説明

熱可塑性樹脂組成物の製造方法

【課題】引張強度、曲げ強度、衝撃強度および疲労強度に優れる成形体を得ることができる熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2個の原料投入口3,4又は5と樹脂出口6を有し、原料投入口3とその次に位置する原料投入口4の間および最下流の原料投入口5と樹脂出口との間に混練部7を有し、最上流の混練部8または9とその次に位置する原料投入口との間に設置された第1の真空ベント10および最下流の混練部と樹脂出口との間に設置された第2の真空ベント11を有する混練機を用いて、熱可塑性樹脂組成物を製造する方法であって、最上流の投入口からポリプロピレン系樹脂と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と、有機過酸化物とを投入し、第1の真空ベントを減圧し、最下流の投入口から針状フィラーを投入し、第2の真空ベントを減圧して、熱可塑性樹脂組成物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法、その方法によって製造された熱可塑性樹脂組成物、および、その組成物からなる成形体に関するものである。さらに詳細には、引張強度、曲げ強度、衝撃強度および疲労強度に優れる成形体を得ることができる熱可塑性樹脂組成物の製造方法、その方法によって製造された熱可塑性樹脂組成物、および、その組成物からなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、剛性や耐衝撃性等の機械的強度に優れる樹脂組成物として、ポリプロピレンとガラス繊維を含有したガラス繊維強化ポリプロピレン組成物が知られている。
例えば、特開昭53−102948号公報には、ガラス繊維で補強する場合に変性ポリプロピレンを用い、加工時の発泡やボイドの発生を防止する方法として、
ポリプロピレン、ガラス繊維、アミノシラン系カップリング剤およびエポキシ樹脂で処理したガラス繊維からなる混合物に、アクリル酸または無水マレイン酸を含む変性ポリオレフィンを添加した混合物を、ベント型押出機で減圧状態で押出し加工して、ポリプロピレン成形材料を得る方法が記載されている。
【0003】
また、特開昭61−277421号公報には、気化した水分がガラス繊維の投入口に沸き上がらないようにし、ガラス繊維の投入を安定して行う方法として、シリンダ内で主原料を溶融させた後、副原料と混合してシリンダ出口から押出す押出し機に於て、前記溶融された主原料から発生する気体及び副原料投入口からの空気を、副原料投入口近傍に設けた脱気口から脱気しつつ前記副原料投入口から副原料を投入する方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭53−102948号公報
【特許文献2】特開昭61−277421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の公報等に記載されている方法によって製造された熱可塑性樹脂組成物からなる成形体の引張強度、曲げ強度、衝撃強度および疲労強度については、さらなる改良が望まれていた。
【0006】
かかる状況の下、本発明の目的は、引張強度、曲げ強度、衝撃強度および疲労強度に優れる成形体を得ることができる熱可塑性樹脂組成物の製造方法、その方法によって製造された熱可塑性樹脂組成物、および、その組成物からなる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、かかる実状に鑑み、鋭意検討の結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
シリンダの上流から下流へ設置された少なくとも2個の原料投入口と、シリンダ末端に位置する樹脂出口を有し、
それぞれの原料投入口とその次に位置する原料投入口の間および最下流に位置する原料投入口と樹脂出口との間に混練部を有し、
最上流に位置する混練部とその次に位置する原料投入口との間に設置された第1の真空ベントおよび最下流に位置する混練部と樹脂出口との間に設置された第2の真空ベントを有する混練機を用いて、熱可塑性樹脂組成物を製造する方法であって、
最上流の投入口からポリプロピレン系樹脂(A)と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(B)と、有機過酸化物(C)とを投入し、最上流に位置する混練部で混練された樹脂組成物を、第1の真空ベントを介して、−40cmHg以下で減圧し、
最下流の投入口から針状フィラー(D)を投入し、最下流に位置する混練部で混練された樹脂組成物を、第2の真空ベントを介して、−40cmHg以下で減圧して、
熱可塑性樹脂組成物を製造する方法、その方法によって製造された熱可塑性樹脂組成物、および、その組成物からなる成形体に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、引張強度、曲げ強度、衝撃強度および疲労強度に優れる成形体を得ることができる熱可塑性樹脂組成物の製造方法、その方法によって製造された熱可塑性樹脂組成物、および、その組成物からなる成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられる混練機は、
シリンダの上流から下流へ設置された少なくとも2個の原料投入口と、シリンダ末端に位置する樹脂出口を有し、
それぞれの原料投入口とその次に位置する原料投入口の間および最下流に位置する原料投入口と樹脂出口との間に混練部を有し、
最上流に位置する混練部とその次に位置する原料投入口との間に設置された第1の真空ベントおよび最下流に位置する混練部と樹脂出口との間に設置された第2の真空ベントを有する混練機である。
【0010】
本発明で用いられる混練機の具体的なものとしては、図1に示す混練機が挙げられる。その具体的な構成を、以下に説明するが、これらに限定されるものではない。
具体的な混練機としては、シリンダ(1)の上流から下流へ第1の原料投入口(3)と、第2の原料投入口(4)と、第3の原料投入口(5)と、第1の原料投入口(3)と第2の原料投入口(4)の間に第1の真空ベント(10)及び第3の原料投入口(5)と樹脂出口(6)の間に第2の真空ベント(11)を有する混練機で、それぞれの原料投入口の下流側に第1〜第3のニィーディングディスクと逆方向フライトで構成された混練部(第1混練部(7)、第2混練部(8)、第3混練部(9))及び第1の混練部(7)と第2の原料投入口(4)の間に設置された逆方向フライト(12)からなるスクリュー構成(2)のものが例示される。
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、
最上流の投入口からポリプロピレン系樹脂(A)と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(B)と、有機過酸化物(C)とを投入し、最上流に位置する混練部で混練された樹脂組成物を、第1の真空ベントを介して、−40cmHg以下で減圧し、
最下流の投入口から針状フィラー(D)を投入し、最下流に位置する混練部で混練された樹脂組成物を、第2の真空ベントを介して、−40cmHg以下で減圧して、
熱可塑性樹脂組成物を製造する方法である。
【0012】
最上流に位置する混練部で混練された樹脂組成物を、第1の真空ベントを介して、減圧する時の圧力として、好ましくは−40cmHg以下であり、より好ましくは−45cmHg以下であり、さらに好ましくは−60cmHg以下である。−40cmHgを超えると引張強度や曲げ強度、疲労強度が低くなることがある。
【0013】
最下流に位置する混練部で混練された樹脂組成物を、第2の真空ベントを介して、減圧する時の圧力として、好ましくは−40cmHg以下であり、より好ましくは−45cmHg以下である。−40cmHgを超えると、押出された樹脂組成物からなるストランドが発泡し、成形品にシルバー等の不良が発生することがある。また引張強度や曲げ強度、疲労強度が低くなることがある。
【0014】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)としては、結晶性ポリプロピレンホモポリマー、少なくとも一つの重合工程で得られる結晶性プロピレンホモポリマー部分と、少なくとも一つの他の重合工程で、エチレン及びα−オレフィン(例えば、ブテン−1、ヘキセン−1等)からなる群から選ばれる少なくとも一種のα−オレフィンとプロピレンとを共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分とを有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体が挙げられる。また、上記の結晶性プロピレンホモポリマーと結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体との混合物であってもよい。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂(A)の製造方法は、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造することができる。
重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒系、チーグラー・ナッタ型触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、またはシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒系等が挙げられ、また、上記の触媒系の存在下でエチレンやα−オレフィンを予備重合させて調製される予備重合触媒を用いてもよい。
【0016】
上記の触媒系としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開平5−194685号公報、特開平7−216017号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182981号公報、特開平9−316147号公報に記載の触媒系が挙げられる。
【0017】
また、重合方法としては、バルク重合、溶液重合、スラリー重合または気相重合が挙げられる。バルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法であり、溶液重合もしくはスラリー重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法であり、また、気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法である。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。工業的かつ経済的な観点から、連続式の気相重合法、バルク重合法と気相重合法を連続的に行うバルク−気相重合法による製造方法が好ましい。
【0018】
また、本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂(A)を一段階で製造する方法であってもよく、二段階以上の多段階で製造する方法であってもよい。
多段階の製造方法としては、例えば、特開平5−194685号公報、特開2002−12719号公報に記載の多段階の重合法による製造方法等が挙げられる。
なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、目的とするポリプロピレン系樹脂(A)に応じて、適宜、変更し、決定すればよい。
また、ポリプロピレン系樹脂(A)には、一般に市販されている上記のポリプロピレン系樹脂を用いることができる。
【0019】
本発明で用いられる不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(B)としては、同一分子内に少なくとも一種の不飽和基(i)と少なくとも一種のカルボン酸基及び/又はカルボン酸より誘導される基(ii)とを併せ持つ化合物や、製造工程内で脱水反応等により構造が変化し、同一分子内に少なくとも一種の不飽和基(i)と少なくとも一種のカルボン酸基及び/又はカルボン酸より誘導される基(ii)とを併せ持つ構造に変化することができる化合物等が挙げられる。
【0020】
少なくとも一種の不飽和基(i)としては、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合が挙げられる。少なくとも一種のカルボン酸基及び/又はカルボン酸より誘導される基(ii)としては、カルボン酸基、カルボキシル基の水素原子あるいは水酸基が置換してなる各種の塩やエステル、酸アミド、酸無水物、イミド、酸アジド、酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0021】
同一分子内に少なくとも一種の不飽和基(i)と少なくとも一種のカルボン酸基及び/又はカルボン酸より誘導される基(ii)とを併せ持つ化合物としては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体、ポリオレフィン樹脂にグラフトする工程で脱水して不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体を生じることができる化合物等が挙げられる。
【0022】
不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸誘導体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のうち、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸のグリシジルエステル、無水マレイン酸である。
【0023】
そして、ポリオレフィン樹脂にグラフトする工程で脱水して不飽和カルボン酸を生じるものとしては、例えば、クエン酸やリンゴ酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(B)としては、一般に市販の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を使用することができる。
なお、本発明の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(B)は、スチレン、α−メチルスチレン等のアルケニル芳香族炭化水素と一緒に用いた方が更に好ましい場合がある。
【0024】
本発明で用いられる有機過酸化物(C)としては、分解してラジカルを発生した後、ポリプロピレンなどの樹脂からプロトンを引き抜く作用を有するものが好ましい。
具体的には、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカルボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカルボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチルパーオキシカルボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ベルオキシ)バレラート、ジ−t−ブチルベルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α−α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
有機過酸化物(C)としては、半減期が1分になる温度が50〜230℃であるものが、反応温度を制御する上で好ましい。有機過酸化物は、単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。
有機過酸化物(C)としては、一般に市販の有機過酸化物を使用することができる。
【0025】
本発明で用いられる針状フィラー(D)としては、公知の針状フィラーが挙げられ、例えば、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウム、セピオライト等が挙げられる。好ましくは、高い強度を有する樹脂組成物および成形体が得られるという観点から、ガラス繊維である。
針状フィラー(D)としては、一般に市販の針状フィラーを使用することができる。
【0026】
本発明で用いられるガラス繊維としては、公知のガラス繊維が挙げられ、ガラス繊維に用いられるガラスの種類としては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス等が挙げられ、好ましくは、Eガラスである。
【0027】
ガラス繊維としては、収束剤で表面処理されたものを用いても良い。収束剤の種類としては、無水マレイン酸をポリオレフィン分子中に導入した無水マレイン酸変性ポリオレフィン系収束剤、芳香族ウレタン系収束剤、脂肪族ウレタン系収束剤、アクリル系収束剤及びエポキシ系収束剤等が挙げられ、好ましくは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系収束剤である。さらに好ましくは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン系収束剤である。
【0028】
また、収束性能を高めるため、無水マレイン酸変性ポリプロピレン系収束剤とウレタン系収束剤とを併用して用いても良い。
曲げ強度や疲労強度等の強度や、耐加水分解性低下を防止するという観点から、好ましくは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン収束剤の重量が、収束剤の全重量の略半分以上である収束剤である。
【0029】
ガラス繊維として、好ましくは、シランカップリング剤で表面処理されているガラス繊維である。シランカップリング剤は、樹脂と反応する有機官能基を有し、有機官能基としては、例えば、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基、ビニル基、メルカプト基等が挙げられ、好ましくは、アミノ基、エポキシ基であり、さらに好ましくは、樹脂組成物の疲労強度等が優れるということから、アミノ基である。
ガラス繊維としては、一般に、市販のガラス繊維を使用することができる。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法におけるポリプロピレン系樹脂(A)の配合量は、成形時の流動性や機械的強度を高めるという観点から、好ましくは30〜99重量%であり、より好ましくは40〜97重量%であり、さらに好ましくは50〜95重量%である。ただし、熱可塑性樹脂組成物の全重量を100重量%とする。
【0031】
不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(B)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)と針状フィラー(D)の合計量100重量部に対して、機械的強度を高めるという観点や、成形品表面に発生するシルバー等の不良を抑えるという観点から、好ましくは0.01〜10重量部であり、より好ましくは0.05〜8重量部であり、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。
【0032】
有機化酸化物(C)の配合量は、ポリプロピレン系樹脂(A)と針状フィラー(D)の合計量100重量部に対して、機械的強度を高めるという観点や、分子量の低下を抑えるという観点から、好ましくは0.01〜5重量部であり、より好ましくは0.05〜3重量部であり、さらに好ましくは0.1〜1重量部である。
【0033】
針状フィラー(D)の配合量は、機械的強度を高めるという観点や、脆くなることや成形品表面にガラス繊維が現れ外観が低下することを抑えるという観点から、好ましくは1〜70重量%であり、より好ましくは3〜60重量%であり、さらに好ましくは5〜50重量%である。ただし、熱可塑性樹脂組成物の全重量を100重量%とする。
【0034】
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物からなる成形体であり、用途としては自動車部品等が挙げられる。具体的にはフロントエンドモジュール、ファンシュラウド、ラジエターやコンデンサーなどのクーリングファン、リザーブタンク、ウィンドウォッシャー液タンク等が挙げられる。その他自動車用部品以外の用途例としては配管や継手、プラグ、ウォータータンク、ポンプハウジング、ポンプインペラー等が挙げられる。
本発明の成形体の成形方法は、射出成形、押出成形、圧縮成形、中空成形等の一般に行われている成形方法が挙げられ、成形方法によって制約されることはない。
【実施例】
【0035】
以下、実施例および比較例によって、本発明を説明する。実施例または比較例で、以下に示した試料を用いた。
(1)ポリプロピレン系樹脂
(PP−1)
ポリプロピレンにプロピレン−エチレン共重合部をブロック的に重合した、以下の構造を有するプロピレンブロック共重合体の住友化学株式会社製パウダー
MFRが0.5g/10分で、エチレン含量は7.5重量%であった。又、プロピレン単独重合体成分とプロピレン−エチレン共重合体成分の重合比は、最終的に得られたプロピレンブロック共重合体の重量とプロピレン単独重合体成分の量から算出したところ、重量比で79/21であった。したがってプロピレン−エチレン共重合体成分中のエチレンの含有量は35.7重量%であり、プロピレン−エチレン共重合体成分の極限粘度[η]は2.8dl/gであった。
(PP−2)
住友化学株式会社製 ノーブレンW101 230℃、21N荷重におけるメルトフローレイトが8.5g/10分、ペレット形状であるホモタイプのポリプロピレン。
【0036】
(2)無水マレイン酸
(MAH)
日本触媒社製 無水マレイン酸
【0037】
(3)有機過酸化物
(PO−1)
化薬アクゾ社製 パーカドックス24
(PO−2)
化薬アクゾ社製 パーカドックス14
【0038】
(4)Cast
共同薬品製 ステアリン酸カルシウム
【0039】
(5)Irg1010
チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 Irganox1010
【0040】
(6)Song6260
松原産業株式会社製 Songnox6260
ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
【0041】
(7)ガラス繊維
(GF)
日本電気硝子社製 チョップドストランド ESC03T−480H/PL、繊維径は10μmであり、繊維長は3mmであり、カップリング剤がアミノシラン系カップリング剤であり、収束剤が無水マレイン酸変性ポリオレフィン系収束剤に極少量のウレタン系収束剤を併用した収束剤であった。
【0042】
実施例または比較例は、下記の製造方法で行った。
シリンダ(1)の上流から下流へ設置された3個の原料投入口(3、4、5)と、シリンダ末端に位置する樹脂出口(6)を有し、それぞれの原料投入口とその次に位置する原料投入口の間および最下流に位置する原料投入口(5)と樹脂出口(6)との間に混練部(7、8、9)を有し、最上流に位置する混練部(7)とその次に位置する原料投入口(4)との間に設置された第1の真空ベント(10)および最下流に位置する混練部(5)と樹脂出口(6)との間に設置された第2の真空ベント(11)を有する図1に示す東芝機械製TEM50A混練機を用いて、表1に示した割合で最上流の第1原料投入口(3)からPP−1、MAH、PO−1、PO−2、Cast、Irg1010及びSong6260を、下流側中間の第2原料投入口(4)からPP−2を、最下流側の第3原料投入口(5)からGFをそれぞれ投入し、第1の原料投入口(3)から投入され最上流に位置する混練部(7)で混練された樹脂組成物を、第1の真空ベント(10)を介し、また最下流の第3原料投入口(5)から無機フィラー(D)を投入し最下流に位置する混練部(9)で混練された樹脂組成物を、第2の真空ベント(11)を介して、それぞれ表2に示した圧力に減圧する製造方法で行った。
【0043】
実施例および比較例で用いた試料(樹脂組成物)の物性は、以下の方法に従って、測定した。
(1)引張強度(YS、単位:MPa)
ASTM D638 に準拠し、1/8インチ厚さの試験片を使用して23℃における引張り強度を測定した。
【0044】
(2)曲げ強度(FS、単位:MPa)
ASTM D790 に準拠し、1/8インチ厚さの試験片を使用して23℃における曲げ強度を測定した。
【0045】
(3)衝撃強度(Izod、KJ/m2
ASTM D256 に準拠し、1/8インチ厚さの試験片を使用して23℃におけるノッチ付きのIzod衝撃強度を測定した。
【0046】
(4)疲労強度(単位:回)
ASTM D671−71T METHOD B に準拠し、1/8インチ厚さのTYPE A 試験片を使用して、23℃における繰り返し曲げ応力26MPaでの破断までの繰り返し回数を測定した。測定は、東洋精機(株)製繰り返し振動試験機B70型を使用し、繰り返し速度30Hzで行った。
【0047】
実施例1
混練機に設置された第1の真空ベントに設置された圧力計で読み取ったベント圧力が−73cmHg、第2の真空ベントに設置された圧力計で読み取ったベント圧力が−76cmHgで樹脂組成物の製造を行った。
【0048】
比較例1
混練機に設置された第1の真空ベントに設置された圧力計で読み取ったベント圧力が0cmHg、第2の真空ベントに設置された圧力計で読み取ったベント圧力が−76cmHgで樹脂組成物の製造を行った。
【0049】
比較例2
混練機に設置された第1の真空ベントに設置された圧力計で読み取ったベント圧力が−37cmHg、第2の真空ベントに設置された圧力計で読み取ったベント圧力が−76cmHgで樹脂組成物の製造を行った。
【0050】
本発明の要件を満足する実施例1は、引張強度、曲げ強度、衝撃強度および疲労強度に優れるものであることが分かる。
これに対して、本発明の要件である最上流に位置する混練部で混練された樹脂組成物を、第1の真空ベントを介して減圧するときの圧力を満足しない比較例1および2は、引張強度、曲げ強度、衝撃強度および疲労強度が不充分であることが分かる。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】具体的な混練機の図
【符号の説明】
【0054】
1 シリンダー
2 スクリュー
3 最上流第1原料投入口
4 第1原料投入口
5 最下流第3原料投入口
6 樹脂出口
7 最上流第1混練部
8 第2混練部
9 最下流第3混練部
10 第1真空ベント
11 第2真空ベント
12 逆フライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの上流から下流へ設置された少なくとも2個の原料投入口と、シリンダ末端に位置する樹脂出口を有し、
それぞれの原料投入口とその次に位置する原料投入口の間および最下流に位置する原料投入口と樹脂出口との間に混練部を有し、
最上流に位置する混練部とその次に位置する原料投入口との間に設置された第1の真空ベントおよび最下流に位置する混練部と樹脂出口との間に設置された第2の真空ベントを有する混練機を用いて、熱可塑性樹脂組成物を製造する方法であって、
最上流の投入口からポリプロピレン系樹脂(A)と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(B)と、有機過酸化物(C)とを投入し、最上流に位置する混練部で混練された樹脂組成物を、第1の真空ベントを介して、−40cmHg以下で減圧し、
最下流の投入口から針状フィラー(D)を投入し、最下流に位置する混練部で混練された樹脂組成物を、第2の真空ベントを介して、−40cmHg以下で減圧して、
熱可塑性樹脂組成物を製造する方法。
【請求項2】
針状フィラー(D)が、ガラス繊維であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法によって製造された熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−274167(P2006−274167A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98203(P2005−98203)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】