説明

燃料容器およびこれを備えた燃料電池システム

【課題】 燃料の加水分解過程で水素ガスと共に発生するアルカリ系成分を除去することができる燃料容器及びこれを用いた燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 燃料から水素ガスを生成する水素供給部30と、水素供給部から供給される水素ガスと外部の酸化剤ガスを反応させて電気エネルギーを発生させる発電部10と、水素ガスを発電部に供給する経路上に設けられる一つ以上の疎水性多孔膜とを含むようにした。疎水性多孔膜は、第1疎水性多孔膜130と、第1疎水性多孔膜と発電部との間に設けられる第2疎水性多孔膜140とを備え、第1疎水性多孔膜の孔サイズが第2疎水性多孔膜の孔サイズに比べて大きいのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料と酸化剤の電気化学反応によって電気を生成する燃料電池システムに係り、より詳しくは、燃料容器およびこれを備えた燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料の酸化反応、及び、この燃料とは別途に供給される酸化剤ガスの還元反応によって、電気エネルギーを発生させる発電システムで構成される。このような燃料電池は、燃料の種類によって、高分子電解質型燃料電池と、直接酸化型燃料電池とに大別することができる。高分子電解質型燃料電池は、例えば改質装置などのような燃料処理装置によって燃料を改質して水素ガスを発生させて、上記水素ガスを燃料電池スタックに供給する。これに対し、直接酸化型燃料電池は、高分子電解質型燃料電池とは違なって燃料に水素ガスを使わず、例えばメタノールなどのような燃料を直接、燃料電池スタックに供給する。
【0003】
上述したように、高分子電解質型燃料電池は、燃料の改質反応を通して水素ガスを発生させることができるが、燃料として金属水素化物(金属水素化合物)を使用して、上記金属水素化物の加水分解反応を用いて水素ガスを発生させることもできる。このような金属水素化物を用いた従来の技術による燃料電池は、水素ガスを発生させる方法として、金属水素化物と水とが混合された燃料水溶液に触媒を投じる方法、触媒が収容された容器に金属水素化物及び水を供給する方法、または、金属水素化物が収容された容器に触媒水溶液を供給する方法などがある。
【0004】
金属水素化物を用いて水素ガスを発生させる方法においては、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を含む燃料が主に用いられる。このような水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を加水分解反応させて水素ガスを発生させると、例えばNaなどのようなアルカリ系の成分が共に発生する。このNaのようなアルカリ系成分が、水素ガスと一緒に燃料電池用スタックに供給されると、燃料電池の性能に悪影響を及ぼすことが知られている。例えば、図8に示すように、電気エネルギーを生成する出力電圧の結果が低下するといった問題が発生する。図8を参照すると、燃料電池の出力電圧の結果は、Naのようなアルカリ系成分がより多く含まれるほど低下し、時間が経過するほどさらに顕著に悪化することが分かる。それは、Naのようなアルカリ系成分は、ナフィオンのような燃料電池スタック内の高分子電解質に付着してしまい、水素ガスと酸化剤ガスの電気化学反応を阻害したり、また、高分子電解質を腐食させたり劣化させたりするためである。
【0005】
このような問題を解決するために、金属水素化物を用いた従来技術による燃料電池においては、水素ガスと共に発生する例えばNaなどのようなアルカリ系成分を除去する試みがなされてきた。
【0006】
例えば、水素ガスと共に発生するNaなどのようなアルカリ系成分を除去するために、水素分離手段を設置し、上記水素分離手段をPdシートまたはPd合金シートで製作することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、当業者に広く知られたように、Pd金属はその原価が高いため、このような技術を用いた燃料電池は幅広く実用化することができない。
【0007】
また、水素ガスと共に発生するNaなどのようなアルカリ系成分を除去するために、水素分離手段としてポリイミド膜を設けることが知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、このような水素分離手段にも、ポリイミド膜は例えばアルカリ系水溶液などのような化学的試薬に対して脆弱であり、また、水素を分離処理する速度が遅いといった短所がある。
【0008】
【特許文献1】特開1993−137979号公報
【特許文献2】特開2006−314944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、燃料の加水分解過程で水素ガスと共に発生する例えばNaなどのようなアルカリ系成分をより効果的に除去することができる燃料容器及びこれを備えた燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、燃料から水素ガスを生成する水素供給部と、上記水素供給部から供給される水素ガスと外部の酸化剤ガスを反応させて電気エネルギーを発生させる発電部と、上記水素ガスを上記発電部に供給する経路上に設けられる一つ以上の疎水性多孔膜と、を含むことを特徴とする燃料電池システムが提供される。
【0011】
このような本発明にかかる燃料電池システムによれば、上記疎水性多孔膜によって水素ガスと共に生成される水素以外のアルカリ系物質などの物質が除去されるので、発電部にアルカリ系物質が供給されて電気化学反応が阻害されたり、発電部が劣化するのを防止することができる。
【0012】
このとき、上記疎水性多孔膜は、第1疎水性多孔膜と、上記第1疎水性多孔膜と上記発電部との間に設けられる第2疎水性多孔膜とを備え、上記第1疎水性多孔膜の孔サイズは、上記第2疎水性多孔膜の孔サイズに比べて大きくなるように構成されるのがよい。このように、水素が供給される経路上に、上記第1疎水性多孔膜を設け、更にその下流に孔サイズが上記第1疎水性多孔膜よりも小さい上記第2疎水性多孔膜を設けることにより、先ず、上記第1疎水性多孔膜を通過する際に、水素ガス以外の物質の通過が選択的に遮断される。そして、微量ではあるが、上記第1疎水性多孔膜を通過することができた水素ガス以外の物質は、上記第2疎水性多孔膜を通過する際に、孔サイズが上記第1疎水性多孔膜より小さい上記第2疎水性多孔膜により遮断される。
【0013】
また、上記第1疎水性多孔膜の孔サイズは、その平均直径が0.1μm〜0.5μmであるのがよい。そして、上記第2疎水性多孔膜の孔サイズは、その平均直径が0.1μm〜0.2μmであるのがよい。
【0014】
ここで、上記燃料は金属水素化物であるのがよく、上記水素供給部は、上記金属水素化物を加水分解させて上記水素ガスを発生させることができる。このとき、上記金属水素化物は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を含むのがよい。
【0015】
また、上記水素供給部は、その内部で上記水素ガスが生成され、生成された上記水素ガスをガス排出口を通じて排出させる燃料容器を備え、上記疎水性多孔膜は、上記ガス排出口に設けられるように構成されるのがよい。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、燃料電池システムの電気化学反応に必要な水素ガスを供給する燃料容器であって、容器本体と、上記容器本体の内部に備けられ、燃料と水溶液の加水分解反応によって水素ガスが発生する反応空間と、上記容器本体に形成されて、上記水素ガスが排出されるガス排出口と、上記ガス排出口に設けられる一つ以上の疎水性多孔膜と、を含むことを特徴とする燃料容器が提供される。
【0017】
このような本発明にかかる燃料容器によれば、上記疎水性多孔膜によって、上記容器本体の反応空間で発生された水素ガスと共に生成される水素以外のアルカリ系物質などの物質を除去することができる。これにより、上記燃料容器から供給される水素ガスに好ましくない物質が含まれるのを防止することができる。
【0018】
このとき、上記ガス排出口は、上記反応空間の上部側に位置するように構成されるのがよい。これにより、上記反応空間内の気体と液体の中から、気体だけが捕集されるようにすることができる。
【0019】
このとき、上記ガス排出口の上記反応空間側には第1疎水性多孔膜が設けられ、上記ガス排出口の上記水素ガスが外部へ流出される出口側には第2疎水性多孔膜が設けられるのがよい。ここで、上記第1疎水性多孔膜の孔サイズは、上記第2疎水性多孔膜の孔サイズに比べて大きくなるように構成されるのがよい。このように、水素が供給される経路上に、上記第1疎水性多孔膜を設け、更にその下流に孔サイズが上記第1疎水性多孔膜よりも小さい上記第2疎水性多孔膜を設けることにより、先ず、上記第1疎水性多孔膜を通過する際に、水素ガス以外の物質の通過が選択的に遮断される。そして、微量ではあるが、上記第1疎水性多孔膜を通過することができた水素ガス以外の物質は、上記第2疎水性多孔膜を通過する際に、孔サイズが上記第1疎水性多孔膜より小さい上記第2疎水性多孔膜により遮断される。
【0020】
ここで、上記第1疎水性多孔膜と上記第2疎水性多孔膜との間の排出空間は、水溶液で充填されるのがよい。これにより、水素ガス以外の物質を効率的に遮断することができる。また、上記第1疎水性多孔膜と上記第2疎水性多孔膜との間の排出空間には、上記水溶液を吸収した多孔性物質を設けるようにすることができる。これにより、水素ガス以外の物質をさらに効率的に遮断することができる。
【0021】
あるいは、上記第1疎水性多孔膜と上記第2疎水性多孔膜との間の排出空間は、酸性水溶液で充填されるのがよい。これにより、水素ガス以外の物質を効率的に遮断することができる。また、上記第1疎水性多孔膜と上記第2疎水性多孔膜との間の排出空間には、上記酸性水溶液を吸収した多孔性物質を設けるようにすることができる。これにより、水素ガス以外の物質をさらに効率的に遮断することができる。
【0022】
また、上記第1疎水性多孔膜の孔サイズは、その平均直径が0.1μm〜0.5μmであるのがよい。そして、上記第2疎水性多孔膜の孔サイズは、その平均直径が0.1μm〜0.2μmであるのがよい。
【0023】
また、上記燃料は金属水素化物であるのがよい。さらに、上記金属水素化物は水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を含むのがよい。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、金属水素化物を用いた加水分解過程で水素ガスと共に発生する例えばNaのようなアルカリ系成分を効果的に除去することができる。その結果、従来の技術に比べてより安定的に、またより長期間に渡って安定性を維持して電気エネルギーを生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本発明は多様に異なる形態で実現可能であり、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態にかかる燃料電池システムの概略構成を示す図である。
【0027】
図1に示すように、本発明の実施形態にかかる燃料電池システムは、発電部10と、酸化剤供給部20と、水素供給部30とを含んで構成される。かかる燃料電池システムは、金属水素化物の加水分解反応を通して燃料から水素ガスを発生させて、この水素ガスと酸化剤ガスを反応させて、電気エネルギーを発生させることができる。特に、本発明の実施の形態にかかる燃料電池システムは、金属水素化物の加水分解反応過程において水素ガスと共に発生する例えばNaなどのようなアルカリ系成分を除去するように改善された点を特徴とする。このために、本発明の実施の形態にかかる燃料電池システムは、以下のような主要構成要素を備える。
【0028】
発電部10は、水素ガスと酸化剤ガスを反応させて、電気エネルギーを発生させる発電装置である。このため、発電部10は、水素ガスと酸化剤ガスの電気化学的な反応が誘発されるセル単位の電気発生部を備える。このような電気発生部は、膜−電極接合体が中心に位置し、その両面に密着するセパレータを含んで構成されることができる。そして、発電部10は、複数個の上記電気発生部を連続的に配置して構成される。このような電気発生部の集合体構造は、通常スタックと称される。
【0029】
酸化剤供給部20は、発電部10に連結されて、例えば空気などのような酸化剤ガスを発電部10に供給する。酸化剤供給部20としては、一般に空気ポンプが使用される。しかし、酸化剤供給部20は、発電部10が外部の空気を直接取り入れるように構成された場合には、設置されないこともあり得る。
【0030】
水素供給部30は、燃料容器100を備え、燃料から水素ガスを生成して、ガス通路40を通じて発電部10に生成した水素ガスを供給する。燃料容器100の詳細な構成については、後に説明することとする。水素供給部30は、ポンプ35をさらに備えることができる。ここで、水素供給部30は、必要でなければポンプ35を備えず、水素ガスを燃料容器100から発電部10に直接、または管路経由のみで流入させる構成であってもよい。
【0031】
ガス通路40は、燃料容器100で生成された水素ガス及びその副産物を、発電部10に流通させるための全ての通路を指す。本発明の実施の形態では、ガス通路40は、燃料容器100から発電部10まで連結される。
【0032】
本発明の実施の形態にかかる燃料電池システムは、水素ガスが発電部10に流入する工程で、疎水性多孔膜を通過するように構成される。つまり、燃料電池システムのガス通路40には、一つ以上の疎水性多孔膜がガスの進行方向に沿って順次に設けられる。
【0033】
疎水性多孔膜は、水を吸収することができ、水に溶けることのない性質の薄い膜である。かかる疎水性多孔膜は、気体と液体を分離するだけでなく、多数の孔によって、一定の大きさ以下の気体を選択的に通過させるが、膜の孔サイズで決まるサイズ以上のクラスター物質を通さない、という性質を有する。これによって、疎水性多孔膜は、気体と液体を分離させるだけでなく、孔サイズによりアルカリ系成分が含まれている蒸気(上記クラスターなど)が通過できないように遮断することができる。
【0034】
従って、このような疎水性多孔膜を、水素供給部30にて生成された水素ガスを発電部10に供給する経路上に一つ以上設けることにより、水素ガスに含まれるアルカリ系成分が発電部10に供給されないようにすることができる。疎水性多孔膜は、水素ガスが供給される経路上であれば、どこに設けても良いが、本実施形態においては、構造的な設置条件を考慮した場合、水素ガスがガス通路40に流入される地点の燃料容器100の排出口側に設置することができる。具体的には、疎水性多孔膜は、燃料容器100の排出口に設けることができる。以下、図2〜図6を参照して、疎水性多孔膜についてより詳細に説明する。
【0035】
図2は図1に示された燃料容器100の斜視図である。
【0036】
図2に示されたように、燃料容器100の容器本体110は、ほぼ六面体形状に形成される。そして、水素ガスを燃料容器100から排出させてガス通路40に流入させるためのガス排出口120は、容器本体110の上部側に形成される。ガス排出口120は、その内部に中空の排出空間122を有するように、容器本体110の上部側に突出されて形成される。
【0037】
図3は、図2に示された燃料容器100の一部を図示せず、燃料容器100の内部が示されるようにした斜視図である。
【0038】
図3に示されたように、燃料容器100は、その内部に、一定の体積以上を有する反応空間112を有する。以下、燃料容器100の反応空間112では、金属水素化物と触媒水溶液が物理的に接触しながら、加水分解反応によって、水素ガスが発生していることとする。
【0039】
本発明の実施の形態に使用される金属水素化物には、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を主要要素として含む燃料が用いられる。その結果、金属水素化物と触媒水溶液からは、その化学反応過程で、水素ガス、水蒸気、例えばNaなどのようなアルカリ系成分が含まれる蒸気、及び、その他多数の物質が発生する。本発明の実施の形態では、蒸気状態のアルカリ系成分を除去するために、燃料容器100のガス排出口120側に、一つ以上の疎水性多孔膜が設けられる。
【0040】
図4は、図3に示された燃料容器100のガス排出口120に疎水性多孔膜が設けられた状態を示した斜視図である。
【0041】
図4に示されたように、ガス排出口120は、反応空間112の上部側に外側方向に突出するように設置される。燃料容器110内では、軽い気体が上昇するため、ガス排出口120は反応空間112の上部側に設けられて、気体と液体の中から気体だけが捕集されるように形成される。突出されたガス排出口120の内部は中空の排出空間122となっている。本発明の実施の形態では、このようなガス排出口120には、一つ以上の疎水性多孔膜が設けられる。具体的には、第1疎水性多孔膜130及び第2疎水性多孔膜140が設けられる。第1疎水性多孔膜130は、ガス排出口120の内側端部に設置され、第2疎水性多孔膜140がガス排出口120の外側端部に設けられる。より具体的には、第1疎水性多孔膜130は、排出空間122が反応空間122に対して仕切られるように設けることができ、図4では外側に突出するように形成されたガス排出口120の底面に設けられている。また、第2疎水性多孔膜140は、排出空間122が水素が流出される出口に対して仕切られるように設けることができ、図4では、外側に突出するように形成されたガス排出口120の側面に設けられている。図4には図示されていないが、ガス排出口120の上記側面には、図2に示されているような水素ガスが流出する孔が形成されている。このように、ガス通路40上から見れば、第2疎水性多孔膜140は第1疎水性多孔膜130と発電部10との間に位置するようになる(図1参照)。
【0042】
第1疎水性多孔膜130は、反応空間112で発生する気体と液体を分離させるだけでなく、蒸気状態のアルカリ系成分も選択的に遮断することができる。これにより、燃料容器100は、水素ガス及び一部水蒸気だけを選別して、発電部10に供給することができるようになる。このような選別基準は、第1疎水性多孔膜130の孔サイズによって変えることができる。第1疎水性多孔膜130の孔サイズは、0.1μm〜0.5μmの平均直径を有するのがよい。ここで、もし第1疎水性多孔膜130の孔サイズの平均直径が0.1μm未満である場合、気体と液体を分離する速度が遅くなり、水素ガスを発電部10に円滑に供給することができなくなる。逆に、第1疎水性多孔膜130の孔サイズの平均直径が0.5μmを超える場合には、蒸気状態のアルカリ系成分を遮断する能力が顕著に低下する。
【0043】
第2疎水性多孔膜140も、蒸気状態のアルカリ系成分を選択的に遮断することができる。ただし、第2疎水性多孔膜140の孔サイズは、第1疎水性多孔膜130の孔サイズに比べて小さくなるようにするのがよい。これにより、第1疎水性多孔膜130を通過した微量のアルカリ系成分を、第2疎水性多孔膜140で遮断することができる。第2疎水性多孔膜140の孔サイズは、その平均直径が0.1μm〜0.2μmとなるようにするのがよい。このような条件とすることにより、微量のアルカリ系成分をより確実に遮断することができる。
【0044】
図5は、図4に示された第2疎水性多孔膜140の図示を省略した燃料容器100の斜視図である。第1疎水性多孔膜130と第2疎水性多孔膜140との間の排出空間122には、水溶液(water solution)または酸性水溶液が充填される。
【0045】
前述したように、微量であっても蒸気状態のアルカリ系成分は第1疎水性多孔膜130を浸透する余地がある。従って、排出空間122に水溶液または酸性水溶液を充填することにより、第1疎水性多孔膜130を通過した蒸気状態のアルカリ系成分を水溶液または酸性水溶液により溶解して、蒸気状態のアルカリ系成分が発電部10に供給されないようにすることができる。この時、第1疎水性多孔膜130の表面は、水溶液または酸性水溶液によってカバーされるので、蒸気状態のアルカリ系成分が浸透しないようになっている。そして、第2疎水性多孔膜140は、水溶液または酸性水溶液が発電部10に抜け出すのを防止する役割を果たす。
【0046】
図6は、図5に示されたガス排出口の排出空間122に水溶性多孔物質が充填された燃料容器100の斜視図である。
【0047】
図6に示されたように、ガス排出口120の排出空間122には、水溶液または酸性水溶液を吸収した多孔性物質150を設けることもできる。多孔性物質150は、スポンジのように水溶液を吸収した状態で維持されることができて、所定の大きさ(平均直径5μm)以下の孔が多数形成された物質である。多孔性物質150は、第1疎水性多孔膜130の後方(下流)に位置して、第1疎水性多孔膜130を通じて浸透した蒸気状態のアルカリ系成分を溶解させることによって、発電部10にNaのようなアルカリ系成分が供給されるのを防止することができる。多孔性物質150を設けた場合、多孔性物質150は水溶液を吸収した状態で設けられるので、第2疎水性多孔膜140は設置されなくてもよい。
【0048】
図7は、本発明の実施の形態にかかる燃料電池システムを用いて発電した結果を示した図表である。
【0049】
図7にその発電結果が示された燃料電池システムは、以下のような条件下で実験された。すなわち、燃料として使用される金属水素化物と触媒水溶液混合物は、20wt%(wt%=質量パーセント)の水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、1wt%の水酸化ナトリウム(NaOH)、1wt%のエチレングリコール、及び、78wt%の水(HO)で構成される。そして、燃料容器は、ガス排出口に順次に設けられた第1疎水性多孔膜と第2疎水性多孔膜をそれぞれ備える。このような第1疎水性多孔膜の孔サイズは、その平均直径が0.2μmである。また、第2疎水性多孔膜の孔サイズは、その平均直径が0.1μmである。
【0050】
本発明の実施の形態にかかる燃料電池システムにより生成された電気エネルギーの出力、電圧、電流をそれぞれ測定して図7に示した。図7を参照すると、本実施形態による燃料電池システムは、従来の技術とは異なり、時間が経過しても大きい変化なしに安定的に電気エネルギーを生産することができた。このような実験結果により、本実施形態にかかる燃料電池システムが、Naなどのようなアルカリ系成分を効果的に遮断したと予測することができる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、燃料と酸化剤の電気化学反応によって電気を生成する燃料電池システムに燃料を供給する燃料容器及びこれを備えた燃料電池システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態にかかる燃料電池システムの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示された燃料容器の斜視図である。
【図3】図2に示された燃料容器の一部を図示せずに燃料容器の内部を示した斜視図である。
【図4】図3に示された燃料容器のガス排出口に疎水性多孔膜が設けられた状態を示した斜視図である。
【図5】図4に示された第2疎水性多孔膜の図示を省略した燃料容器の斜視図である。
【図6】図5に示されたガス排出口の排出空間に水溶性多孔物質が充填された燃料容器の斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる燃料電池システムを用いて発電した結果を示した図表である。
【図8】従来の技術による燃料電池システムを用いてNa成分が発電結果に及ぼす影響を比較して示した図表である。
【符号の説明】
【0054】
10 発電部
20 酸化剤供給部
30 水素供給部
35 ポンプ
40 ガス通路
100 燃料容器
110 容器本体
112 反応空間
122 排出空間
120 ガス排出口
130 第1疎水性多孔膜
140 第2疎水性多孔膜
150 多孔性物質


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料から水素ガスを生成する水素供給部と、
前記水素供給部から供給される水素ガスと外部の酸化剤ガスを反応させて電気エネルギーを発生させる発電部と、
前記水素ガスを前記発電部に供給する経路上に設けられる一つ以上の疎水性多孔膜と、
を含むことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記疎水性多孔膜は、第1疎水性多孔膜と、前記第1疎水性多孔膜と前記発電部との間に設けられる第2疎水性多孔膜とを備え、
前記第1疎水性多孔膜の孔サイズは、前記第2疎水性多孔膜の孔サイズに比べて大きいことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記第1疎水性多孔膜の孔サイズは、その平均直径が0.1μm〜0.5μmであることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第2疎水性多孔膜の孔サイズは、その平均直径が0.1μm〜0.2μmであることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料は金属水素化物であり、
前記水素供給部は、前記金属水素化物を加水分解させて前記水素ガスを発生させることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記金属水素化物は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を含むことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記水素供給部は、その内部で前記水素ガスが生成され、生成された前記水素ガスをガス排出口を通じて排出させる燃料容器を備え、
前記疎水性多孔膜は、前記ガス排出口に設けられることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
燃料電池システムの電気化学反応に必要な水素ガスを供給する燃料容器であって、
容器本体と、
前記容器本体の内部に備けられ、燃料と水溶液の加水分解反応によって水素ガスが発生する反応空間と、
前記容器本体に形成されて、前記水素ガスが排出されるガス排出口と、
前記ガス排出口に設けられる一つ以上の疎水性多孔膜と、
を含むことを特徴とする燃料容器。
【請求項9】
前記ガス排出口は、前記反応空間の上部側に位置することを特徴とする請求項8に記載の燃料容器。
【請求項10】
前記ガス排出口の前記反応空間側には第1疎水性多孔膜が設けられ、
前記ガス排出口の前記水素ガスが外部へ流出される出口側には第2疎水性多孔膜が設けられることを特徴とする請求項8に記載の燃料容器。
【請求項11】
前記第1疎水性多孔膜の孔サイズは、前記第2疎水性多孔膜の孔サイズに比べて大きいことを特徴とする請求項10に記載の燃料容器。
【請求項12】
前記第1疎水性多孔膜と前記第2疎水性多孔膜との間の排出空間は、水溶液で充填されることを特徴とする請求項10に記載の燃料容器。
【請求項13】
前記第1疎水性多孔膜と前記第2疎水性多孔膜との間の排出空間には、前記水溶液を吸収した多孔性物質が設けられることを特徴とする請求項12に記載の燃料容器。
【請求項14】
前記第1疎水性多孔膜と前記第2疎水性多孔膜との間の排出空間は、酸性水溶液で充填されることを特徴とする請求項10に記載の燃料容器。
【請求項15】
前記第1疎水性多孔膜と前記第2疎水性多孔膜との間の排出空間には、前記酸性水溶液を吸収した多孔性物質が設けられることを特徴とする請求項14に記載の燃料容器。
【請求項16】
前記第1疎水性多孔膜の孔サイズは、その平均直径が0.1μm〜0.5μmであることを特徴とする請求項10に記載の燃料容器。
【請求項17】
前記第2疎水性多孔膜の孔サイズは、その平均直径が0.1μm〜0.2μmであることを特徴とする請求項10に記載の燃料容器。
【請求項18】
前記燃料に、金属水素化物を使用することを特徴とする請求項8に記載の燃料容器。
【請求項19】
前記金属水素化物は水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を含むことを特徴とする請求項18に記載の燃料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−110925(P2009−110925A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137878(P2008−137878)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】