説明

燃料遮断弁

【課題】エバポ開口孔における液状燃料の遮断性に優れる燃料遮断弁を提供する。
【解決手段】燃料タンクTの上部に取り付けられるケーシング2と、燃料タンクT内の液位に応じて昇降可能にケーシング2の弁室3に内装され、上昇したときにエバポ開口孔4を閉じて液状燃料の流出を遮断するフロート弁5と、を備えた燃料遮断弁1において、頂面14にエバポ開口孔4が形成されると共にエバポ開口孔4周りに環状水平面15が形成され、下端の開口部が弁室3に臨む燃料遮蔽室16と、フロート弁5の上部に突設され、上端面がエバポ開口孔4を閉じる突状弁体11Cと、を備え、燃料タンクT内の液位に拘わらず突状弁体11Cが燃料遮蔽室16に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに取り付けられる燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンクには、通常時はエバポ開口孔を開いてタンク内の蒸発燃料を逃がし、車両の傾斜や旋回等により燃料の液位が上昇したときにはエバポ開口孔を閉じて液状燃料の流出を遮断する燃料遮断弁が設けられている。
【0003】
前記燃料遮断弁としては、燃料タンクの上部に取り付けられるケーシングと、燃料タンク内の液位に応じて昇降可能にケーシングに内装され、上昇したときにエバポ開口孔を閉じるフロート弁と、を備えた構造のものが一般的である(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3058682号公報
【特許文献2】特開2008−274805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に示されているように、エバポ開口孔はケーシングの内部に臨むように形成されていることから、エバポ開口孔が開いている状態で、車両の挙動等に起因してケーシング内の燃料の液面に飛沫が生じた場合、その飛沫がエバポ開口孔を通ってキャニスタ側に連通する流路に浸入するという不都合が生じやすい。
【0006】
本発明は、エバポ開口孔における液状燃料の遮断性に優れる燃料遮断弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、燃料タンクの上部に取り付けられるケーシングと、燃料タンク内の液位に応じて昇降可能に前記ケーシングの弁室に内装され、上昇したときにエバポ開口孔を閉じて液状燃料の流出を遮断するフロート弁と、を備えた燃料遮断弁において、頂面に前記エバポ開口孔が形成されると共に該エバポ開口孔周りに環状水平面が形成され、下端の開口部が前記弁室に臨む燃料遮蔽室と、前記フロート弁の上部に突設され、上端面が前記エバポ開口孔を閉じる突状弁体と、を備え、燃料タンク内の液位に拘わらず前記突状弁体が前記燃料遮蔽室に位置することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、燃料の飛沫が燃料遮蔽室に入り込みにくくなり、さらにエバポ開口孔はこの燃料遮蔽室の最上部となる頂面に設けられることから、燃料の飛沫がエバポ開口孔まで達しにくくなる。仮に燃料の飛沫がエバポ開口孔まで達する勢いで跳んだとしても、燃料遮蔽室に位置した突状弁体と燃料遮蔽室の環状水平面とによって遮られることにより、エバポ開口孔への飛沫の浸入が抑制される。
【0009】
また、本発明は、前記燃料遮蔽室を、前記弁室の上面から上方に向けて凹状に設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、エバポ開口孔は凹状の燃料遮蔽室の最上部となる頂面に設けられることから、燃料液面からエバポ開口孔までの高さをかせげることとなり、その分、燃料の飛沫がエバポ開口孔まで達しにくくなり、エバポ開口孔への飛沫の浸入がより一層抑制される。
【0011】
また、本発明は、前記燃料遮蔽室の内側面および前記突状弁体の外周面は鉛直方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、燃料の飛沫の一部を集約的に環状水平面まで導いて、この環状水平面において飛沫を下方に落下させることができる。
【0013】
また、本発明は、前記エバポ開口孔の周縁に、前記突状弁体の上端面を着座させる弁座が下方に向けて突設されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、弁座は、エバポ開口孔への燃料の飛沫の浸入を妨げる防壁として機能するとともに、環状水平面に付着した燃料がキャニスタ側からの負圧によりエバポ開口孔に吸い込まれることを防止する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エバポ開口孔における液状燃料の遮断性に優れる燃料遮断弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料遮断弁の側断面図であり、(a)、(b)はそれぞれエバポ開口孔が開いた状態、閉じた状態を示す。
【図2】本発明の第1実施形態に係る燃料遮断弁の側断面図であり、エバポ開口孔が開くときの動作状態を示す。
【図3】図1の燃料遮蔽室周りの拡大図であり、エバポ開口孔に対する燃料飛沫の浸入の抑制作用を示す。
【図4】本発明の第2実施形態に係る燃料遮断弁の側断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る燃料遮断弁の側断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る燃料遮断弁の側断面図であり、(a)、(b)はそれぞれエバポ開口孔が閉じた状態、開いた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の燃料遮断弁は、例えば自動車に搭載される燃料タンクに装着される。
「第1実施形態」
図1において、本発明の燃料遮断弁1は、燃料タンクTの上部に取り付けられるケーシング2と、燃料タンクT内の燃料の液位に応じて昇降可能にケーシング2の弁室3に内装され、上昇したときにエバポ開口孔4を閉じて液状燃料の流出を遮断するフロート弁5と、を備える。
【0018】
燃料タンクTの上面には取付孔Taが穿設され、この取付孔Taを上方から覆うように接続口部材6が熱溶着等により取付孔Ta周りに取り付けられている。接続口部材6には接続管6Aが形成されており、この接続管6Aに図示しないエバポホースの一端が接続される。エバポホースの他端は図示しないキャニスタ側に接続される。ケーシング2は例えばその上部周りが接続口部材6と一体的に形成されて、燃料タンクTの内部上方に位置する。接続口部材6とケーシング2とは、例えば二色成形により構成されたものでもよいし、同一材料の一体成形体であってもよい。
【0019】
ケーシング2は円筒形状を呈した筐体部材であってその内部空間が弁室3を構成する。ケーシング2の周壁の上部には、ケーシング2の内外を通気する通気孔7が穿設されている。通気孔7の形成位置は燃料タンクTの上面近傍辺りである。ケーシング2の下端開口には底蓋部材8が取り付けられている。底蓋部材8にはケーシング2の内外を連通する連通孔9が形成されている。燃料タンクT内の燃料は連通孔9を通ってケーシング2内に流入する。
【0020】
フロート弁5は例えば下部フロート10と上部フロート11とから構成される。下部フロート10は、円柱状の基柱部10Aと、基柱部10Aの上面側に形成される小径の段差軸部10Bと、段差軸部10Bの上端に環状に形成される係合鍔部10Cとを有する。係合鍔部10Cは基柱部10Aよりも小径である。
【0021】
上部フロート11は、下部フロート10の上面に載置される基板部11Aと、基板部11Aの周方向に間隔をおいて複数設けられ、基板部11Aの周縁から下部フロート10の係合鍔部10Cの外周面と隙間を空けて垂下形成される脚部11Bと、基板部11Aの上面中央に突設される後に詳述の突状弁体11Cとを有する。各脚部11Bの下端には、下部フロート10と上部フロート11とを、上部フロート11の傾動を許容しつつ一体に係合させるための係合爪11Dおよび11Eがフロート弁5の中心軸に向けて突設されている。係合爪11D、11Eはいずれも、基板部11Aが下部フロート10の上面に載置された状態において、下部フロート10の係合鍔部10Cの下面に対して隙間が空くように形成されているが、係合爪11Eの方が係合爪11Dよりも係合鍔部10Cの下面に対する隙間が小さく設定されている。複数の脚部11Bの内、係合爪11Eが形成される脚部11Bは少なくとも1つ設けられていればよい。
【0022】
下部フロート10と底蓋部材8との間には下部フロート10の上昇をアシストする圧縮コイルばね12が介設される。下部フロート10の基柱部10Aの下面中央には円形凹状のばね収容空間13が形成され、圧縮コイルばね12は上端がばね収容空間13の上面、すなわち下部フロート10に当接し、下端が底蓋部材8に当接した状態でばね収容空間13に収容される。図示しないが、圧縮コイルばね12の内側に挿入して圧縮コイルばね12の径方向の移動を抑制するガイド柱が底蓋部材8から適宜に延設される。
【0023】
以上の燃料遮断弁1の基本動作を説明する。通常時、燃料遮断弁1は、フロート弁5の自重が圧縮コイルばね8の付勢力に勝っていることにより、図1(a)に示すようにフロート弁5が最下位まで下降してエバポ開口孔4が開いた状態にあり、燃料タンクT内の蒸発燃料は通気孔7や連通孔9を介してケーシング2に流入し、エバポ開口孔4を通ってキャニスタ側に流れる。上部フロート11は下部フロート10の上面に載置された状態である。
【0024】
車両の傾斜や旋回等により燃料タンクT内の燃料の液位が上昇したときには、燃料が連通孔9を通ってケーシング2に流入し、フロート弁5の浮力と圧縮コイルばね12の付勢力とがフロート弁5の自重よりも勝ることによりフロート弁5が上昇する。上部フロート11は下部フロート10の上面に載置された状態で上昇し、最上位まで上昇したとき、図1(b)に示すように突状弁体11Cの上面がエバポ開口孔4を閉じる。これにより、エバポ開口孔4からの液状燃料の流出が防止される。
【0025】
エバポ開口孔4が閉じた状態から燃料の液位が下がるとフロート弁5も下がるが、エバポ開口孔4内の気圧よりも弁室3内の気圧が高い場合には、その内圧差により上部フロート11が下がらずエバポ開口孔4が開かないおそれがある。これに対し本実施形態では、燃料の液位の低下により下部フロート10が下降し、図2に示すように係合鍔部10Cが上部フロート11の係合爪11Eを下方に押し下げるため、上部フロート11に水平軸周りのモーメントが働くこととなり、上部フロート11が傾動してエバポ開口孔4が内圧差が高くても開くようになっている。
【0026】
以上の燃料遮断弁1において、本発明は、頂面14に前記エバポ開口孔4が形成されると共にエバポ開口孔4周りに環状水平面15が形成され、下端の開口部が弁室3に臨む燃料遮蔽室16と、フロート弁5の上部に突設され、上端面がエバポ開口孔4を閉じる突状弁体11Cと、を備えたうえで、燃料タンクT内の燃料の液位に拘わらず突状弁体11Cを燃料遮蔽室16に位置させたことを主な特徴とする。燃料遮蔽室16は、弁室3の上部において局所的に画成される空間である。
【0027】
本実施形態では、燃料遮蔽室16を弁室3の上面から上方に向けて凹状に設けている。図1において、ケーシング2の上面の中央は小径の空間を形成するように上方に凹設されており、この小径の空間が燃料遮蔽室16を構成する。燃料遮蔽室16の内側面17は鉛直方向に沿って形成されている。燃料遮蔽室16の頂面14の中央にエバポ開口孔4が開口形成され、その結果、エバポ開口孔4の周囲には環状の水平な面である環状水平面15が形成される。また、頂面14にはエバポ開口孔4の周縁から下方に向けて弁座18が突設されている。
【0028】
突状弁体11Cは前記したように上部フロート11の基板部11Aの上面中央において上方に向け突設されており、その上端面が前記弁座18に着座することでエバポ開口孔4を閉じる。突状弁体11Cは中空或いは中実の円柱形状を呈しており、その外周面19は鉛直方向に沿って形成されている。突状弁体11Cの上部は、燃料タンクT内の燃料の液位に拘わらず、換言すると図1(a)にも示されるようにフロート弁5が最下位に位置しているときであっても燃料遮蔽室16に位置している。
【0029】
燃料遮蔽室16と突状弁体11Cの作用について図3を参照して説明する。エバポ開口孔4が開いた状態において、車両の挙動等に起因してケーシング2内の燃料から飛沫Sが飛ぶと、具体的にはケーシング2の内周面と下部フロート10の外周面との間に形成される燃料の液面から飛沫Sが飛ぶと、その飛沫Sの一部はケーシング2の内周面に当たって矢印Aで示すように弁室3の上部に向けて跳ねる。仮に燃料遮蔽室16および突状弁体11Cが設けられることなくケーシング2の平坦な上面にエバポ開口孔4が形成されていた場合には、この矢印Aに沿って跳ねた飛沫Sがエバポ開口孔4に入り込みやすい。
【0030】
これに対し本発明では、シール面の高さ、すなわちエバポ開口孔4の高さが高くなるため、飛沫Sが届きにくくなり液状燃料の漏れ量を抑制できる。頂面14において環状水平面15が形成されることにより、エバポ開口孔4は頂面14の中央に小径の孔として形成されることとなり、飛沫Sは環状水平面15によって遮られてエバポ開口孔4に入りにくくなる。
【0031】
以上のように、頂面14にエバポ開口孔4が形成されると共にエバポ開口孔4周りに環状水平面15が形成され、下端の開口部が弁室3に臨む燃料遮蔽室16と、フロート弁5の上部に突設され、上端面がエバポ開口孔4を閉じる突状弁体11Cと、を備え、燃料タンクT内の液位に拘わらず突状弁体11Cが燃料遮蔽室16に位置する構成とすれば次のような効果が奏される。燃料の飛沫は燃料遮蔽室16に入り込みにくくなり、さらにエバポ開口孔4は燃料遮蔽室16の最上部となる頂面14に設けられることから、燃料の飛沫Sがエバポ開口孔4まで達しにくくなる。仮に、燃料の飛沫Sがエバポ開口孔4まで達する勢いで跳んだとしても、その一部は燃料遮蔽室16に位置した突状弁体11Cや環状水平面15によって遮られる。
【0032】
また、燃料遮蔽室16を弁室3の上面から上方に向けて凹状に設ける構成とすれば、エバポ開口孔4は凹状の燃料遮蔽室16の最上部となる頂面14に設けられることから、燃料液面からエバポ開口孔4までの高さをかせげることとなり、その分、燃料の飛沫がエバポ開口孔4まで達しにくくなり、エバポ開口孔4への飛沫の浸入がより一層抑制される。
【0033】
また、燃料遮蔽室16の内側面17および突状弁体11Cの外周面19を鉛直方向に沿って形成することにより、飛沫Sの一部を集約的に環状水平面15まで導くことができる。
【0034】
なお、突状弁体11Cの上端面に、例えば弾性を有するシール部材(図示せず)を別途付設する構成としてもよい。
【0035】
また、本実施形態のように、フロート弁体5を下部フロート10と上部フロート11とから構成し、下部フロート10の係合鍔部10Cが上部フロート11の係合爪11Eを下方に押し下げることにより、上部フロート11に水平軸周りのモーメントを生じさせてエバポ開口孔4を開く構造とすれば、フロート弁体5がコンパクトとなる。
【0036】
「第2実施形態」
図4は第2実施形態に係る燃料遮断弁1の側断面図であり、第1実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。第1実施形態と第2実施形態が異なる点は、第1実施形態ではケーシング2の上面を凹設して燃料遮蔽室16を形成しているのに対し、第2実施形態では接続口部材6を凹設してその凹部を燃料遮蔽室16に充てている点である。この第2実施形態の燃料遮蔽室16も弁室3の上面に凹状に設けられるという要件を満たし、本実施形態の燃料遮断弁1は第1実施形態の燃料遮断弁1と同様の効果を奏する。
【0037】
「第3実施形態」
図5は第3実施形態に係る燃料遮断弁1の側断面図であり、第1実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。第1実施形態と第3実施形態が異なる点は、第1実施形態では突状弁体11Cの上端面を水平な平坦面としているのに対し、第3実施形態では突状弁体11Cの上端面を上方に突状となる曲面としている点である。第1実施形態のように突状弁体11Cの上端面が水平な平坦面の場合にはこの平坦面に燃料が溜まりやすくなり、開いたエバポ開口部4に燃料タンクT内のエアが流れ込むときに突状弁体11Cの上端面に溜まった燃料が一緒に巻き込まれるおそれがある。
【0038】
これに対し、突状弁体11Cの上端面を上方に突状となる曲面とすることにより、燃料を曲面に沿って流れ落とすことができるため、突状弁体11Cの上端面における燃料の溜まりを抑止できる。したがって、開いたエバポ開口部4に燃料タンクT内のエアが流れ込むときの燃料の巻き込みが防止される。
【0039】
「第4実施形態」
図6は第4実施形態に係る燃料遮断弁1の側断面図であり、(a)、(b)はそれぞれ2つのシール部が共に閉じた状態、共に開いた状態を示す。また、第1実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。本実施形態は、燃料タンクT内の圧力が高い場合であってもフロート弁5を開弁しやすくすることを目的とする。上部フロート11の突状弁体11Cには、その上端面から基板部11Aの下面にかけて貫通する貫通孔20が形成されている。突状弁体11Cがエバポ開口孔4を閉じたとき、貫通孔20の上端はエバポ開口孔4と連通する。下部フロート10の上端面には貫通孔20の下端を塞ぐ曲面状の突弁部21が形成されている。つまり、本実施形態は、エバポ開口孔4と上部フロート11との弁機能に加えて、上部フロート11と下部フロート10との弁機能も備えた2段弁構造の燃料遮断弁1に関するものである。
【0040】
車両の傾斜や旋回等により燃料タンクT内の燃料の液位が上昇したときには、図6(a)に示すように、突状弁体11Cの上端面がエバポ開口孔4を閉じ、かつ突弁部21が貫通孔20の下端を閉じることで、エバポ開口孔4における燃料の流出が防止される。そして、図6(a)の状態から液位が下がったとき、燃料タンクT内の圧力がさほど高くないときには例えば下部フロート10と上部フロート11とがほぼ同時に下降してエバポ開口孔4が開く。燃料タンクT内の圧力が比較的高い場合には、エバポ開口孔4と突状弁体11Cとのシール径よりも貫通孔20と突弁部21とのシール径の方が細いため、先ず下部フロート10が下降して貫通孔20の下端が開く。これにより、上部フロート11の下方の圧力はエバポ開口孔4内の圧力とほぼ同じとなり、自重により上部フロート11が下降し、図6(b)に示すようにエバポ開口孔4がスムーズに開く。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。いずれの実施形態でもフロート弁5を下部フロート10と上部フロート11とに分割して構成した場合を例示したが、単体のフロート弁5から構成してもよい。その他、本発明は図面に記載したものに限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 燃料遮断弁
2 ケーシング
3 弁室
4 エバポ開口孔
5 フロート弁
6 接続口部材
10 下部フロート
11 上部フロート
14 頂面
15 環状水平面
16 燃料遮蔽室
17 (燃料遮蔽室の)内側面
18 弁座
19 (突状弁体の)外周面
S 飛沫
T 燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの上部に取り付けられるケーシングと、
燃料タンク内の液位に応じて昇降可能に前記ケーシングの弁室に内装され、上昇したときにエバポ開口孔を閉じて液状燃料の流出を遮断するフロート弁と、
を備えた燃料遮断弁において、
頂面に前記エバポ開口孔が形成されると共に該エバポ開口孔周りに環状水平面が形成され、下端の開口部が前記弁室に臨む燃料遮蔽室と、
前記フロート弁の上部に突設され、上端面が前記エバポ開口孔を閉じる突状弁体と、
を備え、
燃料タンク内の液位に拘わらず前記突状弁体が前記燃料遮蔽室に位置することを特徴とする燃料遮断弁。
【請求項2】
前記燃料遮蔽室を、前記弁室の上面から上方に向けて凹状に設けたことを特徴とする請求項1に記載の燃料遮断弁。
【請求項3】
前記燃料遮蔽室の内側面および前記突状弁体の外周面は鉛直方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料遮断弁。
【請求項4】
前記エバポ開口孔の周縁に、前記突状弁体の上端面を着座させる弁座が下方に向けて突設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の燃料遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−180037(P2012−180037A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44992(P2011−44992)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(390023917)八千代工業株式会社 (186)
【Fターム(参考)】