明装置とを有し、前記アフォーカルズーム光学系の標本面側に前記対物レンズの瞳(例えば、実施形態に係る開口絞り12)が位置し、前記光源が、前記アフォーカルズーム光学系のズーミングによって生じる照明光学系の光源側に形成された射出瞳と略共役の位置になるように構成される。
【0011】
なお、このような本発明に係るズーム顕微鏡において、前記対物レンズの瞳が、前記アフォーカルズーム光学系の標本面側に設けられた開口絞りであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る照明装置及びズーム顕微鏡を以上のように構成すると、複雑な構成となる像及び瞳の共役関係を同時に保ったズーム系とすることなく、ズーミングによる瞳面の移動を瞳位置補正光学系により補正することで、ズーム倍率によらずケーラー照明を実現することができ、標本面に対して効率よく照明を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施例に係る照明装置を備えたズーム顕微鏡の構成を示す説明図である。
【図2】アフォーカルズーム光学系の倍率の変化による射出瞳位置の変化を示す説明図であり、(a)はズーム1倍のときを示し、(b)はズーム7.5倍のときを示す。
【図3】アフォーカルズーム光学系のレンズ構成を示す断面図である。
【図4】第1実施例に係る照明装置内の、フィールドレンズから光源までの光学系による射出瞳位置の状態を示す説明図であり、(a)はズーム1倍のときを示し、(b)はズーム7.5倍のときを示す。
【図5】第2実施例に係る照明装置を備えたズーム顕微鏡の構成を示す説明図である。
【図6】第2実施例に係る照明装置内の、視野絞りから光源までの光学系による射出瞳位置の状態を示す説明図であり、(a)はズーム1倍のときを示し、(b)はズーム7.5倍のときを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を用いて、反射照明装置を備えたズーム顕微鏡の構成について説明する。このズーム顕微鏡30は、標本面10aから順に、対物レンズ11、開口絞り12、アフォーカルズーム光学系13、及び、結像レンズ(第二対物レンズ)14が光軸上に並んで構成されており、アフォーカルズーム光学系13と第二対物レンズ14との間に反射照明装置20が配置されている。ここで、反射照明装置20は、光ファイバ等から構成される光源18、拡散板G6、コレクタレンズG5、視野絞りFS(視野絞り面10c)、フィールドレンズ16、結像レンズ15、並びに、ハーフミラー19がこの順で光軸上に並んで構成されており、ズーム顕微鏡30の光学系の光軸と反射照明装置20の光学系の光軸とが直交し、これらの光軸が直交する位置にハーフミラー19が位置するように配置されている。
【0015】
なお、光源18として、LED、ハロゲンランプ等が使用可能である。または、光ファイバの射出端等とすることができる。後者の場合、本発明に係る照明装置20とは別の光源装置の光源からの光を直接またはレンズを通して光ファイバに導入し、光ファイバ内を伝播した光がその射出面から射出する構成となる。前記別の光源装置の光源には、ハロゲンランプやチップ型LEDなどが一般的に使用されている。
【0016】
光源18から放射された光は拡散板G6で拡散され、コレクタレンズG5により視野絞り面10cを一様に通過して結像レンズ15により平行光束に変換され、ハーフミラー19に入射する。ハーフミラー19は、一部の光を反射し、残りの光を透過する光学部材であり、このハーフミラー19で反射された光は、アフォーカルズーム光学系13及び開口絞り12を通過して対物レンズ11で集光され、標本面10aに照射される。そして、この標本面10aで反射した光は、対物レンズ11、開口絞り12及びアフォーカルズーム光学系13を通過して平行光束になり、ハーフミラー19に入射して一部の光が反射され、残りの光が透過し、透過した光が第二対物レンズ14で集光されて、像面10bに標本面10aの像が結像される。
【0017】
このようなズーム顕微鏡30において、アフォーカルズーム光学系13及び結像レンズ15による開口絞り12の共役関係を考える。このとき、開口絞り12のアフォーカルズーム光学系13及び結像レンズ15による像位置がアフォーカルズーム光学系13のズーム倍率によらず視野絞り面10cから同じ位置にあれば、コレクタレンズG5を介して光源18の光源面(光ファイバ面又は拡散板面)と一致し、いわゆるケーラー照明となり良好な照明を行うことができる。ところが、一般にズーミングにより開口絞り12の像位置は移動してしまう。例えば、低倍側が1倍で、8倍のズーム比を有するズーム顕微鏡の場合、ズーム倍率が1倍のときの開口絞り12の像位置が視野絞り面10cを起点として光源方向に40mmとなるときに、ズーム倍率が8倍のときには400mmとなるものがある。そのため、図2に示した光線の通り方から判るように、ズーム倍率の変化により開口絞り12の像位置が変化するため、実際に使用する光源面(ファイバ面)LSの位置(大きさ方向)と、開口絞り12のアフォーカルズーム光学系13からコレクタレンズG5に到る光学系による像である照明光学系の射出瞳位置とが大きく異なることになる。
【0018】
このように、照明装置を構成する光学系の設計においては、射出瞳位置の変化を考慮しながら対処する必要がある。ズーミングによる射出瞳位置変化の影響により、照明装置としてはケーラー照明に近い場合からクリティカル照明に近い場合までどちらとも言えない中間の状態を含めて変化してしまう。従って、光源には、配光角特性の一様性及び発光面の一様性の双方が求められる。ケーラー照明では発光面の一様性は必ずしも必要なく、クリティカル照明では角度特性の一様性は必ずしも必要でないが、ズーミングの状態によっては中間的な状況となるため双方が必要となる。
【0019】
そこでこのズーム顕微鏡30に用いられている反射照明装置20は、アフォーカルズーム光学系13の倍率に応じてフィールドレンズ16を(結像レンズ15によってできる標本共役面近傍に)挿脱することにより、瞳位置の変化が許容範囲内に収まる補正を行うように構成されている。具体的には、コントローラ40を設け、このコントローラ40がアフォーカルズーム光学系13の倍率を設定するとともに、その倍率に応じてフィールドレンズ16を(結像レンズ15によってできる標本共役面近傍から)挿脱させるように構成されている。
【実施例】
【0020】
以下に、照明装置の具体的な実施例について説明するが、その前に、この照明装置により瞳位置が補正されるアフォーカルズーム光学系13について説明する。このアフォーカルズーム光学系13は、一例として図3に示すように、開口絞り面SP(上述の開口絞り12に相当)側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と両凸レンズL2とが貼り合わされたレンズ及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3からなる第1レンズ群G1と、両凹レンズL4、両凸レンズL5と両凹レンズL6とが貼り合わされたレンズ及び両凹レンズL7からなる第2レンズ群G2と、両凸レンズL8及び両凸レンズL9と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL10とが貼り合わされたレンズからなる第3レンズ群G3と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL11と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL12とが貼り合わされたレンズからなる第4レンズ群G4と、鏡筒胴付面PLとから構成され、第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3を光軸に沿って移動させることにより、ズーム倍率(アフォーカル倍率)を変更可能に構成されている。
【0021】
表1にこのアフォーカルズーム光学系13における各レンズの諸元を示す。この表1において、mは面番号を示し、rはレンズ面の曲率半径を示し、dはレンズ面の間隔を示し、νdは各レンズ硝材のアッベ数を示し、ndはd線に対する屈折率を示しており、後述する照明装置の光学系の諸元においても同様である。また、fはこのアフォーカルズーム光学系13全体の焦点距離を示している。ここで、この表1における面番号mに示す1〜26はこのアフォーカルズーム光学系13に関するものであり、図3における符号1〜22に対応している。なお、この表1には、上述の図3に示していない結像レンズ15及び視野絞りFS(図1の視野絞り面10cに相当)の諸元値も含んでおり、面番号23〜25が結像レンズ15に対応し、面番号26が視野絞りFS(視野絞り面10c)に対応する。
【0022】
また、以下のすべての諸元値において掲載されている焦点距離f、曲率半径r、面間隔dその他の長さの単位は、特記のない場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることはなく、他の適当な単位を用いることもできる。
【0023】
(表1)
m r d νd nd
d0
1 ∞ 15.0000 SP
2 120.1967 2.0000 39.57 1.80440 L1
3 48.7980 3.0000 82.56 1.49782 L2
4 -509.0866 0.5000
5 50.4610 3.0000 82.56 1.49782 L3
6 3179.8129 d1
7 -108.0082 1.5000 35.71 1.90265 L4
8 25.8194 2.0000
9 32.8474 3.5000 23.78 1.84666 L5
10 -19.0003 1.0000 60.29 1.62041 L6
11 31.8448 1.5000
12 -25.9839 1.5000 35.71 1.90265 L7
13 228.2515 d2
14 838.2380 6.0000 82.56 1.49782 L8
15 -31.9728 0.2000
16 136.9685 6.0000 82.56 1.49782 L9
17 -39.2120 2.0000 28.55 1.79504 L10
18 -92.0449 d3
19 -339.8016 5.5000 36.24 1.62004 L11
20 -40.8020 1.5000 39.57 1.80440 L12
21 -124.4210 8.017
22 ∞ 50.0000 PL
23 93.0000 8.0000 60.29 1.62041 結像レンズ15
24 -39.0000 3.0000 35.28 1.74950
25 -110.0000 96.0000
26 ∞ Bf FS

(可変データ)
ズーム1倍時 ズーム7.5倍時
f 100.0000 750.0000
d0 0.0000 0.0000
d1 2.6024 60.3676
d2 22.8372 2.5051
d3 43.3588 5.9257
Bf 37.5000 476.0000
【0024】
この表1に示されるように、アフォーカルズーム光学系13の物体側15mmの位置に開口絞り面SPが配置されているとき、この開口絞りのアフォーカルズーム光学系13及び結像レンズ15による像位置は、アフォーカルズーム光学系13の焦点距離fが100mm(1倍に相当)のとき、視野絞りFSの後方37.5mm(Bf)の位置に形成され、アフォーカルズーム光学系13の焦点距離fが750mm(7.5倍に相当)のとき、視野絞りFSの後方476.0mm(Bf)の位置に形成される。
【0025】
(第1実施例)
図4は、上述の図1に示す照明装置20内のフィールドレンズFL(図1のフィールドレンズ16に相当)から光源面LS(図1の光源18に相当)までの詳細を示すものであり、この構成は図1における視野絞りFSの近傍にフィールドレンズ16(FL)を挿脱可能に配置し、射出瞳位置を光源18の光源面LSと一致或いは極力近づけるようにしたものである。以下の表2に、本実施例に係る照明装置20を構成するフィールドレンズFLから光源面LSまでの各レンズの諸元値を示す。この表2においては、アフォーカルズーム光学系13の倍率が1倍のときと、7.5倍のときの諸元を示している。なお、ズーム倍率が1倍のとき、面番号mに示す1〜4は、図4(a)に示す符号1〜4に対応している。また、ズーム倍率が7.5倍のとき、面番号mに示す1〜7は、図4(b)に示す符号1〜7に対応している。
【0026】
(表2)
ズーム1倍時
m r d νd nd
d0=-37.500
1 ∞ 20.0000 FS
2 21.0000 3.0000 64.10 1.51680 G5
3 -21.0000 8.0000
4 ∞ 0.0000 LS

ズーム7.5倍時
m r d νd nd
d0=-476.000
1 ∞ -15.0000
2 55.0000 5.0000 64.10 1.51680 FL
3 -55.0000 10.0000
4 ∞ 20.0000 FS
5 21.0000 3.0000 64.10 1.51680 G5
6 -21.0000 8.0000
7 ∞ 0.0000 LS
【0027】
この表2に示すように、アフォーカルズーム光学系13のズーム倍率が1倍のときは、視野絞り面FS(面番号1)の後方20mmの位置にコレクタレンズG5(面番号2,3)が配置され、光源面LS(面番号4)と、開口絞り12の像(すなわち、射出瞳)とは完全に重なっている。また、ズーム倍率が7.5倍のときは、視野絞り面FSの前方15mmの位置(FSより−15mm)にフィールドレンズFLが配置され、光源面LS(面番号7)と、開口絞り12の像(射出瞳)とは完全に重なっている。また、図4に示す光束の状態からも明らかなように、アフォーカルズーム光学系13のズーム倍率が1倍のときもズーム倍率が7.5倍のときも光源面LSと射出瞳位置は完全に重なり、本実施例の照明装置20において挿脱可能なフィールドレンズFLにより補正されている。そのため、この第1実施例に照明装置20を備えたズーム顕微鏡30によれば、比較的簡単な構成によって、アフォーカルズーム光学系13のズーム倍率によらずほぼケーラー照明状態となり、良好な照明を得ることができる。
【0028】
なお、第1実施例では、図4に示すように、ズーム倍率が高倍時(7.5倍時)にフィールドレンズFLを視野絞りFSの近傍に挿入し、ズーム倍率が低倍時(1倍時)にフィールドレンズFLを抜き出すように構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、ズーム倍率が低倍時にフィールドレンズFLを視野絞りFSの近傍に挿入し、ズーム倍率が高倍時にフィールドレンズFLを抜き出すように構成することもできる。
【0029】
(第2実施例)
図5は、第2実施例に係る反射照明装置20´を備えるズーム顕微鏡30を示している。なお、上記実施例において説明した構成部材と同様の機能を有するものについては、同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0030】
図5に示すように、第2実施例に係る反射照明装置20´は、アフォーカルズーム光学系13から光源側に向かって順に光軸上に並んだ、ハーフミラー19と、結像レンズ15と、視野絞りFS(視野絞り面10c)と、コレクタレンズG5と、拡散板G6と、位置変更可能な光源18とを有し、光源18は拡散板G6を含んでユニット化されている(以下、光源ユニット19と称する)。
【0031】
図6は、第2実施例に係る照明装置20´内の視野絞りFS(図5の視野絞り面10cに相当)から光源面LS(図5の光源18に相当)までの詳細を示すものであり、この構成はアフォーカルズーム光学系13のズーム倍率に応じて射出瞳位置を光源18の光源面LSと一致或いは極力近づけるように、光源ユニット19を移動させるように構成したものである。以下の表3に、第2実施例に係る照明装置20´を構成する視野絞りFS(図5の視野絞り面10cに相当)から光源面LS(図5の光源18に相当)までの各レンズの諸元値を示すが、面番号mに示す1〜4は、図6に示す符号1〜4に対応している。なお、この表3においても、アフォーカルズーム光学系13の倍率が1倍のときと、7.5倍のときの諸元を示している。
【0032】
(表3)
ズーム1倍時
m r d νd nd
d0=-37.500
1 ∞ 20.0000 FS
2 21.0000 3.0000 64.10 1.51680 G5
3 -21.0000 8.0000
4 ∞ 0.0000 LS

ズーム7.5倍時
m r d νd nd
d0=-476.000
1 ∞ 20.0000 FS
2 21.0000 3.0000 64.10 1.51680 G5
3 -21.0000 10.9000
4 ∞ 0.0000 LS
【0033】
この表3に示すように、アフォーカルズーム光学系13のズーム倍率が1倍のときは、視野絞り面FS(面番号1)の後方20mmの位置にコレクタレンズG5(面番号2,3)が配置され、コレクタレンズG5(面番号2,3)の後方8mmの位置に光源面LS(面番号4)が配置され、光源面LSと開口絞り12の像(射出瞳)とは完全に重なっている。また、ズーム倍率が7.5倍のときは、視野絞り面FS(面番号1)の後方20mmの位置にコレクタレンズG5(面番号2,3)が配置され、コレクタレンズG5(面番号2,3)の後方10.9mmの位置に光源面LS(面番号4)が配置され、光源面LSと開口絞り12の像(射出瞳)とは完全に重なっている。図6にズーム倍率が1倍のときとズーム倍率が7.5倍のときの、照明装置20´における視野絞りFSから光源面LSまでの光束の状態を示す。この図6からも明らかなように、アフォーカルズーム光学系13のズーム倍率が1倍のときもズーム倍率が7.5倍のときも光源面LSと射出瞳位置は完全に重なり、本実施例の照明装置20´において位置変更可能な光源ユニット19により補正されている。そのため、この第2実施例に係る照明装置20´を備えたズーム顕微鏡30によれば、アフォーカルズーム光学系13のズーム倍率によらずほぼケーラー照明状態となり、良好な照明を得ることができる。
【0034】
以上のように、本発明を分かりやすくするために実施形態の構成要件を付して説明したが、本発明がこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
10a 標本面
10c 視野絞り面
11 対物レンズ
12 開口絞り(対物レンズの瞳)
13 アフォーカルズーム光学系
15 反射照明系結像レンズ
16 フィールドレンズ
18 光源
19 光源ユニット
20,20´ 照明装置
30 ズーム顕微鏡
G5 コレクタレンズ
G6 拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本面から順に、対物レンズと、アフォーカルズーム光学系とを有し、前記アフォーカルズーム光学系の標本面側に前記対物レンズの瞳が位置するズーム顕微鏡において、前記アフォーカルズーム光学系及び前記対物レンズを介して前記標本面に照明光を照射する照明装置であって、
前記アフォーカルズーム光学系から光源側に向かって順に、
結像レンズと、
前記結像レンズによってできる標本共役面近傍に挿脱可能に配置されるフィールドレンズと、
コレクタレンズと、
光源とを有し、
前記アフォーカルズーム光学系のズーミングに起因して生じる、照明光学系の光源側に形成される射出瞳と前記光源との位置ずれを補正する前記フィールドレンズが挿脱可能に構成されることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
標本面から順に、対物レンズと、アフォーカルズーム光学系とを有し、前記アフォーカルズーム光学系の標本面側に前記対物レンズの瞳が位置するズーム顕微鏡において、前記アフォーカルズーム光学系及び前記対物レンズを介して前記標本面に照明光を照射する照明装置であって、
前記アフォーカルズーム光学系から光源側に向かって順に、
結像レンズと、
コレクタレンズと、
光源とを有し、
前記光源が、前記アフォーカルズーム光学系のズーミングによって生じる照明光学系の光源側に形成される射出瞳と略共役の位置になるように構成されたことを特徴とする照明装置。
【請求項3】
前記光源は、LED、ハロゲンランプ、及び、光ファイバの射出端のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光源は、拡散板を含んでユニット化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
標本面から順に、
対物レンズと、
アフォーカルズーム光学系と、
前記アフォーカルズーム光学系及び前記対物レンズを介して前記標本面に照明光を照射する請求項1〜4のいずれか一項に記載の照明装置とを有し、
前記アフォーカルズーム光学系の標本面側に前記対物レンズの瞳が位置し、
前記光源が、前記アフォーカルズーム光学系のズーミングによって生じる照明光学系の光源側に形成された射出瞳と略共役の位置になるように構成されたことを特徴とするズーム顕微鏡。
【請求項6】
前記対物レンズの瞳が、前記アフォーカルズーム光学系の標本面側に設けられた開口絞りであることを特徴とする請求項5に記載のズーム顕微鏡。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−242609(P2011−242609A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114764(P2010−114764)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】