熱交換器
【課題】熱交換性能を向上と通水抵抗の上昇抑制の両立を図ることができる熱交換器を提供すること。
【解決手段】複数のチューブ(伝熱促進部分付チューブ5A、平滑チューブ5B)とフィン6とを積層して形成した熱交換面1と、エンジン冷却水20を流入する流入口2と、エンジン冷却水20を流出する流出口3と、を備えたヒータコア100において、熱交換面1は、平滑チューブ5Bの前記エンジン冷却水20と接触する内面を平滑に形成した領域である平滑熱交換領域と、伝熱促進部分付チューブ5Aのエンジン冷却水20と接触する内面に伝熱促進部分7、7’を形成した領域である伝熱促進熱交換領域と、を備えた。
【解決手段】複数のチューブ(伝熱促進部分付チューブ5A、平滑チューブ5B)とフィン6とを積層して形成した熱交換面1と、エンジン冷却水20を流入する流入口2と、エンジン冷却水20を流出する流出口3と、を備えたヒータコア100において、熱交換面1は、平滑チューブ5Bの前記エンジン冷却水20と接触する内面を平滑に形成した領域である平滑熱交換領域と、伝熱促進部分付チューブ5Aのエンジン冷却水20と接触する内面に伝熱促進部分7、7’を形成した領域である伝熱促進熱交換領域と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチューブとフィンとを積層して形成した熱交換面を備えた熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乱流熱伝達を促進する平滑熱交換領域を目的とし、熱交換用のチューブのうち熱交換媒体と接触する内面に、内側に向けて突出する複数の突部を形成するように構成し、チューブ内を流通する熱交換媒体が突部によって攪拌作用を受けて乱流し、流路面積が大きくなるように設定した熱交換器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−205783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている従来の熱交換器にあっては、熱交換媒体とチューブの内面との接触面積が大きくなるように構成されているため、通水抵抗が大きくなる。これにより、熱交換媒体を流通させる循環ポンプの流体駆動力が一定である場合には、熱交換媒体の流量が減り、熱交換性能の向上の妨げとなる、という問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、熱交換性能の向上と通水抵抗の上昇抑制の両立を図ることができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、複数のチューブとフィンとを積層して形成した熱交換面と、熱交換媒体を流入する流入口と、前記熱交換媒体を流出する流出口と、を備えた熱交換器において、
前記熱交換面は、前記チューブのうち前記熱交換媒体と接触する内面を平滑に形成した領域である平滑熱交換領域と、前記チューブのうち前記熱交換媒体と接触する内面に伝熱促進部分を形成した領域である伝熱促進熱交換領域と、を備えたことを特徴する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱交換器にあっては、熱交換面に伝熱促進熱交換領域と平滑熱交換領域とのいずれの領域も備えるように構成したため、熱伝達媒体が伝熱促進熱交換領域を流通する際には、熱伝達媒体が伝熱促進部分と接触してチューブの内面との接触面積が大きくなり、同時に乱流が起きることで、全面的に平滑熱交換領域とした場合に比べ、熱交換性能が向上する。
さらに、この効果に加え、平滑熱交換領域は通水抵抗が低いため、全面的に伝熱促進熱交換領域とした場合に比べ、熱交換面全体としての通水抵抗の上昇が抑えられる。
この結果、熱交換性能の向上と通水抵抗の上昇抑制の両立を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の熱交換器を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1のヒータコア100(熱交換器の一例)を示す斜視図であり、図2(a)は、図1のヒータコア100の側面図であり、図2(b)は、図1のヒータコア100の正面図である。以下、図1および図2に基づいて、ヒータコア100の全体構成を説明する。
【0009】
実施例1におけるヒータコア100は、熱交換媒体を車載熱源からの高熱媒体とする車両用空調ユニットに内蔵されるものであり、図1および図2に示すように、熱交換面1と、流入口2と、流出口3と、入口側タンク部4aと、出口側タンク部4bと、連通タンク部4cと、を備えている。
【0010】
前記熱交換面1は、図2に示すように、その全面を流入口側領域Aと流出口側領域Bとの2つの領域に分け、かつ、流入口側領域Aを伝熱促進部分付チューブ5Aとフィン6とを積層して形成し、流出口側領域Bを平滑チューブ5Bとフィン6とを積層して形成した。なお、伝熱促進部分付チューブ5Aとフィン6とを積層して形成した領域を伝熱促進熱交換領域と呼び、平滑チューブ5Bとフィン6とを積層して形成した領域を平滑熱交換領域と呼ぶことにする。
【0011】
前記入口側タンク部4aおよび前記出口側タンク部4bは、熱交換面1の片側側面に備えられたタンクに隔壁9を設けることで分けられている。前記流入口2は、入口側タンク部4aの上部(ヒータコア100の片側側面の中央部)に設けられ、熱交換媒体を流入する。前記流出口3は、出口側タンク部4bの上部(ヒータコア100の片側側面の上部)に設けられ、熱交換媒体を流出する。
【0012】
図3は、図2(b)の伝熱促進部分付チューブ5Aの構成を説明するための拡大斜視図であり、図4は、図2(b)の平滑チューブ5Bの構成を説明するための拡大斜視図であり、図5は、図3の伝熱促進部分付チューブ5Aの上面図であり、図6は、図4の平滑チューブ5Bの上面図であり、図7は、図3の伝熱促進部分チューブ5Aの側面図であり、図8は、図4の平滑チューブ5Bの側面図である。以下、図3乃至図8に基づいて、伝熱促進部分付チューブ5Aおよび平滑チューブ5Bの詳細な構成について説明する。
【0013】
前記伝熱促進部分付チューブ5Aは、エンジン冷却水20(熱交換媒体の一例)と接触する内面に、例えば、ディンプル加工により内側に向けて突出するように設けられた伝熱促進部分7、7’を所定の間隔毎に形成した。ここで、伝熱促進部分7は、エンジン冷却水20と接触する内面のうち上部に形成された凹みであり、伝熱促進部分7’は、エンジン冷却水20と接触する内面のうち下部に形成された凹みである。
また、エンジン冷却水20が流通する流路は、中央に設けられた仕切り8Aにより区切られて、さらに、この仕切り8Aには、図7に示すように、突出部8A’が形成されている。
【0014】
前記平滑チューブ5Bは、エンジン冷却水20と接触する内面を平滑に形成した。また、エンジン冷却水20が流通する流路は、図7に示すように、中央に設けられた仕切り8Bにより区切られている。
【0015】
次に、作用を説明する。
【0016】
[ヒータコアによる熱交換作用]
図9は、ヒータコア100の内部を流通するエンジン冷却水20の流れを示す説明図である。
【0017】
実施例1に係るヒータコア100にあっては、図9に示すように、流入口2から流入したエンジン冷却水20は、入口側タンク部4aに流れ、矢印で示すように流入口側領域Aを流通する。そして、連通タンク部4cに流れたエンジン冷却水20は、その後、流出口側領域Bを流通して出口側タンク部4bに流れ、流出口3から流出する。
この流入口側領域Aおよび流出口側領域Bを高温のエンジン冷却水20が流通する際に、熱交換面1を通過する風とエンジン冷却水20との間で熱交換が行なわれることにより、風を暖めることができる。
【0018】
[現行のヒータコアとの比較作用]
図10は、熱交換面全面が平滑熱交換領域の場合、全面が平滑熱交換領域と伝熱促進熱交換領域とに分かれた場合、全面が伝熱促進熱交換領域の場合における、エンジン冷却水量と放熱量との関係を比較したグラフ図であり、図11は、熱交換面全面が平滑熱交換領域の場合、全面が平滑熱交換領域と伝熱促進熱交換領域とに分かれた場合、全面が伝熱促進熱交換領域の場合における、エンジン冷却水量と通水抵抗との関係を比較したグラフ図である。
【0019】
現行のヒータコアは、流入口側領域を形成するチューブと流出口側領域を形成するチューブとを同一のものに設定している。すなわち、熱交換面の全面が平滑熱交換領域、又は、伝熱促進熱交換領域として設定されている。
【0020】
この現行のヒータコアのように、熱交換面の全面が平滑熱交換領域である場合には、図11のグラフD1に示すように、通水抵抗を低くすることができるが、一方、図10のグラフC1に示すように、放熱性能が低くなるため、熱交換性能を発揮することができない。
また、熱交換面の全面が伝熱促進熱交換領域である場合には、図10のグラフC3に示すように、放熱性能を高くすることができるが、一方、図11のグラフD3に示すように、通水抵抗が高くなるため、エンジン冷却水を流通させる循環ポンプの流体駆動力が一定である場合にはエンジン冷却水量が減り、熱交換性能の向上の妨げとなる。
【0021】
これに対し、実施例1のヒータコア100にあっては、熱交換面1のうち、流入口側領域Aを伝熱促進熱交換領域に、流出口側領域Bを平滑熱交換領域に設定した。
このような構成により、伝熱促進熱交換領域においては、チューブ5Aの内面に形成された伝熱促進部分7、7’、エンジン冷却水20の流路の中央に設けられた仕切り8A、および、突出部8A’が、チューブ5Aの内部を流通するエンジン冷却水20と接触するため、これらの接触面積が大きくなると同時に乱流が起き、全面的に平滑熱交換領域とした場合に比べて熱交換性能を向上させることができる。
【0022】
特に、流入口側領域Aは、流出口側領域Bと比較し、流通するエンジン冷却水20の温度が高く、通過する空気との温度差が大きい。このため、レイノルズ数が高くエンジン冷却水20と空気との間で熱交換が行われ易い。
実施例1のヒータコア100にあっては、このようなレイノルズ数の高い流入口側領域Aを伝熱促進熱交換領域と設定したため、図10のグラフC2に示すように、グラフC1とグラフC3との中間の値よりも多くの熱量を放熱し、熱交換性能をより一層高めることができる。
【0023】
また、実施例1のヒータコア100にあっては、熱交換面1の全体を伝熱促進熱交換領域に設定するのではなく、流出口側領域Bを平滑熱交換領域と設定したため、図11のグラフD2に示すように、通水抵抗は、グラフD1とグラフD3との略中間の値を示すことになる。
【0024】
次に、効果を説明する。
実施例1のヒータコアにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0025】
(1) 複数のチューブ(伝熱促進部分付チューブ5A、平滑チューブ5B)とフィン6とを積層して形成した熱交換面1と、エンジン冷却水20(熱交換媒体)を流入する流入口2と、前記エンジン冷却水20を流出する流出口3と、を備えたヒータコア100(熱交換器)において、前記熱交換面1は、平滑チューブ5Bの前記エンジン冷却水20と接触する内面を平滑に形成した領域である平滑熱交換領域と、伝熱促進部分付チューブ5Aの前記エンジン冷却水20と接触する内面に伝熱促進部分7、7’を形成した領域である伝熱促進熱交換領域と、を備えた。このため、熱交換性能の向上と通水抵抗の上昇抑制の両立を図ることができる。
【0026】
(2) 前記熱交換面1は、前記伝熱促進熱交換領域を前記エンジン冷却水20が流入する流入口2側に設定したため、熱交換性能をより一層高めることができる。
【0027】
(3) 前記熱交換面1は、その全面を流入口側領域Aと流出口側領域Bとの2つの領域に分け、前記流入口側領域Aを前記伝熱促進熱交換領域に設定し、前記流出口側領域Bを前記平滑熱交換領域に設定した。このため、例えば、実装されている横列フィンタイプのヒータコアの基本構造を大きく変えることなく、伝熱促進部分付チューブ5Aを流入口側領域Aに、平滑チューブ5Bを流出口側領域Bに設定するという簡単な変更のみで、熱交換性能の向上と通水抵抗の上昇抑制の両立を図ることができる。
【0028】
(4) 前記熱交換器は、前記エンジン冷却水20を車載熱源からの高熱媒体とする車両用空調ユニットに内蔵されるヒータコア100とし、前記ヒータコア100は、片側側面の中央部に前記流入口2を、上部に前記流出口3を設定し、流入口側領域A(下側領域)を熱交換領域に、流出口側領域B(上側領域)を平滑熱交換領域に設定した。実装されている横列フィンタイプのヒータコアは、熱交換性能を高めるために上下の2層に分かれて構成されており、この構成に加えて、これら2層を伝熱促進熱交換領域と平滑熱交換領域とに設定することにより、熱交換性能をさらに高めることができる。
【0029】
以上、本発明の熱交換器を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0030】
例えば、実施例1では、エンジン冷却水20を使用する例を示したが、エンジン冷却水に限らず、熱交換媒体であれば良い。つまり、エンジンを搭載していない車両用空調ユニットに内蔵される熱交換器についても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
実施例1では、熱交換器はエンジン冷却水を車載熱源からの高熱媒体とする車両用空調ユニットに内蔵されるヒータコアとする適用例を示したが、本発明に係る熱交換器は、このようなヒータコアに限らず、例えば、エバポレータに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1のヒータコア100(熱交換器の一例)を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1のヒータコア100の側面図であり、(b)は図1のヒータコア100の正面図である。
【図3】図2(b)の伝熱促進部分付チューブ5Aの構成を説明するための拡大斜視図である。
【図4】図2(b)の平滑チューブ5Bの構成を説明するための拡大斜視図である。
【図5】図3の伝熱促進部分付チューブ5Aの上面図である。
【図6】図4の平滑チューブ5Bの上面図である。
【図7】図3の伝熱促進部分付チューブ5Aの側面図である。
【図8】図4の平滑チューブ5Bの側面図である。
【図9】現行の空調ユニットにおいて、ヒータコアの内部を流通するエンジン冷却水の流れを示す説明図である。
【図10】熱交換面全面が平滑熱交換領域の場合、全面が平滑熱交換領域と伝熱促進熱交換領域とに分かれた場合、全面が伝熱促進熱交換領域の場合における、エンジン冷却水量と放熱量との関係を比較したグラフ図である。
【図11】熱交換面全面が平滑熱交換領域の場合、全面が平滑熱交換領域と伝熱促進熱交換領域とに分かれた場合、全面が伝熱促進熱交換領域の場合における、エンジン冷却水量と通水抵抗との関係を比較したグラフ図である。
【符号の説明】
【0033】
1 熱交換面
2 流入口
3 流出口
4a 入口側タンク部
4b 出口側タンク部
4c 連通タンク部
5A 伝熱促進部分付チューブ
5B 平滑チューブ
6 フィン
9 隔壁
100 ヒータコア
A 流入口側領域
B 流出口側領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチューブとフィンとを積層して形成した熱交換面を備えた熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乱流熱伝達を促進する平滑熱交換領域を目的とし、熱交換用のチューブのうち熱交換媒体と接触する内面に、内側に向けて突出する複数の突部を形成するように構成し、チューブ内を流通する熱交換媒体が突部によって攪拌作用を受けて乱流し、流路面積が大きくなるように設定した熱交換器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−205783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている従来の熱交換器にあっては、熱交換媒体とチューブの内面との接触面積が大きくなるように構成されているため、通水抵抗が大きくなる。これにより、熱交換媒体を流通させる循環ポンプの流体駆動力が一定である場合には、熱交換媒体の流量が減り、熱交換性能の向上の妨げとなる、という問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、熱交換性能の向上と通水抵抗の上昇抑制の両立を図ることができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、複数のチューブとフィンとを積層して形成した熱交換面と、熱交換媒体を流入する流入口と、前記熱交換媒体を流出する流出口と、を備えた熱交換器において、
前記熱交換面は、前記チューブのうち前記熱交換媒体と接触する内面を平滑に形成した領域である平滑熱交換領域と、前記チューブのうち前記熱交換媒体と接触する内面に伝熱促進部分を形成した領域である伝熱促進熱交換領域と、を備えたことを特徴する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱交換器にあっては、熱交換面に伝熱促進熱交換領域と平滑熱交換領域とのいずれの領域も備えるように構成したため、熱伝達媒体が伝熱促進熱交換領域を流通する際には、熱伝達媒体が伝熱促進部分と接触してチューブの内面との接触面積が大きくなり、同時に乱流が起きることで、全面的に平滑熱交換領域とした場合に比べ、熱交換性能が向上する。
さらに、この効果に加え、平滑熱交換領域は通水抵抗が低いため、全面的に伝熱促進熱交換領域とした場合に比べ、熱交換面全体としての通水抵抗の上昇が抑えられる。
この結果、熱交換性能の向上と通水抵抗の上昇抑制の両立を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の熱交換器を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1のヒータコア100(熱交換器の一例)を示す斜視図であり、図2(a)は、図1のヒータコア100の側面図であり、図2(b)は、図1のヒータコア100の正面図である。以下、図1および図2に基づいて、ヒータコア100の全体構成を説明する。
【0009】
実施例1におけるヒータコア100は、熱交換媒体を車載熱源からの高熱媒体とする車両用空調ユニットに内蔵されるものであり、図1および図2に示すように、熱交換面1と、流入口2と、流出口3と、入口側タンク部4aと、出口側タンク部4bと、連通タンク部4cと、を備えている。
【0010】
前記熱交換面1は、図2に示すように、その全面を流入口側領域Aと流出口側領域Bとの2つの領域に分け、かつ、流入口側領域Aを伝熱促進部分付チューブ5Aとフィン6とを積層して形成し、流出口側領域Bを平滑チューブ5Bとフィン6とを積層して形成した。なお、伝熱促進部分付チューブ5Aとフィン6とを積層して形成した領域を伝熱促進熱交換領域と呼び、平滑チューブ5Bとフィン6とを積層して形成した領域を平滑熱交換領域と呼ぶことにする。
【0011】
前記入口側タンク部4aおよび前記出口側タンク部4bは、熱交換面1の片側側面に備えられたタンクに隔壁9を設けることで分けられている。前記流入口2は、入口側タンク部4aの上部(ヒータコア100の片側側面の中央部)に設けられ、熱交換媒体を流入する。前記流出口3は、出口側タンク部4bの上部(ヒータコア100の片側側面の上部)に設けられ、熱交換媒体を流出する。
【0012】
図3は、図2(b)の伝熱促進部分付チューブ5Aの構成を説明するための拡大斜視図であり、図4は、図2(b)の平滑チューブ5Bの構成を説明するための拡大斜視図であり、図5は、図3の伝熱促進部分付チューブ5Aの上面図であり、図6は、図4の平滑チューブ5Bの上面図であり、図7は、図3の伝熱促進部分チューブ5Aの側面図であり、図8は、図4の平滑チューブ5Bの側面図である。以下、図3乃至図8に基づいて、伝熱促進部分付チューブ5Aおよび平滑チューブ5Bの詳細な構成について説明する。
【0013】
前記伝熱促進部分付チューブ5Aは、エンジン冷却水20(熱交換媒体の一例)と接触する内面に、例えば、ディンプル加工により内側に向けて突出するように設けられた伝熱促進部分7、7’を所定の間隔毎に形成した。ここで、伝熱促進部分7は、エンジン冷却水20と接触する内面のうち上部に形成された凹みであり、伝熱促進部分7’は、エンジン冷却水20と接触する内面のうち下部に形成された凹みである。
また、エンジン冷却水20が流通する流路は、中央に設けられた仕切り8Aにより区切られて、さらに、この仕切り8Aには、図7に示すように、突出部8A’が形成されている。
【0014】
前記平滑チューブ5Bは、エンジン冷却水20と接触する内面を平滑に形成した。また、エンジン冷却水20が流通する流路は、図7に示すように、中央に設けられた仕切り8Bにより区切られている。
【0015】
次に、作用を説明する。
【0016】
[ヒータコアによる熱交換作用]
図9は、ヒータコア100の内部を流通するエンジン冷却水20の流れを示す説明図である。
【0017】
実施例1に係るヒータコア100にあっては、図9に示すように、流入口2から流入したエンジン冷却水20は、入口側タンク部4aに流れ、矢印で示すように流入口側領域Aを流通する。そして、連通タンク部4cに流れたエンジン冷却水20は、その後、流出口側領域Bを流通して出口側タンク部4bに流れ、流出口3から流出する。
この流入口側領域Aおよび流出口側領域Bを高温のエンジン冷却水20が流通する際に、熱交換面1を通過する風とエンジン冷却水20との間で熱交換が行なわれることにより、風を暖めることができる。
【0018】
[現行のヒータコアとの比較作用]
図10は、熱交換面全面が平滑熱交換領域の場合、全面が平滑熱交換領域と伝熱促進熱交換領域とに分かれた場合、全面が伝熱促進熱交換領域の場合における、エンジン冷却水量と放熱量との関係を比較したグラフ図であり、図11は、熱交換面全面が平滑熱交換領域の場合、全面が平滑熱交換領域と伝熱促進熱交換領域とに分かれた場合、全面が伝熱促進熱交換領域の場合における、エンジン冷却水量と通水抵抗との関係を比較したグラフ図である。
【0019】
現行のヒータコアは、流入口側領域を形成するチューブと流出口側領域を形成するチューブとを同一のものに設定している。すなわち、熱交換面の全面が平滑熱交換領域、又は、伝熱促進熱交換領域として設定されている。
【0020】
この現行のヒータコアのように、熱交換面の全面が平滑熱交換領域である場合には、図11のグラフD1に示すように、通水抵抗を低くすることができるが、一方、図10のグラフC1に示すように、放熱性能が低くなるため、熱交換性能を発揮することができない。
また、熱交換面の全面が伝熱促進熱交換領域である場合には、図10のグラフC3に示すように、放熱性能を高くすることができるが、一方、図11のグラフD3に示すように、通水抵抗が高くなるため、エンジン冷却水を流通させる循環ポンプの流体駆動力が一定である場合にはエンジン冷却水量が減り、熱交換性能の向上の妨げとなる。
【0021】
これに対し、実施例1のヒータコア100にあっては、熱交換面1のうち、流入口側領域Aを伝熱促進熱交換領域に、流出口側領域Bを平滑熱交換領域に設定した。
このような構成により、伝熱促進熱交換領域においては、チューブ5Aの内面に形成された伝熱促進部分7、7’、エンジン冷却水20の流路の中央に設けられた仕切り8A、および、突出部8A’が、チューブ5Aの内部を流通するエンジン冷却水20と接触するため、これらの接触面積が大きくなると同時に乱流が起き、全面的に平滑熱交換領域とした場合に比べて熱交換性能を向上させることができる。
【0022】
特に、流入口側領域Aは、流出口側領域Bと比較し、流通するエンジン冷却水20の温度が高く、通過する空気との温度差が大きい。このため、レイノルズ数が高くエンジン冷却水20と空気との間で熱交換が行われ易い。
実施例1のヒータコア100にあっては、このようなレイノルズ数の高い流入口側領域Aを伝熱促進熱交換領域と設定したため、図10のグラフC2に示すように、グラフC1とグラフC3との中間の値よりも多くの熱量を放熱し、熱交換性能をより一層高めることができる。
【0023】
また、実施例1のヒータコア100にあっては、熱交換面1の全体を伝熱促進熱交換領域に設定するのではなく、流出口側領域Bを平滑熱交換領域と設定したため、図11のグラフD2に示すように、通水抵抗は、グラフD1とグラフD3との略中間の値を示すことになる。
【0024】
次に、効果を説明する。
実施例1のヒータコアにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0025】
(1) 複数のチューブ(伝熱促進部分付チューブ5A、平滑チューブ5B)とフィン6とを積層して形成した熱交換面1と、エンジン冷却水20(熱交換媒体)を流入する流入口2と、前記エンジン冷却水20を流出する流出口3と、を備えたヒータコア100(熱交換器)において、前記熱交換面1は、平滑チューブ5Bの前記エンジン冷却水20と接触する内面を平滑に形成した領域である平滑熱交換領域と、伝熱促進部分付チューブ5Aの前記エンジン冷却水20と接触する内面に伝熱促進部分7、7’を形成した領域である伝熱促進熱交換領域と、を備えた。このため、熱交換性能の向上と通水抵抗の上昇抑制の両立を図ることができる。
【0026】
(2) 前記熱交換面1は、前記伝熱促進熱交換領域を前記エンジン冷却水20が流入する流入口2側に設定したため、熱交換性能をより一層高めることができる。
【0027】
(3) 前記熱交換面1は、その全面を流入口側領域Aと流出口側領域Bとの2つの領域に分け、前記流入口側領域Aを前記伝熱促進熱交換領域に設定し、前記流出口側領域Bを前記平滑熱交換領域に設定した。このため、例えば、実装されている横列フィンタイプのヒータコアの基本構造を大きく変えることなく、伝熱促進部分付チューブ5Aを流入口側領域Aに、平滑チューブ5Bを流出口側領域Bに設定するという簡単な変更のみで、熱交換性能の向上と通水抵抗の上昇抑制の両立を図ることができる。
【0028】
(4) 前記熱交換器は、前記エンジン冷却水20を車載熱源からの高熱媒体とする車両用空調ユニットに内蔵されるヒータコア100とし、前記ヒータコア100は、片側側面の中央部に前記流入口2を、上部に前記流出口3を設定し、流入口側領域A(下側領域)を熱交換領域に、流出口側領域B(上側領域)を平滑熱交換領域に設定した。実装されている横列フィンタイプのヒータコアは、熱交換性能を高めるために上下の2層に分かれて構成されており、この構成に加えて、これら2層を伝熱促進熱交換領域と平滑熱交換領域とに設定することにより、熱交換性能をさらに高めることができる。
【0029】
以上、本発明の熱交換器を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0030】
例えば、実施例1では、エンジン冷却水20を使用する例を示したが、エンジン冷却水に限らず、熱交換媒体であれば良い。つまり、エンジンを搭載していない車両用空調ユニットに内蔵される熱交換器についても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
実施例1では、熱交換器はエンジン冷却水を車載熱源からの高熱媒体とする車両用空調ユニットに内蔵されるヒータコアとする適用例を示したが、本発明に係る熱交換器は、このようなヒータコアに限らず、例えば、エバポレータに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1のヒータコア100(熱交換器の一例)を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1のヒータコア100の側面図であり、(b)は図1のヒータコア100の正面図である。
【図3】図2(b)の伝熱促進部分付チューブ5Aの構成を説明するための拡大斜視図である。
【図4】図2(b)の平滑チューブ5Bの構成を説明するための拡大斜視図である。
【図5】図3の伝熱促進部分付チューブ5Aの上面図である。
【図6】図4の平滑チューブ5Bの上面図である。
【図7】図3の伝熱促進部分付チューブ5Aの側面図である。
【図8】図4の平滑チューブ5Bの側面図である。
【図9】現行の空調ユニットにおいて、ヒータコアの内部を流通するエンジン冷却水の流れを示す説明図である。
【図10】熱交換面全面が平滑熱交換領域の場合、全面が平滑熱交換領域と伝熱促進熱交換領域とに分かれた場合、全面が伝熱促進熱交換領域の場合における、エンジン冷却水量と放熱量との関係を比較したグラフ図である。
【図11】熱交換面全面が平滑熱交換領域の場合、全面が平滑熱交換領域と伝熱促進熱交換領域とに分かれた場合、全面が伝熱促進熱交換領域の場合における、エンジン冷却水量と通水抵抗との関係を比較したグラフ図である。
【符号の説明】
【0033】
1 熱交換面
2 流入口
3 流出口
4a 入口側タンク部
4b 出口側タンク部
4c 連通タンク部
5A 伝熱促進部分付チューブ
5B 平滑チューブ
6 フィン
9 隔壁
100 ヒータコア
A 流入口側領域
B 流出口側領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチューブとフィンとを積層して形成した熱交換面と、熱交換媒体を流入する流入口と、前記熱交換媒体を流出する流出口と、を備えた熱交換器において、
前記熱交換面は、前記チューブのうち前記熱交換媒体と接触する内面を平滑に形成した領域である平滑熱交換領域と、前記チューブのうち前記熱交換媒体と接触する内面に伝熱促進部分を形成した領域である伝熱促進熱交換領域と、を備えたことを特徴する熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載された熱交換器において、
前記熱交換面は、前記伝熱促進熱交換領域を前記熱交換媒体が流入する流入口側に設定したことを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された熱交換器において、
前記熱交換面は、その全面を流入口側領域と流出口側領域との2つの領域に分け、前記流入口側領域を前記伝熱促進熱交換領域に設定し、前記流出口側領域を前記平滑熱交換領域に設定したことを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載された熱交換器において、
前記熱交換器は、前記熱交換媒体を車載熱源からの高熱媒体とする車両用空調ユニットに内蔵されるヒータコアとし、
前記ヒータコアは、片側側面の中央部に前記流入口を、上部に前記流出口を設定し、下側領域を伝熱促進熱交換領域に、上側領域を平滑熱交換領域に設定したことを特徴とする熱交換器。
【請求項1】
複数のチューブとフィンとを積層して形成した熱交換面と、熱交換媒体を流入する流入口と、前記熱交換媒体を流出する流出口と、を備えた熱交換器において、
前記熱交換面は、前記チューブのうち前記熱交換媒体と接触する内面を平滑に形成した領域である平滑熱交換領域と、前記チューブのうち前記熱交換媒体と接触する内面に伝熱促進部分を形成した領域である伝熱促進熱交換領域と、を備えたことを特徴する熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載された熱交換器において、
前記熱交換面は、前記伝熱促進熱交換領域を前記熱交換媒体が流入する流入口側に設定したことを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された熱交換器において、
前記熱交換面は、その全面を流入口側領域と流出口側領域との2つの領域に分け、前記流入口側領域を前記伝熱促進熱交換領域に設定し、前記流出口側領域を前記平滑熱交換領域に設定したことを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載された熱交換器において、
前記熱交換器は、前記熱交換媒体を車載熱源からの高熱媒体とする車両用空調ユニットに内蔵されるヒータコアとし、
前記ヒータコアは、片側側面の中央部に前記流入口を、上部に前記流出口を設定し、下側領域を伝熱促進熱交換領域に、上側領域を平滑熱交換領域に設定したことを特徴とする熱交換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−151426(P2010−151426A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332722(P2008−332722)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
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