説明

照明装置

【課題】平面的な広い照射面を横方向からムラなくかつ効率よく照明する。
【解決手段】LED11からなる光源からの光を制御して照射面4へ照射する複数の部分レンズからなる複合レンズ20を設け、これら部分レンズを、それぞれ照射面4の左右方向4Bに伸延し、かつ照射面4と交差する方向に連接して形成し、複合レンズ20の配光特性として、照射面4に対する俯仰角方向4Wにおいて、遠端部(下端部42)の方向に光度最大点を有し、当該ピークから照射面4側角度方向の俯角方向に対して徐々に光度が減衰し、当該ピークから照射面4側角度方向とは反対側角度方向の仰角方向に対して急激に光度が減衰する配光特性を持つようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明技術に関し、特に看板などの表示面、床面、地面、壁面などの平面的な照射面をその端部から横方向に照明する照明技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、看板などの平面的な広い照射面をその端部から横方向に照明する照明装置として、複数の投光器を表示面から離れた位置に配置し、それぞれの投光器で異なる領域を照明するものが提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
また、LEDの技術開発の進歩に伴い、高輝度で効率のよいLEDが安価に提供されつつあり、投光器に代えてLEDを光源とする照明装置を用いることも考えられる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−195790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来技術では、照射面をムラなくかつ効率よく照明するには、照射面からなるべく離れた位置に照明装置を配置する必要があるが、照射面から離れた位置に照明装置を配置した場合、照明装置を支持する支持アームなどの構成が必要となり、全体として重量が増加したり看板自体が不安定となる。
このような欠点を解決するため、照射面に近い位置に従来の照明装置を配置する構成が考えられる。しかし、従来の照明装置を照射面に近い位置に配置した場合、照射面をムラなくかつ効率よく照明できないという問題点があった。
【0005】
例えば照射面に近い位置に照明装置を配置した場合、照射面のうち照明装置に近い領域が極端に明るくなり遠い領域が暗くなるため、照射面にムラが生じる。また、照明装置で遠い領域を重点的に照明した場合、照射面から離れる方向にも光が照射されるため、効率よく照明できない。また、光源としてLEDを用いた場合、凸レンズを用いてLEDからの光を集光して照射した場合、LEDチップの形状配置に応じたムラ(影)が生じる。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、平面的な広い照射面を横方向からムラなくかつ効率よく照明する照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明にかかる照明装置は、看板などの表示面、床面、地面、壁面などの平面的な照射面の一端部に配置されて、照射面をその一端部から遠端部に向かって照明する照明装置であって、LEDからなる光源と、光源からの光を制御して照射面へ照射する複数の部分レンズがそれぞれ照射面の左右方向に伸延しかつ照射面と交差する方向に連接して形成された複合レンズとを備え、複合レンズは、照射面に対する俯仰角方向において、遠端部の方向に光度最大点を有し、当該ピークから照射面側角度方向に対して徐々に光度が減衰し、当該ピークから照射面側角度方向とは反対側角度方向に対して急激に光度が減衰する配光特性を有している。
【0007】
この際、部分レンズとして、光源から反対側角度方向に出射された光を反射屈折させて照射面上の遠端部側に位置する遠端領域へ照射するプリズムレンズを用いてもよい。
あるいは、部分レンズとして、光源からの光を拡散させて照射面の全域へ照射する凹レンズを用いてもよい。
あるいは、部分レンズとして、光源から照射面側角度方向に出射された光を反射屈折させて照射面の全域へ照射する凹面プリズムレンズを用いてもよい。
【0008】
また、各部分レンズを、凹レンズ、プリズムレンズ、凹面プリズムレンズ、平面プリズムレンズ、または前記光源より遠い位置に焦点を有する凸レンズのいずれかから構成してもよい。
また、凹面プリズムレンズを、光源からの光を屈折させる平面と、平面からの光を反射拡散させる凸面鏡の機能を持つ凹面と、凹面からの光を屈折して出射する平面とから構成してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、LEDからなる光源からの光を制御して照射面へ照射する複数の部分レンズからなる複合レンズを設け、これら部分レンズを、それぞれ照射面の左右方向に伸延し、かつ照射面と交差する方向に連接して形成し、複合レンズの配光特性として、照射面に対する俯仰角方向において、遠端部下端部の方向に光度最大点を有し、当該ピークから照射面側角度方向の俯角方向に対して徐々に光度が減衰し、当該ピークから照射面4側角度方向とは反対側角度方向の仰角方向に対して急激に光度が減衰する配光特性を持つようにしたので、平面的な広い照射面を横方向からムラなく照明することができるとともに、特に照射面とは反対側の仰角方向へ光をほとんど出射しないため効率よく照明することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1〜図5を参照して、本実施の形態にかかる照明装置について説明する。図1は、本実施の形態にかかる照明装置を示す外観図である。図2は、本実施の形態にかかる照明装置の正面図である。図3は、本実施の形態にかかる照明装置の底面図である。図4は本実施の形態にかかる照明装置のIV-IV断面図である。図5は、配光特性を示す説明図である。
【0011】
この照明装置1は、看板などの表示面、床面、地面、壁面などの平面的な照射面4の一端部に配置されて、照射面4に対して照射光5を照射することにより、照射面4をその一端部から遠端部に向けて照明する。
【0012】
以下では、図1に示すように、照明装置1を照射面4の一端部、ここでは看板などの表示板40の上端部41に配置し、一端部と対向する照射面4の遠端部、ここでは表示板40の下端部42に向けて照明する場合を例として説明する。この際、照射面4に沿って上端部(一端部)41から下端部(遠端部)42へ向かう方向を上下方向4Yと定義し、照射面4に沿って上下方向4Yと直交する方向すなわち照明装置1の長手方向を左右方向4Xと定義し、照射面4に直交する方向を直交方向4Zと定義する。また、上下方向4Yに対して俯角および仰角を持って交差する方向を俯仰角方向4Wという。
【0013】
照明装置1は、底面に矩形状の開口部1Bをする箱状の本体1Aと、この本体1Aの開口部1Bに取り付けられる底板1Cと、底板1Cに設けられた矩形状の透光部1Dと、本体1Aの内部配置されて、LED11からなる光源からの光を透光部1Dを介して装置外部の照射面4へ照射する光源部10とを備えている。
【0014】
光源部10は、チップ状の発光部12が形成されたLED11を実装する基板13と、LED11の発光部12に対向して基板に固定される複合レンズ20とから構成されている。
複合レンズ20は、LED11からなる光源からの光を制御して照射面4へ照射する複数の部分レンズからなり、これら部分レンズは、それぞれ照射面4の左右方向4Bに伸延し、かつ照射面4と交差する方法、例えば直交方向4Zまたは照射面4の略直交方向に連接して形成されている。
【0015】
本実施の形態は、複合レンズ20の配光特性として、図5に示すように、照射面4に対する俯仰角方向4Wにおいて、遠端部(下端部42)の方向に光度最大点を有し、当該ピークから照射面4側角度方向の俯角方向に対して徐々に光度が減衰し、当該ピークから照射面4側角度方向とは反対側角度方向の仰角方向に対して急激に光度が減衰する配光特性を有している。
【0016】
次に、図6および図7を参照して、本実施の形態にかかる照明装置の複合レンズの構成について説明する。図6は、複合レンズの構成を示す断面図である。図7は、複合レンズによる照度分布を示す説明図である。
複合レンズ20は、照射面4と交差する方向、ここでは直交方向4Zに連接された部分レンズ21〜25から構成されている。
【0017】
部分レンズ21は、複合レンズ20のうち照射面4から最も遠い位置、すなわち直交方向4Zにおいて先端部20A側に配置されたプリズムレンズからなる。図6の場合、プリズムレンズが鋸歯状に7つ連接して形成されている。
【0018】
部分レンズ21の場合、光源であるLED11の発光部12からの光をわずかに先端部20A側へ屈折させる平面21Aと、平面21Aからの光を遠端部22の方向へ全反射する平面鏡の機能を持つ平面21Bと、平面21Bからの光をわずかに照射面4側へ屈折させて出射する平面20Cとから構成されている。
これにより、光源であるLED11の発光部12から照射面4側角度方向とは反対側の角度方向に出射された光は、部分レンズ21により反射屈折して、照射面4上の遠端部側に位置する照射領域31へ照射される。
【0019】
部分レンズ22は、直交方向4Zにおいて複合レンズ20のほぼ中央の位置に部分レンズ21と連接して形成されている。この部分レンズ22は、平面22Aと平面20Cから構成された平面プリズムからなり、発光部12からの光が照射面4の方向へ屈折するよう平面22Aに角度が設けられている。この平面22Aとして、角度の異なる複数の平面から構成してもよい。
これにより、発光部12から照射面4側角度方向とは反対側の角度方向に出射された光は、部分レンズ22により屈折して、照射面4上の遠端部側に位置する照射領域32へ照射される。したがって、部分レンズ21,22の照射領域31,32が重なるため、比較的照度が不足しやすい照射面4の遠端部22付近を明るく照明することができる。
【0020】
部分レンズ23は、直交方向4Zにおいて複合レンズ20のほぼ中央の位置に部分レンズ22と連接して形成されている。この部分レンズ23は、凹面23Aと平面20Cから構成された凹面レンズからなり、発光部12からの光が照射面4の方向へ屈折するよう凹面23A全体に角度が設けられている。
これにより、発光部12から照射面4側角度方向とは反対側の角度方向に出射された光は、部分レンズ23により拡散されて、照射面4上のほぼ全域にわたる照射領域33へ照射され、比較的照度が超過しやすい照射面4の一端部41付近の照度を抑えることができる。
【0021】
部分レンズ24は、直交方向4Zにおいて複合レンズ20のほぼ中央の位置に部分レンズ23と連接して形成されている。この部分レンズ22は、平面24A、平面24B、および平面20Cから構成された平面プリズムレンズからなり、発光部12から照射面4側角度方向に出射された光が照射面4の方向へ屈折するよう平面24Aおよび平面24Bに角度が設けられている。
これにより、発光部12から照射面4側角度方向に出射された光は、部分レンズ24により屈折して、照射面4上のほぼ全域にわたる照射領域34へ照射される。
【0022】
なお、部分レンズ24としては、平面プリズムレンズに代えて、光源であるLED11より遠い位置に焦点を有する凸レンズを用いてもよい。この場合、平面24Aに代えて凸面を設け、この凸面と平面20Cとから光源より遠い位置に焦点を有する凸レンズ、すなわち像を結ばない凸レンズを形成すればよい。これにより、発光部12から照射面4側角度方向に出射された光は、部分レンズ24により屈折して、照射面4上のほぼ全域にわたる照射領域34へ照射される。
【0023】
部分レンズ25は、直交方向4Zにおいて複合レンズ20の中央から末端部20B側の位置に部分レンズ24と連接して形成されている。この部分レンズ25は、凹面24Aと平面20Cから構成された凹面レンズからなり、発光部12から照射面4側角度方向に出射された光が照射面4の方向へ屈折するよう凹面24A全体に角度が設けられている。
これにより、発光部12から照射面4側角度方向に出射された光は、部分レンズ24により拡散されて、照射面4上のほぼ全域にわたる照射領域35へ照射され、比較的照度が超過しやすい照射面4の一端部2141付近の照度を抑えることができる。
【0024】
部分レンズ26は、複合レンズ20のうち照射面4から最も近い位置、すなわち直交方向4Zにおいて末端部20B側に部分レンズ25と連接して配置された凹面プリズムレンズからなる。図6の場合、凹面プリズムレンズが鋸歯状に2つ連接して形成されている。
凹面プリズムレンズは、2つの平面と1つの凹面とから形成されるプリズムレンズである。部分レンズ26の場合、光源であるLED11の発光部12からの光をわずかに末端部20B側へ屈折させる平面26Aと、平面26Aからの光を全反射して遠くから遠端部22の方向へ拡散させる凸面鏡の機能を持つ凹面26Bと、凹面26Bからの光を照射面4側へ屈折させて出射する平面20Cとから構成されている。
【0025】
これにより、発光部12から照射面4側角度方向、特に上端部41近傍の角度方向へ出射された光は、部分レンズ26により反射屈折して、照射面4上のほぼ全域にわたる照射領域36へ照射され、比較的照度が超過しやすい照射面4の一端部41付近の照度を抑えることができる。
【0026】
このように、本実施の形態では、LED11からなる光源からの光を制御して照射面4へ照射する複数の部分レンズからなる複合レンズ20を設け、これら部分レンズを、それぞれ照射面4の左右方向4Bに伸延し、かつ照射面4と交差する方向に連接して形成し、複合レンズ20の配光特性として、図5に示すように、照射面4に対する俯仰角方向4Wにおいて、遠端部(下端部42)の方向に光度最大点を有し、当該ピークから照射面4側角度方向の俯角方向に対して徐々に光度が減衰し、当該ピークから照射面4側角度方向とは反対側角度方向の仰角方向に対して急激に光度が減衰する配光特性を持つようにしたので、平面的な広い照射面を横方向からムラなく照明することができるとともに、特に照射面とは反対側の仰角方向へ光をほとんど出射しないため効率よく照明することができる。。
【0027】
また、光源がLED11の場合、凸レンズなどの結像機能を有するレンズを用いた場合には、発光部12の形状に応じた影がムラとして照射面4上に表れる。特に、1つのLED11に対して複数の発光部12が直線状あるいはマトリクス状に配置されている場合もあり、発光部12の境目がムラとして照射面4上に表れる。
本実施の形態では、複合レンズ20を構成する各部分レンズ21〜26として、凹レンズ、凹面プリズムレンズ、平面プリズムレンズ、または光源より遠い位置に焦点を有する凸レンズのいずれかを用いるようにしたので、発光部12からの光が拡散されるため、発光部12の形状に応じた影や境目がムラとして照射面4上に表れにくくなり、照射面4を均等に美しく照明することができる。
【0028】
[実施の形態の拡張]
以上では、照明装置1を看板などの表示板40の上端部41に配置し、表示板40の下端部42に向けて照明する場合を例として説明したが、表示板4に対する照明装置1の配置位置はこれに限定されるものではなく、下端部42や左右の側端部に配置してもよく、前述と同様の作用効果が得られる。
また、照明装置1は、表示板40の照明に限定されるものではなく、床面、地面、壁面などの平面的な照射面を照射してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる照明装置を示す外観図である。
【図2】本発明の一実施の形態にかかる照明装置の正面図である。
【図3】本発明の一実施の形態にかかる照明装置の底面図である。
【図4】本発明の一実施の形態にかかる照明装置IV-IV断面図である。
【図5】配光特性を示す説明図である。
【図6】複合レンズの構成を示す断面図である。
【図7】複合レンズによる照度分布を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1…照明装置、1A…本体、1B…開口部、1C…底板、1D…透光部、10…光源部、11…LED、12…発光部、13…基板、20…複合レンズ、20A…先端部、20B…末端部、21〜26…部分レンズ、31〜36…照射領域、40…表示板、41…上端部、42…下端部、4…照射面、4W…俯仰角方向、4X…左右方向、4Y…上下方向、4Z…直交方向、5…照射光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
看板などの表示面、床面、地面、壁面などの平面的な照射面の一端部に配置されて、前記照射面をその一端部から遠端部に向かって照明する照明装置であって、
LEDからなる光源と、前記光源からの光を制御して前記照射面へ照射する複数の部分レンズがそれぞれ前記照射面の左右方向に伸延しかつ前記照射面と交差する方向に連接して形成された複合レンズとを備え、
前記複合レンズは、前記照射面に対する俯仰角方向において、前記遠端部の方向に光度最大点を有し、当該ピークから照射面側角度方向に対して徐々に光度が減衰し、当該ピークから照射面側角度方向とは反対側角度方向に対して急激に光度が減衰する配光特性を有する
ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、
前記複合レンズは、前記部分レンズとして、前記光源から前記反対側角度方向に出射された光を反射屈折させて前記照射面上の遠端部側に位置する遠端領域へ照射するプリズムレンズを有することを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項1に記載の照明装置において、
前記複合レンズは、前記部分レンズとして、前記光源からの光を拡散させて前記照射面の全域へ照射する凹レンズを有することを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項1に記載の照明装置において、
前記複合レンズは、前記部分レンズとして、前記光源から前記照射面側角度方向に出射された光を反射屈折させて前記照射面の全域へ照射する凹面プリズムレンズを有することを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項1に記載の照明装置において、
前記部分レンズは、凹レンズ、プリズムレンズ、凹面プリズムレンズ、平面プリズムレンズ、または前記光源より遠い位置に焦点を有する凸レンズのいずれかからなることを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項4または5のいずれかに記載の照明装置において、
前記凹面プリズムレンズは、前記光源からの光を屈折させる平面と、前記平面からの光を反射拡散させる凸面鏡の機能を持つ凹面と、前記凹面からの光を屈折して出射する平面とを有することを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−153154(P2008−153154A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342475(P2006−342475)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】