説明

熱処理装置

【課題】ヒーターの絶縁支持構造の信頼性を向上させることができる熱処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施の形態に係る熱処理装置1は、発熱体(ヒーター板H4)を支持する支持機構S4において、発熱体を支持する支持部材402が金属材料で構成されている。このため、発熱体が炭素系材料のような材料で構成されている場合でも、発熱体と第2の部材との間の熱反応による当該第2の部材の変質あるいは融解を防止できる。また、支持部材402は電気絶縁性の絶縁部材403を介して金属製の支持軸401に支持されているため、発熱体の絶縁耐圧を安定に確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置に関し、更に詳しくは、信頼性の高いヒーターの絶縁支持構造を有する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼結材料の製造プロセスや半導体基板の熱処理プロセスの実施に際しては、大気中または所定の減圧雰囲気中で被処理物を加熱処理するための熱処理装置が広く用いられている。被処理物は、所定温度に加熱された加熱室内に装填されて熱処理される。熱処理装置としては、バッチ処理炉のほか、インライン式の熱処理炉が知られている。
【0003】
この種の熱処理装置は、加熱室と、この加熱室を加熱するヒーターとを備えている。ヒーターは、抵抗発熱体と、この抵抗発熱体へ電力を供給するための給電端子とを有する通電加熱方式または電熱方式のヒーターが広く用いられている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、両端が電極ボルトに接続された線材ヒーターをつづら折り状に繰り返し折り曲げることで、発熱分布の均一化が図られたヒーターユニットが記載されている。線材ヒーターは、タンタル、モリブデン又はタングステンの金属線で構成されている。線材ヒーターの折り返し部は、アルミナ等の断熱性を有する2枚のディスクとこれらを貫通するボルトとを含む支持部材によって支持されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−246972号公報(段落[0021]〜[0026]、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の熱処理装置においては、ヒーターユニットに対する信頼性の高い絶縁支持構造が求められている。上記特許文献1に記載の構成では、耐熱性を有する電気絶縁性の材料を介してヒーター線材を支持するようにしている。
【0007】
しかしながら、ヒーターに炭素系材料からなる発熱体を用いた場合、アルミナ等の酸化物セラミックスで当該発熱体を支持すると、カーボンとの熱反応によってアルミナが還元され、ヒーターの絶縁耐圧が低下するという問題がある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、ヒーターの絶縁支持構造の信頼性を向上させることができる熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る熱処理装置は、加熱室を区画するケーシングと、発熱体と、支持機構とを具備する。
上記発熱体は、上記加熱室を加熱するためのものであり、上記ケーシングの内部に設置される。上記支持機構は、上記ケーシングに結合された金属材料からなる第1の部材と、上記発熱体と接触することで前記発熱体を支持する金属材料からなる第2の部材と、上記第1の部材と上記第2の部材の間に配置された電気絶縁材料からなる第3の部材とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る熱処理装置は、加熱室を区画するケーシングと、発熱体と、支持機構とを具備する。
上記発熱体は、上記加熱室を加熱するためのものであり、上記ケーシングの内部に設置される。上記支持機構は、上記ケーシングに結合された金属材料からなる第1の部材と、上記発熱体と接触することで前記発熱体を支持する金属材料からなる第2の部材と、上記第1の部材と上記第2の部材の間に配置された電気絶縁材料からなる第3の部材とを有する。
【0011】
上記熱処理装置は、発熱体を支持する支持機構において、発熱体を支持する第2の部材が金属材料で構成されている。このため、発熱体が炭素系材料のような材料で構成されている場合でも、発熱体と第2の部材との間の熱反応による当該第2の部材の変質あるいは融解を防止できる。また、第2の部材は電気絶縁性の第3の部材を介して第1の部材に支持されているため、発熱体の絶縁耐圧を安定に確保することができる。
【0012】
上記熱処理装置によれば、発熱体を安定に保持できるので、ヒーターの絶縁支持構造の信頼性を向上させることが可能となる。
【0013】
上記第1の部材は軸状部材で構成することができる。この場合、上記第3の部材は、上記第1の部材の周囲に配置された筒状部材で構成することができる。
例えば、上記第2の部材は、上記第3の部材の周囲に配置された環状または筒状部材とすることができる。
これにより、第1の部材と第2の部材との間の電気的絶縁を第3の部材によって安定に保持することが可能となる。
【0014】
この場合、上記発熱体は、上記第3の部材の外径よりも大きく上記第2の部材の外径よりも小さい孔径の貫通孔を有する、水平方向に延在する第1のヒーター板を含んでいてもよい。この場合、上記第1及び第3の部材は、上記貫通孔を貫通し、上記第2の部材は、上記第1のヒーター板の下面を支持する第1の支持面を有する構成とすることができる。
これにより、第1のヒーター板の熱変形を許容して、第1のヒーター板をその熱応力から保護することができる。
【0015】
上記の例において、上記支持機構は、上記第2の部材を介して上記発熱体を支持する電気絶縁材料からなる第4の部材と、上記第1の部材の周囲に取り付けられ、上記第4の部材を支持する金属材料からなる第5の部材とをさらに有していてもよい。
これにより、第4の部材を介して第2の部材を第5の部材に安定に支持することが可能となる。
【0016】
一方、上記発熱体は、鉛直方向に延在し、下端部を有する第2のヒーター板を含んでいてもよい。この場合、上記第2の部材は、上記第2のヒーター板の上記下端部を介して対向する一対のフランジ部を有し、上記第2のヒーター板に対して非接触で上記下端部に対向するようにしてもよい。
これにより、第2のヒーター板の熱変形を許容して、第2のヒーター板をその熱応力から保護することができる。
【0017】
上記第2の部材は、上記第3の部材と係合する第1の係合部と、上記発熱体と係合する第2の係合部と、上記第1の係合部と上記第2の係合部の間に形成され、上記発熱体の下面を支持する第2の支持面とを有する構成とすることができる。
これにより、第1の部材と第2の部材との間の電気的絶縁を確保しつつ発熱体を安定に支持することが可能となる。
【0018】
上記発熱体は炭素系材料で構成されてもよいし、上記第3の部材は、酸化物系セラミックス材料で構成されてもよい。上述のように、第2の部材は金属材料からなり、第3の部材と発熱体とが互いに接触する構成ではない。このため、アルミナ等の酸化物系セラミックス材料からなる第3の部材の還元反応による変質を防止して、発熱体の絶縁支持構造の信頼性を高めることが可能となる。
【0019】
上記熱処理装置は、上記発熱体へ電力を供給するための給電端子をさらに具備することができる。上記発熱体は、第1の発熱面と、第2の発熱面と、第3の発熱面とを有してもよい。上記第1の発熱面は、第1の端部と第2の端部とを有し上記給電端子が接続される。上記第2の発熱面は、上前記第1の端部に接続され上記第1の発熱面に対して交差する方向に延在する。そして、上記第3の発熱面は、上記第2の端部に接続され上記第1の発熱面に対して交差する方向に延在する。
上記構成により、均熱性に優れたヒーター構造を得ることが可能となる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態による熱処理装置1を正面方向から見たときの要部断面図である。
【0022】
熱処理装置1は、インライン式の熱処理炉における加熱室を構成している。上記熱処理炉は、永久磁石材料製造用の焼結炉、半導体装置製造用の熱処理炉などが該当する。また、この熱処理装置1に隣接して、図示せずとも予備加熱室や冷却室等が設置されている。
【0023】
熱処理装置1は、炉本体10と、炉本体10の内部に配置されたケーシング11とを備えている。ケーシング11は、炉本体の内部に被処理物Wを加熱する加熱室12を区画する。被処理物Wとしては、例えば、焼結すべき永久磁石材料の成形体、半導体基板などが該当する。
【0024】
炉本体10は、ステンレス鋼などの金属材料で形成されている。炉本体10は水冷構造を有していてもよい。図示する炉本体10は、底部と両側壁部を有する上面が開口した形状を有している。炉本体10の上面には天板13が取り付けられており、これら炉本体10と天板13によって炉内に密閉空間を形成する。なお、炉壁は断面矩形状に形成されているが、略円形状であってもよい。
【0025】
炉本体10は、図示しない真空ポンプに接続される排気ポート14と、炉内に搬送される被処理物Wを検知するための検知ポート15をそれぞれ有している。
【0026】
ケーシング11は、例えば、炭素系材料のような断熱材料で構成されている。ケーシング11は、複数の断熱板を組み合わせて角筒形状に形成されている。また、ケーシング11は、炉内の底部及び両側壁部に設置された支持部16a、16b及び16cによって、炉内に固定されている。
【0027】
加熱室12の内部には、被処理物Wを支持するトレーTを搬送するための搬送系(図示略)が設置されている。上記搬送系としては、例えば、トレーTの裏面に接触する搬送ローラ等によって構成することができる。被処理物Wは、加熱室12内を図1において紙面垂直方向に搬送される。
【0028】
加熱室12の内部には、加熱室12を加熱するための上側ヒーター組立体Haと下側ヒーター組立体Hbとがそれぞれ設置されている。上側ヒーター組立体Ha及び下側ヒーター組立体Hbは、被処理物Wの搬送方向に沿って複数組設置されている。
【0029】
上側ヒーター組立体Ha及び下側ヒーター組立体Hbは、その構成部品のすべてが抵抗発熱体で構成されている。本実施の形態では、抵抗発熱体として炭素系材料(カーボン又はカーボン複合材料)からなる複数のヒーター板が用いられ、これらを格子状に組み合わせて各ヒーター組立体を構成している。
【0030】
上側ヒーター組立体Haは、被処理物Wの上面を主に加熱する複数本のヒーター板H1(第1のヒーター板)を含む第1の発熱面と、被処理物Wの各側面を主に加熱する複数本のヒーター板H2及びH3(第2及び第3のヒーター板)を含む第2及び第3の発熱面とを有している。また、下側ヒーター組立体Hbは、被処理物Wの下面を主に加熱する複数本のヒーター板H4(第4のヒーター板)を含む第4の発熱面を有している。これにより、均熱性に優れたヒーター構造を得ることができる。
【0031】
上側ヒーター組立体Ha及び下側ヒーター組立体Hbには、正極用ヒーター端子及び負極用ヒーター端子(これらの構成は同一であるので、以下、単にヒーター端子Htという。)がそれぞれ接続されている。これにより、上側ヒーターユニットHUa及び下側ヒーターユニットHUbがそれぞれ構成される。なお、以降の説明では、単にヒーターユニットHUというときには、上側ヒーターユニットHUa及び下側ヒーターユニットHUbの両方を含むものとする。
【0032】
上側ヒーターユニットHUaを構成するヒーター端子Htは、天板13及びケーシング11を貫通して、上側ヒーター組立体Haに接続されている。当該ヒーター端子Htは、天板13に対して気密に固定されている。一方、下側ヒーターユニットHUbを構成するヒーター端子Htは、炉本体10の底部及びケーシング11を貫通して、下側ヒーター組立体Hbに接続されている。当該ヒーター端子Htは、炉本体10に対して気密に固定されている。各ヒーター端子Htは、ヒーター組立体Ha、Hbへ電力を供給し、ヒーター組立体Ha、Hbを発熱させる。
【0033】
熱処理装置1は、上側ヒーター組立体Haを支持するための支持機構S1、S2及びS3を備えている。第1の支持機構S1は、第1の発熱面を構成するヒーター板H1を支持するためのもので、ケーシング11の上壁面側に設置されている。第2の支持機構S2は、第2の発熱面を構成するヒーター板H2を支持するためのもので、ケーシング11の一方の側壁面側に設置されている。第3の支持機構S3は、第3の発熱面を構成するヒーター板H3を支持するためのもので、ケーシング11の他方の側壁面側に設置されている。
【0034】
また、熱処理装置1は、下側ヒーター組立体Hbを支持するための第4の支持機構S4を備えている。第4の支持機構S4は、第4の発熱面を構成するヒーター板H4を支持するためのもので、ケーシング11の底壁面側に設置されている。
【0035】
以下、支持機構S1〜S4の詳細について図2〜図4を参照して説明する。
【0036】
図2は、第1の支持機構S1の詳細を示す拡大図である。第1の支持機構S1は、支持軸101(第1の部材)と、支持部材102(第2の部材)と、絶縁部材103(第3の部材)と、中継部材104(第4の部材)と、受け部材105(第5の部材)とを有している。
【0037】
支持軸101は高融点金属材料からなり、例えば、モリブデン(Mo)やタングステン(W)、タンタル(Ta)等で構成されている。支持軸101は軸状部材であり、ケーシング11の上壁部を貫通している。支持軸101の上端側は、ケーシング11の上面で結合部材108に結合されている。支持軸101の下端側は、ヒーター板H1の面内に形成された貫通孔110を貫通している。貫通孔110は、絶縁部材103の外径よりも大きく、支持部材102の外径よりも小さい孔径で構成されている。
【0038】
絶縁部材103は耐熱性を有する電気絶縁材料からなり、例えば、Al等の酸化物系セラミックス材料で構成されている。絶縁部材103は円筒状又は角筒状の部材であり、支持軸101が挿通されることで支持軸101の周囲に配置されている。これにより、支持軸101と支持部材102との間の電気的絶縁を絶縁部材103によって安定に保持することが可能となる。
【0039】
絶縁部材103は、支持軸101に螺合された受け部材105によってその下端位置が規定されている。また、支持軸101にはナット部材107が螺合されており、このナット部材107によって絶縁部材103の上端位置が規定されている。
【0040】
支持部材102は高融点金属材料からなり、例えば、モリブデンやタングステン、タンタル等で構成されている。支持部材102は、上端にフランジが形成された筒状部材であり、支持軸101及び絶縁部材103が挿通されることで支持軸101の周囲に配置されている。支持部材102のフランジ上面は、ヒーター板H1の下面を支持する支持面(第1の支持面)を構成している。
【0041】
中継部材104は耐熱性を有する電気絶縁材料からなり、例えば、Al等の酸化物系セラミックス材料で構成されている。中継部材104は円筒状又は角筒状の部材であり、支持部材102と受け部材105の間を電気絶縁的に支持している。これにより、中継部材104を介して支持部材102が安定に保持される。
【0042】
受け部材105は高融点金属材料からなり、例えば、モリブデンやタングステン、タンタル等で構成されている。受け部材105は、支持軸101に螺合するナット部材であり、絶縁部材103とともに中継部材104を支持している。受け部材105は、ロックナット106によってその下端位置が規定されている。
【0043】
以上のように構成される第1の支持機構S1は、各ヒーター板H1に対して、ヒーター端子Htの接続位置に関して対称な任意の2箇所にそれぞれ設置されている(図1)。
【0044】
図3は、第3の支持機構S3の詳細を示す拡大図である。第3の支持機構S3は、支持軸301(第1の部材)と、支持部材302(第2の部材)と、絶縁部材303、304、305(第3の部材)とを有している。なお、第2の支持機構S2は、以下に説明する第3の支持機構S3と同様な構成を有している。
【0045】
支持軸301は高融点金属材料からなり、例えば、モリブデンやタングステン、タンタル等で構成されている。支持軸301は軸状部材であり、ケーシング11の側壁部を貫通している。支持軸301の一端は、ケーシング11の側壁外面側で結合部材308に結合されている。支持軸301の他端は、支持部材302、絶縁部材303、304、305等が装着されている。
【0046】
絶縁部材303は耐熱性を有する電気絶縁材料からなり、例えば、Al等の酸化物系セラミックス材料で構成されている。絶縁部材303は、円筒状又は角筒状の部材であり、支持軸301が挿通されることで支持軸301の周囲に配置されている。絶縁部材303は、支持軸301に螺合されたナット部材306、307によってその装着位置が規定されている。
【0047】
支持部材302は高融点金属材料からなり、例えば、モリブデンやタングステン、タンタル等で構成されている。支持部材302は、絶縁部材303が挿通されることで絶縁部材303の周囲に配置されている。支持部材302は、ヒーター板H3及びHs3の下端部と一定の間隙を介して対向している。ヒーター板Hs3及びHs2はそれぞれ、複数本のヒーター板H3、H2を一体に固定するためのものであり、ヒーター板H3、H2と同様なカーボン製材料で構成されている。
【0048】
本実施の形態において、支持部材302は、3つの金属部品302a、302b及び302cで構成されている。第1の金属部品302aは、円筒状又は角筒状部品からなり、絶縁部材303の外周面に装着されている。第2および第3の金属部品302b及び302cはそれぞれ板状の金属部品からなり、第1の金属部品302a及びヒーター板H3及びHs3を挟むようにして絶縁部材303の外周面に装着されている。第1の金属部品302aは、支持部材302の軸部を構成しており、その外周面はヒーター板H3及びHs3の下端部に所定の間隙をあけて対向している。第2及び第3の金属部品302b及び302cは、支持部材302の両端に位置する一対のフランジ部をそれぞれ構成し、ヒーター板H3及びHs3に非接触で対向している。
【0049】
絶縁部材304及び305は、絶縁部材303に対する支持部材302の位置ズレを規制するためのものであり、これら支持部材302及び絶縁部材303を挟むようにして軸部材301の周囲に配置されている。また、絶縁部材304、305は、ナット部材306、307によってその装着位置が規定されている。
【0050】
以上のように構成される第3(第2)の支持機構S3(S2)は、上側ヒーター組立体Haの第3(第2)の発熱面を構成するヒーター板Hs3(Hs2)の下端部と対向する任意の単数又は複数の位置にそれぞれ設置されている。
【0051】
図4は、第4の支持機構S4の詳細を示す拡大図である。第4の支持機構S4は、支持軸401(第1の部材)と、支持部材402(第2の部材)と、絶縁部材403(第3の部材)とを有している。
【0052】
支持軸401は高融点金属材料からなり、例えば、モリブデンやタングステン、タンタル等で構成されている。支持軸401は軸状部材であり、ケーシング11の底壁部を貫通している。支持軸401の周囲には座金401aが固定されており、座金401aとケーシング11の底壁部上面との係合によって、ケーシング11に対する支持軸401の相対位置が規定されている。
【0053】
絶縁部材403は耐熱性を有する電気絶縁材料からなり、例えば、Al等の酸化物系セラミックス材料で構成されている。絶縁部材403は、円筒状又は角筒状の部材であり、その下端側は支持軸401が挿通されることで支持軸401の周囲に配置され、上端部は支持部材402と係合している。
【0054】
支持部材402は高融点金属材料からなり、例えば、モリブデンやタングステン、タンタル等で構成されている。支持部材402は、絶縁部材403と係合する第1の係合部402aと、ヒーター板H4の面内に形成された貫通孔410と係合する第2の係合部402bとを有している。
【0055】
貫通孔410は、第2の係合部402bの外径よりも大きい孔径で構成されている。そして、支持部材402の第1の係合部402aと第2の係合部402bとの間には、ヒーター板H4の下面を支持する支持面402c(第2の支持面)が形成されている。この支持面402cは、支持部材402の周囲に形成されたフランジ部の上面に対応する。
【0056】
これにより、支持軸401と支持部材402との間の電気的絶縁を確保しつつ、ヒーター板H4を安定に支持することが可能となる。
【0057】
以上のように構成される第4の支持機構S4は、下側ヒーター組立体Hbの第4の発熱面を構成するヒーター板H4の下端部に対向する任意の複数の位置にそれぞれ設置されている。
【0058】
次に、以上のように構成される熱処理装置1の動作について説明する。
【0059】
まず、炉内が排気ポート14を介して所定の減圧雰囲気(例えば、10Pa〜10−5Pa)に排気される。また、熱処理装置1は、不活性ガス雰囲気あるいは水素や酸素などの反応性雰囲気で被処理物Wを加熱処理するように構成されてもよい。この場合、炉内は減圧された後、所定圧のガス雰囲気に置換される。熱処理装置1がインライン式熱処理炉で構成される場合、隣接する他の処理室も同様な雰囲気に設定される。
【0060】
加熱室12は上側ヒーターユニットHUa及び下側ヒーターユニットHUbによって所定温度に加熱される。加熱室12の設定温度は特に限定されず、被処理物Wの種類や熱処理の態様に応じて適宜設定され、例えば、1100℃〜1600℃である。加熱室12は、断熱性のケーシング11によって区画されているので、ヒーターユニットHU(HUa、HUb)によって効率よく加熱される。
【0061】
被処理物Wは、トレーTの上に載置されて、所定温度に加熱された加熱室12内へ搬入される。被処理物Wの熱処理は、加熱室12内で被処理物Wが搬送される途上で実施されてもよいし、加熱室12内で被処理物Wが搬送を停止された状態で実施されてもよい。
【0062】
上側ヒーター組立体Ha及び下側ヒーター組立体Hbは、ヒーター端子Htから電力を供給されることで発生するジュール熱によって発熱する。上側ヒーター組立体Haは、第1の支持機構S1を介してケーシング11の上壁部に支持され、下側ヒーター組立体Hbは、第4の支持機構S4を介してケーシング11の底壁部に支持される。
【0063】
上述のように、本実施の形態の支持機構S1及びS4において、ヒーター板H1、H4を接触支持する支持部材102、402は、それぞれ高融点金属材料で構成され、かつ、絶縁部材103、403を介して支持軸101、401に固定されている。すなわち、炭素系材料からなるヒーター板H1、H4と酸化物系セラミックス材料からなる絶縁部材103、403との間に高融点金属材料からなる支持部材102、402が介在されている。このため、上記ヒーター板と絶縁部材との接触に起因する当該絶縁部材の還元反応は生じ得ず、絶縁部材103、403の変質あるいは溶解が効果的に回避される。
【0064】
したがって、本実施の形態によれば、ヒーター板H1、H4とケーシング11との間の電気的絶縁が確保される。これにより、ヒーター組立体Ha、Hbの絶縁支持構造の信頼性を高めることが可能となる。
【0065】
一方、ヒーター組立体Ha、Hbには、発熱による熱膨張、自重による撓みなどの変形が生じ得る。このとき、ヒーター組立体Ha、Hbが支持機構S1、S4によって強く拘束されていると、熱変形作用が阻害されることでヒーター板の破損が誘発される。
【0066】
これに対して本実施の形態では、支持機構S1〜S4は、ヒーター組立体Ha、Hbの一定の熱変形を許容する構造を有している。すなわち、第1の支持機構S1に関しては、図2に示したように、ヒーター板H1の貫通孔110と、これに挿通される絶縁部材103との間に、一定の隙間が形成されている。このため、当該一定の範囲でのヒーター板H1の変形が許容されることになる。これにより、上側ヒーター組立体Haの破損を抑制することができる。
【0067】
同様に、第4の支持機構S4に関しては、図4に示したように、ヒーター板H4の貫通孔410と、これに係合される支持部材402の第2の係合部402bとの間に、一定の隙間が形成されている。このため、当該一定の範囲でのヒーター板H4の変形が許容されることになる。これにより、下側ヒーター組立体Hbの破損を抑制することができる。
【0068】
さらに、第2、第3の支持機構S2、S3に関しては、図3に示したように、ヒーター板H3、Hs3(H2、Hs2)の下端部と、支持部材302との間に一定の隙間が形成されている。このため、当該一定の範囲でのヒーター板H3、Hs3(H2、Hs2)の変形が許容されることになる。これにより、上側ヒーター組立体Haの破損を抑制することができる。
【0069】
なお、第2、第3の支持機構S2、S3において、ヒーター板と対向する支持部材302が高融点金属材料で構成されている。このため、ヒーター板の変形によって当該ヒーター板と支持部材302が接触したとしても、支持機構S2、S3の絶縁部材の変質が防止される。これにより、当該支持機構S2、S3における電気的絶縁支持構造を維持することができる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0071】
例えば、以上の実施の形態では、発熱体として、炭素系材料でなる板状ヒーターを用いたが、これに限られない。具体的に、発熱体としてSiCなどのセラミックスヒーターを用いてもよいし、棒状ヒーターなどの他の形状のヒーターを用いてもよい。
【0072】
また、以上の実施の形態では、複数のヒーター組立体を有する熱処理装置を例に挙げて説明したが、ヒーター組立体の設置位置や設置個数は上記の例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施の形態による熱処理装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1の熱処理装置における一部のヒーター支持構造を示す拡大図である。
【図3】図1の熱処理装置における他の一部のヒーター支持構造を示す拡大図である。
【図4】図1の熱処理装置における更に他の一部のヒーター支持構造を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0074】
1…熱処理装置
10…炉本体
11…ケーシング
12…加熱室
13…天板
14…排気ポート
101、301、401…支持軸(第1の部材)
102、302、402…支持部材(第2の部材)
103、303、403…絶縁部材(第3の部材)
104…中継部材(第4の部材)
105…受け部材(第5の部材)
110、410…貫通孔
402a…第1の係合部
402b…第2の係合部
H1〜H4…ヒーター板
Ha…上側ヒーター組立体
Hb…下側ヒーター組立体
Ht…ヒーター端子
HUa、HUb…ヒーターユニット
S1〜S4…支持機構
W…被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱室を区画するケーシングと、
前記ケーシングの内部に設置され、前記加熱室を加熱するための発熱体と、
前記ケーシングに結合された金属材料からなる第1の部材と、前記発熱体と接触することで前記発熱体を支持する金属材料からなる第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材の間に配置された電気絶縁材料からなる第3の部材とを有する支持機構と
を具備する熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理装置であって、
前記第1の部材は軸状部材であり、
前記第3の部材は、前記第1の部材の周囲に配置された筒状部材である
熱処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の熱処理装置であって、
前記第2の部材は、前記第3の部材の周囲に配置された環状または筒状部材である
熱処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の熱処理装置であって、
前記発熱体は、前記第3の部材の外径よりも大きく前記第2の部材の外径よりも小さい孔径の貫通孔を有する、水平方向に延在する第1のヒーター板を含み、
前記第1及び第3の部材は、前記貫通孔を貫通し、
前記第2の部材は、前記第1のヒーター板の下面を支持する第1の支持面を有する
熱処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の熱処理装置であって、
前記支持機構は、
前記第2の部材を介して前記発熱体を支持する電気絶縁材料からなる第4の部材と、
前記第1の部材の周囲に取り付けられ、前記第4の部材を支持する金属材料からなる第5の部材とをさらに有する
熱処理装置。
【請求項6】
請求項3に記載の熱処理装置であって、
前記発熱体は、鉛直方向に延在し、下端部を有する第2のヒーター板を含み、
前記第2の部材は、
前記第2のヒーター板の前記下端部を介して対向する一対のフランジ部を有し、
前記第2のヒーター板に対して非接触で前記下端部に対向している
熱処理装置。
【請求項7】
請求項2に記載の熱処理装置であって、
前記第2の部材は、
前記第3の部材と係合する第1の係合部と、
前記発熱体と係合する第2の係合部と、
前記第1の係合部と前記第2の係合部の間に形成され、前記発熱体の下面を支持する第2の支持面とを有する
熱処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の熱処理装置であって、
前記発熱体は、炭素系材料からなり、
前記第3の部材は酸化物系セラミックス材料からなる
熱処理装置。
【請求項9】
請求項1に記載の熱処理装置であって、
前記発熱体へ電力を供給するための給電端子をさらに具備し、
前記発熱体は、
第1の端部と第2の端部とを有し前記給電端子が接続される第1の発熱面と、
前記第1の端部に接続され前記第1の発熱面に対して交差する方向に延在する第2の発熱面と、
前記第2の端部に接続され前記第1の発熱面に対して交差する方向に延在する第3の発熱面とを有する
熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−112567(P2010−112567A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282866(P2008−282866)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】