説明

熱制御板

【課題】半導体基板処理装置のシャワーヘッド電極アセンブリ、および半導体基板処理室内のシャワーヘッド電極を支持するための熱制御板を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置のシャワーヘッド電極アセンブリは、シャワーヘッド電極に取り付けられた熱制御板、および熱制御板に取り付けられた上板を備える。少なくとも1つの熱ブリッジが、熱制御板の対向する両表面と上板との間に提供されて、熱制御板と上板との間の電気的および熱的な伝導を可能にする。熱ブリッジと上板との間の潤滑材料は、天板と熱制御板との間の熱膨張の違いに起因する、対向する金属表面の摩損を最小限にする。熱制御板によって支持されたヒータは、温度制御された天板と連携して、シャワーヘッド電極を所望の温度に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置用のシャワーヘッド電極アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置は、エッチング、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、イオン注入、およびレジスト除去を含む各技法によって基板を処理するのに使用される。プラズマ処理で使用されるプラズマ処理装置の1つのタイプでは、上部電極および下部電極を含む反応室を備える。電界が両電極間で確立されて、プロセス・ガスをプラズマ状態に励起して反応室内の基板を処理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,073,577号
【特許文献2】米国特許第5,534,751号
【発明の概要】
【0004】
半導体基板処理装置のシャワーヘッド電極アセンブリ、および半導体基板処理室内のシャワーヘッド電極を支持するための熱制御板が提供される。
半導体基板処理室内のシャワーヘッド電極を支持するための熱制御板の好ましい一実施形態は、温度制御された上板に取外し自在に取り付けることができる金属外側部分、ならびにシャワーヘッド電極および上板に取外し自在に取り付けることができる金属内側部分を備える。熱制御板の内側部分は、上板とシャワーヘッド電極との間の熱的および電気的な経路を提供する。
【0005】
プラズマ処理装置用のシャワーヘッド電極アセンブリの好ましい一実施形態は、上板、シャワーヘッド電極、および熱制御板を備える。熱制御板は、熱制御板の中心部分が上板に対して相対的に移動可能になるように、シャワーヘッド電極および上板に取り付けられている。少なくとも1つの熱ブリッジが、熱制御板の中心部分と上板との間に設けられる。この熱ブリッジは、シャワーヘッド電極と上板との間の熱的および電気的な経路を提供する。
【0006】
熱ブリッジは、熱制御板の対向する両表面と上板との間で、滑りを可能にし、ならびに熱的および電気的な伝導をもたらすために、潤滑材料を備えることが好ましい。
【0007】
他の好ましい一実施形態は、半導体基板処理室で半導体基板を処理する方法を提供し、その方法は、(a)半導体基板処理装置のプラズマ室内で、下部電極を備える基板支持具上に基板を載置すること、(b)好ましい一実施形態によるシャワーヘッド電極アセンブリを有するプラズマ室にプロセス・ガスを供給すること、(c)シャワーヘッド電極アセンブリと基板との間で、プラズマ室内のプロセス・ガスからプラズマを生成すること、(d)基板をプラズマで処理すること、(e)プラズマの生成を終了すること、および(f)プラズマ室から基板を取り出すことを含む。シャワーヘッド電極アセンブリは、ヒータを備えることが好ましい。他の好ましい一実施形態では、前記方法は、シャワーヘッド電極を所望の温度に維持するために(e)の後にヒータを作動させて熱をシャワーヘッド電極に加えること、および/または(a)から(f)の間、ヒータを作動させて熱をシャワーヘッド電極に加えることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プラズマ処理装置用のシャワーヘッド電極アセンブリおよび基板支持具の好ましい一実施形態の一部分を示す図である。
【図2】上板のないシャワーヘッド電極アセンブリの好ましい一実施形態の上面斜視図である。
【図3】シャワーヘッド電極アセンブリの電源とヒータとの間の例示的な電気的接続を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、半導体基板、たとえばシリコン・ウェーハが処理されるプラズマ処理装置用のシャワーヘッド電極アセンブリ10の好ましい一実施形態を示している。シャワーヘッド電極アセンブリ10(その半分だけが図1に示されている)は、上部電極20および上部電極20に固着された任意選択の裏当て部材40、熱制御板58、ならびに上板80を含むシャワーヘッド電極を備える。上板80は、プラズマ・エッチング室などのプラズマ処理装置の取外し可能な上端壁を形成することができる。
【0010】
下部電極および任意選択の静電クランプ電極を含む基板支持具15(その一部分だけが図1に示されている)は、プラズマ処理装置の真空処理室内の上部電極20の下に配置される。プラズマ処理が施される基板16は、機械的または静電気的に、基板支持具15の上部支持表面17上にクランプされる。
【0011】
シャワーヘッド電極の上部電極20は、内側電極部材22、および任意選択の外側電極部材24を備えることが好ましい。内側電極部材22は、円筒形の板(たとえば単結晶シリコン)であることが好ましい。この板が単結晶シリコンで作られている場合、内側電極部材22の直径は、たとえば12インチ(300mm)までの被処理ウェーハよりも、小さくても、同じでも、また大きくてもよい。この直径は、現在入手可能な単結晶シリコン材料の最大直径である。300mmウェーハを処理するために、外側電極部材24は、上部電極20の直径を約15インチから約17インチに拡大するように設けられる。外側電極部材24は、連続した部材(たとえば、リングのような多結晶シリコン部材)とすることもでき、分割部材(たとえば、単結晶シリコンのセグメントのように、リング構成に配置された2つ〜6つの別々のセグメント)とすることもできる。複数セグメントの外側電極部材24を備える上部電極20の各実施形態において、各セグメントは、基礎をなす結合剤をプラズマへの曝露から保護するために、互いにオーバーラップする端部を有することが好ましい。内側電極部材22は、プラズマ反応室内の上部電極20と下部電極15との間の空間にプロセス・ガスを注入するための複数のガス流路23を備えることが好ましい。
【0012】
単結晶シリコンは、内側電極部材22および外側電極部材24のうちのプラズマに曝露される表面にとっては好ましい材料である。高純度な単結晶シリコンは、反応室内に望ましくない要素を最小量しか持ち込まないため、プラズマ処理中の基板の汚染を最小限に抑え、またプラズマ処理中にスムーズに摩耗し、それによりパーティクルを最小限に抑える。上部電極20のプラズマ曝露される表面に対して使用することができる代替の材料には、たとえばSiC、SiN、AlN、およびAl2O3が含まれる。
【0013】
好ましい一実施形態では、シャワーヘッド電極アセンブリ10は、直径が300mmの半導体ウェーハのような大きい基板を処理するのに十分な大きさのものである。300mmウェーハに対して、上端電極20は、少なくとも直径が300mmである。しかし、シャワーヘッド電極アセンブリは、他のウェーハ・サイズまたは非円形構成の基板を処理するようなサイズにすることができる。
【0014】
裏当て部材40は、裏当て板42および裏当てリング44を含むことが好ましい。こうした各実施形態では、内側電極部材22は裏当て板42と同一の広がりを持ち、外側電極部材24は周囲の裏当てリング44と同一の広がりを持つ。しかし、裏当て板42は、内側電極部材および分割された外側電極部材を支持することができるように、単一の裏当て板を使用して内側電極部材を超えて延びることができる。内側電極部材22および外側電極部材24は、エラストマー性の結合剤のような結合剤によって裏当て部材40に取り付けられることが好ましい。ガス・フローをプラズマ処理室に供給するために、裏当て板42は、内側電極部材22内のガス流路23と位置が揃ったガス流路43を備える。ガス流路43は、通常は直径が約0.04インチであり、ガス流路23は、通常は直径が約0.025インチである。
【0015】
裏当て板42および裏当てリング44は、プラズマ処理室内で半導体基板を処理するのに使用されるプロセス・ガスと化学的に互換性があり、その熱膨張係数が電極材料の熱膨張係数とほぼ合致し、かつ/または、電気的および熱的に伝導性を有する材料から作られることが好ましい。裏当て部材40を作るのに使用することができる好ましい材料には、それだけには限らないが、黒鉛およびSiCが含まれる。
【0016】
熱応力に対応し、上部電極20と裏当て板42および裏当てリング44との間で熱および電気エネルギーを伝達する、熱的および電気的に伝導性を有するエラストマー結合剤を用いて、上部電極20を裏当て板42および裏当てリング44に取り付けることができる。電極アセンブリの各表面を接合するためのエラストマーの使用については、例えば、本願の権利者が所有する米国特許第6,073,577号に説明されており、参考としてその全体を本明細書に援用する。
【0017】
裏当て板42および裏当てリング44は、適当な留め具を用いて熱制御板58に取り付けられることが好ましく、留め具は、ねじを切ったボルト、ねじ、または同様のものとすることができる。たとえば、ボルト(図示せず)は、熱制御板58内の穴に挿入することができ、裏当て部材40内のねじを切った開口部にねじ込むことができる。
【0018】
図1および図2を参照すると、熱制御板58は、上面60を有する成形板(contoured plate)59を含む内側金属部分、ならびに第1の熱伝達表面62を有する第1の突起(projection)61および上面に第2の熱伝達表面64を有する第2の突起63を備える。他の好ましい実施形態では、熱制御板58には、2つを超える突起、たとえば3つまたは4つ以上の突起が含まれ得る。上板内の大きめの開口部(図示せず)を介して、第1の突起61の表面62内および第2の突起63の表面64内のねじを切った開口部65に延びる留め具を用いて、熱制御板58が上板80に取り付けられる(図2)。熱制御板58はまた、熱制御板58を裏当て板42に取外し自在に取り付けるための留め具を収容するために、ねじを切った開口部117を備える。上板80内の大きめの開口部は、留め具周りのクリアランスを提供し、その結果、熱制御板58は、上板に対する熱制御板の熱膨張における不一致に適応するために上板に対してスライドすることができる。
【0019】
熱制御板58はまた、内側部分を外側部分に接続し、上板80の対向した表面に対向して保持される上面70を有するフランジ68を含むたわみ部分66を備える。第1の熱伝達表面62および第2の熱伝達表面64は、環状構成を有することが好ましい。第1の突起61および第2の突起63は、その高さが約0.25インチから約0.75インチであり、またその幅が約0.75インチから約1.25インチであることが好ましい。しかし、第1の突起61および/または第2の突起63は、非環状構成、たとえば弧状セグメント(arcuate segment)、多面体、円形、楕円形または他の構成を有することができる。
【0020】
熱制御板58は、アルミニウム、アルミニウム合金、または同様のもののような金属材料から作られることが好ましい。熱制御板58は、アルミニウムまたはアルミニウム合金のような金属材料の機械加工してなる片であることが好ましい。上板80は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から作られることが好ましい。上板80は、温度制御された流体、好ましくは液体が、上板を所望の温度に維持するために循環することができる1つまたは複数の流路88を備えることが好ましい。
【0021】
処理室内で半導体基板を処理する間、第1の熱伝達表面62、第2の熱伝達表面64から、上面70を介する熱伝導を経て、熱が内側電極部材22および外側電極部材24ならびに裏当て板42および裏当てリング44から上板80の下面82に伝達される。すなわち、第1の突起61および第2の突起63はまた、内側電極部材22と外側電極部材24と裏当て板42と裏当てリング44との間の各熱ブリッジを上板80に提供する。熱制御板58をまたぐ離れた位置での、この強化された熱伝達により、上部電極20において放射状に実質上均一な温度分布を達成することができる。
【0022】
シャワーヘッド電極アセンブリ10の動作時には、熱制御板58および上板80は、熱せられ熱膨張する。その結果、上板80および熱制御板58は、互いにスライドすることができる。このスライドにより、上板80および/または熱制御板58の表面(例えば、熱制御板58の中心部分の1つまたは複数の表面)は摩損することがあり、これらの表面は互いに接触し、アルミニウムパーティクルのようなパーティクルを接触面から発生させる。遊離したパーティクルは、反応室内の基板を汚染し、それにより歩留まりを低下させることがある。
【0023】
上板80および/または熱制御板58の対向する表面の摩損を、潤滑性を有する材料を対向する両表面の間に置くことによって最小限に抑えることができることは確実である。好ましい一実施形態では、潤滑材料90の少なくとも1つの層が、熱制御板58の第1の熱伝達表面62および第2の熱伝達表面64と上板80の下面82との間に置かれる。
【0024】
潤滑材料90は、第1の熱伝達表面62および第2の熱伝達表面64から上板80への十分な熱伝達および電気的な伝導をもたらすために十分な熱的および電気的な伝導性を有する。これらの特性を提供する好ましい材料は、オハイオ州クリーブランドのUCAR Carbon社から市販されている「グラフォイル(GRAFOIL)」のような弾性変形可能な黒鉛材料である。潤滑材料90は、約0.010インチから約0.030インチ、より好ましくは約0.015インチの好ましい厚さを有するガスケットであることが好ましい。潤滑材料90は、リング形状のガスケットであり、各ガスケットは、第1の熱表面62および第2の熱伝達表面64の各々の上に形成されたそれぞれの環状溝内に保持されることが好ましい。
【0025】
潤滑材料90は、反応室内でのプラズマ曝露から保護されることが好ましい。好ましい一実施形態では、潤滑材料90は、真空封止、例えば熱制御板58の第1の熱伝達表面62および第2の熱伝達表面64内の相隔たる環状溝105内に保持される1対の任意選択のO−リング104の間に配置される。O−リング104は、プラズマ室内の真空環境から潤滑材料90を分離し、それによりプラズマ曝露から潤滑材料を保護する。第1の熱伝達表面62または第2の熱伝達表面64に沿って金属対金属の擦り接触がないように、第1の熱伝達表面62および第2の熱伝達表面64は、潤滑材料90により、上板80の下面82から十分な距離だけ間隔を置くことが好ましい。
【0026】
熱制御板58は、上部電極20の温度を制御するために、温度制御された上板80との連携動作が可能な少なくとも1つのヒータを備えることが好ましい。例えば、好ましい一実施形態では、ヒータは熱制御板58の上面に設けられ、第1の突起61によって囲まれた第1のヒータ区域72、第1の突起61と第2の突起63との間の第2のヒータ区域74、および第2の突起63とたわみ部分66との間の第3のヒータ区域76を含む。ヒータ区域の数は変更することができる。例えば、他の実施形態では、ヒータには、単一のヒータ区域、2つのヒータ区域、または4つ以上のヒータ区域が含まれ得る。あるいは、ヒータは、熱制御板58の下端面に設けることができる。
【0027】
ヒータは、ヒータの到達動作温度に耐えることができる高分子材料の対向した層間に配置された、抵抗加熱された材料を含む積層体(laminate)を備えることが好ましい。使用することができる例示的な高分子材料は、商標名カプトン(Kapton)(登録商標)で販売されているポリイミドであり、デュポン社から市販されている。あるいは、ヒータは、熱制御板内に埋め込まれた抵抗ヒータ(例えば、鋳造熱制御板内の加熱素子または熱制御板内に形成されたチャネル内に配置された加熱素子)とすることができる。ヒータの他の実施形態には、熱制御板の上面および/または下面に取り付けられた抵抗性加熱素子が含まれる。熱制御板の加熱は、伝導および/または放射を介して達成することができる。
【0028】
ヒータ材料は、第1のヒータ区域72、第2のヒータ区域74、および第3のヒータ区域76を熱的に均一に加熱するいかなる適切なパターンを有することもできる。例えば、積層体ヒータは、ジグザグ、蛇行または、同心パターンなど、規則的または不規則的なパターンの抵抗性加熱線を有することができる。温度制御された上板80の動作と連携して、ヒータを用いて熱制御板58を加熱することにより、シャワーヘッド電極アセンブリ10の動作の間、上部電極20全体に亙って望ましい温度分布をもたらすことができる。
【0029】
第1のヒータ区域72、第2のヒータ区域74、および第3のヒータ区域76に配置された各ヒータ・セクションは、いかなる適当な技法、例えば熱圧、接着剤、留め具、または同様のものを用いることによっても、熱制御板58に固着することができる。
【0030】
好ましい一実施形態では、第1のヒータ区域72、第2のヒータ区域74、および第3のヒータ区域76は、電気コネクタ77を介して電気的に直列に相互接続される。好ましい一実施形態では、ヒータは、第1の位相の交流電流を受け取るように構成された第1の抵抗性加熱導体、第2の位相の交流電流を受け取るように構成された第2の抵抗性加熱導体、および第3の位相の交流電流を受け取るように構成された第3の抵抗性加熱導体を含む3つの回路を備え、第1、第2および第3の位相は、互いに120°位相がずれている。
【0031】
図3に示すように、ヒータは、単一の電源110から電力を受け取ることができる。好ましい一実施形態では、電源110は、柱95のように、熱制御板58のフランジ68内の開口部93に収容され、円周上に間隔を置いて配置された3つの柱に電気的に接続される。柱95は、各々導電体97に接続され、導電体97は、フランジ68を介してブーツ(boot)79まで延び、第3のヒータ区域76に配置された3相ヒータのそれぞれの位相に電気的に接触する。第3のヒータ76の3つの位相は、接続77を介して第2のヒータの3つの対応する位相に電気的に接続され、第2のヒータの3つの位相は、接続77により第1のヒータの3つの位相に電気的に接続される。
【0032】
熱制御板58は、第1のヒータ区域72の上のプレナム(plenum)から第2のヒータ区域74の上のプレナムへ、また第2のヒータ区域74の上のプレナムから第3のヒータ区域76の上のプレナムへ横方向にプロセス・ガス・フローを可能にするための、側面のガス流路75を備えることが好ましい。好ましい一実施形態では、複数のガス流路75は、第1の突起61および第2の突起63を介して延びる。第1のヒータ区域72、第2のヒータ区域74および第3のヒータ区域76を電気的に接続するために、電気コネクタ77がガス流路75を介して延びることができるように、ガス流路75の大きさが決められる。熱制御板と裏当て部材40との間の各プレナムに通じる開口部78を通過するガスが実質上均一な圧力分布になるために、ガス流路75は、プロセス・ガスが熱制御板58の上面全体にわたって分散できるのに十分な大きさであることが好ましい。
【0033】
上部電極20は、電気的に接地することもでき、または、代替的に、好ましくは無線周波数(RF)の電流源によって給電することもできる。好ましい一実施形態では、プラズマ処理室内でプラズマを生成するために、上部電極20は接地され、1つまたは複数の周波数での電力が下部電極に加えられる。例えば、下部電極は、2つの独立して制御された無線周波数電源により、2MHzおよび27MHzの周波数で給電することができる。基板が処理された(例えば、半導体基板がプラズマ・エッチングされた)後、下部電極への電力供給は遮断されて、プラズマ生成を終了する。処理された基板は、プラズマ処理室から取り除かれ、別の基板がプラズマ処理のために基板支持具15の上に置かれる。好ましい一実施形態では、下部電極への電力が遮断されたとき、ヒータは作動されて、熱制御板58次いで上部電極20を加熱する。その結果、上部電極20の温度は、所望の最低温度を下回って下がらないようにすることが好ましい。基板がより均一に処理され、それによって歩留まりが改善されるように、上部電極20の温度は、連続した基板処理実行の間でほぼ一定の温度に維持されることが好ましい。電源110は、上部電極20の実際の温度および所望の温度に基づいて、所望のレベルおよび速度でヒータに電力を供給するように制御可能であることが好ましい。
【0034】
シャワーヘッド電極アセンブリ10には、上部電極20の温度を監視するために、熱電対のような1つまたは複数の温度センサが含まれ得る。温度センサは、電源110からヒータへの電力供給を制御する制御装置によって監視されることが好ましい。温度センサによって提供されたデータが、上部電極20の温度が所定の温度を下回ることを示すとき、上部電極20を所定の温度以上に維持するために、電源110を制御装置によって作動させてヒータに電力を供給することができる。
【0035】
基板のプラズマ処理中、すなわちプラズマがシャワーヘッド電極アセンブリ10と下部電極との間で生成されているとき、ヒータを作動させることもできる。例えば、プラズマを生成するのに相対的に低いレベルの印加電力を利用するプラズマ処理の操作中は、上部電極20の温度を所望の温度範囲内に維持するように、ヒータを作動させることができる。誘電体材料のエッチング工程のように、相対的に高いパワー・レベルを利用する他のプラズマ処理の操作中は、連続して実行する間、上部電極20の温度は通常十分に高いままであり、その結果、上部電極が最小温度を下回って温度低下しないようにヒータを作動させる必要はない。
【0036】
図3に示した実施形態では、熱制御板58のたわみ部分66は、フランジ68にまで及ぶ円筒形の壁を備える。上板80およびフランジ68内でそれぞれ位置合せをされた開口部84、86に挿入される留め具(例えば、ねじを切ったボルト、ねじ、または同様のもの)などによって、フランジ68は上板80に取り付けられる(図1)。フランジ68は、環状構成を有することが好ましい。たわみ部分66は、上板80に対する熱制御板58の熱膨張および熱収縮に適応できる構成を有する。すなわち、たわみ部分66は、上板80と熱制御板58の各中心部分間の横方向および軸方向の動きに適応し、熱制御板58への関連する損傷を防止するように最適化された長さ対厚さの比を有することが好ましい。横方向の滑り運動時に、潤滑材料90は、熱制御板58の熱伝達表面62および64、ならびに上板80の下面82の摩損を防止する。たわみ部分66を設けることにより、フランジ68の上面70と上板80の下面82との間で潤滑材料を省略することができる。
【0037】
熱制御板58は、上板80内の開口部84を介してフランジ68内に形成された開口部86に延びる適当な留め具を用いて、上板80に取外し可能なように取り付けられている。一実施形態では、シャワーヘッド電極アセンブリ10は、上板80の上側122に取り付けられているカバー板120を備える。これらの開口部内の留め具が処理装置内で真空圧力に置かれるように、カバー板120は、上板80内の開口部の上端部を密閉する。しかし、開口部86のまわりに真空封止を設けることによって(例えば、開口部86を含むセクションのまわりに、O−リング104を設けることができる)、カバー板を省略することができる。図2では、3つのO−リングは3つの真空封止されたセクションを提供し、それらの各々は6つの相隔たる開口部84を含む。
【0038】
第1の突起61および第2の突起63が、熱制御板58と上板80との間の真空封止された区域を提供するためのO−リング104を各々備える熱制御板58の各実施形態では、ボルトの上端が封止されていない場合、上板80を熱制御板58に取り付ける留め具は、処理装置内で大気圧に曝されうる。
【0039】
任意選択として、円周上に間隔を置いて配置された複数の位置合せピン106が、熱制御板58のフランジ68の上に設けられる。上板80に対して円周状および放射状に熱制御板58を位置合せするために、位置合せピン106は、上板80内の位置合せ開口部(図示せず)に合うような大きさに決められる。
【0040】
上板80は、上板80と熱制御板58との間の1つまたは複数の開放空間(プレナム)にプロセス・ガスを導くための、1つまたは複数のガス流路を備えることが好ましい。例えば、プロセス・ガスは、第1のヒータの上部の制御プレナムのみに供給し、流路75を介して他のプレナムに分散することができる。プロセス・ガスは、上部プレナムから流路78を介して下部プレナムへ、次いで裏当て板42内のガス流路43を介して内側電極部材22内のガス流路23へと流れる。ガス流路78は、熱制御板58を介して所望の圧力降下が得られるような大きさに決められる。ガス流路78は、通常は直径が約0.3インチであってもよい。ガス流路78の数および配置は、プラズマ室に均一なガス分布を提供するために、上部電極20の上部および全体に亙って均一なガス圧力を達成するように選択されることが好ましい。ガス・フローの均一性を制御するために、任意選択として、シャワーヘッド電極アセンブリ10には、上部プレナムおよび/または下部プレナム内にバフル(baffles)が含まれ得る。
【0041】
上板80の温度は、流路88を介して熱伝達流体(液体またはガス)を流すことによって制御されることが好ましい。シャワーヘッド電極アセンブリ10向けに、上板80は、電気的な接地ならびにヒート・シンクを提供することが好ましい。
【0042】
図2に示すように、シャワーヘッド電極アセンブリ10の外側に設けることができるプラズマ閉込めアセンブリの制御棒を通すために、開口部114が熱制御板58のフランジ68内に設けられる。上下の調節が可能なプラズマ閉込めリング・アセンブリを備える適切なプラズマ閉込めアセンブリが、本願の権利者が所有する米国特許第5,534,751号に記載されており、参考としてその全体を本明細書に援用する。
【0043】
本発明を、その具体的な各実施形態を参照しながら詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を加え、均等物を利用することができることは、当業者には明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板処理室内のシャワーヘッド電極を支持するための熱制御板であって、
温度制御された上板に取外し自在に取り付けることができるように構成された金属外側部分と、
前記シャワーヘッド電極および前記上板に取外し自在に取り付けることができるように構成された金属内側部分と、
を備え、
前記内側部分は、前記上板とシャワーヘッド電極との間に熱的および電気的な経路を設けることを特徴とする熱制御板。
【請求項2】
前記外側部分は環状フランジを備え、前記内側部分は成形板を備え、前記外側部分は、たわみ部分により前記内側部分に接続されることを特徴とする請求項1に記載の熱制御板。
【請求項3】
前記成形板は、上面と前記上面上の環状の第1の突起とを備え、
前記第1の突起は、熱を前記上板に伝達するように構成された第1の熱伝達表面と、前記上板と前記第1の熱伝達表面との間の任意選択のO−リングを収容するように構成された任意選択の相隔たる環状溝とを備えることを特徴とする請求項2に記載の熱制御板。
【請求項4】
前記成形板は、前記第1の突起から放射状に間隔を置いて配置された環状の第2の突起を前記上面に備え、
前記第2の突起は、熱を前記上板に伝達するように構成された第2の熱伝達表面と、前記上板と前記第2の熱伝達表面との間の任意選択のO−リングを収容するように構成された任意選択の相隔たる環状溝と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の熱制御板。
【請求項5】
前記内側部分は、前記上板とシャワーヘッド電極との間の熱的および電気的な経路を提供する少なくとも1つの熱ブリッジを備えることを特徴とする請求項1に記載の熱制御板。
【請求項6】
前記外側部分は、前記上板内の位置合せ開口部に合うように構成され、前記熱制御板と前記上板との間で円周方向および放射方向の位置合せを行うための位置合せピンと、前記上板の下端側を貫通して延びるボルトを受けるように構成されたねじを切った開口部と、前記上板と前記熱制御板との間の任意選択のO−リングを収容するように構成された任意選択の溝とを備えることを特徴とする請求項1に記載の熱制御板。
【請求項7】
前記シャワーヘッド電極に熱を供給することができる少なくとも1つのヒータをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の熱制御板。
【請求項8】
前記ヒータは、前記成形板の中心領域にある内部ヒータ部と、前記成形板の前記中心領域の外部にある少なくとも1つの外部ヒータ部とを備え、前記内部ヒータ部および外部ヒータ部は、少なくとも1つの電気コネクタによって相互接続されることを特徴とする請求項7に記載の熱制御板。
【請求項9】
前記ヒータは、誘電体層間に抵抗性加熱材料を含む積層体を備えることを特徴とする請求項7に記載の熱制御板。
【請求項10】
前記ヒータは、3相ヒータを備えることを特徴とする請求項7に記載の熱制御板。
【請求項11】
前記ヒータは、第1の位相の交流電流を受け取るように構成された第1の抵抗性加熱導体と、第2の位相の交流電流を受け取るように構成された第2の抵抗性加熱導体と、第3の位相の交流電流を受け取るように構成された第3の抵抗性加熱導体とを含む3つの回路を備え、前記第1、第2および第3の位相は、互いに120°位相がずれていることを特徴とする請求項7に記載の熱制御板。
【請求項12】
前記内側部分の両側の間に延びるガス流路をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の熱制御板。
【請求項13】
半導体基板処理装置のシャワーヘッド電極アセンブリであって、
上板と、
シャワーヘッド電極と、
その中心部分が前記上板に対して移動可能であるように、前記シャワーヘッド電極および前記上板に取り付けられた熱制御板と、
前記熱制御板の前記中心部分と前記上板との間の少なくとも1つの熱ブリッジとを備え、前記熱ブリッジは、前記シャワーヘッド電極と前記上板との間に熱的および電気的な経路を提供することを特徴とするシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項14】
少なくとも2つの横方向に相隔たる熱ブリッジを備えることを特徴とする請求項13に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項15】
前記熱ブリッジの各々は、前記熱制御板と前記上板との間に熱的および電気的な伝導性をもたらす潤滑材料の層を備え、前記潤滑材料は、任意選択として少なくとも1つのO−リングを備える真空封止内に配置されることを特徴とする請求項14に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項16】
前記潤滑材料の層の各々は、環状構成と約0.75インチから約1.25インチまでの幅とを有することを特徴とする請求項15に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項17】
前記熱制御板を加熱するように構成されたヒータをさらに備えることを特徴とする請求項13に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項18】
前記ヒータは、3相ヒータであることを特徴とする請求項17に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項19】
前記ヒータは、誘電体材料の対向する層の間に抵抗性加熱材料を含む積層体を備えることを特徴とする請求項17に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項20】
前記上板は、前記上板の温度を制御するために熱伝達流体が流れる少なくとも1つの流路を備えることを特徴とする請求項13に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項21】
前記熱制御板は、互いに異なる熱膨張に適応し、前記上板と前記熱制御板との間に熱的および電気的な伝導をもたらすように構成されたたわみ部分を備えることを特徴とする請求項13に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項22】
前記シャワーヘッド電極は、エラストマー・ボンドによりシリコン板の上面に接着された裏当て板を備えることを特徴とする請求項13に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項23】
前記裏当て板は、黒鉛裏当て板であることを特徴とする請求項22に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項24】
前記熱制御板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の機械加工してなる片であることを特徴とする請求項13に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項25】
前記上板は、前記上板内の開口部を介して延びる留め具を用いて前記熱制御板に取り付けられ、任意選択として前記上板の上側に取り付けられたカバー板を備え、前記留め具が前記処理装置内の真空圧力に曝されるように前記開口部を封止することを特徴とする請求項13に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項26】
前記上板は、前記上板内の開口部を介して延び、前記少なくとも1つの熱ブリッジ内のねじを切った開口部にねじ込まれる留め具を用いて前記熱制御板に取り付けられ、前記熱ブリッジの各々は、前記留め具が前記処理装置内の大気圧に曝されるように前記熱制御板と前記上板との間を真空封止する少なくとも1つのO−リングを備えることを特徴とする請求項13に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項27】
前記上板は、前記上板内の開口部を介して延びる留め具を用いて前記熱制御板に取り付けられ、前記開口部は、前記上板と前記熱制御板との間の互いに異なる熱膨張に適応するために、前記留め具の直径よりも大きい直径を有することを特徴とする請求項13に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項28】
前記少なくとも1つの熱ブリッジは、前記熱制御板の上に2つの相隔たる環状突起を備え、前記上板は、前記上板内の開口部を介して前記熱ブリッジの各々に延びる留め具を用いて前記熱制御板に取り付けられ、前記熱制御板は、前記突起を介して横方向に延びるガス流路と、前記各熱ブリッジの内外の横方向に配置された前記熱制御板の対向する両表面の間で軸方向に延びるガス流路とを備えることを特徴とする請求項13に記載のシャワーヘッド電極アセンブリ。
【請求項29】
半導体基板処理室内の半導体基板を処理する方法であって、
a)半導体基板処理装置のプラズマ室内の、下部電極を備える基板支持具上に基板を置く工程と、
b)請求項13に記載のシャワーヘッド電極アセンブリを用いて、プロセス・ガスを前記プラズマ室に供給する工程と、
c)前記シャワーヘッド電極アセンブリと前記基板との間で、前記プラズマ室内の前記プロセス・ガスからプラズマを生成する工程と、
d)前記プラズマを用いて前記基板を処理する工程と、
e)前記プラズマの前記生成を終了する工程と、
f)前記基板を前記プラズマ室から取り出す工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
前記シャワーヘッド電極アセンブリがヒータをさらに備え、前記シャワーヘッド電極を所望の温度に維持するように前記シャワーヘッド電極に熱を加えるために、e)の後に前記ヒータを作動させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
a)からf)の間、前記シャワーヘッド電極に熱を加えるために前記ヒータを作動させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−254097(P2011−254097A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−172358(P2011−172358)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【分割の表示】特願2006−547131(P2006−547131)の分割
【原出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】