説明

熱処理炉

【解決手段】半導体基板の熱処理工程に用いる熱処理炉であって、両側端面に半導体基板の挿入及び取り出し可能な大きさの開口部を有する円筒状の炉心管を具備することを特徴とする熱処理炉。
【効果】本発明によれば、半導体の連続熱処理時の各バッチ間の待機時間を減少させ、生産性を向上することが可能となった。また、炉芯管の構造を単純な円筒状形状としたことで、ガス導入管部分の破損頻度が低下し、熱処理工程のランニングコストを削減することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板等の半導体基板の熱処理工程に用いられる熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の熱処理工程では、外気やヒーターなどからの汚染を防ぐため、図4に示すように、一端に開口部22と他端にガス導入管23とが設けられた高純度石英等からなる炉芯管21を、予め炉内に設けられた円筒状ヒーター24の内側に挿入しておき、半導体基板25を載せた高純度石英等からなるボート26をこの炉芯管21の開口部22から挿入セットし、高純度石英等からなる蓋27を閉じて略密閉し、ガス導入管23から窒素、アルゴン等の高純度ガスを流して、炉21と蓋27との間の僅かな隙間から高純度ガスを炉外に排気することで、炉内雰囲気を清浄に保ちつつ、ドーパント拡散や酸化等の熱処理を行うことが一般的であった。
【0003】
図7にこのような炉心管を含む熱処理炉を用いた場合の熱処理フローの一例を、図10に同熱処理のタイムシーケンスの一例を示し、従来の熱処理方法について説明する。
(1)所定枚数の半導体基板25をボート26に載置し、これをボートステーション30で待機させる(図7(a),図10(i))。
(2)炉心管21の蓋27を開け、高純度石英等からなるロッド等(非図示)を用いて、ボートステーション30から炉内中央部の所定位置まで半導体基板25を載せたボート26を押し込む(図7(a),図10(ii),(iii))
(3)蓋27を閉め、半導体基板25に所定の熱プロファイルを施す(図7(b),図10(iv))。
(4)熱処理後、蓋27を開け、ロッド等で、炉内所定の位置からボートステーション30へと半導体基板25を載せたボート26を引出し、冷却する(図7(c),図10(v)〜(vii))。
ボート挿入から取り出しまで、ガス導入管23から常に窒素等の高純度ガスを流し、炉内清浄度を保つことができる。
【0004】
この方法では、ボート取り出し後、半導体基板は取り扱い可能な温度となるまでボートステーションで冷却が必要となるため、所定の熱処理を連続実施する場合、次バッチの挿入準備ができず、各熱処理バッチの間には、待機時間が生じてしまっていた。
【0005】
また、上記炉心管以外にも、半導体基板の熱処理工程に用いられる熱処理炉の構造が、例えば、特開平5−102054号公報(特許文献1、(ソニー株式会社):拡散炉)などに提案されている。この例では、炉芯管の一端が開口し、この開口端を閉塞するシャッターを開閉可能に設けた熱処理炉において、上記炉芯管の内部の上記開口端の稍内側に、炉芯管内周面との間に適宜の間隙ができるように隔板を設け、上記シャッターに排気口を設けることで、外気の侵入による悪影響をなくすことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−102054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような構造の炉芯管を備えた熱処理炉の場合、半導体基板の炉内への挿入及び炉外への取り出しは、その構造上、炉芯管の一端のみから実施しなければならず、更には、上述したように、高温の炉から取り出した半導体基板は、取り扱い可能な温度となるまでボートステーションで冷却が必要となるため、所定の熱処理を連続実施する場合、各熱処理バッチの間には、余計な待機時間が生じてしまう問題があった。特に、結晶系シリコン太陽電池など、比較的熱処理時間が短い半導体デバイスの熱処理を行う場合、全熱処理時間に対する待機時間の割合が相対的に高くなるため、熱処理工程の生産性を制限する大きな原因となっていた。また、前述した構造の炉心管の場合、炉芯管の定期洗浄などの入替え時や保管時に、細い管状のガス導入管部分を破損してしまうことがあり、高純度石英等の炉芯管は高価なため、修理や新規購入費用が高く、熱処理工程のランニングコストを上昇させる要因の一つであった。
【0008】
更に、ベルト方式やウォーキングビーム方式に代表されるような、出口と入口を持つ連続式の熱処理炉を用いた場合は、ベルトやビームの存在のため、出入口にシャッターを持つ構造であっても、密閉性が悪く、外気の流入が防ぎ切れず、熱処理によって半導体基板のキャリアライフタイムが大幅に低下する問題があった。このようなベルト方式やウォーキングビーム方式等の連続式熱処理炉は、単位面積あたりの同時処理可能枚数が少なく、熱効率が低いことも問題であった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、半導体基板の連続熱処理時の各バッチ間の待機時間を減少させて生産性を向上させることができ、しかもガス導入管部分の破損頻度を低下させて熱処理工程のランニングコストを削減することができる熱処理炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、熱処理工程に用いる炉心管本体の構造を、両側端面に半導体基板の挿入及び取り出し可能な大きさの開口部を有する円筒状形状とし、更にこの炉心管を略密閉可能に上記開口部を閉塞して上記炉心管に着脱可能に装着される蓋体を設けると共に、炉心管本体又は蓋体に、炉心管内にガスを導入可能な細管状のガス導入管を設けることで、熱処理時の炉内雰囲気を清浄に保つことができると共に、半導体基板の挿入及び取り出し時には必要に応じて両端の蓋を開閉して処理することで、連続熱処理時の各バッチ間の待機時間を減少させ、生産性を向上することが可能となることを見出した。また、炉芯管の構造を単純な円筒状形状としたことで、ガス導入管の破損頻度が低下し、炉芯管自体のコストも低下した結果、熱処理工程のランニングコストを削減できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記熱処理炉を提供する。
請求項1:
半導体基板の熱処理工程に用いる熱処理炉であって、両側端面に半導体基板の挿入及び取り出し可能な大きさの開口部を有する円筒状の炉心管を具備することを特徴とする熱処理炉。
請求項2:
上記炉心管が、上記炉心管を略密閉可能に上記開口部を閉塞し、上記炉心管に着脱可能に装着される蓋体を具備する請求項1記載の熱処理炉。
請求項3:
上記蓋体が、この蓋体を貫通して上記炉心管内にガスを導入可能な細管状ガス導入管を有する請求項1又は2記載の熱処理炉。
請求項4:
上記炉心管が、上記炉心管の両端側にそれぞれこの炉心管内にガスを導入可能な細管状ガス導入管を有する請求項1乃至3のいずれか1項記載の熱処理炉。
請求項5:
上記炉心管が、上記炉心管の長手方向中央部付近にこの炉心管内にガスを導入可能な細管状ガス導入管を有する請求項1乃至4のいずれか1項記載の熱処理炉。
請求項6:
上記炉心管の開口部の内径が、上記炉心管中央部の内径に対して95%以上である請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱処理炉。
請求項7:
更に、上記炉心管外部の開口部近傍に、半導体基板を載置したボートを待機させるためのボートステーションを少なくとも一つ具備する請求項1乃至6のいずれか1項記載の熱処理炉。
請求項8:
熱処理が、シリコン基板にp型又はn型ドーパントを拡散する処理である請求項1乃至7のいずれか1項記載の熱処理炉。
請求項9:
熱処理が、シリコン基板を酸化する処理である請求項1乃至7のいずれか1項記載の熱処理炉。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体の連続熱処理時の各バッチ間の待機時間を減少させ、生産性を向上することが可能となった。また、炉芯管の構造を単純な円筒状形状としたことで、ガス導入管部分の破損頻度が低下し、熱処理工程のランニングコストを削減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の炉心管本体とガス導入管を有する蓋体の構造の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の両端側下部にガス導入管を有する炉心管本体と蓋体の構造の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の中央部付近にガス導入管を有する炉心管本体と蓋体の構造の一例を示す概略断面図である。
【図4】一般的な炉心管の構造の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の熱処理炉を用いた熱処理フローの一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の熱処理炉を用いた熱処理フローの他の例を示す概略断面図である。
【図7】一般的な熱処理炉を用いた熱処理フローの一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の熱処理炉を用いた熱処理のタイムシーケンスの一例を示す説明図である。
【図9】本発明の熱処理炉を用いた熱処理のタイムシーケンスの他の例を示す説明図である。
【図10】一般的な熱処理炉を用いた熱処理のタイムシーケンスの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
本発明に係る熱処理炉に用いる炉心管の構造の一例を図1に示す。図中、1は軸方向(長手方向)両側端面に開口部2a,2bを有する円筒状の炉心管であり、熱処理炉(図示せず)内に配設された円筒状ヒーター4内にこれと同心円状に収められている。半導体基板5を載置したボート6は、開口部2a,2bのどちらからも出し入れ可能になっており、開口部2a,2bは、それぞれ蓋7a,7bによって略密閉することができる。蓋7a,7bには、炉心管内にガスを導入可能な細管状のガス導入管8a,8bがこれら蓋7a,7bをそれぞれ気密に貫通して一体となっており、これら蓋7a,7bを閉じた状態で、ガス導入管8a,8bの任意のガス導入管からガスを流すことが可能である。ガス導入管8a,8bは必ずしも蓋7a,7bと一体になって突出している必要はなく、摺り合わせ面で接続して固定するような、蓋7a,7bに形成された穴とガス導入管部分に分離した構造であっても良い。
【0016】
本発明に係る熱処理炉に用いる炉心管の構造の他の例を図2に示す。図中、1’は軸方向(長手方向)両側端面に開口部2a,2bを有すると共に、両端側下部にそれぞれ細管状のガス導入管9a,9bを有する円筒状の炉心管であり、熱処理炉(図示せず)内に配設された円筒状ヒーター4内にこれと同心円状に収められている。半導体基板5を載置したボート6は、上記開口部2a,2bのどちらからも出し入れ可能になっており、開口部2a,2bは、それぞれ蓋7a,7bによって略密閉することができ、これら蓋7a,7bを閉じた状態で、ガス導入管9a,9bの任意のガス導入管からガスを流すことが可能である。ガス導入管9a,9bは必ずしも炉芯管1’と一体になって突出している必要はなく、摺り合わせ面で接続して固定するような、穴とガス導入管部分に分離した構造であっても良い。
【0017】
本発明に係る熱処理炉に用いる炉心管の構造の別の例を図3に示す。図中、1”は軸方向(長手方向)両側端面に開口部2a,2bを有する円筒状の炉心管であって、この炉心管の長手方向中央部付近上部にはガス導入管8cが設けられており、熱処理炉(図示せず)内に配設された円筒状ヒーター4内にこれと同心円状に収められている。半導体基板5を載置したボート6は、上記開口部2a,2bのどちらからも出し入れ可能になっており、開口部2a,2bは、それぞれ蓋7a,7bによって略密閉することができる。蓋7a,7bには、炉心管内にガスを導入可能な細管状のガス導入管8a,8bがこれら蓋7a,7bをそれぞれ気密に貫通して一体となっており、これら蓋7a,7bを閉じた状態で、ガス導入管8a〜8cの任意の導入管からガスを流すことができる。また、蓋7a,7bを開けた状態で、ガス導入管8cからガスを炉内へ導入することで、開口部2a,2bへとガスを流すことが可能である。ガス導入管8a〜8cは必ずしも蓋7a,7b又は炉心管1”と一体になって突出している必要はなく、摺り合わせ面で接続して固定するような、穴とガス導入管部分に分離した構造であっても良い。
【0018】
ここで、本発明で用いる炉心管、蓋及びガス導入管の材質は、熱処理による高温に耐えられ、かつ炉内清浄度を保つため、高純度石英や高純度炭化珪素(SiC)等が一般的である。
【0019】
炉心管の大きさは特に制限されず、炉心管両側端面の開口部の内径は、半導体基板を載置したボートを出し入れ可能な大きさであればよいが、炉心管中央部の内径の95%以上であることが好ましく、通常、炉心管中央部の内径と同じでよい。
【0020】
ガス導入管の外径は、5〜25mmが好ましく、より好ましくは10〜20mmであり、内径は3〜20mmが好ましく、より好ましくは5〜15mmであり、突出部の長さは50〜200mmが好ましく、より好ましくは100〜150mmである。図2に示すように、炉心管両端側下部にガス導入管を設ける場合、ガス導入管の位置は開口部から内側に10〜200mmが好ましく、より好ましくは20〜150mmである。
【0021】
なお、図1〜3では図示していないが、炉心管とは別に、基板5を載置したボート6を待機させるためのボートステーションを、炉心管外部の開口部近傍に少なくとも一つ、好ましくは両開口部から所定距離離れた位置にそれぞれ一つ以上設けることが好ましい。ボートステーションの材質も、炉心管、蓋及びガス導入管と同じものを用いることができる。ボートステーションの大きさは、ボートを待機させられる大きさであれば特に制限されないが、例えば、半径100mm、60°の円弧状曲面を有する、肉厚4mm、長さ1000mm、幅200mm程度のものを用いることができる。
【0022】
本発明の熱処理炉による熱処理方法について説明すると、図1〜3に示すような構成の炉心管を含む熱処理炉を用いて半導体基板を熱処理するが、ガス導入管からはアルゴン、窒素、酸素などの高純度ガスを導入することが好ましく、蓋と炉芯管の間の僅かな隙間から、これら高純度ガスを炉外へと流出させることが好ましく、このようにすることで、外気の炉内への流入を防ぎ、熱処理中の炉内雰囲気を清浄に保つことが可能である。これにより、炉芯管の中央部にセットしたボート上に並べられた半導体基板のキャリアライフタイムを大幅に低下させることなく、熱処理を施すことができる。
【0023】
次に、図5に本発明の炉心管を含む熱処理炉を用いた熱処理フローの一例を、図8に同熱処理のタイムシーケンスの一例を示して具体的な熱処理方法について説明する。図5の炉心管は図1のものと同じものを用いた。
(1)所定枚数の半導体基板5をボート6に載置し、これをボートステーション10aで待機させる(図5(a),図8(i))。基板は、p型又はn型のシリコン基板等を用いることができる。
(2)炉心管1の蓋7aを開け、ボートステーション10aから炉内中央部の所定位置まで半導体基板5を載せたボート6を押し込む(図5(a),図8(ii))。
(3)蓋7aを閉め、半導体基板5に所定の熱プロファイルを施す(図5(b),図8(iii))。例えば、ドーパント拡散処理する場合、雰囲気は窒素、アルゴン等の不活性ガス、酸素、オキシ塩化リン、ジボラン等とすることができ、処理温度と時間は、必要とする拡散プロファイルや酸化膜厚等により異なるため、特に制限はないが、短時間の熱処理プロファイルを持つ場合に本発明の効果が高い。
ボート挿入時及び熱処理中は、ガス導入管8bから窒素、アルゴン、酸素等の高純度ガスを流すことで、炉内清浄度を保つことができる。
(4)熱処理後、蓋7bを開け、炉内所定の位置からボートステーション10bへと半導体基板5を載せたボート6を引出し、10〜30分間冷却する(図5(c),図8(iv),(v))。
ボート挿入時及び取り出し時はガス導入管8aから窒素、アルゴン、酸素等の高純度ガスを流速5〜50L/minで流すことで、炉内清浄度を保つことができる。
【0024】
この例では、ボートステーションが2つあるため、ボート取り出し後、このボートを一方のボートステーション10bで冷却し、もう一方のボートステーション10aから次バッチのボートを挿入可能なため、待機時間を減らすことができる。また、ボートの挿入、取り出しは同時に行うことも可能である。なお、ボートを炉内へ押し込む際及び炉外へ引出す際は、高純度石英等からなるロッド等(非図示)を用いることができる。
【0025】
図6に本発明の炉心管を含む熱処理炉を用いた熱処理フローの他の例を、図9に同熱処理のタイムシーケンスの一例を示す。図6の炉心管は図3のものと同じものを用いた。
(1)所定枚数の半導体基板5をボート6に載置し、これをボートステーション10aで待機させる(図6(a),図9(i))。
(2)炉心管1”の蓋7aを開け、ボートステーション10aから炉内中央部の所定位置まで半導体基板5を載せたボート6を押し込む(図6(a),図9(ii))。
(3)蓋7aを閉め、半導体基板5に所定の熱プロファイルを施す(図6(b),図9(iii))。処理条件等は、上記と同様とすることができる。
(4)熱処理後、蓋7a,7bを同時に開け、炉内所定の位置からボートステーション10bへと半導体基板5を載せたボート6を引出すと共に、ボートステーション10aから炉内所定位置まで新たな基板を載せたボートを押し込み、蓋7a,7bを閉めて上記と同様に熱処理する(図6(a),図9(iv),(i)〜(iii))。上記操作を繰り返して更に別の基板を処理することができる。
【0026】
ボート挿入時及び取り出し時は、炉芯管1”の長手方向の中央部付近に設けられたガス導入管8cから窒素、アルゴン、酸素等の高純度ガスを流し、炉芯管両端の開口部2a,2bと蓋7a,7bとの僅かな隙間へと排気することで、炉内清浄度を保つことができる。熱処理中はガス導入管8bから上述した高純度ガスを流し、炉内清浄度を保つことができる。この例でも、熱処理済みボートの取り出しと次バッチの挿入を同時に行うことで、待機時間を更に減らすことができる。
【0027】
本発明においては、上述した炉心管を収容する熱処理炉の構造は特に制限されず、炉芯管に沿った円筒状のヒーターを持つ横型炉であればよい。
【0028】
本発明の熱処理炉は、半導体基板の熱処理工程において有用であり、特に半導体基板として太陽電池素子作成用等のシリコン基板に対しp型又はn型ドーパントを拡散処理する場合やシリコン基板を酸化処理する場合に好適であるが、これらドーパント拡散処理、基板酸化処理以外に、横型炉を用いた熱処理ならいかなる熱処理でも好適に用いられる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0030】
[実施例1]
直径100mm、厚さ200μm、面方位(100)の、CZ法で製造されたボロンドープp型シリコンラップドウェーハ(比抵抗1〜3Ω・cm)を準備した。
上記ラップドウェーハ10枚を、幅100mm、高さ30mm、奥行き540mm、溝ピッチ2.5mm、溝数100溝の高純度石英製ボートに手並べした。
【0031】
本発明の熱処理炉として、図1に示したような外径150mm、内径142mm、長さ3000mm、両端に内径142mmの開口部を持つ石英製炉芯管1と、直径170mm、肉厚4mmの円盤状石英板に、外径141.5mm、幅50mmの円筒状石英箱を溶融接着させ、さらにこれら円盤状石英板と円筒状石英箱を貫く形でガス導入管8a,8b(内径5mm)を有する蓋7a,7bをそれぞれ準備した。
熱処理前後のボート待機場所として、半径100mm、60°の円弧状曲面を有する、肉厚4mm、長さ1000mm、幅200mmの高純度石英製ボートステーションを準備し、炉芯管開口部から250mm離して設置した。ボートステーション中央のボート待機位置から、炉芯管の中央の熱処理位置までの距離は2250mmであった。
【0032】
各熱処理バッチにおいて、ボートをボートステーション上にセットするための挿入準備時間(待機時間)は1回あたり1分程度であり、熱処理の終わったボートを取り出した後の冷却時間は1バッチあたり15分とした。
ボートの挿入・取り出しには、長手方向に対し垂直方向に長さ30mmの突出部を持つ、長さ2000mm、外径15mmの石英製ロッドを用意した。このロッドを全自動のボートローダーにセットし、200mm/minの一定速度でボートの挿入・取り出しを行った。
【0033】
熱処理炉は常時830℃にセットし、ボート挿入後、40分間リンのデポジションを行い、続いてより深くリンを拡散させる工程として、830℃で17分間ドライブインを行い、ボートを取り出した。
熱処理時のガス組成は、リンのデポジション中は、窒素20L/minと酸素0.3L/minとオキシ塩化リン(POCl3)0.45L/minとの混合ガスとし、それ以外の待機中、蓋開閉時、ボート挿入・取り出し時及びドライブイン中は、窒素20L/minと酸素0.3L/minとの混合ガスとした。これらの条件の下、図5に示した熱処理フロー、及び図8に示したタイムシーケンスで拡散熱処理を実施した。
【0034】
[実施例2]
図3に示したような、外径150mm、内径142mm、長さ3000mm、両端に内径142mmの開口部を持ち、さらに炉芯管の長手方向両側端面から1500mmの位置に内径5mmのガス導入管を有する石英製炉芯管を準備した。
上記炉心管以外は、上記実施例1と同じ半導体基板及び熱処理炉を用い、図6に示した熱処理フロー、及び図9に示したタイムシーケンスで、拡散熱処理を実施した。
【0035】
[比較例1]
図4に示したような、外径150mm、内径142mm、長さ3000mmで、一端に内径142mmの開口部を持ち、他端にガス導入管(内径5mm)を持つ、一般的な石英製炉芯管と、直径170mm、肉厚4mmの円盤状石英板に、外径141.5mm、幅50mmの円筒状石英箱を溶融接着させた構造を持つ蓋を準備した。
上記炉芯管と蓋以外は上記実施例1と同じ半導体基板及び熱処理炉を用い、図7に示した熱処理フロー、及び図10に示したタイムシーケンスで、拡散熱処理を実施した。
【0036】
実施例1,2及び比較例1で得られた基板について、以下の方法で評価を行った。
1.シート抵抗測定
25質量%HFに4分間浸漬してガラス膜を除去後、純水リンスし、乾燥させ、4短針法でウェーハ中心のシート抵抗測定を行った。
2.バルクライフタイム測定
70℃,25質量%KOHに10分間浸漬して拡散層を除去後、純水リンスし、1質量%HFに1分間浸漬させて撥水性とした後、ヨウ素メタノール法でケミカルパッシベーション処理を行い、μPCD法でバルクライフタイム測定を行った。
3.連続処理した場合の、拡散熱処理1バッチあたりの所要時間を測定した。
【0037】
【表1】

【0038】
比較例1に対し、実施例1及び2は、シート抵抗及びバルクライフタイムは遜色ない結果が得られ、1拡散バッチあたりの所要時間を大幅に削減することができた。
【符号の説明】
【0039】
1,1’,1”,21 炉心管
2a,2b,22 開口部
4,24 ヒーター
5,25 半導体基板
6,26 ボート
7a,7b,27 蓋
8a,8b,8c,9a,9b,23 ガス導入管
10a,10b,30 ボートステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の熱処理工程に用いる熱処理炉であって、両側端面に半導体基板の挿入及び取り出し可能な大きさの開口部を有する円筒状の炉心管を具備することを特徴とする熱処理炉。
【請求項2】
上記炉心管が、上記炉心管を略密閉可能に上記開口部を閉塞し、上記炉心管に着脱可能に装着される蓋体を具備する請求項1記載の熱処理炉。
【請求項3】
上記蓋体が、この蓋体を貫通して上記炉心管内にガスを導入可能な細管状ガス導入管を有する請求項1又は2記載の熱処理炉。
【請求項4】
上記炉心管が、上記炉心管の両端側にそれぞれこの炉心管内にガスを導入可能な細管状ガス導入管を有する請求項1乃至3のいずれか1項記載の熱処理炉。
【請求項5】
上記炉心管が、上記炉心管の長手方向中央部付近にこの炉心管内にガスを導入可能な細管状ガス導入管を有する請求項1乃至4のいずれか1項記載の熱処理炉。
【請求項6】
上記炉心管の開口部の内径が、上記炉心管中央部の内径に対して95%以上である請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱処理炉。
【請求項7】
更に、上記炉心管外部の開口部近傍に、半導体基板を載置したボートを待機させるためのボートステーションを少なくとも一つ具備する請求項1乃至6のいずれか1項記載の熱処理炉。
【請求項8】
熱処理が、シリコン基板にp型又はn型ドーパントを拡散する処理である請求項1乃至7のいずれか1項記載の熱処理炉。
【請求項9】
熱処理が、シリコン基板を酸化する処理である請求項1乃至7のいずれか1項記載の熱処理炉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−15501(P2012−15501A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124713(P2011−124713)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】