説明

熱伝達性部材とLEDデバイスを集積する方法

少なくとも2つの熱伝達性部材を集積して、集積複合部材を提供する方法が開示され、この方法は、
a)少なくとも2つの熱伝達性部材を成形用金型キャビティの中に配置し、その際、前記熱伝達性部材の各々が、樹脂注入キャビティの表面を形成する少なくとも1つの露出面を有するようにするステップと、
b)樹脂注入キャビティの中に熱伝導性樹脂を注入し、少なくとも2つの熱伝達性部材の露出面と接触させて、集積複合部材を形成するステップと、
を含み、
熱伝導性部材の熱伝導率は少なくとも0.7W/mK以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達性部材を集積し、熱伝導性樹脂の射出成形を用いて集積複合部材を提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い照度と長い動作寿命の観点から、発光ダイオード(LED)を光源に使用することが検討されている。米国特許第6211626号明細書が開示するLED照明モジュールは、熱伝達性部材および、LEDシステムと熱伝導樹脂等の熱接続部を備える。液晶表示体(LCD)の光源と、部屋の内外を照明するための光源が、具体的な用途として挙げられている。
【0003】
日本特開2007−109656号公報が開示する発明では、LCDのバックライトとしてLEDを使用している。このようなLEDを照明に使用する場合、赤、青、緑等の複数の色を組み合わせてLEDアレイを作製し、白色光を放出させる。LEDは、金属コアプリント回路基板(MCPCB)の上にLEDアレイを設置して構成される。一般に、MCPCBは、熱伝導性シートやグリース等の熱界面材料(TIM)で金属製筐体に接合して、MCPCBと筐体との熱抵抗が低減されるようにする。LEDは、大量の熱を放出する。LED周辺からの熱の放出が不十分であると、LEDの照度が低下する。そのため、LEDからの熱放射は、さまざまな手段を使って管理、制御される。たとえば、LEDを光源とする従来のLCDの場合、熱がLEDから放射される順序は、LEDチップからMCPCB、熱伝導性グリース、アルミニウムブロック、熱伝導性シート、アルミニウム製筐体、熱伝導性グリース、そしてヒートシンクである。このようなデバイスにおいては、部材の接合、すなわちMCPCBとアルミニウム製筐体との接合およびアルミニウム製筐体とヒートシンクとの接合は、ねじ留め等の機械的手段によって行われる。
【0004】
しかしながら、機械的手段によって部材を接合すると、組立に要する時間が長くなり、量産性が低下する。さらに熱伝導性シートまたは熱伝導性グリースは一般的に高価であり、製品のコスト競争力を弱める原因となる。必要とされているのは、熱伝達性部材とLEDを、各種部材を機械的に加工せずに集積する方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、少なくとも2つの熱伝達性部材を集積して、集積複合部材を提供する方法であり、この方法は、
a)少なくとも2つの熱伝達性部材を成形用金型キャビティ内に配置して、その際、前記熱伝達性部材の各々が樹脂注入キャビティの表面を構成する少なくとも1つの露出面を有するようにするステップと、
b)熱伝導性樹脂を樹脂注入キャビティの中に注入して、少なくとも2つの熱伝達性部材の露出面と接触させ、集積複合部材を形成するステップと、
を含み、
熱伝導性樹脂の熱伝導率は少なくとも0.7W/mK以上である。
【0006】
他の実施形態は、本発明の方法の各種の実施形態によって提供される集積複合部材である。
【0007】
他の実施形態は、本発明の各種の実施形態の方法により提供される集積複合部材と熱接触する発光ダイオードを有する照明装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のある実施形態により提供される集積複合部材を示す図である。
【図2】本発明のある実施形態により提供される集積複合部材を示す図である。
【図3】本発明のある実施形態により提供される集積複合部材を示す図である。
【図4】本発明のある実施形態により提供される集積複合部材を示す図である。
【図5】本発明のある実施形態により提供されるLEDアレイを備えるMCPCBを有する照明装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法に有益な熱伝達性部材は、一般的にインサート射出成形用キャビティに適合できる寸法であり、熱伝導率が少なくとも10.0W/m・K、より好ましくは少なくとも100W/m・Kであれば、どのような熱伝導性成形品であってもよい。熱伝達性部材は、好ましくは、軟化点または融点が、この方法で使用される最高温度より少なくとも100℃高い。熱伝達性部材は、金属、高導電性フィラを含有するものをはじめとする熱伝導性複合材料および、炭素複合材料とシートで作製することができる。具体的な熱伝達性部材としては、MCPCB、金属の管、板、ブロック、フレーム、筐体およびハウジング、グラファイトシート、熱伝導性複合材料の管、板、ブロック、フレーム、筐体およびハウジング、ならびにこれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択されるものがある。
【0010】
本発明において有益な熱伝達性部材としては、動作中のデバイスの中で放熱器および/またはヒートシンクとして機能する熱伝導性成形品がある。放熱器は一般に、LED等の放熱源からの熱を受け取る受熱面として機能する表面と、たとえば、外部大気または熱伝導性樹脂等の別の媒体に熱を伝達するように機能する放熱面を有する熱伝達性部材である。集積複合部材に組み込む前は、ある熱伝達性部材のある表面が放熱面と受熱面のいずれとみなされるか判断できないかもしれず、これは、その具体的な機能が熱伝達性部材と放熱源との関係によって決まるからである。放熱器の例としては、熱伝導性筐体、熱伝導性ハウジングおよび熱伝導性フレームを単独で用いたもの、あるいはこれらを一連のフィンを有する高表面積放熱器と組み合わせて、部材と大気またはその他の媒体との間の表面積を増大させたものがある。
【0011】
高表面積放熱器を本発明の方法に用いる場合、たとえばMCPCBまたはアルミニウムブロック等の熱伝達性ユニットと高表面積放熱器を、管を使って相互に接続してもよく、この管の中に水またはオイルを熱伝達媒体として通し、水またはオイルを循環させることにより、LED等の放熱源から発生される熱を放散させる。このような循環管と熱伝達性部材との一体化および/または循環管と放熱器の一体化は、これらの部材を熱伝導性樹脂でインサート成形することによって行うことができる。
【0012】
本発明において有益であり、ヒートシンクでもある熱伝達性部材は一般に、大量の熱を蓄積し、この熱を長時間かけて放出する能力を有する金属ブロックの形態をとる。ヒートシンクは、LED等の放熱源からの熱を受け取る受熱面として機能する表面と、放熱器と同様に、別の媒体に熱を伝達するように機能する放熱面を有する。ヒートシンクと放熱器とを分ける相違点は、ヒートシンクが、物質の質量に起因する熱とヒートシンク内に含まれる材料の特定の物理的属性に起因する熱のいずれも蓄えられる大きな容量を有する点である。たとえば、1つの実施形態において、工程では、熱伝導媒体と、熱を吸収することにより位相変化、たとえば溶融を起こす能力を有する材料を含むヒートシンクである熱伝達性部材を利用する。
【0013】
熱伝達性部材が金属である場合、使用される金属は特に限定されず、金属の種類の例としては、スチール、ニッケル、クロム、銅、錫、チタン、アルミニウム、マグネシウムおよびこれらのあらゆる組み合わせがある。銅とアルミニウムが好ましく、アルミニウムがより好ましい。アルミニウム板またはアルミニウムブロックは熱伝達性部材として特に好適である。熱伝達性部材として好ましい金属フレーム、筐体およびハウジングは、アルミニウムまたはマグネシウム、最も好ましくはアルミニウムで作製される。
【0014】
熱伝達性部材が熱伝導性複合材料である場合、使用される複合材料は、所望の熱伝導率を有していれば、特に限定されない。その例としては、セラミック複合材料、カーボンファイバ複合材料、熱伝導性フィラを含む熱伝導性樹脂およびこれらのあらゆる組み合わせがある。
【0015】
ある具体的な実施形態としての方法において、少なくとも1つの熱伝達性部材はMCPCBである。別の実施形態としての方法において、少なくとも1つの熱伝達性部材は、その上にLEDまたは/およびLEDアレイが実装されているMCPCBである。他の実施形態は、これら2つの具体的な実施形態により提供される成形品である。
【0016】
本発明の方法では、熱伝達性部材の少なくとも2つ以上を受けるようになされた射出成形用金型キャビティが必要であり、その際、熱伝達性部材の各々が、成形用金型キャビティの中に配置されたときに、樹脂注入キャビティの表面を形成する少なくとも1つの露出面を有するように受けられなければならない。樹脂注入キャビティは、インサート射出成形の分野で周知のように、金型が閉じた状態にあるときに形成される。
【0017】
成形用金型キャビティ内に配置される2つ以上の熱伝達性部材は、同じでも異なっていてもよい。2つ以上の熱伝達性部材はそれぞれ、樹脂注入キャビティの表面を形成する少なくとも1つの露出面を有する。「少なくとも1つの露出面」は、平面、斜面、湾曲面、複数の面、角度または曲面を含む表面、あるいはそれらの組み合わせ等、技術者が好むどのよう形状であってもよい。「少なくとも」という用語により、1つの熱伝達性部材内に1つより多い、2つより多い、3つより多い等々の露出面があることを意味し、これらは同じ表面の異なる部分であってもよい。
【0018】
熱伝達性部材を成形用金型キャビティ内に挿入し、金型を閉止して樹脂注入キャビティを形成したら、熱伝導性樹脂を樹脂注入キャビティ内に注入し、少なくとも2つの熱伝達性部材の露出面と接触させて、集積複合部材を形成する。本発明で有益な熱伝導性樹脂は、熱伝導率が少なくとも0.7W/m・K、好ましくは1W/mK以上を有するものであり、この熱伝導率は23℃でレーザフラッシュ法により、セラミクスの熱伝導率に関するレーザフラッシュ法を用いた測定方法である日本工業規格(JIS)R1611にしたがって測定される。1つの実施形態において、熱伝導性樹脂の曲げ弾性係数は、80℃で好ましくは300MPa、好ましくは1Gpa以上であり、これはISO 178にしたがって測定される。
【0019】
熱伝導性樹脂は、2つ以上の熱伝達性部材を相互に結合するのに使用される。必要な熱伝導性を有するのであれば、どのような熱伝導性樹脂でも使用できる。たとえば、熱伝導性樹脂は、熱可塑性樹脂マトリクスの中に分散させた熱伝導性フィラであってもよい。マトリクスとして使用可能な熱可塑性樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アイオノマ等の変性ポリオレフィン樹脂、PA6、PA66、PA11、PA12および半芳香族ポリアミド樹脂等のポリアミド樹脂(PA)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリシクロヘキシルメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエーテルエステル共重合体、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアミド−イミド樹脂その他である。さらに、これらの樹脂を構成する成分を複合することによって得られる共重合体を使用してもよい。また、これらの熱可塑性樹脂は単独で使用してもよく、あるいはそのうちの2つ以上の組み合わせも使用できる。好ましくは、熱伝導性樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂および液晶ポリマ(LCP)からなる群から選択される。好ましくは、熱伝導性樹脂は、ガラス転移点(Tg)が50℃以上、より好ましくは80℃以上の熱可塑性樹脂を含む。
【0020】
熱伝達性部材の少なくとも1つがMCPCBまたは、その上にLEDもしくはLEDアレイが取り付けられたMCPCBである実施形態において、熱伝導性樹脂は好ましくは、融点が220℃未満、より好ましくは200℃未満である。1つの実施形態において、熱伝達性部材の少なくとも1つはMCPCBまたは、その上にLEDもしくはLEDアレイが取り付けられたMCPCBであり、熱伝導性樹脂はPA612、PA610、PA1010、PA11、PA612、ポリエーテルエステルブロック共重合体およびアイオノマからなる群から選択される。
【0021】
熱可塑性樹脂マトリクスの中に分散させる熱伝導性フィラは、特に限定されない。有益な熱伝導性フィラは、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび二酸化珪素等の酸化物の粉末、フレークおよび繊維、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素等の窒化物の粉末、フレークおよび繊維、金、銀、アルミニウム、鉄、銅、錫、鉛フリーはんだに使用される錫ベース合金等の金属および金属合金の粉末、フレークおよび繊維、カーボンファイバ、グラファイトのフレークまたは繊維、炭化珪素粉末、フッ化カルシウム粉末その他からなる群から選択される。このようなフィラは単独で使用してもよく、あるいはその中の2つ以上の組み合わせも使用できる。
【0022】
熱伝導性フィラの表面は、フィラ表面とマトリクス樹脂の間の界面接合を改善するために、カップリング剤で処理することができる。カップリング剤の例としては、シラン系、チタン系、ジルコン系、アルミニウム系、ジルコアルミニウム系カップリング剤がある。
【0023】
有益なカップリング剤としては、たとえば、周期表の第IIIaからVIIIa、Ib、IIb、IIIb、IVb族に属するものを含む金属水酸化物および金属アルコキシドならびにランタニドがある。具体的なカップリング剤は、金属水酸化物および、Ti、Zr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Bからなる群から選択された金属のアルコキシドである。好ましい金属水酸化物および金属アルコキシドは、TiとZrのそれらである。具体的な金属アルコキシドカップリング剤は、チタン系、ジルコン系オルトエステルおよびキレートであり、これには式(I)、(II)、(III)の化合物が含まれる。
【0024】
【化1】

【0025】
式中、
Mは、TiまたはZrであり、
Rは、一価C1−C8直鎖または分岐型アルキルであり、
Yは、−CH(CH3)−、−C(CH3)=CH2−または−CH2CH2−から選択される二価ラジカルであり、
Xは、OH、−N(R12、−C(O)OR3、−C(O)R3、−CO2-+である。Xにおいて、
1は、−CH3またはC2−C4直鎖または分岐型アルキルであり、任意で、ヒドロキシル基で置換し、またはエーテル酸素で中断されてもよいが、1つの炭素原子には2つ以上のヘテロ原子が結合しないものとし、
3は、C1−C4直鎖または分岐型アルキルであり、
+は、NH4+,Li+,Na+またはK+から選択される。
【0026】
カップリング剤は、フィラを樹脂と混合する前にフィラに添加することができ、あるいはフィラと樹脂との混和中に添加してもよい。カップリング剤の添加量は、フィラの重量に関して、好ましくは0.1から5重量%、または好ましくは0.5から2重量%である。フィラと樹脂との混和中にカップリング剤を添加する場合は、熱伝達性ユニットまたは放熱ユニットの接合面に使用される金属と熱伝導性樹脂との接着性を高めることができるという別の利点も得られる。
【0027】
フィラの粒径が小さすぎると、混和中に樹脂の粘性が増し、フィラを完全に分散させることができなくなることがある。すると、高い熱導電性を有する樹脂が得られないかもしれない。フィラの粒径が大きすぎると、熱伝導性樹脂を樹脂注入キャビティの薄い部分、特に放熱部材に関連付けられる部分に注入することが不可能となるかもしれない。したがって、フィラの平均粒径は、好ましくは0.1から500μm、より好ましくは3から100μmであり、これはたとえば、Selas Granolometer「モデル920」によるレーザ回折式粒径分布または、コールター株式会社製のレーザ回折散乱式粒径分布測定器「LS−230」を使って測定される。
【0028】
熱可塑性樹脂のマトリクスの中に分散させる熱伝導性樹脂の含有量は、熱伝導性樹脂の体積に基づき、好ましくは20から70vol%、好ましくは30から50vol%である。
【0029】
熱伝導性樹脂には、必要に応じて、他のフィラ、難燃剤、熱安定化剤、粘性調整剤、耐候性強化剤および、当業界で公知のその他の添加剤を含めることができる。
【0030】
本発明に使用可能な熱伝導性樹脂は、フィラおよびその他の添加剤を熱可塑性樹脂とともに分散させるための当業界で良く知られている方法、たとえば、単軸押出機、二軸押出機、圧延機、Banburyミキサ、Brabender、混練機または高せん断ミキサ等を用いた方法によって作ることができる。
【0031】
1つの実施形態において、少なくとも1つの熱伝達性部材の少なくとも1つの露出面は少なくとも2つの表面部分を有し、前記少なくとも2つの表面部分は、相互に対して有限角度をなす表面平面を有する。
【0032】
1つの実施形態において、各熱伝達性部材の少なくとも1つの露出面は少なくとも2つの表面部分を有し、前記少なくとも2つの表面部分は、相互に対して有限角度をなす表面平面を有する。
【0033】
他の実施形態において、少なくとも1つの熱伝達性部材の少なくとも1つの露出面は2つの表面部分を有し、前記少なくとも2つの表面部分は、相互に対して平行な表面平面を有する。
【0034】
別の実施形態において、少なくとも1つの熱伝達性部材の少なくとも1つの露出面は、凹状、凸状、鋸歯状、くぼみ状または、中断されてスリットをなす形状、あるいはこれらのいずれかの組み合わせであってもよい。「スリット」という用語により、露出面が、対向する露出面に至る溝によって中断されることを意味し、注入ステップ中、樹脂はその中を流れる。1つの実施形態において、少なくとも1つの熱伝達性部材は、対向する露出面に至る1つまたは複数のスリット、すなわち溝を有する少なくとも1つの露出面を有する。図4は、後述のように、このような実施形態の方法によって作製される集積複合部材を示す。
【0035】
添付の図面に、本発明の各種の実施形態により提供されるいくつかの複合部材を示す。
【0036】
図1は、本発明の方法により作製される集積複合部材を示しており、この中で、金属板(1)は、LED(図示せず)からの熱を受け取る受熱面(1a)と、受熱面と対向する放熱面(1b)と、側面(1c)を有し、金属筐体(2)は、受熱面(2a)と、放熱面(2b)と、側面(2c)を有し、金属板(1)と金属筐体(2)は、熱伝導性樹脂部材(3)によって結合され、熱伝導性樹脂部材(3)は、放熱面(1b)と受熱面(2a)を越えて延びる側面(3a)と、受熱面(1a)の一部を越えて、これを覆うように延びるフック部(3b)を有する。この例では、放熱面(1b)には陥凹部(1d)が設けられている。側面部(1c)および/または受熱面(1a)は、任意で陥凹部を有していてもよく、熱伝導性樹脂部材のフック部(3b)は、(1a)の陥凹部(これがある場合。ただし、図示せず)まで延びていてもよい。図1において、受熱面(2a)と側面(2c)は相互に直角であり、少なくとも1つの熱伝達性部材の少なくとも1つの露出面が少なくとも2つの表面部分を有し、前記少なくとも2つの表面部分は、相互に有限角度をなす表面平面を有するという実施形態によって提供される集積複合部材を示している。さらに、図1の表面(1c)と(1b)が相互に直角であることから、各熱伝達性部材の少なくとも1つの露出面が少なくとも2つの表面部分を有し、前記少なくとも2つの表面部分は、相互に対して有限角度をなす表面平面を有するという実施形態により提供される集積複合部材を示している。
【0037】
図2は、本発明の方法により作製される集積複合部材を示しており、この中で、金属筐体(2)は、受熱面(2a)と、受熱面に対向する放熱面(2b)と、側面(2c)を有し、金属板(1)は、LED(図示せず)からの熱を受ける受熱面(1a)と、放熱面(1b)と、側面(1c)を有し、金属板(1)と金属筐体(2)は、熱伝導性樹脂部材(3)によって結合され、熱伝導性樹脂部材は、受熱面(2a)と放熱面(1b)を越えて延びる側部(3a)と、放熱面(2b)の一部を越えて、これを覆うように延びるフック部(3b)を有する。この例では、受熱面(2a)に陥凹部(2d)が設けられている。側部(2c)および/または放熱面(2b)は、任意で陥凹部を有していてもよく、熱伝導性樹脂部材のフック部(3b)は、(2b)の陥凹部(これがある場合。ただし、図示せず)まで延びていてもよい。図2において、受熱面(2a)と、放熱面(2b)と、そのうちのフック部(3b)に隣接した部分は、本発明の1つの実施形態において要求されるように、少なくとも1つの熱伝達性部材の少なくとも1つの露出面が2つの表面部分を有し、前記少なくとも2つの表面部分は相互に平行な表面平面を有することを示している。
【0038】
図3は、本発明の方法により作製される集積複合部材を示しており、その中で、金属板(1)はLEDからの熱を受ける受熱面(1a)と、受熱面と対向する放熱面(1b)と、側面(1c)を有し、金属筐体(2)は受熱面(2a)と、放熱面(2b)と、側面(2c)を有し、金属板(1)と金属筐体(2)は、熱伝導性樹脂部材(3)によって連結され、熱伝導性樹脂は、放熱面(1b)と受熱面(2a)を越えて延びる側面部(3a)を有する。この例では、放熱面(1b)の上に陥凹部(1d)が設けられ、受熱面(2b)の上に陥凹部(2d)が設けられている。
【0039】
図4は、図1の変形版であり、金属筐体(2)の受熱面(2a)の1つまたは複数の部分は、スリット(2e)を形成する。熱伝導性樹脂部材(3)は、放熱面(1b)と受熱面(2a)を越えて延びる側面部(3a)を有し、スリット(2e)の中にも延びて、放熱面(2b)の一部の上にフック部(3c)が設けられる。
【0040】
図5は、本発明の工程により作製される照明装置を示しており、その中で、LEDアレイ(5)を有するMCPCB(4)が、LEDからの熱を受ける受熱面(1a)と、受熱面に対向する放熱面(1b)と、側面(1c)を有する金属板(1)の上に取り付けられ、金属筐体(2)は受熱面(2a)と放熱面(2b)と側面(2c)を有し、金属板(1)と金属筐体(2)は、熱伝導性樹脂部材(3)によって結合され、熱伝導性樹脂は、受熱面(1a)と放熱面(1b)の間に延びる側面部(3a)と、受熱面(1a)の一部を越えて、これを覆うように延びるフック部(3b)を有する。
【0041】
本発明の方法により、照明装置である成形品を提供することができ、たとえば、その中で、1つのLEDまたはLEDアレイは、1つまたは複数の熱伝達部材、たとえば、MCPCBと熱接触する。したがって、本発明は、液晶表示体(LCD)のLEDバックライト、自動車用照明、装飾用照明、看板および宣伝用照明、情報表示等に利用できる。
【0042】
他の実施形態は、本発明の方法により提供される集積複合部材と熱接触する発光ダイオードを備える照明装置である。この実施形態において、「熱接触」という用語は、発光ダイオードが直接接触する、または他の素子を介して接触することを意味する。
【0043】
材料
ZyteIHTN(登録商標)501は、E.I.du Pont de Nemours and Co.,Wilmington,DEが販売するポリアミド6T/66共重合体である。
【0044】
変性EPDM:2.1重量%の無水マレイン酸がグラフトされたEPDM(エチレン/プロピレン/ジエンポリオレフィン)をDow Chemical (Midland,Michigan,USA)から購入した。
【0045】
m−MgO:タテホ化学工業株式会社が販売するCoolfiller(登録商標)CF2−100A酸化マグネシウムをトリメトキシ−3−アミノプロポキシシランカップリング剤1重量%で表面改質して得た変性酸化マグネシウム粉末。Coolfiller(登録商標)酸化マグネシウムの平均粒径は、約25μmであった。
【0046】
表1に示す熱伝導性樹脂組成物(組成物1)を、二軸押出機を使って調製した。組成物1を使い、厚さ4mmのISOサンプルを射出成形で製作した。ISO 178による方法を用いて測定した曲げ弾性係数を表1に示す。
【0047】
組成物1の熱伝導率は、レーザフラッシュ法(JIS R1611)で測定した。
【0048】
【表1】

【実施例】
【0049】
実施例1
それぞれ厚さ1mmの2枚のアルミニウム板を、射出成形機の金型の中に、板間の間隙が約2mmの樹脂注入キャビティが形成されるように挿入した。熱伝導性樹脂の組成物1を注入樹脂キャビティの中に注入し、アルミニウム/熱伝導性樹脂集積複合部材を作製した。
【0050】
上記の複合部材のアルミニウム板の一方にLEDのMCPCB回路板を設置し、アルミニウムブロックのヒートシンクをもう一方のアルミニウム板の上に、熱伝導性シートを介して付着させた。LEDに一定の電力(12V)を印加し、LEDの表面温度(Tc)とヒートシンクの表面温度(Tj)が一定になったところで、次式を用いて熱抵抗(ΨJt)を算出した。
ΨJt=(Tj−Tc)/消費電力(℃/W)
測定された熱抵抗は0.3℃/Wであった。
【0051】
比較例1
アルミニウム/熱伝導性樹脂集積複合部材を、注入段階で、熱伝導率0.3W/m・Kの35%ガラスファイバ補強ポリアミド(本件特許出願人が販売するZytel(登録商標)HTN 51G35L)を使用したことを除き、例1と同じ方法で作製した。この複合部材について例1と同じ方法で求められた熱抵抗は、0.8℃/Wであった。
【0052】
これは、樹脂の熱伝導率が複合部材の熱抵抗を決定する上で重要な属性であることを示している。より高い熱伝導率の樹脂により、一般に、より低い熱抵抗の複合部材が得られる。
【0053】
比較例2
2つのアルミニウム板を、厚さ1mm、熱伝導率2.5W/m・Kの熱伝導性シート(信越化学工業株式会社が販売するTC−100THS)を介してネジで固定し、複合成形品を作製した。この成形品の熱抵抗を例1と同じ方法で測定したところ、0.3℃/Wであった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
上記の実験が示しているように、本発明を利用することにより、ネジその他同様の器具を用いることなく、優れた放熱特性を有する照明装置を作製できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの熱伝達性部材を集積して、集積複合部材を提供する方法であって、
a)前記少なくとも2つの熱伝達性部材を成形用金型キャビティの中に配置し、その際、前記熱伝達性部材の各々が、樹脂注入キャビティの表面を形成する少なくとも1つの露出面を有するようにするステップと、
b)前記樹脂注入キャビティの中に熱伝導性樹脂を注入し、前記少なくとも2つの熱伝達性部材の前記露出面と接触させて、前記集積複合部材を形成するステップと、を含み、
前記熱伝導性部材の熱伝導率は少なくとも0.7W/mK以上である方法。
【請求項2】
少なくとも1つの熱伝達性部材の前記少なくとも1つの露出面は少なくとも2つの表面部分を有し、前記少なくとも2つの表面部分は、相互に対して有限角度をなす表面平面を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの熱伝達性部材の前記少なくとも1つの露出面は2つの表面部分を有し、前記少なくとも2つの表面部分は、相互に平行な表面平面を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記熱伝達性部材は、MCPCB、金属の管、板、ブロック、フレーム、筐体およびハウジンググラファイトシート、熱伝導性複合材料の管、板、ブロック、フレーム、筐体およびハウジング、ならびにそのいずれかの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記成形用金型キャビティ内の前記少なくとも2つの熱伝達性部材の少なくとも一方は、その上にLEDまたは/およびLEDアレイが取り付けられたMCPCBである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの熱伝達性部材の前記少なくとも1つの露出面は、凹状、凸状、鋸歯状、くぼみ状または、中断されてスリットをなす形状、あるいはこれらの組み合わせである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記熱伝導性樹脂の曲げ弾性係数が80℃で300MPa以上である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法により提供される前記集積複合部材と熱接触する発光ダイオードを備える照明装置。
【請求項9】
請求項8に記載の前記照明装置をバックライトとして備える液晶表示装置。

【公表番号】特表2011−517092(P2011−517092A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503153(P2011−503153)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/039229
【国際公開番号】WO2009/124158
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】