説明

熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルム

【課題】 おかずトレ−等に成形される熱成形シ−トを構成するポリプロピレンフィルムにおいて、熱成形後の成形品の光沢が良好で、熱成形性が良く、基材シ−トとの密着性が良く、成形品が変形することが無いようにする。
【解決手段】 熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムが、MFRが0.3〜12.0g/10分のポリプロピレン系樹脂からなり、フィルムの縦方向(MD方向)に3〜5倍延伸された後、熱固定されている。ポリプロピレン系樹脂が、プロピレン単独重合樹脂、エチレン含有量が2.0重量%以下のエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂、又はプロピレン単独重合樹脂とエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂とを混合したものであってエチレン含有量が2.0重量%以下の混合樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おかずトレ−等に成形される熱成形シ−トを構成するポリプロピレンフィルムに関し、さらに詳しくは、熱成形した際、成形品の表面光沢が優れ、また剥がれることのない熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、おかずトレ−、弁当トレ−、丼麺容器等の食品容器類は、熱成形シ−トを熱成形(例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形)することにより形成されており、この熱成形シ−トは、ポリプロピレンシ−ト、発泡ポリプロピレンシ−ト、無機フィラ−入りポリプロピレンシ−ト、発泡ポリエチレンシ−ト、発泡ポリスチレンシ−ト等から成る基材シ−トに、延伸ポリスチレンフィルム、無延伸ポリスチレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム等を積層することにより構成されている。
【0003】
また、延伸ポリプロピレンフィルムを積層した熱成形シ−トとしては、面積延伸倍率が4〜30倍、フィルム流れ方向及び該流れ方向に対して直角となる方向の延伸倍率が2〜7倍の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを積層した積層発泡シ−トが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−170455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記基材シ−トに積層されるフィルムの内、延伸ポリスチレンフィルムや無延伸ポリスチレンフィルムは、耐熱性が低いので、これらのフィルムを積層した熱成形シ−トで食品容器を形成すると、電子レンジ加熱において難点があり、また環境上の観点からも問題があった。
【0006】
一方、前記無延伸ポリプロピレンフィルムや延伸ポリプロピレンフィルムは、耐熱性が高いので上述した電子レンジ加熱における問題点は無く、また、環境上の観点からも問題は無いものであった。しかしながら、無延伸ポリプロピレンフィルムは、このフィルムを積層した熱成形シ−トを熱成形して成形品を形成すると、成形品の光沢が良くないという問題があり、また、耐熱性がそれほど高くないので、熱成形時の成形温度の範囲が狭いという問題があった。
【0007】
また、延伸ポリプロピレンフィルムは、耐熱性が高く成形温度の範囲を広く取れるものであるが、熱収縮応力が大きいため、このフィルムを積層した熱成形シ−トを熱成形して成形品を形成すると、基材シ−トから剥がれ易く、また、成形品に変形が発生し易いという問題があった。
【0008】
さらに、特許文献1で提案された積層発泡シ−トは、面積延伸倍率が小さいので、熱収縮応力が小さくなり、基材シ−トからの剥がれや、成形品の変形が発生せず、成形精度が向上しているが、縦方向(MD方向)と横方向(TD方向)の二軸に延伸されているため、その製造装置に莫大な費用を必要とするものであった。
【0009】
本発明は以上の問題点を解決し、熱成形後の成形品の光沢が良好で、熱成形性が良く、基材シ−トとの密着性が良いので剥がれることが無く、成形品が変形することが無く、かつ、製造設備を安価にすることが出来る熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究した結果、延伸用のポリプロピレン系樹脂を押し出してフィルムを成形し、このポリプロピレンフィルムを縦方向に3〜5倍延伸して熱固定することにより上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明による熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムは、MFRが0.3〜12.0g/10分のポリプロピレン系樹脂からなり、フィルムの縦方向(MD方向)に3〜5倍延伸された後、熱固定されたことを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明による熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムは、MFRが0.3〜12.0g/10分のポリプロピレン系樹脂を用いることにより、フィルム表面肌が良好であるとともに、成形性がよいものである。また、フィルムの縦方向(MD方向)に3〜5倍延伸した後、熱固定することにより、耐熱性及び光沢が良好である。また、収縮応力を小さくすることができるので、熱成形シ−トを熱成形した際、フィルムが剥がれたり、成形品が変形するのを防止することができる。さらに、縦方向に一軸延伸するだけであるので、大掛かりな装置を必要とすることがなく、安価な製造装置で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムは、MFRが0.3〜12.0g/10分のポリプロピレン系樹脂からなり、フィルムの縦方向(MD方向)に3〜5倍一軸延伸された後、熱固定されたものである。ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合樹脂、エチレン・プロピレンランダム共重合樹脂、プロピレン単独重合樹脂とエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂との混合樹脂を好ましく用いることができる。
【0014】
エチレン・プロピレンランダム共重合樹脂、プロピレン単独重合樹脂とエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂との混合樹脂の場合は、エチレン含有量が、2.0重量%以下が好ましく、1.0重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下が最も好ましい。エチレン含有量が2.0重量%を超えると、透明性と光沢は向上するが、熱固定温度を低くしなければならず、収縮率が大きくなり、熱成形シ−トを熱成形した際、成形品が変形する恐れがある。
【0015】
上述したポリプロピレン系樹脂は、MFR(JIS K6921−2)が0.3〜12.0g/10分であることが好ましく、0.5〜10.0g/10分であることがより好ましい。MFRが0.1g/10分未満であると、Tダイ成形で延伸前のフィルムを成形した際、フィルムの表面肌が悪くなり、また、成形性も悪いものである。一方、MFRが12.0g/10分を超えると、浴融粘性の低さからインフレ−ション成形での成形が困難であり、Tダイ成形においても偏肉精度の良いフィルムが得られない。
【0016】
本発明の熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを成形するには、Tダイ成形、又はインフレ−ション成形でフィルムを成形し、その後、縦方向(MD方向)に延伸するものである。フィルムの延伸は、Tダイ成形、又はインフレ−ション成形で成形したフィルムをアウトラインで延伸しても、Tダイ成形においてフィルムをインラインで延伸してもよい。
【0017】
縦方向の延伸倍率は、2〜6倍であることが好ましく、3〜5倍であることがより好ましい。延伸倍率が2倍未満であると、耐熱性の低いフィルムとなり、また光沢も良くない。一方、延伸倍率が6倍を超えると、延伸配向が掛かりすぎて適切な熱固定条件を設定したとしても収縮応力の強いフィルムとなり、熱成形シ−トを熱成形した際、剥がれが発生したり、成形品の変形が大きくなったりする。
【0018】
延伸方法としては加熱ロ−ルによる1段または2段以上の多段延伸で行なうことができる。延伸時の温度は、プロピレン単独重合樹脂とランダム共重合樹脂で若干異なり、ランダム共重合樹脂のエチレン含有量によっても異なる。例えば、プロピレン単独重合樹脂では125℃、ランダム共重合樹脂のエチレン含有量0.5重量%では122℃、1.5重量%では115℃位である。
【0019】
一軸延伸したフィルムの熱固定は、延伸されたフィルムをインラインで直接にアニ−ルロ−ルに通して行なっても、また、延伸されたフィルムをアウトラインで熱固定してもよい。
【0020】
本発明の熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムは、120℃のグリセリン浴における収縮率が10%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましく、3%以下であることが最も好ましい。120℃のグリセリン浴における収縮率が10%以下であると、熱成形シ−トを熱成形した際、熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムが基材シ−トから剥がれることが無いものである。すなわち、収縮率が10%を超えると、熱成形シ−トを熱成形した際、熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムの収縮応力が大きいため、フィルムが剥がれたり、収縮方向に成形品が変形したりする場合がある。
【0021】
グリセリン浴120℃での収縮率を10%以下にするためには、熱固定条件の設定がポイントの一つであり、熱固定温度を延伸温度より高めに設定し、延伸によって生じた配向を緩和させることにより行なう。具体的な設定温度は使用した樹脂がプロピレン単独重合樹脂かランダム共重合樹脂かでも異なり、ランダム共重合樹脂のエチレン含有量によっても異なる。例えば、プロピレン単独重合樹脂では130℃、ランダム共重合樹脂のエチレン含有量0.5重量%では127℃、エチレン含有量1.5重量%では120℃位である。
【0022】
本発明の熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムに透明核剤を添加することができる。透明核剤を添加することにより、微細結晶が多くなるので、透明性と光沢の発現が増加し、また剛性も高くなる。したがって、熱成形シ−トを熱成形した成形品の強度を増加させることができる。透明核剤としては、1,3,2,4−ジ(パラメチルベンジリデン)ソルビト−ル、ターシャルブチル−フェニルフォスファイト/Al、1,3,2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビト−ル、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビト−ル、1,3,2,4−ジ(パラエチルベンジリデン)ソルビト−ル、リン酸ビス(4−ターシャルブチルフェニル)ナトリウム等を用いることができ、これらの中で、1,3,2,4−ジ(パラメチルベンジリデン)ソルビト−ル、ターシャルブチル−フェニルフォスファイト/Al、1,3,2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビト−ルが好ましい。
【0023】
透明核剤の添加量は、0.05〜1.0重量%が好ましく、0.2〜0.8重量%がより好ましい。添加量が0.05重量%未満であると、フィルムの透明性改良効果が乏しいとともに、光沢の発現が小さい。一方、添加量が1.0重量%を超えると、透明核剤が過剰状態となり光沢が低下傾向を示す。
【0024】
透明核剤を添加するには、流動パラフィンを用いてヘンシェルミキサ−等でポリプロピレン系樹脂と直接混合しても、予め濃度5.0重量%程度のマスタ−バッチ樹脂を作製し、そのマスタ−バッチ樹脂を所定量配合してもよい。
【0025】
本発明の熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工性改良剤等がある。
【0026】
以上のような熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムは、基材シ−トにサ−マルラミネ−トやドライラミネ−トによって貼合され、熱成形シ−トが作製される。また、熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムは、裏印刷した後、基材シ−トに貼合してもよい。基材シ−トとしては、ポリプロピレンシ−ト、発泡ポリプロピレンシ−ト、無機フィラ−入りポリプロピレンシ−ト、ポリエチレンシ−ト、発泡ポリエチレンシ−ト、発泡ポリスチレンシ−ト等を用いることができる。
【0027】
本発明の熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを積層した熱成形シ−トを熱成形して作製する成形品としては、おかずトレ−、弁当トレ−、丼麺容器等の食品容器類等がある。
【実施例】
【0028】
[実施例1]
MFR7.0g/10分のプロピレン単独重合樹脂を、田辺プラスチック(株)製65mmφTダイ押出機を用いて240℃で溶融押出しして厚み100μmの原反フィルムを成形した。この原反フィルムを125℃の加熱ロ−ルにて縦方向に3倍延伸し、厚み略33μmの一軸延伸フィルムを得た。この一軸延伸フィルムを予熱ロ−ルを通してから130℃のアニ−ルロ−ルで緩和させて、厚み略35μmの熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は5%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は105%であった。
【0029】
次いで、サカタインクス(株)製水性インキPP1と、サカタインクス(株)製希釈剤とを用いて黒色のインキ(顔料濃度12%、ビヒクル含有量14%、粘度ザ−ンカップNO3で33秒)を調製し、前記得られた熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、黒のベタ印刷を行った。
【0030】
この印刷が施された熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを、ブタンガスで7倍に発泡させた耐熱発泡ポリスチレンシ−ト(厚み1.0mm)に熱貼合によって積層させ、熱成形シ−トを得た。
【0031】
熱貼合には図1に示す熱貼合装置を用いた。図1において、11は耐熱発泡ポリスチレンシ−トロ−ル、12は熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムロ−ル、13はヒ−タ−、14は加熱ロ−ル、15はニップロ−ル、16は熱成形シ−トロ−ルである。このような熱貼合装置において、耐熱発泡ポリスチレンシ−トロ−ル11より耐熱発泡ポリスチレンシ−ト17を繰り出すとともに、熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムロ−ル12より熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルム18を繰り出し、耐熱発泡ポリスチレンシ−ト17はヒ−タ−13で加熱後、加熱ロ−ル14に送られ熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルム18と重ねられて熱貼合され、熱成形シ−ト19が形成される。形成された熱成形シ−ト19は熱成形シ−トロ−ル16に巻き取られる。
【0032】
熱貼合条件は以下の通りである。
加工速度:40m/min.
耐熱発泡ポリスチレンシ−トの予備加熱:90℃(表面温度)
加熱ロ−ルの温度:110℃
熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムの
加熱ロ−ル接触距離:50cm(0.75秒接触)
ニップ圧:6kg−cm
【0033】
次いでこのようにして形成した熱成形シ−トを用い、口径12cm角、底径9cm角、深さ4.5cmの角型容器を成形した。成形にはスピ−マ(株)製真空成形機「1600D型」を用いて下記の条件で行った。
【0034】
ヒ−タ−温度(片面);270℃
シ−ト表面温度;140℃
加熱時間;8秒
金型温度;80℃
【0035】
[実施例2]
実施例1と同じポリプロピレン系樹脂を用い、同じ成形方法で厚み150μmの原反フィルムを成形した。この原反フィルムを125℃の加熱ロ−ルにて縦方向に4倍に延伸し、厚み37μmの一軸延伸フィルムを得た。この一軸延伸フィルムを実施例1と同じアニ−ル温度で緩和させて、厚み略40μmの熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は8%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は107%であった。
【0036】
また、この熱成形一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例1と同様に黒のベタ印刷を施した後、実施例1と同一の耐熱発泡ポリスチレンシ−トに積層して熱成形シ−トを得た。さらに、この熱成形シ−トを用い、実施例1と同様に角型容器を成形した。
【0037】
[実施例3]
MFR2.0g/10分でエチレン含有量が0.5重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂を用い、延伸温度122℃、アニ−ル温度を127℃にした以外は実施例1と同じ成形方法で厚み略35μmの熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は4%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は108%であった。
【0038】
また、この熱成形一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例1と同様に黒のベタ印刷を施した後、実施例1と同一の耐熱発泡ポリスチレンシ−トに積層して熱成形シ−トを得た。さらに、この熱成形シ−トを用い、実施例1と同様に角型容器を成形した。
【0039】
[実施例4]
実施例3で用いたポリプロピレン系樹脂を用い、実施例1と同じ成形方法で厚み150μmの原反フィルムを成形した。この原反フィルムを122℃の加熱ロ−ルで縦方向に4倍に延伸し、厚み略37μmの一軸延伸フィルムを得た。この一軸延伸フィルムを、実施例3と同じアニ−ル温度で緩和させて、厚み略32μmの熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は7%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は110%であった。
【0040】
また、この熱成形一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例1と同様に黒のベタ印刷を施した後、実施例1と同一の耐熱発泡ポリスチレンシ−トに積層して熱成形シ−トを得た。さらに、この熱成形シ−トを用い、実施例1と同様に角型容器を成形した。
【0041】
[実施例5]
MFR7.5g/10分のプロピレン単独重合樹脂とMFR1.0g/10分でエチレン含有量が3.0重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂を1対1の割合でブレンドした混合樹脂を用い、延伸温度115℃、アニ−ル温度を120℃とした以外は実施例1と同じ成形方法で略35μmの熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は6%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は110%であった。
【0042】
また、この熱成形一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例1と同様に黒のベタ印刷を施した後、実施例1と同一の耐熱発泡ポリスチレンシ−トに積層して熱成形シ−トを得た。さらに、この熱成形シ−トを用い、実施例1と同様に角型容器を成形した。
【0043】
[実施例6]
実施例5と同じ樹脂に1,3,2,4−ジ(パラメチルベンジリデン)ソルビト−ルである新日本理化(株)製核剤「ゲルオ−ルMD」を0.2重量%添加した樹脂を用い、実施例1と同じ方法で原反フィルムを得た。この原反フィルムを115℃の加熱ロ−ルで縦方向に3倍に延伸し、厚み略33μmの一軸延伸フィルムを得た。この一軸延伸フィルムを、実施例5と同じアニ−ル温度で緩和させて、厚み略35μmの熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は6%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は120%であった。
【0044】
また、この熱成形一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例1と同様に黒のベタ印刷を施した後、実施例1と同一の耐熱発泡ポリスチレンシ−トに積層して熱成形シ−トを得た。さらに、この熱成形シ−トを用い、実施例1と同様に角型容器を成形した。
【0045】
[実施例7]
実施例5と同じ樹脂にタ−シャルブチル−フェニルフォスファイト/Alである旭電化(株)製「NA21」を0.2重量%を添加した樹脂を用い、実施例5と同様に熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は6%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は120%であった。
【0046】
また、この熱成形一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例1と同様に黒のベタ印刷を施した後、実施例1と同一の耐熱発泡ポリスチレンシ−トに積層して熱成形シ−トを得た。さらに、この熱成形シ−トを用い、実施例1と同様に角型容器を成形した。
【0047】
[実施例8]
実施例5と同じ樹脂に1,3,2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビト−ルであるミリケンジャパン(株)製「Millad3988」を0.2重量%添加した樹脂を用い、実施例5と同様に熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は6%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は125%であった。
【0048】
また、この熱成形一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例1と同様に黒のベタ印刷を施した後、実施例1と同一の耐熱発泡ポリスチレンシ−トに積層して熱成形シ−トを得た。さらに、この熱成形シ−トを用い、実施例1と同様に角型容器を成形した。
【0049】
[比較例1]
MFR0.1g/10分のプロピレン単独重合樹脂を用い、実施例1と同じ成形方法で厚み35μmの熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は13%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は70%であった。
【0050】
また、この熱成形一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例1と同様に黒のベタ印刷を施した後、実施例1と同一の耐熱発泡ポリスチレンシ−トに積層して熱成形シ−トを得た。さらに、この熱成形シ−トを用い、実施例1と同様に角型容器を成形した。
【0051】
[比較例2]
MFR18.0g/10分のプロピレン単独重合樹脂を用い、実施例1と同じ成形方法で厚み35μmの熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は8%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は92%であった。
【0052】
また、この熱成形一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例1と同様に黒のベタ印刷を施した後、実施例1と同一の耐熱発泡ポリスチレンシ−トに積層して熱成形シ−トを得た。さらに、この熱成形シ−トを用い、実施例1と同様に角型容器を成形した。
【0053】
[比較例3]
MFR2.0g/10分でエチレン含有量が0.5重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂を用い、実施例3と同じ成形方法で厚み150μmの原反フィルムを成形した。この原反フィルムを125℃の加熱ロ−ルにて縦方向に6倍延伸し、厚み略25μmの一軸延伸フィルム得た。この一軸延伸フィルムを実施例1と同様の条件で緩和させて、厚み27μmの熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は11%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は102%であった。
【0054】
また、この熱成形一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例1と同様に黒のベタ印刷を施した後、実施例1と同一の耐熱発泡ポリスチレンシ−トに積層して熱成形シ−トを得た。さらに、この熱成形シ−トを用い、実施例1と同様に角型容器を成形した。
【0055】
[比較例4]
MFR2.0g/10分でエチレン含有量が0.5重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂を用い、実施例3と同じ成形方法で厚み100μmの原反フィルムを成形した。この原反フィルムを125℃の加熱ロ−ルにて縦方向に2倍延伸し、厚み略50μmの一軸延伸フィルムを得た。この一軸延伸フィルムを予熱ロ−ルを通してから130℃のアニ−ルロ−ルで緩和させて、厚み略52μmの熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は5%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は78%であった。
【0056】
また、この熱成形一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例1と同様に黒のベタ印刷を施した後、実施例1と同一の耐熱発泡ポリスチレンシ−トに積層して熱成形シ−トを得た。さらに、この熱成形シ−トを用い、実施例1と同様に角型容器を成形した。
【0057】
[比較例5]
MFR2.0g/10分でエチレン含有量が4.0重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂を用い、延伸温度107℃、アニ−ル温度を112℃とした以外は実施例1と同じ成形方法で厚み100μmの原反フィルムを成形した。この原反フィルムを、実施例1と同様に延伸・緩和させて厚み略35μmの熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムのグリセリン浴120℃に2分浸漬した後の縦方向の収縮率は12%であり、また、光沢(JISZ−8741に準拠して測定)は116%であった。
【0058】
また、この熱成形一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例1と同様に黒のベタ印刷を施した後、実施例1と同一の耐熱発泡ポリスチレンシ−トに積層して熱成形シ−トを得た。さらに、この熱成形シ−トを用い、実施例1と同様に角型容器を成形した。
【0059】
[成形品の評価]
前記実施例1〜8及び比較例1〜5において得られた角型容器を目視観察し、
熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムと耐熱発泡ポリスチレンシ−トの密着度、変形度、フィルム面の光沢、熱成形性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0060】
<密着度>
一軸延伸ポリプロピレンフィルムの容器からの剥がれや浮きの有無により判定し、以下の評価とした。
○:良 △:やや悪い ×:悪い
【0061】
<変形度>
容器のゆがみ等がなく正常な形状であるか否かにより判定し、以下の評価とした。
○:良 △:やや悪い ×:悪い
【0062】
<表面光沢>
一軸延伸ポリプロピレンフィルムを貼合してある容器の内面を観察し、その光沢の有無により判定し、以下の評価とした。
○:良 △:やや悪い ×:悪い
【0063】
<熱成形性>
熱成形シ−トを加熱した時にドロ−ダウンが少なく、容器に成形した時に甘いところがなく、金型通り(型再現性)に成形されているか否かにより判定し、以下の評価とした。
○:良 △:やや悪い ×:悪い
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
透明核剤A:1,3,2,4−ジ(パラメチルベンジリデン)ソルビト−ル
透明核剤B:タ−シャルブチル−フェニルフォスファイト/Al
透明核剤C:1,3,2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビ
ト−ル
【0067】
以上のようにMFRが0.3〜12.0g/10分のプロピレン単独重合樹脂(実施例1,2)や、MFRが0.1〜12.0g/10分のエチレン含有量が2.0%以下のエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂(実施例3,4)や、プロピレン単独共重合樹脂とエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂とを混合したものであって、MFRが0.3〜12.0g/10分でエチレン含有量が2.0%以下の混合樹脂(実施例5)を用い、フィルムの縦方向に3〜5倍一軸延伸後熱固定されたものであり、また120℃のグリセリン浴の収縮率が10%以下である熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィルムそのものの光沢が良く、熱成形シ−トを熱成形により成形品とした際、熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムと基材シ−トとの密着度、成形品の変形度、成形品表面の光沢、熱成形性に優れたものであった。さらに、透明核剤を配合した(実施例6,7,8)熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィルムの光沢がさらに向上している。
【0068】
これに対し、MFRが0.1g/10分と低いもの(比較例1)や、逆に18.0g/10分と高いもの(比較例2)や、延伸倍率が6倍と高いもの(比較例3)や、逆に延伸倍率が2倍と低いもの(比較例4)や、エチレン含有量が4.0%と多いもの(比較例5)は、フィルムの光沢が劣り、成形品を成形した際の評価も低いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】熱成形シ−トを製造する熱貼合装置の概略図である。
【符号の説明】
【0070】
11:耐熱発泡ポリスチレンシ−トロ−ル
12:熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルムロ−ル
13:ヒ−タ−
14:加熱ロ−ル
15:ニップロ−ル
16:熱成形シ−トロ−ル
17:耐熱発泡ポリスチレンシ−ト
18:熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルム
19:熱成形シ−ト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MFRが0.3〜12.0g/10分のポリプロピレン系樹脂からなり、フィルムの縦方向(MD方向)に3〜5倍延伸された後、熱固定されたことを特徴とする熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルム
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂が、プロピレン単独重合樹脂、エチレン含有量が2.0重量%以下のエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂、又はプロピレン単独重合樹脂とエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂とを混合したものであってエチレン含有量が2.0重量%以下の混合樹脂であることを特徴とする請求項1記載の熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルム
【請求項3】
120℃グリセリン浴における収縮率が10%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルム
【請求項4】
1,3,2,4−ジ(パラメチルベンジリデン)ソルビト−ル、ターシャルブチル−フェニルフォスファイト/Al、及び1,3,2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビト−ルの1又は2以上からなる透明核剤が、0.05〜1.0重量%添加されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の熱成形シ−ト用一軸延伸ポリプロピレンフィルム

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−23091(P2007−23091A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204112(P2005−204112)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(594146180)中本パックス株式会社 (40)
【出願人】(594050821)日生化学株式会社 (16)
【Fターム(参考)】