説明

熱可塑性樹脂成形品および表面二次加工が施された熱可塑性樹脂成形品

【課題】
ブロンズ現象を解決し、耐候性に優れた熱可塑性樹脂成形品、更に、表面二次加工後の表面外観が良好である表面二次加工が施された熱可塑性樹脂成形品の提供。
【解決手段】
重量平均粒子径が0.1μm以上であるアクリル酸エステル系ゴムを5〜40重量%含有したASA系樹脂(A)を射出成形するに際し、予め、金型のキャビティ表面温度を該ASA系樹脂(A)の熱変形温度以上にまで加熱した金型内に射出充填して得られた熱可塑性樹脂成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロンズ現象を解決し、外観意匠性に優れた熱可塑性樹脂成形品に関するものであり、さらには、表面外観に優れ、且つ塗装、メッキ、蒸着などの表面二次加工においても良外観の得られる表面二次加工が施された熱可塑性樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム強化スチレン系樹脂の中でも、特にアクリル系ゴムを耐衝撃性付与のために添加、配合された樹脂はAAS樹脂、またはASA樹脂と呼ばれ(以下、ASA系樹脂と記す)、耐衝撃性および耐候性のバランスに優れた樹脂との位置付けで、自動車用内外装部品、各種の家電製品やOA機器のハウジング、その他雑貨分野等、幅広い分野に使用されている。
【0003】
通常、このようなASA系樹脂は着色剤の配合により着色されており、一般的には射出成形や押出成形などの成形法により成形された成形品として用いられている。そして、この調色・着色工程において注意すべき事項の一つに“メタメリズム”がある。これは、光源が変わると色が異なる現象である。例えば、室内灯下における色と太陽光下における色とが一致していないといったことがしばしば見受けられる。この現象は、着色剤に起因するものであり、着色剤の選択により解決することができる。又、この現象は、肉眼にて容易に判断できると共に、分光光度計により数値(反射率)又はグラフ(反射率曲線)として確認することができる。
しかしながら、特に射出成形品においては、前述のメタメリズムのみならず、“ブロンズ現象”といった問題点がある。
“ブロンズ現象”とは、直射日光下でない室内及び室内灯下では色相が良好にもかかわらず、直射日光下や直射日光を通した透明ガラス下においては本来の着色した色相以外に、赤〜黄色の範囲の色が重なって見える現象であり、成形品の外観上、品質イメージを低下させ、商品価値を落とすものである。もちろん、このブロンズ現象とメタメリズムとは異なる現象である。このようなブロンズ現象を解決した耐候性樹脂として、例えば重量平均粒子径が0.20〜0.35μmの範囲にあるゴム粒子の合計がゴム総重量に対して20重量%未満にする方法が提案されている(特許文献1:特開昭63−275617号公報)。
また、特開2000−17135号公報(特許文献2)においては、重量平均粒子径0.2μm未満のアクリル酸エステル系ゴムを20重量%以上にする方法でブロンズ現象を解決したASA系樹脂組成物が提案されている。
これらの公知文献にも示されるとおり、ASA系樹脂の使用においては、外観意匠性を得るためにゴム粒径やゴム量を微調整するなどの複雑な技術が必要となってしまうといった事が欠点として挙げられ、更には特定のゴム粒径とするがゆえに、塗装、メッキ等の表面二次加工後の表面外観性にも悪影響を及ぼしてしまうといった欠点がある。
【特許文献1】特開昭63−275617号公報
【特許文献2】特開2000−17135号公報
【特許文献3】特開2001−18229号公報
【特許文献4】特開2001−269978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、射出成形されたASA系樹脂において、ブロンズ現象を解決し、耐候性に優れた熱可塑性樹脂成形品を提供することを目的とする。更に、表面二次加工後の表面外観が良好である表面二次加が施された工熱可塑性樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の重量平均粒子径を有するASA系樹脂を射出成形するに際し、特定の金型温度以上で成形することによりブロンズ現象を解決でき、更に、塗装、メッキ、蒸着等の表面二次加工後においても、良好な表面外観が得られる表面二次加工が施された熱可塑性樹脂成形品が得られることを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は、重量平均粒子径が0.1μm以上であるアクリル酸エステル系ゴムを5〜40重量%含有したASA系樹脂(A)を射出成形するに際し、予め、金型のキャビティ表面温度を該ASA系樹脂(A)の熱変形温度以上にまで加熱した金型内に射出充填して得られたことを特徴とする熱可塑性樹脂成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、通常の射出成形法では顕著なブロンズ現象を生じる特定の重量平均粒子径を有するASA系樹脂を特定の金型温度以上で成形することによりブロンズ現象を解決でき、更に、アクリル酸エステル系ゴム粒子の複雑な粒子径制限を必要としないため、塗装、メッキ、蒸着等の表面二次加工後においても、良好な表面外観が得られる表面二次加工が施された熱可塑性樹脂成形品が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明におけるASA系樹脂(A)を構成するアクリル酸エステル系ゴムとは、架橋剤の存在下または非存在下にアルキル基の炭素数が1〜16のアクリル酸エステル系単量体、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の1種または2種以上、さらには必要に応じて他の共重合可能な単量体、例えばスチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等の1種または2種以上を重合してなるゴムである。ここで、使用可能な架橋剤としては、例えばジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。このようなアクリル酸エステル系ゴムは、通常、乳化重合にて重合することができ、その際には公知の乳化剤、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン系乳化剤やポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤を使用できる。また重合開始剤としては、水溶性、油溶性開始剤の単独系あるいはレドックス系、例えば、過硫酸塩等の無機系開始剤やt−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾ化合物等を単独で用いるかあるいは亜硫酸塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等と組み合わせてレドックス系開始剤として使用することができる。さらに必要に応じて重合連鎖移動剤、例えばt−ドデシルメルカプタン等を使用することもできる。また、重合に際し、適宜、乳化剤、電解質、開始剤濃度、重合時間等を変更することにより所望の粒子径を有するアクリル酸エステル系ゴムを得ることができる。また、小粒子径のアクリル酸エステル系ゴムを公知の方法で凝集肥大化させることにより所望の粒子径を有するアクリル酸エステル系ゴムを得ることもできる。
【0008】
本発明においては、ASA系樹脂(A)を構成するアクリル酸エステル系ゴムの重量平均粒子径は0.10μm以上であることが必要である。アクリル酸エステル系ゴムの重量平均粒子径が0.10μm未満では、耐衝撃性が著しく劣るため好ましくない。また、ASA系樹脂(A)中に占めるゴム含有量は、その耐衝撃性の面から5〜40重量%であることが必要である。
なお、該ASA系樹脂(A)としては、上記アクリル酸エステル系ゴム5〜40重量%、アクリロニトリル系単量体10〜30重量%、スチレン系単量体30〜85重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜55重量%から構成されることが好ましい。
【0009】
本発明におけるASA系樹脂(A)を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、エチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ジビニルベンゼン等が例示され、1種または2種以上を選択して使用することが可能である。また、アクリロニトリル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が例示され、1種または2種以上を選択して使用することが可能である。
さらに、共重合可能な他の単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルエキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸(無水物)、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系単量体等が例示され、それぞれ1種または2種以上を選択して使用することが可能である。
【0010】
本発明におけるASA系樹脂(A)は、上述のアクリル酸エステル系ゴムの存在下にスチレン系単量体、アクリロニトリル系単量体および必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体からなる単量体混合物を重合して得られたグラフト重合体(A−1)、または該グラフト重合体(A−1)とスチレン系単量体、アクリロニトリル系単量体およびこれらと共重合可能な他の単量体から選ばれた1種以上の単量体(混合物)を重合して得られた(共)重合体(A−2)の混合物から構成されるものであり、最終的に得られるASA系樹脂としての各種成分が上記の組成割合となるようにすればよい。
【0011】
本発明におけるASA系樹脂(A)の製造方法に制限は無く、公知の乳化重合法、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法あるいはこれらの重合法を任意に組み合わせた方法を採用することができる。
【0012】
本発明のASA系樹脂(A)には、必要に応じて各種添加剤、例えば公知の酸化防止剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、艶消し剤、充填剤等を適宜添加することができる。また、混合に際しては、押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の公知の混練装置を用いることができる。
【0013】
さらに、本発明のASA系樹脂(A)には必要に応じて他の熱可塑性樹脂と混合することもできる。
このような他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム強化ポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-スチレン樹脂(AES樹脂)、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン樹脂(MBS樹脂)などが挙げられる。
【0014】
本発明におけるASA樹脂(A)の成形方法としては、一般的な射出成形法と同工程ではあるが、予め、金型のキャビティ表面温度をASA樹脂(A)の熱変形温度以上にまで加熱した金型内に射出充填することが必要であり、この手法を採用しない場合には、本発明の目的とするブロンズ現象の改善効果が期待されず、また表面二次加工後における良好な表面外観が得られないため好ましくない。
【0015】
射出成形装置については、通常の射出成形装置を使用することができるが、金型キャビティ表面温度をコントロールするための金型温度調節機の使用温度範囲がASA樹脂(A)の熱変形温度以上にまで上昇できる装置が必要となる。
また、金型温度調節機も通常のものを使用することができるが、特に80℃以上の高温での使用を考慮し、温調媒体にオイルやスチームを利用することが好ましい。
さらに、金型温調装置としては、金型のキャビティ表面温度を繰り返し上下するヒートサイクル成形法に用いられる金型温調装置を使用することがより好ましい。なお、このような金型温度調節機としては、例えば特許文献3に詳しく記載されている。
【0016】
〔実施例〕
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中にて示す部および%は重量に基くものである。
【0017】
[アクリル酸エステル系ゴム(L−1)の製造]
窒素置換したガラスリアクターに、純水230部、オレイン酸カリウム0.15部、過硫酸カリウム0.2部、ブチルアクリレート98.0部、アクリロニトリル1.0部、アリルメタクリレート1.0部からなる混合モノマー溶液を仕込み50℃に昇温した。その後、純水20部、オレイン酸カリウム1.0部からなる乳化剤水溶液を12時間に亘って連続添加した。その後5時間重合を継続し、重量平均粒子径0.47μmのアクリル酸エステル系ゴムラテックス(L−1)を得た。
尚、重量平均粒径はサブミクロン粒度分布測定装置 N4Plus型(ベックマン・コールター株式会社製)を用い23℃雰囲気下で測定した(以下、アクリル酸エステル系ゴムの重量平均粒子径はすべて同様の方法で測定)。
【0018】
[アクリル酸エステル系ゴム(L−2)の製造]
窒素置換したガラスリアクターに、純水230部、オレイン酸カリウム0.30部、過硫酸カリウム0.2部、ブチルアクリレート98.0部、アクリロニトリル1.0部、アリルメタクリレート1.0部からなる混合モノマー溶液を仕込み50℃に昇温した。その後、純水20部、オレイン酸カリウム1.0部からなる乳化剤水溶液を8時間に亘って連続添加した。その後5時間重合を継続し、重量平均粒子径0.28μmのアクリル酸エステル系ゴムラテックス(L−2)を得た。
【0019】
[アクリル酸エステル系ゴム(L−3)の製造]
窒素置換したガラスリアクターに、純水250部、オレイン酸カリウム0.40部、過硫酸カリウム0.25部、ブチルアクリレート98.0部、アクリロニトリル1.0部、アリルメタクリレート1.0部からなる混合モノマー溶液を仕込み50℃に昇温した。その後、純水20部、オレイン酸カリウム2.0部からなる乳化剤水溶液を3時間に亘って連続添加した。その後5時間重合を継続し、重量平均粒子径0.13μmのアクリル酸エステル系ゴムラテックス(L−3)を得た。
【0020】
[アクリル酸エステル系ゴム(L−4)の製造]
窒素置換したガラスリアクターに、純水300部、オレイン酸カリウム0.80部、過硫酸カリウム0.3部を仕込み65℃に昇温した。その後、ブチルアクリレート99.0部、アクリロニトリル1.0部、アリルメタクリレート1.0部からなる混合モノマー溶液および純水20部、オレイン酸カリウム3.5部からなる乳化剤水溶液を各々3時間に亘って連続添加した。その後6時間重合を継続し、重量平均粒子径0.08μmのアクリル酸エステル系ゴムラテックス(L−4)を得た。
【0021】
〔グラフト重合体(A−1−1〜4)の製造〕
窒素置換したガラスリアクターに、アクリル酸エステル系ゴムラテックス(L−1)50部(固形分換算)と純水110部、デキストリン0.1部、無水ピロリン酸ナトリウム0.1部および硫酸第1鉄0.005部を溶解した水溶液を添加した後、70℃に昇温した。その後、アクリロニトリル15部、スチレン35部、クメンハイドロパーオキサイド0.3部の混合液および純水20部にオレイン酸カリウム1.0部を溶解した乳化剤水溶液を6時間に亘り連続添加した。その後、重合を3時間継続し、重合を終了した。その後、塩析・脱水・乾燥し、グラフト重合体(A−1−1)を得た。
また、アクリル酸エステル系ゴムラテックスを表1に示すように変更した以外は、同様に製造し、グラフト重合体A−1−2〜4を得た。
【0022】
共重合体(A−2−1)
公知の塊状重合により、アクリロニトリル30重量%およびスチレン70重量%からなる共重合体(A−2−1)を得た。
共重合体(A−2−2)
公知の溶液重合により、アクリロニトリル10重量%、スチレン50重量%およびN−フェニルマレイミド40重量%からなる共重合体(A−2−2)を得た。
【0023】
[実施例1〜4、比較例1〜8]
表2に示す組成割合にてグラフト重合体(A−1−1〜4)および共重合体(A−2−1〜2)合計100部に対して、carbon#45(三菱化学(株)製)を0.5部混合した後、40mm二軸押出機を用いて250℃にて溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットより射出成形機にて各種試験片を作製し、物性を測定した。
【0024】
ブロンズ現象、塗装性及びメッキ性評価用のテストピース作製にあたっては、以下の射出成形機及びヒートサイクル用金型温度制御装置を用い、平板(150mm×90mm×2mm)を成形した。
尚、平板の成形にあたっては、上記の組成物それぞれにつき、金型のキャビティ表面温度を50℃で一定(通常成形)としたものと、各組成物の熱変形温度(実施例1〜3と比較例1〜5はそれぞれ90℃、実施例4と比較例6〜8はそれぞれ110℃)より5〜10℃高くなるように金型のキャビティ表面温度をコントロール(ヒートサイクル成形)したものを成形した。
射出成形機:J−150EP 日本製鋼所製
ヒートサイクル用金型温度制御装置:高速HC成形用温調ユニット
三井化学エンジニアリング(株)社製
【0025】
(1)耐衝撃性:ASTM D−256に準拠してノッチ付アイゾット衝撃強度を測定した。23℃、1/8インチ。単位;J/m
(2)耐熱性:ASTM D−648に準拠して熱変形温度を測定した。1/4インチ、負荷応力1.82MPa。
(3)ブロンズ現象:上記で得られたテストピースにつき、屋外、直射日光下で、正午にブロンズ現象を目視にて判定した。ブロンズ現象なし○、ブロンズ現象ややあり△、ブロンズ現象が顕著×とした。
(4)ダイレクト蒸着性:上記で得られたテストピースにつき、アルミニウムを蒸着し、更にトップコートとして有機溶剤系アクリル系塗料を、エアースプレーガンを用いて塗装した。塗装後の成形品については、デジタル反射計(反射率の角度:45°)で拡散反射率(全反射率−正反射率)を測定し、蒸着面を判定した。
○:拡散反射率5%未満
×:拡散反射率5%以上
(5)塗装外観:塗装処理プロセス:上記で得られたテストピースにつき、黒色のアクリルウレタン系塗料(藤倉化成(株)社製、レクラック#440N)を膜厚25μmになるように吹き付け塗装し、5分間室温にてセッティングを行った後、80℃のオーブン中で30分間焼き付けを行った。焼き付け完了後の塗装外観を目視にて判定した。
○:塗装後の肌荒れ、吸い込み現象なし
×:塗装後の肌荒れ、吸い込み現象が顕著
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0028】
通常の射出成形法では顕著なブロンズ現象を生じる特定の重量平均粒子径を有するASA系樹脂を特定の金型温度以上で成形することによりブロンズ現象を解決でき、更に、塗装、メッキ、蒸着等の表面二次加工においても、良好な表面外観が得られる表面二次加工熱可塑性樹脂成形品が得られるものであり、車輌内外装、建材、家電、OA機器等の分野において好適に使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均粒子径が0.1μm以上であるアクリル酸エステル系ゴムを5〜40重量%含有したASA系樹脂(A)を射出成形するに際し、予め、金型のキャビティ表面温度を該ASA系樹脂(A)の熱変形温度以上にまで加熱した金型内に射出充填して得られたことを特徴とする熱可塑性樹脂成形品。
【請求項2】
該ASA系樹脂(A)が、重量平均粒子径が0.1μm以上であるアクリル酸エステル系ゴム5〜40重量%、アクリロニトリル系単量体10〜30重量%、スチレン系単量体30〜85重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜55重量%から構成されるものである請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形品。
【請求項3】
金型のキャビティ表面温度を繰り返し上下するヒートサイクル成形法により成形されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂成形品。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の熱可塑性樹脂成形品表面の一部または全部に塗装、メッキ、又は蒸着処理の何れかの表面二次加工が施された熱可塑性樹脂成形品。

【公開番号】特開2007−152849(P2007−152849A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353972(P2005−353972)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】