説明

燃料タンクキャップのロック装置

【課題】キャップのロック解除操作が簡単で、且つ、防犯効果を向上させることができるとともに、安全性をより向上させることができる燃料タンクキャップのロック装置を提供する。
【解決手段】給油口を開閉可能なキャップ1と、キャップ1をロックし得るロック手段2と、IDコードを発信する発信手段3と、そのIDコードを受信し得る受信手段4と、受信したIDコードが正規のものであるか否かを判定する判定手段5とを備え、正規のIDコードを受信するとロック手段2によるロックが解除可能とされる燃料タンクキャップのロック装置であって、キャップ1が閉塞位置にあることを検知する検知手段7を具備するとともに、検知手段7でキャップ1が閉塞位置にあることを検知せず、且つ、車両のエンジンの始動操作を行ったとき、運転者に当該キャップ1が閉塞位置にないことを報知する報知手段15を具備したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに通じた給油口を塞ぐためのキャップの開閉をロック又はロック解除を行うための燃料タンクキャップのロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、大型の二輪車における燃料タンクの上部には、給油口が設けられており、該給油口を塞ぐためのキャップが開閉自在に形成されている。かかるキャップは、閉時にはロックされているとともにメカキーの挿入口(キー孔)が用いられており、メカキーをキー孔に差し込み、ロックを解除して当該キャップを開け得る構成とされていた。このようなメカキーによるロック装置により、当該メカキーを持たない第三者によるキャップの開閉を防止し、タンク内部の燃料が盗難されたり、いたずらされたりするのを防止していた。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の燃料タンクキャップのロック装置においては、キャップの開閉操作をメカキーで行う必要があり、その操作の都度キーを用意して、キー孔に差し込む必要があったので、操作が面倒であるという問題があった。また、正規のメカキーを持たない第三者が、キー孔に特殊な治具を差し込んでピッキングしたり、或いはキー孔にドライバー等を挿通して無理矢理キー孔が形成されたロータを回動させてロックを強制解除することが行われる虞があり、防犯効果が低いという問題もあった。
【0004】
然るに、近時においては、運転者が携帯し得るとともに車両固有のIDコードを発信する発信手段と、車両側に配設されて前記発信手段からのIDコードを受信し得る受信手段と、該受信手段で受信したIDコードが当該車両における正規のものであるか否かを判定する判定手段とを具備し、正規のIDコードを受信しないとエンジンの始動を許可しない二輪車が提案されるに至っている。
【0005】
このような二輪車においては、メカキーを廃するとともに、燃料タンクのキャップをロックする別個のロック手段を有した燃料タンクキャップのロック装置を具備させ、正規のIDコードを受信した場合に限り、当該ロック手段のロックを解除させることにより、メカキーによる操作性の悪化を回避することができる。
【0006】
然るに、この場合、燃料タンクのキャップに対する操作性を向上させることができるものの、当該キャップのロックが不完全な状態となる可能性があり、その状態を運転者が把握せずにエンジンを始動してしまう虞があることから、安全面での対策が必要とされている。更には、エンジンが駆動しているにも関わらず誤ってキャップのロック解除操作を行ってしまう虞があり、その点においても安全面での対策が必要とされている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、キャップのロック解除操作が簡単で、且つ、防犯効果を向上させることができるとともに、安全性をより向上させることができる燃料タンクキャップのロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、車両の燃料タンクに通じた給油口を塞いだ閉塞位置と開放した開放位置との間で移動して当該給油口を開閉可能なキャップと、前記閉塞位置にある前記キャップと係合してロックするロック位置と、当該キャップとの係合を解いて当該ロックを解除する非ロック位置との間で摺動し得るロック手段と、運転者が携帯し得るとともに車両固有のIDコードを発信する発信手段と、車両側に配設されて前記発信手段からのIDコードを受信し得る受信手段と、該受信手段で受信したIDコードが当該車両における正規のものであるか否かを判定する判定手段とを備え、正規のIDコードを受信したと前記判定手段が判定したことを条件として、前記ロック手段がロック位置から非ロック位置まで摺動してロックが解除可能とされるとともに、当該ロックが解除された状態で前記キャップが開閉自在とされた燃料タンクキャップのロック装置であって、前記キャップが閉塞位置にあることを検知し得る検知手段を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の燃料タンクキャップのロック装置において、前記検知手段により前記キャップが閉塞位置にあることを検知せず、且つ、車両のエンジンの始動操作を行ったとき、運転者に当該キャップが閉塞位置にないことを報知する報知手段を具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の燃料タンクキャップのロック装置において、車両のエンジンが駆動しているときに前記ロック手段によるロックの解除操作を行ったとき、運転者にエンジンが駆動中であることを報知する報知手段を具備したことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載の燃料タンクキャップのロック装置において、前記報知手段は、車両のメータパネルに形成された警告灯又は警告音を発し得るスピーカから成ることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の燃料タンクキャップのロック装置において、前記検知手段は、前記閉塞位置にある前記キャップと当接した当接位置と、該当接位置より前進した前進位置との間で摺動可能な検知用レバー部材と、該検知用レバー部材の所定位置に形成された磁石と、前記検知用レバー部材が当接位置にあるときの前記磁石からの磁気を検知する磁気検知手段とを有したことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載の燃料タンクキャップのロック装置において、前記ロック手段は、前記ロック位置及び非ロック位置の間で摺動可能なロック用レバー部材から成るとともに、当該ロック用レバー部材がソレノイドによって駆動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜3の発明によれば、正規のIDコードを受信したと判定したことを条件として、ロック手段がロック位置から非ロック位置まで摺動してキャップのロックが解除可能とされたので、キャップのロック解除操作が簡単で、且つ、防犯効果を向上させることができるとともに、検知手段によりキャップが閉塞位置にあることを検知せず、且つ、車両のエンジンの始動操作を行ったとき、又は、車両のエンジンが駆動しているときにロック手段によるロックの解除操作を行ったとき、報知手段による報知を行わせるので、安全性をより向上させることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、報知手段は、車両のメータパネルに形成された警告灯又は警告音を発し得るスピーカから成るので、運転者に対してより確実に報知することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、検知手段は、閉塞位置にあるキャップと当接した当接位置と、該当接位置より前進した前進位置との間で摺動可能な検知用レバー部材と、該検知用レバー部材の所定位置に形成された磁石と、検知用レバー部材が当接位置にあるときの磁石からの磁気を検知する磁気検知手段とを有したものとされ、当該磁気検知手段の検知に基づいてキャップが閉塞位置にあることを検知し得るので、キャップの状態をより精度よく且つ確実に把握させることができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、ロック手段は、ロック位置及び非ロック位置の間で摺動可能なロック用レバー部材から成るとともに、当該ロック用レバー部材がソレノイドによって駆動されるので、よりスムーズ且つ確実にキャップに対するロック及びロック解除を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る燃料タンクキャップのロック装置は、大型二輪車における燃料タンク(図10に示す燃料タンクT参照)に通じた給油口(当該燃料タンクTの上部に形成された開口)を塞ぐためのキャップの開閉をロック又はロック解除するものであり、図6に示すように、キャップ1と、ロック手段2と、発信手段3と、受信手段4と、判定手段5と、検知手段7とから主に構成されている。尚、判定手段5は、二輪車(車両)のエンジンを制御するECU6と電気的に接続されている。
【0019】
キャップ1は、図1〜5に示すように、燃料タンク上部に形成された給油口Aを塞ぐためのもので、給油口Aの周縁と強固に当接して密封状態とし得るシール部材1aを有するとともに、図9で示すように、中心軸L1を中心として揺動可能とされたものである。而して、キャップ1が揺動すると、給油口Aが開放されて外部に臨むこととなり、給油可能な状態となる。即ち、キャップ1は、燃料タンクに対して回動されることにより、給油口Aを塞いだ閉塞位置(図1、2、7参照)と開放した開放位置(図8、9参照)との間で移動して当該給油口Aを開閉可能とされているのである。また、キャップ1には、図5に示すように、下方に垂下した壁状の部位から成る係合部1bが形成されており、当該係合部1bに係合孔1ba、及びテーパ面1bbが形成されている。
【0020】
ロック手段2は、閉塞位置にあるキャップ1と係合してロックするロック位置(図2参照)と、当該キャップ1との係合を解いて当該ロックを解除する非ロック位置(図9参照)との間で摺動し得るロック用レバー部材9から成るものであり、ソレノイド11を駆動源として摺動可能とされている。具体的には、ロック用レバー部材9は、スプリングS1にてロック位置側(図2、9中左側)に付勢されているとともに、先端にテーパ面9bが形成され、且つ、上方へ突出形成された凸部9aを有した略板状部材から成るものである。ソレノイド11は、図4に示すように、コイル11aと、該コイル11a内で摺動自在に配設されたプランジャ11bとを有して構成されており、コイル11aに通電させることにより、プランジャ11bを摺動させ得るよう構成されている。
【0021】
一方、ロック用レバー部材9は、その凸部9aが揺動部材10に形成された長孔10aに嵌合されて組み付けられている。かかる揺動部材10は、揺動軸L2を中心として揺動自在とされたもので、先端がピン状部材P(図3参照)を介してソレノイド11のプランジャ11bに連結されており、当該ソレノイド11のコイル11aに通電させて当該プランジャ11bを摺動させることにより、揺動軸L2を中心として揺動するよう構成されている。而して、揺動部材10が揺動することにより、ロック用レバー部材9がその長手方向に摺動し、ロック位置と非ロック位置との間を移動することとなる。
【0022】
そして、キャップ1が閉塞位置(シール部材1aが給油口Aの周縁と強固に当接して密封状態とされた状態)にあるとき、その係合孔1baがロック用レバー部材9先端と向かい合う位置となるよう設定されており、当該係合孔1ba内にロック用レバー部材9の先端部が入り込むことによりキャップ1との係合が図られるようになっている。これにより、キャップ1は、閉塞位置にてロックされることとなる。また、二輪車の何れかの位置に配設された操作手段8(図6参照)を操作することにより、正規のIDコードを受信したと判定手段5が判定したことを条件として、ロック用レバー部材9(ロック手段)がロック位置から非ロック位置まで摺動してロックが解除されることとなる。
【0023】
当該ロックが解除された状態においては、キャップ1が開閉自在とされており、操作者がキャップ1を持ち上げて中心軸L1を中心として揺動させれば、給油口Aが開放される。即ち、本実施形態においては、ロック手段2(ロック用レバー部材9)が非ロック位置にあるとき、キャップ1は何らの係合もなされていないので、単にキャップ1を持ち上げるだけで給油口Aを開放することができるのである。尚、操作手段8は、例えばハンドルスイッチ(不図示)やメータパネル等に設けられた操作ボタン等の別個設けられたスイッチとされる。
【0024】
発信手段3は、運転者が携帯し得るとともに車両固有のIDコードを電波等にて発信するものであり、運転者が携帯し得る例えばカード型の電子キーから成る。即ち、発信手段3は、電源により所定間隔で絶えずIDコードを電波等の無線で発信するようになっており、運転者が発信手段3を携帯しつつ二輪車に近づくと、車両側に配設された受信手段4の受信用アンテナがIDコードを受信し得るようになっている。
【0025】
判定手段5は、受信手段4で受信したIDコードが当該車両における正規のものであるか否かを判定するものであり、車両が具備するECU6と電気的に接続されている。そして、正規のIDコードを受信したと当該判定手段5が判定したことを条件として、車両のエンジン始動を許可するとともに、ロック手段2によるロックを解除可能とされている。即ち、正規のIDコードを受信したと当該判定手段5が判定し、且つ、操作手段8による操作がなされると、ソレノイド11が駆動して揺動部材10が揺動することにより、ロック用レバー部材9がロック位置から非ロック位置まで摺動するのである。従って、正規のIDコードを受信したと判定手段5が判定したことを条件として、ロック手段2によるロックを解除可能としたので、キャップ1のロック解除操作が簡単で、且つ、防犯効果を向上させることができるとともに、操作性を向上させることができる。
【0026】
検知手段7は、キャップ1が閉塞位置(シール部材1aが給油口Aの周縁と強固に当接して密封状態とされた状態)にあることを検知し得るもので、その先端が閉塞位置にあるキャップ1の係合部1bと当接した当接位置(図7参照)、該当接位置より前進した前進位置(図8参照)の間で摺動可能な検知用レバー部材12と、該検知用レバー部材12の所定位置(本実施形態においては後端)に形成された磁石Mと、検知用レバー部材12が当接位置にあるときの磁石Mからの磁気を検知するホールIC素子13(図4参照)(磁気検知手段)とを有して構成されている。
【0027】
検知用レバー部材12は、ロック用レバー部材9と略平行に延びた(ロック用レバー部材9と並設された)略板状部材から成るとともに、スプリングS2により前進位置側(図8中右側)に付勢されており、キャップ1が閉塞位置(シール部材1aが給油口Aの周縁と強固に当接して密封状態とされた状態)にありロック用レバー部材9が係合孔1bb内に入り込んで係合された状態では、係合部1bにおける係合孔1baと隣接した部位(図5中2点鎖線で示した部位)に当接するようになっている。
【0028】
このとき、磁石Mは、ホールIC素子13と対向した位置(近接した位置)にあり、当該ホールIC素子13がオンした状態となってキャップ1が閉塞位置にあることが検知される。尚、ホールIC素子13は、磁石Mで生じた磁力により電気的にオンするもので、図4に示すように、検知手段7の筐体を構成するカバーK内部に収容された基板14上に固定されている。
【0029】
そして、キャップ1が開放位置まで揺動されると、検知用レバー部材12は、スプリングS2の付勢力により前進位置に至り、磁石MがホールIC素子13から遠ざかった位置となる。これにより、ホールIC素子13は、磁石Mからの磁気を検知しなくなり、オフした状態とされ、キャップ1が閉塞位置にないことが把握される。而して、ホールIC素子13(磁気検知手段)の検知に基づいてキャップ1が閉塞位置にあることを検知し得るので、キャップ1の状態をより精度よく且つ確実に把握させることができる。
【0030】
更に、ロック用レバー部材9の先端部が係合部1bにおける係合孔1baより下方の位置であってテーパ面1bbに当接した状態(ロックが不完全な状態)となったとき、検知用レバー部材12の先端もテーパ面1bbに当接することとなり、かかる状態でも磁石MがホールIC素子13から遠ざかった位置となってホールIC素子13がオフした状態となるよう設定されている。これにより、キャップ1が閉塞位置近くにありロック手段2によるロックが不完全な状態であるにも関わらず当該キャップ1が閉塞位置にあると検知してしまうのが回避される。
【0031】
然るに、本実施形態においては、ロック用レバー部材9を有して構成されるロック手段2、及び検知用レバー部材12を有して構成される検知手段7が並設されており、それぞれから配線H1、H2が延設されている。これら配線H1、H2により車両側の判定手段5やECU6と電気的に接続され、各種信号の送受信がなされるようになっている。
【0032】
ここで、本実施形態においては、検知手段7によりキャップ1が閉塞位置にあることを検知せず、且つ、車両のエンジンの始動操作(例えばスタータスイッチの押圧操作)を行ったとき、運転者に当該キャップ1が閉塞位置にないことを報知する報知手段15を具備している。かかる報知手段15による報知により、車両のエンジンを始動させようとする運転者に対し、キャップ1が閉塞位置になく(勿論、ロック手段2によるロックもなされていない)安全上問題がある状態であることを把握させることができ、早急な安全対策を講じさせることができる。
【0033】
また、報知手段15は、車両のエンジンが駆動しているときにロック手段2によるロックの解除操作(操作手段8による操作)を行ったとき、運転者にエンジンが駆動中であることを報知するものとすることができる。かかる報知手段15による報知により、ロック手段2によるロック解除をしようとする運転者に対し、エンジンが駆動中であり安全上問題がある状態であることを把握させることができ、早急な安全対策を講じさせることができる。
【0034】
報知手段15は、運転者に当該キャップ1が閉塞位置にないことを報知するもの、或いは運転者にエンジンが駆動中であることを報知するものの何れにおいても、車両のメータパネルに形成された警告灯又は警告音を発し得るスピーカの何れか、或いは両者から成るものが好ましい。勿論、車両が具備する他の形態の報知手段にて運転者に警告するものであってもよい。
【0035】
尚、本実施形態においては、報知手段15による報知が行われるものであれば足りるのであるが、これに加え、例えば報知手段15による報知に加え、エンジンの始動操作を禁止するもの(検知手段7によりキャップ1が閉塞位置にあることを検知せず、且つ、車両のエンジンの始動操作を行ったとき、運転者に当該キャップ1が閉塞位置にないことを報知するものの場合)、或いはロック手段2によるロックの解除操作を禁止するもの(車両のエンジンが駆動しているときにロック手段2によるロックの解除操作を行ったとき、運転者にエンジンが駆動中であることを報知するものの場合)としてもよい。
【0036】
本実施形態によれば、正規のIDコードを受信したと判定したことを条件として、ロック手段2(ロック用レバー部材9)がロック位置から非ロック位置まで摺動してキャップ1のロックが解除可能とされたので、キャップ1のロック解除操作が簡単で、且つ、防犯効果を向上させることができるとともに、検知手段7によりキャップ1が閉塞位置にあることを検知せず、且つ、車両のエンジンの始動操作を行ったとき、又は、車両のエンジンが駆動しているときにロック手段2によるロックの解除操作を行ったとき、報知手段15による報知を行わせるので、安全性をより向上させることができる。
【0037】
特に、本実施形態においては、既述のように、ロック手段2(ロック用レバー部材9)が非ロック位置にあるとき、キャップ1は何らの係合もなされていないので、単にキャップ1を持ち上げるだけで給油口Aが開放されてしまう。このような形態により、キャップ1の開閉に対する操作性を向上できるものの、キャップ1のロックがなされていない状態でのエンジン始動及び走行を避ける必要性が高いものとなっている。本実施形態によれば、こうした状態を報知手段15にて報知されるので、キャップ1の開閉操作性を向上させつつ安全性をより向上させることができる。
【0038】
更に、本実施形態によれば、ロック手段2は、ロック位置及び非ロック位置の間で摺動可能なロック用レバー部材10から成るとともに、当該ロック用レバー部材10がソレノイド11によって駆動されるので、よりスムーズ且つ確実にキャップ1に対するロック及びロック解除を行わせることができる。
【0039】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばロック手段2又は検知手段7を他の構成で略同一機能を果たすものとしてもよい。また、本実施形態におけるホールIC素子13に代えて、検知用レバー部材12が当接位置にあるときの磁石Mからの磁気を検知する他の形態の磁気検知手段としてもよい。勿論、磁気を検知して検知用レバー部材12が当接位置にあるのを検知するものに代え、光センサ等の非接触センサやマイクロスイッチ等の接触センサを具備させるようにしてもよい。
【0040】
更に、本実施形態においては、ロック手段2を構成するロック用レバー部材9を駆動させる駆動源としてソレノイド11を用いているが、他の汎用的な駆動源(モータやシリンダ等)に代えてもよい。但し、モータとした場合、安全上の観点からブラシレスモータとするのが好ましい。尚、二輪車の燃料タンクキャップのロック装置の他、四輪車やバギー、雪上車等他の車両における燃料タンクのロック装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
正規のIDコードを受信したと判定手段が判定したことを条件として、ロック手段によるロックを解除可能とされるとともに、キャップが閉塞位置にあることを検知し得る検知手段を具備した燃料タンクキャップのロック装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料タンクキャップのロック装置を示す平面図、正面図及び側面図
【図2】図1におけるII−II線断面図
【図3】図1におけるIII−III線断面図
【図4】図1におけるIV−IV線断面図
【図5】同燃料タンクキャップのロック装置におけるキャップを示す側面図
【図6】同燃料タンクキャップのロック装置の構成要素全体を示すブロック図
【図7】同燃料タンクキャップのロック装置のキャップが閉塞状態にある場合を示す斜視図
【図8】同燃料タンクキャップのロック装置のキャップが開放状態にある場合を示す斜視図
【図9】同燃料タンクキャップのロック装置のキャップが開放状態にある場合の縦断面図
【図10】同燃料タンクキャップのロック装置が適用される二輪車(車両)を示す模式図
【符号の説明】
【0043】
1 キャップ
2 ロック手段
3 発信手段
4 受信手段
5 判定手段
6 ECU
7 検知手段
8 操作手段
9 ロック用レバー部材
10 揺動部材
11 ソレノイド
12 検知用レバー部材
13 ホールIC素子(磁気検知手段)
14 基板
15 報知手段
T 燃料タンク
A 給油口
M 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクに通じた給油口を塞いだ閉塞位置と開放した開放位置との間で移動して当該給油口を開閉可能なキャップと、
前記閉塞位置にある前記キャップと係合してロックするロック位置と、当該キャップとの係合を解いて当該ロックを解除する非ロック位置との間で摺動し得るロック手段と、
運転者が携帯し得るとともに車両固有のIDコードを発信する発信手段と、
車両側に配設されて前記発信手段からのIDコードを受信し得る受信手段と、
該受信手段で受信したIDコードが当該車両における正規のものであるか否かを判定する判定手段と、
を備え、正規のIDコードを受信したと前記判定手段が判定したことを条件として、前記ロック手段がロック位置から非ロック位置まで摺動してロックが解除可能とされるとともに、当該ロックが解除された状態で前記キャップが開閉自在とされた燃料タンクキャップのロック装置であって、
前記キャップが閉塞位置にあることを検知し得る検知手段を具備したことを特徴とする燃料タンクキャップのロック装置。
【請求項2】
前記検知手段により前記キャップが閉塞位置にあることを検知せず、且つ、車両のエンジンの始動操作を行ったとき、運転者に当該キャップが閉塞位置にないことを報知する報知手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の燃料タンクキャップのロック装置。
【請求項3】
車両のエンジンが駆動しているときに前記ロック手段によるロックの解除操作を行ったとき、運転者にエンジンが駆動中であることを報知する報知手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の燃料タンクキャップのロック装置。
【請求項4】
前記報知手段は、車両のメータパネルに形成された警告灯又は警告音を発し得るスピーカから成ることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の燃料タンクキャップのロック装置。
【請求項5】
前記検知手段は、
前記閉塞位置にある前記キャップと当接した当接位置と、該当接位置より前進した前進位置との間で摺動可能な検知用レバー部材と、
該検知用レバー部材の所定位置に形成された磁石と、
前記検知用レバー部材が当接位置にあるときの前記磁石からの磁気を検知する磁気検知手段と、
を有したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の燃料タンクキャップのロック装置。
【請求項6】
前記ロック手段は、前記ロック位置及び非ロック位置の間で摺動可能なロック用レバー部材から成るとともに、当該ロック用レバー部材がソレノイドによって駆動されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の燃料タンクキャップのロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−125865(P2010−125865A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299138(P2008−299138)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】