説明

燃料貯蔵タンクの電磁弁

【課題】部品点数の増加を招くことなく、温度低下による弾性シール部材の性能低下を未然に防止することのできる燃料貯蔵タンクの電磁弁を提供する。
【解決手段】バルブボディ11を燃料貯蔵タンク10の取り出し口12に取り付け、バルブボディ11内の弁駆動用の電磁コイル31を燃料貯蔵タンク10の内側に配置する。バルブボディ11の周囲や内部のすべての弾性シール部材16,23,48,49を電磁コイル31よりも燃料貯蔵タンク10の外側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料ガスを貯蔵する燃料貯蔵タンクに用いられる電磁弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料ガス(例えば、水素ガス)と酸化剤ガス(例えば、酸素を含む空気)を供給して発電を行う燃料電池においては、貯蔵タンクから供給される燃料ガスが圧力制御弁で減圧されてアノード極に供給される。
この種の燃料電池においては、燃料貯蔵タンクの取り出し口に電磁弁が取り付けられ、燃料電池の停止中に電磁弁によって供給通路を遮断する。電磁弁はスプリングの付勢力によって供給通路を閉じ、電磁コイルの電磁力によって供給通路を開く基本構造となっている。
【0003】
高圧の燃料ガスを貯蔵する燃料貯蔵タンクにおいては、タンク内の高圧ガスが遮断弁を開いて供給通路に流れ込む際にサイモン膨張により外部に仕事をし、内部エネルギーが減少するため低温生成が為され(以下、サイモン膨張と言う)、結果、周囲から温度が奪われる。このため、燃料貯蔵タンクから燃料電池にガスが供給され続けると、電磁弁や燃料貯蔵タンクの温度が次第に低下し、タンクの取り出し口と電磁弁のバルブボディの間や、バルブボディの内部で気密を保っている弾性シール部材の性能が低下する可能性が考えられる。
【0004】
このため、これに対処し得る燃料貯蔵タンクの電磁弁として、燃料貯蔵タンクの取り出し口に近接させて加熱用のヒータを設けたものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−36989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来の燃料貯蔵タンクの電磁弁は、加熱用の専用のヒータを設けることから、部品点数が増加してしまい、製品コストの高騰や重量増加の原因となることが懸念される。
【0006】
そこで、この発明は、部品点数の増加を招くことなく、温度低下による弾性シール部材の性能低下を未然に防止することのできる燃料貯蔵タンクの電磁弁を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、燃料貯蔵タンク(例えば、後述の実施形態における燃料貯蔵タンク10)の取り出し口(例えば、後述の実施形態における取り出し口12)に取り付けられるバルブボディ(例えば、後述の実施形態におけるバルブボディ11)と、このバルブボディ内に配置され、供給通路(例えば、後述の実施形態における外側供給通路14)を開閉する弁体(例えば、後述の実施形態におけるメインバルブ19及びパイロットバルブ26)と、前記バルブボディ内に配置され、前記弁体を駆動する電磁コイル(例えば、後述の実施形態における電磁コイル31)と、前記取り出し口と前記バルブボディの間、及び、前記バルブボディの内部を気密に保つための複数の弾性シール部材(例えば、後述の実施形態における弾性シール部材16,23,48,49)と、を備えた燃料貯蔵タンクの電磁弁において、前記電磁コイルを前記燃料貯蔵タンクの内側に配置し、前記すべての弾性シール部材を前記電磁コイルよりも燃料貯蔵タンクの外側に配置したことを特徴とする。
これにより、電磁コイルの通電によって発生した熱は直接外部に放熱されずに燃料貯蔵タンクの内側に一度留められ、取り出し口に取り付けられたバルブボディに伝達されて外部に放熱される。バルブボディの周囲や内部のすべての弾性シール部材は電磁コイルよりも燃料貯蔵タンクの外側に配置されているため、バルブボディに伝達された電磁コイルの熱によって昇温される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料貯蔵タンクの電磁弁において、燃料電池で消費する燃料ガスを貯蔵する燃料貯蔵タンクに用いることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の燃料貯蔵タンクの電磁弁において、前記バルブボディ、または、前記燃料貯蔵タンクの温度を検出する温度センサ(例えば、後述の実施形態における温度センサ50)と、前記電磁コイルに対する供給電力を制御する制御装置(例えば、後述の実施形態における制御装置52)と、を備え、前記制御装置は、前記温度センサの検出温度が設定値以下になったときに前記電磁コイルに対する供給電力を増加させることを特徴とする。
これにより、バルブボディや燃料貯蔵タンクの温度が設定値以下に低下すると、電磁コイルに対する供給電力が高められ、その結果、電磁コイルの発熱量が増大する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、電磁コイルでの発熱を有効に利用してシール部材の温度低下を抑制することができるため、部品点数の増加を招くことなく、温度低下による弾性シール部材の性能低下を未然に防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、燃料電池の燃料貯蔵タンクで用いることにより、燃料電池において常時安定した発電を継続することが可能になる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、バルブボディや燃料貯蔵タンクが設定値以下に低下したときに、電磁コイルに対する供給電力を高めて電磁コイルの発熱量を増大させることができるため、電磁コイルでの必要以上の発熱による電力損失を抑制しつつ、外部環境の変化等による温度低下に適切に対応することができる。したがって、電力消費の抑制と、弾性シール部材の性能低下の防止を両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、燃料貯蔵タンク10に電磁弁1が取り付けられた状態を示す断面図である。
この燃料貯蔵タンク10は高圧の水素ガスが燃料ガスとして充填され、燃料電池のアノード極に水素ガスを供給するのに用いられる。
電磁弁1は、バルブボディ11が燃料貯蔵タンク10の取り出し口12に封止プラグを兼ねて取り付けられている。バルブボディ11には、燃料貯蔵タンク10の内部と導通する内側供給通路13と、燃料貯蔵タンク10の外部の燃料電池(図示せず)と導通する外側供給通路14が形成されている。なお、図中15は、バルブボディ11と燃料貯蔵タンク10のねじ固定部であり、16は、バルブボディ11と燃料貯蔵タンク10の間を封止するゴム材料から成るリング状の弾性シール部材である。
【0014】
図2は、閉弁状態にある電磁弁1を拡大して示した断面図である。
同図に示すように、バルブボディ11には内側供給通路13と外側供給通路14を連通させるように略円柱状のバルブ収容部17が設けられている。バルブ収容部17の軸方向の一端(図中上端)の壁の中央には、外側供給通路14と導通する円筒状のメイン弁座18が突出して設けられている。また、内側供給通路13の端部は、バルブ収容部17の軸方向の一端寄りのメイン弁座18の側面に臨む位置に開口している。
【0015】
バルブ収容部17には、メイン弁座18と当接・離反することで外側供給通路14を開閉するメインバルブ19が進退自在に収容されている。メインバルブ19は、厚肉円板状の弁頭部20と、弁頭部20に同軸に連設されたガイド筒部21とを備え、弁頭部20がバルブ収容部17の周壁に摺動自在に嵌合されている。弁頭部20の外周面には環状溝22が形成され、その環状溝22に、ゴム材料から成る環状の弾性シール部材23が嵌合固定されている。弾性シール部材23は、バルブ収容部17の周壁との摺動と自身の弾性変形により、メインバルブ19の進退作動を許容しつつ、弁頭部20とバルブ収容部17の間の燃料ガスの流通を遮断する。
【0016】
また、弁頭部20の軸心位置には弁頭部20を軸方向に貫通するパイロット通路24が設けられている。パイロット通路24はバルブ収容部17のメイン弁座18と同軸になるように形成されている。ここで、弁頭部20とガイド筒部21の主要部分は金属材料によって一体に形成されているが、弁頭部20のパイロット通路24の周域部分は別体のゴム状弾性部材25によって形成されている。このゴム状弾性部材25のメイン弁座18側の端面はメインバルブ19の閉弁時にメイン弁座18に密接する。
一方、ガイド筒部21の内側には、略円柱状のパイロットバルブ26が進退作動可能に収容されている。このパイロットバルブ26の弁頭部20側の端面には弁突起27が設けられ、この弁突起27がゴム状弾性部材25の端面のパイロット通路24の孔縁(パイロット弁座28)に対して当接・離反可能とされている。
【0017】
また、バルブボディ11には、メインバルブ19やパイロットバルブ26を開閉操作するための電磁式の駆動ユニット30が一体に組み込まれている。この駆動ユニット30は、電磁コイル31を収容するケーシング32の軸心位置に凹部33が設けられ、この凹部33内に磁性材料から成るプランジャ34が摺動自在に収容されている。凹部33は、バルブ収容部17側に開口し、かつバルブ収容部17と同軸に形成されている。凹部33とプランジャ34の間には、付勢手段であるスプリング35が介装され、プランジャ34がこのスプリング35によって常時バルブ収容部17側に付勢されるようになっている。
【0018】
プランジャ34のバルブ収容部17側の端面には凹部36が形成され、その凹部36にメインバルブ19のガイド筒部21が挿入されている。プランジャ34には、軸直角方向に凹部36を横切るように連結ピン37が取り付けられ、この連結ピン37によってメインバルブ19のガイド筒部21と、その内側のパイロットバルブ26がプランジャ34に対して連結されている。ただし、連結ピン37は、パイロットバルブ26に対してはほぼ隙間なく嵌合固定されているが、メインバルブ19に対してはガイド筒部21に設けられた長孔38内に僅かな遊びを持たせて連結されている。したがって、プランジャ34が電磁コイル31の磁力を受けてスプリング35の力に抗して操作されるときには、最初にパイロットバルブ26がプランジャ34と一体に変位し、パイロットバルブ26が所定量変位したところでプランジャ34からメインバルブ19に操作力が伝達される。
【0019】
メインバルブ19は、バルブ収容部17内を、常時内側供給通路13と導通する内側導通室39と、プランジャ34側に臨む中間室40とに隔成している。そして、メインバルブ19のパイロット通路24(軸心)から離間した外周縁部には、内側導通室39と中間室40を連通するオリフィス通路41が形成されている。このオリフィス通路41の開口面積はパイロット通路24の開口面積よりも小さく設定されている。
内側導通室39のガス圧力は、スプリング35の付勢力に抗する押圧力(開弁方向の押圧力)としてメインバルブ19に作用し、中間室40のガス圧力は、スプリング35の付勢力と同方向の押圧力(閉弁方向の押圧力)としてメインバルブ19に作用する。また、メインバルブ19の内側導通室39側の受圧面積と、中間室40側の受圧面積とはほぼ同面積になるように設定されている。したがって、内側導通室39と中間室40に圧力差があるときには、その圧力差に応じた押圧力がメインバルブ19に作用する。
なお、図中48,49は、バルブボディ11と駆動ユニット30の間を密封するゴム材料から成る環状の弾性シール部材である。
【0020】
ところで、パイロットバルブ34やメインバルブ19を開弁操作するための電磁コイル31はバルブボディ11上の底部寄り位置(燃料貯蔵タンク10の内側寄り位置)に配置されている。そして、燃料貯蔵タンク10の取り出し口12とバルブボディ11の間を密閉する弾性シール部材16と、バルブボディ11内の3つの弾性シール部材23,48,49は、電磁コイル31よりも燃料貯蔵タンク10の外側寄り位置に配置されている。
【0021】
また、図1に示すように、バルブボディ11には、バルブボディ11内の外側供給通路14の近傍の温度を検出するための温度センサ50が取り付けられている。この温度センサ50は、電磁コイル31を制御するための制御装置52に接続されている。制御装置52は、基本的に燃料電池での燃料ガスの供給要求に応じて電磁弁1を適宜開閉制御するものであるが、電磁弁1の開弁操作時には温度センサ50から信号を受け、電磁コイル31に対する供給電力をバルブボディ11の温度に応じた電力に制御する。この電力の制御については後に詳述する。なお、図中54は、制御装置52や電磁コイル31に電力を供給するためバッテリである。
【0022】
図3,図4は、燃料貯蔵タンク10内の燃料ガスを、外側供給通路14を通して燃料電池に供給するときの電磁弁1の作動状態を示すものである。以下、燃料ガスを燃料電池に供給するときにおける電磁弁1の作動を図2〜図4を参照して説明する。
電磁コイル31がOFFの状態では、図2に示すようにメインバルブ19とパイロットバルブ26がスプリング35の付勢力によってメイン弁座18とパイロット弁座28に押し当てられ、閉弁状態に維持されている。このとき、燃料貯蔵タンク10内の燃料ガスの圧力は、内側供給通路13を介して内側導通室39に作用するとともに、さらにオリフィス通路41を介して中間室40に作用している。したがって、このとき内側導通室39の圧力と中間室40の圧力はほぼ同圧となっている。また、内側導通室39と中間室40の圧力は燃料電池側の外側供給通路14の圧力に対して高圧となっている。
【0023】
この状態から電磁コイル31がONにされると、電磁コイル31の磁力によってプランジャ34が吸引され、図3に示すように、着座面積の小さいパイロットバルブ26がメインバルブ19上のパイロット弁座28から離反する(開弁する)。これにより、パイロット通路24が開き、中間室40内の燃料ガスがパイロット通路24を通って外側供給通路14に供給される。また、このとき内側導通室39から中間室40にはオリフィス通路41を通して燃料ガスが流入するが、オリフィス通路41の開口面積はパイロット通路24の開口面積よりも小さく設定されているため、中間室40の圧力は内側導通室39の圧力よりも低くなる。したがって、パイロットバルブ26が開弁した直後には、内側導通室39と中間室40の差圧に応じた押圧力がメインバルブ19に開弁方向の助勢力として作用し、この助勢力が電磁コイル31による吸引力と相俟って、図4に示すように、メインバルブ19をメイン弁座18から離反させることになる。こうして、メインバルブ19が開弁すると、燃料貯蔵タンク10内の燃料ガスが内側供給通路13から外側供給通路14を通って燃料電池に供給される。
【0024】
次に、電磁弁1の開弁時における電磁コイル31の電力制御について、図5のフローチャートに従って説明する。
この電力制御は、電磁弁1の開弁によって燃料貯蔵タンク10内の高圧の燃料ガスが吐出されたときのサイモン膨張によって弾性シール部材16,23,48,49の近傍の温度が設定値よりも低下するのを防止するためのものであり、温度センサ50による温度監視下のもとに電磁コイル31での発熱量を制御するものである。
【0025】
ただし、この実施形態の場合、標準的な環境下においては、標準電圧(例えば、12V)で電磁コイル31を駆動していれば弾性シール部材16,23,48,49の近傍に連続的な温度低下が生じないように設定されている。即ち、電磁弁1のサイモン膨張による吸熱量(弾性シール部材16,23,48,49の近傍のサイモン膨張による吸熱量)は標準電圧のときの電磁コイル31の発熱量よりも小さくなるように設定されている。
電磁コイル31の発熱量と電磁弁1のサイモン膨張による吸熱量はそれぞれ以下の式によって求めることができる。
発熱量=(電圧)/抵抗
サイモン膨張による吸熱量=熱容量×温度低下レート(熱容量:重量×比熱)
したがって、例えば、電磁コイル31のコイル抵抗が24Ω、印加電圧が12Vであるとすると、コイル発熱量は6Wとなり、バルブボディ11の重量が3kg,比熱が0.5kJ/kg℃、温度低下レートが0.003℃であるとすると、サイモン膨張による吸熱量は4.5Wとなり、(発熱量)>(サイモン膨張による吸熱量)となる。
【0026】
電力制御においては、まず、ステップS101において、電磁コイル31に標準電圧(例えば、12V)を印加し、その後にステップS102において、温度センサ50によって検出される温度の基準温度に対する低下量が所定値以上か否かを判定し、YESの場合には、次のステップS103に進み、NOの場合には、ステップS101に戻って標準電圧での印加を継続する。
ステップS103においては、電磁コイル31の印加電圧を微小量(例えば、1V)増加し、次のステップS104において、温度センサ50によって検出される温度の上昇量が所定値以上であるか否かを判定し、YESの場合には、次のステップS105に進み、NOの場合にはステップS103に戻って電磁コイル31の印加電圧をさらに増加させる。
ステップS105においては、電磁弁に対する閉弁指令があったか否かを判定し、YESの場合には、処理を終了し、NOの場合には、ステップS101に戻る。
【0027】
なお、この実施形態の制御の例では、ステップS103とS104において、バルブボディ11の温度上昇量が所定値以上になるまで電磁コイル31の印加電圧を微小量(例えば、1V)ずつ増加させているが、ステップS103において、電磁コイル31に対する印加電圧を一段階大きく増加させ、つづくステップS104において、バルブボディ11の温度上昇量が所定値以上になるまで待機するようにしても良い。図6のタイミングチャートは、ステップS103,S104をこのように変更したときのものである。
【0028】
以上のようにこの電磁弁1においては、電磁コイル31が燃料貯蔵タンク10の内側に配置され、バルブボディ11の周囲や内部に配置されるすべての弾性シール部材16,23,48,49が電磁コイル31よりも燃料貯蔵タンク10の外側に配置されているため、電磁コイル31の通電によって発生した熱が直接外部に放熱されるのではなく燃料貯蔵タンク10の内側に一度留められ、燃料貯蔵タンク10の取り出し口12に取り付けられたバルブボディ11を通して燃料貯蔵タンク10の外部に伝達される。このため、バルブボディ11の熱伝達経路中に配置されているすべての弾性シール部材16,23,48,49が電磁コイル31から発された熱によって確実に暖められる。したがって、燃料貯蔵タンク10から高圧の燃料ガスが吐出される際のサイモン膨張によってバルブボディ11が冷却される状況下においても、電磁コイル31の発熱によって弾性シール部材16,23,48,49の過度の温度低下を防止し、温度低下による弾性シール部材16,23,48,49の性能低下を未然に防止することができる。
【0029】
さらに、この電磁弁1においては、温度センサ50によってバルブボディ11の温度変化を監視し、バルブボディ11の温度低下量が所定値以上になったときに、制御装置52によって電磁コイル31に対する供給電力を増加させるため、電磁コイル31で必要以上の発熱を継続することによる電力損失を抑制しつつ、外部環境の変化等によってボルブボディ11の温度が低下したときに、バルブボディ11を確実に昇温させることができる。したがって、制御装置52による適切な制御によって、電力消費の抑制と、弾性シール部材16,23,48,49の性能低下の防止を両立させることができる。
【0030】
また、この実施形態においては、燃料電池の燃料貯蔵タンク10に電磁弁1を用いているが、このように電磁弁1を採用した燃料電池においては、温度変化による弾性シール部材16,23,48,49の性能低下が生じないことから、常時安定した発電を継続することができる。
【0031】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、温度センサ50によってバルブボディ11の温度を検出するようにしたが、温度センサ50によって燃料貯蔵タンク10の内部の温度や、燃料貯蔵タンク10の電磁弁1近くの外部温度、または外側供給通路14の温度を検出し、その検出温度に応じて電磁コイル31の供給電力を制御するようにしても良い。また、上記の実施形態においては、バルブボディ11の温度上昇量が所定値以上になったときに電磁コイル31に対する供給電力を低下させるようにしているが、バルブボディ11の温度上昇レートが所定値以上になったときに供給電力を低下させるようにしても良い。また、電磁コイル31の供給電力の制御おいては、電圧を制御するのに代えて電流を制御するようにしても良い。
さらに、上記の実施形態においては、バルブボディ11の検出温度に応じて電磁コイル31の通電電力を制御しているが、外側供給通路14のガス圧力や燃料ガスの消費量に応じて電磁コイル31の供給電力を制御するようにしても、上記電力消費の抑制と弾性シール部材16,23,48,49の性能低下の防止を両立できて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施形態の燃料貯蔵タンクの電磁弁の断面図。
【図2】この発明の一実施形態の電磁弁の閉弁状態における拡大断面図。
【図3】この発明の一実施形態の電磁弁のパイロットバルブが開弁したときにおける拡大断面図。
【図4】この発明の一実施形態の電磁弁のメインバルブが開弁したときにおける拡大断面図。
【図5】この発明の一実施形態の電磁弁の制御を説明するフローチャート。
【図6】この発明の他の実施形態の電磁弁の制御を説明するタイミングチャート。
【符号の説明】
【0033】
1…電磁弁
10…燃料貯蔵タンク
11…バルブボディ
12…取り出し口
14…外側供給通路(供給通路)
16,23,48,49…弾性シール部材
19…メインバルブ(弁体)
26…パイロットバルブ(弁体)
31…電磁コイル
50…温度センサ
52…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料貯蔵タンクの取り出し口に取り付けられるバルブボディと、
このバルブボディ内に配置され、供給通路を開閉する弁体と、
前記バルブボディ内に配置され、前記弁体を駆動する電磁コイルと、
前記取り出し口と前記バルブボディの間、及び、前記バルブボディの内部を気密に保つための複数の弾性シール部材と、を備えた燃料貯蔵タンクの電磁弁において、
前記電磁コイルを前記燃料貯蔵タンクの内側に配置し、
前記すべての弾性シール部材を前記電磁コイルよりも燃料貯蔵タンクの外側に配置したことを特徴とする燃料貯蔵タンクの電磁弁。
【請求項2】
燃料電池で消費する燃料ガスを貯蔵する燃料貯蔵タンクに用いることを特徴とする請求項1に記載の燃料貯蔵タンクの電磁弁。
【請求項3】
前記バルブボディ、または、前記燃料貯蔵タンクの温度を検出する温度センサと、
前記電磁コイルに対する供給電力を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記温度センサの検出温度が設定値以下になったときに前記電磁コイルに対する供給電力を増加させることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料貯蔵タンクの電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−121728(P2010−121728A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296894(P2008−296894)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】