説明

熱処理装置及び熱処理炉及び断熱材及び排気ダクト

【課題】
ヒータ交換作業が安全で而も簡単であると共に交換コストの低い熱処理装置、及び該熱処理装置に於ける熱処理炉及び断熱材及び排気ダクトを提供する。
【解決手段】
ヒータユニット21の上部に排気ダクト22が設けられ、該排気ダクトに排気導出部25,26が接続された熱処理炉を有する熱処理装置に於いて、前記排気ダクトは断熱材で構成され、該排気ダクト内部はエルボウ状の排気路23を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェーハを加熱し、薄膜の生成、不純物の拡散等各種熱処理を行う半導体製造装置等の熱処理装置、及び該熱処理装置に於ける熱処理炉及び断熱材及び排気ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
先ず、図5に於いて熱処理装置の一例として縦型炉を具備する半導体製造装置について説明する。
【0003】
半導体製造装置はクリーンルーム内に設置され、更に密閉された筐体1により、内部が高清浄度雰囲気に維持されている。
【0004】
該筐体1の前面にカセット般入出口2が設けられ、背面には保守作業用の背面開口部3が設けられ、該背面開口部3は開口高さHを有し、背面扉4で開閉される様になっている。
【0005】
前記カセット般入出口2に対峙してカセット授受ステージ5が設けられている。該カセット授受ステージ5の上方に予備カセット棚6が設けられ、該予備カセット棚6、前記カセット授受ステージ5と対向してカセット棚7が配設されている。前記予備カセット棚6、前記カセット授受ステージ5と前記カセット棚7との間にカセット搬送機8が設けられている。
【0006】
前記筐体1の後部は上方に突出して炉収納部9が形成されており、該炉収納部9に縦型炉10が収納されている。該縦型炉10の下方にはボート11を前記縦型炉10に挿脱するボートエレベータ12が設けられ、該ボートエレベータ12と前記カセット棚7との間にウェーハ移載機13が設けられている。
【0007】
前記半導体製造装置により熱処理されるウェーハ15はカセット16に所定枚数装填された状態で、前記カセット般入出口2より搬入される。搬入されたカセット16はウェーハ15が垂直姿勢の上向きであり、前記カセット授受ステージ5により横向き姿勢に変更される。
【0008】
該カセット授受ステージ5のカセット16は前記カセット搬送機8により、前記カセット棚7又は予備カセット棚6に移載される。前記ウェーハ移載機13は降下状態の前記ボート11と前記カセット棚7の所定位置のカセット16との間で前記ウェーハ15の移載を行う。
【0009】
前記ウェーハ移載機13により前記ボート11にウェーハ15が処理に必要な枚数装填されると、前記ボートエレベータ12により前記ボート11が前記縦型炉10に挿入される。
【0010】
該縦型炉10内では、前記ウェーハ15が加熱され、反応ガスが供給されて、前記ウェーハ15に所要の熱処理がなされる。
【0011】
熱処理がなされると、前記ボートエレベータ12により前記ボート11が降下され、前記ウェーハ移載機13により前記ボートエレベータ12から前記カセット棚7の所定のカセット16に前記ウェーハ15が移載される。該ウェーハ15が移載されたカセット16は前記カセット搬送機8により前記カセット授受ステージ5に移載され、更に前記カセット般入出口2を経て外部に搬出される。
【0012】
図5、図6、図7を参照して前記縦型炉10を説明する。
【0013】
前記筐体1のフレーム(図示せず)に支持された炉口フランジ18に上端が楕円曲面で閉塞された反応管19が立設され、又、該反応管19の内部に該反応管19と同心で上端が開放されているインナチューブ20が前記炉口フランジ18により支持されている。前記反応管19には円筒状のヒータユニット21が前記反応管19の周囲に所要の空間を形成する様に外嵌されており、前記ヒータユニット21は支柱を介して前記筐体1に取付けられている。前記ヒータユニット21の上端は該ヒータユニット21と一体構造の排気ダクト22により閉塞されている。該排気ダクト22は断熱材で構成され、内部にはエルボウ状の排気路23が形成されている。
【0014】
該排気路23にはシャッタ部25が接続され、該シャッタ部25には冷却部26、更に該冷却部26に排気管を介して排気装置(図示せず)が接続され、該排気装置により前記ヒータユニット21内が吸引排気される様になっている。前記シャッタ部25、冷却部26等は排気導出部を構成する。
【0015】
前記シャッタ部25は内部にバタフライ弁を備え、該バタフライ弁(図示せず)がシリンダ27により回転され、開閉或は開度が調整される様になっている。前記冷却部26はフィン、該フィンを冷却する冷却水管から構成される冷却器28を排気流路内に具備している。尚、前記排気ダクト22、シャッタ部25及び冷却部26は前記炉収納部9から水平方向に延びる上端カバー部29に収納され、前記シャッタ部25、冷却部26は前記上端カバー部29のフレーム(図示せず)に支持されている。
【0016】
上記縦型炉10の冷却について説明する。
【0017】
ウェーハの熱処理は1000℃以上の高温で行われる。又、新たに処理するウェーハ15を炉内に装入する場合、炉内温度が700℃以上であるとウェーハ表面に自然酸化膜が生成する。自然酸化膜は生成する薄膜の品質を劣化させるので、自然酸化膜の生成を抑制する必要がある。この為、ウェーハ熱処理工程に於いて、前記縦型炉10の冷却工程を設け、該縦型炉10内部の温度を700℃迄降下させている。ヒータの冷却を自然冷却で行うとすると、2℃〜4℃/min の降温速度となり、炉内温度を1000℃から700℃迄冷却するのに多大の時間を要し、更に、待機中のウェーハが炉からの輻射熱で加熱され、待機中にも自然酸化膜が生成されるという不具合がある。
【0018】
従って、上記した縦型炉10では前記ヒータユニット21内を強制排気して、縦型炉10の急冷を行っている。急冷により降温速度を25℃/min 以上とすることができる。
【0019】
急冷を行う場合、前記シャッタ部25を開とし、図示しない排気装置により前記ヒータユニット21内を吸引排気する。高温の排気ガスが多量に流出し配管の溶損等が生じない様、排気ガスは前記冷却部26により所要の温度迄冷却される。尚、急冷を行わない場合は、前記シャッタ部25は閉じられ、前記縦型炉10からの放熱が防止されている。
【0020】
上記した様に、熱処理炉では処理品質を向上させる為、或は生産性を向上させる為、縦型炉の急冷が必要であり、前記縦型炉10には排気ダクト22、シャッタ部25、冷却部26等が設けられている。
【0021】
次に、前記縦型炉10に関しては加熱性能を維持する為の保守作業が必要である。例えば、前記ヒータユニット21で発熱線が劣化の為断線することがあり、この場合は、該ヒータユニット21を取外し、発熱線の交換を行わなければならない。
【0022】
従来の熱処理炉に於ける取外し手順ついて、図8を参照して説明する。
【0023】
縦型炉10のヒータユニット21に対する保守作業は、建屋の天井高等の制限で上方からの作業は難しく、該ヒータユニット21を一旦筐体1内に降下させて取外す。この為の準備作業として、シャッタ部25、冷却部26を取外している。又、前記筐体1には背面開口部3が設けられており、降下させた前記ヒータユニット21は最終的には前記背面開口部3から外部に運出されるが、前記ヒータユニット21と排気ダクト22とは一体構造であり、該排気ダクト22頂面までの高さは、装置構成上前記背面開口部3の開口高さHよりも高くならざるを得ない。この為、前記ヒータユニット21を前記背面開口部3から外部に運出す為、周辺の構造物を取外し、或は前記縦型炉10を斜めにして運ぶ等大変な作業である。
【0024】
更に、前記上端カバー部29の上端までの高さは3m以上もあって、前記シャッタ部25、冷却部26の着脱作業は高所作業となり、而も該シャッタ部25、冷却部26の重量は30kgを越えており危険も伴っていた。
【0025】
又、上記ヒータユニット21と排気ダクト22とは一体構造であり、発熱線が断線し、前記ヒータユニット21を交換する場合は、該ヒータユニット21と、排気ダクト22とを一体として交換しなければならず、前記ヒータユニット21の製作費は高く、保守費用が高くなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は斯かる実情に鑑み、ヒータ交換作業が安全で而も簡単であると共に交換コストの低い熱処理装置、及び該熱処理装置に於ける熱処理炉及び断熱材及び排気ダクトを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、ヒータユニットの上部に排気ダクトが設けられ、該排気ダクトに排気導出部が接続された熱処理炉を有する熱処理装置に於いて、前記排気ダクトは断熱材で構成され、該排気ダクト内部はエルボウ状の排気路を形成する熱処理装置に係るものである。
【0028】
又本発明は、ヒータユニットの上部に排気ダクトが設けられ、該排気ダクトに排気導出部が接続された熱処理炉であって、前記排気ダクトは断熱材で構成され、該排気ダクト内部はエルボウ状の排気路を形成する熱処理炉に係るものである。
【0029】
又本発明は、ヒータユニットの上部に排気ダクトが設けられ、該排気ダクトに排気導出部が接続された熱処理炉で使用される断熱材であって、該断熱材は、前記排気ダクトを構成すると共に該排気ダクト内部にエルボウ状の排気路を形成する断熱材に係るものである。
【0030】
更に又本発明は、ヒータユニットの上部に設けられ、排気導出部が接続される排気路を有する排気ダクトであって、該排気ダクトは断熱材で構成され、前記排気路は前記排気ダクト内部にエルボウ状に形成された排気ダクトに係るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0032】
図1、図2は本発明の要部を示すものである。尚、半導体製造装置の基本的な構成については図5で示したものと同一であるので、説明を省略する。又、図1、図2に於いて、図6、図7中で示したものと同一のものには同符号を付してある。
【0033】
図1は縦型炉10の反応管19、インナチューブ20を省略して示している。
【0034】
ヒータユニット21の上端に天井板31を固着する。該天井板31は断熱材であり、中心には前記排気路23に連通する排気口32が形成されている。前記天井板31にドーナツ形状の断熱クロス材33を敷設し、該断熱クロス材33を介して前記ヒータユニット21に排気ダクト22を載設する。
【0035】
該排気ダクト22はダクト固定機構38を介して筐体側即ち上端カバー部29に固定される。
【0036】
前記ダクト固定機構38は前記排気ダクト22の周囲に少なくとも3組設けられ、該排気ダクト22を支持すると共に上下位置の調整、水平の調整が行える様になっている。
【0037】
前記ダクト固定機構38を図3により説明する。
【0038】
前記上端カバー部29の内面に筐体取付け金具39が固着され、前記排気ダクト22には排気部固定金具40が固着される。該排気部固定金具40及び前記筐体取付け金具39を貫通する調整ボルト41を設ける。該調整ボルト41の前記筐体取付け金具39の挿通孔、排気部固定金具40の挿通孔はそれぞれ充分な遊びがあり、この遊びにより前記上端カバー部29と排気ダクト22との取付け誤差が吸収できる様になっている。
【0039】
又、前記調整ボルト41は上ロックナット42により前記筐体取付け金具39に固定され、前記排気部固定金具40はレベル調整ナット43を介して前記調整ボルト41に支持される。前記排気部固定金具40の前記調整ボルト41への最終的な固定は下ロックナット44によって行われる。尚、前記レベル調整ナット43は緩止めの為、ダブルナットとなっている。
【0040】
尚、該レベル調整ナット43の位置調整を行い、更に下ロックナット44を締込むことで前記排気ダクト22と前記ヒータユニット21間に挾持した天井板31、断熱クロス材33に所望の挾持力を与えることができる。
【0041】
前記天井板31(好ましくは前記ヒータユニット21)と前記排気ダクト22とに掛渡る幅を有する固定ベルト35を前記天井板31と前記排気ダクト22との境界部に巻設する。前記固定ベルト35の両端にはボルト、ナット等の係着具36が固着されており、該係着具36により所要の締付け力が得られると共に容易に着脱が可能となっている。
【0042】
前記ヒータユニット21の上端に前記天井板31を設けることで、前記ヒータユニット21内の熱、高温の雰囲気ガスが直接外部に逃げることがなく、又、前記断熱クロス材33は前記排気ダクト22と前記天井板31との気密性を高めるものであり、更に、前記固定ベルト35が巻設されることで、前記排気ダクト22と、天井板31間の境界部からの、熱の逃げ、排気ガスの漏出は充分に防止される。
【0043】
前記排気路23に連通する排気口23aにシャッタ部25が接続され、該シャッタ部25に冷却器28が接続されている。前記シャッタ部25と前記冷却器28とは一体化され、前記ダクト固定機構38と同様な構造である支持機構37を介して上端カバー部29のフレーム(図示せず)に取付けられている。前記支持機構37はボルト等により上下方向の位置を調節できる様になっている。
【0044】
図4を参照して、本発明に係る熱処理装置の前記ヒータユニット21の交換作業について説明する。
【0045】
前記固定ベルト35を取外す。該固定ベルト35を取外すことで、前記排気ダクト22と前記ヒータユニット21との物理的な連結が解除され、該ヒータユニット21は降下可能となる。又、前記排気ダクト22とヒータユニット21とが切離されることで、前記シャッタ部25、冷却部26を前記排気ダクト22から取外す必要がなくなる。図4の下方に2点差線で前記ヒータユニット21を示しているが、前記排気ダクト22が切離されることで、前記ヒータユニット21の高さは前記背面開口部3の高さHより充分低くなり、周辺の構造物を取外す、或は前記ヒータユニット21を傾けるということなしに、該ヒータユニット21を前記背面開口部3から運び出すことができ、保守作業は著しく容易になる。
【0046】
尚、前記ヒータユニット21の交換には前記排気ダクト22を取外す必要はないが、前記ヒータユニット21と上端カバー部29との切離しは前記レベル調整ナット43を取外すことで簡単に行える。又、前記上端カバー部29とシャッタ部25、冷却器28との切離しも前記支持機構37により同様に行える。
【0047】
又、発熱線の断線等により、前記ヒータユニット21を交換する場合にも前記排気ダクト22が切離されているので、前記ヒータユニット21の製作コストは低く抑えられる。
【0048】
該ヒータユニット21の組込みは、上記手順の逆を行えばよいが、前記支持機構37、ダクト固定機構38による位置調整で、前記天井板31と排気ダクト22との製作誤差、取付け誤差を吸収する。
【0049】
上述した様に、排気ダクト22とヒータユニット21とを分離可能とし、更に、ヒータユニット21の上端に天井板31を設け、更に境界部に断熱クロス材33を設け、排気ダクト22をヒータユニット21に押圧する様にしたので、気密性が保証され、更に境界部を固定ベルト35で巻いているので、分離したことによる断熱性の低下はない。
【0050】
以上述べた如く本発明によれば、反応管を収納するヒータユニットの上部に排気ダクトが設けられ、該排気ダクトに排気導出部が接続された熱処理炉を有する熱処理装置に於いて、前記排気ダクトと前記ヒータユニットとを分離可能とした熱処理装置に係るものであり、前記排気ダクトと前記ヒータユニットとを分離可能としたので、排気導出部を取外すことなくヒータユニットの交換ができ、作業性が向上すると共に高所作業がなくなり安全性が向上し、更にヒータユニットの交換で従来の様に排気ダクトも一体に製作する必要がないので、交換ヒータユニットの価格が安価となり、保守コストが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態の要部を示す立断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の要部を示す斜視説明図である。
【図3】本発明の実施の形態の固定機構を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に於けるヒータユニットの交換作業を示す説明図である。
【図5】従来の熱処理装置を示す概略説明図である。
【図6】従来の熱処理装置の要部を示す立断面図である。
【図7】従来の熱処理装置の要部を示す平面図である。
【図8】従来の熱処理装置に於けるヒータユニットの交換作業を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 筐体
3 背面開口部
10 縦型炉
21 ヒータユニット
22 排気ダクト
23 排気路
25 シャッタ部
26 冷却部
31 天井板
33 断熱クロス材
35 固定ベルト
37 支持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータユニットの上部に排気ダクトが設けられ、該排気ダクトに排気導出部が接続された熱処理炉を有する熱処理装置に於いて、前記排気ダクトは断熱材で構成され、該排気ダクト内部はエルボウ状の排気路を形成することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
ヒータユニットの上部に排気ダクトが設けられ、該排気ダクトに排気導出部が接続された熱処理炉であって、前記排気ダクトは断熱材で構成され、該排気ダクト内部はエルボウ状の排気路を形成することを特徴とする熱処理炉。
【請求項3】
ヒータユニットの上部に排気ダクトが設けられ、該排気ダクトに排気導出部が接続された熱処理炉で使用される断熱材であって、該断熱材は、前記排気ダクトを構成すると共に該排気ダクト内部にエルボウ状の排気路を形成することを特徴とする断熱材。
【請求項4】
ヒータユニットの上部に設けられ、排気導出部が接続される排気路を有する排気ダクトであって、該排気ダクトは断熱材で構成され、前記排気路は前記排気ダクト内部にエルボウ状に形成されたことを特徴とする排気ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−110141(P2007−110141A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302825(P2006−302825)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【分割の表示】特願2000−97497(P2000−97497)の分割
【原出願日】平成12年3月31日(2000.3.31)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】