説明

熱安定化装置

【課題】 常に一定の紫外線強度をもって処理基板を処理できる熱安定化装置を提供する。
【解決手段】 処理基板Wに照射する紫外線強度については予め決めておき、この値とセンサ16で検出した紫外線強度とが異なる場合には、昇降部材15によってランプハウジング12を昇降動させ、所定の強度の紫外線を処理基板Wに照射する。このようにして、処理基板Wの表面に形成したレジスト膜に、減圧下で、加熱と紫外線照射を施すことで、熱安定化処理が終了し、この後は通路6を介して処理空間S内に不活性ガスを充填し、処理基板Wを払い出し、この後例えばエッチングにてパターンを形成するとともにパターン間にめっき液を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOG(SiO)膜やレジスト膜の安定化を図るための熱安定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板表面に塗布したSOG液やレジスト液を加熱硬化せしめる際に紫外線を照射することで、熱的に安定した被膜が得られることが従来から特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示される熱安定化装置は、ボックス状ケース内にウェーハの保持台を設け、この保持台の上方に紫外線ランプを、下方にオゾンを生成するための電極を配置した構造になっている。
【0004】
特許文献2及び3に開示される熱安定化装置は、テーブルに開口部が形成され、この開口部に下方から加熱部材を備えたステージを挿入可能とし、また開口部の上面を透明板で閉塞し、この透明板とステージ上面との間に密閉された処理空間を形成し、この処理空間を真空引き装置につなげるとともに処置空間内のウェーハ(処理基板)に透明板の上方に配置した紫外線ランプから紫外線を照射する構造になっている。
【特許文献1】特開平1−248528号公報
【特許文献2】特開昭63−248710号公報
【特許文献3】特開昭63−260028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の熱安定化装置において問題となるのは、経時的な紫外線ランプの劣化と、処理空間内面の汚れである。
即ち、熱安定化装置は高温下で使用されるため、紫外線ランプの劣化が早く、この劣化は徐々に起こるため、ランプの交換時期の見極めが遅れると、耐熱性に優れた被膜が得られず、交換が早いとコスト的に不利が生じ、更に処理空間内における反応によって紫外線が透過する透明板の内面が汚れ、紫外線が劣化していないにも拘らず、紫外線強度が不足することがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る熱安定化装置は、少なくとも一部を透明板とした蓋体でテーブルに形成した開口部の上面が閉塞され、前記開口部に処理基板を載置したステージを下方から臨ませ、ステージに設けた加熱部材で処理基板を加熱し、また蓋体上方に配置した紫外線ランプから紫外線を照射しつつ、前記ステージ上面と蓋体下面と開口部側面とで形成される処理空間内で処理基板を減圧処理する熱安定化装置において、前記紫外線ランプをテーブルに対し昇降可能とされた保持部に取り付けた。
【0007】
上記構成とすることで、例えば、前記処理空間内の紫外線照度若しくは紫外線ランプから発せられる紫外線照度を検出するセンサを設け、このセンサによる検出が所定の値になるように前記保持部を昇降動せしめることで、一定の強度の紫外線を処理基板に照射することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る熱安定化装置は、紫外線ランプと処理基板との距離が調整可能なため、紫外線ランプの劣化あるいは処理空間を画成する透明板の内側の汚れなどが生じても、一定強度の紫外線を処理基板に照射することができる。
【0009】
したがって、例えば厚膜用のレジスト液を処理基板表面に塗布した後、露光及び現像を行い、更に本発明に係る熱安定化装置を用いて、真空下で紫外線を照射することで、レジスト膜の耐熱性が向上し、その後に行なうエッチング工程でのエッチング形状が向上する。
【0010】
また、レジスト膜でパターンを形成し、パターンとパターンの間にめっきを施す場合、予め本発明に係る熱安定化装置を用いて、真空下で紫外線を照射しておくことで、レジストの接触角を下げることができ、めっき液の密着性が向上し、まためっきの膨張を抑制して良好なめっき形状を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る熱安定化装置の全体構成図、図2は同熱安定化装置のランプハウジングが下降した状態を示す図である。
【0012】
熱安定化装置はベース1にテーブル2が固定され、このテーブル2には開口部3が形成され、この開口部3の上面は透明板からなる蓋体4で気密に閉塞され、また開口部3の内周面には真空引き用の通路5及びパージ用の通路6が形成され、
真空引き用の通路5はチューブ7を介して図示しない真空源(真空ポンプ)に接続され、パージ用の通路6には不活性ガス供給配管8が接続されている。
【0013】
ベース1上には昇降部材1aを介してステージ9が支持されている。このステージ9は前記開口部3の下方に位置し、上半部の径は開口部3よりも小径でその上面にはウェーハなどの処理基板Wが載置可能とされ、上半部の内部にはホットプレートなどの加熱部材10が設けられ、下半部は開口部3よりも大径とされ、その上面にはシール部材11が設けられている。
【0014】
一方、テーブル2の上方にはランプハウジング12が配置されている。このランプハウジング12は紫外線ランプ13と反射板14からなり、またランプハウジング12はシリンダダユニット或いはボールネジ機構を組み込んだ昇降部材15に支持されている。
【0015】
また、前記開口部3の内周面で、ステージ9の上昇限よりも上の位置には紫外線センサ16が取り付けられ、蓋体4とランプハウジング12との間には開閉自在なシャッター17が配置されている。
【0016】
以上において、紫外線を照射して熱安定化処理を行なうには、先ず図1に示すように、ステージ9を下降せしめて上面に処理基板Wを載置する。この後、加熱部材10によって基板表面に露光・現像したレジスト膜が形成されている処理基板Wを所定温度まで加熱する。
【0017】
処理基板Wは後述するように減圧下で紫外線が照射されレジスト成分の架橋反応が促進されるが、減圧下では熱が伝わりにくく処理基板Wを所定温度まで加熱するのに時間がかかる。そこで、本実施例では前もって処理基板Wを所定温度まで加熱しておくことで、トータルの処理時間の短縮を図っている。
【0018】
次いで、ステージ9のシール部材11がテーブル2の下面に当接するまでステージ9を上昇せしめる。このステージ9の上昇によって、ステージ9の上面と蓋体4下面と開口部3内周面にて画成される気密な処理空間Sが形成される。
【0019】
気密な処理空間Sが形成されたならば、通路5を介して処理空間S内を減圧するとともに、シャッター17を開とし、紫外線ランプ13をオンにする。紫外線ランプ13をオンにすると紫外線が処理空間Sの処理基板Wに照射され、またこの紫外線強度をセンサ16によって検知する。
【0020】
処理基板Wに照射する紫外線強度については予め決めておき、この値とセンサ16で検出した紫外線強度とが異なる場合には、昇降部材15によってランプハウジング12を昇降動させ、所定の強度の紫外線を処理基板Wに照射する。このようにして、処理基板Wの表面に形成したレジスト膜に、減圧下で、加熱と紫外線照射を施すことで、熱安定化処理が終了し、この後は通路6を介して処理空間S内に不活性ガスを充填し、処理基板Wを払い出し、この後例えばエッチングにてパターンを形成したり、パターン間にめっき液を供給する。
【0021】
図3は別実施例を示す図2と同様の図であり、この実施例では、蓋体4の上面に透明板41を嵌めこむとともに、蓋体4の側面にも透明板を嵌め込んだ窓部42を形成し、この窓部42の外側となるテーブル2の段部に紫外線センサ43を設け、更にランプハウジング12の内側部にも紫外線センサ44を設け、これら紫外線センサ43,44の検出信号を制御装置45に出力し、制御装置45ではセンサ43,44からの信号に基づいてランプハウジング12を昇降動せしめる。
【0022】
具体的には、ランプハウジング12の内側部に設けたセンサ44が検出した値が制御装置45に出力される。制御装置45には予め設定値が入力されており、この設定値よりもセンサ44の検出値が小さい場合には紫外線ランプ13が劣化したと判断し、制御装置45は昇降部材15に所定位置まで下がる信号を発し、所定の照度を維持する。
【0023】
一方、窓部42の外側に設けられた紫外線センサ43も処理空間S内の紫外線照度を検出する。この紫外線センサ43による検出値が低下している場合の原因は、紫外線ランプ13が劣化したか、窓部42の内側面が反応生成物で汚れてしまったかの何れかである。
【0024】
そして、この場合において前記センサ44による検出値が正常であると、窓部42の内側面が汚れていると判断され、同時に透明板41の内面も汚れていると判断できるので、処理空間S内の清掃を行なう。このようにセンサを2つ設けることで、処理空間の内面の汚れを知ることができ、効率のよいタイミングで処理空間内を清掃することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る熱安定化装置は、レジストにてパターンを形成し、このパターンを形成し、エッチングにて基板に加工する場合、またこのパターン間にめっきを施す場合等に予めレジスト膜を安定化せしめる工程で使用される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る熱安定化装置の全体構成図
【図2】同熱安定化装置のランプハウジングが下降した状態を示す図
【図3】別実施例を示す図2と同様の図
【符号の説明】
【0027】
1…ベース、2…テーブル、3…開口部、4…蓋体、5…真空引き用の通路、6…パージ用の通路、7…チューブ、8…不活性ガス供給配管、9…ステージ、10…加熱部材、11…シール部材、12…ランプハウジング、13…紫外線ランプ、14…反射板、15…昇降部材、16…紫外線センサ、17…シャッター、41…透明板、42…窓部、43,44…紫外線センサ、45…制御装置、S…処理空間、W…処理基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部を透明板とした蓋体でテーブルに形成した開口部の上面が閉塞され、前記開口部に処理基板を載置したステージを下方から臨ませ、ステージに設けた加熱部材で処理基板を加熱し、また蓋体上方に配置した紫外線ランプから紫外線を照射しつつ、前記ステージ上面と蓋体下面と開口部側面とで形成される処理空間内で処理基板を減圧処理する熱安定化装置において、前記紫外線ランプはテーブルに対し昇降可能とされた保持部に取り付けられていることを特徴とする熱安定化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱安定化装置において、この熱安定化装置は前記処理空間内の紫外線照度を検出するセンサを備え、このセンサによる検出が所定の値になるように前記保持部を昇降動せしめることを特徴とする熱安定化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の熱安定化装置において、前記紫外線ランプのハウジング内側に紫外線照度を検出するセンサを備え、このセンサによる検出値に応じて前記保持部を昇降動せしめることを特徴とする熱安定化装置。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−3608(P2006−3608A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179608(P2004−179608)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】