説明

燃料供給装置

【課題】この発明は、燃料タンクの大型化を防ぎつつ、配管レイアウトを簡単にできる燃料供給装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】燃料ポンプアッセンブリ20は、吸入フィルタ2、ポンプ9、燃圧保持弁10、及び圧力調整器11が一体に設けられたものである。この燃料ポンプアッセンブリ20を燃料タンク1の外に配置する。また、燃料ポンプアッセンブリ20を低圧配管3で燃料タンク1に接続するとともに高圧配管12で燃料噴射器13に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸気配管内に燃料を供給する燃料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの環境問題から、低燃費化及び排ガスのクリーン化が要求されている。自動車では規制が開始され対策を施すことで要求に対応できるようなった。自動二輪車でも同様にこの要求に応えることが求められている。このような背景の中、従来のキャブレタ式から電子制御式燃料噴射システムへの変更が必要となり、各自動二輪車メーカーでは、大排気量のエンジンから徐々に電子制御式燃料噴射システムの採用を開始している。以下、燃料の供給システムについて具体的に説明する。
【0003】
まず、従来の自動二輪車のエンジンでは、下記の特許文献1に示すようなキャブレタ式の燃料供給装置が採用されている。図14は、従来のキャブレタ式の燃料供給装置を示す構成図である。図において、燃料タンク1には吸入フィルタ2及び低圧配管3を介して容積室4が接続されている。容積室4内にはフロート6と共動するニードル弁5が設けられている。容積室4内の燃料の量に応じてニードル弁5が低圧配管3の吐出口を開閉することで、容積室4内の燃料の量が一定に維持される。容積室4内には噴霧ノズル7の一端が挿入されている。噴霧ノズル7の他端は吸気配管8内のベンチュリ部8aに設けられている。そして、容積室4内とベンチュリ部8aとの間の差圧により、容積室4内の燃料が噴霧ノズル7から吸気配管8内に噴射され混合気が生成される。
【0004】
このようなシステムは、小型かつ低コストに製作できるが、吸気配管8内に噴射される燃料の量を、温度や負荷等のエンジンの状態に応じて制御することができない。このため、低燃費及び排ガスのクリーン化に対応することが困難である。
【0005】
これに対して、エンジンの状態に応じて吸気配管に供給する燃料の量及びタイミングを最適化するためには、自動車で広く採用されている電子制御式燃料噴射システムを採用する必要がある。図15は、燃料タンク1内にポンプ9等を配置した従来の電子制御式燃料噴射システムを示す構成図である。図において、燃料タンク1内には、吸入フィルタ2、ポンプ9、燃圧保持弁10、及び圧力調整器11が配置されている。燃圧保持弁10はポンプ9に接続されている。燃圧保持弁10及び圧力調整器11は高圧配管12を介して燃料噴射器13に接続されている。ポンプ9及び燃料噴射器13に接続された駆動制御部14は、図示しないセンサの出力に基づいてエンジンの状態を検出し、ポンプ9及び燃料噴射器13の動作を制御する。ポンプ9は、駆動制御部14からの駆動信号に基づいて燃料タンク1内の燃料を吸入及び吐出する。燃圧保持弁10は、ポンプ9の吐出圧力が所定値に達した際に開弁するものであり、高圧配管12への燃料の吐出圧力を調整する。燃料噴射器13は、駆動制御部14からの信号に基づく噴射タイミング及び噴射量で、吸気配管8内に高圧燃料を噴射する。圧力調整器11は、高圧配管12内の圧力が所定値以上となった場合に、高圧配管12内の高圧燃料を燃料タンク1に戻す。
【0006】
このようなシステムでは、噴射タイミング及び噴射量を制御できるので、温度や負荷等のエンジンの状態に応じた最適な燃料供給が可能となる。しかしながら、燃料タンク1内に、ポンプ9等を配置するので、燃料タンク1が大きくなり、燃料タンク1の小さい小型自動二輪車への適用は困難である。このため、各自動二輪車メーカーもこのシステムの小型自動二輪車への適用は見送っている。
【0007】
次に、図16は、燃料タンク1の外にポンプ9等を配置した従来の電子制御式燃料噴射システムを示す構成図である。従来のキャブレタ式と同じ燃料タンク1を流用しつつ、電子制御式燃料噴射システムを採用する構成としては、図に示すように、吸入フィルタ2、ポンプ9、燃圧保持弁10、及び圧力調整器11を燃料タンク1の外に配置する方法が考えられる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−182621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように燃料タンク1の外にポンプ9等を配置した電子制御式燃料噴射システムでは、ポンプ9等を燃料タンク1内に配置する場合に比べて、低圧配管3、ドレーン用高圧配管15、及びドレーン用低圧配管16が余分に必要となる。このため、配管レイアウトが複雑になり、配管接続箇所での燃料漏れの可能性が高くなる。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、燃料タンクの大型化を防ぎつつ、配管レイアウトを簡単にできる燃料供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る燃料供給装置は、吸入ポート及び吐出ポートが設けられたハウジングと、前記ハウジング内に設けられ前記吸入ポートに連通された燃料溜め室と、前記ハウジング内に設けられ前記燃料溜め室内の燃料を吐出するポンプと、前記ハウジング内で前記ポンプに接続され燃料の吐出圧力を調整する燃圧保持弁と、前記ハウジング内に設けられ前記吐出ポートに連通されるとともに前記燃圧保持弁からの燃料が吐出される高圧通路と、前記ハウジング内に設けられ前記高圧通路内の圧力が所定値以上となったときに前記高圧通路と前記燃料溜め室との間を連通し前記高圧通路内の圧力を調整する圧力調整器とを有する燃料ポンプアッセンブリを備え、前記吸入ポートは低圧配管を介して燃料タンクに接続され、前記吐出ポートは高圧配管を介して燃料噴射器に接続される。
【発明の効果】
【0012】
この発明の燃料供給装置によれば、ポンプと圧力調整器とが一体になった燃料ポンプアッセンブリを低圧配管で燃料タンクに接続するとともに高圧配管で燃料噴射器に接続だけするので、燃料タンクの大型化を防ぎつつ、配管レイアウトを簡単にできる。
【0013】
なお、ポンプ部と圧力調整部とが一体になった燃料ポンプは、特開平10−339231号公報及び特開2000−110710号公報等に記載されているものがある。しかしながら、燃料タンクの外に燃料ポンプを配置した上で、この燃料ポンプに圧力調整器等の他の機器を付加せずに配管レイアウトを簡単にした構造は示されていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による燃料供給装置を示す構成図である。なお、従来の燃料供給装置と同一又は同等部分については同一の符号を用いて説明する。図において、燃料タンク1の外には、燃料ポンプアッセンブリ20が配置されている。この燃料ポンプアッセンブリ20は、低圧配管3を介して燃料タンク1に接続されている。また、燃料ポンプアッセンブリ20には、高圧配管12を介して燃料噴射器13が接続されている。この燃料ポンプアッセンブリ20は、後に図を用いて説明するが、吸入フィルタ2、ポンプ9、燃圧保持弁10、及び圧力調整器11が一体に設けられたものである。燃料噴射器13には、ポンプ9で加圧された高圧燃料が供給される。駆動制御部14は、ポンプ9の吸入及び吐出動作を制御するとともに、燃料噴射器13の噴射タイミング及び噴射量を制御する。
【0015】
次に、図2は、図1の燃料ポンプアッセンブリ20の断面図である。図において、燃料ポンプアッセンブリ20の外形は、ボディ部100及びケース部200によって形成されている。つまり、この実施の形態では、ハウジングはボディ部100とケース部200とによって構成されている。ボディ部100には、吸入ポート110、この吸入ポート110に連通された燃料溜め室120、ケース部200側の一端に形成された開口部130、及び他端に形成された軸孔140が設けられている。吸入ポート110には、低圧配管3(図1参照)を介して燃料タンク1が接続される。また、吸入ポート110には、異物流入防止フィルタ150が取り付けられている。異物流入防止フィルタ150のオープニングサイズ(網の目の大きさ)は100μm程度である。この異物流入防止フィルタ150は、例えば燃料タンク1内等の異物が燃料溜め室120内に流入することを防ぐためのものである。燃料溜め室120には、燃料タンク1からの燃料が溜められる。このボディ部100内には、燃料溜め室120の燃料を吐出するポンプ9が設けられている。
【0016】
ケース部200には、突部210、高圧通路220、及び吐出ポート230が設けられている。突部210は、ケーシングシール部材240とともに開口部130に嵌入されている。突部210が開口部130に嵌入された後に、ケース部200はネジ250によってボディ部100に締結されている。突部210には、高圧通路220に連通する弁孔210a及びドレーン孔210bが設けられている。弁孔210a内には、ポンプ9に接続された燃圧保持弁10が挿入されている。燃圧保持弁10は、燃料の吐出圧力を所定値に調整し、高圧通路220に高圧の燃料を吐出する。この高圧通路220には吐出ポート230が連通されており、この吐出ポート230は高圧配管12(図1参照)を介して燃料噴射器13に接続されている。ドレーン孔210b内には、圧力調整器11の吸入側端部11aが設けられている。圧力調整器11の吐出側端部11bは、燃料溜め室120内に設けられている。圧力調整器11は、高圧通路220内の圧力が所定値に達するまで閉じている弁である。つまり、圧力調整器11は、高圧通路220内の圧力が所定値以上となったときに高圧通路220と燃料溜め室120との間を連通し、高圧の燃料を燃料溜め室120に戻すことで、高圧通路220内の圧力を調整するものである。
【0017】
これより、図2とともに図3〜図9を参照しながら、ポンプ9についてより詳しく説明する。図3は図2のプレート340周辺を拡大して示す断面図であり、図4は図2の線IV−IVに沿う断面図であり、図5は図3の吸入弁体350を示す正面図であり、図6は図3の吐出弁体360を示す正面図であり、図7は図2のピストン380が下死点に位置した状態を示す説明図であり、図8は図2のピストン380が上死点に位置した状態を示す説明図であり、図9は図2の吸入孔330b周辺を拡大して示す断面図である。
【0018】
図2,3に示すように、ポンプ9は、シャフト300、斜板310、モータ320、シリンダブロック330、プレート340、吸入弁体350、吐出弁体360、複数の板バネ370、及び複数のピストン380を有している。なお、この実施の形態では板バネ370によって付勢部材が構成されている。
【0019】
シャフト300は、軸孔140を貫通している。軸孔140には、シャフト300を回転自在に支持する軸受160と、軸孔140から燃料溜め室120内の燃料が洩れること防ぐオイルシール170とが取り付けられている。シャフト300の先端は、燃料溜め室120内に配置されている。このシャフト300の先端に斜板310が取り付けられている。斜板310の全体としての形状は円板状である。斜板310の一端には、シャフト300の径方向に対して傾斜する傾斜部310aが設けられている。モータ320は、シャフト300を介して斜板310を回転させる。
【0020】
シリンダブロック330は、斜板310に対向しつつ一端が燃料溜め室120に隣接するように配置されている。図4に示すように、このシリンダブロック330には、同心円上に互いに間隔を置いて3つのシリンダ330aが設けられている。また、シリンダブロック330には、各シリンダ330aの上下方向の中間位置に3つの吸入孔330bが1列に設けられている。
【0021】
図2に示すように、プレート340は、シリンダブロック330の他端側に配置されている。このプレート340には、図2,図4に示すように、前述した各吸入孔330bと各シリンダ330aとをそれぞれ連通する複数の吸入溝340aが設けられている。
【0022】
図3に示すように、吸入弁体350は、シリンダブロック330とプレート340との間に介在されている。この吸入弁体350には、図5に示すように、各シリンダ330aの位置(図4参照)に対応した複数のシリンダ孔350aと、各吸入孔330bの位置(図4参照)に対応した複数の吸入弁350bとが設けられている。各吸入弁350bは、プレート340側で各吸入孔330bを開閉するものである。具体的には、吸入弁350bは、シリンダ330a内の圧力が燃料溜め室120内の圧力よりも低くなった際に各吸入溝340a側へ変位され吸入孔330bを開く。一方、吸入弁350bは、シリンダ330a内の圧力が燃料溜め室120内の圧力よりも高くなった際にシリンダブロック330側に変位され吸入孔330bを閉じる。
【0023】
図2に示すように、プレート340には、各シリンダ330aの位置に対応した複数の吐出孔340bが設けられている。突部210には、各吐出孔340bと燃圧保持弁10との間を接続する複数の吐出溝210cが設けられている。
【0024】
図3に示すように、吐出弁体360は、プレート340と突部210との間に配置されている。この吐出弁体360には、各吐出孔340b(図2参照)の位置に対応して、図6に示すように3つの吐出弁360aが設けられている。各吐出弁360aは、突部210側で各吐出孔340bを開閉するものである。具体的には、吐出弁360aは、シリンダ330a内の圧力が吐出溝210c内の圧力よりも高くなった際に、吐出溝210c側へ変位され吐出孔340bを開く。一方、吐出弁360aは、シリンダ330a内の圧力が吐出溝210c内の圧力よりも低くなった際に、プレート340側へ変位され吐出孔340bを閉じる。
【0025】
図2に示すように、板バネ370は、ボディ部100とシリンダブロック330との間に配置されている。この板バネ370は、突部210が開口部130に嵌入された際に、シリンダブロック330、吸入弁体350、プレート340、及び吐出弁体360を突部210に対して付勢し固定する。
【0026】
各ピストン380は、各シリンダ330a内に挿入され各シリンダ330aに沿って移動可能とされている。これら各ピストン380の一端380aは半球状に形成されている。また、これら各ピストン380の一端380aは、斜板310の傾斜部310aに当接されている。各ピストン380は、斜板310が回転されることで、図7に示す下死点と図8に示す上死点との間で変位される。上死点から下死点に向かう方向へピストン380が変位されることで、シリンダ330a内が減圧される。シリンダ330a内が減圧された際に、吸入孔330b及び吸入溝340aを通してシリンダ330a内に燃料が吸入される。一方、下死点から上死点に向かう方向へピストン380が変位されると、シリンダ330a内が加圧される。シリンダ330a内が加圧された際に、吐出孔340b、吐出溝210c、及び燃圧保持弁10を介して、シリンダ330a内の燃料が高圧通路220に吐出される。ピストン380が挿入された後のシリンダ330a内の空間と吐出孔340bと吸入溝340aとによって、燃料が加圧される増圧室330cが形成されている。
【0027】
ここで、自動二輪車のようにエンジンと燃料タンク1との位置が近い場合、燃料ポンプアッセンブリ20はエンジン近傍に配置される。例えば暖機後にエンジンが停止された場合や、走行風によるエンジンの冷却効果が期待出来ない場合等に、エンジンからの熱により、低圧配管3等に燃料のベーパー(蒸気の気泡)が発生することがある。このため、ポンプ9でベーパーロックが発生し燃料が吐出できなくなる可能性がある。
【0028】
増圧室330c内が燃料で充満されているときの増圧室330c内の圧力の状態式は下記(1)式のように示すことができる。また、増圧室330cは断熱変化状態にあるので増圧室330c内にベーパーが発生しているときの圧力の状態式は下記(2)式のように示すことができる。
P=K・ΔV/V ・・・・・・・・・(1)
P :燃料圧力
K :燃料の体積弾性係数(ガソリンの場合、1GPa)
ΔV :容積変化量
V :燃料増圧室容積
p・v=p‘・(v−Δv) ・・・(2)
p :容積変化前の増圧室圧力
v :容積変化前の増圧室容積
p‘ :容積変化後の増圧室圧力
v−Δv :容積変化後の増圧室容積
Δv :容積変化量
k :ガス定数(空気の場合、1.402)
【0029】
仮に、圧力調整装置の調整圧力を300kPaとすると、ベーパーが発生していない通常動作時は、上式から300kPa以上に達する容積変化率は、およそ0.03%と非常に少量となる。これに対して、ベーパーが発生し、仮に増圧室内がベーパーで満たされたとすると、容積変化率は、およそ74%となる。すなわち、通常動作時と比較すると大幅に容積変化率が増加することがわかる。また、各部からの漏れが無いと仮定して吐出量を比較しても、通常動作時はおよそ99%、ベーパー発生時はおよそ26%となる。この吐出量の比較は、各部からの漏れが生じると更に悪化することになる。ベーパーが発生しても吐出量不足に陥らないようにするために、ポンプ9の吐出量を多くする対策が考えられる。しかしながら、ポンプ9が大型になってしまい、搭載スペースの確保及び動力ロスの増大等の問題が生じる。このため、この実施の形態では、小型で自吸性(吸入効率)に優れたアキシャルピストンポンプをポンプ9として採用している。
【0030】
また、この実施の形態の燃料供給装置では、ベーパー流入防止の対策を施している。吸入孔330bには、図9に示すように吸入フィルタ2が取り付けられている。吸入フィルタ2のオープニングサイズ(網の目の大きさ)は30μm以下である。この吸入フィルタ2は、燃料溜め室120内のベーパーがシリンダ330a内に流入することを防ぐためのものである。
【0031】
ここで、吸入フィルタ2下流から吸入弁350bまでの空間を吸入室330dと呼ぶ。換言すると吸入室330dは、吸入孔330b内で吸入フィルタ2を通った燃料が満たされる空間である。吸入フィルタ2によってベーパーの流入を防いだとしても、例えばエンジン停止時等に吸入室330d内にベーパーが発生することがある。このため、吸入室330d内のベーパーを確実に排出できるようにする必要がある。この実施の形態では、吸入室330dの容積が、ピストン380が上死点に位置したときの増圧室330cの容積以下とされ、ピストン380の動作によって吸入室330d内のベーパーを排出しきれるようにされている。
【0032】
ところで、吸入室330d内で発生するベーパーの量は、エンジンで発生する熱量によって異なる。このため、ピストン380が上死点に位置したときの増圧室330cの容積をより容易に変更できるようにする必要がある。この実施の形態では図8に示すように、ピストン380の他端380bを平面状としている。また、上死点にて他端380bがシリンダブロック330の端面と同一平面上に位置するようにしている。これによって、プレート340の厚さを変更することで、前述の増圧室330cの容積を容易に変更できるようにしている。
【0033】
また、吸入孔330bに流入するベーパーの量を少なくできれば、より確実に吸入フィルタ2によってベーパーを除去できる。この実施の形態では、吸入ポート110が天方向(上方向)に開口する向きで燃料ポンプアッセンブリ20を車両に搭載する。すなわち、図中の方向Aを天方向とする。これによって、燃料溜め室120のベーパーが吸入ポート110に集まるようにしている。また、異物流入防止フィルタ150のオープニングサイズが吸入フィルタ2のオープニングサイズよりも大きいので、異物の流入を防ぎつつ、吸入ポート110に集まったベーパーがより容易に燃料タンク1に移動できるようにしている。
【0034】
さらに、燃料ポンプアッセンブリ20の搭載方向に自由度を持たせる必要がある。この実施の形態では、吸入孔330bの延在方向を吸入ポート110の延在方向と直交するようにしている。すなわち、図中の方向Bを天方向として燃料ポンプアッセンブリ20を車両に搭載させた際に、吸入孔330bが天方向に開口するとともに、吸入孔330bが燃料溜め室120よりも地方向(下方向)に位置するようにしている。これによって、燃料ポンプアッセンブリ20の搭載方向を変えたとしても、吸入孔330bに流入するベーパーの量を少なくできるようにしている。
【0035】
次に、圧力調整器11についてより詳しく説明する。図10は、図2の圧力調整器11周辺を拡大して示す断面図である。図において、圧力調整器11は、筒状のケーシング400、及びこのケーシング400内に設けられたポペット弁410を有している。ケーシング400は、シリンダブロック330、吸入弁体350、プレート340、及び吐出弁体360に設けられた貫通孔420を貫通している。このケーシング400の吸入側端部11a側には、貫通孔420よりも大きな径の段部400aが設けられている。段部400aの外周には、シール部材430が設けられている。この段部400aが高圧通路220内の燃料の圧力によりプレート340側に付勢されることで、圧力調整器11の位置が固定される。すなわち、圧力調整器11をシリンダブロック330等に固定するための締結部材は用いられておらず、圧力調整器11はシリンダブロック330等に容易に着脱できるようにされている。
【0036】
ポペット弁410は、ガイド部材411、スプリング412、ボール413、及び円環状のバルブシート414を含んでいる。ガイド部材411は、ケーシング400内に摺動自在に設けられている。ケーシング400の吐出側端部11b側には、ケーシング400の径方向内方に突出する内フランジ400bが設けられている。スプリング412は、ガイド部材411と内フランジ400bとの間に配置されている。ボール413は、ガイド部材411の一端に配置されている。バルブシート414はケーシング400内の吸入側端部11a側に固定されている。すなわち、ボール413は、スプリング412によって所定圧力でバルブシート414に押し当てられている。また、ボール413は、高圧通路220内の燃料の圧力が所定値以上となったときに吐出側端部11b側に移動しバルブシート414の孔414aを開く。この孔414aが開かれると、高圧通路220と燃料溜め室120との間が連通され、高圧通路220内の燃料が吐出側端部11bから燃料溜め室120に吐出される。
【0037】
ここで、高圧通路220内の燃料を燃料溜め室120に戻す際に、燃料とともにベーパーが燃料溜め室120に吐出される可能性がある。この実施の形態では、吸入ポート110を天方向に向けて燃料ポンプアッセンブリ20を車両に搭載した際に、吐出されたベーパーが各吸入孔330bに吸入される可能性をより低くするために、図2及び図4に示すように、圧力調整器11が各吸入孔330bよりも吸入ポート110側に配置されている。
【0038】
また、シリンダブロック330等に貫通孔420を設けて圧力調整器11を取り付けるので、圧力調整器11の位置によってはシリンダブロック330等が大型化してしまう。この実施の形態では、シリンダブロック330等の大型化を防ぐために、圧力調整器11を各シリンダ330aと同心円上に設けている。
【0039】
このような燃料供給装置では、ポンプ9と圧力調整器11とが一体になった燃料ポンプアッセンブリ20を燃料タンク1の外に配置し、この燃料ポンプアッセンブリ20を低圧配管3で燃料タンク1に接続するとともに高圧配管12で燃料噴射器13に接続するので、燃料タンク1の大型化を防ぎつつ、配管レイアウトを簡単にできる。
【0040】
また、ポンプ9として、斜板310の回転に応じて燃料を吸入及び吐出するアキシャルピストンポンプを用いているので、燃料ポンプアッセンブリ20を小型化でき、車両に搭載する際の搭載スペースを小さくすることができる。
【0041】
また、吸入フィルタ2の下流から吸入弁350bまでの吸入室330dの容積が、ピストン380が上死点に位置するときの増圧室330cの容積以下であるので、エンジン停止時に吸入室330d内でベーパーが発生したとしても、エンジンを再始動する際のクランキング時に吸入室330d内のベーパーを排出しきることができ、ベーパーロックが発生する可能性を低くできる。
【0042】
また、ピストン380の他端380bが上死点にてシリンダブロック330の端面と同一平面上に位置するので、プレート340の厚さを変更することで、増圧室330cの容積を容易に変更でき、様々な仕様のエンジンにより容易に対応できる。
【0043】
また、吸入孔330bの延在方向が吸入ポート110の延在方向と直交するので、燃料ポンプアッセンブリ20の搭載方向に自由度を持たせることができ、様々な車両に搭載できる。具体的には、吸入ポート110を介して燃料溜め室120が天方向に開口する向きから、吸入孔330bが天方向に開口する向きまでの間で、燃料ポンプアッセンブリ20の搭載方向に自由度を持たせることができる。
【0044】
また、圧力調整器11は、筒状のケーシング400とこのケーシング400内に設けられたポペット弁410とを有し、このケーシング400の吸入側端部11a側には貫通孔420よりも大きな径の段部400aが設けられ、この段部400aが高圧通路220内の燃料の圧力によりプレート340側に付勢されることで圧力調整器11の位置が固定されるので、圧力調整器11をシリンダブロック330等に固定するための締結部材を省略できるとともに、圧力調整器11をシリンダブロック330等に容易に着脱できる。ここでもし、燃料ポンプアッセンブリ20に圧力調整器11を組み付けた後にしか圧力調整器11の動作確認を行うことができなければ、圧力調整器11が正常に動作しない場合に燃料ポンプアッセンブリ20を組み直す必要があり煩雑になってしまう。この実施の形態の装置では、燃料ポンプアッセンブリ20を組み上げる前に圧力調整器11単体で動作確認を行うことができ、燃料ポンプアッセンブリ20の歩留まりを向上できる。
【0045】
また、圧力調整器11が各吸入孔330bよりも吸入ポート110側に配置されているので、吸入ポート110を天方向に向けて燃料ポンプアッセンブリ20を車両に搭載した際に、圧力調整器11から吐出されたベーパーを吸入ポート110側に移動させることができ、ベーパーが各吸入孔330bに吸入される可能性を低くできる。
【0046】
また、圧力調整器11は、各シリンダ330aと同心円上に設けられているので、シリンダブロック330等の大型化を防ぐことができ、燃料ポンプアッセンブリ20全体をより小型化できる。
【0047】
実施の形態2.
図11は、この発明の実施の形態2による燃料供給装置の燃料ポンプアッセンブリ20を示す断面図である。なお、実施の形態1の構成と同一又は同等部分については同一の符号を用いて説明する。図11では、燃料ポンプアッセンブリ20の搭載方向を吸入孔330bが天方向に開口する方向とした状態を示している。圧力調整器11の吐出側端部11bは、吐出される燃料が傾斜部310aに吹き付けられるように斜板310側に突出されている。すなわち、この実施の形態では、吐出側端部11bは、回転する斜板310の最も近づく位置の近傍まで延長されている。
【0048】
このような燃料供給装置では、圧力調整器11の吐出側端部11bは、吐出される燃料が傾斜部310aに吹き付けられるように斜板310側に突出されているので、吐出される燃料を斜板310とピストン380との間の潤滑剤として利用することができ、斜板310及びピストン380の摩耗を少なくできる。
【0049】
実施の形態3.
図12はこの発明の実施の形態3による燃料供給装置の燃料ポンプアッセンブリ20を示す断面図であり、図13は図12の吐出ポートが取り替えられた状態を示す断面図である。なお、実施の形態1,2の構成と同一又は同等部分については同一の符号を用いて説明する。吐出ポート270,280に測定装置500を接続してポンプ9の流量測定を行う場合、圧力調整器11が動作することによって流量測定が正しく行えないことがある。この実施の形態3では、吐出ポート270,280はケース部200の装着口200aに着脱自在に設けられており、図12に示す通常用吐出ポート270と、図13に示す試験用吐出ポート280とで取り替え可能とされている。
【0050】
通常用吐出ポート270は、図2の吐出ポート230を着脱自在にしたものであり、装着口200aに装着された際に端部270aがドレーン孔210bよりも装着口200a側に位置するものである。なお、通常用吐出ポート270の中間部に設けられた段部上にプレート270bを設けるとともに、このプレート270bをネジ270cでケース部200に締結することで、通常用吐出ポート270をケース部200に固定する。
【0051】
試験用吐出ポート280は、装着口200aに装着された際に端部280aがドレーン孔210bよりも装着口200aから離れた位置に設けられたものである。すなわち、試験用吐出ポート280は、高圧通路220の燃料をドレーン孔210bから隔離するものであり、圧力調整器11を機能させないようにするものである。なお、通常用吐出ポート270と同様に、プレート280bをネジ280cでケース部200に締結することで、試験用吐出ポート280をケース部200に固定する。
【0052】
このような燃料供給装置では、通常用吐出ポート270と試験用吐出ポート280とで取り替え可能であるので、ポンプ9の流量を正確かつ簡単に測定でき、生産性を向上できる。
【0053】
なお、実施の形態1〜3では、異物流入防止フィルタ150は吸入ポート110に取り付けられていると説明したが、例えば燃料タンクの吐出口等の吸入ポートよりも上流に設けてよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の実施の形態1による燃料供給装置を示す構成図である。
【図2】図1の燃料ポンプアッセンブリの断面図である。
【図3】図2のプレート周辺を拡大して示す断面図である。
【図4】図2の線IV−IVに沿う断面図である。
【図5】図3の吸入弁体を示す正面図である。
【図6】図3の吐出弁体を示す正面図である。
【図7】図2のピストンが下死点に位置した状態を示す説明図である。
【図8】図2のピストンが上死点に位置した状態を示す説明図である。
【図9】図2の吸入孔周辺を拡大して示す断面図である。
【図10】図2の圧力調整器周辺を拡大して示す断面図である。
【図11】この発明の実施の形態2による燃料供給装置の燃料ポンプアッセンブリを示す断面図である。
【図12】この発明の実施の形態3による燃料供給装置の燃料ポンプアッセンブリを示す断面図である。
【図13】図12の吐出ポートが取り替えられた状態を示す断面図である。
【図14】従来のキャブレタ式の燃料供給装置を示す構成図である。
【図15】燃料タンク内にポンプ等を配置した従来の電子制御式燃料噴射システムを示す構成図である。
【図16】燃料タンクの外にポンプ等を配置した従来の電子制御式燃料噴射システムを示す構成図である。
【符号の説明】
【0055】
1 燃料タンク、2 吸入フィルタ、3 低圧配管、9 ポンプ、10 燃圧保持弁、11 圧力調整器、11a 吸入側端部、11b 吐出側端部、12 高圧配管、13 燃料噴射器、14 駆動制御部、20 燃料ポンプアッセンブリ、100 ボディ部、110 吸入ポート、120 燃料溜め室、130 開口部、140 軸孔、160 軸受、200 ケース部、200a 装着口、210 突部、210b ドレーン孔、210c 吐出溝、220 高圧通路、230 吐出ポート、270 通常用吐出ポート、280 試験用吐出ポート、300 シャフト、310 斜板、310a 傾斜部、320 モータ、330 シリンダブロック、330a シリンダ、330b 吸入孔、330c 増圧室、330d 吸入室、340 プレート、340a 吸入溝、340b 吐出孔、350 吸入弁体、350b 吸入弁、360 吐出弁体、360a 吐出弁、380 ピストン、420 貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入ポート及び吐出ポートが設けられたハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ前記吸入ポートに連通された燃料溜め室と、
前記ハウジング内に設けられ前記燃料溜め室内の燃料を吐出するポンプと、
前記ハウジング内で前記ポンプに接続され燃料の吐出圧力を調整する燃圧保持弁と、
前記ハウジング内に設けられ前記吐出ポートに連通されるとともに前記燃圧保持弁からの燃料が吐出される高圧通路と、
前記ハウジング内に設けられ前記高圧通路内の圧力が所定値以上となったときに前記高圧通路と前記燃料溜め室との間を連通し前記高圧通路内の圧力を調整する圧力調整器と
を有する燃料ポンプアッセンブリ
を備え、
前記吸入ポートは低圧配管を介して燃料タンクに接続され、前記吐出ポートは高圧配管を介して燃料噴射器に接続されることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記ポンプは、前記ハウジングに回転自在に支持され先端が前記燃料溜め室内に配置されたシャフト、前記シャフトの前記先端に取り付けられ傾斜部を有する斜板、前記シャフトを介して前記斜板を回転させるモータ、一端が前記燃料溜め室に隣接して配置され互いに間隔を置いて複数の吸入孔と複数のシリンダとが設けられたシリンダブロック、前記各吸入孔にそれぞれ取り付けられた吸入フィルタ、前記シリンダブロックの他端側に配置され前記各吸入孔と前記各シリンダとをそれぞれ連通する複数の吸入溝が設けられたプレート、前記シリンダブロックと前記プレートとの間に介在され前記プレート側で前記吸入孔を開閉する吸入弁が設けられた吸入弁体、前記プレートに設けられ前記各シリンダにそれぞれ連通する複数の吐出孔、前記シリンダブロックと前記ハウジングとの間に介在され前記ハウジング側で前記各吐出孔を開閉する吐出弁が設けられた吐出弁体、及び前記シリンダ内に進退自在に挿入されるとともに一端が前記傾斜部に当接され前記斜板の回転に応じて前記各吸入孔及び前記各吸入溝を介して前記シリンダ内に燃料を吸入するとともに前記シリンダ内の燃料を前記吐出孔から吐出するピストンを含むことを特徴とする請求項1記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記ピストンが挿入された状態の前記各シリンダ内の空間と前記各吐出孔と前記各吸入溝とによって増圧室が形成されるとともに、前記吸入フィルタの下流から前記吸入弁までの空間によって吸入室が形成され、
前記吸入室で発生したベーパーが前記ピストンの動作によって排出しきれるように、前記吸入室の容積が、前記ピストンが上死点に位置するときの前記増圧室の容積以下とされていることを特徴とする請求項2記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記ピストンの他端が上死点にて前記シリンダブロックの端面と同一平面上に位置することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記吸入孔の延在方向は、前記吸入ポートの延在方向と直交していることを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【請求項6】
前記シリンダブロック、前記吸入弁体、前記プレート、及び前記吐出弁体には、前記圧力調整器のケーシングが貫通する貫通孔が設けられ、
前記ケーシングの吸入側端部側には前記貫通孔よりも大きな径の段部が設けられ、前記段部が前記高圧通路内の燃料の圧力により前記プレート側に付勢されることで前記圧力調整器の位置が固定されることを特徴とする請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【請求項7】
前記圧力調整器は、前記各吸入孔よりも前記吸入ポート側に配置されていることを特徴とする請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【請求項8】
前記圧力調整器は、前記各シリンダと同心円上に設けられていることを特徴とする請求項2から請求項7までのいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【請求項9】
前記圧力調整器の吐出側端部は、吐出される燃料が前記傾斜部に吹き付けられるように前記斜板側に突出されていることを特徴とする請求項2から請求項8までのいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【請求項10】
前記ハウジングには、前記高圧通路に連通されるとともに前記圧力調整器の吸入側端部が挿入されるドレーン孔が設けられ、
前記吐出ポートは前記ハウジングの装着口に着脱自在に設けられ、
前記吐出ポートは、前記装着口に装着された際に端部が前記ドレーン孔よりも前記装着口側に位置する通常用吐出ポートと、前記装着口に装着された際に端部が前記ドレーン孔よりも前記装着口から離れた位置に設けられ前記高圧通路の燃料を前記ドレーン孔から隔離する試験用吐出ポートとで選択的に取り替え可能であることを特徴とする請求項2から請求項9までのいずれか1項に記載の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−255846(P2008−255846A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97356(P2007−97356)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】